最新医学

Volume 70, Issue 9, 2015
Volumes & issues:
-
特集【変貌するウイルス肝炎治療-最新知見とさらなる課題-】
-
-
- 座談会
-
- 肝炎ウイルス総論:基礎・疫学・臨床の接点
-
C型肝炎ウイルス感染培養系から抗ウイルス薬へ
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
C型肝炎ウイルス(HCV)は1989年に発見された.HCV は肝臓に持続感染し,長期間の感染を経て肝硬変,肝臓がんを発症させるため,抗ウイルス療法の開発が望まれてきた.インターフェロンとリバビリンによる治療が長く臨床で用いられてきたが,近年,直接作用型抗ウイルス薬(DAA)と呼ばれる抗ウイルス薬によりHCV の治療は画期的に改善した.HCV の培養増殖実験系により,抗ウイルス薬感受性や耐性ウイルスが解析可能である.さらに,新規抗ウイルス薬のスクリーニングが可能となる. -
ヒト肝細胞キメラマウスを用いた抗ウイルス薬の薬効評価と臨床応用
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場により,C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法の安全性,有効性は飛躍的に向上した.DAA の薬効評価には,動物モデルを用いた検討が有用である.ヒト肝細胞キメラマウスは肝臓が高度にヒト肝細胞に置換されたマウスであり,C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染が可能である.HCV 感染ヒト肝細胞キメラマウスはDAA の薬効評価に有用であり,本マウスを用いて,C型慢性肝炎に対するより有効性の高い治療法の開発が期待される. -
疫学的視点から見た肝炎ウイルス感染者の状況とその対策
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
我が国では,この25 年間に肝炎対策基本法を基盤とした【検査,診断,治療】を見据えた肝炎・肝がん対策を進めてきた.2011 年時点の肝炎ウイルスキャリア数は約210~280万人,「感染を知らないまま社会に潜在しているキャリア」は77.7万人と推定されている.治療効果の高い新薬の導入と併せて,効果的な肝炎・肝がん対策をさらに実施していくために,肝疾患患者フォローアップシステムの構築等の地域連携が重要である. - B型肝炎の最新知見
-
HBs 抗原量と抗ウイルス効果,肝発がん
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
従来HBs 抗原は定性的に検査され,その存在はB型肝炎ウイルスの感染状態であることの診断に広く用いられてきた.近年HBs 抗原の定量が高感度で可能になり,これを定量することは自然経過における病態の鑑別や抗ウイルス療法における効果判定,さらには発がんリスクの評価に有用であることが明らかとなってきた.また,B型慢性肝炎における抗ウイルス療法の長期治療目標はHBs 抗原の陰性化であり,HBs 抗原の定量は診療上重要である. -
核酸アナログ製剤による抗ウイルス療法の現況
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
B型慢性肝炎に対する核酸アナログ製剤の長期的効果について検討した.ラミブジンは長期投与にて耐性ウイルスが高率に出現する.ラミブジン耐性ウイルスに対するアデホビルの併用療法の長期的効果は高い.少数例で多剤耐性ウイルスの出現を認め,抗ウイルス効果が減弱する.核酸アナログ未使用例に対しては,エンテカビルまたはテノホビルが第1選択となる.いずれの治療も高い抗ウイルス効果を認め,耐性ウイルスの出現率は低い.また,核酸アナログ不応例ではテノホビルとラミブジンまたはエンテカビルの併用療法が有効である. -
B型肝炎再活性化の現状と対策
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
HBV が肝細胞に感染すると,その複製過程でcccDNA が形成され,キャリアのみならずHBs 抗原陰性の既往感染例でもこれが核内に残存している.このためHBV感染例は,免疫抑制・化学療法を実施するとウイルス増殖が活発になり,これに起因する肝炎を発症する場合がある.HBV 既往感染例のウイルス再活性化による肝炎をde novo B型肝炎と称するが,劇症化する頻度が高く,予後不良である.厚生労働省研究班は2009年にその予防ガイドラインを発表し,これは日本肝臓学会のガイドラインに引き継がれたが,いまだ再活性化による急性肝不全症例は根絶できていない. -
