癌と化学療法

Volume 33, Issue 6, 2006
Volumes & issues:
-
総説
-
-
造血幹細胞移植療法研究の進歩
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
同種造血幹細胞移植療法は,移植に用いられる造血幹細胞の多様化と骨髄非破壊的移植(ミニ移植)reduced intensity stem cell transplantation(RIST)に代表される新たな前処置法の発展により,その適応はますます拡大している。移植に用いられる造血幹細胞は,骨髄,末梢血,臍帯血があり,それぞれに血縁と非血縁が区別される。また,親子間などHLA 不一致移植の研究も進歩し,レシピエントの状態により最適な移植細胞の選択が求められる。前処置では,従来の骨髄破壊的なものに加えて前処置強度を軽減したミニ移植が広く研究された。RIST は前処置による抗腫瘍効果よりも移植片の免疫学的機序によるgraft versus leukemia(GVL)効果を意図したものである。幹細胞の多様化やRIST の登場により移植適応の拡大が得られたが,一方で移植後の予後を左右する再発の問題やgraft versus host disease(GVHD)コントロールの重要性が改めて認識されている。さらに移植後のより優れたquality of life(QOL)をめざして慢性GVHD をはじめとする種々の合併症への対策は移植成績の向上を目指す上で極めて重要な課題としてさらに研究が必要である。
-
-
特集
-
- 乳癌治療の最近の動向
-
術後補助化学療法をめぐる潮流
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
乳がんは,我が国の女性において最も重要な悪性疾患の一つであるが,米国ではその死亡率は年々低下傾向にある。その理由にマンモグラフィを導入した検診システムの普及,新薬の登場による補助療法の進歩などがあげられる。乳がんが早期から全身病であるとする考え方が広まり,再発危険度の高い症例に対する適切な全身療法が進歩している。特に抗がん剤,ホルモン剤の投与は,遠隔微小転移を消滅させ,治癒を目指すために欠かせないものとなりつつある。そのような背景のなかで,アンスラサイクリンやタキサン系抗がん剤に代表される多剤併用療法の進歩のみならず,その投与順序やdose densityの概念に基づいた投与スケジュールの工夫などが広く臨床現場に導入されつつある。本稿ではエビデンスを基に,これまでの術後補助化学療法の推移を振り返り,今後の乳がん全身化学療法の展望についても言及する。 -
転移乳癌に対する化学療法
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
転移乳癌に対する治療の目標は癌をコントロールし,症状を緩和,QOL を保ちながら延命することにある。メタアナリシスでは長期間の化学療法は全生存期間を延長することが示されている。このことは化学療法が延命効果を有することを意味する。主な化学療法はアンスラサイクリンを含むレジメンまたはタキサンである。HER 2陽性例ではtrastuzumabを含む治療が標準的である。その他有効な薬剤としてvinorelbine, capecitabine, S-1, mitomycin C, gemcitabineなどがあげられる。bisphosphonateは化学療法またはホルモン療法と併用することにより溶骨性骨転移の疼痛と合併症を軽減する。抗体,小分子キナーゼ阻害剤などの期待される薬剤が臨床研究中である。毒性を最小限にし,効果を最大限にするために治療は順番に実施することが望まれる。転移乳癌の治療選択に当たっては,癌の病状,化学慮法の効果,毒性に関する情報を正確に提供し,患者の嗜好を踏まえて判断することが推奨される。 -
分子標的治療
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
近年,分子生物学的な解析により明らかにされた癌の増殖や進展にかかわる重要な分子を標的とした薬剤が作りだされるようになった。本邦において現在承認され使用可能な乳癌に対する分子標的薬はHerceptin(trastuzumab)であり,標的であるHER2陽性乳癌の治療戦略においてはkey drug の一つになっている。最近では,大規模なランダム化比較試験により補助療法における有用性が示された。また,vascular endothelial growth factorに対するヒト化抗体であるbevacizumabも乳癌治療における有用性が明らかにされた。本稿では,これらの分子標的薬に関する最近の知見を紹介する。
-
原著
-
-
Gemcitabine Plus Cisplatin(GC): A Salvage Regimen for Advanced Breast Cancer Patients Who Have Failed Anthracycline and/or Taxane Therapy
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
