癌と化学療法
Volume 31, Issue 7, 2004
Volumes & issues:
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総 説
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Proteasome阻害剤
31巻7号(2004);View Description Hide Description新たな分子標的薬剤の一つとして蛋白分解装置proteasomeの阻害剤が登場した。転写因子NF-κB の活性化の阻害が主な作用機序でありその他に細胞周期の変化細胞死の誘導がある。まだこれ以外にも作用のある可能性はあるが多発性骨髄腫の治療薬としてまず注目度が極めて高い。second-lineとしての位置付けでデビューしたが現在この薬剤をfirst-lineからどの位置でも使用が可能となっていくであろう。非ホジキンリンパ腫や肺非小細胞癌のように有効性が示されさらなる臨床試験が計画されているが今のところ大腸癌慢性リンパ性白血病では有効性の優位性が示されていない。耐性機序についても研究が進行している。日本でもいよいよ5月中旬から開始されるが個人輸入も可能となってきており新たな問題を提起している。過剰投与の有害事象例もあり専門医による治療が必要である。
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特 集
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- 【バイオマーカーの意義と問題点】
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婦人科腫瘍におけるバイオマーカーの意義と問題点
31巻7号(2004);View Description Hide Descriptionここでは婦人科腫瘍のなかで最も種々のマーカーが活躍する卵巣癌に絞り概説することとした。第一に卵巣腫瘍のなかで癌の存在の有無やその進行程度の診断に盛んに用いられる血清腫瘍マーカーはモノクローナル抗体の糖鎖の認識部位によって異なる。CA 125 CA 130 CA 602はコア蛋白関連抗原にCA 19-9 CA 50 KMO-1やCA 72-4 STN CA 546はそれぞれ異なる糖鎖関連抗原に抗原決定基が存在しこれら異なるグループのマーカーを組み合わせ種々の組織型を有する卵巣癌の多様性に応じた診断効果を上げようとしている。次に卵巣癌早期発見マーカーとしては患者血清中のproteomicpattern解析single nucleotide polymorphism(SNP)の解析が試みられている。最後に卵巣癌次世代治療として期待されるcytostatic drug 治療のモニターとしてのバイオマーカーとなろうがこれは使用する薬剤の作用機序により異なる。bryostatinによるcisplatin増感治療では細胞内protein kinase C(PKC)活性が有用マーカーとなろう。VEGF 抑制モノクローナル抗体bevacizumab治療ではVEGF はもちろんbFGF の他血管内皮マーカーのCD-31 抗angiogenic proteinであるthrombospondin-1(TSP-1)などの測定が有力候補としてあげられている。 -
泌尿器癌におけるバイオマーカーの意義と問題点
31巻7号(2004);View Description Hide Description泌尿器癌(前立腺癌尿路上皮癌腎癌精巣腫瘍)におけるバイオマーカーの診断的および予後予測因子としての意義を評価するため文献的に検討した。前立腺癌においては前立腺特異抗原(PSA)を凌駕するマーカーはいまだにみられないが最近ではPSA gray zone症例におけるPSA 関連マーカーの有用性が議論されている。また前立腺特異膜抗原(PSMA)はPSA 発現の低下していることがあるhigh-grade症例の診断や顕微鏡レベルの循環血液中前立腺癌細胞の検出に応用可能かもしれない。尿路上皮癌では近年尿中バイオマーカーの進歩が著しく尿細胞診の感受性の低いlow-grade癌の診断の一助となる可能性が指摘されている。精巣腫瘍では乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH) α胎児性蛋白(AFP) ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が診断や予後分類において欠くことのできないマーカーである。一方腎癌は確立されたバイオマーカーに乏しく今後特異的かつその生物学的活性を反映し得るマーカーの開発が望まれる。 -
消化器領域における悪性腫瘍のバイオマーカーの意義と問題点
