Volume 31,
Issue 12,
2004
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総 説
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癌と化学療法 31巻12号, 1947-1951 (2004);
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日本胃癌学会では胃癌治療ガイドラインの2004年改訂版を作成した。今回の改訂の特徴は初版以後の新しい文献を組み入れて作成したこと新たに腹腔鏡下手術周術期治療などについて示したこと化学療法ではエビデンスレベルを示し実例として現在新しく第㈽相試験で行われている主な治療プロトコールを示したことなどがあげられる。日本の胃癌治療は世界をリードするものであり特に手術内視鏡治療などにおいては世界とは大きな差がある。日本の臨床試験は比較試験が少なく文献としてのレベルは低いものが多いが一方コンセンサスを評価すると高いエビデンスレベルとなる。今回エビデンスレベルを示し得たのは改訂版の化学療法においてのみであった。本ガイドラインのアンケート調査では回答者(日本胃癌学会会員)の90%以上に利用されておりガイドラインの役割は重大である。
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特 集
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【再発・進行胃癌に対する新しい多剤併用療法】
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癌と化学療法 31巻12号, 1952-1956 (2004);
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5-fluorouracil(5-FU)の効果を増強するLV(Leucovorin(levofolinate:l-LV)/5-FU 療法は広く使われ大腸癌では標準治療とされてきた。欧米における最近の大腸癌に対する報告ではLV/5-FU と他剤との併用でいろいろな投与法が工夫されているが5-FU をbolusと持続静注とで併用し良好な成績を得ているのが目立つ。胃癌においても併用療法の基本はLV/5-FU 療法と思われたが国内では内服薬TS-1の登場によりここ1〜2年はTS-1と他剤との併用の報告が多くみられるようになった。現在l-LV/5-FU とTS-1の比較試験が行われているが内服のできない症例においてはLV/5-FU が重要である。LV/5-FU と他剤との併用特にCDDP CPT-11 paclitaxel docetaxelさらにはoxaliplatin etoposideなどの併用が胃癌の標準治療の候補として参加してくるものと思われる。
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【TS-1を含む胃癌の多剤併用療法】
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癌と化学療法 31巻12号, 1957-1961 (2004);
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進行胃癌に対する標準的化学療法は世界的にも確立されておらずまた単剤か併用療法のいずれがよいかのコンセンサスも得られていないのが現状である。進行胃癌を対象としたTS-1とcisplatin(CDDP)の併用療法の第Ⅰ相試験を行いMTD RD DLTs RR 決定した。TS-1は40mg のm2bidを21日間投与2週休薬とした。CDDP は60 70または80mg/m2を8日目に点滴静注した。CDDP のMTD は70mg/m2であった。DLT は主に好中球減少症であった。したがってCDDP のRD は60mg/m2とした。第Ⅱ相試験では19人の患者で評価されRR は74%であった(14/19 95%の信頼区間:54.9〜90.6%) MST はよ83日であった。grade3以上の血液学的で非血液学的な毒性の発生率はそれぞれ15.8 26.3%であり安全で有効性の高い治療法と考えられた。現在JCOG 9912において5-FU vs TS-1 vs CPT-11+CDDP の第Ⅲ相試験が行われTS-1の単剤での評価が行われている。またTS-1vs TS-1+CDDP の第Ⅲ相試験も行われておりこれら二つの第Ⅲ相試験に部って進行胃癌に対する有効な治療法が導きだされるであろう。
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癌と化学療法 31巻12号, 1962-1968 (2004);
