最新医学

Volume 73, Issue 10, 2018
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特集【自閉スペクトラム症と 注意欠如・多動症の臨床と病態理解】
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- 鼎談
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- 総説
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神経発達症(発達障害)とは
73巻10号(2018);View Description
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神経発達症とは,発達早期からさまざまな形態で見られる脳機能不全と考えられる. 近年発表された診断基準(DSM‒5,ICD‒11)では,神経発達症についての新しい定 義と呼称が示されている.神経発達症の発症には,遺伝要因と環境要因が関与してお り,発症のメカニズムに関する仮説がさまざまな形で提示されている.神経発達症は, 脳の多様性の1つで,「困難さ」と「強み」を併せ持つものというとらえ方もある. - 自閉スペクトラム症(ASD)
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定義と概念の変遷
73巻10号(2018);View Description
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今日の自閉スペクトラム症(ASD)の概念は,1943年のKannerによる幼児自閉 症についての臨床報告に端を発する.彼は,自閉症を心因性の最早期に発症した統合 失調症と考えていたが,Rutterによって脳機能障害に基づく発達の障害であるとい う概念への転回が行われた.その後,Wingが成因論から切り離して自閉症を行動症 候群と規定し,その特徴的な行動障害をスペクトラムと表現したことで,ASD概念 は飛躍的に拡大することになった. -
診断―鑑別診断,併存症を含めて―
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自閉スペクトラム症(ASD)は,持続する相互的な社会的コミュニケーションや 対人相互反応の障害,限定された反復的な行動や興味,または活動の様式,という基 本的特徴を有している.昨今,ASDの疾患概念が一般社会に広く浸透したため,そ の過剰な拡散が危惧される.本稿では,改めてASDの診断基準を確認し,臨床上鑑 別に苦慮する疾患と併存頻度の高い疾患について解説し,適切な診断のあり方につい て検討する. -
臨床経過―幼児期から成人期までの症状の変遷―
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自閉スペクトラム症(ASD)の障害特性は,環境の影響を受けながら加齢に伴っ て変化し,成人期まで連続する.障害特性は成人期に至ると軽症になるが,軽微な ASDの徴候は依然として残存し,就労などの社会参加を困難にする要因になる. ASD患者の支援に際しては,患者の各年代に特有の課題にのみ焦点を当てるのでは なく,成人後の適応状況まで視野に入れた切れ間のない継続的な支援のあり方が必要 である. -
病因仮説
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自閉スペクトラム症(ASD)の病因はいまだ不明である.多くの研究報告がなさ れている中,遺伝要因と環境要因,その両要因の遺伝環境相互作用について概説し た.遺伝的影響として,単一の遺伝子の異常によりASD症状を来す症候性自閉症, 自閉症関連遺伝子の探求について要略した.環境要因として,母胎内の環境や出生時 の状況について総括した.さらに,ASDに特徴的な神経伝達物質,脳形態,神経心 理学的モデルについても触れた. -
最近の生物学的研究
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自閉スペクトラム症は,対人コミュニケーション障害や常同行動,限定的興味など を特徴とする発達障害で,年々罹患率が増加してきており,遺伝要因と環境要因の相 互作用が積極的に考慮されるようになっている.本稿では,最近の生物学的研究に よって明らかにされた環境要因としての神経免疫やエピジェネティック作用などにつ いて概説し,加えて抗体やオキシトシンを用いた自閉症治療の可能性を紹介する. -
治療・支援
73巻10号(2018);View Description
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自閉スペクトラム症の人たちの治療・支援は,ライフステージに応じた,かつ個々 人のニーズに合わせたアプローチが必要とされる.幼児期・学童期では構造化による 環境調整が特に重要であり,構造化について実際の例を用いて解説する.思春期・成 人期では精神障害の併存が多くなるが,精神障害の治療を行う際に必要であるASD 特性に合わせた配慮を本人,家族の支援の側面から整理する. - 注意欠如・多動症(ADHD)
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概念と定義
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注意欠如・多動症(ADHD)は,社会生活の支障となるほどの重度の不注意,多 動性および衝動性を中核症状として有する神経発達症(発達障害)である.ADHD の症状,定義,概念の変遷,近年の遅発性ADHD概念の提唱について概観し, ADHD概念が確定的でないこと,大人のADHD診療の困難さと時間軸に沿った縦断 的評価の必要性について述べた. -
診断―鑑別診断,併存症,臨床経過を含めて―
73巻10号(2018);View Description
