Volume 35,
Issue 10,
2008
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総説
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癌と化学療法 35巻10号, 1639-1644 (2008);
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GIST の診断と治療は,その原因である変異KIT とPDGFRA 蛋白質を標的とした分子標的治療の確立に伴い大きく変化した。これに伴い,一般医向けのGIST 診療ガイドラインが相次いで発表された。GISTの分子生物学的理解は深まり,診断と治療法が確立し,予後も改善したが,数多くの問題が今も残っている。本稿では,現在のホットトピックスである, 1.粘膜下腫瘍・GISTの腹腔鏡手術, 2.集学的治療(イマチニブアジュバント治療,ネオアジュバント治療,イマチニブ奏効中の外科治療,部分耐性GISTへの外科治療), 3.イマチニブ耐性GISTの診断と治療を中心に最新の情報を提供しながら,今後のGISTの診療と治療を考察する。
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特集
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分子標的治療薬による特異的な副作用とその対策
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癌と化学療法 35巻10号, 1645-1648 (2008);
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上皮成長因子受容体阻害剤,多標的キナーゼ阻害剤では高頻度に特異的な皮膚症状(皮膚毒性)が現れる。上皮成長因子阻害剤では,ざ瘡様皮疹,爪囲炎,乾皮症などが共通して出現する。ざ瘡様皮疹はそのなかでも頻度が最も高く,50%以上の患者に発現する。通常のざ瘡と似るが面皰形成を伴わないという特徴を有する。爪囲炎は10〜15%にみられ手指や第 1 趾に発症することが多く,陥入爪や肉芽形成を伴うことがある。乾皮症は35%にみられ,指趾先端に症状が生じると亀裂を生じ,強い疼痛を訴える。多標的キナーゼ阻害剤では,imatinibにおける色素異常や顔面浮腫,sorafenibやsunitinibにおける「手足の皮膚反応」などが多くみられる。この手足の皮膚反応は病変が限局性で角化が目立つ傾向があり,5-FU やタキサン系の抗癌剤にみられる手足症候群とは,多少異なった臨床像を呈する。また,爪甲下の線状出血斑はsorafenibで60%,sunitinibで30%の患者にみられる。分子標的治療薬の特異的な皮膚症状の発症メカニズムはまだ十分には解明されていないが,薬剤本来の分子生物学的作用による可能性が考えられる。これら皮膚症状の発症,重症度と治療効果,患者の予後との関連も指摘されており,重要な症状といえる。
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癌と化学療法 35巻10号, 1649-1653 (2008);
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分子標的治療とは体内の特定の分子機能を選択的に抑えることにより疾病を治療しようとする方法である。癌治療分野においては,より分子選択性の高い新薬が次々に開発されて,分子標的治療薬の役割は拡大しつつある。しかし,一方で有効な治療薬であっても予期せぬ副作用を発現する薬剤もあることが判明してきた。本章では分子標的治療薬の副作用の一つとして蛋白尿,高血圧といった腎毒性をもつ薬剤に焦点を当てる。分子標的治療薬のうちで現在までに腎毒性をもつことが報告されている代表格は抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)薬である。bevacizumabに関するメタアナリシスの結果からも,特に抗VEGF 薬治療は高血圧,蛋白尿の有意な関連因子であることが推察される。高血圧の原因はVEGF作用阻害による血管内皮の内因性NO 合成の低下と末梢細小血管床の減少などによる末梢血管抵抗の増加が考えられている。また,蛋白尿の原因としては,糸球体上皮細胞のVEGF 産生が阻害されることに由来する糸球体構造と濾過機能の破綻が推測されている。bevacizumab,sunitinib投与例においてはネフローゼ症候群や糸球体微小血管症を発症することが確認されている。対策は定期的な血圧測定と蛋白尿検査による早期発見と降圧剤の積極投与による十分な血圧コントロール(腎庇護療法)であるが,腎臓専門医との連携による治療も必要である。
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癌と化学療法 35巻10号, 1654-1658 (2008);
