最新医学

Volume 73, Issue 9, 2018
Volumes & issues:
-
特集【細胞外小胞顆粒と疾患】
-
-
- 鼎談
-
-
エクソソームの産生機構と疾患治療
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
エクソソーム産生機構の理解は,エクソソームの生理学的な機能の解明とエクソソームを標的とした疾患治療の実現には必須である.しかしこれまでのエクソソーム研究では,エクソソーム自体の研究が中心となっており,その産生機構や分泌機構に関する研究は充分に行われてこなかった.そこで本稿では,これまでに知られているエクソソームの産生機構を概説することで,今後研究が進んだ後に登場すると期待されるエクソソームの産生機構を標的とした疾患治療について述べる. -
がん悪性化におけるエクソソームの役割
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
エクソソームと疾病にかかわる研究の中で,がんとエクソソームは早い時期から調べられており,急速に進むエクソソーム研究の中で高く注目されている.リキッドバイオプシーとしての可能性だけでなく,腫瘍進展における機能分子として治療戦略につながることも期待されている.本稿ではこれまでのがんとエクソソームにかかわる研究の一部,ならびに筆者が所属する研究室より,2015年に報告した臓器特異的転移とエクソソームに関してまとめる. -
血液疾患および造血機能における細胞外小胞
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
細胞外小胞(EV),その中でもエクソソームと呼ばれる分泌小胞は,疾患の発症や生理機能に幅広く影響することが知られている.本稿では,血液疾患におけるEV およびエクソソームの機能について概説する.特に,筆者らのグループで精力的に研究を進めている,Epstein‒Barr ウイルス(EBV)関連リンパ腫におけるエクソソーム機能を中心に,他の血液腫瘍や移植片対宿主病(GVHD),造血機能などにEV やエクソソームが与える影響についても紹介する. -
老化におけるエクソソーム
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
近年,我が国の平均寿命は年々延長し続け,がん,アルツハイマー病,肺線維症などの加齢性疾患の罹患率の上昇が深刻な社会問題となっている.これらの発症の原因の1つとして,加齢とともに体内に蓄積した老化細胞が分泌するSASP 因子が関与している可能性が指摘されている.我々は,老化細胞では炎症性タンパク質だけではなくエクソソームの分泌が亢進しており,SASP 因子として機能することを見いだした.本稿では,老化細胞が分泌するエクソソームに関する最新の知見を概説したい. -
アルツハイマー病におけるエクソソームの役割
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
アルツハイマー病などを代表とする神経変性疾患は,構造に異常を来したアミロイドペプチドやタウタンパク質が凝集して細胞内外に蓄積し,老人斑や神経原線維変化などの特徴的な病理像を形成する.エクソソームは本来,これらの不要分子を細胞外に放出し細胞を保護する役目を担うと考えられているが,近年の研究により,病原性タンパク質の脳内移行を促進し病態の発生にも関与している可能性が示された.本稿では,アルツハイマー病におけるエクソソームの研究結果とバイオマーカーとしての可能性について,最新の情報を紹介する. -
免疫疾患におけるエクソソーム
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
生体は,アレルゲンなど外界の異物の侵入や遺伝子変異の蓄積により発生するがん細胞に対して,免疫と呼ばれる生体防御機構を備えている.したがって,種々の内的および外的要因によりこの重要な免疫機構が破綻すると,がん,自己免疫疾患,アレルギーといった病気が発生する.近年,あらゆる細胞から放出され,生理活性物質を包含したエクソソームがこれら病気発生や進行と密接に関連することが明らかにされつつある. -
泌尿器悪性腫瘍および腎移植におけるエクソソームの役割とその展望
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
エクソソーム研究は,ここ10年でさまざまな分野で進み,臨床での実用性に期待が持たれている.泌尿器疾患においても,特に悪性腫瘍では血清のほかに尿検体を用いた研究が進み,既存の検査より簡便かつ精度の高いバイオマーカーの探索が日夜行われている(図1).本稿では,前立腺がん,膀胱がん,腎細胞がん,精巣がんなどの泌尿器悪性腫瘍に加えて,あまり知られていない腎移植領域でのエクソソーム研究の現状を述べる. -
動物モデルを利用したエクソソームの生理学的機能と疾患研究
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
細胞間コミュニケーション媒体として注目されるエクソソームの体内における動態を追跡することは,エクソソームの役割を明確にするうえで非常に重要である.筆者は,動物体内で分泌されるエクソソームが蛍光標識されたトランスジェニックラットを作製している.本稿では,動物モデルを使ってエクソソームを追跡する取り組みについて紹介したい. -
エクソソームによるリキッドバイオプシーの現状と可能性
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