Background:In clinical studies of both heavily and minimally pretreated patients with advanced breast cancer,the combination of Gemcitabine plus cisplatin(GC),given in a variety of schedules and doses,has demonstrated moderate safety and efficacy in both heavily and minimally pretreated advanced breast cancer with response rate from 29-63%(median 46%).Methods:We evaluated the activity and toxicity of another GC regimen(gemcitabine 1,000 mg/m2 days 1,8 plus cisplatin 75 mg/m2 day 1 every 3 weeks)in 30 breast cancer patients who failed chemotherapy with anthracycline and/or taxanes as adjuvant or neoadjuvant, or primary therapy. Results:We obtained overall response in 15 of 29 evaluable patients(52%), with responses occurring in all subgroups of disease(unresectable locally advanced, locoregional recurrence, and distant metastasis).Toxicity was primarily hematologic, with grade 3/4 neutropenia and thrombocytopenia in 37% and 17% of patients, respectively. The only grade 3/4 non-hematologic toxicity was grade 3 nausea/vomiting in 12% of patients. Conclusion:Our data suggest that gemcitabine plus cisplatin appears to be effective and has an acceptable toxicity profile in anthracycline and/or taxane pretreated patients with advanced breast cancer. -
進行・再発乳癌に対するBi-weekly Docetaxelと5'-DFUR の併用化学療法における安全性と効果の検討—第 I 相試験—
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
背景:進行・再発乳癌に対するdocetaxelの3週間隔投与法は重度の好中球減少発現率が高く,外来治療法としては注意が必要である。weekly投与法は通院回数が増える欠点があり,bi-weekly投与法がより望ましい。docetaxelはdThdPaseを誘導することから,基礎実験では5'-DFUR との併用による相乗効果が認められているが,docetaxelと5'-DFUR 併用によるbi-weekly投与の効果は臨床的検討がなされていない。目的:bi-weekly docetaxel, 5'-DFUR 併用療法の安全性,docetaxelの推奨投与量,効果を検討する。対象:docetaxelと5'-DFUR の使用歴がなく,再発後治療1レジメン以内の進行・再発乳癌症例。方法:5'-DFUR は600mg/日を連日経口投与。docetaxelはレベル1 30mg/m2, レベル2 40mg/m2,レベル3 50mg/m2とし,最低2コース投与。各レベル登録3症例中,dose limiting toxicity(DLT)の発現が2または3症例の場合はそのレベルをmaximum tolerated dose(MTD)とし,MTD の前のレベルをdocetaxel推奨投与量とした。推奨投与量による有害事象の集計から安全性を検討した。結果:レベル3がMTD であり,docetaxel推奨投与量はレベル2の40mg/m2であった。レベル2におけるDLT 発現はなく,安全に外来治療可能と考えられた。また,本試験に登録され効果判定がなされた6例全例で奏効が得られた。 -
進行非小細胞肺癌に対するCarboplatin+Gemcitabine併用療法とCarboplatin+Weekly Paclitaxel併用療法との比較検討
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