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抗癌剤による心毒性は,1970年代にanthracycline系薬剤のdoxorubicinが登場,普及して以来認識されるようになった。集学的治療や高用量・多剤併用化学療法,そして分子標的治療の発展を背景に心毒性の危険因子は増加し,心毒性はより日常的な副作用として認識されるべき時代となった。分子標的薬の有害事象としての心毒性(trastuzumabに代表される)は,発現した場合,不可逆的な心機能障害に陥る可能性がある。心毒性の発生機序はいずれの薬剤においても十分に解明されておらず,現段階では治療前の心機能の評価,投与期間における心機能のモニタリングを行いつつ,化学療法を実施・中止していくことが実際的な戦術となる。分子標的薬による浮腫(imatinib に代表される)も比較的新しい有害事象の一つである。浮腫の迅速かつ的確な鑑別診断は必須で,適切な対応が求められる。しかし,現段階では対症療法に努める他なく,今後,分子標的薬による心毒性・浮腫のメカニズムの解明,対処法の新たな構築が求められる。
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癌と化学療法 35巻10号, 1659-1664 (2008);
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悪性腫瘍に対する化学療法の進歩,特に癌分子標的薬の開発は悪性腫瘍患者の生存率を著しく改善してきている。しかし,当初副作用が少ないと考えられていた分子標的薬さえもこれまでの化学療法薬と同様な致命的副作用が認められてきている。治療に伴う副作用としての神経障害の発症は時に重篤な後遺症を来したり,致死的となる。ここでは分子標的薬関連の重篤な中枢神経合併症である進行性多巣性白質脳症と,可逆性後白質脳症症候群について述べ,癌治療医にこれら疾患の認識と早期発見治療の重要性を強調したい。
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癌と化学療法 35巻10号, 1665-1667 (2008);
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抗癌剤治療中には血栓・塞栓症や消化管穿孔などの重篤な合併症を起こすことがあるが,bevacizumab併用療法において発症頻度が上昇する。これらの治療においては創傷治癒遅延も考慮しなければならない。周術期は患者の全身状態を十分に把握し,使用された薬剤の有害事象をよく理解して治療に当たる必要がある。
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癌と化学療法 35巻10号, 1668-1670 (2008);
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「ゲフィチニブによる肺傷害」以来,薬剤による肺障害の理解の必要性が再認識され,最新の画像解析,検査データ,病理分類を用い,詳細な検討がなされるようになった。これにより,発現率,発現関連因子の正確な情報が得られ,種々の対応が可能になる。一方で薬剤開発におけるグローバライゼーションの流れは,日本人に多いと考えられる肺障害などの副作用について,十分な情報のない状態で認可されるという側面もあり,その対策の必要性が高まっている。
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癌と化学療法 35巻10号, 1671-1674 (2008);
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近年,目覚ましい発展を遂げているがんの分子標的治療の代表的治療法としてモノクローナル抗体療法があり,その有効性と副作用の少なさからがん治療において不可欠な治療法となっている。この抗体治療に共通した特徴的な急性期毒性としてinfusion reaction があり,過敏症やアレルギー反応に類似した有害反応の総称を指す。一般に初回投与の最初の2 時間以内に発症し,薬剤の一時的な中断やステロイド剤投与・酸素吸入・補液などで対処可能な軽微から中等度のものが多いが,時に重篤な事象も報告されており,投与後の注意深い観察が重要である。安全ながん治療の実践のためにも出現時期や頻度,前処置や出現時の対処法などを医療者が熟知し迅速に実践できる体制が確立されているだけでなく,患者自身にも十分なインフォームド・コンセントを行うことが望まれる。
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原著
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癌と化学療法 35巻10号, 1691-1695 (2008);
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進行胆嚢癌は治療方針が確立されておらず,かつ予後不良である。当科での切除不能進行胆嚢癌および胆嚢癌肝転移に対する肝動注療法について検討した。対象は2003 年11 月〜2007 年3 月まで肝動注を施行した10 例である。内訳は切除不能胆嚢癌7 例,胆嚢癌肝転移3 例である。全例大腿動脈経由でカテーテル・ポート留置を施行した。レジメンはFEM を主体として用いた。評価可能であった8 例の局所治療効果は奏効率50%(PR 4 例,NC 2 例,PD 2 例)であった。有害事象ではgrade 2 の白血球減少3 例,grade 2 の嘔吐1 例,grade 2 の悪心を2 例に認めた。全症例の生存期間中央値は192日であった。切除不能胆嚢癌のなかで著効した1 例は,肝動脈閉塞を認め動注継続不能となったため,動注開始1 年10 か月後に胆嚢摘出術を施行した。手術所見では術前に認められた肝浸潤は消失していた。肝動注療法でもわれわれが検討したように奏効する例はあり,肝動注療法は進行胆嚢癌の治療の選択肢になり得ると考えられた。
