癌と化学療法
Volume 31, Issue 11, 2004
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第25 回癌免疫外科研究会/第26 回日本癌局所療法研究会ジョイントミーティング
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担癌マウスにおけるTS -1 およびOK -432 併用樹状細胞腫瘍内投与療法の抗腫瘍効果
31巻11号(2004);View Description Hide Description抗癌剤TS -1 および免疫賦活剤OK -432 を併用した樹状細胞(DC )腫瘍内投与療法の抗腫瘍効果につき検討した。DCは同系マウスの骨髄細胞をGM -CSF およびIL -4 存在下に7 日間培養することにより誘導した。Meth -A 移植BALB /c マウスおよびSCCV II 移植C 3H /HeN マウスにおいて, TS -1+DC +OK -432 投与により著明な腫瘍増殖抑制ならびに延命効果を認めた。CTL の誘導も認められ, この主たるエフェクター細胞はMHC class I 拘束性CD 8 T 細胞であった。われわれは, OK -432 がToll -like receptor (TLR )4 を介して免疫活性を発現することを報告してきたが, 同療法においても変異型TLR 4 を有するC 3H /HeJ マウスでは抗腫瘍効果は認められなかった。固形癌に対するTS -1 およびOK -432 併用DC 腫瘍内投与療法の有用性とTLR 4 シグナルの重要性が明らかとなった。 -
樹状細胞を用いた癌免疫化学療法の基礎的研究
31巻11号(2004);View Description Hide Description樹状細胞(DC )を用いた特異的細胞免疫療法と化学療法の併用において至適な薬剤を検索する目的で, 抗癌剤によるリンパ球幼若化能に対する影響, docetaxel (TXT )とpaclitaxel (TXL )のヒト胃癌細胞株MKN 45 におけるapoptosis 誘導能と, 未成熟樹状細胞(iDC )におけるToll -like receptor (TLR )-4 mRNA 発現, 腫瘍細胞溶解液またはapoptosis 細胞により刺激したDC の細胞傷害活性T 細胞(CTL )誘導能について検討した。TXT , doxifluridine (5 -DFUR ), irinotecan(CPT -11)によるリンパ球幼若化能阻害活性が他の抗癌剤より著明に低値であった。TXT およびTXL は1×10 , 1×10M で添加24〜48 時間後に約60%の細胞でapoptosis を誘導し得た。iDC においてTXT 添加2〜3 時間後にTLR -4 mRNA の発現の上昇が認められた。腫瘍細胞溶解液とTXT で誘導したapoptosis 細胞を抗原とした樹状細胞において同程度の細胞傷害活性を有するCTL が誘導された。以上より, TXT による化学療法とDC を用いた特異的免疫療法との併用療法の有用性が示唆された。 -
Survivin -2B ペプチドによる癌ペプチドワクチン療法
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionわれわれは癌に対する新たなる治療法として癌ペプチドワクチン療法に着目し, HLA -A 24 拘束性抗原ペプチド・survivin -2B 80-88 を開発, そしてこのペプチドワクチンによる第I 相臨床試験を開始した。プロトコールを完遂した15 症例中3 例に有害事象を認めたが, いずれもgrade 2 以下であった。また, 6 例に腫瘍マーカーの低下を認め, そのうちの1 例はCT にてminorresponse (MR )であった。免疫学的モニタリングとしてはtetramer assay にてワクチン投与後のペプチド特異的CTL 増加を認めた症例も経験した。本臨床試験にてペプチドの安全性は評価し得たが, さらなる免疫学的および臨床的効果発現が必要不可欠であり, 現在様々なadjuvant を併用した臨床試験を計画・進行中である。 -
マウス樹状細胞を用いた腫瘍抗原特異的免疫療法の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description腫瘍抗原をpeptide , protein , tumor lysate , irradiated tumor およびelectrofusion の各法で樹状細胞にパルスし, その抗腫瘍免疫効果について比較検討した。マウスメラノーマの肺転移治療モデルでは, electrofusion 法での樹状細胞が他方法に比して有意に転移巣を減数させた。それと相関してT cell からのIFN -γ産生も, electrofusion 法での樹状細胞が最も強力に刺激していた。IL -10 産生についても比較したが, 治療モデルとの相関はなかった。electrofusion 法は, 樹状細胞を用いた細胞療法のなかで特に強力で効果的な抗腫瘍免疫を誘導できることが示唆され, 今後の臨床応用に向けて重要であると考えられた。 -
樹状細胞と腫瘍の融合細胞ワクチン投与による免疫抑制解除とTh 1 系へのシフト
31巻11号(2004);View Description Hide Description樹状細胞(DCs )と腫瘍の融合細胞ワクチンは, 未知の腫瘍抗原を含む多種類の抗原に腫瘍免疫を誘導し得る利点をもつ。われわれはこれまで進行再発消化器癌を対象に, 樹状細胞と腫瘍の融合細胞ワクチンの第I 相臨床試験を施行し報告してきたが, 今回は特に免疫能の変動に注目し検討した。インフォームド・コンセントの得られた標準的治療法が無効な進行再発消化器癌9 例を対象とした。樹状細胞は, 末梢血単球からGM -CSF とIL -4 で誘導し, さらにTNF -α, IL -1 β, IL -6, PGEで成熟化した。融合細胞ワクチンは, 放射線照射自己腫瘍細胞と樹状細胞を用い, PEG およびelectroporation で作製した。ワクチンは2 週間隔で計4 回両側の鼠径部に接種した。全例で有害事象は認められず, 臨床効果はSD 5 例, PD 4 例であった。ワクチン投与後tumor lysate に対する皮内反応が9 例中6 例で陽性に転じた。IAP は5 例, TGF -βは6 例で低下した。Th 1/Th 2 およびTc 1/Tc 2 バランスの改善が6 例で認められた。融合細胞ワクチン効果判定の指標として, 免疫抑制因子とTh 1 バランス測定の有用性が示唆された。 -
免疫細胞BAK 療法の延命効果Evidence Based Integrative Medicine
31巻11号(2004);View Description Hide DescriptionわれわれはMHC 非拘束キラー細胞であるγδT 細胞ならびにNK 細胞を含むCD 56 陽性細胞を利用した免疫細胞BAK(生物製剤活性化キラー)療法を開発した。CD 56 陽性細胞は神経・免疫・内分泌機能をもった多機能・統合細胞である。StageIV ならびにstage IIIb の高度進行固形癌患者で血清IAP (免疫抑制酸性蛋白)が580 μg/ml 以上の免疫抑制患者30 名と580未満の免疫反応性患者63 名に群別し, その延命効果を比較した。BAK 療法の免疫抑制患者に対する延命は5 か月なのに対し,免疫反応性患者のそれは27.1 か月で明らかに有意であった。BAK 療法は副作用がまったくなく, QOL を良好に維持し延命効果がある優れた固形癌に対する治療法である。従来の免疫療法であるCTL 療法ではαβT ・CD 8 陽性キラー細胞という分化細胞を利用しているが副作用があるので, 今後はCD 56 陽性細胞のような多機能・未分化・統合細胞を利用すべきと考えている。 -
肝癌に対するリンパ球療法を振り返って長期予後の改善がみられた症例の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description過去の活性化リンパ球投与症例を検討し, どのような症例にどのように効果が期待できるのかを再検討する必要があると思われる。われわれは1991 年に外科切除のみでは予後の向上が期待できないStage III 以上で肝内転移(IM )陽性の多発肝癌を対象に, 主腫瘍切除後にLAK を肝動注カテーテルから投与する養子免疫療法を施行した。また巨大な尾状葉肝細胞癌症例の術後にも同療法を施行した。切除後に腫瘤が残存した多発肝細胞癌の絶対非治癒切除症例に, この療法を5 週間に7 回施行, 総投与リンパ球数は6.9×10 であった。施行後, 癌が消失し7 年間無再発であった。その他の症例においても, 投与回数,投与細胞数の多い症例でこの療法は有効であった。肝癌切除後の肝動注免疫療法(活性化リンパ球療法)の有効性が示唆された。 -
抗癌剤・放射線併用免疫細胞療法の効果と患者リンパ球サイトカイン産生に関する検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description高度進行再発癌に対するペプチドワクチンや自己活性化リンパ球による腫瘍免疫療法の臨床試験から担癌生体おいては免疫惹起反応が認められ, 若干の臨床有効性もみられたが, 新しい癌集学的治療として確立するためには腫瘍免疫拒絶反応を強力で持続的に発揮させることが重要である。われわれは抗癌剤および腫瘍細胞免疫療法の異なる機序を利用した非骨髄抑制性で治療耐性を生じにくい癌集学的治療を開発するため, 進行癌に対して癌細胞免疫療法を先行し抗癌剤を反復併用する治療を試験的に行った。本法の副作用発生は従来の標準的化学療法よりも低く, 長期的治療が可能であった。有効例の一部では治療後血清中IFN -γとTNF -αが増加し, 無効例ではTGF -β1 とIL -4 が同時に増加傾向にあった。本臨床試験の結果により免疫細胞療法と化学療法との相互的な補助効果が示唆された。 -
進行大腸癌患者における抗癌剤, 免疫賦活剤投与による各種サイトカインの変動
31巻11号(2004);View Description Hide Description進行大腸癌患者における抗癌剤, 免疫賦活剤投与による全身および局所での免疫状態の変動を, 血漿中ならびに末梢血リンパ球および所属リンパ節細胞培養上清中の各種サイトカイン産生量を指標として検討した。対象は大腸癌患者51 例で, 各種サイトカイン産生量はELISA 法にて測定した。血漿TGF β産生量の全身での変動は抗癌剤投与例において増加した症例を多く認め, 平均値も有意に増加した。PBMC 培養上清中IFN -γ, IL -2, IL -12 産生量は免疫賦活剤投与例において増加した症例を多く認め, PBMC 培養上清中IL -4, IL -6 産生量は抗癌剤投与例において増加した症例を多く認めた。局所では, IL -2産生量は免疫賦活剤投与例が非投与例に比して有意に高値を示し, 逆にIL -10 産生量は免疫賦活剤投与例が非投与例に比して低値を示した。 -
腫瘍細胞の多様性に対応した複合癌免疫細胞療法の新規開発
31巻11号(2004);View Description Hide Description癌細胞のMHC 分子および腫瘍関連抗原の発現は均一ではなく, 特定の抗原特異的免疫療法では癌細胞の分子生物学的多様性に対応できないことが考えられる。今回, 健常人末梢血単核細胞の付着能の差を利用して同一末梢血より樹状細胞, T細胞, NK 細胞をそれぞれ分離培養する方法の開発を試みた。健常人末梢血より比重遠心法にてPBMC を分離した後にフラスコに静置し, 付着能の差を利用して単球分画(樹状細胞分画), NK 細胞分画, T 細胞分画を採取し, 各細胞群の表面マーカーおよび活性化状態を解析した。得られた単球分画から樹状細胞を, T 細胞分画よりCD 3-activated T -cells (CAT )を, NK細胞分画よりadherent lymphokine activated -killer cells (A -LAK )を誘導可能であり, PBMC より同時に3 種類の免疫細胞を分離培養して利用する複合癌免疫細胞療法の可能性が示された。 -
大腸癌肝転移切除後長期生存例の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description1984 年1 月より1997 年12 月までに51 例の大腸癌肝転移に対し肝切除を行った。51 例の3, 5 年生存率はそれぞれ57,43%であった。予後因子の検討では, 性別, 年齢, 再発時期, 肝再発腫瘍径, 肝再発個数, 肝切除術式, 肝切除断端, 肝切除後の補助化学療法の有無, 原発巣の部位の各因子では予後に差を認めず, 原発巣のリンパ節転移陽性例は有意に予後不良であった(p=0.03)。15 例は無再発生存中であり, 再発36 例中再発巣を切除した4 例が無病生存中である。長期生存19 例に特徴的所見は認められなかったが, 肝転移個数4 個以上に長期生存例は認められなかった。 -
外来肝動注化学療法および全身化学療法併用にて5 年生存し得た上行結腸癌多発性肝転移腹膜播種の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は67 歳, 女性。諸検査にて上行結腸癌および多発性肝転移(H 3)の診断となった。肝切除の適応ありと判断され,肝右葉に対してPTPE 施行後手術施行した。術中所見にて計7 個の腹膜腫瘤とリンパ節腫大を認め, 術中迅速組織診にて腹膜播種(p 3)およびリンパ節転移陽性(n2)の診断となった。肝切除断念し, 右半結腸切除術(D 2 郭清), 腹膜腫瘤摘出術(7個すべて)および肝動脈カニュレーションを行い手術を終了した。退院後外来にて肝動注化学療法(5-FU 1,500 mg /週)と全身化学療法(5-FU 2,500 mg /月)を並行して約1 年3 か月間行い, その後tegafur uracil 300 mg /日内服を3 年3 か月継続した。1 年8 か月後のCT にて肝転移巣は完全消失し, 5 年経過した現在に至るまで再発徴候を認めず生存中である。また経過中,PTPE が施行された肝右葉は完全に萎縮し, 肝動注化学療法を行う上で興味深い所見と思われた。 -
肝動注化学療法後肝切除術を施行し得たH 3 大腸癌同時性肝転移の2 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description切除不能と考えられたH 3 大腸癌同時性肝転移症例に対し肝動注化学療法が著効し肝切除術を施行し得た2 症例を経験したので報告する。症例1: 55 歳, 男性。同時性多発肝転移を伴う直腸癌に対して低位前方切除術を施行した。術後にWHF と5-FU /LV の全身化学療法を施行した。これにより腫瘍の縮小が認められ, 初回手術より12 か月後に肝S 5 部分切除術を施行した。症例2: 66 歳, 男性。同時性多発肝転移を伴う横行結腸癌に対して結腸右半切除術を施行した。術後にWHF を合計38回施行した。これにより腫瘍の縮小が認められ, 初回手術より13 か月後に肝部分切除, MCT を施行した。考察:切除不能大腸癌肝転移に対する肝動注化学療法はそう効率が高く有用であるが, 長期投与による有害事象や腫瘍の再燃もある。肝動注化学療法施行症例で効果が認められた症例には肝切除の適応について再評価する必要がある。 -
