最新医学
Volume 74, Issue 5, 2019
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特集【内分泌代謝疾患のトランジション −問題点と最前線−】
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- 鼎談
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- 本論
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小児科医から見た内分泌疾患の 移行期医療の現状と問題点
74巻5号(2019);View Description Hide Description小児期発症慢性疾患の小児期医療から個々の患者にふさわしい成人期医療への移り変わりが行われる段階の医療を移行期医療と呼ぶ.この時期に医療管理の主体を養育 者から自己に移行することになる.移行期医療は疾患の最もふさわしい生涯管理と患者の自立支援を行う仕組みが必要である. -
内科医から見た内分泌・代謝疾患における移行期医療の現状と課題
74巻5号(2019);View Description Hide Description小児期における内分泌代謝疾患の大半が成人期に至るようになり,小児診療科から成人診療科への移行期医療の重要性は年々高まっている.海外に比べ本邦においては移行期医療に対する認識はいまだ不十分であり,小児診療科および成人診療科の双方における啓発が求められる.双方による情報共有も重要であり,複数の施設による連携体制の構築が進むことが望まれる.精神的,社会的な問題を有する症例の移行に際しては多職種協働によるチーム医療がとりわけ重要である. -
10代の内分泌疾患患者への看護 ―思春期から成人期への移行支援―
74巻5号(2019);View Description Hide Description筆者らは近畿内分泌疾患移行期医療を考える会において,多様な小児内分泌疾患について学びを深めつつ,成人期以降も継続的な治療・観察を要する内分泌疾患患者の看護について検討してきた.本稿では,思春期に初めて診断されたターナー症候群を取り上げ,その人中心の成人移行期支援として,10代患者の意思や尊厳を尊重すること,重篤な障がいなどの情報共有・意思決定の際の看護場面を取り上げて,家族の成長発達も含めた支援についてまとめた. - 各論
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間脳下垂体疾患におけるトランジション ―小児科の立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Description間脳下垂体疾患において小児科が行うべきことは,以下の4点である.下垂体前葉機能低下症を例に述べる.① 診断時の評価でトランジションの必要性が高い症例には,患者・家族への説明をしておく.② 成人身長,性成熟段階に達していることを確認する.③ 成人期も治療継続が必要であることを再確認する.指定難病の要件を検討する.患者本人の知識を確認する.④ 内分泌内科などと定期的な情報交換を行 いスムーズな移行を図る. -
間脳下垂体疾患におけるトランジション ―成人科の立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Description間脳下垂体疾患の原因には腫瘍,遺伝性,特発性など多くのものがあるが,それらの多くは下垂体機能低下症を伴っており,生涯の補充療法が必要である.トランジションの問題点として,下垂体機能低下症の補充療法の最適化,GH分泌不全症の再 評価,シームレスな補充療法の継続は重要な課題である.また,間脳下垂体疾患のトランジションでは医療制度,小児科医と内科医のスタンスの違いなど,議論すべき問題は多い. -
移行期医療の一般的前提,実務的方法と注意点 ―副腎疾患の代表である21水酸化酵素欠損症を例に―
74巻5号(2019);View Description Hide Description小児期発症慢性疾患を有する患者において,移行期医療は重要な課題となっている.本稿では移行の前提,課題,実務的な方法について,主に,小児科側の視点から言及した.本稿でのテーマである副腎疾患の例として,21水酸化酵素欠損症を扱った. 移行のパートナーとなる成人診療科側の先生方が小児科側と協働する際の参考になることを期待する. -
副腎疾患におけるトランジション ―成人科の立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Descriptionトランジションが必要な代表的副腎疾患は,生涯にわたりステロイド補充療法を要 する先天性副腎皮質過形成である.ステロイド補充は,小児期には副作用を起こさず 健常小児と同等に成長する必要最低量に調整,成人期には急性副腎不全の回避と合併 症予防のための必要最低量に調整する.不適切な補充量により性機能異常,高血圧, 糖脂質代謝異常,骨粗鬆症などの合併症が成人期に出現する.適切なトランジションのために小児期からその必要性について保護者と本人に伝え,小児科-成人科の医療者間で密な連絡をとることが重要である. -
性腺疾患におけるトランジション ―小児科の立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Description小児期発症の性腺機能低下症は,性ホルモンの欠乏により思春期遅発を来し,妊孕性低下などQOLにかかわる重大な問題も生じる.第二次性徴発現と成長を促すために,思春期年齢から性ホルモンの補充療法が行われるが,第二次性徴,性機能を維持するためには,成人期にわたり治療を継続しなければならない.早期から小児科と成人診療科(内科・泌尿器科・産婦人科)で連携をとり,トランジションを円滑に進めていく必要がある. -