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胃癌に対するTS-1と低用量CDDP 併用療法についてこれまでの症例報告と臨床試験の成績を解析した。症例報告をみるとTS-1は80〜120mg/bodyの通常投与量を4週間投与2週間休薬で投与したものが多かったが3週投与2週休薬など投与期間を短くした投与法もいくつかみられた。CDDP は1〜25mg/m2を連日weekly bi-weekly投与と様々であったが低用量FP 療法にならって5〜10mg/bodyを5日/週投与する方法が最も多かった。CDDP を頻回に投与する必要性から入院治療のほうが多くを占めたがweekly bi-weekly投与では外来治療が主として行われていた。本併用療法による高い効果と低い副作用が示され特に治療後に切除可能となった症例の報告もいくつかみられた。第Ⅰ相臨床試験が三つ報告されておりうち二つは外来ベースのregimenであった。入院ベースで施行されたJFMC 27-9902試験はTS-1を80mg/m??連日投与CDDP は5日/週で投与し4週投与2週休薬するregimenであるがCDDP の推奨用量が4mg/m2と決定された。本試験は外来ベースで施行する目的でCDDP を2回/週投与する改訂が行われ第Ⅰ/Ⅱ相試験が開始された。今後TS-1+低用量CDDP 併用療法は外来治療を基本に施行されまたneoadjuvant 療法としての有用性も検討されてゆくものと思われる。
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癌と化学療法 31巻12号, 1969-1972 (2004);
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CPT-11の投与量を毒性を指標に調節してTS-1と併用する群とTS-1の標準治療群との無作為比較第Ⅱ相試験が進行再発胃癌を対象に初回治療としてがん集学的治療研究財団において企画された。個々の患者の投与量の調節の目的は長期間継続し生存期間の延長につなげることである。またこの試験では薬剤動態と個々の患者の投与量との関係を検討する。本論文ではこの個々の患者で投与量を調節する意義と理論的根拠について紹介する。
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癌と化学療法 31巻12号, 1973-1977 (2004);
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進行再発胃癌患者に対して化学療法を行うことの有効性は証明されているが標準的化学療法はまだ確立されていない。最近登場したTS-1 CPT-11 taxane系(paclitaxel docetaxel)により胃癌化学療法は格段の進歩を遂げつつある。現在TS-1を含む様々なphase㈽試験が進行中であり近い将来胃癌に対する標準的化学療法がわが国から世界へ発信されるものと期待される。本稿ではtopoisomerase-I 阻害剤であるCPT-11(irinotecan hydrochloride)を含む多剤併用療法の現状について述べた。まずCPT-11+CDDP 併用療法は副作用が強いため入院治療が必要であったがbi-weekly投与やCPT-11の24時間投与(OGSG 0001)により毒性が大幅に軽減された。次にCPT-11+TS-1(OGSG 0002)はphase ㈵/㈼試験として行われた。CPT-11はday1とday15に90分以上かけて投与しTS-1は3週投与した。推奨投与量は80mg/m??と判定され奏効率は52.6%であった。有害事象は極めて少なかった。一方でCPT-11+docetaxel併用療法(OGSG 0101)はCPT-11 50mg/m??(day1 8 15) docetaxel 50mg/m??(day1)を投与したがgrade3以上の好中球減少が84.2%に認められCPT-11のdose intensityが低いため奏効しなかった。CPT-11併用化学療法のなかではCPT-11+TS-1が最良と考えられるがcombinationとsequentialのどちらがよりsurvival benefit があるのかはまだわかっていない。
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癌と化学療法 31巻12号, 1978-1981 (2004);
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進行再発胃癌に対する化学療法において5-fluorouarcil(5-FU)を中心としたレジメンが汎用されているが標準治療としては現段階では模索の状態にある。近年CPT-11 TS-1 paclitaxel (PTX:Taxol) docetaxelなどの奏効率の高い新規薬剤の登場により胃癌に対する治療戦略が変わりつつある。PTX は1963年に米国においてTaxus brevifolia(イチイ科米国西部産)の樹皮から抽出された物質で微小管の蛋白を重合して安定化過剰形成を起こしその結果細胞分裂を阻害し抗腫瘍効果を発揮するtaxane系の抗癌剤である。進行再発胃癌に対する国内臨床試験において単剤の化学療法で高い臨床効果が見いだされた。現在進行再発胃癌に奏効率延命効果quality of life(QOL)の向上を目指し様々な併用療法が海外国内において模索され期待されている。併用の候補としては5-FU cisplatin TS-1 5′-DFURなどがあげられる。最終的には単独治療その他の抗癌剤を含む併用療法との臨床第㈽相試験(phase㈽ trial)が必要となる。その結果が明らかにされることにより初めて進行再発胃癌の治療戦略が確立する。
