最新医学

Volume 72, Issue 2, 2017
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特集【オートファジーと疾患】
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- 座談会
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パーキンソン病とオートファジー
72巻2号(2017);View Description
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中脳黒質ドーパミン神経細胞の進行性細胞死を特徴とするパーキンソン病分子病態において,2003年にa–synuclein がマクロオートファジー/シャペロン介在性オートファジーの基質となることが報告されて以降,オートファジー(特にマクロオートファジー)の重要性が注目されている.さらに2008年に家族性パーキンソン病原因遺伝子産物であるparkin とPINK1 によるミトコンドリア品質管理機構マイトファジーの制御機構が明らかになり,現在もマイトファジー分子機構は複数の家族性パーキンソン病原因遺伝子産物が関与するパーキンソン病分子病態の重要なトピックとなっている.本稿では,オートファジー・マイトファジーとパーキンソン病分子病態との関連について,家族性パーキンソン病原因遺伝子研究から同定された責任遺伝子産物機能の研究,およびゲノムワイド関連解析(GWAS)に基づくリスク遺伝子産物機能についても言及し,最後にオートファジーと孤発性パーキンソン病分子病態との関連を考察する. -
オートファジー関連神経変性の分子基盤とモデル動物
72巻2号(2017);View Description
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オートファジーは,細胞内の異常なタンパク質やオルガネラを分解することで細胞内の品質管理を担っている.この作用は脳神経系において特に重要であり,最近オートファジー関連遺伝子に変異を持つヒト脳神経変性疾患が複数発見された.本稿では,それらのオートファジー関連脳神経変性疾患(パーキンソン病以外)の分子基盤について,実際のヒト疾患やモデル動物などから得られた最新の知見を交えながら概説する. -
WDR45 遺伝子変異によるオートファジー関連神経変性症SENDA/BPAN
72巻2号(2017);View Description
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小児期からの非進行性の知的障害と,成人期以降に急速に進行するジストニアおよびパーキンソン様症状,認知症を呈する疾患が,SENDA/BPAN として確立された.SENDA/BPAN は,脳に鉄沈着を伴う神経変性症(NBIA)の新たな一型で,全エクソーム解析からWDR45 の変異が原因と判明した.WDR45 は,生命に必須の細胞内分解機構であるオートファジーに重要な分子WIPI4 をコードする遺伝子である.本疾患はオートファジー機能の低下が病態に関与した疾患であり,病態の解明や進行を抑制する治療法開発への展開が必要である. -
Parkin に依存しないマイトファジー
72巻2号(2017);View Description
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マイトファジーは,オートファジーによる選択的ミトコンドリア分解機構である.パーキンソン病の原因遺伝子産物であるParkin とPINK1 は重要なマイトファジー因子であり,精力的に研究されてきた.一方で,Parkin やPINK1 がすべてのマイトファジーに必要ではなく,これらに依存しないマイトファジーの理解も重要である.ここでは,Parkin に依存しないマイトファジーに関して概説する. -
ミトコンドリアDNA の母性遺伝とオートファジー
72巻2号(2017);View Description
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ミトコンドリアDNA(mtDNA)は,多くの有性生物種において母性(片親)遺伝することが知られている.モデル生物である線虫C. elegans では,受精直後に侵入した精子ミトコンドリアとそのmtDNA がオートファジーによって選択的に分解,除去されることが,mtDNA 母性遺伝の仕組みであることが分かってきた.本稿では,ハエや哺乳類などその他の生物種での最近の知見と合わせ,精子ミトコンドリアとそのmtDNA の運命について紹介する. -
オートファジーとがん―メカニズムと治療への応用
72巻2号(2017);View Description
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オートファジーは細胞の恒常性を保つことでがんの発生を抑制する一方,さまざまな代謝ストレスに置かれたがん細胞の生存を助けることでがんの進行を促進する.また,オートファジーはさまざまな遺伝子変異によりがん細胞で促進あるいは抑制されている.現時点ではオートファジーを特異的に制御する薬剤は見つかっておらず,クロロキンとその誘導体ヒドロキシクロロキンを他の抗腫瘍療法と併用する臨床試験が種々のがんで施行されている. -
オートファジーとKeap1 – Nrf2 システム
72巻2号(2017);View Description
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オートファジーとKeap1 – Nrf2 システムは,環境ストレスに応じて発動する細胞防御機構である.前者は細胞毒性を持つ細胞内成分をリソソームで分解することで,後者は抗酸化タンパク質の遺伝子発現を誘導することで細胞を保護する.2つの経路は共通のストレスにより誘導されるが,その相互関連は不明であった.筆者らをはじめ複数のグループにより,Nrf2 の標的遺伝子産物でありオートファジーによって選択的に分解されるp62/Sqstm1 が,両経路を連携させるキー分子であることが明らかになった.本稿では,オートファジーとKeap1 – Nrf2 システムを連動させる分子メカニズムと,その破綻とオートファジー欠損マウスの表現型について紹介する. -
