最新医学

Volume 70, Issue 1, 2015
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特集【サルコペニアの基礎と臨床】
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- 座談会
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サルコペニアの定義と診断
70巻1号(2015);View Description
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高齢者においてフレイル(虚弱)の重要な要素としてサルコペニア(加齢性筋肉減少症)が知られているが,サルコペニアは進行性かつ全身性の筋量減少や筋力低下を特徴とし,身体機能障害,QOL や生活機能の低下などとも関連する.本稿では高齢者および加齢に伴って認められるサルコペニアの定義や概念について,最近アジアで発表されたコンセンサスレポートおよび同診断アルゴリズムを含めて概説する. -
サルコペニアとフレイルとの関連を考える
70巻1号(2015);View Description
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サルコペニアは加齢に伴って筋肉が減少する病態であり,筋肉量の低下とともに握力や歩行速度の低下など機能的な側面を含む概念である.一方,フレイルは環境因子に対する脆弱性が高まった状態であり,その病態生理や定義・診断基準については明確となっていないが,身体的,精神・心理的,社会的な要因があり,身体的フレイルの原因としてサルコペニアが注目されている.本稿では,サルコペニアとフレイルとの関連についてまとめてみる. -
サルコペニアの疫学Ⅰ
70巻1号(2015);View Description
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まず,筋肉量の加齢による特徴を示し,the European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)1)が提唱した方法を参照したサルコペニアの分類方法について,地域高齢者におけるサルコペニアの分布とともに図示した.さらに,要介護移行の危険因子である生活機能の障害や転倒とサルコペニアとの関連について,地域高齢者を対象とした研究結果より示した. -
サルコペニアの疫学Ⅱ
70巻1号(2015);View Description
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無作為抽出された地域住民を対象とするコホート研究である「国立長寿医療研究センター老化に関する長期縦断疫学研究(NILS–LSA)」での調査から,日本人高齢者全体で筋量減少者は850万人,筋力低下者は1,000万人,身体機能低下者は350万人を超えると推計された.またAsian Working Group for Sarcopenia のサルコペニア判定のアルゴリズムを用いてサルコペニアの有病者数の推計を行った結果,男性が132万人,女性が139万人と推計された. -
サルコペニア肥満
70巻1号(2015);View Description
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サルコペニア肥満は,加齢に伴う主要な身体組成変化であるサルコペニアに(内臓)肥満が合併した病態であり,インスリン抵抗性,炎症,酸化ストレスなどが両者を結びつける分子メカニズムである.サルコペニア肥満はフレイルに関連する身体機能障害を伴うだけではなく,代謝障害や動脈硬化が進展しており,心血管リスクが高いと考えられる. -
サルコペニアの発症機構
70巻1号(2015);View Description
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サルコペニアの専門学会が存在する欧州と比べると,日本では10年以上研究が遅れている.サルコペニアは急性に起こる筋萎縮ではなくて,緩やかに起こる現象である.急性筋萎縮のタンパク質分解で重要なユビキチン-プロテアソーム経路は,サルコペニア時の筋萎縮に関与していない可能性が高い.分子メカニズムにまだまだ不明な点があるものの,オートファジー経路の障害がサルコペニアに深く関与しているのではないかと思う. -
骨・筋肉連携
70巻1号(2015);View Description
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サルコペニアと骨粗鬆症は,高齢化社会の進展とともに注目が高まっているが,多くの臨床研究から筋と骨の相互関連(筋・骨連関)が示唆される.ビタミンD,成長ホルモン,テストステロンなどの内分泌因子,力学的因子,遺伝因子,加齢,炎症,栄養などが筋と骨に同時に影響を及ぼし,種々の病態を形成する.さらに,筋から骨,骨から筋への体液性あるいは神経を介した連携が存在することが想定される. -
サルコペニア病態における筋内脂肪沈着とマイオスタチンの役割
70巻1号(2015);View Description
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サルコペニア(加齢性筋肉減少症)は,加齢に伴う筋肉量減少と定義される.マイオスタチンの調節により筋量が制御可能である.また,サルコペニアで見逃してはならない病態に,筋線維間に沈着する筋内脂肪沈着がある.筋内には,筋衛星細胞とは異なる間葉系前駆・幹細胞が存在し,筋線維間の脂肪沈着に関与することが明らかとなっている.本稿では,サルコペニア病態における筋内脂肪沈着とマイオスタチンの役割について解説したい. -
