癌と化学療法
Volume 31, Issue 1, 2004
Volumes & issues:
-
総 説
-
-
ABCトランスポーターと薬剤応答性
31巻1号(2004);View Description Hide Description近年抗癌剤治療法の向上により癌治療は急速な進歩を遂げてきた。しかし癌の薬剤応答性の低下すなわち薬剤耐性の問題は完全治癒を困難にする臨床上最大の問題である。薬剤耐性を示す重要な因子の一つであるABC トランスポーターは細胞膜に発現し構造や作用機序の異なった様々な抗癌剤を細胞外へ排出することによって癌細胞内薬剤濃度の低下を生じる。これまでにABCB 1/P 糖蛋白質(MDR 1)をはじめMRP ファミリーなど数十種のABC トランスポーターが薬剤耐性に関与する遺伝子として同定されてきた。近年同定されたABCG 2/breast cancer resistance protein(BCRP)もまたヒトDNA トポイソメラーゼ㈵ ㈼阻害型抗癌剤の耐性に強く関与することが報告されその分子機構や耐性克服の研究が盛んに行われている。またこれらのトランスポーターは正常組織においても発現し薬剤耐性のみならず生体外異物や生体内物質の輸送を担い薬物のバイオアベイラベリティを規定する重要因子となる。さらにABC トランスポーターの基質特異性また近年重要視される薬物体内動態の個人差を規定する要因に関連すると考えられる遺伝子多型による影響を解明し輸送担体の特異的阻害剤あるいは耐性克服剤を開発することは薬物のバイオアベイラベリティの向上や治療成績の向上に大いに寄与するものであると考えられる。
-
-
特 集
-
- 【癌化学療法におけるコメディカルの役割 】
-
癌化学療法におけるオンコロジーナースの役割
31巻1号(2004);View Description Hide Description癌化学療法は専門的な知識技術を必要とされる分野でありその看護においても専門的な教育を受けたオンコロジーナースの役割は大きいといえる。オンコロジーナースは癌化学療法において優れた実践能力を発揮するとともに複雑なケースに対する相談者としての役割チーム医療を推進調整する役割癌化学療法看護に関する教育や研究を行う役割も担っている。 -
癌化学療法における薬剤師の役割
31巻1号(2004);View Description Hide Description病院内での薬剤師の業務は一般調剤医薬品管理注射調剤医薬品情報院内製剤薬剤管理指導(服薬指導を中心とした) 試験研究教育などである。これらの業務の多くは薬剤部内で行われ他の医療スタッフにみえない存在である。チーム医療の一員として個々の患者の病態患者志向の服薬指導リスクマネージメントから癌化学療法施行時の抗癌剤の投与量投与方法最適な効果を発揮するための副作用初期症状の発見と副作用の予防退院後の自己管理など癌化学療法に関する薬剤経済評価など薬の専門家としての責務を果たすためチーム医療の一員として情報を共有し薬剤師の視点でアプローチしていかなければならない。そのためには専門家としての高度な専門知識を習得することできるかぎり患者家族の近くにいることが大切である。 -
癌化学療法における臨床心理士の役割
31巻1号(2004);View Description Hide Description癌患者はその臨床経過のなかで様々な問題に直面しその都度精神的な動揺を経験する。特に化学療法など治療にかかわる問題は生活に伴う現実的問題や治療効果の不確実性など患者にとって不安と期待の不安定な状態を作りだす大きな要因となっている。癌患者が経験する心理的問題に対しては個々の状況に応じて個別カウンセリンググループ療法漸進的筋弛緩法や自律訓練法などの行動療法が用いられる。癌医療に携わる臨床心理士は癌の病態的特徴や治療方法病状経過の特徴などの基本的知識と理解をもち医師看護師をはじめとする他の職種との連携コミュニケーションを十分にとりながら患者と家族が必要とする支援を行っていく幅広い対応が求められる。 -
化学療法と治験コーディネーター(Clinical Research Coordinator)
