最新医学

Volume 74, Issue 2, 2019
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特集【バイオインフォマティクスの進展・臨床応用】
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- 鼎談
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代謝・循環器疾患の大規模ゲノム解析の現状
74巻2号(2019);View Description
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近年,次世代シークエンサーや高密度SNPマイクロアレイ技術の発展と低コスト 化により,数十万~百万人規模のゲノムワイド関連解析(GWAS)が実施されてきた. 多因子疾患/形質に関しては,GWASを行うことによって関連遺伝子領域が多数同 定されており,2018年10月現在,GWAS catalogには3,596本のGWAS論文デー タが登録されており,75,827個のSNPと疾患の関連が登録されている.本稿では GWASなどの大規模疾患ゲノム解析の現状について,代謝・循環器疾患を中心に概 説する. -
ゲノム情報を用いた日本人集団構造の解析
74巻2号(2019);View Description
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遺伝的な集団構造があるとき,全体集団は幾つかの小集団(クラスター)に分かれ, 同一のクラスターに属する個体は互いに似ていて,異なるクラスターに属する個体は それほど似ていない.EIGENSOFT法により,現代日本人は,本土人・琉球人・アイ ヌ人の3つに分離される.fineSTRUCTURE法により,より細かいクラスターに細 分され,細分が地理的分布と対応することが分かってきた.疾患関連解析では,集団 構造を調整する必要がある. -
日本人一般集団における 遺伝性疾患原因バリアントの実態調査
74巻2号(2019);View Description
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メンデル遺伝性疾患の多くの原因遺伝子が同定されているが,原因バリアントが一 般集団中に,どのようなタイプが,どれくらいの頻度で存在しているのかは,まだよ く分かっていない.一般集団からのゲノムデータの活用により,この課題に取り組む ことが可能になる.本稿では,東北大学東北メディカル・メガバンク機構で構築して いる全ゲノムリファレンスパネルの活用による,私たちの取り組みと課題,そして最 近のこの分野における進展と今後の展望について述べる. -
全エクソーム解析による疾患遺伝子の同定 ―侵襲性歯周炎の NOD2 遺伝子の変異の同定―
74巻2号(2019);View Description
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次世代シークエンサー(NGS)の登場は,個人ゲノムの配列決定能力を飛躍的に向 上させ,遺伝子疾患の原因遺伝子の探索に革命をもたらした.全エクソーム解析は, タンパク質をコードするエクソン領域を,NGSを用いて網羅的にシークエンスする 手法として広く普及しており,数多くの原因遺伝子の同定が報告されている.全エク ソーム解析を概説し,劇症型の歯周炎である侵襲性歯周炎の疾患遺伝子同定までの実 例を示す. -
次世代シークエンスデータと国際データベースを 用いた HLA 遺伝子型の決定
74巻2号(2019);View Description
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近年発展が著しいNGSによってHLA領域を高精度にシークエンスし,より正確かつ高解像度にHLA アレルをタイピングできるようになった.しかし,多種多様な シークエンス方法や国際データベースの HLA アレル配列情報の不統一などの存在に より,タイピング精度や得られる結果は選択した方法に大きく依存する.本稿ではこ れらを踏まえて,NGSを用いた HLA シークエンスやタイピング方法の各種特性につ いて述べる. -
量的形質のゲノム解析と横断的オミクス解析の実践
74巻2号(2019);View Description
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量的形質( e.g. ,身長,体重,臨床検査値)のゲノム解析により,その遺伝的背景 を通じて疾患罹患性や疾患病態の解明につながることが期待される.近年では,オミ クスデータとの統合解析手法が開発され,同定された感受性領域の幅広い生物学的解 釈が可能となった.本稿では,量的形質のゲノム解析の現状と,筆者らが実施した日 本人集団の臨床検査値における大規模ゲノム解析,ならびに横断的オミクス解析につ いて概説する. -
次世代シークエンサーを活用したエピゲノム解析
74巻2号(2019);View Description
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近年の次世代シークエンサーの驚異的な技術革新によって,DNA配列を単に解読 するだけでなく,DNAを取り巻くクロマチンの様子がゲノムワイドに観測できるよ うになってきた.本稿では,クロマチンを定量化し解析する一般的なアッセイ技術を 紹介するとともに,その1つであるATAC‒seqを用いた筆者らの最新の研究結果に ついて紹介する.また最新のシングルセル技術を用いたエピゲノム解析についても議 論する. -
プロテオミクスがひもとく炎症性呼吸器疾患
