癌と化学療法
Volume 35, Issue 1, 2008
Volumes & issues:
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総説
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アンチエイジングの現状と未来
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptionアンチエイジングの現状と未来に関して,次のトピックスに関して解説する。 1.延伸を続けている先進諸国の平均寿命について。 2.ヒトの寿命制御遺伝子とその解析研究の現状について解説。いまだに長寿遺伝子は同定されていない。 3.活性酸素により脂質,蛋白質やDNAが酸化され,細胞の構成成分が傷害を受けている。 4.アンチエイジングの実践では,栄養,運動,リラクセーションが重要な要素である点に関して解説する。
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特集
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- 細胞内蛋白質分解装置—ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー・リソソーム系—
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蛋白質の死を決定する分解装置
35巻1号(2008);View Description Hide Description生命継承の根幹であるゲノムにコードされた遺伝情報は静的であるが,その情報を具現化して生命活動を営んでいる遺伝子翻訳産物(すなわち蛋白質)は動的である。実際,すべての蛋白質は,細胞内において数分から数か月と千差万別の寿命をもって輪廻転生を繰り返しており,この代謝回転,いい換えれば蛋白質の動的制御の中心は分解である。蛋白質分解は,多様な生体反応を迅速に,順序よく,一過的にかつ一方向に決定する合理的な手段として生命科学の様々な領域で中心的な役割を果たしている。また蛋白質分解は,良品分子であっても不要(細胞活動に支障を来す)な場合,あるいは必要とする栄養素(アミノ酸やその分解による代謝エネルギー)の確保のために,積極的に作動される他,細胞内に生じた不良品分子の積極的な除去にも深く関与している。真核細胞の主要な蛋白質分解系は「ユビキチン・プロテアソーム系」と「オートファジー・リソソーム系」に大別される。これらは蛋白質の死を決定する細胞内装置であり,生体の恒常性維持に必須な役割を果たしているのみならず生命の謎に迫る重要なキーワードでもある。 -
ユビキチン依存的蛋白質分解系の新しい仕組み—ポリユビキチン鎖の認識とプロテアソームへの運搬—
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptionユビキチン依存的蛋白質分解系におけるポストユビキチン化のイベントとして,基質認識機構の重要性が垣間みえてきた。すなわち,基質のユビキチン化からその認識・分解へと至る過程におけるポリユビキチン化蛋白質の受け渡し(運搬)系の存在が提唱されている。本稿では,ユビキチン依存的蛋白質分解に関与するポリユビキチン鎖認識・運搬系の新しい仕組みについて概説し,細胞機能への関与と創薬ターゲットとしての展望についても触れたい。 -
鉄代謝を制御する蛋白質分解システム
35巻1号(2008);View Description Hide Description鉄はほぼすべての生物に必須な微量金属であると同時に,過剰量の鉄はフリーラジカルの産生源となり毒性を有するために,その代謝は厳密にかつ巧妙に調節されている。われわれは細胞の鉄代謝制御機構の研究を進め,鉄-ポルフィリン複合体であるヘムによる酸化がトリガーとなる鉄代謝制御因子であるIRP2 の分解系が細胞の鉄代謝制御に重要な働きを有することを示してきた。さらに,蛋白質分解がもう一つの鉄代謝調節因子,IRP1 の活性調節にも関与することが明らかになりつつある。ヘムはミトコンドリアで生成されることから,これらの成果から細胞の鉄代謝調節におけるミトコンドリアの役割がクローズアップされた。 -
オートファジーによる生体防御
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptionオートファジーは,細胞内の大規模分解システムとして細胞成分の新陳代謝や自己消化による飢餓時の栄養源確保に働く。オートファジーに必須の遺伝子群の同定を契機に近年研究が爆発的に進展し,代謝作用にとどまらない多彩な役割をもつことが明らかになってきた。たとえば,オートファジーは細胞内に侵入してきた病原細菌や,神経や肝の変性疾患の原因となる異常蛋白質の排除に寄与しており,生体防御機構としても重要であることが判明した。 -