31巻1号(2004);View Description Hide Description化学療法の臨床試験(治験)を支援する専門スタッフとしてのclinical research coordinator(CRC)の役割や活動について述べた。癌化学療法の新薬開発またそれを認可するための治験は化学療法の治療では不可欠である。治験の実施は多忙な医師を支援しながら全体をコーディネートする専任スタッフの協力が必須の状況にある。CRC 活動をとおして治験支援の現状を理解してもらうこと質の高い治験実施をめざすために必要な課題などを明らかにした。 -
癌化学療法と電子カルテ
31巻1号(2004);View Description Hide Description臨床現場において化学療法に必要な電子カルテの機能をシステム開発者側から提案する。日本の医療情報の歴史から電子カルテシステムの現状と医療システム拡大政策のなかで今後の電子カルテシステムの方向性について考察する。 -
癌化学療法のクリニカルパスと薬剤部
31巻1号(2004);View Description Hide Descriptionクリニカルパス(以下パス)は患者がたどる臨床経過と提供される医療について標準化し医師看護師関係するすべての医療スタッフの介入の順序とタイミングをチャート化し実行評価する手法である。癌化学療法においても例外ではない。当院薬剤部では薬剤ごともしくは薬効群ごとに薬剤師が行う薬学的チェック項目を取り決めた「薬学管理チェックシート」と薬剤管理指導業務の標準化を図った「薬剤管理指導記録用紙」を作成している。パス化に当たってそれらを合体させた「薬剤師用ワークシート」を使用し服薬指導に活用している。さらにパス委員会事務局として各部署の調整役を果たしたとともにパス化が決定した疾患について各種診療ガイドラインやデータベースを収集しパスの評価関連付けに活用した。
-
原 著
-
-
口腔癌一次症例に対するNedaplatinターゲティング動注療法のAUCの設定に関する検討
31巻1号(2004);View Description Hide Descriptionわれわれは口腔癌に対してCDGP を使用したregimenを用い独自のexpected AUC の計算での投与量で超選択的動注化学療法を試みている。今回口腔癌一次症例におけるexpected AUC とactual AUC とを比較しその投与量決定法の有用性を検討しAUC と化学療法単独の効果および副作用についての検討を行った。対象は1998年10月から2002年6月までに香川医科大学歯科口腔外科において治療を施行した口腔癌一次症例11例である。結果は以下である。㈰ AUC と血小板減少との相関が認められた。㈪ nedaplatinのAUC には腎機能が関与することが示唆された。㈫ われわれの超選択的動注化学療法の成績は奏効率100%と非常に良好な上に重篤な副作用は出現しておらずCDGP の至適投与量の設定は実測AUC に基づいて検討するべきと考えられた。㈬ 予測AUC と実測AUC では4/3程度の相違があり実測値に即した投与量の式の検討が必要と考えられた。 -
進行胸部食道癌における術前放射線化学療法の検討
31巻1号(2004);View Description Hide Description進行胸部食道癌に対し術前放射線化学療法を15例に施行した。対象はT 2以上またはM(+)の症例とし方法はCDDP 5mg/m2/dayおよび5-FU 250mg/m2/dayをday1〜5に投与しday1 2 4 5に2.5Gy/f 計10Gyの放射線照射を加えた。これを1クールとして3クール施行しその2週後に効果判定をした。奏効率は60%(9/15)であったが組織学的CR 症例は認めなかった。切除12例非切除3例で切除例の2年生存率は28.1% 奏効度ではPR 33.3% NC20.0%であった。非切除例では1例に2年生存が得られた。副作用は53.3%に発症したが休薬中止例はなかった。また非切除例は3クールの追加治療を施行し1例にCR が得られた。予後は本法施行しないT 2以上手術例の22.3%と比較しPR 例の予後が33.3%とやや良好だが有意差はなかった。今後本法の有効予測法を確立し予後改善をめざしたい。
-
-
原 著
-
-
切除不能・再発膵癌に対するGemcitabineとUFT併用療法の第 I 相試験
