最新医学

Volume 73, Issue 6, 2018
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特集【核酸医薬の現状と展望】
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- 鼎談
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核酸医薬総論
73巻6号(2018);View Description
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核酸医薬はオリゴヌクレオチドを基本骨格とし,8 ~30塩基の短い核酸からなる鎖状の構造で,アンチセンス核酸,siRNA,アプタマー,デコイ核酸などからなり,RNA の制御を主体として,mRNA からタンパク質への翻訳の阻害による遺伝子発現の制御,RNA の編集制御,非コード機能性RNA の制御,またはタンパク質の生体反応の制御といった作用を有する.近年,神経筋疾患において原因治療として核酸医薬が開発され,核酸医薬による難病の根本治療が現実のものとなった.それぞれの核酸医薬を概説するとともに,今後の展開について紹介する. -
核酸医薬の生体内デリバリー
73巻6号(2018);View Description
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核酸医薬は,これまで治療困難とされた多用な難治性疾患に対する治療薬となりうることから,次世代の医薬品として期待が寄せられている.その一方で,核酸医薬はバイオアベイラビリティが低いことから,十分な治療効果を得るには標的組織・細胞の内部へと核酸医薬を送達することのできるキャリアの開発が必要不可欠である.本稿では,生体内での核酸医薬送達に求められるキャリアの性能について議論し,筆者らのグループで開発した機能性高分子を基盤としたポリイオンコンプレックス(PIC)ミセルについて成果を紹介する. -
核酸医薬の糖部および塩基部に対する化学修飾
73巻6号(2018);View Description
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核酸医薬が生体内で機能するためには,天然の核酸を上回るさまざまな特性が求められる.そのため,多くの核酸医薬には適切な化学修飾が施されている.本稿では,核酸の糖部および核酸塩基部に焦点を当て,これまでに上市された核酸医薬や,現在研究開発が進められている多くの候補化合物に見られる代表的な化学修飾について,我々の研究例を交えながら概説する. -
核酸医薬品の開発の現状と展望
73巻6号(2018);View Description
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核酸医薬品は,従来の医薬品では標的にできなかったRNA を標的にできることから,抗体医薬品に続く新たな分子標的薬として近年,注目されている.本稿では,易分解性の問題を克服し,難治性疾患の治療薬開発手段として注目される核酸医薬品の開発の現状と展望を述べる.現状の一例としては,2017年に本邦でアンチセンス医薬品として初めて上市された脊髄性筋萎縮症治療薬であるヌシネルセンを取り上げ,概説する. -
siRNA を用いた遺伝子治療の現状
73巻6号(2018);View Description
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近年の技術革新により肝臓への低分子干渉RNA(siRNA)の効率的なデリバリーが可能となり,siRNA 医薬品の開発が飛躍的に進んでいる.この中で遺伝性ATTRアミロイドーシスに対するpatisiran の第Ⅲ相試験の結果が2017年末に公表され,種々の臨床症状に対する優れた有用性と安全性が証明された.現在,日本を含む世界各国で承認に向けた手続きが進められており,2019年に初のsiRNA 医薬品として承認される見込みである. -
ヘテロ核酸の現状
73巻6号(2018);View Description
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核酸医薬は,主に細胞内のRNA を標的とした分子標的薬であり,抗体医薬で改善困難な病態に対しての効果が期待されてきた.実際にアンチセンス核酸は複数疾患で実用化され,上市されている.我々が開発したDNA/RNA ヘテロ2本鎖核酸は,従来の核酸医薬に対して高い有効性と低い毒性を示している.また,さまざまな抗体や低分子などと結合可能である高い拡張性を有しており,難治疾患に対する今後の臨床応用が強く期待される. -
microRNA を標的にした核酸医薬の現状
73巻6号(2018);View Description
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microRNA(miRNA)の発現・機能異常がさまざまな疾患の発症,特にがん,心血管疾患,代謝性疾患の発症と関連することが続々と報告されてきている.今後,低分子医薬や抗体医薬の創薬シーズが枯渇する懸念がある中,miRNA を直接標的とした核酸医薬による分子標的治療が注目され,新たな医薬品としての展開が期待されている.本稿では,miRNA が関連する疾患およびmiRNA に対する核酸医薬の開発動向について概説する. -
核酸医薬とがん
73巻6号(2018);View Description
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核酸医薬は,細胞外から細胞内に至るまでのあらゆる分子標的に対して,核酸の配列から任意に薬剤を設計することができるため,応用範囲が極めて広く,抗体医薬に続く次世代の画期的ながん治療薬として期待されている.本稿では,がん治療分野における核酸医薬の臨床開発の現状と,実用化のために解決すべき課題としてデリバリーの問題に焦点を当てて概説する. -