我々の体液中にはさまざまな物質が存在し,それら物質を手掛かりに診断を行うリキッドバイオプシーは新たな検査法として注目されている.近年,リキッドバイオプシーの幅を広げるリソースとして,細胞外小胞エクソソームが注目されている.細胞がエクソソームにメッセージを詰め込み分泌しているが,これらエクソソームが持つさまざまなメッセージをどのように読み解き,診断に使うのか,そしてどのようなポテンシャルを秘めているのか,概説する. -
体内動態特性に基づくエクソソームを利用した疾患治療法開発の現状
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
エクソソームは,内包する核酸やタンパク質をその取り込み細胞に送達する内因性輸送担体であり,デリバリーキャリアあるいは治療薬としての利用が期待される.その実現に向けて解決すべき課題の1 つとして,エクソソームの体内動態特性の理解と制御が挙げられる.本稿では,現在明らかとなっているエクソソームの体内動態特性について紹介するとともに,その体内動態の観点から,エクソソームを用いた疾患治療戦略の現状について概説する. -
細胞外小胞顆粒を標的とした疾患診断技術の現状と開発
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
エクソソームによる疾患診断に大きな期待が寄せられているが,そのサイズはナノオーダーと極めて小さい.そのため,正確で迅速な診断にはナノバイオデバイスによる解析が非常に有効である.本稿では,2 種類のナノバイオデバイスを駆使して,がん細胞培養上清やがん患者の血清・尿由来エクソソームを対象に,エクソソームの高効率分離・捕捉と内包されているmiRNA 高効率抽出・解析に取り組み,その有用性を明らかにした. -
エクソソームを用いた疾患治療を標的とした核酸医薬の現状と開発
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
核酸医薬の実現化に向け,エクソソームと呼ばれる細胞外分泌小胞の疾患治療への利用が期待されている.エクソソームを応用した核酸の治療を目指した研究の紹介と,エクソソーム内に存在する分子を用いた治療法の開発を紹介し,エクソソームの核酸医薬に対する応用の可能性を考察する. -
間葉系幹細胞エクソソームの疾患治療への応用
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
間葉系幹細胞が放出するエクソソームと呼ばれる細胞外小胞が,心臓・腎臓・肺・肝臓・腸・皮膚・骨などさまざまな疾患モデルで治療効果を示す報告がなされている.エクソソームは内包されるタンパク質,miRNA などを介して,抗炎症,免疫制御,細胞増殖,血管新生,抗アポトーシスなど,間葉系幹細胞と類似する作用によって機能不全を軽減し治癒を良好に制御するとされ,培養細胞移植に代わる新たな疾患治療ツールとして期待されている.
-
-
【トピックス】
-
-
ジカウイルス感染症
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
ジカウイルス感染症とは,フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによって起こる蚊媒介性感染症である.人間社会においてジカウイルス感染症を媒介する蚊は,主にネッタイシマカ(Aedes aegypti )とヒトスジシマカ(Aedes albopictus )である.ジカウイルス感染症は近年,2013年のフランス領ポリネシア,2015年のブラジルでのアウトブレイクを経て,2016年には中南米で大流行を起こした.ジカウイルス感染症の潜伏期は2~7日であり,微熱を含む発熱,頭痛,関節痛,筋肉痛,眼球結膜充血,皮疹などの症状を呈する.診断は,血液・尿などからのウイルス分離やRT‒PCR 法によるウイルス遺伝子検出,ペア血清によるIgM 抗体あるいは中和抗体の陽転化,または抗体価の有意の上昇が用いられる.ジカウイルスに有効な抗ウイルス薬はなく,また有効なワクチンもない.ジカウイルス感染症罹患後にギラン・バレー症候群を発症する症例が多数報告されており,ジカウイルス感染症のまれな合併症と考えられている.また,妊婦がジカウイルスに感染すると胎児の小頭症発症のリスクが高くなることが関連づけられており,社会問題となっている.ジカウイルス感染症の概要と最新の知見についてまとめた. -
疾患特異的マクロファージの機能的多様性
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
1世紀以上前に発見されたマクロファージは,最近まで体内には1 種類しかないと考えられてきた.しかし最近の研究から,マクロファージには疾患の発症にかかわるさまざまなサブタイプが存在する可能性が考えられ始めている.今回,免疫学の解析手法に加え,バイオインフォマティクスの技術およびイメージングの技術を用いて線維症にかかわるマクロファージのサブタイプを同定し,その分化メカニズムの研究を行った. -
神経疾患におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞の役割
73巻9号(2018);View Description
Hide Description
オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)が,従来知られているよりも多くの役割を持ち,脳恒常性維持に寄与していることが近年明らかになってきている.OPC は成人脳においても広く分布し,増殖・遊走能が高く,神経系・グリア系・血管系を含めた周囲の細胞種に多彩な影響を与えうる.本稿では,神経疾患におけるOPC の役割について最近の知見を紹介する.
-
-
【今月の略語】
-
-