31巻7号(2004);View Description Hide Descriptionバイオマーカーとは単に癌かどうかといった指標となる腫瘍マーカーのみならず細胞が癌化する前から産生する指標物質や癌の進展転移の過程で産生される物質を指す。消化器領域の癌において臨床的に最も広範囲かつ頻繁に利用されているマーカーはCEA である。消化器癌のうち食道癌ではSCC 抗原とCYFRA が胃癌ではCEA とCA 19-9が大腸癌ではCEA が臨床上有効であるがいずれも早期癌などで陽性率は低くスクリーニングに利用することは困難である。また新規バイオマーカーの出現もあるが活用の意義はあくまでも補助的なものである。肝細胞癌の診断にはAFP とPIVKA-㈼が臨床上有用なマーカーでありいずれも測定法の改良が進み高感度化されてきているが良性肝疾患との鑑別など特異性に関する課題が残っている。膵癌胆道癌では癌細胞より産生される抗原の構造単位が糖鎖のものに有望なものがあり癌特異性は高いが陽性率は50%程度である。今後は分子生物学などの手法により特異的な癌遺伝子産物や癌抑制遺伝子が有用なバイオマーカーになる可能性がある。 -
乳癌におけるバイオマーカー
31巻7号(2004);View Description Hide Description乳癌患者の診療におけるバイオマーカーの有用性は以下の4項目に大別される。① 早期診断:特異度が高い腫瘍マーカーとして血中CA 15-3があげられるが感度が低いため早期診断には役立たない。血液中乳頭吸引分泌液中のproteomicsプロフィールを早期診断につなげる試みが行われている。本邦では乳頭異常分泌中のCEA HER 2測定が保険適応を得ている。② 乳癌患者のモニタリング:本邦では多くの乳癌専門家が再発の早期発見治療効果判定の補助経過のモニタリング目的で血中腫瘍マーカーをルーチンに測定している。2001年度日本乳癌学会班研究による「本邦における腫瘍マーカー測定の現状に関するアンケート調査」「腫瘍マーカーによる治療効果判定に関する研究」の成果を紹介する。③予後因子:古典的な予後因子では予測し得ない遠隔転移発生を予測できるバイオマーカーが求められている。2003年の第8回St.Gallenコンセンサス会議で討論の対象となった三つの予後因子(UPA/PAI-1,cyclin E,gene profiling)を中心に論議する。④ 治療効果予測因子:ホルモン療法に対しては信頼性の高い効果予測因子としてホルモン受容体(HR)が臨床応用されている。HR 陽性にもかかわらずホルモン療法が無効な症例を選別するため他のバイオマーカーが検討されている。化学療法の効果予測因子に関しても最近の研究の動向臨床的意義問題点今後の展望を論じる。 -
骨転移のバイオマーカー
31巻7号(2004);View Description Hide Description骨は悪性腫瘍の転移の好発部位である。悪性腫瘍の骨転移の成立には腫瘍細胞に複数の骨転移関連因子が発現する必要があることが明らかになってきた。骨吸収および形成マーカーはある現時点での破骨細胞や骨芽細胞機能を特異的に評価できるためこれらを組み合わせることにより各時点での骨代謝動態を評価できることから広く臨床応用されている。これらの骨代謝マーカーは特に骨転移病変のスクリーニング抗腫瘍薬や骨吸収抑制薬による骨病変の治療効果のモニタリングに有用である。しかしながら悪性腫瘍の骨転移の確定診断あるいは骨病変の重症度の評価などには腫瘍関連マーカーやシンチグラフィMRIなどの画像診断を併用することが重要である。さらに最近腫瘍による破骨細胞活性の新規マーカーとして血清receptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL) osteoprotegerin(OPG)値ならびに両者の比が提唱されておりこれらは骨病変の進展の予測のみならず予後因子として注目されている。 -
分子標的治療
31巻7号(2004);View Description Hide Descriptionがん転移は増殖血管新生浸潤接着の一連のステップが重要でありそのようながん進展にかかわる分子を格好の標的としたいわゆる分子標的薬の創薬育薬が飛躍的に進んでいる。がん治療の大きな目標は生存期間の延長とQOL の保持改善であることはいうまでもない。従来の抗がん剤とは異なるコンセプトで開発される分子標的医薬品は腫瘍縮小効果を基本とする抗がん剤の評価法をすべて適用できない問題があり現在いろいろなバイオーマーカーが用いられている。ここでは分子標的治療薬の臨床開発におけるバイオマーカーの意義と問題点について概説する。
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原 著
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頭頸部癌におけるCepharanthinの放射線口腔乾燥症抑制効果