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癌と化学療法 35巻10号, 1697-1701 (2008);
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進行再発大腸癌症例に対するAIO レジメンによるCPT-11/LV/5-FU 多剤併用療法の日本人における投与量規制毒性(DLT)を検討し,本療法における至適投与量(RD)を推定することを目的として第 I 相試験を行った。CPT-11はレベル1 の40mg/m2からレベル3 の80mg/m2まで20 mg/m2ずつ増量し,5-FU はレベル4 からレベル5 で500mg/m2ずつ増量した。18 例が登録され,grade 2 までの血液毒性,非血液毒性が認められたがいずれも中止には至らなかった。海外におけるRD と同等のレベル5 まで重篤なDLT は認められずMTD に達しなかったため,レベル5 を本試験におけるRD とした。本研究により欧米における主要なレジメンの一つであるAIO レジメンが本邦においても海外と同等の至適投与量での治療の安全性が確認された。
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癌と化学療法 35巻10号, 1703-1707 (2008);
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vinorelbine(VNR)は進行再発乳癌に対する治療法の一つである。2005年5月〜2007年7月の間に当科でVNR 単剤投与を開始した18 例を対象に,VNRの臨床効果を後向きに検討した。結果はCR 0 例,PR 4 例,long SD 1 例,SD 5 例,PD 8 例で奏効率22.2%,臨床的有用率27.8%であった。無増悪期間(TTP)中央値は138 日であった。主な有害事象は白血球減少(72.2%),好中球減少(77.8%),表在性静脈炎(58.8%)であった。VNRは進行再発乳癌に対し安全で有用な薬剤であると考えられた。
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癌と化学療法 35巻10号, 1709-1712 (2008);
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Vinorelbine(VNB)は手術不能または再発乳癌に対して2005 年5 月に適応が認められた,ビンカアルカロイド系抗癌剤である。今回,当科でのVNB 治療成績をretrospectiveに検討し,乳癌治療における本薬剤の位置付けを探った。対象は2006 年4 月1 日〜2007 年8 月20 日までに使用開始した51 症例で,治療効果と有害事象について評価した。平均年齢は55.9 歳,平均投与期間が161.9 日。前治療レジメン数は平均2.2,anthracycline系およびtaxane系薬剤治療歴のあるものが37 例(72.6%)であった。治療効果はCR 1 例,PR 9 例で奏効率は19.6%であった。このうち,anthracycline系およびtaxane系薬剤既治療症例の奏効率は16.2%であった。副作用としては,grade3 以上の白血球・好中球減少症が8 例(15.7%),VNB に特徴的とされる血管痛や静脈炎が4 例(7.8%)にみられた。VNBはanthracycline系およびtaxane系薬剤既治療症例に対する標準治療の一つとなり得ることが示された。
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癌と化学療法 35巻10号, 1713-1716 (2008);
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目的:進行再発乳癌に対する3 次以降化学療法について検討する。方法: 3 次以降化学療法の施行された27 例48 レジメンを対象とし,治療効果,予後について検討した。結果: 3 次以降化学療法はanthracycline(A)and/or taxane(T)が18レジメン,A,T 以外の静注抗癌剤が16 レジメン,5-FU 系経口抗癌剤13 レジメンであった。全レジメンの奏効率は31.4%で,レジメン別で有意差はなかった。ライン別でも有意差がなく,3 次以降ラインが進んでも治療効果は比較的維持されていた。単変量解析では,ホルモン受容体陰性,1・2次奏効例,ECOG performance status(PS)0,1 である例で奏効率が良好であったが,多変量解析ではホルモン受容体のみが有意であった。全生存期間について,1・2 次治療効果では有意差を認めなかったが,3 次以降化学療法奏効症例は有意に予後が良好であった。結論: 3 次以降ラインが進んでも治療効果は比較的維持されていた。ホルモン受容体陰性例では3 次以降化学療法を積極的に考慮すべきであろう。
