癌と化学療法
Volume 31, Issue 5, 2004
Volumes & issues:
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総 説
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癌治療における肺障害と対策
31巻5号(2004);View Description Hide Description癌治療における抗癌剤による肺障害と放射線肺炎についてその現状と対策について概説した。抗癌剤による間質性肺炎は病理学的に① 慢性間質性肺炎非特異性間質性肺炎② 好酸球性肺炎③ 閉塞性細気管支炎器質化肺炎④ びまん性肺胞傷害⑤ 過敏性肺炎に分類される。これらのうちびまん性肺胞傷害は急性あるいは慢性の臨床経過をとり高い死亡率を示す。したがってびまん性肺傷害が発症した場合には特に注意を要する。放射線肺炎は急性期の放射線肺臓炎と慢性期の放射線線維症が含まれる。これらは一般的に照射野内に限り発症する。一方古典的放射線肺臓炎以外に照射野外に拡がりリンパ球性肺臓炎あるいは閉塞性細気管支炎気質化肺炎を呈する“散発性放射線肺臓炎(sporadic radiationpneumonitis)”が報告されている。放射線肺炎は多くの場合予後良好であるが照射野を越えて病変が拡がる場合は時に致死的となることがある。
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特 集
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- 【大腸癌治療の進歩 】
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大腸癌に対する腹腔鏡下手術の現況
31巻5号(2004);View Description Hide Description大腸癌に対する腹腔鏡下手術の現状適応と問題点について概説する。内視鏡外科学会による全国集計によるとここ1〜2年進行癌に対する腹腔鏡下手術症例数が増加している。結腸sm 癌mp癌に対する本法の短期予後長期予後とも良好であり本法は標準術式になり得る。ss以深の進行癌に対してはまだ観察期間が十分とはいえずその適応はいまだcontroversialである。多施設共同randomised controlled trial(RCT)が2004年秋にもスタートする予定でありss以深の進行癌に対する本法はRCT に限って施行すべきである。直腸癌に対する腹腔鏡下手術は安全に施行可能であるが縫合不全の発生に留意する必要がある。本法が標準術式として認知されるためには教育と医療コストの問題を解決しなくてはならない。 -
大腸癌肝転移の外科治療—多施設における根治的肝切除例の検討—
31巻5号(2004);View Description Hide Description厚生省がん研究加藤班研究15施設で集積した肝転移切除症例について肝切除治療の成績と問題点を解析し検討した。根治的肝切除後5年以上経過観察した410例を本研究の対象とし切除術式手術時期肝転移巣最大径転移個数および再発時期再発部位などについて検討した。切除術式が系統的か部分かによるあるいは肝切除前CEA 値の高低による生存率の有意差はなかった。肝転移個数では4個以上で予後不良であった(p<0.034)。肝切除後の肺転移単独再発群(5年生存率39.6%) 残肝単独再発群(5年生存率32.8%)はそれぞれ転移再発のない群(5年生存率73.7%)に比べ有意に予後不良であった。肝肺ともに再発した群(5年生存率12.8%)は単独の肺転移再発や残肝再発よりもさらに予後不良であった。本研究では根治的肝切除全症例の累積5年生存率は50.1%で残肝再発率は37.3%と良好であった。おおむね肝切除適応に大きな異論がなく切除術式の違いによって予後に与える影響が少ないと考えられる転移巣径4cm未満の症例において各施設の5年生存率は88.2〜11.9%と極めて大きな差があった。この原因は肝転移の術前診断精度適応および手術時期などに由来する可能性が考えられた。 -
大腸癌肝転移に対するマイクロ波凝固療法
