最新医学

Volume 71, Issue 6, 2016
Volumes & issues:
-
特集【多発性硬化症と視神経脊髄炎 -基礎から臨床まで-】
-
-
脱髄性疾患の疫学から考える病因・病態と予防 ―序論に代えて―
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症の動物モデルとされる実験的自己免疫性脳脊髄炎の抑制効果により,多くの疾患修飾薬が開発された.これらは再発をよく抑えるが,軸索障害による慢性的な障害進行の抑制は十分でない.多発性硬化症の真のモデルは存在しないので,疫学調査で示されたリスク因子から病因や病態を考察することの意義は大きい.このような解析から障害進行の病態が解明され,障害進行を抑える真の疾患修飾薬が開発さ れることを期待したい. - 座談会
-
多発性硬化症の疾患修飾薬の活用―Induction Therapy と Escalation Therapy をどう使い分けるか―
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
-
脱髄性疾患の分子免疫病理学
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)は代表的な中枢性脱髄性疾患であり, それぞれ髄鞘やアストロサイトを標的とした自己免疫疾患と考えられている.本稿では,両者の一般的な病理学的特徴に加え,大脳皮質病変や髄鞘再生など最新の知見を 概説する.さらに,コネキシン脱落,NMOにおけるdistal oligodendrogliopathyの存在,早期病巣としての isolated perivascular lesion など自験データも紹介する. -
脱髄性疾患の免疫病態研究最前線と細胞性免疫マーカー
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
近年,T細胞をターゲットとした多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬(DMD)の有効性が示されてきている.しかし,近年開発されたDMDには長期安全性のデータが乏しく,進行性多巣性白質脳症(PML)などの重篤な副作用が出現する場合もある.また各薬剤には non–responder が存在するため,治療反応性や副作用を予測するためのバイオマーカーの開発が求められている.本稿では,MSにおける細胞性免疫研究とバイオマーカーの現状について紹介する. -
中枢神経脱髄性疾患の自己抗体研究の進歩と 液性免疫マーカーの臨床応用の留意点
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
中枢神経の代表的脱髄疾患である多発性硬化症では,病態に抗体の関与が示唆されるが,疾患特異的抗体は確定していない.一方,視神経脊髄炎では抗アクアポリン4抗体が特異的診断マーカーとなり,病態形成にも密接に関与することが明らかにされた.また,成人の視神経炎,脊髄炎で検出される抗 MOG抗体にも関心が高まっている.同様の臨床像を呈する多数例で再現性よく検出される抗体は,診断的価値が高い. -
多発性硬化症の画像診断学の進歩
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症(MS)の診断や治療の効果判定において,核磁気共鳴画像(MRI)は今や欠かせないツールである.MS診療に携わる医師はT2強調画像,T2–FLAIR画像,あるいはガドリニウム造影T1強調画像などのMRI撮像法を頻用しているが,皮質内病変や髄鞘再生の評価は困難であった.しかしながら昨今,これら課題を克服する撮像法が開発されてきている.本稿では,皮質病変を描出するdouble inversion recovery(DIR法)と髄鞘再生を描出するmyelin map 法を概説する. -
アジア人種の特性を考慮した脱髄性疾患の 最新の診断プロトコール
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
日本を含む東アジア,東南アジアでは多発性硬化症の有病率が非常に低いため,相対的に視神経脊髄炎や多相性に経過する急性散在性脳脊髄炎の割合が高く,また神経ベーチェット病など,ほかに頻度の高い炎症性中枢神経疾患があるために,炎症性脱 髄疾患の診断が欧米よりも難しい.臨床経過や症状だけでは鑑別できないことが多いため,種々の検査結果を参考にして適切に診断する必要がある. -
日本では多発性硬化症と視神経脊髄炎の 急性期治療はどうあるべきか
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症(MS),視神経脊髄炎(NMO)とも,再発予防に関してはモノクローナル抗体療法など新規治療薬が追加されたり,今後追加されることが期待されているが,急性増悪期の治療はステロイドの大量療法,血液浄化療法,ヒト免疫グロブリン大量静注療法が使われるようになって久しい.有効性のエビデンスはMSに対するステロイドの大量療法を除いては十分に蓄積されておらず,その今後の蓄積や急性増悪治療薬の開発が期待される. -
日本で保険収載されている 多発性硬化症疾患修飾薬の使用のしかた
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症の疾患活動性抑制および障害進行抑制を目的とした薬剤が,疾患修飾薬である.日本ではインターフェロンb–1b および 1a,フィンゴリモド,ナタリズマブ,グラチラマー酢酸塩の5剤が保険収載されている.それぞれの作用機序と特性, 副作用に熟知し,個々の患者の疾患活動性,社会的背景やニーズを考慮して治療法を選択し,インフォームド・コンセントを取得してなるべく早期に開始することが重要 である. -
多発性硬化症の新しい疾患修飾薬の開発の現状と展望
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
