Volume 31,
Issue 10,
2004
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総 説
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癌と化学療法 31巻10号, 1465-1474 (2004);
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Helicobacter pylori(H. pylori)が胃十二指腸疾患と関連することが明らかとなり消化器病学領域の病態および診断学治療学に大きな変革がもたらされた。H. pylori を除菌すればこれらの多くの病変は改善治癒し現時点で行われているプロトンポンプ阻害剤を含む3剤併用療法が推奨されている。しかしこれらの治療法で100%治療ができるわけではなく抗生物質に対する薬剤耐性もその理由の一つである。H. pylori の感染診断と除菌治療を行う上での注意点さらには除菌後に発生する可能性のあるいくつかの問題点について日本ヘリコバクター学会のガイドラインに基づいて解説した。
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特 集
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【がん治療の手技としての内視鏡手術の適応と限界 】
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癌と化学療法 31巻10号, 1475-1480 (2004);
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近年胃癌に対する治療法が多様化してきている。日本では古くからD 2郭清を伴う胃切除術が標準術式として認知され広く行われてきた。しかし治療の安全性が確立されまた医療技術機器の進歩に伴い早期胃癌の検出率が上昇し従来のD 2胃切除に代わり内視鏡下治療腹腔鏡下手術など様々な治療法が開発されその有用性が示されてきている。今後は病期に適した過不足のない術式の選択が必要であろう。われわれは当科で積極的に導入してきた腹腔鏡手術を取り上げその有用性と適応について検討した。鏡視下手術は現時点において胃癌ガイドライン上cStage㈵B までの症例に推奨されている。今後開腹手術とのRCT を重ね十分検討の上さらなる適応拡大が期待される。
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癌と化学療法 31巻10号, 1481-1484 (2004);
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現在のわれわれが行っている胸腔鏡下食道切除術および現状における食道癌に対する鏡視下手術の適応と限界について述べる。他臓器浸潤および高度リンパ節転移のない症例で術中左片肺換気に耐え得る強度の胸膜癒着がない症例を適応としている。現在まで243例に対し本術式を適応したが従来の右開胸下食道癌根治術と比較して手術時間胸腔内操作時間および郭清リンパ節個数には差がなく出血量は有意に少なかった。肺活量の減少は有意に軽度であった。術後合併症では肺炎反回神経麻痺が多かったが腹腔鏡下胃管作製術併用例で肺炎は減少した。現時点では術式とその適応に関しても施設によって様々でその評価は定まっていないが手技に習熟すれば従来の術式より質の高い郭清および繊細な手術操作が可能であり今後標準術式の一つとして確立してゆくものと考えている。
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癌と化学療法 31巻10号, 1485-1488 (2004);
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大腸癌に対する腹腔鏡手術の現状と展望を概説した。本術式は腹腔鏡下操作と直視下操作を組み合わせて行う腹腔鏡補助下手術でありその技術的難易度は腫瘍の部位や肥満既往手術などの因子により大きく異なる。近年腹腔鏡下手術と開腹手術の長期成績を比較した無作為化試験の結果が報告され両術式の成績はほぼ同等であった。したがって今後一部の大腸癌に対しては本術式が標準的とされる可能性が高い。その際には技術的な裏付けと適切な症例の選択が重要であると考えられる。
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癌と化学療法 31巻10号, 1489-1493 (2004);
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原発性肺癌は近年比較的早期に治療が行える症例が増加してきた。これらに対する外科治療は近年の内視鏡手術の発達に合わせ胸腔鏡を用いた診断や治療が盛んに行われるようになってきた。この項では肺癌に対する胸腔鏡の役割について最近の研究報告や教室の手術成績を併せて述べた。診断的役割は末梢小型の診断困難な病変への針細胞診や部分切除で確定診断が容易に得られる。また不明胸水や癌の病期を明らかにし診断はもとより治療に役立てることができる。治療においては縮小手術可能な病変に対しては区域切除や部分切除などの試みが行われている状況である。現在のところ臨床病期㈵期肺癌に対する胸腔鏡の肺葉切除の長期手術成績はこれまでの開胸下の肺葉切除と同等の結果が多く報告されている。このことより肺癌㈵期での胸腔鏡手術は成績手技ともにほぼ確立されたと考えられる。今後は㈼期を含めた適応の拡大へ胸腔鏡手術が検討されると思われる。
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癌と化学療法 31巻10号, 1494-1500 (2004);