蛋白質分解とオートファジー
35巻1号(2008);View Description Hide Description細胞内の古く,不要となった長寿命な蛋白質あるいは構造蛋白質はオートファジー(自食作用)リソソーム系で分解される。対象となる蛋白質は,細胞質の一部とともに隔離膜と呼ばれる小胞体様膜構造により細胞質から分離され,オートファゴソーム(自食胞)に取り込まれる。このオートファゴソームにトランスゴルジ網からリソソーム酵素をもつ輸送小胞が送られて,取り込まれた物質は分解される。分解されたアミノ酸は,細胞の内外で再利用される。このオートファジーができなくなると細胞質にユビキチン化された蛋白質が凝集体を作り,古くなったオルガネラが細胞質に溜まることになる。また,リソソームのプロテアーゼが欠損すると,リソソームに分解されない物質が溜まり,リソソームの蓄積症を発症する。いずれにしろ,これらの細胞は死に至る。
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Current Organ Topics:泌尿器科系悪性腫瘍
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原著
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既治療非小細胞肺癌に対するCPT-11とCDDP 併用療法のPilot Study
35巻1号(2008);View Description Hide Description既治療非小細胞肺癌を対象としてirinotecan hydrochloride(CPT-11)とcisplatin(CDDP)併用療法のpilot studyを施行した。CPT-11 60 mg/m2およびCDDP 30mg/ m2を第1,15 日に投与し,28 日を1 コースとして4 コースを目標とした。特に外来通院での治療をベースとしたレジメンの有効性ならびに安全性について検討した。登録症例は11 例で,投与回数中央値は3 コースであった。grade 3以上の副作用は,好中球減少が33.0%,白血球減少,Hb減少,嘔吐,下痢,疲労がそれぞれ9.1%であった。grade 3 の下痢を認めた1 例は外来化学療法をいったん中止し,短期間の入院治療を行ったが,その後,外来化学療法を継続しプロトコールを続行した。治療効果としては,11 例中8 例(73%)がSD,3 例(27%)がPDで,生存期間中央値は358日であった。以上より,本併用療法は外来にて施行可能であり,PSを保ち生存期間延長にも寄与することが示唆された。 -
当院における根治切除不能進行・再発胃癌症例に対する化学療法の治療経験
35巻1号(2008);View Description Hide Description当院においては2005 年4 月以降,根治切除不能進行・再発胃癌症例に対し,抗癌剤投与レジメンを統一し,併用化学療法を含め9 レジメンを用意して治療を施行してきた。一次治療はTS-1+docetaxel併用療法(S-1+DOC)を中心に施行,二次治療以降は主治医の判断にてレジメンを選択し治療を施行した。二次治療は単剤投与が78.6%に施行されていた。治療成績はmedian survival time(MST)15.6 か月,1 年生存率65.0%と良好な結果が得られた。一次治療にS-1+DOC を施行した症例においてはMST 16.4か月超え,1 年生存率69.0%が得られた。良好な治療成績が得られた理由として,一次治療での良好なtumor response(30.4%)および良好なtime to progression(TTP)(6.1か月),有害事象が十分制御できたこと,二次治療への高い移行率(82.4%),二次治療での良好な病勢コントロール率(78.6%)および良好なTTP(7.0 か月)が考えられた。そのなかで腹膜転移症例においては一次治療においてTTP 8.7 か月が得られたにもかかわらず,MST は11.1か月と予後不良であり,二次治療以降に課題があると思われた。 -
胆道癌に対するGemcitabine+Irinotecan療法の経験
35巻1号(2008);View Description Hide Description目的:胆道癌に対するgemcitabine(GEM)+irinotecan(CPT-11)療法の有効性を検討する。方法:対象は切除不能・再発胆道癌15 症例であった。男性7例,女性8 例であり,年齢は49〜78(中央値66)歳であった。原発部位は胆嚢7 例,肝外胆管5 例,肝内胆管3 例であり,転移・再発部位は肝単独4 例,リンパ節単独4 例,腹膜単独1 例,肝+リンパ節2 例,肝+腹膜2例,肝+肺1例,局所+リンパ節1 例であった。GEM(250 mg/m2)+CPT-11(25 mg/m2)の2 週間に1 回の投与を反復した。