31巻5号(2004);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対する治療は積極的な肝切除と補助療法の進歩により予後が改善されつつある。肝切除が第一選択の治療方法としてコンセンサスが得られているがマイクロ波凝固療法(microwave coagulation therapy:MCT)やradiofrequencyablationも有用とする報告も多い。当科で施行した大腸癌肝転移に対するMCT の治療成績からその有用性について検討した。1990〜2003年に当科で大腸癌肝転移に対する初回治療として根治的にMCT を施行した52例を対象とし術式と予後について検討した。なお同時期に残肝再発に対し2回目治療として外科的局所療法を施行した33例について追加検討した。またFong らのclinical risk scoring(CRS)の原発巣リンパ節転移再発時期腫瘍個数術前CEA 値最大腫瘍径を各1点(0〜5点)とし検討した。初回治療52例の術式は経皮MCT 4例(肝血流遮断3例) 開腹MCT 23例肝切除+MCT 25例であった。MCT 施行症例の検討から経皮MCT の適応は単発で腫瘍径20mm 以下にすべきと考えられた。5年生存率は経皮および開腹MCT27例で20% 肝切除+MCT 25例で24%であり同時期に施行した肝切除68例の24%と差を認めなかった。2回目治療33例の術式は経皮MCT 7例腹腔鏡下MCT 1例開腹MCT 9例肝切除+MCT 4例肝切除12例で5年生存率はMCTのみ17例が20% 肝切除12例が31%とやや肝切除が良好であったが有意差を認めなかった。28例あったCRS 3の5年生存率は17%でFong らの肝切除のみでの20%と差のない成績であった。5年生存率よりみてMCT は肝切除と同等の治療効果を認めた。残肝再発に対してもMCT は有用な治療方法と考えられた。 -
肝動注療法—大腸癌肝転移に対する動注化学療法—
31巻5号(2004);View Description Hide Description肝転移は大腸癌においてよくみられる合併症の一つである。肝転移を切除すれば長期の生存が得られる。しかし患者の大多数は切除不能である。このような患者を治療するための別の方法として動注化学療法があり本邦では5-FU 1,000mg/m25時間の投与がなされている。本稿では今日の動注化学療法の位置付けをまとめた。動注化学療法は全身化学療法に比し高い直接効果をもっているが多くの試験で生存期間の延長は証明できなかった。重要な問題はいかにリザーバーに接続してカテーテルを留置するテクニカルな面でまだ解決されていない。そして全身化学療法との併用も重要な問題である。さらに大腸癌肝転移に動注化学療法の地位を確立するためには生存期間を第一エンドポイントとした全身化学療法との比較試験が必要である。 -
化学療法
31巻5号(2004);View Description Hide Description大腸がん化学療法は現在かつてないほどの変革のさなかにある。すなわちつい10年ほど前には予想し得なかった状況が展開している。大腸がんでは長らく5-FU が唯一無二の薬剤として中心的役割を果たしてきた。しかし再現性のある奏効率が示されるようになったのはleucovorin(LV)による5-FU のbiochemical modulationからである。奏効率20〜30% 生存期間の中央値(MST)10〜12か月が得られた。次いでCPT-11を5-FU+LV 療法に組み込んだIFL 療法が開発された。MST は14〜15か月へと延長したが副作用が重篤であり現在では一般臨床で推奨されない。欧州では2日間にわたるLV を併用した5-FU の持続点滴静注とその間2回の5-FU の急速静注を組み合わせたde Gramont regimenが開発され優れた抗腫瘍効果と軽減された副作用が示された。de Gramont regimenにさらに第三世代のcisplatinを併用したFOLFOX 4は低毒性と安定して1年を超えるMST を発揮しまたIFL やIROX(CPT-11and oxaliplatin)といった他の有用なレジメンとの大規模第㈽相比較試験で最も優れた奏効率と受容可能な副作用が示されたため現在ではFOLFOX 4が進行大腸がんの標準的化学療法と考えられている。さらに最近では分子標的の一つであるvascular endotherialgrowth factor(VEGF)に対する抗体医薬であるbevacizumabをIFL に併用することにより20か月に達さんとするMSTが報告されている。このように最近の大腸がん化学療法は正に瞠目すべき進歩を遂げており今後こうした分子標的薬を併用した臨床研究がさらに展開されるであろう。
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原 著
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Nedaplatin動注時の投与量計算式に関する検討