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癌と化学療法 35巻10号, 1717-1720 (2008);
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名古屋市立大学病院では2007 年5 月の外来化学療法室の開設とともに,セット登録されたレジメンから注射オーダを行うシステムである「抗がん剤処方支援システム」が稼動した。同時に,薬剤部では抗がん剤調製をより安全に行うため,調製方法を指示するシステムである「抗がん剤調製支援システム」を構築した。私たちは,従来行っていた電卓計算と手書き作業による調製支援と新しいシステムを利用した場合とで,調製方法を確認するのに要する時間と正確性について調査・検討した。「抗がん剤調製支援システム」では,抗がん剤の投与量に合わせて溶解液の種類・量,抜取り量,調製・投与時の注意事項が自動印字される。そのため,注射調剤の経験が浅い者でも正確かつ迅速に調製方法を確認することができる。また,このシステムは調製業務の効率化を図るとともに,リスクマネジメントの一環としての有用性が高いと考えられる。
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癌と化学療法 35巻10号, 1721-1726 (2008);
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paclitaxel(PTX)の投与方法には3 週間に1 回投与(tri-weeklyレジメン)と,3 週連続し1 週休薬する週1 回投与(weeklyレジメン)がある。そこで,weeklyレジメン47 例(乳がんおよび胃がん)とtri-weeklyレジメン58 例(乳がんおよび肺がん)について副作用発現状況を比較検討した。骨髄抑制,末梢神経障害,筋肉痛・関節痛の発現はいずれもweeklyよりtri-weeklyレジメンにおいて高頻度に発現し,それぞれの発現率は,grade 3/4 の好中球減少は12.8%と65.5%(オッズ比12.98),grade 2/3 の末梢神経障害は6.4%と24.1%(オッズ比4.67),grade 2/3 の筋肉痛・関節痛は4.3%と43.1%(オッズ比17.05)であった。末梢神経障害および筋肉痛・関節痛は,症状の重症化とPTX の1 回投与量との相関がみられたが,累積投与量とは相関がみられなかった。末梢神経障害および筋肉痛・関節痛の初発時期は,tri-weekly レジメンにおいては80%以上の患者がいずれも1 コース目に発現したのに対し,weekly レジメンでは各コースで発現がみられた。他の非血液毒性の発現頻度は悪心を除いて両群間で差はなかった。以上,PTXによる末梢神経障害および筋肉痛・関節痛の発現は1回投与量やレジメンにより影響されることが示唆され,tri-weeklyレジメンにおいて高頻度にみられた。
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症例
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癌と化学療法 35巻10号, 1727-1730 (2008);
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口腔扁平上皮癌からの巨大な頸部リンパ節転移に対してS-1併用化学放射線療法が奏効した2 例を報告する。症例1は80 歳,男性。左側舌癌(T2N0M0)の術後,同側のレベルIV領域への後発リンパ節転移(52×46 mm大の腫瘤形成)を来した症例である。放射線治療として,2.0 Gy/日,週5 日,計66 Gy の分割照射を行った。また,S-1 の経口投与を61 mg/m2日の用量で2 週間連日経口投与1 週間休薬を1 コースとして,放射線と同時併用で2 コース施行した。なお,放射線治療終了後もS-1 の単独投与を同じ投与法で1 年間継続した。症例2 は51 歳,男性。同側頸部リンパ節転移(88×44 mm 大の腫瘤形成)を伴う左側舌癌の症例(T4bN2cM0)である。症例1 と同様の方法で化学放射線療法(1.8 Gy/日,週5日,計63 Gy,S-1 53 mg/m2/日)を行った。症例1 と2の巨大な転移リンパ節は,照射終了3 および6 か月後までにそれぞれ消失し,CR と判断された。この治療法は,口腔癌の原発巣のみならず所属転移リンパ節に対しても症例によっては有効であると思われる。
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癌と化学療法 35巻10号, 1737-1739 (2008);
