Volume 35,
Issue 13,
2008
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総説
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癌と化学療法 35巻13号, 2293-2300 (2008);
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1980 年代のヒトがん遺伝子の発見以来,がん化の原因分子を標的とした抗がん剤の研究開発が活発に進められてきた。過去10年間,その成果として,trastuzumab,imatinibといった画期的な分子標的治療薬が登場し,現在,抗がん剤市場において,これらの分子標的薬剤ファミリーは,従来のDNA作用薬,チューブリン作用薬,代謝拮抗剤などのクラシカルな化学療法剤ファミリーを凌ぐまでに成長した。また2003 年のヒトゲノムの完全解読を集大成とするゲノム科学の研究手法や研究成果は,抗がん剤の創薬システムを大きく変えつつある。今やがん医療は,がんの個性や個人の体質を治療に反映させる個の医療の時代に突入しており,バイオマーカーの活用が重要課題となっている。さらに医薬品開発の成功確率を高めるために,proof of concept(POC)という考えの下,標的に対する薬剤の作用を臨床試験の早期段階で検証することの重要性が強く指摘されている。本稿では劇的な展開をみせる抗がん剤創薬の現況を概説し,将来を展望する。
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特集
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オンコロジーエマージェンシーへの対応
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癌と化学療法 35巻13号, 2301-2306 (2008);
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転移性脳腫瘍・脊椎転移による脊髄圧迫(脊髄硬膜外腫瘍)・脊髄髄内転移は癌患者の予後に影響を与え,神経症状出現によるQOL の低下を招く。神経症状は急速に進行することが多く,迅速な診断と治療が必要である。直径が3 cm以上の単発の転移性脳腫瘍や神経症状の進行している症例に対しては,手術+全脳照射が標準治療として行われる。直径が3cm 以下で3.4個までの腫瘍に対しては,ガンマナイフなどの定位放射線照射単独による治療が広く行われているが,これまでの臨床研究から定位放射線照射+全脳照射が標準治療になり得ると考えられる。5 個以上の多発性脳腫瘍に対しては全脳照射が行われる。脊椎転移による脊髄圧迫や脊髄髄内腫瘍に対しては,局所放射線治療が標準治療であるが,手術+放射線治療の有効性も報告されている。転移性脳腫瘍・脊椎腫瘍の治療に当たっては内科・外科・放射線科・脳神経外科・整形外科などが緊密な連携を行い,EBMに基づいた治療法を選択する必要がある。
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癌と化学療法 35巻13号, 2307-2310 (2008);
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心臓大血管系におけるオンコロジー・エマージェンシーとして心タンポナーデと上大静脈症候群がある。病態の緊急性,重症度,原疾患の進行度,全身状態などから,症例に応じて対応を検討すべきである。心タンポナーデに対する緊急対応の第一選択は心嚢穿刺・ドレナージであり,超音波検査で診断後,速やかに施行し,心機能の改善を図ることが重要である。心嚢液再貯留を回避するためには,心膜開窓術や心嚢内への薬剤注入といった付加的治療が行われる。上大静脈症候群に対しては造影CT 検査を行い,治療方針を決定する。原疾患に対する治療として,血行再建術を伴う外科的切除,化学療法,放射線療法があるが,安全かつ迅速に症状を改善する有用な手技としてステント留置がある。
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癌と化学療法 35巻13号, 2311-2315 (2008);
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悪性腫瘍をもつ患者の重症度は,緊急の診断と治療を必要とするような合併症がどの程度あるかによる。癌患者の合併症は特に複雑である。緊急事態の重症度も個人によって変化するので,適切な治療も患者の臨床状態に基づき決定されるべきである。たとえば,末期癌患者での過剰な救急治療は必ずしも適切ではないかもしれない。呼吸気道系の悪性腫瘍による緊急事態は非常にまれである。しかし,ひとたびそのような状態に陥れば患者には専門的治療が必要となる。したがって,われわれは日常診療の時点から,それを想定してトレーニングを行うべきである。本稿では,呼吸気道系の代表的な救急疾患,たとえば気道閉塞,大量喀血,気胸,血気胸などについて,その診断と治療を概説した。
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癌と化学療法 35巻13号, 2316-2320 (2008);