31巻1号(2004);View Description Hide Description切除不能進行再発膵癌を対象としてgemcitabine(GEM) UFT 併用の第Ⅰ相試験を行った。投与は第1〜6日および第8〜13日にUFT を先行投与し第7 14日にGEM を投与1週間休薬する21日を1コースとして2コース以上繰り返すことを目標とした。GEM およびUFT 投与量はそれぞれ800mg/m2 250mg/m2を初期投与量(レベル1)としてUFT GEM を交互に増量した。9例が登録されレベル2においてdose limiting toxicity(DLT)となる白血球減少好中球減少の副作用が2例に出現しmaximum tolerated dose(MTD)に達したと判断した。外来通院での施行と継続投与回数などを考慮し第Ⅱ相試験での推奨用量はGEM 800mg/m2 UFT 250mg/m2と考えた。
-
-
原 著
-
-
大腸癌治癒切除後のCarmofur(HCFU)を用いた経口補助化学療法の適正投与期間の検討
31巻1号(2004);View Description Hide Description進行大腸癌治癒切除後のcarmofur(HCFU)の薬剤投与期間に関する共同研究を行った。HCFU の術後投薬期間により6か月間(短期群)と2年間(長期群)の2群に分け投薬期間が適切であった155例を評価対象とし術後5年間の経過観察を行った。大腸癌全体での5年生存率は短期群78.1% 長期群89.6%と長期投与で有意な生存率の向上を認めた(p=0.048)。結腸直腸癌別では両癌とも長期群で生存率が向上したが有意差は認めなかった。リンパ節転移陽性例での生存率は短期群(n=34)59.4% 長期群(n=33)83.9%と有意に長期群で生存率の向上を認めた(p=0.029)。無作為化の保証されないsubanalysisではあるがHCFU の投与期間は6か月よりも2年の長期投与が適切であることが示唆された。 -
好中球減少時の発熱に対するCefozopranの有効性に関する検討
31巻1号(2004);View Description Hide Description急性白血病の寛解導入療法や地固め療法施行中の好中球減少時の発熱症例に対しcefozopran(CZOP)単独による初期治療を行い有効性と安全性を検討した。対象は2000年7月から2002年11月までに急性白血病の寛解導入療法や地固め療法施行のために入院し好中球減少時の発熱が予想された25症例であった。有効性と安全性の評価は37.5℃以上の発熱を伴い臨床的に細菌感染症が疑われた20例にて検討した。CZOP は4g を1日2回に分割し点滴静脈注射した。基礎疾患は急性骨髄性白血病17例急性リンパ性白血病2例急性前骨髄性白血病1例であった。感染症として1例に敗血症19例に敗血症疑いを認めた。臨床効果は20例中著効11例(55.0%) 有効1例(5.0%) やや有効2例(10.0%) 無効6例(24.0%)で著効と有効を合わせた有効率は60.0%であった。投与前アルブミン(Alb)値による有効率はAlb<3.8g/dl で37.5%3.8g/dl〜5.3g/dl で80.0%であった。投与前後の好中球数別臨床効果は投与前100/μl 未満であった症例における有効率は50.0%であった。また投与後100/μl 未満であった症例における有効率は53.8%であった。さらに投与前後とも好中球が100/μl 未満の著明な顆粒球減少例においては37.5%の有効率であった。副作用は発疹1例のみであり処置にて速やかに改善した。好中球減少時の発熱症例に対するempiric therapyとしてCZOP は有効性安全性から第一選択薬剤として考慮されるものと考えられた。 -
アンケート調査によるWeekly TP(Weekly Paclitaxel+Consecutive Low-Dose CDDP)療法における神経毒性の検討