GEMを午前11 時から1 時間かけて点滴静注し,CPT-11 を午後5 時から2 時間かけて点滴静注した。PDの場合,投与量を段階的に増量し,2か月連続してPD となった場合には他のレジメンに変更した。治療期間は2〜16(中央値8)か月であった。抗腫瘍効果をRECIST基準により判定し,副作用をCTCAE により判定した。結果:副作用はgrade 3(白血球減少)を1 例に認めたが,grade 4 以上の副作用はなかった。PR は6 例,SD は7 例,PD は2 例であった(奏効率40%)。原発部位別では,胆嚢癌2 例,肝外胆管癌3 例,肝内胆管癌1 例でPR が得られた。最長生存期間は23 か月(生存中)であり,累積1 年生存率は28%,MSTは8 か月であった。結論: GEM+CPT-11療法は,副作用が軽度で高い奏効率が得られるという点において,胆道癌化学療法の選択肢の一つとなる可能性がある。 -
切除不能膵癌に対するGemcitabine単独化学療法の適切な治療効果判定法についての検討
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptiongemcitabine(GEM)による単独化学療法は,切除不能膵癌の標準的治療である。治療前にその治療効果を予測すること,経過中的確にその治療効果を判定することは極めて重要である。われわれは当科にて,切除不能膵癌と診断しGEMによる単独化学療法を施行した21 例に対し,血液検査,画像検査とともに治療前に血清CA19-9, 造影CT による最大腫瘍径,そしてFDG-PET 検査におけるSUVmax の計測を行い,それぞれの値を大小2 群に分け生存期間との関連について検討を行った。治療前の臨床病期分類および肝転移の有無において生存期間との間に明らかな有意差を認めたものの,血清CA19-9,造影CT による最大腫瘍径,FDG-PET におけるSUVmax いずれにおいても生存期間との間に明らかな有意差は認めなかった。10例に対して化学療法3 コース終了時に再度血清CA19-9,造影CT,FDG-PET 検査を施行し,それぞれの値の変化率と生存期間との関連について検討を行った。その結果,血清CAl9-9の変化率は生存期間と有意に相関した(r=0.633,p=0.0481)。また造影CT による最大腫瘍径の変化率は,有意差はないものの生存期間と比較的よく相関していた。一方,今回の評価方法では,FDG-PET は予後予測や治療効果判定には有用とはいえない結果となった。血清CA19-9 は造影CT やFDG-PET と異なり,画像診断上とらえることが困難な腫瘍やその変化を鋭敏に反映するため,GEM 治療中の膵癌患者の生命予後を最も的確に評価する指標となり得るものと考えられた。治療前の造影CT による的確な臨床病期分類と治療中の血清CA19-9 の変化が,GEM 治療を受ける膵癌患者の生命予後を予測する重要な因子であることが明らかとなった。 -
大腸癌切除不能肝転移に対するWeekly 5-FU/LV 肝動注療法の成績
35巻1号(2008);View Description Hide Description目的:本邦では1990 年代にはすでにIVR を利用したカテーテル挿入技術により,5-FU 肝動注療法が技術的には完成の域に達していた。一方,5-FU は l-leucovorin(LV)と併用することで,その抗腫瘍効果が増強することが証明されている。この研究の目的は,大腸癌の切除不能肝転移に対して5-FU とLV 併用の肝動注療法の効果と毒性に関して評価することである。対象と方法:切除不能の大腸癌肝転移症例20例を対象とした。5-FU(1,000 mg/body)とLV(250 mg/body)を毎週,肝動脈から5時間をかけて動注した。生存率とRECIST を基準にした奏効率を求めた。また血液,非血液毒性はCTCAE ver 3.0 を基準にして評価した。結果:施行回数は中央値24 回であった。標的病変(肝)に対する奏効率は75%で,生存期間の中央値は22 か月であった。今回施行したレジメンでは軽微な副作用しか来さなかった。腎不全患者の1例に対してgrade 3 の血小板減少を来した以外は血液毒性はみられなかった。結語: 5-FU にLV を併用した肝動注療法は,大腸癌の切除不能肝転移に対して有効で認容性のある治療法である。本邦においても動注療法は大腸癌の切除不能肝転移に対して有効な治療法として再認識されるべきである。 -
Preoperative Irinotecan/5-FU/Leucovorin Plus Concurrent Radiotherapy in Rectal Cancer
35巻1号(2008);View Description Hide Description -
筋層浸潤膀胱癌に対する術前化学療法としてのGemcitabine+Carboplatin療法の短期治療成績
