最新医学

Volume 70, Issue 6, 2015
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特集【てんかん医療の多様な展開-基礎から臨床まで-】
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- 座談会
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- 基礎
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アストロサイトによる空間的カリウム緩衝機構とてんかん病態‐新たなてんかん治療標的分子Kir4.1 チャネルの機能に着目して‐
70巻6号(2015);View Description
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アストロサイトは神経細胞を保持し,脳内環境の恒常性を維持するとともに,「神経-グリア間のクロストーク」と呼ばれる相互作用を介して,神経活動の制御において重要な役割を果たしている.本稿では,てんかんの発症と深くかかわるアストロサイトの空間的カリウム緩衝機構について紹介し,これを仲介するアストロサイトKir4.1 チャネルのてんかん発症および治療における役割について概説する. -
てんかん外科病理に関する最新の国際分類
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難治てんかん原性病巣には,脳形成障害,腫瘍性病変,瘢痕性病変など,病因論的に多彩な病理組織学的特徴が認められる.限局性皮質異形成は皮質構築の異常を示し,細胞形態の特徴と他の一次病変の有無によりtypeⅠ~Ⅲに分類される.一方,海馬硬化症は海馬体CA 各領域における選択的神経細胞脱落のパターンから,typeⅠ~Ⅲの3亜型とこれらに該当しない群に分類される.てんかん外科病理診断は,正確な病態把握のために重要である. -
てんかんの遺伝型と分子病態
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てんかんと遺伝との関連性が正確に理解されるようになったのは,原因遺伝子が初めて同定された20年前からである.当初はチャネル病の1つとして理解されていたが,2002年にWest 症候群で介在ニューロンの発生に関与するARX の変異が同定され,現在ではイオンチャネル以外の原因が数多く同定されている.てんかん診療においても遺伝型の知識が不可欠であり,分子病態に基づいた治療研究が必要である. -
新しい抗てんかん薬の開発とてんかんの発病防止戦略
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現在のてんかんの薬物治療は対症療法であり,根治療法ではない.根治療法開発あるいは発病防止には,新たな治療薬と治療法の開発が必要である.新たな治療薬開発には,新たなスクリーニングテストツールとてんかんの分子病態に関するより多くの情報が必要であり,発病前に治療的に介入するという発想の転換も必要である.目的達成には,分子病態解析による標的タンパク質の同定,発達に伴うてんかん原性/発作原性確立にかかわる発病への過程を補正する薬剤の開発,atrisk 児の同定方法,治療期間設定など,克服すべき課題は多い. -
システム神経科学とてんかんの接点
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てんかんの発作時症候は,正常の皮質機能および皮質間ネットワークと表裏一体であり,その観点からは臨床てんかん学の病態の評価・治療は臨床神経科学,なかんずくシステム神経科学と密接に関連する.両者の接点について,本稿では① ヒトのてんかん焦点活動を神経細胞とグリア細胞の視点から脳波活動を分析することによって病態を解明するアプローチと,② 言語神経科学での最近の研究を例にとって概説した.基礎と臨床の相互のtranslatability として,システム神経科学の知見がてんかん病態の理解やてんかん外科の術前脳機能評価に応用され,一方,疾患の病態の新知見が脳機能評価の個別化やシステム神経科学の理解に応用されている. - 臨床
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高齢者のてんかんの特徴と治療
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高齢者はてんかんの好発年齢である.老年人口の急激な増加に伴い,高齢初発てんかん患者が増加している.高齢初発てんかんは,けいれんを来さない意識減損発作である複雑部分発作が多く,てんかんの診断が容易でない場合もあり,鑑別診断が重要である.高齢者ではてんかん発作が身体的および精神的に患者に与える影響が大きいが,一方,適切に診断・治療すれば抗てんかん薬による発作抑制率が高い. -
小児てんかんの特徴と治療
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小児てんかんの特徴は,新生児期,乳児期,小児期,思春期と,発達年齢ごとに特異なてんかん型,もしくはてんかん症候群が存在することである.この「年齢依存性」てんかん症候群の臨床・脳波的特徴には,発達に伴う脳の成熟度の関与が想定されている.その中でも,予後良好で有病率の高い特発性部分てんかん症候群と,有病率は高くないがてんかん性脳症を合併する予後不良な難治てんかん症候群の存在が特徴的である. -
てんかん画像の進歩