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症例は63 歳,男性。食道癌(LtAe,2 型,cT3,cN2,cM0,cStageIII)に対して,2001 年12 月左開胸開腹下部食道切除胃全摘術を施行。2002 年4 月傍大動脈リンパ節転移を認め,化学放射線療法(CRT)を施行しCR が得られた。2003 年1 月転移性肝腫瘍(S4)を認め,2 月より全身化学療法(5-FU,ADR,CDDP: FAP)を2 コース施行したがPD となり,6月より肝動注療法を開始した。FAP 肝動注療法を2 週間隔で施行し,2004 年2 月CR が得られた。ADR が極量に達した2004年12月以降は,5-FU,CDDP(FP)肝動注療法を4 週間隔で2006 年1 月まで施行。術後5 年9か月経過した2007年9 月リンパ節・肝転移ともにCR を維持している。食道癌再発は多臓器に同時性・多発性に起こることが多く,全身療法が治療の主体と考えられる。しかし,本症例のように異なる時期に単独臓器再発を繰り返す症例では,局所療法を主体とした集学的治療により少ない副作用で長期CR が得られる可能性が示唆された。今後,症例の蓄積と検討が必要と思われる。
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癌と化学療法 35巻10号, 1741-1744 (2008);
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症例は63 歳,男性。嚥下時の違和感が出現し,2005 年2 月16 日当科外来を受診。胸部中下部食道を占める亜全周性2 型の腫瘍性病変を認め,腫瘍は気管分岐部から食道胃接合部までの範囲に相当する下行大動脈へ直接浸潤していた。両側頸部から縦隔全域を経て,腎動脈の高さの腹部大動脈周囲に至る広範なリンパ節腫大と両側胸水を認めた。食道病変より小細胞型未分化癌が検出され,T4N4M1,StageIVb の食道癌と診断。肺小細胞癌の治療に準じて,irinotecan(CPT-11)/cisplatin(CDDP)による化学療法を開始した。化学療法開始5 日後にgrade 4 の白血球減少と急激に発症したgrade 4 の血性下痢を認め,輸血や止痢剤投与などの集中治療を行ったが,化学療法開始7 日後に敗血症による多臓器不全にて死亡した。病理解剖の結果,十二指腸から直腸に至る広範囲の腸管粘膜壊死を認めた。CPT-11 投与を契機に急激な下痢・下血を来し死亡した食道小細胞型未分化癌について報告する。
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癌と化学療法 35巻10号, 1745-1748 (2008);
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症例は62 歳,女性。上腹部不快感あり,上部消化管の精査にてスキルス胃癌と診断された。CTにてNo. 16b2 のリンパ節腫脹(M1),骨盤内に少量の腹水を認めた。術前経膣的に採取した腹水の細胞診が陽性(CY1)であり,臨床診断 T4(panc),N1H0P0CY1M1(LYM),cStageIVにてpaclitaxel/5-fluorouracil(5-FU)併用化学療法(FT 療法,day 1〜5に5-FU 600 mg/m2/24 h の持続静注を施行後,day 8,15,22 にpaclitaxel 80 mg/m2を1 時間で点滴静注)によるneoadjuvant chemotherapy を3 コース施行した。画像上PR が得られたため胃全摘,D2郭清術を施行した。術中CY0 であり,化学療法の効果判定はGrade 2 を得た。術後18 か月が経過した現在,患者はS-1 とCDDP の少量腹腔内投与継続により再燃傾向なく生存中である。癌性腹膜炎を伴う胃癌症例に対してFT 療法を施行することにより手術可能となる症例もあり,延命効果も期待され有用な治療法と考えられた。
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癌と化学療法 35巻10号, 1749-1751 (2008);
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症例は76 歳,男性。黒色便を主訴に前医受診し,上部消化管内視鏡検査で胃粘膜下腫瘍,出血性胃潰瘍の診断で凝固止血後,当科紹介入院となった。上部消化管内視鏡検査で胃噴門部前壁に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認めた。腹部造影CT で胃大弯側に径13×10 cm 大の内部不均一な腫瘍を認めた。FDG-PET で胃大弯側腫瘍部と骨盤内に3 か所の異常集積を認めた。gastrointestinal stromal tumor,腹膜播種の診断でimatinib mesylate 300 mg/日の投与を開始した。投与3 か月目にgrade 2 の剥脱性皮膚炎を認め,ステロイド外用と200 mg/日への減量で改善し,5 か月間継続投与した。腫瘍の縮小とFDG-PET での異常集積の消失を認め,胃部分切除および腹腔内結節サンプリングを施行した。imatinib mesylateの低用量投与で腫瘍の縮小および異常集積の消失を認め,縮小手術を施行し得た。
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癌と化学療法 35巻10号, 1753-1756 (2008);