CDDP , CPT -11, 5-FU による肝動脈化学療法が奏効した肝外転移を有する大腸癌肝転移の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description63 歳, 男性。2002 年7 月, 近医にて上行結腸癌に対して右半結腸切除術を施行後, 5-FU , CDDP による全身化学療法を行った。術後1 年3 か月を経過して肺転移と腹膜播種が直腸浸潤した腫瘍と巨大な肝転移を認めた。5-FU による全身化学療法を施行したが, 奏効しなかったため当院受診となった。入院後にCDDP , CPT -11, 5-FU による肝動脈化学療法を3 course施行した。肝転移のみならず肝外病変の縮小効果も認め, 腫瘍マーカーも低下した。また, 重篤な副作用も認めなかった。大腸癌の肝転移と肝外転移も有する症例に対して, 本治療法は有効な手段と成り得ることが示唆された。 -
動注免疫化学療法によりCR を得た大腸癌肝転移の2 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description大腸癌多発肝転移に対して, Lentinan を併用した肝動注免疫化学療法(pharmacokinetic modulating immuno -chemotherapy : PMIC )を施行し, 2 例にCR を得た。症例1(38 歳, 男性), 症例2(74 歳, 男性)ともに同時性多発肝転移症例である。weekly high -dose 5-FU (WHF : 1,000 mg /m )を4〜24 時間で持続肝動注投与し, それに連続してLentinan2 mg を10 分で動注した。UFT 200〜300 mg /m の連日経口投与を併用した。その結果, 症例1 は4 か月で画像上CR となり,3 か月間CR を維持した。症例2 は4 か月で腫瘍マーカーの正常化とともに画像上のCR を得, その後21 か月が経過した現在無病生存中である。肝臓は免疫担当細胞に富む実質臓器であるため, 抗腫瘍効果の増強にはLentinan による肝局所免疫能賦活化が寄与した可能性がある。 -
TS -1 が著効した胃癌術後肝転移の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は79 歳, 男性。2001 年1 月, 早期胃癌の診断で幽門側胃切除を施行した。病理所見はtub 2, sm 3, no , ly 1, v0でStage IA であった。術後, 定期的に外来通院をしていたが, 2003 年10 月の腹部CT 検査で肝左葉に腫瘤を指摘。エコーで肝左葉に6 cm の腫瘤と結腸間膜に6 cm のリンパ節腫大を認めた。右季肋部に手拳大の腫瘤を触知, 血清CA 19-9 は780 U /mlと高値を示した。2003 年10 月24 日からTS -1 100 mg を4 週投与2 週休薬で開始した。2 クール目の12 月28 日より嘔吐, 下痢が出現したためTS -1 を休止した。2004 年1 月1 日, 症状が軽減せず入院を余儀なくされたが, 1 月9 日の腹部CT 検査では肝左葉の腫瘍は小さな低吸収域となりCR と判定した。結腸間膜の腫瘤も著明に縮小し, 血清CA 19-9 は56 U /ml に低下した。全身状態良好となり1 月22 日軽快退院となった。TS -1 単独投与で肝転移を制御できたことより, 患者の延命効果に寄与できる化学療法の一つと考えられた。 -
胃癌肝転移症例における肝動注奏効例の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description胃癌肝転移例は, 肝転移巣が多発することが多く, 他の非治癒因子が多いことより予後不良であるが, 化学療法奏効例も存在する。今回, 肝動注奏効例について検討した。1980 年から2001 年までに加療された同時性肝転移例137 例を対象とした。胃切除後肝動注のみ行った症例は9 例でうち奏効例は3 例みられ, いずれもH 因子以外の非治癒因子がなく, 1 例はH 3で胃全摘後MMC , 5-FU の肝動注, 5-FU の内服を行い転移巣の消失を認めたが, 術後7 か月で肝, リンパ節再発死亡した。1 例はH 2 で胃切除後, CDDP 動注, 5 -DFUR , PSK の内服を行い, 転移巣は消失し術後35 か月で無再発生存中である。他の1 例はH 2 で胃切除後, TS -1, PSK 内服CDDP の動注を行いリンパ節再発も認められ, 術後32 か月で再発死亡した。胃癌肝転移例においてTS -1, 5 -DFUR の投与を行い, CDDP を主体とする肝動注により長期生存の可能性が示唆された。今後,TS -1 などの新規抗癌剤に期待がもたれる。 -
6 年以上の長期生存を得ている著明な肝転移を伴う初発胃癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description術前より著明な肝転移を認める初発胃癌症例に対し, 術後積極的な化学療法を行い長期生存中である1 例を報告する。症例は70 歳, 男性。主訴は腹痛と体重減少で, 上部内視鏡検査で胃癌と診断された。右肋弓下に3 横指肝を触知し, 血液検査で肝機能障害, 腹部CT 検査で肝両葉に及ぶ転移巣を認めた。1997 年5 月22 日幽門側胃切除を施行, 総合診断はM , type 3,T 3(SE ), N 2, H 3, P 0, CY 0, Stage IVb , 組織型はtub 1 であった。5-FU を中心とした化学療法で術後CR を得たが, 1 年後再発。その後も緩解・再燃を繰り返し約7 年経過した現在も通院中である。 -
Low -Dose FP 療法により肝転移が消失して切除が可能となり再発時にDocetaxel が奏効した8 年生存中のStage IV 胃癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は69 歳, 男性。1996 年low -dose FP (cisplatin : CDDP 10 mg /body , 5-FU 500 mg /body , day 1〜28)2 クールにより多発肝転移(Stage IV )が消失したため, 胃全摘術を施行された。術後4 年4 か月後, 左頸部リンパ節転移・右副腎転移が出現し, TS -1(100 mg /day )・TS -1+CDDP 併用療法を施行するが縮小効果は得られずしだいに増大し, 2002 年9 月よりdocetaxel (DOC 60 mg /m q 3w)へ変更した。3 クール投与後に頸部リンパ節転移巣・副腎転移巣ともに縮小傾向を認め,9 クール後には約70%(PR )の腫瘍縮小を認めた。DOC 投与時に懸念される重篤な骨髄抑制は認められなかったが, 食欲不振が増強したため2003 年4 月DOC 80 mg (q 4w)へ変更したが, 食欲不振はあまり改善せず再度増大傾向を示したため9 月にDOC の投与を中止した。合計15 クールの投与が可能であった。胃癌症例に対してもDOC 60 mg /m 3 週間間隔投与法は1年もの長期投与が可能であり, さらに乳癌などでの行われている分割投与などの検討によりQOL を損なうことなく長期生存へ寄与できる選択肢に成り得ると思われる。本例では再発後も担癌状態で3 年経過しているが全身状態は良好であり, 本症例のような化学療法に反応する場合には, 今後の治療の継続によりさらに生存の期待がもてる。 -
進行胃癌に化学療法が著効した3 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description進行胃癌においてlow -dose CDDP +5-FU (またはTS -1)療法が著効した3 例を経験したので報告する。症例1 は67歳, 男性。術前CT にて膵頭部への浸潤が疑われ, 術前5-FU 1,000 mg /日, CDDP 20 mg /日5 投25 休を5 クール施行し,Stage IIIa 〜Stage Ib へdownstaging が得られ, 胃全摘術施行した。症例2 は78 歳, 男性。進行胃癌にて幽門側胃切除術施行。術前CT では認められなかった肝転移は術中, 肝表面に多数認められた。術後10 日目のCT にて肝両葉におよぶ多発転移を認めたため5-FU 500 mg /日, CDDP 10 mg /日を5 投2 休で3 クール施行した。その結果, ほぼCR を得た。症例3 は73 歳,男性。進行胃癌の診断にて幽門側胃切除術施行したが, 術前高値であったCA 19-9 が再上昇したため, TS -1 100 mg /日+CDDP 10 mg /日を5 投2 休で4 クール施行。一時的であるがCA 19-9 の著明な減少が得られたが再上昇がみられ, 術後15 か月目に癌性腹膜炎で死亡された。5-FU(またはTS -1)とCDDP の併用療法は, 患者の延命効果に寄与できる化学療法の一つである可能性が示唆された。 -
Paclitaxel のWeekly 投与により胃局所切除後の大動脈周囲リンパ節再発が完全消失(CR )したTS -1 治療抵抗性胃癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide DescriptionTS -1 治療抵抗性の二次治療として, paclitaxel のweekly 投与が有効であった再発胃癌の1 例を経験したので報告する。症例は58 歳, 男性。TS -1 投与中に大動脈周囲のリンパ節(♯ 16)に再発を認めたため, TS -1 の治療を中止した。4 週間の休薬期間をおいて, paclitaxel の投与を70 mg /m , 週1 回の3 週連続投与, 1 週休薬を1 コースとして開始した。2 コース終了時には腫瘍縮小が認められ(PR in ), 5 コース終了後には腫瘍は画像上完全消失(CR in )した。CR は7 コース終了後の現在(2003 年12 月)まで継続している。有害事象としてはgrade 2 の白血球および好中球減少とgrade 1 の脱毛が認められたが,重篤なものはなく, 全経過外来での治療が可能であった。TS -1 治療抵抗性の二次治療としてのpaclitaxel のweekly 投与は,これまでわれわれは11 例を経験し, 奏効率36.4%, 奏効例(4 例)の奏効期間の中央値は130 日であった。入院を要する重篤な有害事象は発現せず全症例が外来治療が可能であったことから, 本治療法は有望な治療法の一つになる可能性があると考えられた。 -
FDG -PET が一過性肝動注塞栓療法の効果判定に有用と思われた直腸癌肝転移の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対する一過性肝動脈塞栓療法では, 画像上の効果と組織学的効果が必ずしも一致しないことが指摘されている。今回, F -18-fluorodeoxyglucose positron emission tomography (FDG -PET )が大腸癌肝転移に対する一過性肝動脈塞栓療法の効果判定に有用と思われた興味ある1 例を経験したので報告する。症例は58 歳, 男性。直腸癌・同時性肝転移(H 2)に対し, 低位前方切除術, 肝部分切除, 胆嚢摘出術, 胃十二指腸動脈結紮術を施行した。術後, 残存肝転移に対し,degradable starch microsphere (DSM )300〜600 mg , adriamycin 30 mg , mitomycin C 10 mg による一過性肝動注塞栓療法を6 回施行したところ, CT 上PR と判定されFDG -PET では異常集積が認められなかった。肝切除を行った結果, 組織学的に腫瘍細胞の残存は認められなかった。 -
長期生存が得られた直腸癌術後孤立性副腎転移の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は67 歳, 女性。現病歴は1999 年10 月11 日突然の腹痛および意識消失を認め, 救急車にて当院受診した。CT , 腹部単純X 線検査にて消化管穿孔と診断し緊急手術を施行した。開腹所見は大量の膿状腹水を認め, 腹膜翻転部の約5 cm 口側のRa に穿孔を認めた。触診にて直腸癌の穿孔と診断し, ハルトマン術(D 1)を施行した。病理診断は中分化型腺癌でse , n(−), ly 1, v0/stage II であった。術後補助化学療法としてUFT 600 mg を施行した。2000 年5 月30 日のCT にて右副腎に約2.5×2.0 cm の腫瘍を認め, 肝, 肺, 腹腔内リンパ節に転移を認めず, 直腸癌の孤立性副腎転移と診断した。2000 年6 月22 日右副腎摘出術および肝部分切除術を施行した。病理所見は腺癌の副腎転移で直腸原発巣と同様の組織像であった。術後5 -DFUR 800 mg を2 年間内服し, 副腎切除後4 年0 か月現在再発を認めていない。 -
CPT -11+UFT -E 併用療法が有効であった1 症例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は54 歳, 男性。直腸癌に対しMiles 手術を施行。術後の病理学的診断はmp , n0, ly 2, v0, P 0, H 0 のstage I であった。補助化学療法は施行しなかった。術後9 か月の外来経過観察CT にて肝S 6 に最大径16.5 mm の孤立性転移を認めた。CPT -11/UFT -E 併用化学療法を行った後に肝切除術を予定した。薬剤の投与スケジュールはCPT -11, 150 mg /m(260 mg /body )day 1, 15 に点滴静注。UFT -E は375 mg /m /day (600 mg /body /day )を2 分割し, day 3 より5 日間投与2 日間休薬を繰り返し4 週間施行した。1 週の休薬期間を設け, これを1 クールとして5 週ごとに繰り返し, 合計で5 クール施行しCRとなった。現在治療中止後8 か月が経過しているが再々発の徴候は認めていない。CPT -11+UFT 併用療法は進行大腸癌に対して治療効果が期待できることが示唆された。 -