脂質異常症を標的とする核酸医薬
73巻6号(2018);View Description
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脂質異常症は,動脈硬化症のリスク因子として認知されており,心血管疾患や脳血管疾患など重篤な疾患を招く.現在は食事管理や運動療法に加え,スタチンなどの脂質低下薬の服用が主な治療法であるが,重症の場合,十分に治療できない例も多い.このような疾患を制圧するためには,スタチンなどとは異なる新たな作用点を有する薬剤が必要である.その点,核酸医薬は良い素材と考えられ,現在多くの薬剤の臨床開発が進められている. -
核酸医薬と神経変性疾患
73巻6号(2018);View Description
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分子生物学の進歩により,種々の疾患の病態が解明されつつある.それに伴い,従来考えられていた多くの疾患でRNA などが治療標的となりうることが分かってきた.2013年に初の全身投与の核酸医薬品ミポメルセンがホモ接合体家族性高コレステロール血症の治療薬として上市された.さらにデュシェンヌ型筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症でおのおの核酸医薬品が承認されるなど,2016年は大きな節目の年となった.本稿では現在の神経疾患に対する核酸医薬品の開発状況,今後の必要性等を概説する. -
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する核酸医薬
73巻6号(2018);View Description
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は,重篤な遺伝性筋萎縮症である.核酸医薬は,mRNA に結合してmRNA の機能をモジュレートすることが可能になってきている.DMD の異常なジストロフィンmRNA の特定のエクソンをスキッピングし,ジストロフィンタンパク質を発現させる核酸医薬を用いた治療薬の研究開発について述べる. -
核酸医薬品の規制整備の現状
73巻6号(2018);View Description
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近年,核酸医薬品の開発が進展しており,今後も実用化がさらに進むと考えられる.一方で,開発の指針となるガイドラインは国内外で存在しておらず,規制当局が個別に対応しているのが現状である.この背景から,品質・安全性評価法の確立,規制要件の明確化など,開発環境を整備するレギュラトリーサイエンス研究の重要性が指摘されている.以上を踏まえ,本稿では核酸医薬品の規制整備に関連する国内外の動向を整理する.
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【連 載】
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痛みのClinical Neuroscience(36,最終回) 痛みのClinical Neuroscience の現状のまとめとして
73巻6号(2018);View Description
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痛みの診療や研究の歴史は古く,紀元前5 千年頃に鍼がすでに使われ,神経に感覚神経,運動神経があり,脳が重要な役割を演じていると指摘されたのも紀元前と記されている.その一方で,現代の痛み医療は疫学面からみても過去と比較して大きく変化しているわけではなく,また研究手法についても基礎的にも臨床的にも課題はまだまだ山積している.ただ,Neuroscience の面から近年の痛み研究は基礎的にも臨床的にも確実に進歩してきている.そこで,本連載では現在の1つの到達点のまとめとして多くの先生方に執筆いただき,最新の研究成果を集積した.
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【トピックス】
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PCSK9 阻害薬を用いた脂質低下治療の展望と課題
73巻6号(2018);View Description
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PCSK9 阻害薬は最大耐用量のスタチンとの併用により,家族性高コレステロール血症(FH)ホモ接合体以外のほとんどすべての患者のLDL‒C 値をガイドラインが定める管理目標値まで低下させることが,理論的には可能になった.しかし医学的かつ医療経済的観点から,「だれに,いつから,いつまで投与すべきか」という議論とエビデンスは不十分であり,薬理作用の理解不足からスタチンが減量・中止されるケースも散見され,PCSK9 阻害薬時代の課題も見えてきた. -
胃がんにおける近年のロボット支援手術とこれから
73巻6号(2018);View Description
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ロボット支援手術は,da VincRi Surgical System の登場によって急速に広がりつつある.本邦における胃がんに関するロボット支援手術は,先進医療B の臨床試験を経て2018年4月からの保険収載が決定した.世界的に見て,ロボット支援下胃切除術が従来の腹腔鏡胃切除術を上回るという報告はいまだ少ないが,今後の症例の集積およびさらなる手術支援ロボットの技術発展により,胃がん手術の中心的役割を果たす可能性がある.
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【今月の略語】
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