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一般的に癌の進行はそれほど急速ではないが,その発生部位や進行の程度により緊急対応を必要とするoncologic emergencyといわれる病態が存在する。腹部領域のoncologic emergencyには,出血,閉塞,穿孔などがある。消化管出血の場合,治療の第一選択は内視鏡的止血術である。肝細胞癌破裂に伴う腹腔内出血は,出血源の検索と肝細胞癌の治療を兼ねた血管塞栓術が第一選択となる。切除不能進行癌による上部消化管閉塞に対しては,その予後と治療効果を十分に検討した上で治療法を選択する。癌による下部消化管閉塞には,まず腸管の減圧を図ることが重要である。胆道閉塞に伴い急性閉塞性化膿性胆管炎を発症した場合,治療と診断を併せて行える緊急内視鏡的逆行性胆道造影・ドレナージが有用である。下部消化管穿孔の際は,敗血症性ショックの病態に注意しながら,救命を優先した緊急手術が行われなければならない。近年の診断・治療の進歩に伴い,腹部領域におけるoncologic emergency はそれほど多くはなくなった。しかし,oncologic emergency は対応が遅れると死亡につながる重篤な病態であるため,確実な診断と全身管理を行い,適切な治療方針を決定することが重要である。
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癌と化学療法 35巻13号, 2321-2325 (2008);
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泌尿器系におけるoncology emergencyについて,すぐに対処すべき不快な症状と生命にかかわる病態変化を取りあげた。前者はがん性疼痛と排尿障害であり,疼痛は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在している場合が多く,非ステロイド系消炎鎮痛剤・μ2 受容体選択性のあるオピオイドならびに鎮痛補助薬の組み合わせで対処する。排尿障害は,最終的に尿道留置カテーテル挿入が必要かつ最大の問題解決になる場合が多い。生命にかかわる病態としては,尿路出血と閉塞性腎症を取りあげたが,出血はまず尿道留置カテーテルを挿入し,膀胱内を凝血塊が占拠しないようにしながら止血の工夫を考慮する。放射線治療後出血性膀胱炎に対しては高圧酸素療法が有効だが,その設備は一般的でないため,内腸骨動脈塞栓術が適応になる場合がある。閉塞性腎症は,尿を体外にだす工夫(経尿道的尿管ステント,経皮的腎瘻)で腎機能改善が図られるが,QOL向上は望めないので,予後や全身状態に応じた治療法選択が重要となる。
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癌と化学療法 35巻13号, 2326-2329 (2008);
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がん医療においてよくみられ,対処が必要な精神障害にはせん妄,大うつ病がある。これらの状態に陥ると,時には安全に医療行為を行うことができなかったり,時に意思決定に重要な障害をもたらしたり,入院期間の延長に関連したり,さらには自殺など重大な問題を来すことが知られている。一方でこれらの精神障害は臨床の場で気づかれることが少なく,また気づかれたとしても対処されていないことも多いとされている。また,精神障害は気づかれぬまま重篤な状況になっていることもあり得る。がんにおける精神障害は,心理・社会的,生物学的など多面的な要素をもっており,状況,病態に応じた治療が必要である。さらに,がん自体が自殺のリスクを上げるとされる。これらの状況においては精神科医へのコンサルテーションはためらうべきではなく,十分な協力体制が必要である。精神科的な問題に対する関心を高め,スクリーニングなどを含め,精神科医療とのネットワークを充実させていくことが重要である。
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癌と化学療法 35巻13号, 2330-2333 (2008);
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腫瘍に随伴する電解質異常のなかで高頻度にみられ,治療の緊急性が高いものとして高Ca 血症と低Na 血症があげられる。特に高Ca血症は固形腫瘍の約10%程度で認められる。高Ca血症は肺がん,乳がん,頭頸部がん,腎がんなどで多い。また,悪性リンパ腫や多発性骨髄腫などの血液腫瘍でも比較的多く認められる。腫瘍に随伴する高Ca 血症は骨転移,腫瘍からのparathyroid hormone-related protein(PTH-rP)産生などに起因する他,calcitriol の産生によっても誘導される。高Ca 血症は時に致死的であり,注意を要する。低Na 血症は腫瘍から産生されるバゾプレッシンや治療に用いられる抗がん剤などの薬剤によるsyndrome of inappropriate antidiuresis(SIADH)として経験されることもある。これらは,いずれも特異的な症状に乏しく気づかれにくいが,治療の遅延から時に重篤な状況に陥ることもあり,緊急な対応が必要となる。治療としては高Ca 血症の場合,脱水の補正とビスフォスフォネート製剤の使用が必要である。ビスフォスフォネート製剤としては現在のところ,ゾレドロン酸の効果が最も優れている。低Na 血症の治療の基本は水制限である。緊急時は高張食塩水の輸液とループ利尿剤を使用する。これらに反応がない時はデメクロサイクリンの投与,バゾプレッシン産生腫瘍の場合はモザバプタン塩酸塩の投与を検討する。低Na 血症の不適切に早い補正は中枢神経系の障害である橋中央髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis: CPM)を引き起こすので注意が必要である。
