最新医学
Volume 72, Issue 9, 2017
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特集【ここまで変わったC 型肝炎の治療】
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- 座談会
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HCV のライフサイクルとDAA の作用機序
72巻9号(2017);View Description Hide Descriptionレプリコン,感染性クローン等によりHCV 研究は急速に発展し,治療もDAA により非常に高い著効率が見られている.一方,ウイルス学的著効(SVR)後も発がんが報告されており,電顕にて長期にわたってオルガネラ異常が観察されることから,筆者らは電顕病理学的に「SVR 後症候群(post‒SVR syndrome)」と言える病態を見いだしている.HCV の生活環の研究は新たな薬剤の開発だけでなく,SVR 後の病態解明にもつながるものと期待できる. -
我が国におけるC 型肝炎治療ガイドライン
72巻9号(2017);View Description Hide Description日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会では,2012年以来C 型肝炎治療ガイドラインを作成している.2017年6月現在,第5.4版が最新版であり,ゲノタイプ1型・2型それぞれに対して治療推奨を行い,治療不成功例,腎機能障害・透析例,B型肝炎共感染例などについての治療方針も記載している.今後も新規薬剤の発売に合わせてアップデートする予定であり,日本肝臓学会のホームページで最新版を確認いただければ幸いである. - DAA 治療の現況と展望
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1.ゲノタイプ1 型のC 型肝炎
72巻9号(2017);View Description Hide Descriptionゲノタイプ1型のC型肝炎に対するIFN フリーDAA 治療による著効率は,いずれも95% を超える時代となった.これにより,IFN フリーDAA 治療は抗ウイルス療法の第1選択となり,非代償性肝硬変を除くC型肝炎のすべてが治療症例となった.さらに新規治療薬の開発が進んでおり,今後,非代償性肝硬変症例やDAA 治療失敗例に対してもウイルス排除が期待できる. -
2.ゲノタイプ2型のC型肝炎
72巻9号(2017);View Description Hide Descriptionゲノタイプ2型に対するDAA によるIFN フリー治療として,ソホスブビル+リバビリン併用療法とオムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル配合剤+リバビリン併用療法が登場し,治療対象が拡大し,ウイルス排除率も格段に向上した.しかしながら,これらのレジメンはリバビリンを含んでいるため,リバビリンが使用できない症例や,腎障害のある症例では選択肢とならないため,次世代治療薬の登場が待たれる. -
3.パンゲノタイプDAA 治療
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionC型肝炎ウイルス(HCV)に対する治療薬は,近年飛躍的に進歩してきている.最近発表されたHCV ゲノタイプ1 型から6型まで広範な効果を認めるパンゲノタイプのDAAs 治療の成績を述べる.グレカプレビルとピブレンタスビル治療およびソホスブビル,ベルパタスビル,ボキシラプレビル治療,いずれにおいても高い有効性を認めた.今後,C 型肝炎治療の新しい治療法として期待される. - Unmet Needs への挑戦
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1.腎不全患者の治療
72巻9号(2017);View Description Hide Descriptionウイルスタンパク質を直接的にターゲットとしたDAAs の急速な開発により,今までUnmet Needs であった透析症例を含む高度腎機能障害患者に対しても,安全に高い治療効果を持って治療が可能であることが報告されつつある.インターフェロン治療が中心であった時代と大きな変化を迎えた腎機能障害合併慢性C型肝炎患者に対する治療の進歩を概説する. -
2.非代償性肝硬変に対するDAA 治療
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionC型肝炎の非代償性肝硬変に対する抗ウイルス治療は確立されていない.最近,DAA による治療の臨床試験が欧米より一部報告され,本邦でも非代償性肝硬変に対するDAA 治療の臨床試験がようやく始まろうとしている.欧米ではC型慢性肝炎よりやや低い著効率との報告ではあるが,早急に本邦でのDAA 治療を確立する必要がある. - 治療効果を規定する要因
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1.薬剤耐性ウイルスの成立機序とその対策
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionDAAs 療法の治療効果を規定するresistance‒associated substitutions(RASs)として,NS3 領域D168V 変異,NS5A 領域L31M/V 変異とY93H 変異,NS5B 領域S282T 変異が挙げられる.特に,NS5A‒Y93H 変異は約20% の頻度で存在しており,治療開始前に同変異の有無を評価することが重要である.また,RAS を有する症例で抗ウイルス療法を開始すると治療不成功となるばかりか,ウイルスの排除が得られなかった場合に新たに高度耐性変異が出現するため,再治療の際にはRAS のプロファイルを十分に把握する必要がある. -