核酸アナログ時代のシーケンシャル療法の位置づけ
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
B型慢性肝炎に対する核酸アナログ治療は,予後の改善に大きく貢献しているが,HBV DNA の減少は見せかけであり,HBs 抗原やHB コア関連抗原で見ると,肝臓内のB型肝炎ウイルスの増殖を抑制する効果は限定的である.今後,HBs 抗原量減少を目標として,核酸アナログ中止時にペグインターフェロン(PEG–IFN)a2a 48週長期投与を用いる,核酸アナログ/PEG– IFNa2a シーケンシャル療法の効果の検討が必要である. - C型肝炎の最新知見
-
Direct Acting Antivirals(DAA)とインターフェロン併用・非併用プロトコール
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
DAA は大きく3クラス,プロテアーゼ活性を有するNS3 タンパク質に対する阻害薬,HCV NS5A タンパク質に対する阻害薬,そしてポリメラーゼ活性を有するNS5B タンパク質に対する阻害薬の3つに分けられる.インターフェロン(IFN)併用プロトコールとしては,本邦ではプロテアーゼ阻害薬併用プロトコールが行われ,IFN フリーの治療法ではプロテアーゼ阻害薬/NS5A 阻害薬併用療法,NS5B/NS5A 阻害薬併用療法が申請もしくは行われている. -
C型肝炎に対するプロテアーゼ阻害薬併用 インターフェロン療法
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
2011年に保険認可となった我が国初のDAA である第1世代プロテアーゼ阻害薬テラプレビルとペグインターフェロン(PEG–IFN),リバビリン(RBV)との3剤併用療法では,抗ウイルス効果は増強したが,高度の貧血への進行,重篤な皮膚病変の出現など,副反応の増強も認めた.第2世代プロテアーゼ阻害薬であるシメプレビルとPEG–IFN,RBV との3剤併用療法は,バニプレビル3剤併用療法とともに現時点での第1選択薬であり,PEG–IFN+RBV 併用療法に比し,副反応はほぼ同等で,著効率は初回治療例ならびに前治療再燃例で約9割,前治療無効例で4~5割に向上した. -
第1世代インターフェロンフリー療法 ダクラタスビル・アスナプレビル併用療法はC型肝炎治療の裾野を変えた
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
ダクラタスビル・アスナプレビル併用療法は,日本初のインターフェロン(IFN)フリーのC型肝炎に対する抗ウイルス療法である.治療の認容性が高く,IFN 不適格例・不耐容例中心に高齢者に対して導入が進み,C型肝炎の抗ウイルス療法の裾野を広げている.NS5A 領域の薬剤耐性ウイルスを有する症例では効果が減弱するが,薬剤耐性がなければ高いSVR 率が期待される. -
遺伝子型1・2 型に対するNS5B ポリメラーゼ阻害薬 ソホスブビルを用いたIFN フリー経口抗HCV 療法
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
世界では核酸型NS5B ポリメラーゼ阻害薬ソホスブビル(SOF)を使用するレジメンが標準的であり,併用する経口抗HCV 薬やリバビリン(RBV)や投与期間が異なるものの,さまざまな遺伝子型で95% 前後のウイルス排除率を示している.我が国でも,遺伝子型2(GT–2)に対してSOF(ソバルディ)が2015年3月26日に承認,GT–1 に対するSOF とNS5A 阻害薬レジパスビル(LDV)も2015年7月3日に承認され,欧米治療とやっと肩を並べるに至った.本稿では,我が国で行われたGT–2 に対するSOF/RBV,GT–1 に対するLDV/SOF 配合剤(ハーボニー)の第Ⅲ相試験の治療成績と今後の課題について紹介する. -
Direct Acting Antivirals(DAA)に対する薬剤耐性変異の問題と対策
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