31巻7号(2004);View Description Hide Descriptionわれわれは37例の頭頸部癌患者におけるcepharanthinの放射線口腔乾燥症障害抑制効果を検討した。cepharanthin非投与群では耳下腺のnormal tissue complication probability(NTCP) mean dose(MD)が高値になるに従い口腔乾燥症の程度が有意に高くなった。一方cepharanthin投与群では耳下腺のNTCP MD がより高値であったにもかかわらず口腔乾燥症の程度が軽い例が多かった。ロジスティック回帰による多変量解析では高度の口腔乾燥症に有意に関連していたのは耳下腺のMD とcepharanthin投与の有無であった。cepharanthinを頭頸部癌の放射線治療に使用することで放射線口腔乾燥症を軽減できる可能性がある。 -
高度進行胃癌に対するLow-Dose TS-1+CDDP療法後のSecond-Line Therapyの検討
31巻7号(2004);View Description Hide Description高度進行胃癌16例に対するlow-dose TS-1+CDDP 療法後のsecond-line(paclitaxel療法およびCPT-11/CDDP療法)の治療成績について報告する。first-line(low-dose TS-1+CDDP 療法)の奏効率は55.6%であった。second-lineのpaclitaxel療法群CPT-11/CDDP 療法群いずれにも奏効例を認めなかったが全症例のMST は16.3か月1年生存率は60%であった。second-line別の予後ではpaclitaxel療法群はCPT-11/CDDP 療法群に比較して有意に予後が良好であった。副作用はfirst-lineでgrade3の白血球減少を1例に認めたが他にはgrade2以上の副作用は認めずsecond-lineでもgrade 2以上の副作用は認めなかった。以上よりfirst-lineはlow-dose TS-1+CDDP 療法second-lineはpaclitaxel療法が2週に一度の外来通院ですみしかも予後良好で副作用も軽微なことより施行する価値が十分あると考えられた。 -
大腸癌組織中DPD・OPRT活性よりみた大腸癌に対する化学療法
31巻7号(2004);View Description Hide Description5-FU は消化器癌に対して最も汎用されている抗癌剤で癌組織中の代謝に関係した酵素の量によりその効果に差があるとされている。今回われわれは大腸癌組織中および正常粘膜のDPD 活性OPRT 活性を測定し臨床病理学的因子と比較検討した。対象は1999年より2003年3月までに当科で切除術を施行した大腸癌46例(結腸癌28例直腸癌18例)を用いた。DPD 活性には癌部非癌部に差がなかったがOPRT 活性は癌部が有意に高値であった。DPD 活性と臨床病理学的因子との関係はなかったがOPRT 活性は性別および分化度で差を認めた。粘液癌は分化型腺癌と比較して5-FU の分解酵素であるDPD 活性は同等であったが5-FU のリン酸化に関与するOPRT 活性は有意に低値であった。大腸粘液癌は分化型腺癌に比べ5-FU 抵抗性であり粘液癌に対する化学療法には5-FU 以外の抗癌剤を選択する必要があることが示唆された。 -
Cisplatin and Gemcitabine in Patients with Metastatic Cervical Cancer
31巻7号(2004);View Description Hide Descriptionこの論文は英文抄録のみ存在します。抄録部分は原則的に和文抄録のみ表示しております。(本文はご覧いただけます) -
前立腺癌におけるCepharanthinの放射線の正常組織障害抑制効果
31巻7号(2004);View Description Hide Description97例の前立腺癌放射線治療患者において膀胱尿道および直腸障害の予防に関するcepharanthinの効果をretrospectiveに検討した。膀胱尿道の急性障害ではcepharanthinの経静脈投与群が経口投与群非投与群と比較して有意に障害の程度が軽かった。直腸の急性障害では明らかな予防効果は認められなかったが晩期障害において経静脈投与の有効性が示唆された。cepharanthinを前立腺癌の放射線治療に併用することにより急性障害および晩期障害を軽減できる可能性がある。
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症 例
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予防的全脳照射後の脳転移にNogitecan Hydrochloride(Topotecan)が有効であった肺小細胞癌の1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例は55歳女性。限局型肺小細胞癌に対し放射線化学療法にて完全寛解を得たため予防的全脳照射を施行。その1年後に局所再発と脳転移がみられた。nogitecan(topotecan)による化学療法を3コース行い脳転移の著明な縮小をみた。予防的全脳照射後の脳転移再発症例に対してもnogitecan(topotecan)は有効と考えられた。 -