肝細胞癌術後多発再発にCDDP /5-FU /IFN -βの動注療法が著効した1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description再発肝細胞癌に対するCDDP /5-FU /IFN -β肝動注療法が著効した症例を経験したので報告する。症例は52 歳, 男性。慢性C 型肝炎の治療経過中, 肝細胞癌が発見された。腹水なく, T -Bil 1.1 mg /dl , Alb 3.5 g/dl , ICG R 12%, PT 88%,肝障害度A 。CT にてS 2(直径1.5 cm ), S 3(直径2.0 cm ), S 8(直径1.0 cm )の多発病変。2002 年2 月肝外側区域切除術,肝S 8 部分切除術, 肝動注ポート留置。腫瘍組織のDPD 活性は157 pmol /min /mg proteins 。2003 年1 月残肝再発にてCDDP10 mg /5-FU 1,000 mg /IFN -β300×10 単位の動注開始。同年5 月CT 上, 再発病変消失。同年7 月ポート閉塞により動注治療中止。同年9 月, 同じ部位に病巣再燃。肝細胞癌に対するCDDP /5-FU /IFN -βを用いた動注化学療法は有効な治療選択と成り得る可能性が示唆された。 -
FAP およびGemcitabine +UFT が奏効した切除不能進行胆嚢癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description切除不能進行胆嚢癌の予後は不良で, 有効な治療法は確立されていない。呈示症例は61 歳, 女性。切除不能進行胆嚢癌と診断され, 5-FU , ADM , CDDP (FAP )の全身化学療法, 外来通院でGEM , UFT , さらにFAP 肝動注化学療法を行い診断より18 か月経過した現在元気に外来通院している。本症例から多剤併用化学療法を組み合わせることにより, 切除不能進行胆嚢癌に対する延命効果とQOL の維持が期待できる可能性が示唆された。 -
5-FU , Adriamycin , CDDP (FAP )による3 剤併用肝動注化学療法が奏効した局所進行胆管細胞癌の2 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例1 は72 歳, 男性。多発肝内転移を伴う肝左葉を中心とする径10 cm の胆管細胞癌に対して, 5-FU(250 mg /day ,5 日間持続投与), adriamycin (10 mg , day 1), CDDP (10 mg , day 1)のFAP 肝動注化学療法を施行した。5 クール終了後のCT では, 主病変は径4.8 cm に縮小を認めた。治療開始後12 か月現在, 外来通院中である。症例2 は66 歳, 男性。門脈前区域枝に腫瘍栓を伴う肝S 8, 径5 cm の胆管細胞癌。症例1 と同様のプロトコールにより, FAP 肝動注化学療法を施行した。5 クール後, 腫瘍マーカーは陰性化し, 画像上, 門脈内腫瘍栓の消失を認めた。現在まで22 か月経過した現在, 外来通院中である。胆管細胞癌に対するFAP 肝動注化学療法は副作用もなく, 外来通院治療が可能であり有効な治療法の一つとなる可能性が示唆された。 -
進行, 再発胃癌に対してのMTX /CDDP /5-FU Double Modulation 腹腔内化学療法静脈内, 大動脈内化学療法との比較
31巻11号(2004);View Description Hide Description進行, 再発胃癌に対して, 腹腔内MTX /CDDP /5-FU double modulation 化学療法を施行し, その効果を同化学療法の静脈内投与, 大動脈内投与と比較検討した。対象はip 群24 例, ia 群26 例およびiv 群21 例である。㈰ 悪性腹水の軽減効果はip 療法が優れていた(p=0.049)。㈪ ip 群の50%生存期間は300±62 日で, iv 群200±17 日, ia 群144±12 日と比較し,長い傾向が認められたが累積生存率では3 群に有意差はなかった(p=0.36)。㈫ 悪性腹水陽性例での比較では, ip 群(n=9)の50%生存期間150±59 日, iv , ia 群(n=7)では150±159 日で, 累積生存率にも差を認めなかった(p=0.103)。㈬ 副作用に関してはgrade 3 以上の白血球減少, 血小板減少はip 群では認められず, ia , iv 群に比較し, 副作用の発現が少なかった(p<0.05)。腹膜転移陽性例に対して腹腔内化学療法を選択することに積極的な意味はないと考えられた。 -
胃癌腹膜播種症例に対する少量CDDP 反復腹腔内投与の意義
31巻11号(2004);View Description Hide Description1994 年1 月から2001 年12 月までに胃切除術を行った初発胃癌症例のうちCY 1 またはP 1 症例68 例を対象として少量CDDP の反復腹腔内投与の意義を検索した。本法施行群は他群に比べて50%生存期間(MST ), 累積生存率ともに有意に優っていた。また, 30 例中21 例(70%)が1 年以上生存を, うち12 例(40%)が2 年以上生存を認めた。胃癌腹膜播種症例に対する少量CDDP の反復腹腔内投与は生命予後の延長に寄与し, CY 1 およびP 1 症例に対する術後補助化学療法として有用であると考えられた。 -
T 3(SE ), T 4(SI )進行胃癌に対するCDDP 少量反復腹腔内予防的投与の効果について
31巻11号(2004);View Description Hide DescriptionT 3(SE ), T 4(SI )の進行胃癌にCDDP の少量反復腹腔内予防的投与の生存率および無再発生存期間に及ぼす効果について検討した。1996 年1 月から2001 年12 月までの間に根治度B 手術を行ったT 3, T 4 症例のうち術後補助化学療法をなした52 例を対象とした。治療法別内訳はCDDP の少量反復腹腔内投与を行った群(A 群)が19 例, 行わなかった群(B 群)が33 症例であった。50%生存期間(MST )はA 群で1,359 日, B 群で963 日であった。無再発期間に関しては, 25%無再発期間はA 群840 日, B 群435 日であった。T 3, T 4 の進行胃癌に対するCDDP の少量反復腹腔内予防的投与は生存率および無再発生存期間延長の向上に寄与する可能性が示唆された。 -
腹膜播種を有する胃癌に対する術前全身化学療法・腹腔内化学療法を組み合わせた集学的治療の効果
31巻11号(2004);View Description Hide Description腹膜播種の完全切除は多くの場合困難である。術前に腹膜播種を減量し腹腔内遊離癌細胞を消滅させ, できるかぎり健常な腹膜を残せるようにneoadjuvant intraperitoneal and systemic chemotherapy (NIPS )を開発した。腹腔内ポートを挿入, docetaxel 40 mg とcarboplatin 150 mg を1,000 ml の生理食塩水とともに腹腔内に30 分で投与する。同日に, meth -otrexate 100 mg /m と5-fluorouracil 600 mg /m を15 分間で末梢静脈から投与し, 翌日levofolinate を投与する。これを毎週1〜2 回行う。効果がなければさらに2〜4 回追加した。61 例が登録された。細胞診陽性の39 例中22 例(56%)がNIPS 後陰性となった。38 例(62%)が部分寛解を示した。30 人に手術が行われ, 14 人で播種の完全切除ができた。median survivaltime(MST )は14 か月, 完全切除例では20 か月であった。grade 3, 4 の合併症は2 回まではみられなかったが, 3 回以上で7 例(下痢2, 骨髄抑制5 例)で認められた。NIPS により完全切除が可能になる例があり, そのような例では生存率が改善された。 -
GDA -コイル固定法における側孔付きカテーテルを用いた大腸癌肝転移症例に対する動注療法の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description当院における2000 年12 月から2003 年12 月までの3 年間に大腸癌肝転移症例に対する肝動脈注療法を行った40 症例につき検討した。当院では側孔付きのカテーテルを用いたGDA -コイル固定法による肝動注用リザーバーを埋め込み, 外来にて通院動注治療を行っている。肝動注はweekly high -dose 5-FU (WHF )療法で5-FU 1,000 mg /m /5h を毎週可能なかぎり反復動注施行した。留置法は大腿動脈または左鎖骨下動脈アプローチにより透視下で血流改変術を行い固有肝動脈起始部, または総肝動脈を側孔留置部位とした。本法は手技的負担を軽減するとともに, 効率よく標的血管に薬剤を投与するのに有効と考えられた。カテーテルによるトラブルは18%に認められた。本動注療法の1 年生存率は71.9%, 50%生存期間は23 か月, 奏効率は71%であり良好な治療成績であった。しかし, リザーバー留置術における手技的工夫がなされた現状においても経過中のトラブルや合併症は少なくなく, 適切なシステム管理と薬剤分布評価が必要であると考えられた。 -
進行膵癌に対する膵周囲動脈塞栓術と動注リザーバー留置における治療手技の工夫
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionわれわれは, 進行膵癌に対する膵周囲動脈塞栓術(TPPAE )と肝脾動注化学療法(HSAIC )を行い, その有効性について報告してきた。しかし本治療の手技が煩雑であること, 使用する塞栓コイルの本数が限られることが問題であった。そこで, TPPAE に用いる血管塞栓用マイクロコイルの本数を減らすためにコイルを分割して使用し, またHSAIC は側孔付きカテーテル1 本で総肝動脈と脾動脈へ動注薬剤が分布するように留置した。進行膵癌11 症例における有効率は72.7%でTPPAE -HSAIC 従来法の治療成績と有意差を認めず, 簡便かつ有用な方法と考えられた。 -
肝細胞癌に対する肝動脈塞栓術を併用したラジオ波熱凝固療法CT を用いた壊死の拡がりに関する検討
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionラジオ波熱凝固療法の施行に際して, 肝動脈塞栓術を併用すると焼灼域が増大すること, 特に塞栓物質としてLipiodolとgelatin sponge の両者を用いた場合, 焼灼部末梢側に亜区域・区域性の壊死域が形成されることをしばしば経験する。今回,肝動脈塞栓術併用ラジオ波熱凝固療法を施行した肝細胞癌12 例を対象に, 壊死域のCT 所見の推移と病理所見を比較検討した。術後のCT 所見では, 焼灼部は全例で腫瘍の完全壊死と判定され, 腫瘍の存在する亜区域・区域性に楔状の壊死域を認めた。時間の経過とともに亜区域・区域性壊死域は著明に縮小するものの, 焼灼部の縮小の程度は比較的緩やかであった。焼灼部および壊死域のLDH , MDH , NADPH -D の染色性は消失し, 酵素組織学的にも両者は壊死と判定された。なお, 4〜26 か月のフォローアップ期間中に局所再発を認めていない。Lipiodol とgelatin sponge を用いた肝動脈塞栓術を併用すると腫瘍の存在する区域, または亜区域ごと壊死させることが可能であることが判明した。 -
動脈内化学療法およびRF 焼灼術を行った胃癌多発肝転移の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description71 歳, 女性の胃癌肝転移に対しラジオ波焼灼術(RFA )を行った。患者は1996 年7 月16 日胃癌のため胃全摘術を受けた。2002 年11 月から多発肝転移が出現し5-fluorouracil +cis -platinum +Leucovorin 併用の肝動脈内化学療法を開始したところPR が得られた。ところが9 か月後肝動脈閉塞を発症し, 肝転移の増悪がみられたためRFA を試みた。肝転移は最大径3.5 cm のものが計5 個みられ, うち3 個をCool tip RF system を用い焼灼し, 有効病変はCT で均一の低吸収域を来し, 経皮的肝生検では大部分は凝固壊死組織だった。患者は肝再発から19 か月, RFA 開始から7 か月の現在, 再燃のため治療中である。 -
ラジオ波熱凝固療法を応用した内視鏡下肝切除術
31巻11号(2004);View Description Hide Description腫瘍径3 cm 以下, 表在性の肝細胞癌7 例に, ラジオ波熱凝固療法を応用した内視鏡下肝切除術(RFA -assisted EH )を行った。2 cm のCool -tip needle で肝切離線に1 cm 間隔でRFA を行った。1 分間で100 W まで徐々に出力を上昇させ, 1回のimpedance -out で凝固を終了した。凝固巣のなかで肝切離を行った。症例の内訳は平均年齢64 歳, 男女比は5:2, 肝障害度はA 5 例, B 2 例であった。平均腫瘍径27 mm , 平均腫瘍個数1.3 個で, 胸腔鏡を2 例に腹腔鏡を5 例に選択した。1 回のRFA で2×1 cm の楕円球型の凝固巣が形成された。RFA を肝切離線に11 回, 肝切離中に3 回施行した。手術時間は256分, 術中出血量は96 g と極少量で血液製剤は不要であった。術後入院日数は平均11 日で, 術中, 術後合併症は経験しなかった。平均観察期間6 か月の現在, 全例が無再発生存中である。以上よりRFA -assisted EH は根治性と安全性の高さから推奨できる治療法である。 -
大腸癌治療における5-FU 肝動注療法+UFT 内服治療の抗腫瘍効果の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionはじめに: 動注治療時の末梢血中の5-FU 濃度を高め肝外病変に対する治療効果を得る目的で, 5-FU の肝動注治療にUFT の内服を併用した。肝外病変, 肝転移巣に対する抗腫瘍効果および有害事象を検討した。対象と方法: 肝動注治療にUFT内服を併用した8 症例を対象とした。5-FU は1,000〜1,500 mg を5 時間で肝動注, UFT は200〜400 mg を内服した。8 例の肝に対する抗腫瘍効果と副作用を検討した。8 例中5 例は動注開始時に肝外病変を認めており, 肝外病変に対する抗腫瘍効果を検討した。結果: 肝外病変を認めた5 症例中, 4 症例で評価可能であった。肝外病変に対する抗腫瘍効果はCR 1 例, PR 1 例,SD 2 例で奏効率は50%であった。肝転移巣に対する抗腫瘍効果はCR 1 例, PR 4 例, SD 2 例, PD 1 例で奏効率は62.5%であった。有害事象はgrade 2 の白血球減少を1 例で認めた。考察:本治療法は安全で, 肝転移巣および肝外病変にも有効である可能性が示唆された。 -
下部直腸癌に対するセンチネルリンパ節生検を用いた経仙骨的直腸切除術の試み
31巻11号(2004);View Description Hide Description下部直腸癌におけるsentinel node navigation surgery (SNNS )は, その研究報告も少なく, その理由としては直腸の解剖学的特徴により, センチネルリンパ節(以下SN )を直視下に確認するのは困難であることなどによる。今回われわれが試みた経仙骨的アプローチによる手術は, 直腸のリンパ流をほとんど破壊することなく低侵襲にSN を同定でき, 今後のSNNSの研究に有用であると考えた。 -