進行非小細胞肺癌に対する化学療法で,CG 療法(carboplatin AUC 4〜5, day1+gemcitabine 1,000mg/m2, day1, 8で3週ごと)とCP 療法(carboplatin AUC 6, day1+paclitaxel 70mg/m2, day1, 8, 15で4週ごと)を比較検討した。内訳はCG療法23例,CP 療法39例の合計62例である。初回治療での比較では奏効率,CG 療法40%, CP 療法22%,TTP, MST はそれぞれCG 療法124日,422日,CP 療法67日,328日で有意差はなかった。しかし毒性の様相は異なり,grade3以上の好中球減少はCG 療法61%, CP 療法31%(p=0.02), 血小板減少はCG 療法44%, CP 療法3%(p=0.0002)とCG 療法に高度であったが,grade2以上の脱毛はCG 療法4%, CP 療法36%(p=0.012)とCP 療法で高度であった。化学療法の選択においては,毒性を考慮してレジメンを選択することが重要と考えられた。 -
大腸癌術後再発に対するSecond-Line治療としてのPMC 療法の有効性
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
【目的】抗癌剤を用いた時間治療(chronotherapy)とは,薬剤を至適時間に投与することで副作用を軽減し,投与量増加による抗腫瘍効果増強に期待する治療法である。本研究の目的は,5-fluorouracil(5-FU)を用いた時間治療の一法であるpharmacokinetic modulating chemotherapy(PMC 療法)が大腸癌術後再発のsecond-line治療として有効か否かを検討することにある。【方法】切除不能な大腸癌術後再発に対するsecond-line治療としてPMC 療法が施行された13症例を対象とした。男性6例,女性7例であり,年齢は40〜72歳(中央値67歳)であった。原発は結腸5例,直腸8例であり,転移部位は肝+肺6例,肝2例,肝+肺+大動脈周囲リンパ節2例,腹膜1例,肺+鼠径リンパ節1例,Virchowリンパ節+副腎1例であった。前治療(first-line治療)は5-FU+l-leucovorin(l-LV)静注が5例,経口5-FU 製剤が5例,5-FU の肝動注が3例であった。PMC 療法(週1回5-FU 600mg/m2を午前9時から24時間かけて持続静注し,UFT 400mg/day 週5日間の経口投与を併用)にl-LV 投与を併用して外来で実施した。progressive disease(PD)またはstable disease(SD)の場合には5-FUの投与量を段階的に,1,500mg/m2/24hまで増量した(dose escalation)。治療期間は3〜26か月(中央値12か月)であった。【結果】PMC 療法の抗腫瘍効果はpartial response(PR)6例,SD 6例,PD 1例であり,PMC療法開始後のMST は17か月であった。前治療別の奏効例は5-FU+LV 静注では5例中2例,経口5-FU 製剤では5例中2例,5-FU の肝動注では3例中2例であった。grade3以上の副作用は認めなかった。【結論】5-FU を用いた時間治療であるPMC療法は,大腸癌術後再発に対するsecond-line治療としても有効である。 -
進行再発大腸癌に対する5-FU/l-LV 療法56例の検討
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
2005年に入り,FOLFOX 4や5-FU/l-LV 持続静注併用療法などの新規併用化学療法が承認されたが,一般市中病院でそれらを導入する場合,抗癌剤の投与量を承認用量とするか,減量するかは意見が分かれるところである。当院では過去5年3か月間に,計56例の進行再発大腸癌に対して承認・推奨用量よりも低用量にて5-FU/l-LV 療法を施行してきたが,それら56例について治療結果や有害性をまとめ,本療法を低用量で行った場合の有効性と安全性を検討した。5-FU 投与量は1クール目を500mg/bodyとし,副作用などの問題がなければ,2クール目以降750mg/bodyとした。平均治療クール数は3.6クールであり,5-FU の平均投与量は427.7mg/m2であった。治療効果は56例中,CR 0例,PR 16例,NC 23例,PD 17例であり,奏効率28.6%であった。無増悪生存期間,全生存期間の中央値はそれぞれ6.0, 14.0か月と良好であった。grade 3以上の有害事象は白血球減少10.7%, 血色素低下5.3%, 下痢7.1%, 悪心・嘔吐5.4%, 食欲不振1.8%であり,血小板低下や口内炎は認めなかった。以上より,従来の5-FU/l-LV 療法においては,標準用量より低用量で施行することにより,患者のQOL をより保ちつつ,生存期間の延長を期待できると考えられた。今後導入される新規併用化学療法についても,承認用量より低用量でも,安全性をより高めつつ,有効性を維持できる可能性が示唆された。 -
大腸癌におけるOrotate Phosphoribosyl Transferase(OPRT),Dihydropyrimidine Dehydrogenase(DPD),Thymidylate Synthase(TS)活性と臨床病理学検討
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