31巻1号(2004);View Description Hide Description【目的】神経毒性軽減を目的としてpaclitaxel (TXL)の分割投与が行われている。consecutive low-dose CDDP(CLDCDDP)とweekly TXL の併用療法(weekly TP と略す)における神経毒性をTJ 療法と比較検討した。神経毒性の評価は従来の方式では困難であるので患者自身の記載に基づくアンケート方式により客観的に評価した。【対象と方法】weekly TP 療法(投与法はCDDP:10mg/m2 days1〜7 TXL:60〜80mg/m2 days1 8 15)24症例57コースを対象とした。われわれが以前報告したTJ 療法(TXL:170〜180mg/m?? 3時間投与carboplatin AUC 4〜5)19症例30コースと比較検討した。神経毒性の評価はアンケート調査票にて行い累積スコアを検討した。【結果】㈰ 痛みの累積スコアはTJ 療法0.19 weekly TP 療法0.29で有意差は認められなかった(p=0.926)。しびれの累積スコアはTJ 療法1.50 weekly TP 療法0.50と後者で有意に頻度が低下した(p=0.011)。㈪ TJ 療法で認められたTXL 投与後3〜4日目の痛みのピークはweekly TP 療法では消失していた。weekly TP 療法とTJ 療法ではともにしびれの持続性が認められるが前者のほうが後者と比べて軽度であった。㈫ weekly TP 療法においてはしびれの蓄積性は認められる症例と認められない症例が存在することが明らかとなった。【結論】本アンケート調査票により患者の自覚症状を客観的に評価可能となった。TXL 投与はCDDP 併用の際神経毒性の増強が懸念されるがTXL の分割投与により神経毒性は軽減されることが明らかとなった。
-
-
症 例
-
-
Docetaxelが著効した喉頭癌肺転移症例
31巻1号(2004);View Description Hide Description現在docetaxel (TXT)は白金製剤出現以降頭頸部癌治療において最も有効な化学療法の一つとして注目されている。今回喉頭癌肺転移症例に対してTXT を投与し画像上complete response(CR)を認めた症例を経験したので報告する。症例は61歳男性で喉頭癌声門型T3N0M0にて喉頭摘出術および術後照射を受けている。以後再発なく2年以上経過観察を行っていたが胸部CT 検査にて左下肺野に遠隔転移が判明。この転移病巣に対してTXT の少量分割投与を施行した(20mg×3回40mg×3回)。副作用は血液データを含めまったく認めなかった。胸部CT で再検したところ肺転移は消失しておりCR と判断した。頭頸部癌遠隔転移に対してTXT 分割投与は副作用がなく安全な治療方法と考えた。 -
Docetaxel,Cisplatin,5-FU,l -Leucovorinに奏効した中咽頭癌肺転移症例
31巻1号(2004);View Description Hide Description今回われわれは中咽頭癌肺転移例にdocetaxel cisplatin 5-FU l-leucovorin(TPFL)を用いた化学療法を3コース行いCR を得た症例を経験したので報告する。症例は72歳男性で中咽頭平上皮癌治療後32か月経過して肺転移を診断された。入院後TPFL 化学療法を開始した。3コース終了後の臨床効果判定はCR であった。化学療法後12か月経過しているが現在再発は認められていない。頭頸部扁平上皮癌の転移に対してdocetaxel cisplatin 5-FU l-leucovorinを用いた化学療法は治療方法の一つとしてなり得るのではないかと考えられた。 -
Cisplatin+Docetaxel併用化学療法により完全寛解が得られた局所進行期肺扁平上皮癌の1例
31巻1号(2004);View Description Hide Description症例は70歳男性。左上葉の肺平上皮癌c-T2N3M0 stageⅢB と診断された。cisplatin+docetaxelによる併用化学療法を2コース施行し著効(CR)が得られた。その後引き続き縦隔に放射線治療を施行した。その1年後右上葉に腺癌が発見され右上葉部分切除とリンパ節郭清を施行した。郭清されたリンパ節にいずれの癌細胞も認められなかった。初回治療後3年以上経過した現在CR を維持している。 -
Gefitinibが有効であった肺腺癌転移による癌性腹膜炎の1例
31巻1号(2004);View Description Hide DescriptionEGF-R 阻害剤gefitinibが癌性腹膜炎に対し著効した1例を経験したので報告する。症例は61歳男性。肺腺癌の転移による癌性腹膜炎を発症し腹水のコントロールのため様々な抗癌剤を使用したが効果を得られなかった。gefitinib(250mg/日)を投与したところ腹水は減少し現在も効果は持続している。自覚症状とQOL が著明に改善し自宅での治療が可能であったことから本症例はgefitinibのよい適応例であったと考えられる。 -