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十二指腸穿孔で発症した原発性十二指腸癌に対しCPT-11,CDDP,DOC併用化学療法が奏効した症例を経験した。症例は54 歳,男性。激しい腹痛のため当院を受診。腹部CT 上free air を認め,消化管穿孔の診断にて緊急手術を施行。膵頭部周囲のリンパ節が腫大して一塊となり悪性疾患を疑うも原発が不明であったため,穿孔部に大網充填被覆術のみ施行した。術後上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部前壁中心に広い潰瘍性病変を認め,生検結果は中分化型腺癌であった。腹部CT では大動脈周囲リンパ節転移が高度に認められたため,膵頭十二指腸切除を行っても長期生存を得られる可能性が低いと判断し3 剤併用化学療法を行った。2 コース後内視鏡にて原発巣消失が確認でき,3コース後リンパ節の縮小は著しく,一部消失していた。術後2 年現在もPR を維持しており通院加療中である。
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癌と化学療法 35巻10号, 1757-1760 (2008);
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症例は58 歳,男性。2003 年8 月上腹部痛を主訴に近医を受診し,上部消化管穿孔および巨大肝腫瘍を指摘され,当センターを紹介され受診した。十二指腸潰瘍穿孔および門脈腫瘍栓(Vp4)を伴う巨大肝細胞癌と診断し,十二指腸穿孔部閉鎖の後,再入院し手術を施行した。巨大多発肝細胞癌に対し,拡大右葉切除および外側区域の腫瘍にエタノール注入療法を施行した。さらに,インターフェロン(IFN)-α併用(5-FU肝動注)化学療法(fluorouracil arterial infusion and interferon therapy: FAIT)を施行し,以後,腫瘍マーカーの上昇は認めず,また腹部CT 検査で明らかな再発の所見は認められなかった。術後4 年6か月の現在,無再発生存中である。巨大肝細胞癌は脈管浸潤や肝内再発を来しやすく根治的切除後も予後不良とされるが,術後FAITにより再発を抑制し得る可能性が示唆された。
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癌と化学療法 35巻10号, 1761-1763 (2008);
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症例は59 歳の女性。2007 年3 月6 日,Ra 直腸癌に対し低位前方切除術を施行(pT3(ss)N2M0,Stage IIIb)。5月に多発性肝転移を認めた(H2)。肺転移,リンパ節転移は認めなかった。FOLFOX4+bevacizumab 5クール投与後,本人・家族の同意の下,9月20 日,肝左葉切除+S7部分切除を施行。合併症のない安全な術後経過であった。
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癌と化学療法 35巻10号, 1765-1768 (2008);
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症例は57 歳,男性。主訴は排便時出血および体重減少。2005 年夏ごろより排便時出血が出現し,1 年間で7 kg の体重減少があったため,2006 年5 月に当科初診となった。肛門縁より約5 cm の直腸に腫瘤を触知した。腹部CT にて骨盤内を占拠する巨大な腫瘍を認め,傍大動脈リンパ節も腫大していた。腫瘍マーカーはCEA 14.0 ng/mL であった。6月に手術を施行。腫瘍は仙骨前面に強固に固定されており切除不能と判断し,下行結腸双孔式人工肛門造設術を行った。術後よりFOLFOX4 による化学療法を開始したところ,3 コース終了後に腫瘍マーカーは正常化し,5 コース終了後の腹部CTでは腫瘍は著明に縮小した。切除可能と判断し,11 月に直腸切断術を施行。術後放射線治療を施行し,現在S-1 内服加療中である。本療法は,原発巣が切除不能な直腸癌に対する術前化学療法として有効である可能性があると考えられた。
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癌と化学療法 35巻10号, 1769-1774 (2008);
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目的:今回われわれは,進行あるいは転移性大腸癌に対するfluorouracil(FU)/ Leucovorin(LV)+oxaliplatin(FOLFOX)とFU/LV+irinotecan(FOLFIRI)の有効性と副作用を検討した。方法:進行あるいは転移性大腸癌11 症例にFOLFOX4,mFOLFOX6,FOLFIRI が施行された。first-lineとして,FOLFOX4,mFOLFOX6がそれぞれ4 例,7 例であった。5 例がsecond-line としてFOLFIRI を受けた。結果: FOLFOX4,mFOLFOX6 のfirst-line としての奏効率は,それぞれ0%(0例/4),71%(5 例/7)であった。second-line としてのFOLFIRI の奏効率は40%(2 例/5)であった。first-line のmFOLFOX6,FOLFOX4 またはsecond-lineのFOLFIRIにおいてCR,PR またはSDを示した8 例の生存期間は7〜27 か月であった。CR,PR またはSD を示さなかった3例の生存期間は4〜8 か月であり,前者の生存期間は後者の生存期間よりも有意に長かった(p=0.0023)。副作用は,FOLFOX4にて神経毒性,好中球減少,血小板減少,全身倦怠感,mFOLFOX6にて神経毒性,好中球減少,血小板減少,下痢,アナフィラキシー,second-lineのFOLFIRIにて好中球減少,血小板減少,口内炎,全身倦怠感がみられた。結語:進行あるいは転移性大腸癌症例に対し,first-line としてFOLFOX4 またはmFOLFOX6,second-lineとしてFOLFIRIを投与するレジメは,有効かつ比較的安全な治療であると思われた。
