最新医学

Volume 73, Issue 5, 2018
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特集【自己免疫の関与する内分泌代謝疾患の最前線】
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- 鼎談
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下垂体機能低下症を呈する新たな疾患概念 抗PIT‒1 抗体症候群
73巻5号(2018);View Description
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抗PIT‒1 抗体症候群は,後天性にGH,TSH,PRL の特異的欠損を呈し,転写因子PIT‒1 に対する自己免疫によって引き起こされる疾患である.私たちはその病因,病態を明らかにし,抗PIT‒1 抗体症候群と名づけて本邦発の新規疾患概念として報告した.発症機序として,胸腺腫におけるPIT‒1 異所性発現の結果,免疫寛容が破綻し,特異的細胞障害性T 細胞が生じて下垂体前葉細胞障害を来したことが明らかになった. -
リンパ球性漏斗下垂体後葉炎の診断マーカー 抗ラブフィリン3A 抗体
73巻5号(2018);View Description
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リンパ球性漏斗下垂体後葉炎(LINH)は,病理所見で漏斗部および後葉に主にリンパ球が浸潤する慢性の炎症像が認められ,中枢性尿崩症を呈する疾患である.LINHは中枢性尿崩症を呈するgerminoma などとの鑑別が困難である.我々は,血中抗ラブフィリン3A 抗体がLINH の有用な診断マーカーとなることを見いだした. -
IgG4 関連(漏斗)下垂体炎
73巻5号(2018);View Description
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IgG4 関連(漏斗)下垂体炎は,中高年の男性に比較的多く,下垂体前葉機能低下と尿崩症,下垂体および茎の腫大を認め,ステロイドに反応する.確定診断には,下垂体病変の組織検査でリンパ球・形質細胞の浸潤とIgG4 陽性細胞を証明する.併発するIgG4 関連疾患の存在および血清IgG4 濃度の測定(ステロイド補充前)が診断に役立つ.下垂体細胞を標的とした自己抗体に関する研究が展開されている. -
本態性高ナトリウム血症と自己免疫
73巻5号(2018);View Description
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本態性高ナトリウム(Na)血症は,明らかな原因によらず血中Na レベルが恒常的に高くなる疾患であり,無飲症性(adipsic)高Na 血症である.著明な視床下部病変が見つからない症例の中に,脳弓下器官(SFO)を認識する自己抗体の産生が確認される例が複数見いだされた.SFO は脳の口渇および塩欲求制御の中枢であり,抗利尿ホルモン(ADH)分泌制御にもかかわる.本稿では,この疾患が明らかになった経緯を紹介するとともに,現状と今後の課題について述べる. -
自己免疫性甲状腺疾患―バセドウ病と橋本病のUpdate―
73巻5号(2018);View Description
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主要な自己免疫性甲状腺疾患であるバセドウ病と橋本病に関する最近の知見を概説する.バセドウ病においては,抗甲状腺薬の副作用である催奇形性と無顆粒球症について新たな進展があった.すなわち,PTU においても催奇形性が報告され,無顆粒球症の遺伝的素因が明らかになった.また,バセドウ病が主要な甲状腺基礎疾患である甲状腺クリーゼに関して新たな診療ガイドラインが発表された.橋本病においては,妊娠と潜在性甲状腺機能低下症・抗TPO 抗体に関するエビデンスが集積し,診療ガイドラインが改訂された.最後にバセドウ病と橋本病に共通な話題として,IgG4 関連疾患との関連が注目されている. -
自己免疫性甲状腺疾患―その分子機構―
73巻5号(2018);View Description
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自己免疫性甲状腺疾患は,種々の遺伝的背景に加えて,ウイルス感染やストレス,過剰なヨードの摂取などの刺激が引き金となることで発症する多因子疾患である.また,そのような異常な免疫反応が起こる背景には,自己抗原に対する免疫寛容の破綻とT 細胞への自己抗原の提示が必要である.本稿では自己免疫性甲状腺疾患に関する環境要因と遺伝的な要因に関して,基礎研究から得られた知見について概説する. -
1型糖尿病最前線―緩徐進行型から劇症型まで―
73巻5号(2018);View Description
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1型糖尿病は膵β細胞の破壊によりインスリン欠乏に至る糖尿病であり,発症形態によって,緩徐進行1型糖尿病,急性発症1型糖尿病,劇症1型糖尿病の3タイプに分類される.このうち自己免疫の関与が明確にされているのは緩徐進行1型糖尿病と急性発症1型糖尿病であり,細胞傷害性T細胞がキープレーヤーとなって膵島関連自己抗体が陽性となる.本稿では,1型糖尿病の診断基準,自己免疫性多内分泌腺症候群と1型糖尿病の関係,最近話題の免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病,そして緩徐進行1型糖尿病の予知と予防を中心に,解決すべき課題も含めて概説した. -
インスリン自己免疫症候群
73巻5号(2018);View Description
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インスリン自己免疫症候群は,① インスリン注射歴がないにもかかわらず重症の低血糖発作で発見される,② 患者血中には大量の免疫反応性インスリン(IRI)が存在する,③ その大部分はインスリン自己抗体と結合している.その後,インスリン自己免疫症候群は特定のHLA と強く相関することが明らかになった.④ HLA‒DR4(DRB1* 04:06)との強い相関である.インスリン自己免疫症候群は特定のHLA との強い相関を持つ5 番目の疾患となる.さらに,⑤ 食後高血糖症も起こしうる. -