C型肝炎に対するDAA の進歩は著しく,現在NS3/4 プロテアーゼ阻害薬,NS5A阻害薬,NS5B ポリメラーゼ阻害薬の3種の薬剤が使用可能である.しかしDAA は,特にインターフェロン(IFN)フリーの治療での薬剤耐性変異の問題がある.そこで,現在使用可能な薬剤の特性と薬剤耐性変異の意義について,十分な知識を持つことが必要である. -
C型肝炎ウイルス治療後肝発がんの危険因子と血清マーカー
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
C型肝炎ウイルス(HCV)駆除によって肝がんの発生は抑制されるも,一部の例ではがん化する.インターフェロン(IFN)をベースにした治療でHCV を駆除した例での発がん例の特徴としては,① 高齢者,② 男性,③ 飲酒者,④ 脂肪肝合併例,⑤ 肝線維化進展例,⑥ 血小板数低下,⑦ AFP 高値例などが報告されている.そのような中でも,AFP 値は未治療例,治療例での発がんリスクマーカーであり,治療後AFP 非低下例はHCV 排除後も依然として発がんリスクが高いことを前提に患者の経過観察を行うべきである. -
残された課題 ― C型肝炎治療困難例への対策(非代償性肝硬変,肝移植後,透析例,HIV 合併など)―
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
近年の経口薬によるC型肝炎ウイルス(HCV)治療の進歩は著しく,大多数の患者では治癒を目指すようになった.これまで治療困難例であった非代償性肝硬変でも,末期以外の患者ではウイルス駆除の可能性が高くなり,また透析患者でも使用が可能なプロトコールが開発されている.さらに肝移植待機あるいは移植手術後でもウイルス駆除が報告され,HIV との共感染例でも良好な効果が見込めるなど,治療困難例の割合は今後さらに減少することが見込まれる.
-
-
【連 載】
-
-
痛みのClinical Neuroscience(3) 生物心理社会モデルから見た慢性痛への対応―諸外国の状況も含めて―
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
こじれた慢性痛の治療には,従来の生物医学モデルでは歯がたたず,生物心理社会的モデルに基づいた治療が必要となる.そのような治療法の1つが学際的痛み治療であり,学際的痛み治療とともに,痛みについての教育,研究,広報も行う拠点が学際的痛みセンターである.諸外国のように,日本でも痛み治療を医療政策の中に位置づけ,国レベルで痛みに対応するシステムを早急に作る必要がある. -
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造(6) 外側からのアプローチ(3) 上縦束・鉛直束・無名の白質層・矢状層と視放線
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
-
-
-
-
【トピックス】
-
-
タウイメージング
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
タウタンパク質は神経細胞骨格を形成するタンパク質であり,アルツハイマー型認知症など神経変性疾患で異常リン酸化タウタンパク質の集積による神経原線維変化が重要な病理学的特徴として知られる.近年,タウPET イメージングにより,神経変性疾患の生体脳におけるタウタンパク質病変の評価を行うことが可能になってきている.今後,神経疾患や精神疾患での鑑別診断,病態生理の理解やタウタンパク質を標的とした新規創薬における薬効評価への応用が期待される. -
慢性骨髄性白血病の治癒を目指して
70巻9号(2015);View Description
Hide Description
慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)の現在の治療目標は治癒させることである.このためにCML 幹細胞において機能する細胞内シグナル伝達,自己複製,細胞周期,代謝,立体構造,オートファジーの制御分子などを標的とした新規分子標的薬剤の臨床試験が進んでいる.また,インターフェロン,ワクチン,PD–1/PD–L1 などの免疫チェック機構を標的とした抗腫瘍免疫機構を活性化する治療法の開発も進んでいる.
-
-
【今月の略語】
-
-