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癌と化学療法 35巻10号, 1775-1777 (2008);
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症例は75 歳,女性。S状結腸癌の多発肝転移に対しS 状結腸切除後にUFT(300 mg /day)+経口Leucovorin(75 mg/day)を開始した。開始4 か月後のCT で肝転移の縮小を認め,10 か月後には肝転移巣の消失が確認された。その後も2 か月間UFT+経口Leucovorinを継続し,開始より12 か月でUFT(300 mg/day)のみの内服治療を1 年間続行した。現在,肝転移消失後26 か月経過するが腹腔内も含め再発所見なく良好に経過している。本症例は高齢者であっても,副作用を認めず良好なQOL が保たれ,2 年間の化学療法が維持できた。UFT+経口Leucovorin療法は,内服化学療法剤として良好な治療効果が期待できることが示唆された。
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癌と化学療法 35巻10号, 1779-1782 (2008);
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症例1: 60 歳台,男性。肝門部胆管癌の診断にて2002 年7 月に肝拡大右葉切除術を施行(fCur B)。2005 年3 月癌性胸膜炎と診断され,GEM 単独による化学療法を施行。治療効果はPR であったが,2006 年5 月に転移巣の増悪を認めたため,S-1+GEM,CDDP+GEMによる化学療法を施行。治療効果はSDであったが全身状態が悪化したため,現在は緩和医療にて経過観察中である。症例2: 60 歳台,女性。進行胆嚢癌(stage IVb)と診断され,S-1+GEM,CDDP+GEMによる化学療法を施行しdown stagingが得られたため,2006 年7 月に肝拡大右葉切除術を施行(fCur C)。病理所見では,主病変に癌細胞は認められず線維組織に置換されていた。2 例とも外来通院で化学療法が施行可能であり,良好な抗腫瘍効果を確認できた。胆道癌に対する化学療法は,いまだ大規模試験によるエビデンスに基づいた標準治療が確立されていないが,今後はGEM,S-1などの新規抗癌剤が主流となり,新たな展開を迎えていくと思われる。
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癌と化学療法 35巻10号, 1783-1786 (2008);
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肺癌の増加とともに骨転移によるquality of life(QOL)の低下が問題となっている一方,化学療法や分子標的治療の進歩により長期生存例も増えている。従来の放射線療法に加え,新しい骨転移抑制剤や積極的な骨転移に対する手術を総動員した集学的治療が必要な時代となってきた。今回,右大腿骨頸部病的骨折で発症した肺腺癌患者は,骨転移手術・骨転移放射線療法,化学療法,脳転移γナイフ照射,zoledronic acidとgefitinib投与によりQOLの向上が得られたので報告した。
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癌と化学療法 35巻10号, 1787-1789 (2008);
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患者は51 歳,女性。2000年12 月に右乳癌にて胸筋温存乳房切除術を施行。2003年12 月に多発性肺転移,癌性胸膜炎にて再発。再発病巣が肺多発転移ではあるが,life-threateningではないことから治療はホルモン剤治療を選択し,アロマターゼ阻害剤であるanastrozole の単独療法を行った。anastrozole 療法開始後5 か月にて肺転移巣の部分効果と胸水の消失を認め,1 年2 か月後にはCR となった。なお,本療法における副作用はなかった。ホルモンレセプター陽性の閉経後再発乳癌に対するanastrozole療法は,極めて有用な治療選択肢と思われる。
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癌と化学療法 35巻10号, 1791-1794 (2008);