31巻5号(2004);View Description Hide Description薬物濃度対時間曲線下面積(以下AUC)は抗腫瘍効果が高くかつ重篤な副作用を回避する至適投与量の決定において非常に重要でそして同じ投与量でも実測AUC には個人差がありその投与量の算出は重要と思われる。われわれは口腔癌の治療としてnedaplatin(CDGP)を使用した超選択的動注化学療法を施行している。今回CDGP の超選択的動注における投与量の計算式について検討した。1998年〜2002年までに香川医科大学歯科口腔外科において治療を施行した口腔癌一次症例18例について投与量AUCCDGP クリアランス24時間クレアチニンクリアランスの相関について検討した。その結果CDGP の超選択的動注化学療法における投与量の計算式として以下の結果を得た。dosage=AUC×(0.027×CCr+7.17) -
Salvage ChemotherapyとしてのUFT+Cyclophosphamide療法の有用性
31巻5号(2004);View Description Hide Description前治療を有する進行再発乳癌に対してUFT+cyclophosphamide(CPA)の経口投与を12例に行った。UFT の投与量はtegafurにして400〜600mg/日CPA は100mg/日とし投与方法は2週間投与し1週間休薬あるいは5日間投与し2日間休薬の内服投与とした。治療結果はCR 2例PR 2例long NC 2例で奏効率33.3% clinical benefit 50%であった。有害事象ではgrade3の下痢が1例にみられ入院を要した。grade1以上の白血球減少が5例血小板減少が2例ずつみられたがコントロール可能であった。UFT+CPA は外来投与が可能であるという利点もあり前治療を有する進行再発乳癌の治療として試みられるべき治療法の一つと考えられる。 -
進行・再発乳癌患者におけるPaclitaxelを軸とした治療法の効果および有害反応の検討
31巻5号(2004);View Description Hide Description2000年11月〜2002年9月の間に当科でpaclitaxel(TXL)を投与した進行再発乳癌41症例中追跡不能の1例を除く40症例について治療効果および有害反応を検討した。患者年齢は36〜81歳(中央値56) 32例(80%)が再発例8例がstage㈿であった。主要な治療対象部位は肝が最も多く22例(55%) 前化学療法のレジメ数は0〜5回(中央値2)21例(53%)がanthracycline系薬剤抵抗性15例(38%)がdocetaxel抵抗性であった。29例(73%)はweekly投与11例はweekly投与導入後bi-weekly投与に移行した。weekly投与例のTXL 1回投与量は30〜140mg/body(中央値100) 全症例の総投与量は600〜6,480mg/body(中央値1,820)であった。奏効率は35%であり24週間以上の不変18例を加えたclinical benefit は80%に達した。奏効期間は8〜79週+(中央値27+) 無進行生存期間は8〜83週+(中央値33+) 全生存期間は10〜99週+(中央値41.5)であった。有害反応として末梢神経障害(45%) 悪心嘔吐(38%)などがみられたがいずれもgrade 1〜2がほとんどであった。26症例(65%)でホルモン療法剤やtrastuzumabが併用されていた。しかし併用療法剤別の検討では効果や有害反応に有意の差を認めなかった。TXL を軸とした治療は高いclinicalbenefit が得られ重篤な有害反応も少なく進行再発乳癌患者の治療として有用であると考えられた。 -
l -Leucovorin,5-FU併用療法の進行結腸・直腸癌に対する投与方法別の有用性に関する検討
31巻5号(2004);View Description Hide Descriptionl-leucovorin(l-LV)/5-FU 併用療法は進行結腸直腸癌に対して30〜40%と高い奏効率を示し標準治療となっている。現在本邦における承認用法用量は5-FU 600mg/m?? l-LV 250mg/m??の週1回6週投与2週休薬となっているが副作用のため外来での投与が困難となるケースも少なくない。今回われわれは治療効果の維持と副作用の軽減を期待して3週投与1週休薬というレジメンを従来の6週投与2週休薬と比較しその臨床効果と副作用について検討した。対象は2000年7月より2002年3月までに登録された54例で3週連続投与群33例と6週連続投与群21例。5-FU 投与量は体表面積1.50m??未満の症例には500mg/body 体表面積1.50m??以上の症例には750mg/bodyと二通りに設定したため平均投与量は3週連続投与群で431.6mg/m26週連続投与群で434.6mg/m??であった。臨床効果は奏効率で3週連続投与群0.0% 6週連続投与群23.5%であり有意差を認めた。副作用は3週連続投与群が消化器症状12.9%(下痢6.5%)骨髄抑制9.7% 一方6週連続投与群が消化器症状50.0%(下痢33.3%) 骨髄抑制11.1%であり下痢の出現頻度において6週連続投与群のほうが有意に高かった。grade3以上の副作用は両群に下痢を1例ずつ認めたのみであった。今回の検討では副作用特に下痢の出現は3週連続投与のほうが軽度であると考えられたが治療効果については今後さらに検討する必要があると考えられた。 -