フッ化ピリミジン系抗癌剤(5-FU)の抗腫瘍効果に関与するOPRT, DPD, TS の活性を大腸癌79例においてradioimmunoassay(RIA)法にて測定し,臨床病理学的因子(組織型,壁深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲)との関連について検討した。低分化腺癌においてOPRT 活性は低値を示す傾向にあり,DPD は有意に高値を示した。リンパ節転移を認める症例においてOPRT 活性は低値を示す傾向にあった。TS はいずれの臨床病理学的因子とも関連を認めなかった。5-FU を投与する症例個々において,これらの3酵素の活性を測定することが,抗腫瘍効果を予測する上で重要である。しかし,低分化腺癌においてはDPD が高値の症例が多いことが予測され,酵素活性を測定できない場合にはDPD 阻害剤との配合剤であるTS-1などの投与を考慮する必要もあると考えられた。
-
-
症例
-
-
Second-Line ChemotherapyとしてTS-1/Docetaxel療法が奏効した再発食道癌の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
症例は70歳,男性。進行食道癌(StageII)に対し,2000年12月右開胸開腹食道亜全摘術施行。術後補助療法としてlow-dose FP 療法を4週間施行し,以降は外来にて経過観察としていた。2003年12月,頸〜腹部CT にて食道癌多発性肝転移・上縦隔リンパ節転移を認めたため,second-line chemotherapyとしてTS-1/docetaxel併用療法を開始した。3クール/9週間施行後の頸〜腹部CT では上縦隔リンパ節,肝転移巣とも縮小を認め治療効果はPR であり,約6か月継続した。本療法は食道癌肝・リンパ節転移例に対する化学療法として外来にて治療可能で,しかも短期間で効果が期待できる有用な治療法である可能性が考えられた。 -
Imatinib Mesilate少量投与が有効であった再発GIST の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
症例は75歳,男性。2000年1月,小腸GIST にて小腸部分切除施行。その後骨盤腔内再発に対し二度の手術を行い,術後imatinib 400mg/日投与を3か月行ったが食欲不振や倦怠感のため投与継続ができなくなり,骨盤腔内局所再発の再増大,排便困難をみた。imatinib 200mg/日投与にて症状改善・PR が得られ,300mg/日投与で1年以上PR が継続している。imatinib 400mg/日投与が副作用のため投与できない場合,少量投与を考慮すべきと考える。本症例はc-kit exon 11に欠失と点突然変異が確認された。 -
Biweekly Paclitaxel療法にて3年間の長期生存が得られている非治癒切除胃癌の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
paclitaxel(PTX)のbiweekly投与を行い,3年間の長期生存が得られている非治癒切除胃癌症例を経験したので報告する。症例は69歳,男性。2002年6月10日,胃癌に対して幽門側胃切除術を施行したが転移リンパ節(No.8a,8p,12a)が一塊となり,後腹壁に固定されており,これらのリンパ節の摘出が不可能であったため非治癒切除となった。術後,PTX100mg/body(68mg/m2)をweekly投与で開始した,1コース目にgrade3の好中球減少が出現したため,投与量を60mg/body(41mg/m2)に減量するとともに投与法をbiweekly投与に変更し,PTX 療法を継続した。その後はgrade3以上の副作用は出現せず,3年間NC を維持し現在も外来にて継続投与中である。進行胃癌に対するPTX 療法において重篤な副作用が出現した場合,減量や投与スケジュールの変更により粘り強く継続することが長期生存には重要であると思われた。 -
TS-1+CDDP 療法1コースにてCR となった進行胃癌の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
症例は54歳,女性。空腹時胃部不快感にて近医を受診し,胃体中部の3型胃癌(por2)を指摘され当科紹介となる。年末のため,TS-1/CDDP 療法による術前化学療法(NAC)を1コース施行後,手術を行う方針とした。化学療法後,胃X線および上部消化管内視鏡検査にて原発巣の縮小を認め,PRと判定した。約3週間の休薬期間後,胃全摘術が施行された。切除標本の肉眼的所見は3型胃癌でsSE,sN 1,sH 0,sP 0, sM 0, CY 0, StageIIIA であった。しかし,病理組織学的所見では高度線維化を認めるのみで胃癌組織は消失しており,リンパ節転移もなく組織学的効果判定はGrade3であった。術後経過は順調で外来での補助化学療法はせずに経過観察中である。 -
経口摂取不能のため腸瘻造設後にTS-1/CDDP 投与を行い根治切除が可能となった高度進行胃癌の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