35巻1号(2008);View Description Hide Description筋層浸潤膀胱癌23 例を対象にgemcitabine+carboplatin 療法を術前化学療法として施行し,比較的良好な短期成績を得たので報告する。gemcitabineは800 mg/m2の用量を第1,8,15 日目に投与し,carboplatin はAUC 4 でCalvert の公式に従って用量を計算し,第2 日目に投与した。休薬期間のない21 日を1 コースとして2 コース施行した。抗腫瘍効果はCR 6 例,PR 8 例,SD 7 例,PD 2 例であり,奏効率は60.8%であった。有害事象ではgrade 3/4 の白血球減少が10 例(43.4%)に認められたが,貧血,血小板減少,悪心などいずれもgrade 1/2 で,全患者が治療を予定どおり終了することができた。平均観察期間12.6(8〜19)か月で,これまでに5 名のSD患者が死亡した(膀胱癌死4 例,他因死1 例)。PDの2例は再発あり生存中。この他の16 例は再発なく生存中である。 -
同種造血幹細胞移植における Hematopoietic Cell Transplantation-Specific Comorbidity Indexの有用性の検討
35巻1号(2008);View Description Hide Description同種造血幹細胞移植後の非再発死亡の予測にhematopoietic cell transplantation- specific comorbidity index(HCT-CI)が有用かを後方視的に検討した。対象は2000 年1 月.2003年12 月までにHLA一致または1 座不一致の血縁および非血縁ドナーから骨髄あるいは末梢血幹細胞移植を全身放射線照射とcyclophosphamide とthiotepa の骨髄破壊的前処置で初回の同種移植を施行した127 人。127 人中83 人がHCT- CI を欠損データなく解析可能であった。年齢中央値42 歳で,ドナーはHLA 一致血縁30 人,HLA1 座不一致血縁8 人,非血縁45 人であった。原疾患はstandard risk(第一および第二寛解,または第一慢性期)47 人,high risk(上記以外)36 人であった。最も高頻度に認めたcomorbidityは呼吸障害で45 人に認めた。HCT-CIは0〜2が55 人,3 以上が28 人であった。2年生存率はHCT-CIが0〜2 で65%,3 以上で36%であった(p=0.0009)。standard risk の患者ではHCT-CI により生存率に有意差を認めなかったが(78% vs 73%,p=0.71),high risk の患者ではHCT-CI が3 以上の場合,HCT-CIが0〜2 の場合と比較して生存率が有意に悪かった(47% vs 12%,p=0.045)。今後,前方視的にHCT-CI の有用性を多数例で検討する必要がある。 -
The Consequenses of Tacrolimus Blood Concentrations During the Four Weeks Following Marrow Transplantation from an Unrelated Donor:A Single-Center Experience
35巻1号(2008);View Description Hide Description非血縁者間同種骨髄移植において,薬剤性腎障害を回避しつつ移植片対宿主病(GVHD)を予防するために,われわれはタクロリムスの目標血中濃度を10〜20 ng/ mL と設定した。妥当性を調べるため,52 症例について実際の投与量と血中濃度の推移を調査した。そして,II〜IV度の急性GVHD 発症や腎障害合併との関係について検討した。移植後第1 週目タクロリムス平均血中濃度は17.41+/−4.84 ng/mL,第2 週目13.7+/−4.0 ng/mL に低下した。投与量の平均値は第1 週目 0.022+/−0.005 mg/kg/day であり,0.018+/−0.007 mg/kg/day と第2 週目は減量された。II〜IV度の急性GVHD 合併は63.0%,III〜IV度は13.9%であった。移植後4 週間の血中濃度を平均14.82+/−4.22 ng/mL に維持することができ,血中濃度の高目もしくは低目になった群でgrade II〜IVの急性GVHD の発症に差はなかった。また腎障害と血中濃度高低に相関はなかった。タクロリムス投与量や血中濃度の推移や結果の本邦における具体的報告例は少なく,重要な結果であると考え報告する。 -
安全装置付きポート針“Huber Plus”の使用経験