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内視鏡における機器と手技の進歩により複雑な手術操作も可能となりつつあり本来侵襲の大きい婦人科悪性腫瘍への適用も重要な課題となっている。子宮頸癌体癌に対して腹腔鏡下に単純準広汎広汎性子宮全摘出術また骨盤傍大動脈リンパ節郭清術を行うことが可能である。また卵巣癌においてもstaging procedureとしてまた症例によってはdebulking procedureとしても有用な場合もある。術後の回復は極めて早く社会復帰や術後治療の遅れを防ぐという点では短期予後は極めて良好といえる。長期予後に関しても症例数や観察期間は限られたものではあるが現時点では開腹術に比べ遜色はない術式であると考えている。
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癌と化学療法 31巻10号, 1501-1505 (2004);
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泌尿器科領域における内視鏡手術は膀胱鏡および経尿道的手術に始まり現在腹腔鏡下手術が広まっている。悪性腫瘍に関する鏡視下手術の手術適応も徐々に広がっており行われない癌を探すことが困難となってきている。特に腎癌に対する腎摘除術膀胱癌に対する経尿道膀胱腫瘍切除術は全国的にも広く行われている。今後副腎癌や腎部分切除術前立腺全摘除術にも広がるものと思われる。
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癌と化学療法 31巻10号, 1506-1510 (2004);
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乳腺内視鏡手術は日本で独自に開発された術式であり遠隔操作により手術創の縮小化と位置の移動を可能にし乳房温存手術の整容性をより高めた術式であり遠隔成績から通常術式と同等の成績が示されその安全性が証明されている。現在施行されている術式は腋窩アプローチによる乳腺部分切除術気?下乳腺全摘術乳輪アプローチによる乳腺部分切除術内視鏡下腋窩リンパ節郭清術として剥離バルーンを用いた腋窩リンパ節郭清術が施行されている。適応は占居部位に関係なく腫瘍径3cm 以下の症例でありこれらの症例では十分な治療成績が見込まれる。しかし乳房温存術式本来の意義を考慮すると整容性保持の観点から整容性保持のため腫瘍を含めた乳腺の切除体積が30%を超えると変形を来すため何らかの再建術の追加が必要と考えられた。今後本術式の低侵襲化と再建術の開発によりさらなる発展が期待される。
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原 著
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癌と化学療法 31巻10号, 1511-1515 (2004);
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肝細胞癌治療における5-FU とinterferon(IFN)-α併用による抗腫瘍効果のメカニズムを5-FU のbiochemicalmodulationの立場からヒト肝細胞癌細胞を用いたin vivo モデルで検討した。ヒト肝癌細胞株HuH 7およびPLC/PLF/5を皮下に移植したヌードマウスを用いて無処置群5-FU 単独群IFN-α単独群5-FU およびIFN-α併用群における抗腫瘍効果および5-FU 代謝関連酵素活性を検討した。薬剤投与は5-FU 0.5mg/匹の腹腔内投与およびIFN-α10万IU/匹皮下注射を3回/週のスケジュールで6週間行った。いずれの処置群でも抗腫瘍効果は認められ併用群での効果が最も大きかった。抗腫瘍効果実験と同様の投与スケジュールで1週間投与した時点での各腫瘍における6種類の5-FU 代謝関連酵素活性の測定を行った。HuH 7およびPLC/PLF/5細胞間で各代謝関連酵素活性に違いが認められたが5-FU 単独IFN-α単独および両者の併用による5-FU 代謝関連酵素への有意な影響は認められなかった。肝細胞癌に対する5-FU+IFN-α併用療法におけるIFN-αの5-FU 代謝酵素に及ぼすbiochemical modulation効果の影響は今回用いた肝癌細胞株においては低いものと考えられた。
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癌と化学療法 31巻10号, 1517-1524 (2004);
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乳癌術後の再発予防治療は長期に行われることが多く様々に影響するがそのなかの血清脂質レベルの変動について検討した。1990年6月〜2003年5月までに手術を受けた乳癌453例について血清脂質は総cholesterol (CHO) triglyceride(TG) phospholipid(PL) free fatty acid(FFA) high-density lipoprotein-cholesterol(HDL-C)の5種を手術前と術後に測定しその変動を検討した。補助療法は薬剤投与のない㈰ 無投薬㈪ 徐放性Goserelin(G) ㈫ tamoxifen(T) ㈬ 内服後に体内で5-fluorouracilに変換され抗腫瘍作用を発揮する経口のフッ化ピリミジン(tegafur carmofurdoxifluridine) ㈭ 経口のアルキル化剤(carboquone cyclophosphamide)とその他の群に分類した。5種の脂質術前レベルは高齢者ほど高いが上限がありいずれも術後5年間上昇した。補助療法別にみるとCHOはG 群経口フッ化ピリミジン群経口アルキル化剤群ともに術後上昇しT 群では低下無投薬群では変化しなかった。またCHOはG 群で上昇T群で低下は薬剤終了後に回復したが経口フッ化ピリミジン群経口アルキル化剤群では中止後も上昇し続けた。5種脂質の術後変化について重回帰分析するとそれぞれの術前レベルが影響しCHOにはT TG にはG と経口アルキル化剤FFA にはG PL には経口フッ化ピリミジンが有意に影響した。乳癌術後の補助内分泌療法も化学療法もともに血清脂質レベルを変動させ脂質術前値や加齢も含めて内分泌環境に影響したようである。