Paclitaxel Weekly投与が原発巣に著効した4型進行胃癌の1例
31巻1号(2004);View Description Hide Description今回われわれはTS-1単独療法が無効であった癌性腹膜炎を伴う4型進行胃癌に対しpaclitaxel(TXL)weekly投与法が著効した症例を経験したので報告する。投与法はTXL 90mg/body/dayを週1回の3週連続投与1週休薬を1クールとした。3クール終了後原発巣の腫瘍の縮小ならびに臨床症状の著明な改善を認めた。現在まで5クール終了したが腫瘍のほとんどは消失し経過は良好で外来にて化学療法継続中である。癌性腹膜炎を伴った4型進行胃癌に対し様々な治療が試みられているものの依然その予後は極めて不良である。今後TXL weekly投与法が4型進行胃癌に対し有効な治療法の一つになり得ると考えられた。 -
Low-Dose CDDP/TS-1併用療法が著効した多発肝転移,脾転移を有する進行胃癌の1例
31巻1号(2004);View Description Hide DescriptionTS-1が進行再発胃癌に対する臨床治療に導入され単独投与のみならずCDDP を併用したcombination therapyの高い抗腫瘍効果が報告されている。多発肝転移脾転移を有するStageⅣ進行胃癌に対しlow-dose CDDP/TS-1併用療法を施行したところ原発巣のみならず肝転移脾転移も著明に縮小した。治療経過中の有害事象はgrade 1の口内炎とgrade 2の白血球減少を認めるのみであった。low-dose CDDP/TS-1併用療法は進行胃癌において極めて有効な治療法となり得ると考えられた。
-
-
症 例
-
-
Self-Expandable Metallic Stent留置が有用であった前庭部狭窄胃癌のTS-1奏効症例
31巻1号(2004);View Description Hide Descriptionステント留置により経口抗癌剤の投与が可能となり著効となった前庭部狭窄胃癌を経験したので報告する。症例は59歳男性。食後の腹部膨満と嘔吐にて受診。胃前庭部に全周性に狭窄したBorrmann 3型胃癌と多発肝転移を認めた。FP 療法1クールで内視鏡所見は改善したが狭窄症状は改善せずself-expandable metallic stentを留置した。常食まで摂取可能となり職場復帰した。外来にて経口抗癌剤TS-1(120mg/日)を投与し原発肝転移は縮小し奏効(PR)となった。
-
-
症 例
-
-
TS-1/Weekly CDDP併用療法により肺転移巣が消失した進行再発胃癌の1例
31巻1号(2004);View Description Hide Description肺転移を来した再発胃癌患者対して5-FU/weekly CDDP によるbiochemical modulationの理論を応用し外来通院継続治療が可能なTS-1とweekly CDDP の併用化学療法を施行した。レジメンはTS-180mg/m??を3週間経口投与CDDP 25mg/m??をday 8 15 22に併用投与し2週間休薬とした。これを1クールとし2クール行った。結果として1クール後肺転移巣が消失し現在外来通院中である。これはTS-1とCDDP を併用することにより肺転移に対しても奏効する可能性を示唆しており今後の胃癌肺転移に対する治療法として有望であると考えられた。
-
-
症 例
-
-
Low-Dose 5-Fluorouracil/Cisplatin(FP)療法でComplete Response(CR)が得られた多発性肺・骨転移を有するstage IV B肝癌の1例