肝切除適応症例選別の試み微小病巣顕在化までの癌局所コントロールとしての動注療法
31巻11号(2004);View Description Hide Description転移性肝癌もしくは肝硬変合併原発性肝細胞癌(HCC )の肝腫瘍部における局所コントロールを目的として, 肝動注塞栓療法を施行した3 症例について報告する。症例は異時性胃癌肝転移2 例, HCC 1 例。肝動注塞栓療法および一過性肝動脈塞栓術としてepirubicin , mitomycin C , degradable starch microspheres を使用した。胃癌の1 例は本法施行中に多発病変が出現し, 他の1 例は単発性再発を確認できたものの, カテーテルトラブルにより肝動脈が閉塞し肝切除後の動脈血流低下による肝障害が懸念され, またHCC 症例は肝予備能低下のためいずれも肝切除には至らなかった。しかしながら肝切除へのbridgeuse として, 局所をコントロールできる本法も考慮されるべき治療法と考える。 -
肝転移を伴う進行膵癌の局所癌免疫化学療法の経験
31巻11号(2004);View Description Hide Description目的: 肝転移を伴う進行膵癌に対し, gemcitabine (GEM )の動注と全身投与ならびに局所癌免疫化学療法の併用を行った。対象・方法: 対象は, 71 歳, 男性で2003 年8 月中旬食欲低下, 腹部膨満を主訴に近医を受診した。腹部精査で膵癌(T 4N 2M +stage IVb )と診断した。CEA 265.4 ng /ml , CA 19-9 90,841.7 U /ml であった。GEM を動注投与および経静脈投与した。またCTL を誘導した自己活性化リンパ球を動注した。GEM は動注400 mg , 全身投与600 mg を投与し, 2 週後にGEM を投与し, その翌日に活性化リンパ球約2.0×10 個を計4 回動注投与した。結果: CEA は155.5 ng /ml に低下し, CA 19-9 は一度12 万以上に上昇したが79,758.4 U /ml にまで低下した。腹部CT では主腫瘍, 肝転移巣は縮小傾向にあった。しかし腹膜進展は制御できず, 2004 年1 月14 日膵癌診断後約5 か月で死亡した。結語: 肝転移を伴う膵癌の動注による局所癌免疫化学療法を行い, 主腫瘍ならびに肝転移巣進展の制御がみられた。 -
乳癌癌性胸膜炎に対して蒸留水による胸膜癒着術を施行した2 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description癌性胸膜炎による胸水貯留は, 再発乳癌患者において比較的よくみられる病態であり, 良好なquality of life (QOL )を保つにはそのコントロールが非常に重要な問題である。われわれは, 癌性胸膜炎による呼吸困難を合併した再発乳癌患者2名に対し, 蒸留水による胸膜癒着術を施行したので報告する。患者は多発他臓器転移に対し, 種々の内分泌療法や化学療法を受けてきたため全身状態は決して良好とはいえなかったが, 1〜2 回の蒸留水による胸膜癒着術により胸水コントロールに成功し, 呼吸困難も消失した。さらにその後の胸水再貯留も認めなかった。本法はその効果有害事象と有害事象の発生がまれであることを考慮すると, 癌性胸膜炎患者の胸水貯留に有用な治療法である考えられた。 -
水溶性Cis -platinum の徐放製剤化
31巻11号(2004);View Description Hide Description水溶性cis -platinum (CDDP )に標的指向性と徐放性を付与する目的で剤形変更を試みている。担体は医療用フィブリン, ゼラチンを利用, そのハイドロゲルをベースとして紫外線(UV )照射を施し, 改質作製した。CDDP を担持させて新剤形とし, 担体の分解性, CDDP の放出動態, 抗腫瘍性を検討, その機序を解析した。担体の分解性はUV 照射時間にCDDP の放出動態は担体の分解性にそれぞれ相関していることが示唆された。新剤形から放出されたCDDP は90%以上が10 kDa 以上の蛋白結合型であった。これらは培養癌細胞の増殖抑制を示したが, 担体を介さずにヒト血漿と直接反応させたCDDP に抑制能はわずかしかみられなかった。腹水癌AH -130 担癌ラットに新製剤を開腹投与した場合, 7/8 が完全に腹水消失し35 日間以上正常に生存した。CDDP ip や無処置の場合, 10 日前後で癌死した。CDDP は周囲に介在する物質との種々なinteraction により異なった放出動態と薬理効果を示すことがうかがわれた。 -
ハナビラタケの免疫調整作用について
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionβ(1 → 6)分岐β(1 → 3)グルカンを高度に含有する食用キノコ, ハナビラタケ(SC )の経口摂取により免疫系に与える影響を明らかにするため, マウスを用いた抗腫瘍効果・アトピー様症状改善効果およびヒトにおけるNK 細胞活性化効果について検討を行った。㈰ Sarcoma 180 を移植したマウスにSC 粉末を経口投与した。移植5 週間後, SC 投与群では対照群と比較して腫瘍重量は縮小し, マウスの生存率も高かった。㈪ 薬物皮膚炎発症マウスの発症4, 8 週後の血清中IgE 量はSC 投与群で対照群より低めに推移し, 引っかき回数も少なかった。㈫ SC 粉末を摂取した健常人のNK 細胞活性は摂取期間8 週間で上昇し, 中止4 週間後には低下していた。以上, SC の経口摂取により, 抗腫瘍, アトピー様症状改善およびNK 細胞活性上昇効果がみられたことから, SC は免疫系を活性化しTh1 /Th2 バランスをTh1 側に偏向させるという免疫調整作用をもつと考えられた。 -
大腸癌肝転移に対する肝動注リザーバーと新免疫療法(NITC )併用における意義
31巻11号(2004);View Description Hide Description多発性肝転移における肝動注リザーバーからの抗癌剤注入は比較的有効とされているが, 作用機序については明確でない。われわれは, 肝動注リザーバーの作用機序に免疫応答が起こっているのではないかと考え大腸癌肝転移患者で検討したところ, 生存期間24 週以上の群と24 週未満の群で比較すると24 週以上の群でTh 1 サイトカインが有意に高く(p<0.001〜0.05),VEGF が有意に低かった(p<0.01)。また, 生存率では動注療法併用群で高い傾向にあったことから, 何らかの免疫反応が誘導され腫瘍の縮小や延命効果に深くかかわっていることが示唆されたが, 今後さらに動注単独における免疫活性との比較検討が必要と思われた。 -
OK -432 の免疫活性化機構の解析貪食, 活性成分の遊出とTLR 4 シグナルの活性化
31巻11号(2004);View Description Hide Description抗腫瘍免疫療法剤OK -432 による免疫活性化において, 貪食細胞による取り込みとToll -like receptor (TLR )4 シグナルが重要であるとの仮説をたてin vitro 実験系にて検討した。OK -432 による樹状細胞(DC )およびマクロファージにおけるIL -12 の産生は, サイトカラシンB による貪食阻害により有意に抑制された。OK -432 がDC およびマクロファージにより取り込まれ, 分解されることが間接蛍光抗体法にて明らかとなった。OK -432 でDC を処理した時の培養上清中に, TS -2 抗体(OK -432 の活性成分リポタイコ酸関連分子を認識する単クローン抗体)により認識される成分の存在が明らかとなり, 同上清はTLR 4 強制発現細胞株においてNF -κB の転写活性を増強させた。この活性はTS -2 抗体により有意に抑制された。OK -432の免疫活性における, 貪食細胞による取り込みと活性成分のTLR 4 への結合を介したメカニズムが明らかになった。 -
TLR 4 欠損マウスにおけるTLR 4 発現樹状細胞およびOK -432 活性成分腫瘍内投与の抗腫瘍効果
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionレンサ球菌製剤OK -432 より活性成分OK -PSA の分離に成功した。OK -PSA はToll -like receptor (TLR )4 を介して樹状細胞(DC )を成熟させる。DC 腫瘍内投与療法におけるOK -PSA の併用効果について検索した。TLR 4 野生型担癌マウスにおいて, DC +OK -PSA 腫瘍内投与により著明な腫瘍増殖抑制効果が認められたのに対し, TLR 4 欠損マウスにおいてOK -PSA は抗腫瘍効果を発現しなかった。ところが, TLR 4 欠損マウスにおいても野生型マウス由来DC とOK -PSA の併用投与により, 有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。この時腫瘍浸潤リンパ球およびリンパ節細胞の移植癌細胞に対する障害活性の増強も認められた。TLR 4 欠損宿主においても, 局所投与するDC がTLR 4 を発現していれば, OK -PSA 併用により抗腫瘍効果が得られることが明らかとなった。 -
胃癌における樹状細胞腫瘍内局注療法の2 症例の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description最近, 樹状細胞(dendritic cell )を用いた細胞免疫療法が各施設で行われるようになってきている。当科でも学内倫理委員会の承認を得て, CEA , HER 2, MUC -1, MAGE -1 peptide を用いてpeptide -pulsed DC 皮下接種療法を行ってきたが, 20 症例の検討では奏効率が程度と十分とはいえないのが現状であり, 担癌状態ゆえのanergy やDC のmigration およびeffector の到達効率などに問題があると思われた。これに対し, DC の腫瘍内局注療法はDC を腫瘍内に直接注入することでDC の腫瘍内でのphagocytosis による局所効果, その後のCTL induction によるsystemic な効果が期され, DC の癌ワクチン効果が皮下接種より効率的に作用すると期待される。今回, 抗癌剤無効の高度進行胃癌2 症例に対してEUS 下腫瘍内局注療法を行い, その有用性を検討した。その結果, 1 例で腫瘍マーカーの低下がみられ腹水の減少を認めた。副作用はgrade2 までの熱発を認めたが, 対処的に容易に解熱した。2 例中1 例に有効性が認められたことより, 樹状細胞の腫瘍内局注療法はpeptide -pulsed DC 皮下接種療法と比較すると比較的高い奏効が期待されると思われ, その有用性が示された。 -
NK4による腹膜転移抑制と機序
31巻11号(2004);View Description Hide DescriptionNK4 は, HGF アンタゴニストおよび血管新生阻害作用により癌の浸潤転移を抑制する。これまでわれわれは, NK4 発現アデノウイルスベクター(Ad -NK4 )腹腔内投与およびNK4 遺伝子導入癌細胞移植マウスモデルを用いて, NK4 による腹膜転移抑制作用を明らかにした。今回, その機序について検討した。Ad -NK4 腹腔内投与により, 癌細胞の腹膜乳斑への集積が移植直後より抑制されることをGFP 発現細胞を用いた蛍光顕微鏡観察にて明らかにした。NK4 発現が癌細胞における転移関連遺伝子群の発現に及ぼす影響をDNA microarray 解析にて調べた結果, NK4 遺伝子導入癌細胞において接着分子発現の減弱が認められた。さらに, adhesion assay において, HGF 存在下, NK4 発現細胞の細胞外基質に対する接着性の抑制が認められ, NK4 が接着抑制を介して腹膜転移を抑制する可能性が示唆された。 -
食道平上皮癌の担癌患者におけるIndoleamine 2,3-Dioxygenase 発現の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionindoleamine 2,3-dioxygenase (IDO )が, 食道癌において免疫抑制にかかわっている可能性を検索した。癌部と非癌部の凍結標本30 例より, 定量化RT -PCR 法によってIDO の発現を検討した。また, 食道癌患者5 例と健常人5 例の末梢血より定量化RT -PCR 法とHPLC 法によりIDO の発現を検討した。得られた情報を各症例の臨床病理学的因子および累積生存率と比較検討した。IDO はすべての症例の癌部と非癌部に発現していた。癌部におけるIDO の発現は, 非癌部よりも有意に増強していた。癌部におけるIDO 高発現群は病理学組織学的進行度が高かった。またimmunosuppressive acidic protein (IAP )値とIDO の発現量には相関関係がみられた。IDO 高発現群は低発現群に比べて術後累積生存率が低かった。末梢血中におけるIDO の発現は, 健常人群に比べて食道癌の担癌患者群のほうが有意に発現量が高かった。食道癌の担癌患者において, IDO は局所と全身の免疫抑制に重要な役割を演じていると考えられた。 -
低用量Leucovorin /5-FU 療法施行大腸癌患者における宿主免疫能の変動
31巻11号(2004);View Description Hide Description大腸癌に対する治療的あるいは術後の補助化学療法として, 低用量Leucovorin /5-FU 療法は重篤な副作用がなく長期投与が可能で, 結果として長いmedian survival time (MST )を得ている。今回, なぜ長期投与可能なのかを投与前後の宿主の免疫能から検討した。対象は治療的あるいは術後の補助化学療法として低用量Leucovorin /5-FU 療法を施行した大腸癌の7 例(平均年齢63.7 歳(50〜77 歳), 男性3 例, 女性4 例)で, 化学療法前後での宿主の免疫能の変化について検討した。Th1 /Th2 比, PHA 幼若化, IAP , IL -6, IL -10, sIL -2R について検討したが, いずれにも化学療法後で変化は認められなかった。低用量Leucovorin /5-FU 療法が副作用なく, 長期投与可能な理由として宿主の免疫能に負の影響を与えないことが示唆された。 -
生分解性カチオン化ゼラチンを用いたヒト樹状細胞への遺伝子導入