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癌と化学療法 31巻10号, 1527-1531 (2004);
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当科においてanastrozole1mg/dayの投与を行った進行再発乳癌33例に対し治療効果有害事象について検討した。患者背景は年齢40〜83歳(中央値59歳) PS 0〜2 進行乳癌1例再発乳癌32例。無病期間5〜233か月(中央値50か月) ER and/or PgR 陽性率72.7% 転移部位は多臓器9例肺単独1例骨単独12例軟部組織単独10例。一次療法10例二次療法6例三次療法以降17例。治療効果:CR 3例PR 5例long NC 13例NC 9例PD 3例。奏効率24.3%奏効期間2〜22か月(中央値8か月)。全体のclinical benefit は63.7% 一次治療では60% 二次治療では83.3% 三次治療以降では58.8%だった。さらにanthracycline系and/or taxane系薬剤抵抗例の奏効率は20%であった。TTP は2〜28か月(中央値11か月) 生存期間7〜30か月(中央値15か月)。有害事象はT-Cho上昇全身倦怠感ほてり関節痛例が最も多く9.1%であった。anastrozoleの有効性と安全性を確認した。本薬剤は進行再発乳癌の一次二次治療としてだけでなくanthracycline系taxane系薬剤抵抗例に対するsalvage therapyとしても有用な薬剤である。
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癌と化学療法 31巻10号, 1533-1536 (2004);
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ホルモン感受性のある進行再発乳癌に対する治療の第一選択は適切な緩和と生存期間の延長を目指したホルモン療法である。原則とされる単独ホルモン療法の効果を高めることを目的として11例の進行再発乳癌患者にanastrozole1mg/日と5′-DFUR 800mg/日を連日経口投与する併用療法を試みた。観察期間の中央値15か月の時点で全例の奏効率(CR+PR)は45.5%であった。奏効例における効果の持続期間中央値は25か月で全例の治療開始後の生存期間中央値は15か月であった。grade2以上の有害事象は認めなかった。本併用療法は副作用が軽微で優れた奏効率奏効期間が得られる可能性がある。
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癌と化学療法 31巻10号, 1537-1540 (2004);
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芍薬甘草湯は元来こむらがえり(筋肉痛)に対して用いられてきたがこれまでにpaclitaxel併用化学療法に伴う末梢神経障害(関節痛しびれ)にも有用であるとの報告があり現在上皮性卵巣癌での標準化学療法であるpaclitaxel+carboplatin併用化学療法(以下TJ 療法)の関節痛筋肉痛に対して非ステロイド系鎮痛薬(以下NSAIDs) ビタミン剤(VB12)などとともに芍薬甘草湯が用いられている。そこで今回われわれはTJ 療法を施行し関節痛筋肉痛が出現した21例(うち初回化学療法施行例16例)を対象とし芍薬甘草湯7.5g/日を計8日間経口投与し後方視的にその有用性を検討した。成績は21例中9例(43%)に疼痛緩和効果を認め特に初回化学療法施行例では芍薬甘草湯服用により有意に疼痛スコアの低下を認めた。以上のことから上皮性卵巣癌におけるpaclitaxel併用化学療法は芍薬甘草湯の服用により疼痛の緩和を図ることでより安全にかつ長期にわたり完遂できることが示唆された。
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症 例
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癌と化学療法 31巻10号, 1543-1546 (2004);
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症例1は62歳男性。右肺中分化型平上皮癌(pT 2pN 2M 0 stageⅢ A)に対する上葉切除後約4か月のCT で上縦隔に長径60mm のリンパ節再発を認めた。症例2は63歳女性。右肺低分化平上皮癌(pT 2pN 1M 0 stageⅡ B)に対する中下葉切除後約1年4か月のCT で右肺門に径25mm のリンパ節再発を認めた。両症例ともvinorelbine(VNR)15mg/m2を1日目と8〜16日目の2回cisplatin(CDDP)80mg/m2を1日目に1回投与するレジメンを2クールと放射線(60Gy/30fr)を同時照射した。CT 上症例1はPR 症例2はCR となり両症例とも約3年後のCT で新たな再発は認めなかった。両症例にgrade 3の白血球減少症例2に原因不明の一過性半身不全麻痺が出現した以外重篤な有害事象はみられなかった。非小細胞肺癌術後の縦隔リンパ再発に対してVNR CDDP と放射線の同時併用療法は有効な治療法として期待される。
