最新医学

Volume 72, Issue 3, 2017
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特集【ゲノム解析に基づく固形がん個別化治療】
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- 座談会
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ゲノム解析に基づく固形がん個別化治療の現状およびPrecision Medicine 実現に向けた将来展望
72巻3号(2017);View Description
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- 論説
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- 臓器別個別化治療
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肺がんのPrecision Medicine
72巻3号(2017);View Description
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がんのゲノム解析研究が進むことにより,直接的な発がん原因遺伝子が次々と同定され,それらに対応した分子標的薬の開発・実用化がもたらされた.かつては共通の化学療法で治療されていた肺腺がんも,ゲノム診断をしたうえで最適の薬剤を選択する時代になったのである.こうしたPrecision Medicine は肺がんにおいて最も進んでおり,網羅的遺伝子診断と合わせてがんの医療システムそのものが大きく変わろうとしている. -
個別化治療に向けた肝臓がん・胆道がんのゲノム解析
72巻3号(2017);View Description
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大規模ゲノム解読により,肝がんの新規ドライバー遺伝子としてTERT 遺伝子が,胆道がんではIDH1/2 やFGFR 融合遺伝子,BRCA1/2 といった治療標的となるゲノム異常が同定された.また免疫チェックポイント阻害薬についても,分子マーカーによる層別化によっては著効する可能性が期待される.こうした分子標的・免疫治療薬の適応においては,各標的分子のゲノム異常により症例を層別化する必要があり,個別化治療に向けたゲノム診断が今後重要である. -
乳がんにおけるPrecision Medicine
72巻3号(2017);View Description
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乳がんは,遺伝子プロファイリング技術により,Intrinsic subtype 分類(luminal A,luminal B,HER2–enriched,basal–like,normal breast–like)の概念が薬剤選択の基本となっている.最近では,分子標的薬も各種(抗PI3K 阻害薬,mTOR 阻害薬,抗VEGF 抗体,HDAC 阻害薬,CDK4/6 阻害薬,PARP 阻害薬など)開発されている.今後は,患者検体を用いて治療標的となり得る遺伝子異常を横断的に診断するクリニカルシークエンスによって,より高い精度で治療効果を有する薬剤を選択することが期待される. -
網羅的遺伝子解析がもたらす胃がん個別化治療の可能性
72巻3号(2017);View Description
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The Cancer Genome Atlas による大規模な網羅的遺伝子解析により,胃がんは4つの分子サブタイプに分類されることが示された.本邦からはがん遺伝子パネルを用いた解析結果が報告された.今後は治療選択における分子サブタイプの意義を明らかにする必要がある.また,がん遺伝子パネルの臨床的な有用性を明らかにすることも重要であり,その先に胃がん個別化治療の新たな展開が期待される. -
婦人科がん領域におけるがんゲノム解析と個別化治療
72巻3号(2017);View Description
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The Cancer Genome Atlas(TCGA)は,婦人科三大悪性疾患である卵巣がん,子宮体がん,子宮頸がんの統合ゲノム解析を完了している.疾患当たり約500 例を対象とした大規模研究であり,その結果は百科事典的にまとめられている.しかし実際に個別化治療を考えると,統合ゲノム解析の結果が婦人科の実臨床に応用された例はいまだなく,橋渡しがうまくいっているとは言えない.本稿では,ゲノム解析の結果から実臨床に応用可能な情報を抽出し,整理することとする. - 日本の現状
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SCRUM–Japan ―がん治療開発を指向した産学連携臨床ゲノムデータシェアリングの取り組み―
72巻3号(2017);View Description
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がん分子標的療法の開発のためには,細分化する患者集団に合わせた大規模なゲノムスクリーニングが必要である.国内200 以上の医療機関と15 の製薬企業が参加して数千例規模の進行肺がん,消化器がん症例の標的遺伝子変異を検索し,各種の治験に導出するSCRUM–Japan は,世界的にもユニークな試みとして注目されている. -
がん遺伝子診断外来―院内完結型網羅的がん遺伝子検査(CLHURC 検査)を用いたクリニカルシークエンスの臨床応用―
72巻3号(2017);View Description
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がん遺伝子解析に基づく個別化治療(Precision Medicine)は,がんに対する新たな治療戦略として注目されている.現在,その有用性を検証する多くの臨床試験が実施されているが,すでに欧米では日常臨床に導入されつつある.北海道大学病院では2016年4月より,本邦初の院内完結型がん遺伝子診断専門外来を開設し,医療サービスとしての網羅的がん遺伝子検査を実践している.本稿では我々の取り組みを紹介する. -
クリニカルシークエンスの臨床実装―臨床的解釈と治療への応用―
72巻3号(2017);View Description
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我が国では,クリニカルシークエンスの精度管理や実施体制の整備がまだされておらず,臨床現場における運用に関してはまだ始まったばかりである.当院では,我が国で初めて精度管理されたクリニカルシークエンスをがん医療に臨床実装するとともに,その結果に基づいた治療も実施している.本稿では,がんクリニカルシークエンスの臨床実装における結果の解釈と治療への応用に関して解説する. -
セントラルIRB を生かした多施設ゲノム解析 スクリーニングと個別化治療の確立
72巻3号(2017);View Description
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臨床研究を行う際は倫理審査が必須である.しかし,臨床研究件数の増加とともに倫理審査委員会の負担が増大しており,倫理審査委員会の集約化,すなわちセントラルIRB の必要性が高まってきた.一方で,個別化治療のさらなる発展のためゲノム医療に期待がかかるが,その実現には多施設による大規模なスクリーニングも必要となる.限られたリソースの有効活用が必須である現在,セントラルIRB がゲノム医療に果たす役割は大きい. - 米国の現状
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米国におけるPrecision Medicine―NCI–MATCH の進捗,Foundation Medicine の現状,Circulating