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癌と化学療法 31巻12号, 1982-1986 (2004);
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近年の胃癌の診断や治療の進歩により胃癌治療成績は改善しつつある。しかしながら高度進行胃癌や再発胃癌に対していまだ標準治療が確立されていないのが現状である。新規抗癌剤としてTS-1 taxane CPT-11などの登場により新たな治療戦略が可能になった。われわれはTS-1 およびdocetaxel(TXT)併用療法の第Ⅰ相臨床試験を行った。TS-1の投与量は80mg/m2/dayに固定し(朝夕2分服) 2週投与1週休薬とした。TXT はday1に40mg/m2を1時間かけて投与し3週間を1サイクルとした。TXT はlevel1を40mg/m2とし3コホートの10mg/m2ずつのdose escalation studyとした。用量規制毒性(DLT)は主に白血球減少(特に好中球減少)を中心とした骨髄毒性であった。今回の検索ではTXT のRD は40mg/m2と判断された。TS-1およびTXT 併用療法は非常に高い奏効率を示し毒性は比較的軽微で有望な治療法であり現在第Ⅱ相臨床試験が進行中である。
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原 著
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癌と化学療法 31巻12号, 1987-1991 (2004);
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高齢者切除不能膵癌に対するgemcitabine hydrochloride治療について長野県膵癌治療研究会のアンケート結果からその問題点を考察した。非高齢者群に比べて高齢者群では血液毒性および非血液毒性の発現の頻度が高く1,000mg/m23投1休のプロトコールで開始した症例の40%が減量または投与間隔の変更を行った。スケジュールの変更は消化器症状など非血液毒性によることが多かった。投与スケジュールの適切な変更により症状緩和に努めることがより長期間にわたる治療の継続につながると思われる。特に高齢者においては1回投与量も少なく投与間隔も延長したスケジュールを組みがちであるが最初から800mg/m2に減量してでも3投1休で行い症状出現に応じて投与期間を変更することで副作用に対処しつつより長期にわたる治療効果を期待すべきである。
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癌と化学療法 31巻12号, 1993-1997 (2004);
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食道癌術後再発6症例7部位に対して低用量CDDP 連日投与UFT-E(tegafur/uracil)経口投与および放射線治療の同時併用療法を施行した。放射線治療は60Gy行いCDDP+UFT-E を3〜5週連続投与した。一次効果はCR 5部位PR 2部位であり奏効率は100%であった。急性期有害事象はgrade 3の血小板減少症が2例grade 2/3の白血球減少症が4/1例grade1/2の消化器症状が2/1例にみられた。上記以外の有害事象はみられなかった。再発食道癌に対する低用量CDDP 連日投与UFT-E 経口投与および放射線治療の同時併用療法は外来通院可能で安全かつ有効と思われた。
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癌と化学療法 31巻12号, 1999-2003 (2004);
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TS-1は経口投与で進行胃癌に対し著明な抗腫瘍効果を示すことが報告されさらにCDDP の併用療法により70%以上の高い奏効率が報告されている。一方Lentinanはtegafurとの併用で生存期間の延長が認められている。しかし切除不能進行胃癌においては奏効率とQOL 生存期間の延長とは必ずしも相関しない。今回われわれは手術不能進行胃癌に対してTS-1/CDDP/Lentinan併用療法を施行しその有効性安全性QOL について検討した。投与方法はTS-1は80mg/m2を3週間連続投与した後2週間休薬しCDDP は70mg/m2をTS-1投与開始後8日目に単回投与した。ただし80歳以上の症例については50mg/m2に減量しかつ分割投与した。またLentinanは2mg/week をTS-1投与中の3週間のみ投与した。以上の3剤併用のプロトコールを1コースとした。登録9症例の奏効率は100%であった。組織型を問わず高い奏効率が得られた。副作用についてはgrade3以上の重篤な副作用は貧血が1例色素沈着が1例のみであった。QOL については嘔気や食欲不振が著明に改善された。切除不能進行胃癌に対するTS-1/CDDP 併用療法は組織型を問わず高い奏効率が得られさらにLentinanの併用によりQOL の維持が期待された。今後さらに多くの症例によって本併用療法の臨床的有用性を検証する意義があると考えられた。
