最新医学

Volume 72, Issue 7, 2017
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特集【重症喘息-基礎から臨床まで-】
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- 座談会
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重症喘息の診断基準と病型分類
72巻7号(2017);View Description
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重症喘息についてはいまだ統一された定義はないが,本稿ではWHO,日本の喘息予防・管理ガイドライン2015 そしてERS/ATS のガイドラインにおけるそれぞれの定義について概説する.また近年,喘息は病態,臨床所見,治療に対する反応性などに多様性があることが言われているが,それを説明する概念であるフェノタイプ(表現型)分類が盛んに検討されるようになった.執筆の時点ではそれぞれのフェノタイプに対して行われる適切な治療は確立されていないが,将来的にはエンドタイプも交えて喘息の多様性をより正確に分類し,喘息の予防,治療,その反応性などの臨床応用につなげていくことが望まれている. -
重症喘息のバイオマーカー
72巻7号(2017);View Description
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吸入ステロイドや他の長期管理薬で管理不十分な重症喘息には,個々の病態に応じた治療が望まれる.最も病態解析が進んでいる2 型/好酸球性炎症のバイオマーカーには,喀痰・血中好酸球,呼気一酸化窒素,血清ペリオスチンなどがある.これらは個別でも活用できるが,組み合わせることで重症例をより的確に抽出できる.非2型重症喘息のマーカーは,探索段階ではあるが,肥満・易感染型などに関連した分子が注目される. - 喘息重症化因子
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1.ウイルス
72巻7号(2017);View Description
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喘息増悪の原因として最も頻度が高いのがウイルス感染である.喘息患者はウイルスに感染しやすいことが知られ,インターフェロンなどの抗ウイルスサイトカインの産生不全がその原因と考えられている.一方で,ウイルスの種類による喘息に対する関与の違いも報告されており,ライノウイルスではアレルゲン感作と相乗作用があることが明らかとなっている.また,ライノウイルスではA型とC型ライノウイルスが病態を悪化させやすいなど,種による違いも示唆されている. -
2.真菌
72巻7号(2017);View Description
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多くの疫学研究により,真菌が喘息の難治化因子であることは明らかである.正確な数は不明であるが,アレルギー患者の真菌の感作率は高く,今後も増加していくと考えられる.真菌の中には,アスペルギルス属やアルテルナリア属のように,特に喘息と関連が強い真菌が存在する.真菌感作重症喘息の治療として,通常の喘息治療に加えて抗真菌薬や坑IgE 抗体の有効性が示唆されているが,本邦における前向き研究が必要である. -
3.肥満
72巻7号(2017);View Description
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肥満は,気管支喘息の病態に影響を及ぼす重要な要因の1 つであるが,その影響は症状,呼吸機能,炎症等さまざまな機序が推定される.本邦は欧米と比較し肥満者の割合が低いが,一方で日本人は肥満に弱いという考えもあり,本邦での独自の検討が重要である.また,肥満が喘息炎症に与える影響は一方向性ではなく,肥満喘息患者全体に対する共通のアプローチはなく,個々による肥満が喘息病態に与える影響を慎重に考慮する必要がある. -
4.喫煙(Asthma‒COPD Overlap)
72巻7号(2017);View Description
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喘息患者においても喫煙率は高い.喫煙は喘息発症のリスクを高め,喫煙継続で呼吸機能が悪化し,治療コントロール不良となる.喫煙喘息患者ではステロイド耐性が生じているが,機序としてヒストン脱アセチル化酵素抑制などが報告されている.禁煙はこのステロイド耐性を解除する.幼少期に発症した喘息患者が喫煙を続けると慢性閉塞性肺疾患(COPD)を併存してくるが,長期喫煙COPD 患者で40 歳以降に喘息が発症してくることもあり,予後不良である. - 重症喘息関連疾患
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1.アスピリン喘息
72巻7号(2017);View Description
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アスピリン喘息の主病態はシステイニルロイコトリエン(CysLTs)過剰産生であるが,その機序は完全には解明されていない.アスピリン喘息患者の上下気道に集簇した好酸球やマスト細胞がCysLTs の主要産生細胞とされているが,血小板や好塩基球もCysLTs 過剰産生に関与している可能性がある. -
2.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
72巻7号(2017);View Description
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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は,アレルギー疾患を背景に末梢血好酸球増多を伴う全身性壊死性血管炎である.喘息治療経過中に発症することが多いが,早期診断は難しいことも多い.また,治療開始後に新たな臓器障害が出現することがあること,一度寛解した後も再燃することがあるため管理が難しい疾患である.診断後は早期治療導入を行い,ステロイド,免疫抑制薬治療後も十分に改善しない多発単神経炎や心病変に対してはIVIG を考慮する必要がある. -
3.好酸球性副鼻腔炎(分子病態を含めて)
72巻7号(2017);View Description
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重症気管支喘息に合併する代表的な疾患として,好酸球性副鼻腔炎が挙げられる.これは2000年頃に提唱された新しい概念の難治性副鼻腔炎であり,治療に難渋している.2015年,多施設共同研究のJESREC Study によって診断基準と重症度分類が決定され,臨床で広く使用されるようになった.好酸球性副鼻腔炎は,原則Th2 関連疾患と考えられ,抗体治療が国際共同治験として始められつつある.一方で,凝固系と線溶系のアンバランスが鼻茸形成の原因とも報告されている. - 重症喘息の新規治療