インスリン受容体異常症B 型
73巻5号(2018);View Description
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インスリン受容体異常症B型は,後天性に抗インスリン受容体抗体が異常産生されることにより,著明なインスリン抵抗性を来す自己免疫疾患である.全身性エリテマトーデス等の他の自己免疫疾患が,背景に存在していることが多い.高血糖を来す一方,経過中に致死的な低血糖を来すことがある.副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬やリツキシマブなどの有効性が報告されているが,いまだ標準的な治療法は確立されていない. -
後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症とバイアスシグナル
73巻5号(2018);View Description
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後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症(AHH)は,Ca 感知受容体に対する自己抗体が原因となるまれな疾患である.我々の同定した自己抗体は,Ca 感知受容体に対するGq/11 との共役を増強させ,Gi/o との共役を減弱させるバイアスアロステリック調節作用を有していた.これは,バイアスシグナルが病態において作動する世界で初めての例であり,その作用の解析は副作用の少ない創薬へのヒントとなりうる. -
Aire 遺伝子と自己免疫性多内分泌腺症候群1型
73巻5号(2018);View Description
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複数の内分泌腺組織を標的とする自己免疫性多内分泌腺症候群1 型(APS‒Ⅰ)は,転写調節因子Aire の遺伝子変異によって生じる遺伝病である.本症は比較的まれな疾患であるが,単一遺伝子の異常によって起きるため,遺伝子改変マウスを用いてその病態を研究することができる.すなわち,APS‒Ⅰの原因遺伝子Aire の同定によってヒトの自己免疫疾患においても真に実験医学が可能になった. -
免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害
73巻5号(2018);View Description
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免疫チェックポイント阻害薬で認められる免疫関連副作用(irAEs)は,全身のさまざまな部位で認められる.内分泌器官におけるirAEs として下垂体,甲状腺,副腎皮質,膵,副甲状腺の障害が報告されており,各臓器における自己免疫疾患と一部類似した特徴を呈する.これらの病態には自己免疫機序の関与が想定されるが,その詳細は明らかではなく,また,診断や発症予測に有用なバイオマーカーも確立されていない.我々は,抗PD‒1 抗体であるニボルマブによる内分泌irAEs に関する前向き臨床研究を行い,ニボルマブ投与前の甲状腺自己抗体陽性者が高率に破壊性甲状腺炎を発症することを最近報告した.また,下垂体障害の病態に関するマウスを用いた研究で,抗CTLA‒4 抗体投与に伴う下垂体での補体活性化が炎症発生に関与する可能性を報告した.免疫チェックポイント阻害薬の使用においてirAEs マネジメントは極めて重要であり,その臨床的特徴および病態の解明が求められる.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(35) 集学的な診療と集団治療プログラムの実際
73巻5号(2018);View Description
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伝統的に医療診療は,二元論に基づいた生物医学モデルに則って行われてきたが,このモデルが不適切であることが明白になった.特に慢性疼痛治療において,新たな生物心理社会モデルに基づいた治療介入が必須ということが世界的に認識され,集学的に診療を行うことがマストとなってきている.本稿では,集学的な診療がいかなるものかを述べ,集学的な診療で有効な治療手段の集団治療プログラムの実際について,我々が行ってきたプログラムの内容と効果について述べる.
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【トピックス】
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クローン性造血の病理
73巻5号(2018);View Description
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骨髄異形成症候群,急性骨髄性白血病などの骨髄系血液腫瘍をシークエンス解析することにより,遺伝子異常が検出されることは広く知られている.これは検出された変異を持つクローンが増加した結果であり,増加したクローン性造血は臨床経過と深く関連する.しかしながら最近の遺伝子研究により,これらのクローン性造血は腫瘍性疾患に認められるのみならず,非腫瘍性疾患や高齢の健常人の血液中にも認められることが明らかになってきた. -
高齢発症うつ病とレビー小体病
73巻5号(2018);View Description
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高齢発症のうつ病では,焦燥,身体愁訴,身体症状,認知機能障害などを伴うことが多く,加齢による脳器質的変化の影響が一要因と考えられる.一方,パーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆(初期)症状としてしばしば抑うつ状態が見られ,症候学的にうつ病との共通点が少なくない.両者の鑑別診断では,レビー小体病に見られるレム睡眠行動障害,嗅覚障害,視覚認知障害,顕著な自律神経障害に着目することが重要である.
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【今月の略語】
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