米国食品医薬品局によって承認された多発性硬化症(MS)に対する疾患修飾薬は,すでに13種類に上る.また,再発寛解型MSを対象とした第Ⅲ相臨床試験の結果が公表されている薬剤には,ダクリズマブやラキニモド,オクレリズマブがある.さらに,フィンゴリモドより高い受容体サブタイプ選択性を持つ新たな薬剤の開発も進んでいる.今後は,オクレリズマブやビオチンのような進行型MSに対する治療薬の開発も期待されている. -
視神経脊髄炎の最新の治療と展望 ―抗 IL–6 受容体抗体療法を含めて―
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
抗アクアポリン4抗体発見により視神経脊髄炎の免疫病態の解明が進み,自己抗体の産生に重要なB細胞や形質芽細胞,また,急激に進行する激しい炎症に補体,好中球,好酸球の関与が大きいことが明らかになった.急性増悪期,再発抑制の標準治療に対する難治例が多いことから,これらの免疫細胞を標的にした治療薬,また,関連する分子(B細胞表面抗原,IL–6,補体)を標的にしたモノクローナル抗体療法の開発が進んでいる. -
性差学の多発性硬化症・視神経脊髄炎治療への応用
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)・NMO関連疾患(NMOSD)は,代表的な中枢神経系炎症性疾患で,女性に多い疾患である.また発症は20~40歳代で, 発症することにより,女性特有の妊娠・出産というライフスタイルに大きな影響を及ぼす.両疾患の性差には,性ホルモンが病態・発症に関与していると考えられており,治療への応用も試みられている.本稿ではMS/NMOSDにおける性ホルモンの免疫 学的機序への関与について,最近の知見を述べたいと思う. -
多発性硬化症の高次脳機能障害と 認知リハビリテーション
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症(MS)の症状は身体障害で評価されることが多いが,MSでは中枢神経系に多数の病変を呈することが特徴であり,高次脳機能障害を評価する必要がある.MSにおける高次脳機能障害は,注意・集中・情報処理といった領域が障害されやすく,それを拾い上げるバッテリーを用いることが重要である.MSにおける高次脳機能障害の治療としては,現時点で有効性が確立されているものはない.認知リハ ビリテーションはその改善が期待されるが,介入方法も多岐にわたり,評価も難しいため,今後データの蓄積が必要である. -
多発性硬化症・視神経脊髄炎の遺伝子研究の最前線
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
多発性硬化症,視神経脊髄炎関連疾患は,遺伝要因と環境要因の双方がその発症に関連する複雑疾患である.人種間で有病率が異なり,遺伝的背景の違いを反映していると考えられている.いずれの疾患もヒト白血球抗原遺伝子の多型が強く発症に関連 しており,その臨床的特徴にも影響を及ぼしている.病態の理解を目指してゲノムワイド関連解析が行われており,多発性硬化症については関連遺伝領域が多数同定されている.一方,視神経脊髄炎についてはその有病率の低さから,いまだ信頼性の高い関連解析は行われていない.現在,生物学的機能の関連性について,さまざまな側面から情報が蓄積されており,遺伝的関連解析の結果にその知識を応用することで,疾患にとって重要な機能的まとまりの抽出が試みられている.また,疾患の臨床的特徴 との関連解析が今後進むことが期待される.
-
-
【連 載】
-
-
痛みの Clinical Neuroscience(12) Functional Pain Disorder 1.口腔顔面痛
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
近年,国際頭痛学会,国際歯科学会+国際疼痛学会口腔顔面痛 Special Interest Group (OFP–SIG)が相次いで,「国際頭痛分類第3版 b 版(ICHD–3b」,「顎関節症の診断基準(DC/TMD)」を発表し,口腔顔面関連領域の疼痛性疾患の診断基準を示した.本稿では,これらの疾患分類の新定義,診断基準に照らし合わせて,口腔顔面痛,特にBMS(舌痛症含む),顎関節症,頭痛(神経血管性疼痛)について解説を行う. -
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造(15) 外側・下方からのアプローチ(4)扁桃体 扁桃体,内側嗅条,分界条,分界条床核, 視床線条体静脈,背側扁桃体出力線維路(仮称),腹側扁桃体出力線維路(仮称),ブローカ対角帯(再)
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
-
-
【トピックス】
-
-
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌の基礎と臨床
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
腸内細菌科細菌のカルバペネム系薬に対する耐性機序は,カルバペネマーゼ産生も しくは非カルバペネマーゼ型bラクタマーゼ大量産生に加えて抗菌薬透過孔の減少または欠損によるものの2種類に大別される. 2015年3月にコリスチンが,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)を含めた多剤耐性菌感染症治療薬として本邦で再承認された.予後不良であるCREによる血流感染症に対して,カルバペネム系薬を含めた併用療法の効果も着目されつつある. -
マイオカインの研究に関する最近の話題
71巻6号(2016);View Description
Hide Description
骨格筋は運動機能やエネルギー代謝調節にかかわる臓器としてだけでなく,マイオカインと総称すべき分泌因子を産生する内分泌器官としての役割も果たしていることが明らかとなってきた.近年の研究成果により,運動トレーニングによって発現制御され,代謝や心血管系に作用するマイオカインが同定されている.本稿では,心血管系に作用するマイオカインの最近の研究成果について概説する.
-
-
【今月の略語】
-
-