非小胞輸送型オートファジーとミクロオートファジー
72巻2号(2017);View Description
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リソソームにはさまざまな方法で分解基質が運び込まれる.これまでのオートファジー研究はマクロオートファジーに関するものが圧倒的に多いが,その他のオートファジーに関する研究も広がりを見せつつある.本稿では,シャペロン介在性オートファジー,近年筆者らが発見・報告した新規オートファジーであるRNautophagy およびDNautophagy,そしてミクロオートファジーについて,その疾患との関連性とともに概説する. -
細胞内病原体の増殖を制御するオートファジー機構
72巻2号(2017);View Description
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オートファゴソーム形成に関与する分子群が同定されて以来,富栄養条件下で作用する選択的オートファジー機構が,種々の細菌およびウイルスの細胞内増殖に関与していることが明らかになってきた.本稿では,これら細胞内病原体とオートファゴソームの直接的な相互作用から,自然免疫機構,細胞内ストレス応答などを介した間接的な相互作用まで,代表的な細菌感染とウイルス感染を例に挙げて解説する. -
オートファジーと自然免疫応答
72巻2号(2017);View Description
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オートファジーは多くの免疫学的機能を持つが,その1つが自然免疫応答の制御である.オートファジーは,インフラマソームの活性化を抑制することでIL–1b などの炎症性サイトカインの分泌を抑制する.また,Ⅰ型IFN 応答をも抑制する.一方で,オートファジーには非定型分泌経路を介してIL–1b 分泌を促進する作用もある.このようにオートファジーは炎症反応を多様に制御しているが,その精密な制御機構や病気とのかかわりが解明されつつある.本稿では,オートファジーによる自然免疫の制御機構を概説しつつ,疾患との関連について議論する. -
LAP(LC3–Associated Phagocytosis)―オートファジー因子を用いる特殊なファゴサイトーシス―
72巻2号(2017);View Description
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一部の特殊なファゴサイトーシスにおいて,LC3 を含む幾つかのオートファジー因子がリクルートされる.これをLC3–associated phagocytosis(LAP)と呼ぶ.LAPは微細形態学上および分子メカニズムによりオートファジーと区別される.LAP は細胞外物質の効率的な分解,抗原提示,免疫反応の調節などに深くかかわっていると考えられ,自己免疫疾患との関連からにわかに注目を集めている.本稿ではLAP の発見,分子メカニズム,生理学的意義を概説する. -
病原性原生生物におけるオートファジー関連因子の保存性とその多様な機能
72巻2号(2017);View Description
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単細胞真核生物(原生生物)に対するゲノム情報の蓄積により,真核生物におけるオートファジー関連(Atg)因子の奇妙な保存様式が明らかにされた.本稿では,病原性原生生物を中心にAtg 遺伝子の保存様式とその機能を紹介するとともに,マラリア原虫類で明らかにされつつあるAtg 因子群の予想外の機能について議論したい.オートファジーの起源や多様性を理解するうえで,原生生物が持つAtg 因子群の機能解析は重要である. -
オートファジーと代謝
72巻2号(2017);View Description
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オートファジーはタンパク質だけでなく,脂肪や炭水化物の代謝にもかかわっている.特に脂肪の分解はリポファジーと呼称され,細胞質内のリパーゼによる分解とは独立した代謝過程になっている.非アルコール性脂肪肝炎では,Rubicon の発現上昇によりオートファジーの後期過程が抑制されている.Rubicon によるオートファジーの抑制は,脂肪蓄積を増強するとともに肝細胞アポトーシスを促進することから,新たな治療標的になる可能性がある.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(20) 慢性疼痛の認知行動療法
72巻2号(2017);View Description
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慢性疼痛は,うつ病と同様に国民に多大な経済的損失をもたらしている.慢性疼痛への治療は薬物療法を中心とした医療的介入が主流であるが,近年,有効な介入法として認知行動療法(CBT)が注目されている.CBT は痛み自体よりも痛みに対する反応(認知,感情,行動,身体)に介入する.反応を客観的に観察し,悪循環を見つけ,認知,または行動変容よりその悪循環を改善する.患者は痛みに奪われた統制を取り戻すことで回復に至る. -
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造(23) 大脳半球内面からのアプローチ(2) 大脳半球外側壁の白質区画―大脳半球外側壁の分離,島葉壁内面のGAT[外包,島周囲束(仮称),前障と下前頭後頭束・鈎状束,ジェンナリ線条],前頭葉・頭頂葉壁内面のGAT,島葉の脳回・脳溝の配置―
72巻2号(2017);View Description
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【今月の略語】
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