31巻11号(2004);View Description Hide Description近年, 強力な抗原提示細胞である樹状細胞を用いた癌特異免疫療法が注目されている。しかし担癌生体への投与では, 樹状細胞自体の機能が低下しているため, 十分な機能を発揮できない可能性が予想される。そこで樹状細胞に腫瘍抗原やサイトカイン遺伝子を導入することで, その機能増強が期待できる。本研究においてわれわれは, 新たな遺伝子導入のための担体としてカチオン化ゼラチンを用い, ゼラチン-遺伝子複合体を用いたヒト樹状細胞への遺伝子導入を試みた。その結果, EGFP 遺伝子を用いた場合, flow cytometry 解析にて約14%の遺伝子導入効率が得られた。また, RT -PCR においてEGFP のmRNAの発現が確認された。allogeneic MLR での抗原提示能にも変化はなかった。生分解性カチオン化ゼラチンを用いることでヒト樹状細胞へ比較的高い遺伝子導入が得られることを明らかにした。 -
進行非小細胞肺癌に対してp53 遺伝子治療を施行し奏効が得られた1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description非小細胞肺癌症例に対する癌抑制遺伝子p53 発現アデノウイルスベクター(ADVEXIN )を用いた遺伝子治療の第I相臨床試験を行い, 奏効した1 例を経験したので報告する。57 歳, 男性で気管分岐部の平上皮癌, cT 4N 2M 0 Stage IIIB 症例。前治療として放射線療法, 化学療法を受けるも局所再発。経気管支鏡的にADVEXIN を4 週間に1 回投与する治療にて腫瘍の退縮を認め, 自覚症状の改善が得られた。合計14 回の投与が重篤な副作用なく可能であったが, 腫瘍の増悪により治療を中止した。ADVEXIN (R)の腫瘍内投与は限局型進行肺癌に対する有効な治療手段に成り得る可能性が示唆された。 -
チロシンキナーゼインヒビターSTI 571 が無効になったGIST の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description今回われわれは根治的切除不能な腹膜転移を伴うGIST に対し, チロシンキナーゼインヒビターであるSTI571 が一度は奏効したが, 薬剤の中止を契機に薬剤耐性を獲得し, STI571 にてコントロール不能となった症例を経験したので報告する。症例は45 歳, 女性。卵巣腫瘍疑いにて開腹し, 小腸原発のGIST と診断され根治手術が施行された。経過観察中, 初回手術から2 年後に腹膜転移を認め, 計3 回の再切除が施行されたが外科的に完全切除することは不可能であった。これに対してSTI571を400 mg /day で開始したところ腫瘍の縮小を認め, STI571 の効果が確認された。以後外来経過観察中8 か月間の無再発であったが, 本人の都合で服薬が中止されてから1 か月後に再発を認めた。STI571 服薬再開後一時的に腫瘍の縮小を認めたが3 か月後には再び腫瘍は増大した。そのためSTI571 の内服に加えて再び3 回の再切除が施行されたが腫瘍の縮小は得られなかった。そこで摘出標本のc -kit 遺伝子解析を行ったところ, 初回手術標本ではexon 11 に変異が見つかったが7 回目手術標本ではexon11 に加え, exon 13 にも変異が見つかった。このことから新たな遺伝子変異が起こりチロシンキナーゼインヒビターに耐性のあるGIST に変化したことが示唆された。また機序は不明であるが休薬が耐性の獲得に関与した可能性があり, 無再発であっても休薬に対しては慎重になる必要があると考えられた。 -
HLA -A 24 拘束性HER 2 由来CTL エピトープ同定と癌ワクチン療法
31巻11号(2004);View Description Hide Description進行癌に対する新たな治療法の一つとして癌ワクチン療法がある。今回われわれは日本人に最も多いHLA -A 24 に拘束されるHER 2 由来CTL エピトープを同定した。HLA -A 24 陽性健常人の末梢血単核球より成熟樹状細胞を誘導し, これにHER 2 ペプチドをantigen load させPBMC と共培養することにより, HLA -A 24 拘束性HER 2 反応性CTL line を誘導。CTL line の特異性をELISPOT assay とcytotoxicassay で分析した。二つのCTL line において, 誘導に用いたHER 2 ペプチドに対する特異性と癌細胞株(HLA -A 24 陽性・HER 2 陽性)に対する特異的な細胞障害が確認された。今回同定した二つのHLA -A 24 拘束性HER 2 エピトープは, 癌ワクチン療法の新たなターゲットになると考えられた。 -
Electrofusion による樹状細胞とヒト胃癌細胞の融合細胞の作製とCTL 誘導の試み
31巻11号(2004);View Description Hide Description腫瘍免疫療法においてヒト樹状細胞とヒト腫瘍細胞の融合細胞を用い, 抗腫瘍免疫を誘導するための様々な試みがなされている。そのなかで, 動物モデルにおいて著明な腫瘍縮小効果を示した報告がある。そこで今回われわれは, electrofusionにより, ヒト成熟樹状細胞とヒト胃癌細胞の融合細胞を作製し, CTL 誘導を試みた。融合効率はFACS 解析により評価し,47.8%の高い効率を得た。CTL 誘導はIL -2, IL -7, IL -12 存在下4 週間刺激細胞と効果細胞の共培養で行った。融合細胞を刺激細胞として得られた効果細胞の細胞傷害活性試験では, 腫瘍特異免疫を示す傾向はあったが, 統計学的に有意差を得られなかった。融合細胞の臨床応用を見据え, CTL 誘導の条件のさらなる検討が必要である。 -
大腸癌肝転移に対するDSM ・ADM ・MMC 肝動注療法の組織学的効果の検討(第2 報)
31巻11号(2004);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対するdegradable starch microspheres (DSM )・adriamycin (ADM )・mitomycin C (MMC )肝動注療法(以下, DSM 療法)の組織学的効果について報告する。方法: DSM 300〜600 mg にADM 30 mg ・MMC 10 mg を懸濁し固有肝動脈より注入。複数回行う場合は, 3〜4 週の間隔をおいた。対象: DSM 療法を施行した後, 肝転移巣の切除が施行された症例は9 例(計15 病変), 年齢36〜71 歳(平均57 歳), 性別;男性:女性=4:5, 同時性:異時性=3:6 を対象とした。結果: DSM 療法が1 回のみ行われた2 例3 病変は画像上の変化はなく, 4 週後に肝部分切除を施行。組織学的にはGrade 1 であった。DSM 療法が3 回以上施行された7 症例12 病変では画像上SD 4 病変, PR 6 病変, PD 2 病変であったが, 組織学的効果は4 病変でGrade 2, 5 病変でGrade 3 の効果が確認された。結語: 大腸癌肝転移に対してDSM 療法を複数回行うことにより, 画像上PR やSD で著明な縮小効果が認められなくても高度な組織学的効果が得られることが判明した。 -
原発巣のTopoisomerase -II α,Glutathione S -Transferase -πmRNA 発現からみた大腸癌肝転移に対するDegradable Starch Microsphere 併用Adriamycin ・Mitomycin C 肝動注療法の効果
31巻11号(2004);View Description Hide DescriptionDNA topoisomerase -II α(topo -II α)はadriamycin (ADM )の標的酵素である。glutathione -S -transferase -π(GST -π)はmitomycin C(MMC )やADM の耐性に関与する。今回, 大腸癌肝転移22 例を対象に原発巣のtopo -II αおよびGST -πmRNA 発現と, ADM , MMC を用いたdegradable starch microsphere 一過性肝動脈塞栓療法(DSM 療法)の効果との関係について検討した。β-actin を内部標準とした, topo -II α, GST -πmRNA のrelative expression (mean ±SD )は各々0.598±0.614, 0.809±0.649 であった。奏効例(PR , n=10)のtopo -II αmRNA 発現(0.872±0.564)は非奏効例(SD +PD , n=12)のそれより高かったが(0.369±0.133)(p<0.05), GST -πmRNA の発現は, 奏効例, 非奏効例の間で差を認めなかった(p=0.22)。以上からtopo -II αの発現の解析は, ADM を含むDSM 療法の効果を予測するのに有用である可能性が示唆された。 -
大腸癌肝転移治癒切除例に対する5-FU 予防肝動注療法の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description大腸癌肝転移治癒切除例161 例に対して5-FU の予防的肝動注療法を施行した群50 例と肝動注非施行群111 例について検討した。50%無再発生存期間(50%DFS )はそれぞれ758 日, 342 日(p=0.0001), 50%生存期間(50%OS )はそれぞれ978日, 730 日(p=0.0381)で予防動注群が有意に良好であった。次に肝転移がH 2, H 3 症例71 例を動注施行群32 例と非施行群39 例に分けて検討すると50%DFS は447 日, 235 日(p=0.0006), 50%OS は1,444 日, 813 日(p=0.0058)で無再発生存期間において予防動注群が有意に良好であった。予防肝動注療法は無再発期間・生命予後に寄与し, 大腸癌肝転移症例の重要な治療法の一つであると考えられた。 -
直腸癌術後骨盤腔内再発および多発性肝転移に対して5-Fluorouracil /Leucovorin 動注療法が有効であった1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は55 歳, 男性。1994 年直腸癌に対して直腸切断術を施行した。2002 年腫瘍マーカーの上昇を指摘されCT を施行したところ, 局所再発と多発性肝転移が明らかとなった。5-FU /LV 内腸骨動注および肝動注療法を施行することとし, 毎週1 回5-FU(500 mg /body )を各リザーバーより5 時間で動注, l -leucovorin (400 mg /body )を2 時間で点滴静注した。入院,外来を含めて動注療法を18 回施行した結果, 肝転移は消失した。骨盤内腫瘍は縮小を認め会陰部痛は改善し, モルヒネの投与は不要となった。なお, 副作用はgrade 1 の嘔気を認めたが重篤な副作用はなくQOL は保たれた。本症例は直腸癌術後再発に対して5-FU /LV 動注療法が有効であった1 例と考えられた。 -
切除不能大腸癌多発肝転移に対して全身免疫療法併用肝動注化学療法が奏効し肝切除を施行した1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は76 歳, 男性。S 状結腸癌同時性多発肝転移に対して, 2002 年6 月21 日, S 状結腸切除術, D 2 施行(中分化腺癌, ss , n(−), H 3, P 0, M(−), Stage IV )。肝転移に対して5-FU +CDDP (5-FU 1,250 mg /body /3hr , CDDP 10 mg /body /30 min )を用いた肝動注化学療法を施行した。1 回/週で23 回, さらに1 回/2 週に延長し計38 回施行した(5-FU 総投与量47.5 g)。その間, 全身免疫療法として, 1 回/2 週のIFNANK 療法を併用した。その結果, 2003 年6 月, 腫瘍マーカーの著明な低下(CEA /CA 19-9: 術前1,649/928 → 3.7/29)とCT 上, 転移腫瘍の完全消失が得られた。その後, IFNANK 療法単独にて経過観察していたが, 同年12 月肝転移再発を認めたため, 2004 年1 月28 日根治切除を行った。肝転移治療における免疫療法の意義についての考察を加え報告する。 -
5-FU 動注とIFN 投与にて外来加療中のび漫型肝癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionび漫型肝癌に対し, 動注ポートより5-FU , 皮下注射にてIFN を投与し加療し良好な経過をたどっている1 例を経験した。症例は74 歳, 男性で2002 年4 月ごろよりAFP , PIVKA -II の上昇を認め, 腹部CT , 腹部血管造影およびCTA , CTAPにて門脈腫瘍栓を伴うHCC diffuse type と診断, 肝動脈にカテーテルを留置。2002 年6 月18 日より5-FU 500 mg /24h/5 days持続動注およびIFN -α3×10 単位週2 回皮下注を2 週間施行するレジメンを5 回施行しマーカーは正常範囲となった。以降は外来にて5-FU 500 mg の週1 回動注, IFN -α3×10 単位週2 回皮下注とした。また, 内服にて5-FU 錠(50 mg )3 錠を連日投与することにした。2004 年4 月現在,(診断時より2 年)AFP 値は正常範囲のままであり腫瘍は縮小(PR )を示し, 副作用なく元気に通院されている。 -
発熱を伴う肝細胞癌に対し抗生物質併用肝動注化学療法が奏効した1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description腫瘍内部の壊死性変化がみられ発熱を認めるHCC に抗生物質動注療法併用肝動注化学療法を施行することによって, 改善を認めた症例を経験したため報告する。症例は67 歳, 女性。2001 年1 月, C 型肝炎の肝硬変に伴うHCC S 4〜S 8 に対し肝部分切除術施行, 2002 年3 月HCC の多発再発に対し肝動注化学療法(CDDP 10 mg /日, 5-FU 250 mg /日を20 回)を施行した。2002 年10 月中旬より38℃以上の発熱を認め, dynamic CT にてS 7〜S 4 にHCC の再発を認めた。また腫瘍内部の壊死性変化を伴っていたため当院入院となった。治療方法: 炎症反応の上昇がみられたが熱原が見当たらず, 腫瘍からの発熱と考え抗生物質の全身投与を先行させるも解熱傾向なく, 抗生物質の肝動注療法, 肝動注化学療法(CDDP 10 mg /日, 5-FU 250 mg /日を20 回)を開始した。腫瘍内部の壊死性変化の消失, 炎症反応の低下を認めたためRFA を施行し得た。 -
胃癌肝転移症例に対するCPT -11 肝動注化学療法の経験
31巻11号(2004);View Description Hide Description今回われわれはTS -1, CDDP でコントロールし得なかった肝転移巣に対してsecond -line 化学療法としてCPT -11 の肝動注化学療法を施行し腫瘍の縮小を得た1 例を経験したので報告する。胃癌多発肝転移により, TS -1, CDDP などによる化学療法施行中の男性が転移巣の再増殖を来したため, TS -1 とCPT -11 の肝動注を施行し, 一定期間増殖抑制効果が得られた。CPT -11 はプロドラッグであるが, 肝組織においてもSN -38 に変換されるため肝動注により奏効した例の報告が散見される。今回TS -1, CDDP 療法施行中の急速な肝転移の増大に対してCPT -11 の肝動注を選択したところ一定の腫瘍増殖抑制効果を得ることができた。 -