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癌と化学療法 31巻12号, 2005-2008 (2004);
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外来化学療法室で10種類の24G カテーテル型静脈内留置針(誤刺防止機能なし3種類誤刺防止機能付き7種類)の操作性と安全性を比較検討した。使用した留置針は誤刺防止機能がない留置針としてジェルコサーフローフラッシュインティマを誤刺防止機能付き留置針としてスーパーキャスイントロカンセーフティシュアシールドサーフロー㈼インサイトオートガードセーフタッチキャスプロテクティブプラスアキュバンスプラスを使用した。各40回使用し封筒法による無作為比較試験とした。初回穿刺時の留置成功率と針刺し事故件数はジェルコとインサイトオートガードが成功率98% 針刺し事故0件。それ以外はすべて成功率100% 針刺し事故0件であった。また各群間で初回穿刺時の留置成功率と針刺し事故件数に有意差を認めなかった(ANOVA;p>0.05)。一方誤刺防止機能付き留置針のすべてが㈰ 内針抜去時にカテーテルとの抵抗を有する(スムーズにカテーテルをリリースできない) ㈪ 血液暴露を十分に回避できないなどの欠点を一点以上有していた。
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癌と化学療法 31巻12号, 2011-2015 (2004);
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急性骨髄性白血病の寛解後地固め療法である大量cytarabine(Ara-C)療法(HDAC)における強力な骨髄抑制に伴う感染リスクについてレトロスペクティブに標準量Ara-C(SDAC)のそれと比較調査した。その結果HDAC 施行患者においてSDAC に比べて有意な好中球減少期間の延長ニューキノロン系予防内服および発熱に伴うアミノグリコシド系注射抗生物質の平均使用日数の延長が認められた。またHDAC 施行患者の咽頭粘液からStreptococcus 属が高頻度に検出された。以上の結果より大量Ara-C 療法は感染にhigh risk であり現行の感染予防対策に加えてグラム陽性球菌に対する対策も必要であることが示唆される。
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癌と化学療法 31巻12号, 2017-2020 (2004);
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化学療法に伴う口内炎はそれによって引き起こされる疼痛摂食困難などのために患者のQOL を低下させる。われわれは化学療法による口内炎予防を目的として当科入院患者の25名に小柴胡湯含嗽を行った。化学療法ごとに小柴胡湯含嗽をした場合としなかった場合で口内炎の発症頻度を比較した。また口内炎を発症した患者に対しては小柴胡湯含嗽が口内炎症状の軽減作用を有するか検討した。小柴胡湯含嗽併用化学療法23回中口内炎が発症したのは4回17.4%であった。一方小柴胡湯含嗽を併用せずに化学療法を行った71回中口内炎発症は29回40.8%であり両者のχ??検定はp値0.04であった。口内炎発症後の鎮痛効果は22回の化学療法後の口内炎発症患者で検討し16回76.2%に鎮痛効果がみられた。鎮痛効果が持続するのは2時間程度であった。副作用は重篤なものはみられず油臭い草臭いなどの異臭を訴えた患者が4例みられた。小柴胡湯含嗽は化学療法による口内炎発症予防および疼痛軽減に有用な方法の一つと考えられた。
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症 例
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癌と化学療法 31巻12号, 2021-2024 (2004);
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症例は53歳男性心窩部痛食欲不振を主訴に前医受診胃癌を指摘され当院に紹介された。上部消化管造影検査で胃体上部小弯に2型胃癌を腹部CT 検査で大動脈周囲リンパ節の著明な腫大を認めた。根治手術不能と判断しTS-1/CDDP 併用による術前化学療法を行った。TS-1 120mg/bodyを3週間内服day 8にCDDP 90mg/bodyを点滴静注2週間休薬して1クールとした。2クール終了後上部消化管内視鏡検査で原発巣は縮小周提もほぼ平坦化し腹部CT 検査で大動脈周囲リンパ節の腫大は消失したため奏効度PR と判定根治切除可能と判断しD 3郭清を伴う胃全摘脾合併切除術を行った。病理組織学的効果判定は原発巣grade 2 リンパ節grade 3であった。残念ながら術後1年6か月経過後で永眠し長期生存は得られなかったが術前化学療法としてのTS-1/CDDP 併用療法は腹部大動脈リンパ節転移を伴う進行胃癌に対して有用な治療法と考えられる。