同時性両側腎癌または単腎症腎癌における治療と移植の接点
31巻5号(2004);View Description Hide Description両側同時性腎癌4例と単腎症腎癌3例を経験した。単腎症腎癌3例中1例は腎部分切除術他の2例は腫瘍径が7cmを超えて中央部に位置していたため体外手術後自家腎移植したがそのうち1例は術後急性腎不全血液透析中腎出血のため自己腎を摘出した。しかしその後82歳の母より生体腎移植を施行した。両側腎癌4例中2例は通常の腎部分切除を実施。多発性骨転移肺転移を有していた1例は二期的に全癌病巣を摘出UFT INF-α投与中であり残り1例は遺伝性両側多発腎癌であったが両側腎摘に引き続いて弟からの生体腎移植を施行した。全例14年から2年のfollow up期間中癌再発なく腎機能良好である。両側性腎癌あるいは単腎症腎癌治療における移植医療の接点につき報告した。
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症 例
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Docetaxel, Cisplatin, 5-FU Regimen 2クール後に放射線照射療法を併用した下咽頭癌4症例
31巻5号(2004);View Description Hide Description今回われわれは下咽頭癌に対してdocetaxel(TXT) cisplatin(CDDP) 5-FU を2コース投与しほぼCR が得られその後放射線治療を加え頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術を施行し喉頭温存されている症例を経験したので報告した。4症例に対してTXT CDDP 5-FU を2コース行いほぼCR となり引き続いて放射線治療と頸部郭清術を行った。特に著しい副作用は来さなかった。現在3例が1年9か月〜2年以上経過して喉頭温存のままdisease freeで健存している。 -
転移性乳癌患者に対するTrastuzumab-Vinorelbine併用療法の経験
31巻5号(2004);View Description Hide Descriptionインフォームドコンセントが得られたHER 2陽性転移性乳癌患者6名に対してtrastuzumab-vinorelbine併用療法を試みた。trastuzumab(4mg/kg)を初回投与し2回目以降は2mg/kg を毎週投与すると同時にvinorelbine25mg/m??を2週連続投与1週休薬で投与した。trastuzumabの投与回数は13〜34回(中央値27回)でありvinorelbineの投与回数は8〜22回(中央値17回)で治療効果はPR 4例NC 2例奏効率66%であった。いずれも一定期間効果が認められTTP は112〜274日(中央値205日)であった。副作用はgrade 3の白血球減少を1例に認めたが休薬期間に回復しその後の継続投与が可能であった。以上からtrastuzumab-vinorelbine併用療法はHER 2陽性転移性乳癌患者に対する治療の選択肢を広げ生存期間の延長につながる可能性があると考えられた。 -
Weekly Paclitaxel Regimenが多発性転移性乳癌に著効を示した1症例
31巻5号(2004);View Description Hide Description症例は36歳女性。1988年に乳癌のため定型的乳房切除を受け術後12年間無症状だったが呼吸困難と腰痛で来院。CT と骨シンチグラムで両肺に無数の転移性結節胸水貯留と多発性骨転移を認めた。weekly paclitaxelを80mg/m2 3週投与1週休薬で施行bisphosphonateを併用したが6回投与で肺病変は著明に改善12回投与で消失(CR) 骨転移も改善がみられ(PR) 外来で30回投与中であるが肺CR と骨PR は維持されている。副作用は中等度の脱毛のみであった。 -
初診時に著明な白血球増多を認め放射線化学療法により長期完全寛解を得た大細胞肺癌の1例