サルコペニアと神経筋シナプス
70巻1号(2015);View Description
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神経筋シナプスは運動神経細胞と骨格筋の相互作用により維持されており,サルコペニアによる筋萎縮の早期段階からシナプスの形態異常が起きる.この初期段階を検出することができれば,サルコペニアの早期診断と治療が可能になるかもしれない. -
サルコペニアとアミノ酸栄養
70巻1号(2015);View Description
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加齢に伴い,栄養などの筋タンパク質同化刺激に対する筋タンパク質合成反応が減弱するなどの原因により,サルコペニアが起こる.ロイシン高配合必須アミノ酸(Amino L40)は,効率良く筋タンパク質合成を引き起こし,運動との相乗的な効果により,高齢者の骨格筋量や筋力を増加し,歩行速度を改善する.Amino L40 の長期継続的な摂取は,有効なサルコペニア対策手段となり得る. -
サルコペニアとリハビリテーション栄養
70巻1号(2015);View Description
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サルコペニアの原因には,加齢,活動(廃用),疾患(侵襲,悪液質,神経筋疾患),栄養(飢餓)がある.リハビリテーションを行っている高齢者の40~46% にサルコペニアを認める.嚥下関連筋のサルコペニアで嚥下障害を認めることがある.サルコペニアの原因によって,筋トレを行うべき場合と禁忌の場合がある.サルコペニアの治療には,リハビリテーションと栄養管理を同時に行うリハビリテーション栄養の考え方が有用である. -
サルコペニアへの介入
70巻1号(2015);View Description
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骨格筋量の減少に伴う筋力の衰えあるいは歩行機能の低下を指すサルコペニアを効率良く予防するためには,多様な危険因子の中で,可変的要因として注目されている骨格筋不使用の改善と栄養改善に焦点を当てた支援が有効である.運動,栄養による介入効果を検証したところ,サルコペニア予防には,運動単独あるいは栄養単独の介入よりも運動+栄養による複合介入がより効果的であることを示した. -
サルコペニアとビタミンD
70巻1号(2015);View Description
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サルコペニアは,筋量・筋力の減少によって身体能力(physical performance),QOL の低下や死をもたらす社会での大きな課題である.高齢者では血清25(OH)D濃度が低下していることが分かっている.ビタミンD欠乏・不足は筋力・転倒との関連を認めており,サルコペニアと密接に関連している.そのため,サルコペニアに関して多くの不確実な候補薬剤がある中で,活性型ビタミンD製剤はその効果が期待されている薬剤である.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(最終回) 新しいうつ病治療の可能性
70巻1号(2015);View Description
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うつ病の寛解率は6割程度と考えられている.うつ病の患者が社会生活を存分に行えるようになるには,症状の消失すなわち寛解は必要条件である.また,うつ病からの回復に時間がかかることも大きな問題である.今のところ,治療を開始して1週間,2週間で社会生活が十分できるケースはほとんどない.このような状況の中で,新しい治療法の開発に寄せる期待は大きい.ここでは新規薬物療法として興奮性アミノ酸関連の薬物を取り上げ,非薬物療法としてrTMS を取り上げた.いずれも期待の大きな治療法である. -
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【トピックス】
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慢性閉塞性肺疾患の呼吸困難に対する鍼治療の臨床効果について
70巻1号(2015);View Description
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,病態の特性から労作時呼吸困難(DOE)が認められる.近年,COPD のDOE に伝統医療である鍼治療が有効であると報告されている.鍼治療は疼痛疾患に有効であり,そのメカニズムに中枢性鎮痛が挙げられる.呼吸困難も中枢で感じている感覚であり,疼痛と類似するところがある.したがって,鍼治療で呼吸困難が改善する可能性が示唆されている.今回はCOPD のDOE に対する鍼治療の臨床効果を踏まえて解説する.
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【今月の略語】
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