72巻3号(2017);View Description
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米国では,国立がん研究所(NCI)が中心に,がん領域におけるPrecision Medicine の実現可能性をみる大規模な臨床試験(NCI–MATCH)が開始されており,国家をあげたPrecision Medicine への取り組みがなされている.さらにFoundation Medicine 社のようなベンチャー企業が遺伝子解析サービスを大規模に行っており,これをもとに民間レベルでも急速にPrecision Medicine が普及している.検査の技術も確実に進歩しており,血漿由来のcirculating tumor DNA を用いたcapture–based target next generation sequencing(NGS)が,既存の腫瘍検体を用いたNGS に数年後には置き換わる勢いである. -
MicroRNA の乳がん個別化治療への応用
72巻3号(2017);View Description
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2000年代以降,乳がんのマイクロアレイ解析などによるゲノムDNAレベルでのサブタイプ分類は,その診療を一変させた.近年,タンパク質をコードしない非コードRNA の中でも,特に22塩基以下からなるmicroRNA が生体で重要な機能を果たしていることが明らかになり,さまざまな疾患で注目されている.乳がんにおいてもmicroRNA に関する報告は2005年以降増えており,今後さらなる解明が必要な分野の1つである.本稿では,特に乳がんにおけるmicroRNA 研究の現状とmicroRNAを用いた個別化治療の可能性について,今後の展望を踏まえて概説する. - 将来展望
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クリニカルシークエンスにかかわる日米の医療制度比較
72巻3号(2017);View Description
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近年,がん患者の網羅的遺伝子解析,いわゆるクリニカルシークエンスが行われるようになってきた.しかしながら,検査の品質保証や薬剤へのアクセス,また遺伝学的検査の結果による差別などの問題にどのように対処していくのかは,現在議論されている状況である.これらの点に,クリニカルシークエンスをいち早く手掛けている米国ではどのように対処しているのかまとめてみたい. -
Precision Medicine の実現に向けたバイオインフォマティクスの役割と提言
72巻3号(2017);View Description
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次世代シークエンサーの登場により,がん細胞の持つ変異を網羅的に決定することができるようになった.このがんゲノム分野では,DNA の処理から変異の検出,その意味づけに至るまで計算機が多用される.これらの計算機での解析全般を担うバイオインフォマティクスという分野は,今後の医療を大きく変えようとしているPrecision Medicine の実現において,非常に重要な役割を担う. -
Precision Medicine の医療費を考える―ゲノム解析に基づく個別化治療の費用対効果分析―
72巻3号(2017);View Description
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がん診療におけるPrecision Medicine の導入は,治療効果が期待できる患者とそうでない患者を高い確度で治療前に予測できるという点で,画期的な医療と言える.本稿では,こうした治療選択による国民医療費の削減額を定量的に評価する試みを例示した.また,進行大腸がん患者の費用対効果分析をマルコフモデルにより行い,QOL を考慮した延命にかかる費用を推定した.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(21) 痛みを中心にした感覚情報処理と精神機能およびその障害
72巻3号(2017);View Description
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感覚と精神機能・精神障害との関係について,痛覚をテーマに概観した.感覚情報は末梢神経と中枢,精神機能を結びつけ,双方向に影響し合っている.その中でも痛覚は他の感覚と異なり,第一次感覚野が明らかにされていないなどの特徴を有している.また,痛みの分類では,脳機能障害や心理的要因による修飾という新しい分け方を述べ,さらに機能性障害としての慢性痛をどうとらえるべきかという考え方についても示した. -
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造(24, 最終回) 大脳半球内面からのアプローチ(3) 大脳半球外側壁の白質と灰白質の配置
72巻3号(2017);View Description
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【トピックス】
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SGLT2 阻害薬の最新の話題
72巻3号(2017);View Description
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SGLT2 阻害薬は腎からの尿糖排泄促進というユニークな作用機序を持つ糖尿病治療薬であり,血糖降下作用のほか,体重減少,血圧低下作用などの多面的効果を併せ持つ.心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者にエンパグリフロジンを標準治療に上乗せしたEMPA–REG OUTCOME 試験において,エンパグリフロジンは複合心血管イベントを14%,腎症の新規発症・増悪を39% それぞれ有意に減少させ,その臓器保護効果および機序に注目が集まっている. -
新規転写伸長制御因子Med26 の腫瘍性疾患への関与
72巻3号(2017);View Description
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遺伝子発現の制御機構の破綻は,がんや白血病などの腫瘍性疾患を引き起こす要因となる.最近,腫瘍関連の多くの遺伝子領域で,RNA ポリメラーゼⅡが転写開始後に一時停止しており,その一時停止が転写伸長因子によって解除され,腫瘍関連遺伝子の発現が促進されることが,腫瘍発症要因の1つであることが分かった.本稿では,転写伸長制御因子Med26 が腫瘍性疾患の発症メカニズムにどのようにかかわるのかについて述べる. -
ロボットスーツHAL による神経難病のリハビリテーション
72巻3号(2017);View Description
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ロボットスーツHAL は,生体電位駆動型の装着型ロボットであり,治験において緩徐進行性の神経・筋難病8疾患に対するHAL による歩行運動療法の有効性が証明され,新規の医療機器として承認され,2016年9月よりHAL 医療用下肢タイプの運用が開始された.HAL を安全に,より効果的に使用するためには,HAL の動作原理を理解し,添付文書や適正使用ガイドを参照しながら適切に使用する必要がある.また,将来的には治療薬との複合療法により,効果を最大化していくことが期待される.
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【今月の略語】
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