31巻5号(2004);View Description Hide Description症例は45歳女性。発熱のため近医に入院した。血液検査にて白血球増多を認め胸部CT にて右上葉胸膜直下に結節影および右肺門縦隔リンパ節腫脹を認めた。肺癌が疑われ精査治療目的にて当科に転院した。入院時白血球は48,800/μlと高値を認め超音波ガイド下生検にて大細胞癌を検出した。放射線照射60Gyおよびcarboplatin paclitaxelによる化学療法4コースの同時併用にて完全寛解を獲得した。現在約3年経過しているが再発を認めていない。G-CSF に対する免疫特殊染色では陰性であったが入院時著明高値であった血清G-CSF およびIL-6は治療後低下した。一般に予後不良とされる白血球増多を伴う肺癌において良好な治療効果が得られたため報告する。 -
TS-1/CDDP療法が著効した遠隔転移食道癌の1例
31巻5号(2004);View Description Hide Description症例:51歳男性。転移性食道癌の治療目的で入院した。胃噴門部まで浸潤する長さ20cm の食道癌であり頸部縦隔および胃大動脈周囲のリンパ節に転移がみられた。CEA は27,060ng/ml と高値を示した。遠隔転移を伴う進行食道癌のためTS-1とCDDP を併用する化学療法を行った。1コースを28日としてTS-1(120mg/日)は14日間投与14日間休薬としCDDP は8日目に120mg を24時間で点滴静注した。2コース終了後食道の病変は著明に縮小した。自覚症状がなくなり食事も全量摂取可能となったため退院した。3コース目からはCDDP 投与時のみ4日間ほど入院した。5コース終了後の上部消化管内視鏡検査では食道の病変は瘢痕化し生検組織検査では癌組織は得られなかった。CEA は710ng/ml と約75%減少し胸腹部CT 検査ではリンパ節転移もほぼ消失した。治療に伴う重篤な合併症はなかった。治療開始13か月後自覚症状なく元気に外来通院されている。 -
胃癌癌性腹膜炎に対するWeekly Paclitaxel投与法の有用性
31巻5号(2004);View Description Hide Description胃癌癌性腹膜炎に対しTS-1は副作用のために投与できなかったがweekly paclitaxel(TXL)が奏効した3症例を経験したので報告する。年齢は73〜82歳男性2人女性1人でいずれも組織型は未分化型胃癌であった。TXL はshortpremedicationの後62〜80mg/m??の点滴静注を3週投与1週休薬のweekly regimenで投与した。3例とも1クール終了後から腹水の減少と通過障害の改善を認めQOL の改善が得られた。1例において1回のみgrade3の好中球減少症を生じた以外に重篤な副作用は認めずweekly TXL 投与は癌性腹膜炎に対して有効な治療法であると考えられた。 -
TS-1低用量CDDP療法により長期生存を得ている再発胃癌の2症例
31巻5号(2004);View Description Hide DescriptionTS-1と低用量CDDP の併用化学療法(以下TS-1/LCDDP 療法)を行い良好なQOL を維持し長期生存を得ている胃癌根治切除術後再発の2症例を経験した。症例1は60歳男性。pT 3 pN 2 StageⅢ B の胃癌に対して胃全摘術を施行。術後3か月時多発肝転移を認めたため外来にてTS-1/LCDDP 療法(TS-1100mg/body/day CDDP 10mg weekly;4週投与2週休薬)を開始した。4コース終了時CR となりその後4コース施行した。現在再発後1年11か月経過しCR を維持している。有害事象は色素沈着(grade1)のみであった。症例2は65歳男性。pT 3 pN 1 StageⅢ A の胃癌に対する幽門側胃切除施行後1年のCT にて多発肺肝転移が同定された。TS-1/LCDDP 療法(症例1と同法)を開始し計12コース施行した。初回投与後2年4か月経過している。治療効果は肺転移肝転移ともにNC であるが自覚症状なく外来通院での化学療法を継続可能である。有害事象としては白血球減少(grade 2)のためCDDP の併用の休止を必要とした他grade 1の色素沈着口内炎悪心を認めた。両症例ともにほぼ全経過にわたり外来通院による治療でありPS 0を維持し就労が可能でQOL は良好に保たれた。従来の腫瘍縮小効果を主目的とする化学療法から長期生存やQOL の維持を重視する治療が中心となりつつある現在本療法は胃癌再発治療のfirst-lineとして有用であることが示された。 -
胃全摘出後吻合部再発にTS-1が有効だった胃癌の2例