胃癌肝転移に対してTS -1 治療後に5-FU , Adriamycin , Cisplatin (FAP )肝動注化学療法を行った症例
31巻11号(2004);View Description Hide Description胃癌の肝転移再発は予後不良であり, 標準的治療は確立されていない。TS -1 が無効で他臓器転移を認めない胃癌肝転移に対して, 5-FU , adriamycin (ADM ), cisplatin (CDDP )を用いた肝動注化学療法(FAP 肝動注療法)を行ったので報告する。症例1: 80 歳, 男性。2 型胃癌(Stage II )に対して胃切除術施行後18 か月目に肝S8 転移再発を認めた。TS -1 を5 コース内服後FAP 肝動注療法を7 コース施行した。効果はPR でカテーテル閉塞のため中止したが再燃, 再発を認めてない。症例2: 73 歳, 男性。0 IIc 型胃癌(Stage IA )に対して胃切除術施行後32 か月目に多発肝転移再発を認めた。TS -1 を2 コース内服後FAP 肝動注療法を10 コース施行した。効果はCR であったが腹膜再発を認め全身化学療法を施行し, 肝転移の再燃なく生存中である。TS -1 治療が無効である胃癌肝転移巣に対してFAP 肝動注療法は有効であったが, 全身化学療法との併用も考慮する必要がある。 -
乳癌肝転移肝動注症例における長期生存例の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description肝動脈塞栓化学療法(TACE )および皮下埋め込み型リザーバーを用いた肝動注化学療法を行った乳癌肝転移例14 例のうち, 3 年以上の生存を認めたものを長期生存例(A 群), 3 年未満で死亡したものを短期死亡例(B 群)としてそれぞれの背景因子, 動注の効果を比較した。肝転移出現までの期間および無病期間は有意にA 群のほうが長い傾向がみられた。A 群4 例のすべてが現在も生存中であり, 最長生存期間は6 年4 か月である。一方, B 群では呼吸不全の1 例を除き死因はすべて肝不全であった。肝転移巣に対する奏効率は38.5%であったが, 奏効例では5 例中4 例に長期生存が得られており, 肝動注療法により生命予後を規定する肝転移巣を効率的に制御できれば良好な予後が得られる可能性が考えられた。 -
多発肝転移を伴う膵癌に対し術後動注化学療法にて良好なQOL の得られた1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description膵癌は予後の悪い悪性疾患である。特に膵癌の生物学的特長である肝転移は, 予後を規定する重要な因子となっている。今回, 肝転移を伴う高度進行膵癌にインターフェロン(interferon , IFN )併用動注化学療法で良好なquality of life (QOL )を得られた症例を経験した。症例は68 歳, 男性。多発肝転移を伴う進行膵癌(Stage IVb )であった。膵体尾部切除後, gem -citabine hydrochloride (GEM )(600 mg /m /week )を肝動注投与, IFN 300×10 単位を週3 回筋肉注射した。CT 上, 肝転移巣は縮小または消失した。術後約11 か月で死亡したが全経過中の約60%を外来通院にて過ごすことができた。GEM とIFNの併用療法は患者のQOL を改善した療法と考えられた。 -
胆道癌に対する術後予防肝動注療法
31巻11号(2004);View Description Hide Description胆道癌に対する治療としては, 早期の段階における外科的切除が最も根治性が高いと考えられるが根治手術がなされても, 局所再発, 肝転移を来すことも多い。そこで当施設では, 胆道癌の根治手術後に5-FU の予防肝動注療法を施行している。対象・方法: 2000 年1 月より2003 年12 月までの4 年間で当院外科に入院した胆道癌患者は63 例で, 胆管癌30 例, 胆嚢癌23 例, ファータ乳頭部癌10 例であった。そのうち根治手術がされた胆道癌患者は37 例(胆管癌16 例, 胆嚢癌14 例, ファータ乳頭部癌6 例)であった。これらの症例のうち, 同意が得られた18 例(胆管癌9 例, 胆嚢癌7 例, ファータ乳頭部癌2 例)に対して予防的に肝動注化学療法を施行した。予防肝動注療法は, 血管のコイリングをした後, 動注ポートの埋め込みはせず,大腿動脈を穿刺した血管造影用のカテーテルまたはマイクロカテーテルに直接シリンジポンプを接続し, 5-FU 1,000 mg /day ×(3+3)days /week を1 クールとして2 クール施行した。結果: Kaplan -Meier 法による, 術後予防肝動注化学療法群の50%生存期間は1,024 日, 術後非予防肝動注化学療法群の50%生存期間は515 日であった。また術後予防肝動注化学療法群の生存率は有意差をもって, 術後非予防肝動注化学療法群より高かった(p=0.048, Wilcoxon test )。以上より, 5-FU 単剤術後予防肝動注療法が有用である可能性が示唆された。 -
大腸癌肺転移に対する気管支動脈内抗癌剤注入療法(BAI )の経験
31巻11号(2004);View Description Hide Description全身化学療法無効の大腸癌肺転移3 例に対し, 症状緩和の目的で気管支動脈内抗癌剤注入療法(BAI )を行ったのでその有効性, 安全性について検討した。3 例は直腸癌2 例, 上行結腸癌1 例である。3 例とも原発巣, 肺転移巣の手術後多発肺転移が出現し, 全身化学療法(CPT -11, 5-FU , CDDP )を施行したがPD となり胸部症状(咳嗽, 胸部痛)が出現した。BAI は低用量CPT -11(40 mg /m )+CDDP(40 mg /m )one shot で行い, 2 例では反復して(3, 6 回)施行した。BAI は合併症なく, 副作用も軽微で1 回の入院日数は平均7.8 日であった。3 例とも画像上効果はSD であったが症状は軽快した。予後は初回BAI より3, 6, 9 か月で癌死した。全身化学療法無効の大腸癌肺転移に対するBAI は低用量で安全に施行でき, 胸部症状の改善, QOL の維持において有効であった。 -
胃癌腹膜播種性転移に対するモノクローナル抗体結合抗癌剤A 7-NCS 腹腔内投与と静脈内投与の比較検討
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionヒト大腸癌を免疫原とするモノクローナル抗体A 7 はヒト胃癌細胞株に高率に反応する。このA 7 を抗癌剤neocarzinos -tatin(NCS )と結合させ, 複合体A 7-NCS を作製した。A 7 反応陽性のヒト胃癌細胞株MKN 45 に対するA 7-NCS のin vitro抗腫瘍効果はNCS 単独よりも強力であった。MKN 45 をヌードマウス腹腔内に移植したマウス胃癌腹膜播種モデルを用いて胃癌腹膜播種性転移に対するA 7-NCS の抗腫瘍効果を腹腔内投与群と静脈内投与群で比較検討した。治療効果はA 7-NCS の腹腔内投与群が静脈内投与群よりも有意に腫瘍細胞の増殖を抑制していた。胃癌腹膜播種性転移に対するA 7-NCS の効果は静脈内投与よりも腹腔内投与のほうが優れていると考えられた。 -
活性炭吸着Methotrexate (MTX -CH )局所投与の基礎的検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description腫瘍縮小効果の増強を目的としてMTX を長期にわたり注射部位に滞留させる新しい剤形, 活性炭吸着methotrexate(MTX -CH )を開発した。MTX として30 mg /kg のMTX -CH をBALB /c ヌードマウスの背部に形成した腫瘍内に局所注射し, 同量のMTX 水溶液(MTX -SOL ), 生理食塩水あるいは活性炭を腫瘍内に注射した群および無治療群と, ㈰ 腫瘍内MTX 濃度の経時的変化, ㈪ 腫瘍縮小効果を比較・検討した。MTX 濃度の検討では, MTX -CH 群はMTX 水溶液群に比べて有意にMTX の滞留性が優れていた。腫瘍縮小効果の検討では, MTX -CH 群はMTX 水溶液群に比較して薬剤投与終了後まで長期にわたり有意に優れた抑制効果が認められた。MTX -CH はMTX 水溶液に比べて注射部位での薬剤滞留性に優れ, 腫瘍発育に対する抑制効果に優る剤形と考えられる。 -
GFP 発現系を用いた免疫エフェクター細胞の生体内動態の検討
31巻11号(2004);View Description Hide DescriptionGFP transgenic mice は, 赤血球と体毛以外の全細胞がgreen fluorescent protein (GFP )を発現し, その脾から誘導されたlymphokine activated killer cell(GFP -LAK )は, 蛍光顕微鏡下に緑色蛍光を発する。今回われわれは, GFP -LAKをGFP を発現しない同系マウスへ移入するadoptive immunotherapy モデルを用いて, LAK の生体内動態を検討した。腹膜播種に対する腹腔内投与および肺転移に対する静脈投与を行った。その結果, 腹腔内投与により腫瘍に対するLAK の高い集積性が観察されたものの, 全身投与による肺転移巣に対する集積性は極めて不良であった。本法は, 移入細胞による抗腫瘍機序を解明するための方法として有用であり, 移入細胞マーキングのための何ら特別な操作を必要とせず, 簡単かつ安定した検出系として利用できる。 -
スキルス胃癌術後の癌性胸・腹膜炎に対しDocetaxel (TXT )の胸腔・腹腔内投与を行った1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は34 歳, 女性。スキルス胃癌の診断にて胃全摘術を施行, T4 , N0 , H0 , CY1 , P1 , Stage IV であった。術後化学療法としてTS -1 を行うも, 術後4 か月で癌性腹水の貯留を認めた。docetaxel (TXT )45 mg /m の腹腔内投与を開始し,約6 か月にわたり良好なQOL を得た。また術後9 か月目に左癌性胸水が出現し, TXT 45 mg /m の胸腔内投与を2 回施行したところ胸水細胞診は陰性化し, 5 か月以上にわたり胸水の増量なく経過した。本症例ではTXT の胸腔・腹腔内への局所投与が奏効しQOL が一時的に改善した。明らかな有害事象は認めず, 癌性胸膜炎, 癌性腹膜炎に対するTXT の胸腔内・腹腔内投与は副作用の少ない有力な局所治療法であると思われた。 -
Weekly Paclitaxel が著効した胃癌・腹膜播種の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は65 歳, 女性。2 型進行胃癌の診断で受診, 大量の腹水を認めたが, paclitaxel 90 mg /body の6 週連続腹腔内投与により, 腹水消失, 原発巣の著明な縮小が得られ手術となった。所見は, U 前壁, 5 型, 2.6×2.0 cm , por , T2 , n1(+),H0 , P0 , CY0 , M0 , stage II 。切除標本での病理学的効果判定はgrade 2 となった。胃癌の腹膜播種に対し本治療は有効であり, 原発巣に対する効果も期待できることが示された。 -
胃癌腹膜播種に対するPaclitaxel を用いた腹腔内化学療法の安全性
31巻11号(2004);View Description Hide Description胃癌の腹膜播種6 症例に対し, TXL による腹腔内化学療法を行い安全性について検討した。4 症例にはTXL 120〜150mg /body(約80〜90 mg /m )を1〜2 週の間隔で腹腔内投与し, 高度の腹水貯留を伴う症例で, grade 4 の好中球減少が発現した。2 症例にはTXL 60 mg /m を1〜2 週の間隔で腹腔内投与し, いずれも腹水貯留を伴っていたが重篤な副作用はみられなかった。従来, TXL 80〜90 mg /m の腹腔内投与によるgrade 4 の骨髄抑制は報告されておらず, 腹水貯留を伴うような胃癌腹膜播種症例ではTXL の副作用が強く発現する可能性があり, TXL を用いた腹腔内化学療法のphase I /II study を行うことが望まれる。 -
活性炭吸着Mitomycin C 腹腔内投与により腹水を有する胃癌腹膜再発の治療4 症例の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description微粒子活性炭にmitomycin C を吸着させたMMC -CH を腹水が貯留した胃癌腹膜転移の4 症例に腹腔内投与し, 投与前後で血中腫瘍マーカーCEA , CA 19-9, CA 125, CA 72-4, STN と腹囲を測定し検討した。腫瘍マーカーは4 例中3 例で低下し, 腹水貯留は4 例すべてにおいて消失した。全症例で食事摂取量の増加と悪心・嘔吐の減少, QOL の向上などに改善を得た。4 症例とも癌により死亡したが, 多量の腹水出現後, 腹腔内投与から死亡までの日数は平均291.2 日(123〜542 日)で, 542日という長期生存例もあった。以上より, MMC -CH は多量に腹水貯留する腹膜再発に対し, 抗腫瘍効果と腹水のコントロールに有効であり, 末期癌患者のQOL の向上に有効であると考えられた。 -
水腎症を伴う癌性腹膜炎に対してDJ ステントと抗癌剤治療が有効であった再発胃癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は69 歳, 女性。進行胃癌に対して2 群リンパ節郭清を伴う胃全摘術を受けた。所見はpT2 , pN0 , sP0 , sH0 ,sM0 , Stage IB であった。術後35 か月目に腹膜再発し, 腹水, 水腎症, 大腸狭窄を生じた。水腎症に対してDJ ステントを挿入した後にTS -1 療法(80 mg /day , 4 週内服, 2 週休薬)を開始した。2 クール終了後の効果判定では腹水の消失と腫瘍マーカーの低下を認めたが, 7 クール目にPD となりweekly paclitaxel 療法(90 mg /body ; 3 週連続投与, 1 週休薬を1 クール)に変更した。4 クール終了後の効果判定で腹水の消失と腫瘍マーカーの低下を認めた。しかし8 クール目に多発骨転移が判明し, 再発後約2 年で癌死した。TS -1 およびweekly paclitaxel 療法の有害事象はいずれも軽度であった。癌性腹膜炎を生じた再発胃癌の予後は不良とされているが, 集学的治療によりQOL の改善および予後の延長が期待できると考えられた。 -