TS-1/CDDP併用放射線療法にて完治した頸部・胸部上部進行食道癌の1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例:52歳男性。嚥下困難の精査治療目的のため入院した。上部消化管内視鏡検査にて頸部から胸部上部食道にかけて全周性の狭窄性病変がみられ生検組織検査により平上皮癌の診断が得られた。転移はみられなかったが心筋梗塞の既往があることから外科的治療を拒否されTS-1とCDDP に放射線を併用する化学放射線療法を希望された。1コースを21日として放射線治療は化学療法開始時から2Gy/日週5回計30Gy照射した。TS-1は1回60mg を1日2回14日間連日投与その後7日間は休薬としCDDP はTS-1開始8日目に120mg(70mg/m2)を24時間で点滴静注した。2コース終了後食道病変は著明に縮小し狭窄は改善した。その後4コースのTS-1とCDDP の併用化学療法が行われ腫瘍は完全に消失した。全経過においてgrade3以上の血液毒性またgrade2以上の非血液毒性はみられなかった。治療開始から2年以上再発はなく完治が期待される。 -
TS-1/CDDP併用療法にて門脈内腫瘍栓が消失した進行胃癌の1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例は71歳男性。体重減少とタール便を主訴に来院した。上部消化管内視鏡検査腹部CT にて門脈内腫瘍栓と腹部リンパ節転移を伴う2型胃癌と診断された。TS-1:120mg/dayを21日間連続経口投与8日目にCDDP:90mg/body/dayを点滴静注し明らかな副作用を認めず退院となった。その後患者側の判断で通院せず無治療で放置していたが1年5か月後にタール便を主訴に再び来院した。入院後の腹部CT で門脈内腫瘍栓の消失と原発巣およびリンパ節転移の著明な縮小を認めた。TS-1単独療法再開後の上部消化管内視鏡検査では組織学的にも悪性所見を認めなくなった。検索したかぎり胃癌からの門脈内腫瘍栓が化学療法にて消失した報告例はなくTS-1/CDDP 併用療法は高度進行胃癌に対し有用と考えられた。また併用療法を1クール施行後1年5か月の間無治療であったにもかかわらず門脈内腫瘍栓の消失と原発巣およびリンパ節転移の縮小が認められた点においても極めてまれな症例と考えられた。 -
胃癌の多発性肝転移にTS-1内服とMMC静注が著効した1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例は49歳男性。2002年9月に幽門前庭部の全周性の3型胃癌に対し幽門側胃切除術(D 3) 胆摘術を施行した。開腹時に肝左葉中心に複数の転移巣が認められ肝左葉外側区域切除を施行したが右葉に小転移巣が遺残し根治度C の手術となった。抗癌剤感受性試験の結果により外来補助化学療法としてTS-1(100mg/day4週投与2週休薬)とMMC(10mg/body day1)の併用療法を開始した。1コース終了時には腫瘍マーカーの上昇とCT にて残肝に多発する転移巣を認めた。白血球減少のため2コース以降はTS-1(100mg/day 4週投与2週休薬)とMMC 4mg/body隔週投与(day 1 14)に変更したところ腫瘍マーカー値は低下し3コース終了後のCT 画像上では肝の転移巣は著明に縮小した。MMC/TS-1併用療法は胃癌の術後(外来)補助化学療法の一つの選択肢になり得ると考えられた。 -
TS-1治療抵抗性再発胃癌に対しTS-1+CPT-11併用療法が有効であった1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例は71歳男性。胃癌にて幽門側胃切除術後4年目に腫瘍マーカーの上昇腹腔内リンパ節腫大および水腎症にて再発しTS-1(120mg/day)による治療を施行。しかしTS-1治療3クール目より抵抗性となったためTS-1+CPT-11併用療法(TS-1120mg/day day 1〜14, CPT-11100mg/day day 1, 15)に変更した。TS-1+CPT-11併用療法5クール投与後には腫瘍マーカーの低下および腹腔内リンパ節腫大の消失を認めPR と判定した。投与中grade 2の白血球減少以外に有害事象は認められずTS-1+CPT-11療法はTS-1抵抗性再発胃癌に対してのsecond-line therapyとして有効な治療法と考えられた。 -