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癌と化学療法 31巻12号, 2027-2030 (2004);
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paclitaxel(TXL)の腹腔内と全身の投与を行い胃癌の癌性腹水が早期に消失した著効例を経験したので報告する。症例は69歳男性。2003年4月に胃癌の診断にて原発巣の切除を行ったが開腹時に遠隔腹膜に多数の転移を認め根治度C の手術となった。術後はTS-1+CDDP 併用療法を施行後外来にてTS-1投与を行っていたが2003年10月に再燃し著明な腹水貯留が出現した。second-lineとしてTXL の腹腔内と全身の投与を開始したところ3クール終了前には腹水が完全消失した。その間にgrade 1の貧血を認めたが重篤な過敏症や副作用は認めなかった。
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癌と化学療法 31巻12号, 2031-2034 (2004);
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進行胃癌症例においてdocetaxel(TXT)点滴静注後の腹水への移行ならびにTXT 腹腔内投与後の血中への移行の薬物動態を検討した。TXT 25mg/ml を1時間で点滴静注した際のTXT 血中濃度は投与直後がピーク(1回目244ng/ml 2回目215ng/ml)であった。一方腹水中のTXT 濃度は点滴終了後30分がピーク(1回目26ng/ml 2回目30ng/ml)となった。腹水中AUC/血中AUC は1回目27.2% 2回目35.8%であった。TXT 25mg/mlを腹腔内投与した際の腹水中TXT 濃度は投与直後(54,200ng/ml)がピークとなり240分後でも14,200ng/ml と高濃度であった。腹腔内投与時の血中濃度は120分後がピーク(64ng/ml)となり240分後でも44ng/ml という濃度を維持していた。血中AUC/腹水中AUC は0.25%と極めて低値であった。以上よりTXT の血中から腹腔内への以降は良好で胃癌の腹膜播種の治療に有効であると考えられた。TXT 25mg/m2を腹腔内投与した際腹腔内局所の抗腫瘍効果のみならず全身的な効果も期待された。腹腔内局所の抗腫瘍効果のみを期待する場合はさらに低用量のTXT でよい可能性が示唆された。
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癌と化学療法 31巻12号, 2035-2038 (2004);
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症例は72歳女性。1999年11月に残胃胃癌の診断にて胃全摘術を施行後(fStageⅠA Cur A) 2001年10月に腹部CT にて肝転移再発が認められた。以後外来にて5′-DFUR/TX3およびTS-1 TXL による化学療法を継続施行していたが再燃増悪が認められ2002年8月に胃癌肝転移再発および閉塞性黄疸の診断にて当院入院となった。内外瘻化チューブ留置による減黄後同時隔週投与のレジメンにてCPT-11(60mg/m2)およびCDDP(30mg/m2)を点滴静注し28日間で1クールとする併用化学療法を施行した。1クール終了後奏効度PR の腫瘍縮小効果(腫瘍縮小率69%)が認められ抗腫瘍効果は以後の加療においても継続して認められた。本人希望により治療は計4クールにて終了したがその後少なくとも3か月間肝転移巣の再燃増悪徴候は認められず奏効期間は8.5か月間であった。本療法施行中grade3以上の有害事象は血色素減少のみであり他はすべてgrade2以下であった。本療法は進行再発胃癌患者においてQOL を損なうことなく臨床的に有用性の高い併用療法であると思われた。
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癌と化学療法 31巻12号, 2039-2041 (2004);
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症例は70歳男性。多発性肝転移とリンパ節転移を伴う進行胃癌に対してTS-1/CDDP 併用化学療法を施行した。投与方法はTS-1100mg/body/dayを21日間投与14日間休薬としCDDP は8日目に80mg/body/dayを点滴静注で1コースとした。2コース終了時の上部内視鏡検査で周囲の壁肥厚を認めるようになったが体中部小弯後壁の隆起性病変は平低化した。また腹部CT で肝転移巣はPR(縮小率78.3%) 膵頭部上縁のリンパ節はCR と判定された。その後さらに2コース施行し計4コース終了時にもそれぞれPR CR を維持している。この化学療法中に治療を要するような有害事象は認められなかった。TS-1/CDDP 併用化学療法は多発性肝転移やリンパ節転移を伴う進行胃癌に対し有用な治療法に成り得ると考えられた。
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癌と化学療法 31巻12号, 2043-2046 (2004);