二度の局所切除と全身化学療法にて5 年生存を得ている大腸癌腹膜播種の1 切除例
31巻11号(2004);View Description Hide Description66 歳, 男性。1998 年11 月30 日に盲腸癌に対して回盲部切除を施行し, 高分化型腺癌, ss , n(+), H , P , M(−),stage IIIa , D 3, cur A であった。2001 年1 月よりCEA の上昇を認め, CT にて臍直下に腫瘤を認めた。同年8 月8 日腹部腫瘤摘出術と多数の腹膜播種を切除し, 組織型は高分化型腺癌であった。その後外来にて5 -DFUR 600 mg 3×everyday , CPT -11 80 mg /body every 2 weeks (計6 回)を行った。2003 年8 月よりCEA の再上昇を認め, 同年11 月のCT にて脾腫瘤と,右鼠径リンパ節腫脹を認めた。同年12 月17 日脾摘, 右鼠径リンパ節切除術, 左横隔膜の播種性病変を切除した。大部分は中分化型で一部低分化型腺癌であった。外来にて5-fluorouracil (5-FU )500 mg iv , levofolinate calcium 250 mg div /weekを3 投1 休で施行し現在に至る。大腸癌腹膜播種は診断時には遠隔転移を伴い通常手術適応はない。しかし十分な観察期間の後に限られた播種病変であれば手術適応となる。 -
直腸癌術後局所再発に対し放射線照射および化学療法が奏効し長期生存が得られた1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は64 歳, 男性。膀胱直腸膿瘍を形成した進行下部直腸癌で, 腹会陰式直腸切断術(D 3)を施行した。腫瘍は規約2 型, 大きさ5.5×4.3 cm , 高分化腺癌で膿瘍壁の術中病理診断では腫瘍細胞は証明されず, 組織学的進行度はH 0, P 0, a 2,n0(0/86), ly 0, v0 でstage II であった。術後1 年間UFT -E(400 mg /day )の経口投与を行ったが, 術後2 年目に会陰部痛の出現とともに骨盤腔CT では仙骨前面に径4 cm 大の腫瘍陰影がみられ, CEA 値も11 ng /ml と上昇した。局所再発の診断の下, 骨盤腔煮2 Gy ×35 回, 計70 Gy の放射線照射を行うとともに, 右内腸骨動脈よりCDDP と5-FU による動注化学療法を行った。また基礎化学療法として, 5 -DFUR (600 mg /day )の経口投与を行ったところ3 年8 か月NC 状態が維持され, QOLの著明な改善が得られた。しかしその後, 本患者は骨盤内腫瘍の再燃および両側肺転移, 両側水腎症による腎不全を来し術後6 年10 か月, 再発診断後4 年10 か月で永眠した。直腸癌術後局所再発に対し集学的治療によって比較的長期の生存とQOL の改善が得られた1 例を経験したので報告した。 -
放射線化学療法を施行した直腸肛門平上皮癌の3 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description1999 年以降, 直腸肛門平上皮癌3 例に対して放射線化学療法を行った。症例1: 62 歳, 女性。子宮浸潤を認める肛門平上皮癌と診断され, 後方骨盤内臓全摘を行った。傍大動脈リンパ節陽性でありStage IV であった。術後CRT を行い5 年生存した。症例2: 74 歳, 女性。Stage II の肛門平上皮癌と診断され, 手術を行わずにtegafur /uracil の内服と全骨盤照射30Gy と組織内照射24 Gy を行った。腫瘍は消失し, 3 年8 か月無再発生存中である。症例3: 53 歳, 女性。リンパ節転移があり,Stage IIIa の肛門平上皮癌と診断した。5 -DFUR の内服と全骨盤照射66 Gy により腫瘍は消失し, 1 年9 か月無再発生存中である。当科における直腸肛門平上皮癌の根治度B , C 症例の切除成績は50%生存期間が7 か月, 6 か月と極めて不良であり, 初回治療として放射線化学療法の有用性が示唆される。 -
放射線併用動注化学療法を行った直腸癌術後骨盤内再発の2 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description直腸癌術後骨盤内再発例に対し, 放射線併用動注化学療法を行った2 例についてその治療効果について検討した。動注化学療法は5-FU 250 mg /day /body を28 日間持続動注し, CDDP 5 mg /day を週5 回動注した。さらに除痛を主目的として2〜3 Gy /day ×20〜30 回の放射線療法を行った。2 症例とも照射後, 腫瘍の縮小が認められ疼痛も著明に軽快した。放射線療法により限局した骨転移などの疼痛が緩和されることが知られているが, 放射線療法併用動注化学療法は直腸癌骨盤内再発に対して行い得る局所療法の選択肢の一つであると考えられた。生命予後を有意に改善し得るか否かについては他部位の転移再発の有無によるところが大きいが, 高率な除痛効果が得られる点ではQOL の改善に有効である。 -
進行再発胃癌に対し化学療法に放射線療法を併用した2 症例について
31巻11号(2004);View Description Hide Description近年, 高度進行再発胃癌に対し, TS -1, taxane 系薬剤, CPT -11 などの奏効率の高く, 延命効果が期待される薬剤が登場してきた。これら化学療法の治療中に局所に無効病変が出現し, そのコントロールに苦慮することがある。今回, 高度進行胃癌, 再発胃癌の化学療法治療中に局所に無効病変が出現し, その臨床症状改善を目的として, 放射線療法を施行した2 症例を経験したので報告するとともに胃癌における放射線療法について検討した。 -
重粒子線術前照射併用膵癌切除症例の経験
31巻11号(2004);View Description Hide Description目的: 膵癌は根治手術が行われたにせよ再発が多い難治癌である。一方, 従来の高エネルギーX 線と比較して深部の癌に対し線量を集中し得る重粒子線を用いた様々な臓器の癌に対する治療が開始されており成果を上げつつある。当科で施行された4 例の重粒子線術前照射膵癌切除症例を報告する。症例: 進行度Stage III , Stage IVa の浸潤性膵管癌4 例に対し術前48GyE の炭素イオン線照射を行った後膵切除術が施行された。結果: 1 例に術後重症胆管炎の合併症をみたが重粒子線照射に伴う明らかな障害はなかった。4 症例とも生存中であるが2 例に腹膜転移, 肝転移再発を認めた。まとめ:膵癌切除における重粒子線術前療法は強力な局所制御療法を併施する新しい治療として期待されるが, 実際の臨床効果判定には今後さらに症例を重ねる必要がある。 -
大腸癌同時性肝転移症例に対する肝凍結治療成績
31巻11号(2004);View Description Hide Description肝凍結治療を行った大腸癌同時性肝転移症例について検討した。凍結治療後の予後の明らかな症例は, 男性5 例, 女性7 例の12 例であった。いずれも開腹下に原発巣の切除とともに肝転移巣に凍結治療が行われた症例で, 実施した時期は1981 年から1987 年であった。凍結治療後の予後は, 24 か月で再発他病死した症例, 117 か月で再発なし他病死した症例以外は原病死しており, これら症例の生存期間は6〜117 か月, 平均25.4 か月であった。凍結治療により明らかに抗腫瘍免疫の誘導を来したと思われる症例は存在しなかった。未治療腫瘍が残存する割には予後良好と思われる症例が存在した。 -
大腸癌肝転移巣に対してラジオ波組織熱焼却療法(RFA )を施行した1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description肝硬変を伴った大腸癌肝転移巣に対してRFA を施行した症例を経験し, その適応を考察した。症例は51 歳, 男性。S状結腸癌および肝細胞癌(S 5, S 6, S 8)の術前診断。B 型肝炎合併の肝硬変による肝予備能の低下を認め, 肝は切除不能と判断しRFA を予定。手術はS 状結腸切除を施行, 肝腫瘍は術中迅速病理診断でS 状結腸癌の転移と診断。肝腫瘍に対して局所制御を期待しRFA を施行。術後外来でWHF を施行するも, 血小板低下, 肝機能障害が出現し, 定期的な継続投与が困難であった。術後11 か月, 残肝に多発性の再発を認め, 動注を再開し腫瘍の縮小をみたがその後肝機能障害のため休薬を余儀なくされていた。術後1 年9 か月, 再度残肝に多発性の再発を認めたため動注を再開した。その後腫瘍は徐々に縮小して現在はS 3にのみであり, 局所のコントロールは良好である。本症例は高度肝機能障害を伴った多発肝転移例のためRFA を試みたが, 局所制御は良好であった。しかしながら現状では, 高度肝機能障害を伴った多発肝転移などの肝切除不能例がRFA を含めた局所凝固療法の適応である。 -
悪性気道狭窄に対する気管支内視鏡治療の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description気管支内視鏡治療を施行した気管・気管支悪性腫瘍の28 症例を検討した。気管支内視鏡下でエタノール局所注入療法は12 例, 半導体レーザー治療16 例, ステント治療は6 例施行されていた。各治療法とも比較的簡便な処置であり, 重篤な有害事象を認めなかった。本法は適応を選び, 各種治療法を組み合わせることにより気管・気管支悪性狭窄に対する有用な治療法に成り得ると考えられた。 -
胃癌肝転移に対する肝切除の適応
31巻11号(2004);View Description Hide Description胃癌肝転移に対する肝切除術の有効性と適応とを明らかにする目的で, 教室における肝転移治療例の実態を検討した。1982年1 月から2004 年4 月までの間で, 教室および関連施設で治療を受けた胃癌肝転移症例79 例(同時性39 例, 異時性40 例)を対象にした。同時性例ではH 3 が40%で, 他の因子においても進行例が多かったが, 異時性例ではH 1, H 2 の症例が70%を占め, 他の転移を伴う例は20%であった。生存期間を比較すると, 同時性例, 異時性例とも肝切除群が他の治療群に比して有意に良好であった。また, 同時性例において姑息的胃切除に意義は見いだせなかった。以上より, 胃癌肝転移における肝切除は同時性例では対象となる症例が限られるものの, 主病巣や他の転移を含めた切除として意義があり, 異時性例においてはH 2 までは適応があると考えられる。 -
直腸癌肝, 肺転移に対し5 回の切除術を施行後無再発の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description直腸癌肝, 肺転移を計5 回にわたって切除し長期生存中の1 例を報告する。症例は54 歳, 女性。他院で直腸癌(Ra )に対し低位前方切除術, 子宮全摘術を施行された。術後1 年9 か月目と2 年2 か月後に各々単発の肝, 肺転移を認め前医にて切除された。原発巣切除術から6 年3 か月後に肝および肺転移再発のため, 当院を紹介受診。CT で肝S 3 に3 cm 大単発, 左肺舌区に2 cm 大単発の転移巣を認め, 2 期的に切除した。さらに2 年後に肝S 4/S 2 に2.5 cm 大の十二指腸に浸潤する単発の肝転移を認めたため, 肝左葉切除術, 十二指腸合併切除術を施行した。初回手術から11 年4 か月, 5 回目の転移巣切除術から2 年11 か月後の現在, 再発兆候を認めていない。原発巣切除後に異時性肝転移を3 回, 肺転移を2 回切除し, 無再発である直腸癌の1 例を経験した。反復肝切除および肺切除の安全性が向上し, 直腸癌肝, 肺転移の積極的な反復切除は予後の向上に有効であることが示唆された。 -
直腸平滑筋肉腫の局所再発に対して繰り返し局所切除術を施行した長期生存例の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は47 歳, 男性。肛門部痛を主訴に来院した。直腸診にて直腸前壁に弾性硬, 表面平滑な腫瘤を触知した。直腸粘膜下腫瘍と診断したが, 人工肛門は拒否され経仙骨的腫瘍切除術を施行した。病理診断は悪性度の高い直腸平滑筋肉腫であった。その後外来にて直腸診, 画像検査にて経過観察中であった。直腸診では術後瘢痕との区別が困難であったが局所腫瘤の増大傾向より, 2 年後に局所再発の診断にて経肛門的腫瘍切除術を施行した。直腸括約筋を温存した局所切除術を計8 回施行した。初回手術より10 年経過した現在, 遠隔転移は認めず局所再発は繰り返しているものの, 永久人工肛門を造設することなく経過している。まとめ:消化管原発の平滑筋肉腫の治療は外科切除のみが有効とされている。機能温存術を選択した場合は根気強い経過観察が必要で, また患者希望に合致した治療法を選択すべきである。 -
肝移植を視野においた肝癌局所療法を施行した症例
31巻11号(2004);View Description Hide Description肝細胞癌の治療法には肝切除と肝動脈化学塞栓術(TACE )に経皮的エタノール注入(PEIT ), マイクロ波, ラジオ波などの種々の局所凝固療法が加わり, 様々な癌局所治療が可能となった。その一方でウイルス性肝炎に起因する背景肝の状況によって, 多中心性発癌を反復することも周知の事実である。この点において肝移植は発癌因子をも除去でき得る究極の癌局所治療といえる。今回われわれは患者の強い希望とinformed consent により発癌当初から肝移植を視点においた肝癌局所治療を行い, 最終的に肝移植を選択した症例を経験したのでその局所治療の過程とともに報告する。 -
進行胆嚢癌に対し姑息的手術と5-FU 短期動注療法で腫瘍マーカーが正常化した1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は79 歳, 男性。黄疸, 十二指腸直接浸潤を来していた塊状型, S , Hinf , H , Binf , PV , A , P , StageIVb の切除不能胆.癌に対し姑息手術(十二指腸漿膜筋層部分切除, 横行結腸部分切除), 3 回の5-FU 短期肝動注化学療法(5-FU 6 g/week ×3)ならびに閉塞胆道に放射線療法(2 Gy ×20 回, 計40 Gy )を施行した。結果, 肝転移巣はほぼ消失し,主腫瘍ならびにHinf も著明に縮小した。腫瘍マーカーもCA 19-9 93 U /ml , CEA 15.1 ng /ml からCA 19-9 29 U /ml , CEA4.4 ng /ml へと正常化した。また左右肝管合流部から中部胆管にかけて完全閉塞していた胆管も, これら集学的治療によりexpandable metallic stent (EMS )を留置, 内瘻化できた。一方, 大動脈周囲リンパ節の増大を認めたため, 現在全身化学療法(UFT 300 mg /day 内服ならびにMMC 2 mg /week div )を外来にて施行中である。切除不能胆.癌は全身化学療法が一般的といわれているが, 各種局所療法を集学的に組み合わせることによりQOL を損なうことなく良好にコントロールできる可能性が示唆された。 -