31巻5号(2004);View Description Hide Description症例は73歳男性と46歳男性の2例。胃癌の胃全摘後に吻合部再発を認め患者が手術を希望しなかったためTS-1の投与を行った。それぞれ100mg 120mg で投与を開始したところ両者とも1コース途中に狭窄症状の消失を認め4コース終了時には内視鏡的に吻合部再発腫瘍の消失と病理組織学的にも腫瘍の消失を確認した。胃癌の胃全摘後吻合部再発に対する治療は症状緩和を目的とした姑息的手術を選択する例が多いが本症例のように手術を希望しない患者に対して外来通院で投与可能なTS-1は患者のQOL を損なわずに行える有効な治療法となり得ると考えられた。 -
大腸癌術後Dukes D,根治度C症例に対するUFT+Leucovorin(po)併用による在宅化学療法の試み
31巻5号(2004);View Description Hide Description大腸癌化学療法において5-fluorouracil(5-FU)/Leucovorin(LV)療法は標準的治療と位置付けられている。今回われわれはその5-FU のbiochemical modulationによる効果増強作用を有するLV に着目し患者の利便性を考慮した内服によるUFT+LV 併用在宅化学療法を試みた。対象:大腸癌術後Dukes D 根治度C 症例で測定可能転移病変を有する症例でかつ化学療法施行可能な24例を対象とした。方法:UFT は300〜400mg/m??/day LV は15mg/body/day(total210mg)を2週投与2週休薬を1コースとし4コース以上を目標に投与した。また重篤な副作用がないかぎりUFT のdose upを可能とした。結果:評価可能であった22例における奏効率は22.7%であった。またNC が11例と全症例の半数(50%)を占めていた。本療法は入院などの必要がなくQOL を損なうことの少ない在宅化学療法であり今後大腸癌化学療法の選択肢の一つとなり得ると考えられた。 -
肝動注を中心とした種々の化学療法が奏効した大腸癌同時性肝転移(H3)の1例
31巻5号(2004);View Description Hide Description今回われわれは肝動注を中心とした種々の化学療法が奏効した大腸癌同時性多発肝転移の1例を経験したので報告する。症例は42歳女性。両葉に多発する肝転移(H??)を伴う2型下行結腸癌の診断にて2001年9月左半結腸切除を施行した。術後肝動注用リザーバーを埋め込み5-FU を中心とした肝動注を開始した。外来投与を主体としてpharmacokineticmodulating therapy(PMC) Leucovorin/CDDP/5-FU 動注療法Levoforinate/CDDP/5-FU 動注療法Levoforinate静注併用5-FU 動注療法と全身化学療法としてのCPT-11/low-dose CDDP 療法との隔週での交替療法を行った。治療開始後6か月より肝転移巣の縮小が認められ2003年5月までに著明な腫瘍縮小効果が得られた。術後2年経過した時点で両葉に3個肺転移は認められるものの良好なquality of lifeが維持されている。 -
放射線療法併用TS-1/Low-Dose CDDP療法が奏効した肝細胞癌術後骨転移の1例
31巻5号(2004);View Description Hide Description遠隔転移を来した肝細胞癌の治療法は確立されたものがなくまた有効な抗癌剤も乏しいのが現状である。今回われわれは肝細胞癌術後骨転移に対してTS-1/low-dose CDDP 療法と放射線療法を併用し奏効した1例を経験した。症例は58歳男性。肝細胞癌(HCC)に対して二度の肝切除後AFP 12,350.5ng/ml PIVKA-㈼ 993mAU/ml と異常高値を認め骨シンチグラフィにて左腸骨に取り込みを認めたため肝細胞癌骨転移と診断した。TS-1/low-dose CDDP 療法と同部位に外照射36Gyを行った。化学療法はTS-1 100mg/dayを21日間CDDP 10mg/body(day1〜5 8〜12)を投与した。その後TS-1/low-dose CDDP 療法のみ2クール施行した。その結果疼痛は消失AFP PIVKA-㈼は正常化し骨シンチグラフィでの取り込みも減少した。有害事象はgrade 1の悪心白血球減少を認めたのみであった。本症例から今後肝細胞癌の骨転移に対して放射線治療だけでなくTS-1/low-dose CDDP 療法の併用が治療の選択肢となり得る可能性が示唆された。 -
再燃転移性前立腺癌に対する多量Calcitriol併用Docetaxel動注化学療法