性腺疾患におけるトランジション ―生殖医学の立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Description小児期発症の性腺機能低下症には,先天性のターナー症候群と後天性の小児がんサバイバーなどがある.これらの患者のホルモン補充療法,妊孕性温存療法,妊娠分娩に関してカウンセリングや管理に産婦人科医がかかわっている.円滑なトランジションの受け入れに向けて,今後の取り組みが必要となっている. -
性腺疾患におけるトランジション ―アンドロロジーの立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Description生殖医療は成人期の医療としてとらえられがちであるが,造精機能障害の原因を小児期に追究できることも多い.一方で小児期に診断され将来的に精子形成や性機能に関連しうる疾患についての適切な管理法についてのエビデンスは乏しい.小児精索静脈瘤,性染色体異常,低ゴナドトロピン性性腺機能低下症,脊髄疾患,cancer survivor などは良好な造精機能や性機能の獲得を目指すべく,小児期より適切にトランジションされるべき疾患群である. -
1型糖尿病におけるトランジション ―小児科の立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Description小児期に発症した1型糖尿病では,成人期になると慢性血管合併症の発生と進行が重要な問題となり,小児科から内科へのトランジションが必要となる.一方1型糖尿病の小児は,精神的な未熟性が問題となることが多く,成人期に自立するためにも,発症早期からの患者教育と計画された移行支援プログラムが必要である.その結果,継続した質の高い医療の提供とスムーズな内科へのトランジションが行えるものと期待される. -
1型糖尿病におけるトランジション ―成人科の立場から―
74巻5号(2019);View Description Hide Description小児期に発症した1型糖尿病患児は,通常,思春期あるいは青年期に小児科から内科へと診療科が移行する.年齢とともに糖尿病合併症のリスクが加わり,妊娠・出産時に厳格な管理が必要となることがその要因である.移行時期については個別に判断すべきであり,内科への移行時年齢と予後には関連はないとの報告もある.既存の移行支援プログラムを活用するとともに,内科医と小児科医が互いに協働して円滑に移行を進めることが重要である. -
先天代謝異常症におけるトランジション
74巻5号(2019);View Description Hide Description先天代謝異常症は希少難病であり,成人診療科に専門医師が極めて少ないことから,成人期においても小児診療科が診療を継続している場合が少なくない.先天代謝異常症のトランジションにおいては,小児診療科と成人診療科の併診が望ましい.小児診療科が,専門医師の診療と複数の成人診療科における診療とを調節する役割を持つことは有用である.学会,患者会,行政などが協力したネットワークづくりが不可欠である. -
Prader–Willi症候群のトランジション
74巻5号(2019);View Description Hide Descriptionトランジションを行わなければならない慢性疾患の中でPrader‒Willi症候群(PWS)は困難な疾患の1つである.その原因としては,本症では多臓器にまたがる症状を呈すこと,知的障害や発達障害などがあるためである.PWSの主症状は3徴候に大別され,奇形徴候,内分泌学的異常,精神・神経学的異常である.PWSの臨床症状は多岐にわたるためPWSのトランジション医療を行うにはPWS患者を理解し,寄り添った医療を行う必要がある.
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【トピックス】
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深在性真菌症における病理診断の進歩
74巻5号(2019);View Description Hide Description深在性真菌症のうち,アスペルギルス症 とムーコル症の鑑別は臨床的に重要であり,培養検査陰性であった場合に,組織切片上の所見から菌種の推定が必要となる.教科書的な両者の鑑別点は幾つか存在し,熟練した病理診断医の間でも再現性が高いことが経験的に知られている.しかし,ある程度の経験があれば使用できる客観的な指標の確立が求められている.本稿では解析の現状と将来の展望について紹介する. -
分子内架橋型BIG3–PHB2相互作用阻害ペプチドによる ホルモン依存性乳がんの新規治療法の開発
74巻5号(2019);View Description Hide Description我々は,乳がん発現亢進分子BIG3がプロテインホスファターゼPP1Ca の調節サブユニットとして機能し,その基質として結合したがん抑制因子PHB2の脱リン酸化を介した抑制機能喪失が乳がん細胞増殖に必須であることを明らかにした.本稿では,この機構に基づいて,BIG3‒PHB2相互作用を標的とした分子内架橋型相互作用阻害ペプチドstERAPを開発し,BIG3から解放されたPHB2の腫瘍抑制機能の再活性化を利用した新たな治療法について述べる.
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