35巻1号(2008);View Description Hide Description化学療法部で安全装置付きヒューバー針(Huber Plus)と従来型ヒューバー針の安全性,操作性を比較検討した。両ヒューバー針は各9回使用した。両ヒューバー針の初回穿刺時における穿刺成功率と針刺し件数は各100%,0 件であった。visual analogue scale(VAS)による穿刺時の患者疼痛と患者不安の程度の調査では,安全装置付きヒューバー針が従来針に比べ,より疼痛と不安が軽減されていた(疼痛: 3.8 vs 2.6,不安: 3.7 vs 0.5)。今回,本邦初となる安全装置付きヒューバー針の初期経験を報告した。この器材は患者疼痛と不安において従来針と差を認めず,今後,針刺し防止の観点から普及すべきと考えられた。
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症例
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非小細胞肺癌に対するCisplatinとVinorelbine併用による術後補助化学療法—連続5例における安全性の検討—
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptioncisplatin(CDDP)とvinorelbine(VNR)の併用による非小細胞肺癌(NSCLC)の術後補助化学療法(POAC)は,標準治療として確立されつつあるが,日本人における毒性を危惧する報告も散見される。今回,本療法を連続5 例に行い安全性を検討した。対象は男性3 例,女性2 例で,平均年齢は61.6 歳,術後病期はIIB/IIIA/IIIB期が各々1/2/2 例であった。CDDP は第1 日に80 mg/m2,VNR は第1,8 日に25 mg/m2で使用し,21 日ごとに4 コースを目標に治療した。5例中4 例が4 コースを減量なく完遂し,平均治療間隔は23 日であった。主な毒性は,血液毒性で4 例にgrade(Gr)4 の好中球減少を認め,非血液毒性では1 例にGr 3 の肝障害を認めた。悪心・嘔吐は全例がGr 1,GFR 低下は3 例がGr 1 であった。本療法の毒性は既存の報告と同程度で,実地診療としての忍容性が示唆された。 -
Bisphosphonate製剤投与を受ける乳癌多発骨転移患者にみられた顎骨骨髄炎
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptionbisphosphonate 製剤(BPs)投与患者における顎骨壊死の副作用について報告した。BPs 投与と関連した顎骨壊死に対し,現時点では有効な治療は確立されておらず,また発症のメカニズムも不明な点が多い。渉猟し得た報告によれば,BPs投与中に行われた抜歯などの観血的処置が発症のリスクとなっている。BPsを処方する医師や,BPs投与を受けている患者の歯科治療に携わる歯科医師が副作用に対する認識を共有し,BPs投与の前に予防的な歯科処置を行うこと,またBPs投与中の患者に対しては外科処置を可及的に避け,口腔清掃の励行に留意することが重要と考えられた。 -
手術と術後化学療法で長期生存中の腹膜播種を伴った4 型胃癌の1例
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptionわれわれは腹膜播種を伴う4型胃癌に対し,手術とS-1+PSK 併用療法を中心とした化学療法を行い,術後5 年の長期生存を得た1 例を経験したので報告する。症例は41 歳,女性。初回手術時腹膜播種と膵臓浸潤を認め,胃全摘術後S-1+PSK 併用療法,S-1+CDDP 療法,S-1+DOC 療法などの化学療法を行った。なかでもS-1+PSK 併用療法は,副作用のためS-1投与法を5 日投与2 日休薬,4 週投与2 週休薬とし,計34 クール施行が可能であった。その後腹膜播種による腸閉塞のため,右半結腸切除後weekly PTX 療法を行い,術後5 年現在生存中である。S-1+PSK 併用療法は,投与法を工夫することで副作用を軽減し,長期にわたる投与が可能であると思われた。 -
幽門狭窄に対しての内視鏡的バルーン拡張術,閉塞性黄疸に対しての内視鏡的胆道ドレナージ術施行後にS-1/Paclitaxel併用化学療法が有効であった進行胃癌の1 例
35巻1号(2008);View Description Hide Description症例は65 歳,女性。食欲不振と上腹部痛を主訴に受診し,幽門狭窄およびリンパ節転移,腹膜播種による閉塞性黄疸を有する切除不能進行胃癌の診断に至った。内視鏡的バルーン拡張術,内視鏡的胆道ドレナージ術を施行後にS-1/paclitaxel(PTX)併用化学療法(S-1 80 mg/m2 day をday 1〜14の2 週間服薬,1 週間休薬する投与方法に,PTX 50 mg/m2をday 1,day 8 に投与する方法を併用し,3 週間を1 クールとする)を施行した。1コース終了後には食欲不振,上腹部痛はほぼ消失し,食事摂取量の増加も認められた。画像検査では胃壁のvolume は減少し,大動脈周囲のリンパ節の縮小化,胸腹水の減少も認められた。有害事象はgrade 1 の血管炎と脱毛,grade 2 の好中球減少であった。幽門狭窄に対しての内視鏡的バルーン拡張術,閉塞性黄疸に対しての内視鏡的胆道ドレナージ術施行後のS-1/PTX 併用化学療法は,切除不能進行胃癌の有効な治療方法と考えられた。 -