31巻5号(2004);View Description Hide Descriptiondocetaxel 白金製剤を含む前化学療法と広範囲な転移巣への放射線治療歴を有するホルモン抵抗性再燃前立腺癌10例に対しhigh-dose calcitriol併用docetaxel 白金製剤の動注化学療法を実施検討した。performance status(ECOG)3〜4が10例中9例12month survival probability(CALGB)で0.5以下が同じく10例中9例で3例の80歳以上の高齢者を対象としたにもかかわらず早期の癌疼痛の緩和とQOL の改善が認められた。本治療は末期臨床的再燃前立腺癌症例に対するclinical benefit に少なからず寄与するものと思われた。 -
集学的治療を施行した進行膀胱癌の1例
31巻5号(2004);View Description Hide Description症例は63歳女性。肉眼的血尿を主訴に当科受診。膀胱鏡CT およびMRI にて壁外へ浸潤する膀胱腫瘍両側のbulkyな肺転移両側水腎症骨盤内リンパ節転移ありStageⅣ進行膀胱癌と診断。腎機能障害自覚症状の改善と今後の化学療法のためまず膀胱子宮全摘尿管皮膚瘻術リザーバー留置を施行。TCC>SCC G 2>G 3 pT 4a n 2。続いて肺転移は少量CDDP 反復リザーバー動注をしつつ両側BAI 左側には放射線照射40Gyを併用した。3か月後には右側は63% 左側は91%縮小し右は引き続き肺下葉切除術を実施した。途中嘔気食欲不振にてCDDP からdocetaxelに変更したが特に問題なく外来治療できた。その後左頭蓋底転移左膝蓋骨転移が出現したがその都度局所治療にて症状は緩和し退院可能だった。動注を含む集学的治療により約3年間QOL を維持した状態で治療し得た。2年10か月後にDIC にて永眠されるまで肺転移巣については制御できた。
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短 報
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婦人科悪性腫瘍に対する化学放射線療法—5-FUとNedaplatinの投与順序と血液毒性—
31巻5号(2004);View Description Hide Descriptionこの論文は英文抄録のみ存在します。抄録部分は原則的に和文抄録のみ表示しております。(本文はご覧いただけます)
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連載講座
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- 【センチネルリンパ節の研究最前線 】
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甲 状 腺 癌
31巻5号(2004);View Description Hide Description甲状腺癌は高率にリンパ節転移を認めるが比較的予後良好な癌の一つとして知られている。リンパ管の豊富な実質臓器である甲状腺においてSN concept の妥当性について検討した。甲状腺乳頭癌に対し色素法32例RI法23例を対象にSN mapping を行った。色素法RI 法ともにセンチネルリンパ節の同定率正診率はいずれも90%以上であり甲状腺癌においてもSN concept が成立する可能性が考えられた。SN concept を応用することにより再発率を増加させることなく術後QOL の改善に寄与するものと思われる。SN conceptに基づく内視鏡下または小切開下の根治術術中RI カウントに基づく郭清の均質化濾胞性腫瘍の良悪性の鑑別などの臨床応用が考えられる。SN 同定により合理的な郭清範囲の設定省略に重要な情報を提供することになる。
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国際がん情報
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Journal Club
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用語解説
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細胞外マトリックス(Extracellular Matrix:ECM)、強度変調放射線治療(IMRT)、血管新生、補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine)、SNPs、プロテオーム
31巻5号(2004);View Description Hide Description
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