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1.抗IgE 抗体
72巻7号(2017);View Description
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抗IgE 抗体のオマリズマブは,血液中のIgE がマスト細胞,好塩基球,好酸球などの炎症細胞表面上へ結合することを阻害することによって薬理効果を発揮する.実臨床では,従来の喘息治療を十分に実施してもコントロールが不良のアトピー型喘息に対して使用される.その有効性は約6割程度と考えられる.投与開始後は16週間を目安に,自覚症状,増悪頻度,呼吸機能などを指標に複合的に効果判定し,継続治療を検討する. -
2.抗IL‒5 抗体
72巻7号(2017);View Description
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IL‒ 5 は,喘息で見られる好酸球性気道炎症の重要な調節分子である.その産生細胞は主としてTh2 細胞であるが,2型自然リンパ球の関与も注目されている.抗IL‒ 5 抗体は,通常の治療で好酸球性気道炎症が制御し得ない重症喘息に対して,急性増悪の減少,1秒量の改善,ステロイド投与量の抑制,QOL の改善効果などを示す.抗IL‒ 5 抗体療法は,好酸球性炎症型の重症喘息における,特異性が高くかつ効果的な治療として,その普及が期待される. -
3.抗IL‒4/IL‒13 薬
72巻7号(2017);View Description
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IL‒ 4 とIL‒ 13 は,喘息の病態に中心的な役割を担っているタイプ2 サイトカインである.両者の受容体やシグナル伝達経路は共通性が見られ,生物活性も類似している.IL‒ 4 /IL‒ 13 は活性化されたCD 4陽性ヘルパーT 細胞のTh 2 サブセット(Th 2細胞)から産生され,2型自然リンパ球(ILC 2)もIL‒ 13 を産生する.IL‒ 4 はTh 2細胞の分化を促進し,B 細胞に作用してIgE へのクラススイッチを誘導する.IL‒ 13は気道上皮における杯細胞過形成,気道粘液の産生,気道過敏性亢進に関与する.IL‒ 13 /IL‒ 4 をターゲットにした抗IL‒ 13 抗体や抗IL‒ 4 受容体抗体などの喘息治療薬が開発され,臨床試験でも呼吸機能の改善などその有効性が示されつつある.ただし,これらの薬剤はすべての喘息患者に有効性を示すわけではなく,バイオマーカーによってその効果が予測できる可能性も示されている.従来の治療に抵抗性を示す重症喘息症例に対する個別化・層別化治療に道を開く第一歩であるとともに,フェノタイプやエンドタイプの理解につながる可能性がある. -
4.気管支サーモプラスティ
72巻7号(2017);View Description
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気管支サーモプラスティは,重症気管支喘息に対する治療の1つの選択肢として登場し,普及が進んでいる.温熱負荷によって気管支平滑筋を減少させてしまうという画期的な治療法であるが,その有用性や安全性が十分に確立した治療法ではないため,熟練した気管支鏡専門医と喘息治療の豊富な経験を持つアレルギー専門医の協力のもと,慎重に施行する必要がある.本稿では,本法の原理からこれまでの臨床成績,施行の実際と注意点,問題点を整理してみた.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(25) Sensori‒motor Integration と痛みの慢性化
72巻7号(2017);View Description
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ヒトは,四肢運動に伴う運動系と感覚系の情報伝達を常に中枢神経系でモニターし,これを知覚-運動ループと呼ぶ.健常状態では知覚-運動ループが整合されているが,知覚-運動ループの整合性が破綻すると,その異常に対する警告として痛みが中枢神経系で起こる(認知される)と考えられている.幻肢痛に対する鏡療法を例に,知覚-運動ループの破綻とその統合による神経リハビリテーションの鎮痛機序を考察する. -
ノーベル賞と医学の進歩・発展(46) コレステロール代謝と関連疾患 —Brown 博士,Goldstein 博士のノーベル生理学・医学賞受賞まで〜受賞後—
72巻7号(2017);View Description
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【トピックス】
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多発性内分泌腫瘍症のガイドラインの活用
72巻7号(2017);View Description
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多発性内分泌腫瘍症(MEN)は,複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成を生じる常染色体優性遺伝性疾患であり,その診療においては幾つかの課題が存在する.より円滑で見落としなく,かつ患者・家族の便益となる診療を実現するために,診療ガイドラインが作成されている.本稿ではその概要を紹介する. -
IgG4 関連膵・胆管炎の疾患スペクトラム
72巻7号(2017);View Description
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IgG 4 関連疾患は,過去10年間で精力的に研究され,臨床的な全体像はほぼ明らかとなった.さまざまな罹患臓器の中で膵臓が最も高頻度に侵され,胆管炎は膵炎と密接に関連して発生する.胆膵領域のIgG 4関連疾患は2型自己免疫性膵炎,原発性硬化性胆管炎,膵胆道がんと鑑別を要し,臨床像,画像所見,病理検査によりこれらの病態と区別することができる.IgG4 関連疾患のoverdiagnosis を避けるためには,本疾患を正しく理解することが重要である.
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【症 例】
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【今月の略語】
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