最新医学

Volume 72, Issue 6, 2017
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特集【パーキンソン病-進化する診断と治療-】
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- 座談会
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- 基礎
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大脳基底核の機能とドパミン神経の役割
72巻6号(2017);View Description
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大脳基底核は,大脳皮質からの入力を線条体で受け,望ましい入力と望ましくない入力を取捨選択する機能を担っている.大脳基底核は運動機能だけではなく連合機能や情動機能も担っており,ドパミンの低下は運動症状のみならず意欲低下や不安などの非運動症状の一因となっている.報酬刺激によって生じる一過性のドパミン放出は直接路の賦活により報酬学習を成立させるが,忌避刺激によるドパミン放出の一時的な抑制は間接路の賦活により忌避学習を成立させる. -
パーキンソン病の動物モデル
72巻6号(2017);View Description
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治療法の開発に,優れたモデル動物は欠かせない.パーキンソン病において古典的な毒物モデルは対症薬の開発に大きな役割を果たしてきた.近年,疾患修飾療法を視野に入れた疾患モデルが作製されており,本稿では家族性パーキンソン病遺伝子に基づいた遺伝子改変モデル,さらには最近開発されたa シヌクレイン伝播モデルまでを,その特徴・用途とともに概説する. -
αシヌクレイン細胞間伝播と疾患修飾療法
72巻6号(2017);View Description
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パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患において,従来,異常凝集タンパク質の蓄積とこれに続く神経変性は,個々の神経細胞においてそれぞれ独立して起こるものと推定されてきた.一方,異常凝集タンパク質がプリオンのように細胞間を伝播し病変を拡大させるという細胞非自律的な病態機序が近年提唱され,病態概念が大きく変化してきている.プリオン様伝播は疾患修飾療法のターゲットとしても注目を集めている. -
iPS 細胞を用いたパーキンソン病研究
72巻6号(2017);View Description
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人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いた疾患研究は,患者の生体内の変化を実験室内で知るために有用な手法である.現在,神経疾患を中心にiPS 細胞を用いた研究報告数が増加している.本稿では,iPS 細胞を用いたパーキンソン病研究を中心に述べる. - 診断
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パーキンソン病の臨床診断の精度向上のためのSPECT 検査
72巻6号(2017);View Description
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パーキンソン病と臨床診断されている患者が病理学的にもパーキンソン病であるのは,発症5年以内の早期例ではおおむね8割から9割程度ではないかと推測される.本稿では,パーキンソン病の臨床診断の精度を向上させるために一般的に用いられている画像検査の中で,123 I‒ioflupane と,123 I‒meta‒iodobenzylguanidine(MIBG)を用いた核医学検査について概説する. -
Movement Disorder Society の新たな診断基準―パーキンソン病とProdromal Parkinson’s Disease―
72巻6号(2017);View Description
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パーキンソン病の世界標準である英国パーキンソン病協会ブレインバンクの臨床診断クライテリアをはじめ,既存の診断クライテリアは策定からの時間がたち,近年のエビデンスと整合性がとれない事象が増えてきた.Movement Disorder Society は2014年に診断クライテリアの見直しを提案し,2015年に新たな臨床診断クライテリアを公表した.同時に,運動症状出現以前のパーキンソン病,すなわちprodromal Parkinson's disease に対するリサーチクライテリアも公表した.進化するパーキンソン病の新たな臨床診断の幕開けである. -
日本におけるパーキンソン病 リスクコホート研究: J‒PPMI
72巻6号(2017);View Description
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パーキンソン病の疾患修飾療法を見据えて,パーキンソン病等シヌクレイノパチーの強いリスク集団であるREM 睡眠行動障害(RBD)患者を対象とした多施設共同前向きコホート研究を実施中である.ドパミントランスポーター(DAT)SPECT,脳MRI,運動機能および心理機能の経年評価とともに血液・髄液等の採取を進め,長期経過観察により,運動症状発症前の細胞変性の経過とそのバイオマーカーを明らかにする. - 治療
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新しい薬物治療
72巻6号(2017);View Description
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パーキンソン病の治療はL‒ドパが臨床応用され進歩したが,その半減期が短いことや早晩ジスキネジアやウェアリングオフなどの運動合併症が出現することが課題である.運動合併症予防にはドパミンの持続的投与・受容体刺激が重要であり,血中濃度の安定するドパミンアゴニストが開発された.ドパミンの分解を抑制するMAO‒B阻害薬,COMT 阻害薬やその合剤,L‒ドパ・カルビドパ経空腸的持続投与も可能となり,ドパミンの薬効安定に貢献している.本邦では非ドパミン薬も上市され,ドパミン抵抗性の症状や神経保護効果が期待される.将来的には疾患修飾薬が望まれるが,本稿では今後の新規薬剤の展望も含めて概説する. -