2.DAA 治療における宿主要因の意義
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionC型慢性肝疾患に対するIFN を基本とした治療の効果には,さまざまなウイルス因子,IL28B 遺伝子多型をはじめとした宿主因子が関連することが報告されてきた.現在,主流であるDAAs 併用療法により,これまで難治例とされていた高齢,肝線維化進展,IL28B 遺伝子型が治療抵抗型の患者においても極めて高いHCV 排除率が得られるようになった. - DAA 治療のアウトカム
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1.肝発がんの実態と対策
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionC型肝炎の抗ウイルス治療法は,現在内服薬(DAAs)のみの治療が主流となり,従来ウイルス駆除が困難であった高齢者や肝硬変症例においても高い確率でHCV 駆除が可能となり,C型肝炎患者全体の発がん率は今後さらに低下することが期待されている.一方,肝がん治療既往例に対するDAAs 治療後の肝がんの再発の状態に関しては,肝がんの再発が抑制されるのか,それとも促進される可能性があるのかが論点となっている. -
2.肝予備能,肝外臓器およびQOL への影響
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionHCV 感染症はDAA 治療により,従来のIFN 治療に非適応,不耐,無効症例でも治癒可能な時代となった.HCV 駆除による効果は,肝発がん抑止,線維化および予備能改善だけでなく,種々の肝外病変やQOL 改善にも及ぶ.このような背景から,近年では他臓器合併症にも配慮したHCV 感染症治療のガイドライン作成の必要性が論じられるようになっている.他職種連携を密に行い,他臓器合併症にも十分配慮したHCV 感染症治療が望まれている. -
3.医療経済と今後の患者動向
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionC型肝炎に対するDAA の登場は,その効果の高さに加えて薬価が高額であることから,医療のコストと便益について大きな議論を巻き起こした.医療における費用効果分析においては,新しい治療導入に伴う追加コストを効果の増加で割った増分費用効果比を計算し,費用の増加が効果の増加に見合うかを検討する.質調整生存年(QALY)をアウトカムとした解析の結果,ダクラタスビル(DCV)+アスナプレビル(ASV)以降のDAA は,増分費用効果の点からは,薬価が高すぎることが明らかになった. -
肝がん撲滅に向けた患者の掘り起こしと受診勧奨
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionC型肝炎の抗ウイルス治療は,今では100% 近いウイルス駆除率が得られ,抗ウイルス治療後の肝がんサーベイランスや治療も進歩してきた.一方で,まだ国内には肝炎ウイルス検査の受検さえも至っていない者,また抗ウイルス治療の受療を思いとどまっている者も多い.肝がん撲滅に向けた患者の掘り起こしと受診勧奨のためには,対象者の深層心理や背景を理解し,実効的な啓発および情報発信を行っていかなければならない.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(27) リウマチ・膠原病と痛み
72巻9号(2017);View Description Hide Description① 関節リウマチの関節痛は炎症指標と連動することが多いが,約20% は炎症が関与せず,アセトアミノフェンやトラマドールが有効である.② 強直性脊椎炎の痛みは,定期的な運動・体操と非ステロイド性抗炎症薬,サラゾスルファピリジンで安定化することが多い.③ リウマチ性多発筋痛症の肩周囲痛は,少量ステロイドが著効する.④ 線維筋痛症の痛みには,抗痙攣薬プレガバリン,抗うつ薬デュロキセチンが有用である. -
ノーベル賞と医学の進歩・発展(48) 甲状腺の生理・病理・外科 ― エミール・テオドール・コッヘル(Emil Theodor Kocher)―
72巻9号(2017);View Description Hide Description
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【トピックス】
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膵島イメージングの最新の進歩
72巻9号(2017);View Description Hide Description糖尿病の分野において,膵島特に膵β細胞の量を知ることは,糖尿病の病態を知るうえで重要である.膵β細胞量を知るために膵島イメージングの研究が進められ,蛍光,発光,核医学的手法などさまざまな方法が用いられている.本稿では,臨床応用を目的とした膵島イメージング研究の現状について,我々の研究を含めて紹介する. -
自己反応性T 細胞の選別にかかわる転写因子Fezf2 の発見
72巻9号(2017);View Description Hide DescriptionT細胞は多様性に富むT細胞抗原受容体を持つが,この多様性は胸腺ででき上がる.自己成分(自己抗原)に応答する自己反応性T細胞ができた場合,末梢での自己免疫反応を未然に防ぐため,胸腺で除去されている.この過程は「負の選択」と呼ばれ,転写因子Fezf2 や転写制御因子Aire により制御されている.Fezf2 とAire はそれぞれ独立した制御機構を持ち,負の選択と自己免疫寛容の成立に必須な遺伝子である.
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【今月の略語】
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