TS-1+Paclitaxel併用療法にて癌性腹水が消失したスキルス型胃癌の1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description癌性腹水を伴ったスキルス胃癌に対してTS-1+paclitaxelによる化学療法を施行したところ癌性腹水が消失した症例を経験したので報告する。症例は56歳女性。心窩部痛を主訴に近医を受診。スキルス胃癌と診断され当科紹介された。精査にて腹水貯留を伴った切除不能胃癌と診断。TS-1+paclitaxelによる併用化学療法を施行した。regimenはTS-1 100mg/day(2週投薬2週休薬) paclitaxel 60mg/dayをTS-1内服開始1日目と8日目に投与するサイクルを1クールとした。3クール終了後grade3の白血球減少とgrade2の悪心嘔吐下痢を認めたが保存的加療にて改善した。効果判定にて原発巣は画像上50%以上の改善を認めるとともに腹水は画像上完全消失した。本療法は切除不能スキルス胃癌に対する有効な治療選択の一つとして期待できる。 -
術前化学療法としてl -Leucovorin+5-Fluorouracil併用療法が奏効した大腸癌の1症例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例は45歳女性。上行結腸に2型腫瘍を認め低分化腺癌であった。腹部CT 検査で上腸間膜動脈および大動脈周囲に多数のリンパ節転移を認めた。術前化学療法としてl-LV 400mg/body(250mg/m2)+5-FU 950mg/body(600mg/m2)療法を開始した。2クール終了後にはリンパ節転移は認められなかった。2002年2月4日に結腸右半切除術(D 3)を施行した。No.214 No.216リンパ節は触知せず治療効果はGrade2 手術は根治度B と判断された。l-LV+5-FU 療法は大腸癌に対する術前化学療法として有望と思われた。 -
大腸癌術後3日目に急激に増大し肝不全が危ぶまれた多発性肝転移に対し5-Fluorouracil肝動注療法が奏効した1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例は68歳男性。多発性肝転移をもつ下行結腸癌に対し下行結腸部分切除と肝動注カテーテル挿入術を施行。術後3日目より多発性肝転移が増悪。肝不全への移行も危ぶまれたがemergency chemotherapyとして5-FU 600mg/m2(1,000mg/body)(6時間動注) methylpedonisolone125mg()を同日施行。1コースの動注でoncologic emergenciesを脱却し3コース終了時には著明な肝転移の縮小を得た症例を経験したので報告する。 -
l -Leucovorin/5-Fluorouracil併用療法が著効した癌性腹膜炎を伴う下行結腸癌の1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description今回われわれは腸閉塞で双口式人工肛門のみ造設した癌性腹膜炎を伴う下行結腸癌症例に対してl-leucovorin(l-LV)/5-fluorouracil(5-FU)併用療法(以下本療法)を行い増悪することなく経過した1例を経験したので報告する。症例は65歳男性。腹部緊満上腹部痛呼吸困難がみられ下行結腸癌による腸閉塞の診断で2002年3月5日緊急開腹した。高度の腹膜播種がみられ原発巣は切除せず横行結腸で双口式人工肛門のみを造設した。術後は速やかに全身状態は改善した。腹水の細胞診はclass㈼ 大網の腹膜播種の病理組織学的診断は中分化型腺癌であった。術前のCEA CA19-9はともに陰性であった。術後本療法を行った。術後1年9か月を経た現在腹部CT 上原発巣は98%縮小し腹水の貯留もみられなかった。また手術後と腸閉塞時に一時体重減少がみられた以外体重は手術時から比較すると15kg 増加した。本療法を7サイクルで終了しdoxifluridine800mg を内服中であるが全経過を通じて下痢骨髄抑制などの副作用はまったくみられず休薬することもなかった。現在原発巣切除と人工肛門閉鎖を検討中である。本療法は腹膜播種を伴う進行大腸癌にも有効であると考えられた。 -
Tamoxifen投与により高トリグリセライド血症を来した乳癌術後の3例
31巻7号(2004);View Description Hide Description抗エストロゲン剤であるtamoxifen(TAM)はホルモンレセプター陽性乳癌患者の術後の補助療法として使用されている。しかしTAM は同時に少量のエストロゲン作用を有し時として中性脂肪の上昇を来す。今回われわれは3例の高度高中性脂肪血症を来した症例を経験した。3例とも乳癌術後の補助療法としてTAM の内服中に高中性脂肪血症を来しそれぞれTAM の中止toremifenへの変更anastrozole(ANA)への変更により軽快した。ANA に関しては血清脂質に影響を与えないことよりまたATAC trialの結果によっては今後閉経後の症例においては選択肢として有用と考えられる。乳癌術後の補助療法中TAM 投与症例においては定期的に血中中性脂肪を測定する必要があると考えられた。 -
外耳道腺様嚢胞癌の多発性肺転移にTS-1が奏効した1例