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癌と化学療法 31巻10号, 1547-1549 (2004);
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49歳男性。検診にて胸部X 線異常陰影を指摘された。胸部MRI にて左横隔膜上背側1/2を占拠する腫瘍を認めた。2002年1月腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は横隔膜腱中心から有茎性に発育しており18×8×4cm 440g。病理所見では軽度異型を示すfibroblastic cellsとcollagenous matrix からなり核分裂像は7/50hpfに認められた。免疫組織染色ではCD 34 vimentinが陽性cytokeratin s-100protein desmin alpha-smooth muscle actinが陰性でsolitary fibroustumorと診断された。摘出組織を用いた組織培養法抗癌剤感受性試験の結果5-FU ADM MMC DOC が陽性CDDPCPT-11 GEM が陰性であった。現在solitary fibrous tumorにおける抗癌剤治療の有効性は不明である。本症例の抗癌剤感受性試験結果からはsolitary fibrous tumorが複数の抗癌剤に感受性を有しており抗癌剤治療が有効である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 31巻10号, 1551-1554 (2004);
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症例は76歳女性。2003年3月当科にて両側胸膜転移および多発肺転移を伴う進行乳癌と診断された。CEA は7.6ng/ml CA15-3は98.3U/ml と高値であったが化学療法は拒否されexemestaneの単独投与を行った。この後は来院せず内服のみ続けていたところ1年後にはCEA とCA15-3は正常域に低下し肺胸膜転移もCT 上でもほぼCR となっていた。exemestaneの投与はlife threatening の状態にあるホルモン受容体陽性の閉経後乳癌患者に対しても選択肢の一つに成り得るものと思われた。
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癌と化学療法 31巻10号, 1555-1558 (2004);
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症例は43歳男性。背部痛食欲不振にて当院入院。腹部CT にて膵尾部に腫瘤と肝転移Schnitzler転移を認めた。切除不能膵癌肝転移腹膜転移と診断した。全身化学療法としてUFT-E 投与さらに腹腔動脈にリザーバー留置後angiotensin-㈼(AT-㈼)併用gemcitabine 5-FU CDDP 動注化学療法を継続した。原発巣はno change(NC) 肝転移腹膜転移はpartial response(PR)であるが腫瘍マーカーの低下とperformance statusの改善が認められた。外来治療継続中で副作用なくquality of life(QOL)は保たれている。本レジメンは進行膵癌に対しての効果的治療に成り得ると考えられ報告する。
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癌と化学療法 31巻10号, 1561-1563 (2004);
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胆嚢癌に対する化学療法は奏効率も低く生存期間に寄与するものは少ない。今回胆?癌術後再発に対して著効しその後の余命に寄与した症例を経験したので報告する。症例は76歳男性。1999年7月胆嚢癌にてS 4下S 5切除膵頭十二指腸切除を施行した。術後は経過観察していたが2002年1月より胆管炎を繰り返しCA19-9の上昇を認め入院。肝門部から下大静脈にかけて腫瘤を認め挙上空腸が狭小していたため3月29日バイパス手術を施行した。体力の回復を待って7月24日からTS-1100mg/day CDDP 30mg/bodyを第1,8日静脈投与の併用療法開始した。1コースで肝門部腫瘤はほぼ消失しPR となりgrade 3の下痢WBC 減少が出現したが保存的に改善した。2コース終了後もPR は維持されTTP は5か月に達した。しかし副作用と本人希望で投与中止し放射線療法施行したが腫瘤は急激に増大し免疫療法gemcitabine投与したが悪化し6か月後に永眠した。
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癌と化学療法 31巻10号, 1565-1567 (2004);
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症例は86歳の男性で進行胃癌にて幽門側胃切除D 2郭清術を行った。術後5か月目に腹部CT にて#14vリンパ節転移を認めた。TS-1を1日量80mg で経口投与を4週投薬2週休薬法にて始めた。2クール目にリンパ節は完全に消失しCR となった。2クール終了後grade2の白血球減少を認め一時休薬したがすぐに改善した。以後36週経過した現在CR は継続しており患者のQOL は良好に保たれている。
