最新医学
Volume 69, Issue 9, 2014
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特集【NASH -最新の知見-】
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- 【座談会】
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- 【基礎】
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NASH の疾患概念
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNAFLD は非飲酒者で脂肪肝を呈する原因不明の慢性進行性肝疾患の総称で,近年の肥満人口の増加に伴い,本邦のみならず国際的にも急増している.本症は,肝病変の活動性が高くて肝硬変への移行や肝疾患関連死を生じる頻度の高いNASH と,活動性が低くて肝硬変への移行も少ないNAFL に分けられ,その判別には風船様肝細胞が重要視される. -
遺伝的素因とNASH
69巻9号(2014);View Description Hide Description近年,GWAS 技術の進歩に伴い遺伝的素因とNASH との関係について多数の報告がなされている.PNPLA3 は,人種を越えたNAFLD/NASH の疾患感受性遺伝子とされる.我々の検討では,PARVB が新たな疾患感受性遺伝子であると示唆された.NASH の発症・進展には遺伝的素因の関与が示されており,疾患感受性遺伝子の同定およびその機能解析が今後のNASH の予防や治療の一助となるであろう.本稿では,NAFLD/NASH に関連する遺伝的素因を文献,自験例をもとに概説する. -
インスリン抵抗性とNASH
69巻9号(2014);View Description Hide Descriptionインスリン抵抗性は,NAFLD/NASH 患者において高頻度に認められる病態である.インスリン抵抗性がNAFLD/NASH の原因か結果かはいまだ明らかではないが,近年の基礎的研究により,インスリンの標的臓器である脂肪組織,消化管,骨格筋における変化が,インスリン抵抗性を介してNAFLD/NASH の発症に関与することが示唆されている.また,肝臓は糖代謝に深くかかわる臓器であり,NAFLD/NASHもインスリン抵抗性を惹起する.本稿ではインスリン抵抗性とNAFLD/NASH の関連について,臓器相関の観点から最近の知見を中心に概説する.また,インスリン抵抗性が肝発がんに及ぼす影響についても論ずる. -
サイトカインとNASH
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNASH はメタボリックシンドロームの肝臓における表現型であり,その病態形成にはさまざまな生理活性物質が関与している.脂肪組織から分泌されるアディポサイトカイン,卵巣から分泌されるエストロゲン,さらには肝臓から分泌されるヘパトカインのNASH 進展への影響について,多数の基礎的・臨床的研究が行われてきた.これら生理活性物質のNASH 病態進展における役割解明は,NASH 治療の重要なヒントになりうる. -
酸化ストレスとNASH
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNASH の病態には,活性酸素種(ROS)過剰産生による酸化ストレスが大きく関与している.肝細胞では,糖代謝負荷に伴うミトコンドリア電子伝達系からの電子漏出や,ミクロソーム・ペルオキシソームでの脂質b 酸化亢進などによるROS 過剰産生によって酸化ストレスが生じる.また,自然免疫系賦活に伴うクッパー細胞や浸潤白血球からのROS 産生により,肝微小環境はさらに強い酸化ストレスに曝される.ROS は肝星細胞を活性化して肝線維化を惹起するのみならず,肝発がんの重要なトリガーとなる.したがって,NASH の予防・治療には酸化ストレス軽減へのアプローチが重要である. - 【臨床】
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NAFLD/NASH の疫学と病態
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNAFLD の有病率は20~30%,NASH の有病率は3~5% と推計されている.NAFLD は男性(41%)が女性(17.7%)よりも高頻度である.合併する生活習慣病として肥満は最も重要である.糖尿病の有病率は47.3% で,糖尿病患者は線維化が進展したNASH を有するリスクも高い.脂質異常症としては,高LDL コレステロール血症,低HDL コレステロール血症,高中性脂肪血症の有病率が高かった.また,高血圧の有病率は約40% であった. -
NAFLD/NASH の診断の現状と課題
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNAFLD の診断は肝脂肪化に加えて,飲酒歴の聴取,他の慢性肝疾患の除外を行う.NASH 診断のゴールドスタンダードは肝生検であり,肝細胞の大滴性脂肪化に加えて,炎症を伴う肝細胞の風船様変性を認めるものと定義する.アポトーシスのマーカーであるサイトケラチン18 やNAFIC スコアなどによりNASH を予測することが可能である.また線維化進展例の予測には,AST/ALT 比や血小板数,肝線維化マーカーが参考になり,NAFLD fibrosis score やFIB–4 index は肝疾患関連死亡や予後の予測にも有用である. -
NAFLD/NASH の画像診断
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNAFLD の画像診断は,超音波所見では,肝実質エコーレベル上昇,肝腎コントラスト,脈管不明瞭,深部エコー減衰の4つがあり,その感度は極めて高い.しかし客観性や定量性に欠けるため,CT やMRI 検査が行われる.CT では,正常の肝実質のCT 値は脾のCT 値より高い.脂肪肝の場合,肝実質のCT 値が低下するため,肝脾CT 値比(L/S 比)が低下し,0.9 未満のときに脂肪肝と診断する.MRI ではT1 強調画像で高信号を呈することが知られている.しかしこれら画像診断では,NAFLD における非進行性の単純性脂肪肝と肝硬変,肝細胞がんに進展するNASH との鑑別は不可能とされ,新たな画像診断の登場が期待されている. -