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不注意,多動性,衝動性の3つの行動特性からなる注意欠如・多動症(ADHD) は,病因としては生来性の脳の器質的・機能的基盤が想定され,さらに心理・社会的 要因が関与して病像が形成されると考えられている.ADHDの有病率は学童期では 3~5%,成人期では2~2.5%とされており1),またADHDは自閉スペクトラム症 (ASD)や他の精神障害を併存することが多く,その状態像も発達段階によって変化 する複雑なものであるため診断や対応に苦慮する疾患である. 本稿ではADHDの診断について,鑑別診断,併存症,臨床経過を含めて解説する. -
病因と病態
73巻10号(2018);View Description
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注意欠如・多動症(ADHD)は,ドパミン関連遺伝子を含む多因子遺伝と環境因 子の相互作用を病因とする神経発達症であり,神経基盤として小脳等の低容積,実行 機能課題時の前頭前野の低賦活,報酬期待時の腹側線条体領域の低賦活が報告されて いる.それらの領域の機能に呼応する神経心理学的機能,すなわち,実行機能,遅延 報酬,時間感覚の障害が報告されているが,小児期と成人期では病態に幾分の差異が あり,病態の連続性について検討が求められる. -
脳機能イメージングを用いた最近の生物学的知見
73巻10号(2018);View Description
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神経発達症の1つである注意欠如・多動症(ADHD)は,先天性の脳機能障害が 原因と考えられている.ADHDの病態解明や,早期発見・治療効果に関与する客観 的バイオマーカーの確立を目的とした生理学的研究は,脳波(EEG),機能的磁気共 鳴画像(fMRI),陽電子放射断層撮影(SPECT),脳磁図(MEG),光トポグラフィー (fNIRS)など,多岐に及ぶ.本稿では,低拘束性や非侵襲性などの特徴を持つ脳機 能イメージングであるfNIRSを用いた研究を中心に最近の生物学的知見を紹介する. -
治療・支援
73巻10号(2018);View Description
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注意欠如・多動症(ADHD)の治療・支援は,環境調整に始まる多様な心理社会 的治療から開始すべきである.しかし残念ながら,すべてのケースがそれら治療で改 善するわけではなく,そのような場合は薬物療法を合わせて実施する.本稿では最初 に環境調整,ペアレント・トレーニング,ソーシャルスキル・トレーニング,関係機 関との連携など心理社会的治療について述べ,最後に薬物療法について概説した. - 大人の神経発達症
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成人の自閉スペクトラム症(ASD)と 注意欠如・多動症(ADHD)
73巻10号(2018);View Description
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成人の自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)は,発達障害 の認知が高まるにつれて顕在化してきた障害である.小児期と比べて併存する障害が 多く,鑑別診断には困難を要する.一方,発達的課題の認識は,臨床家に従来にない 視点を与えている.このことは従来診断の中に発達的側面からの見立てをもたらし, 症状は類似していても,従来的視点からアプローチが効果を得ないような事例に治療 的展望を開くことと結びついている.そこで本稿では,成人のASDとADHDに関 して,最新の知見を含めて概観し,改めて今日の実臨床の一助となればと考える.
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【トピックス】
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乳がんの内分泌療法耐性研究と臨床応用
73巻10号(2018);View Description
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エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん における内分泌療法耐性化の原因に関して, これまで我々の研究室で得られた知見をも とに,海外での報告も踏まえ,大きく3つ の機序に分けて説明する.また,選択的 ER抑制薬フルベストラントに関する研究 や,アロマターゼ阻害薬耐性モデルを用い た臨床応用の試みについて紹介する.また 近年,乳がん治療で注目されている分子標 的薬についても概説する. -
肺胞微石症モデルマウスを用いた 病態解析から見えた今後の治療戦略
73巻10号(2018);View Description
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肺胞微石症は, SLC34A2遺伝子変異に よるナトリウム・リン酸共輸送体の欠損が 原因で,肺胞内にリン酸カルシウム結石を 生じる常染色体劣性遺伝疾患である.低酸 素血症,拘束性肺障害を呈して死に至るが, 現在まで有効な治療法はない.本稿では肺 胞微石症モデルマウスを用いた病態解析を 概説し,今後の肺胞微石症に対する治療戦 略について考察したい. -
循環器疾患と非コードRNA
73巻10号(2018);View Description
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近年,大規模なゲノム解析が進みタン パク質をコードしない非コードRNA (ncRNA)の存在が明らかになってきた. 中でも20塩基程度のmicroRNA(miRNA, miR)や,数百から数千塩基対に達する 「長鎖ncRNA(lncRNA)」については,最 近その研究が急速に進展している.今回は これらのncRNAについて,特に循環器疾 患との関係を概説する.
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【今月の略語】
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