症例は65歳,女性。経口摂取不可能な状態で紹介された。胃内視鏡で噴門部中心,胃体上部全体を占める3型胃癌を認めた。多発性肺転移および胃周囲の著明なリンパ節腫大も認め根治手術不能と判断,化学療法が第一に考えられたが水分摂取も困難な状態にて患者の強い希望もあり,十分なインフォームド・コンセントの下,開腹術施行したが腫瘍は横隔膜まで著明に漿膜浸潤を認めたため,空腸に腸瘻造設し閉腹した。術後,腸瘻よりTS-1 80mg/body/day(day1〜14)を注入,day8にCDDP 80mg/body/dayを24時間点滴静注,2週休薬し1クールとした。3クール終了後,原発巣および胃周囲のリンパ節は著明に縮小し肺転移は画像上消失したため,胃全摘脾合併切除術(D 2)を施行した。進行度StageIIIA, 組織学的効果判定はGrade 2であった。本症例は術後14か月以上再発の兆候なく生存中である。 -
UFT/LV+CPT-11(TEGAFIRI)療法が著効した大腸癌同時性肺転移の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
上行結腸癌の同時性多発性肺転移に対し,海外の報告を参考にしてUFT/LV+CPT-11(TEGAFIRI)療法を試み,約1年間CR を継続している症例を経験したので報告する。症例:61歳,女性。上行結腸癌および同時性肺転移(LM 3)を認め,原発巣切除後,3週(21日間)を1コースとしてCPT-11を150mg/m2でday1に,UFT を300mg/m2でday1〜14に,LV を75mg/bodyでday1〜14に投与した。効果判定は4コース終了後PR, 6コース終了後CR であった。全経過中に発現した有害事象およびそのgradeは白血球減少grade1, 好中球減少grade2, 嘔吐grade2, 脱毛grade1であった。現在23コースを投与中で約1年間CR が継続している。用法・用量は保険診療の制約内で有害事象は許容範囲内であった。本療法は進行・再発大腸癌に対する有力な治療法であり,QOL の観点から今後選択される機会が増えると考えられる。 -
CPT-11+TS-1併用化学療法が有効であった肝・肺・リンパ節転移再発結腸癌の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
症例は67歳,男性。2002年12月,上行結腸癌に対して右半結腸切除術施行(stage IIIa, cur B)。術後5'-DFUR+PSK による化学療法を施行したがgrade 3の下痢を認めたため中止。他剤への変更も拒否されていた。その後2004年7月よりCEA の上昇が認められ,肝・肺・左鎖骨上リンパ節転移再発の診断に至った。化学療法の再開を拒否されていたが同年12月より治療の同意が得られ,CPT-11(70mg/m2 day1, 8)+TS-1(100mg/day day 1〜14), 28日間1クールとして外来化学療法を行った。投与1か月後から腫瘍マーカーの著明な低下および各転移巣の縮小を認めPR と判定した。投与中grade1の下痢,grade2の口腔内潰瘍を認めたがいずれも一時的で休薬なく軽快。5クール目終了後grade2の肝機能障害を認め,本人の希望もあり休薬中であるがCPT-11+TS-1療法はQOL を維持しつつ有用性の高い化学療法と思われた。 -
内服UFT+LV とCPT-11点滴投与により肝転移病変の制御が得られた高齢者IV期結腸癌の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
症例は81歳,男性。イレウスで発症し当院に入院後,精査にてS 状結腸癌および肝右葉への多発転移(H 3)と診断された。イレウス管を挿入し約2週後にS 状結腸切除,人工肛門造設を行った。開腹所見で大網転移が認められた(M+)。術後1か月より,UFT+LV内服とCPT-11点滴静注の併用化学療法(UFT300mg 3×,LV75mg 3×;2週内服,1週休薬。CPT-11 90mg 点滴静注:day1。1クール21日)を開始した。第1クール終了後から著明な腫瘍マーカーの減少が認められ,4クール終了後のCT 所見上では著明な肝転移病変の縮小が認められた。副作用としてはNCI-CTC grade2の悪心を認め,中途で内服期間の短縮やCPT-11の休薬を行いつつ外来にて治療を継続している。高齢者進行大腸癌の術後化学療法において,内服抗癌剤主体の本治療は効果を損なうことなく副作用の軽減やQOL の維持が得られ大いに期待できるものと思われる。 -
UFT 併用Gemcitabine化学療法後進行した術後再発性膵癌に対しTS-1併用Gemcitabine化学療法が有効であった1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
術後再発性膵癌症例に対してUFT 併用gemcitabine(GEM)化学療法を1クール施行後,閉塞性黄疸とリンパ節,肝転移巣の増大を認めPD と診断した。TS-1併用GEM 化学療法に変更しPR を認めた。副作用はgrade3の白血球減少を認めたのみであった。UFT 併用GEM 化学療法で効果を認めなかった進行膵癌症例にも,TS-1併用GEM 化学療法の効果がある場合があり,この治療法は簡便で安全でありQOL を低下させることなく外来治療が可能である。 -