31巻1号(2004);View Description Hide Description多発性肺骨転移を伴う肝細胞癌(以下HCC)に対してlow-dose 5-fluorouracil/cisplatin(5-FU/CDDP:LDFP)療法が著効しcomplete response(CR)が得られたstage ㈿B 高度進行HCC の症例を経験したので報告する。症例は81歳の女性。S 3のHCC に対して2000年12月肝動脈塞栓術を行った。2001年7月ごろより腰痛臀部痛がみられるようになり同年9月17日歩行障害で入院した。入院時AFP は59,300ng/ml PIVKA-㈼は25,700AU/ml と著明に上昇しCT 検査で両肺に多発転移巣と右腸骨に骨破壊像を伴う12×11×10cm の転移巣がみられた。肝原発巣は良好にコントロールされ他に肝内に転移再発巣はみられなかった。そこで10月1日より5-FU 250mg/body/dayを24時間持続点滴静注CDDP 10mg/bodyを週5日点滴静注するLDFP 療法を開始した。4週連続投与を1サイクルとし副作用が出現した時には適宜休薬した。2サイクル終了時には疼痛はほぼ消失しAFP は374ng/ml PIVKA-㈼は35AU/ml とさらに低下しCT 上肺転移巣はすべて消失しCR となり骨盤転移巣も著明に縮小しPR となった。全身状態およびQOL は著明に改善した。UFT 600mg/dayを内服することとし2001年12月10日に軽快退院した。腫瘍マーカーは2002年2月には正常値になった。その後腫瘍マーカーの再上昇はなくCT 上肝肺の再燃はみられず原発巣も消失した。また骨盤転移巣も縮小し続け2002年6月のCT 上造骨性の変化もみられるようになった。有害事象はgrade1の白血球減少のみであった。遠隔転移を伴うstage ㈿B 高度進行HCC に対してLDFP 療法は有用な治療法の一つと考えられた。 -
胆管癌の術後肝転移再発に対しUFT単剤療法が著効した1例
31巻1号(2004);View Description Hide Description下部胆管癌術後4か月目にCT 検査で肝転移再発を認めたがUFT 600mg 単剤療法で消失し以後1年間再発の徴候を認めていない。本療法は外来通院で加療可能でありまた副作用をまったく認めなかったことから胆管癌術後再発のfirst-lineとして検討に値するものと考えられた。
-
-
症 例
-
-
遠隔転移リンパ節が術後Levofolinate(l -LV)/5-Fluorouracil(5-FU)療法でCRとなった直腸癌切除例の1例
31巻1号(2004);View Description Hide Description術後l-LV/5-FU 療法が著効しCR を得たStageⅣ直腸癌の1例について報告する。症例は58歳女性。下部直腸に3型腫瘍とVirchowリンパ節腹部大動脈周囲リンパ節に転移を認め姑息的に腹会陰式直腸切断術を施行。術後l-LV/5-FU 療法を開始した。2コース終了時にはVirchowリンパ節触知せずCT で転移巣の消失が確認された。化学療法開始から14か月となるがCR が持続している。LV/5-FU 療法は大腸癌化学療法の標準療法で本邦でもl-LV/5-FU 療法が承認され当科でも積極的に使用し良好な結果が得られている。
-
-
連載講座
-
- 【センチネルリンパ節の研究最前線 】
-
-
特別寄稿
-
-
分子標的診断
31巻1号(2004);View Description Hide Description診断法の概念および腫瘍領域の総論各論についてのこれまでの知見からゲノム研究を用いた診断法を開発することによって標的を絞り込み個人個人に合わせた治療が将来可能となることが明らかである。それにより癌治療の有効性および忍容性が改善されると同時に治療効果の予測診断および用量選択が容易になると考えられる。大規模な共同プロジェクトで薬剤の有効性および忍容性についての研究をゲノムレベルで行えば無用な薬物投与が減り患者自身にも国内経済にも大きなメリットとなる。直腸結腸癌では複数の遺伝子異常が同定されておりこれらを標的とした指向療法の可能性が将来に向けて探られている。腫瘍特異抗原の発現についての研究から免疫療法の道が開かれている。抗癌療法に対する治療抵抗性についてゲノム情報の基本的理解が深まれば治療の対象を奏効する可能性が高く抵抗性を示しにくい患者のみに限定しやすくなるはずである。現在日本人女性における乳癌の相対リスクを調べるための日本モデルの作成が進められており予防療法の発展に寄与することが期待される。過去4年間に4種の新規標的療法が導入されている。このモデルが将来の標準となるためには学問研究の分野と製薬業界の協力体制をさらに強化していく必要がある。
-
-
国際がん情報
-
-