NASH の予後―病理組織を中心に―
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNAFL においてはNASH や肝硬変への進展頻度は低いが,死亡率は一般住民より高く,その死因は肝関連死が少ない.また,NASH においてはNAFL よりも予後が悪く,肝関連死も増加する.複数回肝生検症例の検討では,観察期間3.2~13.8 年で肝線維化進行例32~53%,不変例30~50%,改善例16~29% である.線維化進行因子としては,肝生検時の炎症や線維化軽度,フィブロネクチン,また年齢,糖尿病や高血圧の有無,AST 高値,ALT の変動,BMI やHOMA–IR の上昇などがいわれている.今後,進展するNASH を見極め,フォローや治療を行うことが重要である. -
NASH の予後―肝発がんを中心に―
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNAFLD/NASH の有病率は増加しており,その予後を見据えた治療方針の決定が重要となる.メタボリックシンドロームの肝表現型でもあるNAFLD/NASH がゆえに,肥満・内臓肥満,高血圧,脂質異常症,糖尿病,高尿酸血症などの併発が多く,その予後には肝硬変・肝がんなどの肝関連疾患死のみならず,心血管関連疾患死や肝がん以外の他臓器の悪性腫瘍死が関連している.非アルコール性脂肪肝(NAFL),NASH,肝硬変という病期により,予後規定因子が変わると推測される. -
小児のNAFLD/NASH
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNAFLD は,現代社会によって発症した.小児のNAFLD/NASH の長期予後は不明である.しかし,小児期にNAFLD/NASH が改善あるいは治癒する頻度は低い.医療従事者だけではこの疾患を治癒に導くことは厳しい.NAFLD を現代社会の問題点の一側面ととらえて,社会全体として取り組むべき課題である. -
二次性NASH
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionNASH は肥満や生活習慣病を基盤として発症する症例がほとんどである.しかし,下垂体機能低下症,薬剤(タモキシフェンなど),甲状腺機能低下症,多D胞卵巣症候群,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,性腺機能低下症,膵頭十二指腸切除に伴うNASHも注目され,いわゆる二次性NASH と分類されている.いまだ原発性,二次性NASH の明確な分類・定義はない.下垂体機能低下を伴ったNASH では成長ホルモン投与が病態改善に有効であり,注目されている.今後二次性NASH の病態の解明は,本来のNASH の治療につながる可能性もあり,解析が待たれる分野である. -
NAFLD/NASH の治療Update
69巻9号(2014);View Description Hide Descriptionメタボリックシンドロームの肝臓での表現型とされるNAFLD およびNASH は,近年増加の一途をたどっている.将来的な肝硬変,肝がんへの進展を防ぐための治療は現在どの程度確立しているのか,本稿では2014 年4月に刊行された『NAFLD/NASH 診療ガイドライン2014』に沿って,NAFLD/NASH の治療について概説する.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(40) 新しいうつ病治療―脳深部刺激(DBS)―
69巻9号(2014);View Description Hide Description治療抵抗性うつ病に対する治療として,neuromodulation の分野の発展が著しい.その中で近年は脳深部刺激(DBS)が注目されている.DBS の効果は月単位で認められ,刺激部位への局所作用よりも,神経ネットワーク全体の修飾が効果発現に重要である.DBS は他の治療法で反応しない症例に対しても持続的な効果が期待できるとともに,うつ病の生物学的基盤の理解の向上に寄与すると考えられる.今後日本でもDBS を導入していくかどうかについて,慎重な議論が行われることを期待したい. -
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【トピックス】
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大顆粒リンパ球性白血病とSTAT3 変異
69巻9号(2014);View Description Hide Description大顆粒リンパ球性白血病(LGL)はCD8+ の細胞傷害性T細胞がクローン性に増殖する疾患である.最近LGL において,主要なシグナル分子であるSTAT3 が高頻度に変異していることが報告された.変異は2量体形成に重要なSH2ドメインに集中しており,これによってSTAT3 が恒常的に活性化していた.STAT3 変異の発見により,LGL の病態解明と治療法開発の進展が期待される. -
進行・再発悪性軟部腫瘍に対するパゾパニブ
69巻9号(2014);View Description Hide DescriptionパゾパニブはVEGFR–1,2,3,PDGFR–a,b,およびKIT に対して阻害作用を示すマルチターゲットの経口チロシンキナーゼ阻害薬である.標準的抗がん剤治療後の進行悪性軟部腫瘍患者を対象としたプラセボ対照国際共同第Ⅲ相試験(PALETTE試験)で有意に無増悪生存期間を改善した結果をもとに,2012年9月に承認された.2013年3月には腎細胞がんに対して効能追加されている.ここでは,悪性軟部腫瘍に対する役割を中心に解説する.
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【今月の略語】
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