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近年の神経画像の進歩は著しく,MRI,PET,SPECT,MEG といった複数のモダリティを活用することで,てんかん患者における脳形態異常のみならず,多角的に質的異常を可視化することが可能となっている.てんかん焦点診断の基本はあくまで症候学と脳波であり,画像診断はあくまで補助的診断であることを念頭に置くべきであるが,これら神経画像を用いることで,個々の患者におけるてんかん焦点診断のみならず,てんかん病態の本質を探究することが可能と思われる. -
自己免疫性てんかん
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原因不明で抗けいれん薬に反応が不良である難治性てんかん患者の一部は,自己免疫的機序を基盤とし,ステロイドなどの免疫療法により発作の軽減・消失が得られる.このような例では,神経細胞・グリアの細胞表面に発現する受容体・チャネルタンパク質を標的とするさまざまな自己抗体が検出される.抗体陽性例の多くは脳炎・脳症の症候を呈するが,一部はてんかん発作を主徴とし,発作の軽減には免疫療法を早期に導入することが重要である. -
妊娠可能年齢の女性におけるてんかん診療戦略
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ほとんどのてんかん患者は,特に問題なく妊娠,出産を迎えることができる.しかし,妊娠中に大発作が起こった際のリスクは大きく,その一方で,すべての抗てんかん薬は胎児奇形率上昇の危険を伴う.そのため妊娠可能年齢におけるてんかん患者への治療は,患者の発作の状態と児への影響を常に考慮しながら行う必要がある.また,安全な妊娠,出産を達成するには,前もって投薬調整と妊娠計画を行い,協力体制についても十分な環境を整える必要がある. -
薬物療法の基本‐新規と既存抗てんかん薬の使い方‐
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本邦における新規抗てんかん薬は,国際的には第3世代抗てんかん薬に位置づけられる.新規抗てんかん薬の発作抑制効果は,単剤治療では既存抗てんかん薬を凌駕するものではないが,既存抗てんかん薬にはない作用機序を有するため,併用療法の治療成績向上に寄与している.さらに,副作用軽減を介した忍容性の向上も総合的なてんかん薬物療法の質的向上に寄与しているが,これは緩徐な漸増法の重要性の啓発が寄与している. -
てんかん外科の現状と展望
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てんかんの外科治療は,薬剤難治性てんかん症例が対象となり,QOL を著明に改善させる可能性があるが,術後の発作再発も認められ,正確なてんかん原性領域の同定・切除が術後発作消失の鍵となる.今後は,より正確なてんかん原性領域と脳機能領域の同定による安全で有効な切除術の発展とともに,合併症が少なく,より低侵襲な手術法の開発が求められる. -
新しい神経刺激療法‐迷走神経刺激療法など‐
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難治性てんかんに対する新しい治療の1つとして,神経刺激療法がある.日本では迷走神経刺激療法が普及しつつあり,新規抗てんかん薬のアドオン治療とほぼ同等の発作抑制効果が得られている.さらに近年,国外では三叉神経刺激や脳深部刺激も臨床段階で試みられている.本稿では迷走神経刺激療法を中心に,これら神経刺激療法について解説する.
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【連 載】
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【トピックス】
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心腎連関による心臓リモデリング機序
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心腎連関は心臓・腎臓間に相助的な関係が存在するとする概念であり,一方が悪くなるともう一方が悪くなるという現象を説明する基本概念を示す.心疾患が腎臓を悪化させる機序は血行動態や交感神経を介する古典的な経路で想像しやすいが,腎臓が悪くなった際になぜ心臓が悪くなるのかという「腎心」連関については不明な点が多い.本稿では「腎心」連関に焦点を絞り,現在までに明らかになっている知見を紹介する. -
乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検の推奨
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乳がん患者の予後予測において,リンパ節転移の評価は重要である.以前は腋窩リンパ節郭清を行っていたが,リンパ浮腫などの術後後遺症の原因となっていた.現在はセンチネルリンパ節生検(SNB)が標準治療となり,術後後遺症の頻度が減ってきた.以前は適応外であった術前薬物療法症例に対するSNB が可能となり,またリンパ節転移陽性でも一定の条件のもとでリンパ節郭清を省略できることも示され,術後のQOL は大幅に向上した.
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【今月の略語】
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