S-1+Low-Dose Cis-Platinum併用療法が奏効した早期胃癌術後の多発性骨転移の1 例
35巻1号(2008);View Description Hide Description胃切除4 年後に多発性骨転移を来した早期胃癌に対しS-1 と低用量cis-platinum(CDDP)の併用療法が有効であった症例を経験した。症例は68 歳,女性。1999 年2 月9 日に胃体中部の早期胃癌に対し胃亜全摘術を行った。病理組織学的には,深達度sm2の印環細胞癌で1 群リンパ節に転移を認めた(Stage ㈵B)。手術から4 年後に背部痛を訴え,血液検査でCA19-9 996.5 U/mL と上昇を認め,MRI で多発性骨転移を認めた。S-1+CDDP 併用療法(S-1 100 mg/body/day を2 週投与1 週休薬,CDDP 20 mg/bodyをday 1,8 に投与)を開始した。投与開始後3 か月後にCA19-9は低下し,背部痛の減弱を認めた。 -
UFT-E で治癒したと考えられる高齢者胃癌術後肝転移の1例
35巻1号(2008);View Description Hide Description82 歳の女性の胃癌に対し,2群リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した(M,Less,2.2×2.0 cm,1 型,fH0,fP0,fM0,fT2,fN2(+),por 1,med,INF β,ly2,v2,fPM(−),fDM(−),fStage IIIa)。当初年齢を考慮し補助化学療法は行わなかったが,術後3 か月でCEA 値が43.2 ng/mL と上昇し,CT で多発肝転移が出現した。UFT-E 300 mg/dayの内服治療を開始したところ,CEA値は5 か月後には2.0 ng/ mL と正常化し,CT 上肝転移は消失した。UFT-E は約2 年間(総量約220 g)内服したが副作用は認めず,現在術後8年以上経過したが再発の徴候はない。UFT-E による単独治療でCR となった極めてまれな例ではあるが,高齢者にも比較的安全に行い得るので積極的に治療すべきと思われた。 -
Gemcitabineを用いた膵癌術後補助化学療法中に薬剤性間質性肺炎を発症した1 例
35巻1号(2008);View Description Hide Description症例は48 歳,男性。膵頭部癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除,門脈合併切除,D2リンパ節郭清術を施行した。術後第22 病日よりgemcitabineによる補助化学療法を開始した。投与中grade 2 以上の有害事象は認めなかったが,3 クール終了後に38℃台の発熱が出現した。呼吸器症状はなかったが,低酸素に伴う意識障害が出現し緊急入院となった。薬剤性間質性肺炎を疑い,methylprednisolone 1,000 mg/日のステロイドパルス療法とBiPAP による呼吸補助療法を行ったところ,血液ガスデータ,胸部X 線,CT 所見とも劇的に改善した。9 日目には酸素投与も不要となり,prednisolone投与量を漸減し14 日目に退院した。gemcitabine投与に伴う有害事象としての薬剤性間質性肺炎は比較的少ないが,重篤な症状を呈するため注意が必要でステロイドパルス療法が有効と考えられる。 -
Gemcitabine Hydrochloride,Nedaplatin併用療法が有効であったと考えられる再発膵癌の1 例
35巻1号(2008);View Description Hide Descriptiongemcitabine hydrochloride(GEM)無効再発膵癌に,白金製剤としてnedaplatin(CDGP)を併用投与し,有効であった症例を経験した。症例は73 歳,女性。膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術,術中照射(20 Gy)を施行後,補助化学療法としてGEM 1,000 mg の隔週投与を行った。15 回の投与でCA19-9 が3,770 U/mL まで増加し,Virchow のリンパ節腫大が出現したため,GEM 1,000 mg/CDGP 50 mgの併用投与(隔週)へと変更した。GEM/CDGP 併用療法を6 回の投与でCA19-9は657 U/ mLまで低下し,Virchowのリンパ節は触知しなくなった。以後副作用はなく,9 か月間(18 回)の投与が可能であった。GEM 無効時の二次治療に腐心することの多い臨床の現場で,本例が白金製剤としてCDGP を併用する際の参考になればと考え,報告を行った。 -