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症例は58歳男性。2002年12月他院にて4型進行胃癌に対し開腹するも腹膜播種および大動脈周囲リンパ節転移を認め試験開腹となる。退院後TS-1内服にて外来通院となっていたが2003年2月より血尿黄疸呼吸困難が出現し同年3月4日再入院となる。CT にて肝内胆管の拡張胸腹水の貯留両肺野のび漫性浸潤影を認め胃癌十二指腸浸潤閉塞性黄疸癌性リンパ管症と診断し3月20日当科紹介入院となる。3月26日よりweekly paclitaxel(TXL)を施行した。TXL70mg/m??を1週間ごとに3週間連続投与1週間休薬し1コースとした。開始後1週間で黄疸呼吸困難は著明に改善し開始後1コースにてCT 上癌性リンパ管症の陰影は消失し胃小弯側大動脈周囲リンパ節転移の60%の縮小が4週間持続しPR と判断した。経口摂取も可能となりPS の改善を認め外来通院することができた。有害事象はgrade2の白血球減少とgrade 1の脱毛を認めるのみであった。
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癌と化学療法 31巻12号, 2047-2049 (2004);
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症例は79歳男性。横行結腸癌による腸閉塞により当科に入院した。12年前に胃癌に対する胃全摘術兼Roux-en Y型再建術の既往を有する。術前検査では遠隔転移は認めず開腹手術を施行した。術中所見でRoux-en Y 型再建に用いた空腸の腸間膜根部近傍にまで腫瘍の直接浸潤を認めた。原発巣は切除せず横行結腸人工肛門を造設した。術後に5-fluorouracil/l-leucovorinを用いた全身化学療法を4クール行った。化学療法終了後の腹部CT 検査ならびに大腸内視鏡検査では腫瘍は消失し内視鏡下生検の組織学的検索でも腫瘍の残存は認めずCR と判定した。患者の全身状態は良好で再発徴候を認めていない。
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癌と化学療法 31巻12号, 2051-2053 (2004);
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肺胸膜転移を伴う閉経後左進行乳癌に対しanastrozoleの投与が行われ4か月には部分効果を認め以後継続して投与されていた。2003年5月に呼吸困難が出現した。胸部X 線にて左肺野に胸水の貯留を認めた。exemestaneに変更しホルモン療法を継続した。exemestane投与開始後4週目には胸部X 線上で明らかな胸水の減少を認めた。投与開始後7か月の現在まで効果は持続しており今後もexemestaneを継続投与する予定である。
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癌と化学療法 31巻12号, 2055-2058 (2004);
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近年stageⅢ期/N 2肺癌に対するinduction chemotherapyに関する有効性が報告されているが症例ごとに最適な薬剤を選択する方法は確立していない。したがってinduction chemotherapyそのものの施行に迷うcaseも多い。今回われわれは抗癌剤感受性試験—collagen gel droplet embedded culture drug sensitivity test(CD-DST)—に基づいてdocetaxelによるinduction chemotherapyおよび左肺全摘術後adjuvant chemotherapyをstageⅢA の非小細胞肺癌症例に施行した。stageⅢ期肺癌の3年生存率は30%以下であるが本症例は経過中に副作用や合併症を認めずかつ3年を経て転移再発なく良好に経過しているので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 31巻12号, 2061-2064 (2004);
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症例は73歳男性。咳嗽と呼吸困難を契機に精査を受け左下葉原発の非小細胞肺癌( 平上皮癌疑い)cT 4N 3M1(左癌性胸水対側縦隔リンパ節転移対側肺内転移多発性肝転移)でⅣ期と診断された。Cre 2.1 Ccr 29ml/minと中等度の腎機能障害を有していたがcarboplatin+weekly paclitaxel 4コースを比較的安全に投与することができ治療終了後に画像上原発巣と多発性肝転移が消失した。しかしその後早期に癌性髄膜炎で再発した。手術不能な非小細胞肺癌に対する化学療法に際しては著明な臓器障害がないことが前提になっており合併症を伴う症例では治療の適応の判断に迷うことが少なくない。本症例のように中等度の腎機能障害に対してはcarboplatin+weekly paclitaxelが有効な治療法の一つとして選択し得ると考えられた。