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癌と化学療法 31巻10号, 1569-1573 (2004);
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胃原発gastrointestinal stromal tumor(GIST)の術後再発に対してtyrosine kinase阻害剤であるimatinib mesylate(IM)を投与中の2症例を示し今後の問題点につき検討した。症例1は63歳男性。1993年に噴門直下の腫瘤に対し胃部分切除術を施行。病理報告はleiomyosarcomaであった。2001年肝S 2 S 8の転移性腫瘍に対し肝外側区域切除S 8部分切除術を施行。病理組織学的検査でc-kit(+)の紡錘形の腫瘍細胞を認めGIST の肝転移と診断1993年の腫瘤もGIST と考えられた。2001年11月噴門直下の局所再発が疑われたため噴門側胃切除横隔膜合併切除を施行。病理組織学的検査でc-kit(+)の紡錘形の腫瘍細胞を認めGIST の再発と診断した。2002年6月より肝肺甲状腺の再発転移に対しIM 400mg/日投与を開始。grade2のWBC 低下と消化管出血がみられ300mg/日に減量した。治療効果SD〜PR を得たが投与15か月目に肝転移巣の再燃を認めた。症例2は63歳女性。1999年7月胃前庭部の粘膜下腫瘍に対し幽門側胃切除術を施行。病理組織学的検査にてc-kit(+)の紡錘形の腫瘍細胞を認めGIST と診断した。2002年10月より多発肝転移に対しIM 400mg/日投与を開始。grade3のWBC 低下と下肢の浮腫がみられ200mg/日に減量した。治療効果はSD が12か月継続した。切除不能再発GIST に対しIM 療法は第一選択になってきた。しかし再燃や耐性出現など未解決な問題も多く基礎的臨床的両面からの綿密な検討が必要であると考えられた。
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癌と化学療法 31巻10号, 1579-1582 (2004);
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症例は58歳男性。STN 産生進行胃癌に対し胃全摘術膵体尾部脾合併切除術を施行した。病理組織診断はStageⅣ(T 3N 2CY 1)で腫瘍細胞はSTN 染色で強陽性であった。血清STN は術前2,500U/ml と著明に上昇していたが術後2か月目に正常化した。術後補助療法としてlow-dose FP 療法後TS-1(80mg/day)を投与していた。術後1年10か月時に黄疸が出現して血清STN が再上昇し肝門部リンパ節再発と診断した。総胆管狭窄部にステントを留置した後TS-1+docetaxel療法を開始した。3コース終了時には肝門部リンパ節再発巣は消失し血清STN は正常化した。本療法による重篤な副作用は認めなかった。本療法開始8か月目の現在CR の状態で社会復帰している。TS-1単独療法に耐性となった再発胃癌に対するTS-1+docetaxel療法はsecond-lineとして有力な選択肢の一つと成り得ることが示唆された。
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癌と化学療法 31巻10号, 1583-1585 (2004);
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症例は62歳女性。心窩部痛と黒色便を主訴に来院した。胃内視鏡検査で胃体下部の3型胃癌と診断した。腹部CT検査では腹部大動脈周囲リンパ節転移を認めた。術前診断はcT 3 cN 3 cH 0 cP 0 cM 0 cStageⅣで根治手術は困難と考えdownstaging を目的にTS-1+CDDP による術前化学療法(TS-1100mg/dayを21日間服薬CDDP 90mg/bodyを8日目に点滴静注)を2クール施行したところ原発巣の縮小と腹部大動脈周囲リンパ節転移の消失を確認腫瘍マーカーは正常化した。有害事象はgrade1の白血球減少とgrade3の食欲不振を認めた。その後胃全摘脾摘を行い根治度B の手術が可能となった。病理組織学的所見では原発巣は大部分が線維化しており癌巣はごくわずかで原発巣の効果判定はGrade2であった。TS-1+CDDP 術前化学療法は広範なリンパ節転移を伴う胃癌に対して有効な選択肢の一つと考えられた。
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癌と化学療法 31巻10号, 1587-1589 (2004);
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直腸癌多発肺転移症例にTS-1/low-dose CDDP 療法が著効した症例を経験したので報告する。症例は61歳男性。同時性多発肺転移を伴う直腸癌で他院で腹会陰式直腸切断術を施行された。術後入院外来でTS-1/low-dose CDDP 療法を当院で施行した。腫瘍マーカーは徐々に低下しはじめほぼ正常値となった。また肺転移巣も著明に縮小しCT 上はPRとなった。その間消化器症状や骨髄抑制などの有害事象も認めなかった。術後2年3か月たった現在も外来で化学療法継続中である。本療法は結腸直腸癌に対しQOL を損なわず有効であると考えられた。
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癌と化学療法 31巻10号, 1591-1594 (2004);