腹腔内微小遊離胃癌細胞診断における新しい診断マーカーとしてのDopa Decarboxylase の有用性
31巻11号(2004);View Description Hide Description目的: これまでにわれわれは理研DNA チップを用いて腹水胃癌細胞株に特異的に高発現している遺伝子群を約20 種類同定した(Br J Cancer , 2002)。このうちの一つであるdopa decarboxylase (DDC )の腹腔内微小遊離胃癌細胞の診断マーカーとしての有用性を検討した。方法と結果: 胃癌細胞株11 種類, 胃癌手術症例118 例の術中腹腔洗浄水を検体とし, ノザン法, 迅速定量PCR 法にてDDC の発現定量を行った。腹水胃癌細胞株のすべてにおいてDDC の高発現を認めた。腹腔洗浄細胞におけるDDC の発現は壁進達度に相関し, 未分化型胃癌症例においてより発現が高度であった。また汎用されている診断マーカーであるCEA の発現定量を行い, 診断マーカーとしての有用性を比較したところ, 未分化型胃癌においてはDDC の感受性がより高く, DDC とCEA を組み合わせることでより正診率を上昇させることが可能であった。考察:腹腔内微小遊離胃癌細胞の診断における新しいマーカーとしてDDC の有用性が示唆された。さらにCEA とDDC を組み合わせることでより正確な腹腔内微小遊離胃癌細胞の術中迅速遺伝子診断が可能になると考えられた。 -
胃癌腹膜播種性転移におけるReg IV の高発現
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionこれまでわれわれは, 理研DNA チップを用いて腹水胃癌樹立細胞株で特異的に発現上昇している遺伝子を複数個同定した。このうちの一つであるReg IV について胃癌の腹膜転移の新しい遺伝子診断マーカーとしての有用性を検討した。方法:胃癌腹水由来細胞株5 種類(SNU -5, SNU -16, SNU -719, KATO -III , GT 3TKB ), 原発巣由来細胞株SNU -1, 臨床検体は2004 年までに当科で切除された胃癌35 症例の胃癌組織および術中腹腔内洗浄水についてのReg IV の発現量をリアルタイムRT -PCR で測定し検討した。結果: Reg IV は腹水胃癌細胞株において特異的に高発現していた。胃癌組織におけるReg IVの発現は壁深達度と相関していた。胃癌症例の術中腹腔内洗浄水におけるReg IV の発現量は壁深達度と相関していた。考察:Reg IV はReg gene family の一つで分泌蛋白質である。近年, 胃癌におけるReg IV の関与が報告されているが, 胃癌腹膜転移におけるReg IV の役割はいまだ明らかではないが, 胃癌腹膜転移にて高発現していることより, Reg IV が胃癌腹膜転移に何らかの関連があるものと推測された。Reg IV は腹腔内遊離癌細胞検出のための新しいマーカーと成り得る可能性が示唆された。 -
胃癌腹膜播種性転移診断のための術中化学療法の指標となる新しい遺伝子マーカー
31巻11号(2004);View Description Hide Description進行胃癌の再発形式の多くは腹膜播種性転移である。腹腔内遊離癌細胞の検出方法である細胞診やCEA を指標としたRT -PCR 法は, 特異性や感受性に問題がある。これまでわれわれはDNA microarray を用いて胃癌腹膜播種性転移関連の遺伝子群を同定した。このうちL -3-phosphoserine phosphatase (L 3-PP )を用いて微小腹膜播種性転移の検出を試みた。real -time RT -PCR 法を用いて胃癌腹腔洗浄サンプル93 例のL 3-PP mRNA を定量化したところいずれも深達度と相関を認めた。腹膜播種を認めた18 例中L 3-PP 陽性は11 例(感受性61%), CEA 陽性は13 例(感受性72%)であった。CEA では検知できない症例で3 例L 3-PP 陽性であった。以上よりL 3-PP とCEA 二つの遺伝子の発現定量値を組み合わせることにより, 腹膜再発予測の精度が高まると考えられた。 -
Vp 肝細胞癌に対し集学的治療を行い良好な経過をたどっている1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は74 歳, 男性。全身倦怠感にて近医受診。腹部CT にて肝S 6, S 7 中心に9×8 cm の造影効果の高い腫瘍を認め,門脈右枝本幹に腫瘍栓を認めた。また, S 3 にも5 mm の腫瘍を認めた。この肝機能障害の出現している予後不良なVp 肝細胞癌に対し肝右葉切除術, 門脈内腫瘍栓摘出術, 胆摘術を行った。術後, 残肝の腫瘍に対しone shot 動注(epi -ADM 40 mg )1 回, 復職しつつ約3 か月ごとにTAE (epi -ADM 40 mg )を3 回施行した。副作用は短期間の発熱以外はみられず, 治療中のQOL は良好であった。しかし術後約1 年後, S 1 中心にTAE 効果の弱い部分が増大し現病死した。 -
集学的治療により効果の得られた高度進行肝臓癌の心房内腫瘍栓の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は65 歳, 男性。2001 年8 月下大静脈浸潤を疑う肝右葉の巨大肝細胞癌(HCC )にて肝拡大右葉切除術を施行した。2003 年8 月より呼吸不全を伴う右心不全徴候を示し精査したところ肝内から左肝静脈を介して右房に達する一連の直径6 cmの可動性のある腫瘤を右心房内に認めた。外科的治療は不可と判断し, 2003 年10 月より短期肝動注化学療法, 肝動脈塞栓術(TAE ), 右心房への放射線照射(RT )を順に行った。その結果, 腫瘍径の縮小と症状の著しい軽快を認めた。以上の結果から, 右心房腫瘍栓を有する高度進行癌に対しても集学的治療によりその予後の改善を図れる可能性が示唆された。 -
門脈内腫瘍塞栓と副腎・肺転移を伴う進行肝細胞癌の集学的治療
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は73 歳, 男性。慢性B 型肝炎にて治療中にPIVKA -II の上昇がみられ, 肝S 8 の肝細胞癌(HCC )を指摘された。satellite nodule を伴う径60 mm のHCC を認め, 門脈右枝の門脈内腫瘍塞栓(PVTT )に加えて, 両肺と右副腎に転移を認めた。肝原発巣およびPVTT に対して, 肝動脈化学塞栓療法(TACE ), 放射線治療, リザーバー肝動注化学療法を行い,PIVKA -II は57 mAU /ml まで低下した。約3 か月後ににPIVKA -II が再上昇し, 右副腎転移の増大(50 mm )を認めた。2003年3 月に副腎転移のTACE , 経皮経肝門脈化学塞栓療法を施行したが治療効果は不十分であった。右副腎摘除術, 肝原発巣のラジオ波熱凝固療法および二度のTACE を行い, 画像上viable な腫瘍は消失した。PVTT や遠隔転移を伴うHCC の予後は2 年生存率10%未満と不良である。しかし転移部位に応じて手術, 局所化学療法, 放射線治療による集学的治療を行うことで予後の改善が可能である。 -
胃癌同時性肝転移症例に対する集学的治療法の検討
31巻11号(2004);View Description Hide Description当院で開腹手術を行った腹膜転移を伴わない同時性肝転移を伴った胃癌手術症例20 例について, 肝転移の程度, 肝切除を中心とした肝局所治療の有無, 肝動注の有無による累積生存率を比較し, 有用な治療方法について検討した。H 3 はH 1, H 2に比べて予後は悪く, 肝局所治療群のほうが非治療群よりも予後がよかった。また, 肝動注の有無の比較では動注施行例が非施行例よりもMST の改善が認められた。さらに肝動注群11 例に限ると肝局所治療群が非治療群より予後がよく, 肝動注群11例では動注群が非動注群よりも予後の改善が認められた。胃癌同時性肝転移症例では積極的に肝切除を中心とした肝局所療法を施行し, 術後肝動注を併用することにより予後の改善が認められると考えられた。 -
集学的治療により良好な経過が得られた潰瘍形成性Stage IV 乳癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は精神発達遅滞を伴う47 歳, 女性で左乳房の潰瘍を主訴に受診した。多発性肺転移を認めるStage IV 乳癌と診断した。trastuzumab +docetaxel 併用療法を施行した。肺転移巣は消失(CR )したが, 局所潰瘍部の易出血性の改善がしないため胸壁への放射線照射(50 Gy )を施行。その後, 局所コントロールを目的に単純乳房切除術を行った。術後はtrastuzumab単独療法を継続し, 14 か月経過するも新たな転移巣の出現・局所病変を認めていない。Stage IV 潰瘍形成性乳癌に対し, 集学的治療により症状を改善し良好なQOL の維持が可能であった。 -
長い経過をたどってリンパ節再発したS 状結腸癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Descriptionstage IV S 状結腸癌の手術後7 年目に多発リンパ節再発を来した症例を経験したので報告する。症例は49 歳, 女性。1995年3 月にS 状結腸癌による腸閉塞にて緊急ハルトマン手術を施行した。腫瘍は中分化型腺癌, se , n4(+), P 0, H 0, M(−):stage IV であった。MMC 4 mg の投与を5 回, 5 -DFUR 1,200 mg の投与を5 年間行い, 再発の徴候なく経過したが, 2002 年4 月のCT にて後腹膜に腫瘤様陰影および傍大動脈リンパ節腫脹を認めた。CEA 値は上昇したが他臓器転移は認めなかったので試験開腹術を施行したところ, 高度リンパ節転移を認めたため切除を断念した。その後, UFT /CPT -11 の投与を行ったが,2003 年2 月には肝転移が出現した。そこでTS -1 80 mg に変更し現在に至っている。画像上腫瘤陰影・肝転移巣は増大してきているが, 初回治療より9 年経過した現在もPS 1 で日常生活を送っている。 -
Gemcitabine 単独療法によりTumor Dormancy の得られた切除不能膵癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は67 歳, 女性。心窩部痛を主訴に当院初診した。腹部CT と血管造影にて総胆管, 門脈, 上腸間膜静脈に浸潤する切除不能膵癌と診断した。閉塞性黄疸であるため姑息的手術を行った。開腹所見で腹膜播種結節を認め, 病理学的に腹膜播種を確認した。姑息術後, gemcitabine (GEM )単独療法を施行した。GEM は1,000 mg /m の投与量で開始し, 30 分投与とした。1 クールを3 週投与1 週休薬とした。grade 2 の白血球減少を認めたため, 投与量を減量し治療を継続した。結果として重篤な毒性を認めず, 緩和的化学療法を継続することができ, 15 か月もの間tumor dormancy を得ることができた。実地臨床では毒性を管理し, 治療を継続することが重要であると考えられた。 -
頸部リンパ節転移を有した胃内分泌細胞癌に対し全身化学療法が著効した1 手術例
31巻11号(2004);View Description Hide Description頸部リンパ節転移を有した巨大な胃内分泌細胞癌に対し, 抗癌剤治療が著効し切除したものの, その後急激に再燃し死亡した1 例を経験したので報告する。症例は76 歳, 女性。主訴は食思不振。胃内視鏡検査で噴門部に超手拳大の病変を認め,生検で内分泌細胞癌の所見だった。CT では20×30 cm の巨大な腫瘤が上腹部全体を占め, 左鎖骨上, 傍大動脈リンパ節腫大を伴った。NSE は53 ng /ml と高値だった。cisplatin , etoposide による全身化学療法を行ったところ, 2 か月後には腹部腫瘤は著明に縮小し, NSE は21 ng /ml と減少した。原発巣に対し2002 年11 月14 日, 胃全摘術, D 2 郭清を行った。しかし術後1 か月後より腹腔内に再燃を来し, 再度2 クール行ったがPD でpaclitaxel に変更したが反応なく6 か月後死亡した。 -
多発肺転移後長期生存を得た肝細胞癌の1 例
31巻11号(2004);View Description Hide Description症例は52 歳, 男性。1999 年7 月29 日に13×10×10 cm のHCC に対して肝右葉切除術と横隔膜合併切除を施行した。AFP 180,000 ng /ml , PIVKA -II 1,430 mAU /ml 。術後5 か月目に残肝の多発再発に対してTAE を施行したが, 同時に両肺に15 mm 大の多発性の転移を認め, UFT +interferon (IFN )-α併用化学療法を開始した。その後, 5-FU /CDDP /IFN -α併用療法, TS -1/IFN -β療法と治療regimen を交代したが, AFP の増加とともに肺の転移巣は増大し続けた。しかしながら, 2002年7 月10 日に死亡するまで残肝への再発を認めず2 年7 か月間の長期予後を得ることができた。本症例は肝細胞癌切除症例において, 両肺への多発転移巣が存在しても肝内の病変が十分に制御されていれば長期予後を得る可能性があることを示唆する症例であると思われた。 -
肝細胞癌術後再発による下大静脈・総胆管閉塞に対して下大静脈ステント・胆道ステントが奏効した症例
31巻11号(2004);View Description Hide Description肝細胞癌術後リンパ節再発による下大静脈閉塞および総胆管閉塞に対して下大静脈ステントと胆道ステントを留置して良好なQOL が得られた症例を経験した。症例は38 歳, 男性。Stage IVA の肝細胞癌に対して2002 年4 月肝拡大右葉切除術を行った。同年8 月に残肝全体に多発性の再発を認めたため, CDDP /DSM のTAE を繰り返し行って一時CR となったが, 2003年6 月に肝門部と下大静脈の間にリンパ節再発を来した。化学療法を施行したが奏効せず, 同年10 月末に下半身浮腫と黄疸のため再入院となった。11 月5 日にPTCD を施行し, その後胆道ステントを留置した。11 月13 日には右大腿静脈経路でspiralzigzag stent を留置した。術後血流動態は劇的に改善し, 黄疸も解消されて退院が可能となった。約2 か月後に死亡したが, QOLは良好に保たれ, 亡くなる3 日前まで在宅が可能であった。
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