31巻7号(2004);View Description Hide Description症例は67歳男性。左耳難治性耳漏のため近医より紹介される。外耳道腺様嚢胞癌の診断にて原発巣切除後の経過観察中に多発性肺転移を認めた。肺転移に対しTS-1(120mg/day 28日間連続投与14日間休薬にて1コース)を投与。2コースにて肺転移の縮小ならびに胸水の減少を示し副作用も軽度の食欲不振のみで投与を中止することなく1年3か月外来にて投薬できた。TS-1は腺様のう胞癌の多発性肺転移に有用である可能性が示唆された。 -
Etoposide,Ara-C少量持続点滴療法にMitoxantroneを加えたMEtA療法により寛解を得たDe Novo AML with TrilineageMyelodysplasia(AML/TMDS)の5症例
31巻7号(2004);View Description Hide Descriptionde novo AML with trilineage myelodysplasa(AML/TMDS)の5症例にetoposide(ETP) Ara-C 少量持続点滴とmitoxantrone(MIT)投与によるMEtA 療法を施行し全例に寛解が得られ3例に長期寛解うち2例で4年以上の無病生存が認められた。1998年3月〜2001年7月までに当科に入院したAML/TMDS 連続5症例で年齢は32〜50歳。男性4例女性1例。入院時末梢血はWBC 1,560〜45,150/μl 芽球12〜62% 骨髄の芽球は35〜79.5%。全例三系統の異形成がみられ急性発症で先行MDS 期を示唆する経過はなかった。AML/TMDS と診断しETP 50mg/日Ara-C 30mg/日11〜14日間持続点滴にMIT 8mg/m2 2〜3日間静脈投与した。症例5ではMIT 6.7mg/m2を6日目に追加投与した。治療終了21〜24日後全例にCR が得られた。副作用は悪心嘔吐口内炎桃炎感染症脱毛などであったが耐え得るものであった。2例で4年以上の無病生存が認められたことから本療法はAML/TMDS に対する有効性が期待できる治療法と思われる。
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連載講座
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- 【センチネルリンパ節の研究最前線 】
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Sentinel Node Navigation Surgeryは肺癌手術のリンパ節廓清をどこまで省略できるか?
31巻7号(2004);View Description Hide Description目的:sentinel node navigation surgeryが肺癌手術のリンパ節廓清をどこまで省略できるか検討することを目的としてtechnetium tin-colloidを用いて肺癌におけるSN 同定を行った。方法: 5 cm 以下の末梢発生非小細胞肺癌で縦隔廓清を試行しSN 同定の評価可能であった症例101例を対象とした。術式は肺葉切除91例肺全摘3例リンパ節郭清を加えた区域切除7例である。CT 室で皮膚より腫瘍周囲に針を刺入する部位と角度と距離を決定する。その後手術前日にRI 室にてte - 【臨床検査,診断に用いる腫瘍マーカー 】
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腫瘍マーカーの臨床的意義
31巻7号(2004);View Description Hide DescriptionAFP CEA PSA hCG CA 19-9およびCA 125を代表とする腫瘍マーカーは血中レベルの測定で癌の診断補助と細胞グループの鑑別治療経過のモニタリングに使われる。そのなかでハイリスクの追跡に利用が認められているものはAFP とPSA だけである。鑑別診断やモニタリングでは複数マーカーを組み合わせて利用することが多いが同じグループのマーカーを重複させない適正な組み合わせと経過追跡では適正な採血間隔を知ることマーカーごとに定められた基準値と血中レベルによる疾患頻度を知ることが重要である。腫瘍マーカーへの正しい理解と知識は癌診療のレベルアップにつながるアートの一つである。
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Journal Club
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用語解説
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ロジスティックモデル、生存率の計算—Kaplan Meier法、クラスター解析、2群間の生存率検定—generalized Wilcoxon testとlogrank test—、ハザード(hazard)およびハザード比
31巻7号(2004);View Description Hide Description
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