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直腸癌の多発性肝転移に対して化学療法を施行し長期の完全寛解が得られた症例を経験したので報告する。症例は57歳男性。2000年7月6日腸閉塞症で発症したSE N?? P?? H?? M(−)StageⅣの直腸癌に対して3群リンパ節郭清を伴うHartmannの手術を行った。病理組織診断はwel se INFβ n 3 ly2 v 2 p 1であった。術後11日目からweeklyでLV 300mg+5-FU 750mg の併用療法を行った。grade3の副作用が出現しCEA が急上昇したため治療法を変更した。2週間後から低用量のCDDP 10mg+5-FU 500mg の5日間連続投与を2クール行いこれ以降は外来でweeklyでCDDP10mg+LV 25mg+5-FU 500mg を投与した。その後CEA は速やかに低下しCT で4か月後には病変を指摘できなくなりCR と判定した。CR が得られた後も約1年間はbi-weeklyで同様の治療を継続しそれ以降はUFT-E 顆粒を400mg内服している。術後3年7か月目の現在再発の徴候はない。
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連載講座
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【センチネルリンパ節の研究最前線 】
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癌と化学療法 31巻10号, 1601-1607 (2004);
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Sentinel Node(SN)の出現により従来の系統的郭清は終焉を迎え新たな研究分野の展開を可能にした。本稿ではSN の研究最前線としてわれわれが検討している内容の一部を紹介する。① RI コロイドの至適粒子径の検討:SN に流入したスズコロイドを電子顕微鏡を用い観察したところその粒子径は100〜150nm とほぼ均一であった。② 新型γ-プローブの開発:医療従事者の放射線被曝を減じるため高感度γ-プローブを開発した。これはさらに小型化されSN の同定基準も設定可能とした。③ SN の基礎研究:SN に着目した検討は従来の研究ステップの節約を可,にした。われわれは腫瘍免疫の分野においてfluorescence-activated cell sorting を用いたSN のリンパ球分布を検討した。抗原提示細胞としてのB 細胞に着目した場合活性化B 細胞はSN において著明に増加していた。T 細胞に関してはSN で抗原提示後早期にみられるCD 44????を含むheterogeneousな分布がnon-SN ではその後期にみられるTCM を中心としたhomogeneousな分布が認められた。今後この領域における研究はさらに継続する予定である。
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【臨床検査,診断に用いる腫瘍マーカー】
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癌と化学療法 31巻10号, 1609-1613 (2004);
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腫瘍マーカーとは癌細胞が産生するまたは癌細胞に反応して非癌細胞が産生する物質のうちで癌の存在や癌細胞の種類と量を反映する指標となるものをいう。臨床的には癌の有無や原発臓器の推定組織型や進行度の推定治療効果の判定経過観察中における再発の予測などにおいて利用される。肺癌領域における腫瘍マーカーは感度と特異度の限界からいずれも補助的な役割にとどまるが臨床的には有用性が高く日常診療に不可欠の検査である。本稿では肺癌の代表的な血清腫瘍マーカーであるCEA CYFRA SCC SLX ProGRP NSE の六つを中心に述べる。
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Journal Club
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癌と化学療法 31巻10号, 1595-1595 (2004);
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癌と化学療法 31巻10号, 1596-1596 (2004);
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癌と化学療法 31巻10号, 1597-1597 (2004);
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癌と化学療法 31巻10号, 1598-1598 (2004);
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癌と化学療法 31巻10号, 1599-1599 (2004);
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用語解説
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癌と化学療法 31巻10号, 1525-1526 (2004);
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癌と化学療法 31巻10号, 1575-1576 (2004);
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