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癌と化学療法 31巻12号, 2065-2068 (2004);
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まれな成人発症神経芽細胞腫の1例を経験した。症例は27歳男性。腫瘍は後腹膜原発であったが初診時から広範な骨髄転移を伴っていた。vincristine actinomycin-D ifosfamide doxorubicin carboplatin etoposideを用いた多剤併用化学療法を1年5か月にわたって施行しいったんは寛解が得られた。治療終了後約10か月で再発さらにCPT-11を用いて化学療法を行ったが胸椎転移の悪化による対麻痺を発症し化学療法を中止した。骨髄転移による骨髄機能障害のため発症後3年5か月で癌死した。成人例神経芽細胞腫に対する治療に関しての情報は極めて乏しく情報の集約による治療方針の確立が望まれる。
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連載講座
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【センチネルリンパ節の研究最前線 】
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癌と化学療法 31巻12号, 2073-2075 (2004);
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腎癌は血行性転移を主体とし初期からリンパ行性に播種する進展経路は少ないと考えられている。臨床例剖検例の検討でもリンパ節単独の転移の頻度は数%程度と低くほとんどがすでに遠隔転移を伴っていることが示されている。したがって所属リンパ節郭清の意義適応についてはいまだ結論はでていないが最近の前向き無作為試験の中間報告ではその診断的あるいは治療的意義は限定されたものであることが示唆された。すなわち腎摘出術症例では遠隔転移を伴わない所属リンパ節転移陽性例においてサイトカイン療法などとの併用で予後改善の可能性が示唆されるにとどまった。しかしこれらの症例ではsentinel nodeを同定しその生検結果により所属リンパ節郭清を加えるという個別化治療の可能性がある。動物実験による基礎的検討でsentinel nodeの検出の可能性が示されており今後の臨床応用が期待される。
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【臨床検査,診断に用いる腫瘍マーカー】
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癌と化学療法 31巻12号, 2077-2081 (2004);
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乳癌の腫瘍マーカーは本邦において日常臨床の場で多くの目的で用いられている。腫瘍マーカーを使用目的別に分類すると① 早期診断② 進行度予後の予測③ 術後再発の早期発見④ 治療効果の判定⑤ 経過のモニタリング⑥原発巣不明の転移性腫瘍の診断に分けられる。本稿では使用目的別に腫瘍マーカーの測定意義を概説する。さらにわれわれが2001年度日本乳癌学会班研究として行った「本邦における腫瘍マーカー測定の現状に関するアンケート調査」「腫瘍マーカーを用いた治療効果判定の有用性に関する多施設共同研究」の解析結果を交え腫瘍マーカー研究の今後の方向性を論議する。
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Journal Club
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Source:
癌と化学療法 31巻12号, 2069-2069 (2004);
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Source:
癌と化学療法 31巻12号, 2070-2070 (2004);
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Source:
癌と化学療法 31巻12号, 2071-2071 (2004);
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Source:
癌と化学療法 31巻12号, 2072-2072 (2004);
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用語解説
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Source:
癌と化学療法 31巻12号, 2025-2026 (2004);
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Source:
癌と化学療法 31巻12号, 2042-2042 (2004);
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