S-1 5投2休投与が著効した高齢者大腸癌再発の1例
35巻1号(2008);View Description Hide Description症例は82 歳,女性。上行結腸癌手術後,外来にて経過観察していた。大腸癌再発,多発肺転移にてS-1(80 mg/body/day)5 日間連続投与2 日間休薬(5 投2 休)にて開始した。開始後14 週目より両側肺転移巣の縮小がみられ,20 週目には肺転移巣の消失,局所再発巣の縮小がみられPR を得た。S-1 5 投2 休投与は簡便で高い抗腫瘍効果を示し,副作用も少なく高齢者切除不能大腸癌患者においても奨励されると思われる。 -
上行結腸癌横隔膜転移の1 例
35巻1号(2008);View Description Hide Description今回われわれは,上行結腸癌術後にCEA の上昇を契機に発見された孤立性横隔膜転移の1 例を経験した。症例は72歳,女性。2005 年1 月,上行結腸癌に対して右半結腸切除術を施行した。S-1による術後化学療法を行っていたが,CEAの上昇を認め精査施行し,肝転移(S7)の診断で手術を施行した。開腹すると腫瘍は肝(S7)に接していたが,右横隔膜に存在,右横隔膜部分切除術を施行した。病理組織学的に初回手術時切除標本と同様の高分化型腺癌,免疫組織学的にもCEA染色陽性で,上行結腸癌の右横隔膜転移と診断した。結腸・直腸癌では,横隔膜への孤立性転移の報告例は極めて少ない。その機序として腫瘍細胞の横隔膜腹膜小孔への吸収,迷入が考えられた。 -
Tegafur/Uracil/Folinate療法を施行した透析患者におけるS 状結腸癌の1 例
35巻1号(2008);View Description Hide Description患者は59 歳の男性。当院の内科で透析を導入されていたが,S 状結腸癌の狭窄による腸管穿孔を発症しS 状結腸切除を施行した。再発高リスク Stage II 結腸癌であると考えられたため,UFT/LV 療法を6 コース施行した。化学療法中に有害事象はなかった。透析患者においても厳重な観察の下で安全にUFT/LV 療法が可能であると考えられた。 -
Paclitaxel,Carboplatin併用化学療法が奏効した原発性腹膜癌の3 症例
35巻1号(2008);View Description Hide Description今回われわれは,化学療法のみで腫瘍が消失した原発性腹膜癌症例を経験したので報告する。症例: 66,73,71 歳の3例の女性で,いずれも広範囲の腹膜播種のある原発性腹膜癌で,一部生検のみの試験開腹に終わった症例である。術後これらの症例に対してpaclitaxel とcarboplatin の併用化学療法を行い,腫瘍マーカーのCA125 は正常になり,CT などにて腫瘍が消失し,良好な経過をたどっている。結論: 原発性腹膜癌で治療をあきらめていた症例などに対して,paclitaxel とcarboplatin 併用療法などの化学療法が治療選択肢の一つになり得る。 -
Gemcitabine Hydrochlorideによる薬剤性肝障害の1例
35巻1号(2008);View Description Hide Description本例は膵癌に対してgemcitabine hydrochloride(GEM)による化学療法施行中に,薬剤性肝障害により肝不全死した症例である。症例は79 歳,男性。C型慢性肝炎,2型糖尿病の既往あり。2005 年2 月の腹部超音波検査で膵腫瘍を指摘され,諸検査で膵頭部癌と診断した。慢性肝炎を有していることから膵頭十二指腸切除は過大侵襲と判断し,放射線化学療法を選択した。局所に60 Gy の体外照射を施行し,GEM を800 mg/body×2 q3w のスケジュールで併用投与した。照射終了後も800〜1,000 mg/body×2 q3wでGEM を使用した。2005 年7 月(GEM 13 回投与終了後)より食思不振・腹部膨満感が出現し,T-Bil 値の上昇(4.0 mg/dL)を認めたため投与を中止した。中止後もビリルビン値の上昇,肝機能異常は進行した。腹部CT で肝転移の所見はなく,また閉塞性黄疸も認められなかった。GEMによる肝細胞壊死と考えられ,prednisolone(50 mg/day)の全身投与を施行したが肝障害は増悪し,腹水貯留・意識レベルの低下が進行し死に至った。剖検を行ったところ広範囲な肝壊死があり,慢性肝炎に併発した薬剤性肝細胞障害と考えられた。肝障害例では,GEM は特異体質性で用量依存性と考えられるメカニズムにより,重篤で致死的な肝障害を発生させる可能性があるとされる。慢性肝障害患者に対してGEMを使用する場合は,さらなる慎重投与が必要と考えられた。
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用語解説
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