A Breast Cancer Patient with Myelodysplastic Syndrome Postoperatively Treated by Radiation and Tamoxifen Administration—A Case Report
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
72歳の女性が乳癌の外科手術後4年目に汎血球減少症を発症した。患者は術後局所の放射線照射を受け,その後4年間tamoxifenの投与を受けた。骨髄穿刺では幼若な骨髄芽球と異形成細胞を認めた。骨髄異形成症候群myelodysplastic syndrome(MDS)のrefractory anemia with excess of blasts(RAEB)と診断した。患者は診断4か月後に脳出血にて死亡した。放射線照射とtamoxifenの投与が二次性MDS の発症に関与していると思われた。 -
肺癌化学療法後に発症した多発性化膿性筋炎の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
肺癌再発に対する化学療法後の62歳,男性に発症した多発性化膿性筋炎を経験した。発熱と倦怠感で発症し,その後患肢の疼痛と腫脹が出現した。臨床症状からは細菌感染を合併した血栓性静脈炎との鑑別が困難であり,入院の上抗生物質の投与を行った。画像検査ではMRIにより周囲組織に炎症像を伴う筋肉内膿瘍性病変が描出され,化膿性筋炎の診断に有用であった。抗生物質の投与と観血的ドレナージによる治療で臨床症状は改善し,良好な成績が得られた。化膿性筋炎は早期診断と適切な治療によって治癒が可能な疾患であり,悪性腫瘍に対する化学療法後の合併症として本症の存在を念頭に入れておくことが重要である。 -
Docetaxel+Prednisolone療法が著効し腫瘍熱が軽快したホルモン抵抗性前立腺癌の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
腫瘍熱を呈したホルモン抵抗性前立腺癌に対し,docetaxel+prednisolone療法が有効であった症例を経験した。症例は65歳。前立腺癌(T4 N1 M1b)と診断,ホルモン療法(LH-RH agonist 単独治療)を開始した。半年後に再燃のため,アンチアンドロゲン剤を追加投与したが効果を認めず,骨転移の増悪,38℃前後の腫瘍熱も出現した。ホルモン抵抗性前立腺癌と診断し,docetaxel+prednisoloneによる治療を開始した。開始2日目より腫瘍熱は消失し,2コース終了時点でPSAは開始前の50%以上の減少を認め,10コース終了時点で骨転移の改善もみられ効果判定はPR であった。また本治療は,3コース目より外来通院で行うことができており,現在も治療を継続している。 -
2回の自家末梢血幹細胞移植併用超大量化学療法による救済療法を行った難治性縦隔精上皮腫の1例
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
背景:一般に精上皮腫は放射線化学療法に対する感受性が良好で治癒率も高いが,なかには再発を繰り返し救済療法を必要とする難治症例もある。今回われわれは縦隔原発の難治性精上皮腫に対し,自家末梢血幹細胞移植併用超大量化学療法を2回施行しCR を得た症例を経験したので報告する。症例は25歳,男性。2001年9月前医で縦隔精上皮腫と診断され,化学療法と放射線治療を受けたが再発を繰り返したため,2004年1月当院を受診した。当院でもPE 療法(cisplatin+etoposide),放射線療法を施行し寛解したが4月に再発。自家末梢幹細胞移植併用超大量化学療法を計2回施行しCR を得た。結論:難治性精上皮腫に対する本治療法は比較的安全に施行でき感受性も良好であった。
-
-
連載講座
-
- 【外来化学療法】
-
-
- 【治験管理室訪問】
-
-
新薬の紹介
-
-
アロマターゼ阻害剤Letrozole(フェマーラ)
33巻6号(2006);View Description
Hide Description
エストロゲン産生に関する酵素,アロマターゼを選択的かつ特異的に阻害し,閉経後乳癌を対象とするletrozole(商品名:フェマーラ錠2.5mg)が開発された。非ステロイド系トリアゾール構造を有する。海外では1989年より臨床試験が開始され,1996年に閉経後乳癌に対する第二次内分泌療法として適応を取得し,現在までに閉経後乳癌に対する第一次内分泌療法,術前内分泌療法,術後内分泌療法として約90か国で市販されている。本邦においては,当初1mg を臨床推奨用量として申請したが,海外では2.5mg 用量で承認され,有効性と安全性が広く認められたことから,2.5mg 用量での臨床試験を追加実施し,2006年1月製造販売が承認された。海外の大規模比較試験で,閉経後乳癌女性に対する術後内分泌療法の有益な結果が公表されたため,わが国においても術後内分泌療法として使用されることになった。
-
-
Journal Club
-
-
-
用語解説
-
-