脳深部刺激療法(DBS)―最近のトピックス―
72巻6号(2017);View Description
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パーキンソン病の治療法として,L‒ドパを含めた薬物治療とともに,可逆的な機能的外科治療である脳深部刺激療法(DBS)が有効とされている.パーキンソン病におけるDBS のターゲットには,主に視床下核(STN)と淡蒼球内節(GPi)があり,どちらも運動合併症に対して効果がある.DBS は長期の薬物治療による進行期のウェアリングオフやジスキネジアといった運動合併症や一部の非運動症状にも有効で,生活の質(QOL)を保つことも可能である. -
遺伝子治療
72巻6号(2017);View Description
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脳内で遺伝子を安全に長期間発現できるウイルスベクターを使用して,遺伝子治療の臨床研究が実施されている.① ドパミン合成にかかわる酵素の遺伝子を被殻に導入する方法,② 抑制性神経伝達物質GABA の合成酵素の遺伝子を視床下核に導入する方法,③ 神経栄養因子の遺伝子を被殻に導入する方法,という3 種類のプロトコールがある.このうち,被殻でドパミン合成を行う方法は運動症状の改善が期待できる. -
パーキンソン病に対する細胞移植治療
72巻6号(2017);View Description
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現在のパーキンソン病に対する主な治療である薬物療法,脳深部刺激療法では,障害された中脳ドパミン神経細胞自体を修復することはできない.失われたドパミン神経細胞を補充する治療として,細胞移植治療の研究が進められている.近年,iPS 細胞は細胞移植治療の細胞源として注目されており,臨床応用に向けた研究が進められている. -
デュオドーパ®
72巻6号(2017);View Description
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高齢化社会の進展とともにパーキンソン病患者数は増加を続け,さらに抗パーキンソン病薬による良質な治療の普及によって「進行期パーキンソン病」患者は今後も増加が見込まれる.神経内科医は,進行期パーキンソン病患者に対して,適切なデバイス補助療法の適応を判断し,専門医への紹介を行うことが求められる.本稿では,2016年9月に本邦で新たに上市された,デバイス補助療法の1つデュオドーパ®について,その背景とともに紹介する. -
ニューロリハビリテーション
72巻6号(2017);View Description
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大規模疫学研究により,活動度が高い群でのパーキンソン病発症リスクが逓減することが明らかである.リハビリテーションや運動での介入でパーキンソン病患者の運動機能改善が報告されている.機序としては,BDNF 等の環境因子と神経可塑性の改善が示唆される.また,自己運動認知の改善を図るLSVT も広く実施されている.パーキンソン病リハビリテーションには,認知機能への影響,効果残存期間,有効な種目,強度,頻度等,解明すべき課題がある.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(24) 気象痛
72巻6号(2017);View Description
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慢性痛が低温や低気圧などの気象要素の変化で悪化することを「気象痛」と言う.筆者は,人工的な低気圧と低温に曝露すると慢性痛モデル動物の痛み行動が増強し,慢性痛罹患者では天気の崩れで訴える症状が再現することを実証してきた.また,低温で痛みが増強するのは温度受容器が過敏になることが原因であり,気圧変化で痛みが増強するメカニズムには内耳の気圧検出システムが関与することを明らかにした.さらに,慢性痛では気象変化に対する自律神経系のストレス反応が亢進していることが原因の1 つであることも示唆した. -
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【トピックス】
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2型自然リンパ球によるアレルギー制御
72巻6号(2017);View Description
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多くのアレルギー性疾患はこれまで,ヘルパーT 細胞であるTh 2 細胞を介した獲得免疫が重要な役割を果たすと考えられ,さまざまな研究が行われてきた.しかしながら近年,自然免疫に働くリンパ球(innate lymphoid cell:ILC)の1つである2型自然リンパ球(group 2 ILC:ILC 2)の重要性が明らかになったことで,アレルギー性疾患におけるILC 2 の役割が注目されてきている. -
CTOS 法を用いた大腸がん細胞培養と医療応用
72巻6号(2017);View Description
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我々が開発したCTOS 法は,細胞-細胞間接着を維持したままスフェロイドを調製・培養する方法で,大腸がんのがん細胞の培養に適している.従来の樹立がん細胞株にない患者がんの特性,特に分化型腺がんの特徴を保持していることから,極性転換など新たな標的の発見や,抗体薬の開発など新たな創薬のプラットフォームになる可能性がある.腫瘍から大量にCTOS を調製できることから,初代培養細胞を用いた薬剤スクリーニングにも応用できる.
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【今月の略語】
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