74巻2号(2019);View Description
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タンパク質の解析は開発途上の分野とされてきたが,質量分析装置や関連科学の発 達により,網羅的にタンパク質を解析するプロテオミクスが注目されている.呼吸器 領域においては,喘息やCOPDなど複雑多様な疾患の,病態解明や個別化医療に欠 かせないのが網羅的解析によるバイオマーカーの開発である.本稿では,プロテオミ クスの手法を用いたバイオマーカー探索の現状を述べ,我々が現在取り組んでいる研 究内容を一部紹介させていただく. -
コホート研究における多層オミクス情報解析
74巻2号(2019);View Description
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東北大学東北メディカル・メガバンク機構では15万人を対象としたコホート調査 の中で,収集した検体の多層オミックス解析を進めている.これまでに4千人以上の 全ゲノム解析や1万人以上のメタボローム解析などを実施し,その成果を「日本人多 層オミックス参照パネル」として公開してきた.また各オミックス間の関連解析も進 めており,その成果も順次公開している.本稿では最近の多層オミックス解析の成果 を中心に紹介する. -
CyTOF® を用いた免疫細胞プロファイル解析
74巻2号(2019);View Description
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CyTOF® は,理論上100種類を超える分子を同時に解析可能なサイトメトリーと して,近年注目を集めている.CyTOF® は,抗体に結合している金属の質量差によっ て金属結合抗体の量を測定することで,発現分子量を解析するため,従来の蛍光の波 長差で蛍光抗体の量を測定し,発現分子を解析するフローサイトメトリーに比べて, 測定パラメーター数が飛躍的に増加した.そのため,データ解析には,複数分子の発 現パターンを同時に考慮して細胞を分類する高次元クラスタリングや,細胞の類似性 を2次元散布図で表示する次元圧縮法などが頻繁に用いられる.免疫細胞をCyTOF® で解析することにより,新規の細胞集団やバイオマーカーの同定などが報告されてお り,今後ますます活用の機会が拡大していくことが期待される.本稿では,CyTOF® を用いたバイオマーカー同定研究について紹介する. -
バイオバンク・ジャパン保有試料検索システムと 臨床情報データベース
74巻2号(2019);View Description
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バイオバンク・ジャパン(BBJ)は個別化医療の実現を目指し,よくある病気を対 象として構築された世界最大級の疾患バイオバンクである.BBJの保有する生体試料 の利活用促進を目的に,200以上の臨床情報項目について条件を設定し,保有試料数 を検索できる「バイオバンク・ジャパン保有試料検索システム」が構築された.本稿 では本検索システムを中心に,その概要と臨床情報データベースを取り巻く国内外の 動向,課題について概説する. -
IRUD解析センターにおけるゲノム解析の臨床応用
74巻2号(2019);View Description
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超高速DNAシークエンサーを用いた網羅的ゲノム解析は,全エクソーム解析を中 心に解析技術の高度化,均一化が進み,希少難病分野でも以前に比べ,比較的容易に 疾患原因遺伝子を同定できるようになった.一方で,実臨床の場において疾患原因遺 伝子を同定し,変異が疾患に及ぼす影響を類推して,疾患の診断治療に生かすことは 容易ではない.そこで,全エクソーム解析の技術自体の限界性,臨床症例選択,情報 収集,解析者と臨床医との連携など,さまざまな問題を克服するために,今年度より 全国5解析センターの一員に加えていただき,本学としての課題を持って取り組んで いる. -
がんゲノム医療中核拠点病院としての取り組み
74巻2号(2019);View Description
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大阪大学医学部附属病院は,がんゲノム医療中核拠点病院として,マルチプレッ クス遺伝子パネル検査(がん遺伝子パネル検査)を臨床研究として行った後, 2018年10月より先進医療Bとして開始した.遺伝子パネル検査として「OncomineTM Target Test」を使用している.また,医学部附属病院内に次世代シーケンサーを用 いた検査に関する国際基準品質保証検査室を整備し,院内完結型の実施体制とした. さらにOCRネットを利活用した臨床情報やゲノム情報の収集・管理体制を整備して いる. -
製薬企業におけるバイオインフォマティクスの活用 ―ヒトのビッグデータに基づいた 創薬ターゲット探索―
74巻2号(2019);View Description
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薬剤開発の成功率を高めるためには,適切な創薬ターゲットと薬剤投与患者群を決 定する必要がある.個人ゲノム,遺伝子発現情報,電子カルテなどのデータが日々増 加しており,製薬企業ではこれらヒトのビッグデータからバイオインフォマティクス を駆使した治療仮説の創出を行っている.大規模バイオバンクの事例,アカデミア・ 他社とのコラボレーション事例,他社における研究事例を交えながら,治療仮説を生 み出す流れを紹介する.
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