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ホルモン受容体,HER2 は乳癌の予後因子として認識されているが,化学療法の効果予測因子とも考えられている。われわれは,ホルモン受容体とHER2 の発現状況が異なる両側T4乳癌症例を経験したので報告する。症例は67 歳,女性。両側乳癌で進行度は両側ともT4bN2aM0,Stage IIIb であった。右乳癌はホルモン受容体陰性・HER2 陽性,左乳癌はホルモン受容体陽性・HER2 陰性であった。primary chemotherapy として,5-FU+epirubicin+cyclophosphamide(FEC)療法,次いでweekly paclitaxel療法,そしてdocetaxel療法を施行した。右乳癌は,局所は臨床的完全寛解となったが,脳転移が出現したため脳腫瘍摘出術,全脳照射を施行した。左乳癌は部分寛解で,胸筋温存乳房切除腋窩郭清を施行した。現在無再発生存中である。
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癌と化学療法 35巻10号, 1795-1798 (2008);
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固形腫瘍(婦人科悪性腫瘍)治療後に治療関連骨髄異形成症候群(therapy- related myelodysplastic syndrome: T-MDS)が先行して,治療関連白血病(therapy- related leukemia: TRL)を発症した症例を2 例経験した。症例1 は70 歳,女性。卵巣癌stage IIIc 期で術前化学療法としてpaclitaxel(PTX),carboplatin(CBDCA)(TC 療法)を施行。その後手術を施行し術後化学療法を継続した。2003 年7 月より遷延性汎血球減少を認め,T-MDSと診断された。3 か月後にはTRL(M6)への移行を認め,翌11 月免疫不全のため死亡した。症例2 は58 歳,女性。癌性腹膜炎にて術前化学療法としてTC 療法を2 コース施行。その後手術を施行し卵巣癌stage IIIc 期の診断を得,術後化学療法を追加した。2002 年6 月以降,再燃と寛解を繰り返し,化学療法を断続的に施行していた。2007 年1 月より遷延性汎血球減少を認めT-MDSと診断した。その後TRL(M4)への移行を認め免疫不全のため死亡した。
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癌と化学療法 35巻10号, 1799-1801 (2008);
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interleukin-6(IL-6)は炎症性サイトカインであり,様々な疾患において高値になることが確認されているが,腫瘍によるIL-6 の産生も報告されている。今回われわれは,IL-6 異常高値を伴った原発不明縦隔腫瘍が腫瘍増大に伴い上大静脈症候群を呈した症例を経験し,腫瘍に対し放射線照射を施行したところ腫瘍サイズの縮小,症状の改善,IL-6 の低下を認めたため報告する。
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癌と化学療法 35巻10号, 1803-1805 (2008);
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症例は65 歳,男性。2003 年よりメラノーマstage IIB と診断され,当院皮膚科にて化学療法を施行されてきたが肝転移の制御が困難となり,当科へ紹介された。2006 年よりCDDP を用いた肝動注化学療法を開始したが,2007 年5 月全身倦怠感および貧血,血小板減少のため緊急入院となった。造影CT で肝転移は増大していた。造影超音波では腫瘍辺縁部に結節状の造影所見を認めた。以上より腫瘍内出血によるDIC と診断した。出血の原因と考えられる病変は多血性であったため,肝転移に対する治療としてDSM 併用CDDP 動注化学療法を施行した。同治療によりDIC が改善した。メラノーマ肝転移は,経過中に腫瘍内出血を来しDIC を発症する可能性があり注意を要する。また,メラノーマ肝転移に対してDSM併用動注化学療法が有効である可能性が示唆された。
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Journal Club
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癌と化学療法 35巻10号, 1708-1708 (2008);
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癌と化学療法 35巻10号, 1736-1736 (2008);
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癌と化学療法 35巻10号, 1740-1740 (2008);
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用語解説
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癌と化学療法 35巻10号, 1752-1752 (2008);
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