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癌と化学療法 35巻13号, 2334-2337 (2008);
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腫瘍崩壊症候群(TLS)は,増殖速度が速い腫瘍や抗がん剤治療の効果の高い時に生じる一連の多臓器不全に陥る症候群で,危険因子からリスクの高い患者であるかどうかを認識して予防することが重要である。また,検査結果から疑って早めに対応することが重要で,最近の分子標的薬剤や抗体医薬の登場により従来生じていなかった疾患でも起こることが報告されている。最近ASCOガイドラインにも追加されており,日本との違いについても議論する。
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原著
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癌と化学療法 35巻13号, 2357-2361 (2008);
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stageIV膵癌に対するgemcitabine hydrochloride(GEM)の治療成績の検討と,stage IVb 症例の予後規定因子を解析する目的で,新潟県内15 施設に対してレトロスペクティブなアンケート調査を行った。対象はGEM をfirst-line としたstageIV膵癌症例244例(IVa 68 例,IVb 176例)で,奏効率は6.1%,MSTは194 日であった。stageIVa のMSTは312日で,stageIVbの167日のほぼ倍であった。またstageIVb の予後規定因子を解析すると,奏効率,PS以外に肝転移が有意な予後規定因子であった。GEM と他の化学療法の効果を比較する場合,stageIVa とstageIVb は別個に扱うべきであり,さらにstageIVbにも細分化が必要と思われた。
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癌と化学療法 35巻13号, 2363-2366 (2008);
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対象: 2003 年8 月〜2008 年1 月までの初発乳癌症例のうち,補助化学療法が必要と判断された35 例を対象とした。方法: ER,PgR,HER2の発現状況からluminal AおよびB 群,HER2 群,basal-like 群に分類した。FEC75療法後にdocetaxelを術前に逐次投与したが,2006 年以降trastuzumab 含有レジメンが採用された。結果:男性1例,女性34 例,平均年齢は56.0 歳であった。65.7%が術前に腋窩リンパ節転移を認めた。luminal A 群13 例,B 群4 例,HER2 群13 例,basal-like群5 例であった。CR 25.7%,PR 62.9%であり奏効率は88.6%であった。病理学的効果判定では,Grade 3 が14.3%,2 が48.6%であった。basal-like群,HER2 群でcCR 率,pCR 率がluminalA,B 群に比較し高かった。trastuzumab併用効果では,HER2 群,luminal B 群いずれも現時点では同剤の併用効果は認めなかった。考察:簡便な分類法であるが術前化学療法の効果を推測できる手段と思われた。
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癌と化学療法 35巻13号, 2367-2371 (2008);
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gefitinib(IressaR)は東洋人,女性,腺癌,非喫煙者の特徴をもつ進行非小細胞肺癌患者に奏効を示すことが多い。喫煙者でも奏効を示すが,喫煙歴と治療効果に関する報告は少ない。そこでわれわれは,喫煙因子を含めた患者背景と治療効果の関連性を中心に検討した。2002 年7 月〜2006 年9 月までに非小細胞肺癌と診断されgefitinib を投与した80 例を対象に後ろ向きに検討した。奏効率は喫煙者対非喫煙者で16.2%対39.6%(p=0.031)で,また非喫煙者で生存が有意に良好であった。喫煙者を喫煙指数,禁煙年数ごとに検討すると,喫煙指数の少ない症例,禁煙年数の長い症例に奏効例が多い傾向があった。以上より,gefitinibの投与やEGFR遺伝子変異検査施行の判断には,喫煙歴の有無にとどまらず,喫煙指数や禁煙年数が参考となると考えられた。
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癌と化学療法 35巻13号, 2373-2376 (2008);
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刈谷豊田総合病院では,Cascinu らの報告を参考にし,oxaliplatin(L-OHP)による神経障害の軽減を目的としてFOLFOX 療法施行患者に対してglutathione を使用してきた。今回,われわれは当院でFOLFOX 療法を施行した患者(44名)における神経障害の発現状況を調査した。また,calcium,magnesium(Ca/Mg)を使用したGamelinらの報告の文献値と比較することにより,glutathione の有用性を検討した。調査の結果,grade 3 の神経障害が発現した患者は44 例中5 例(11.4%)のみであった。さらに,grade 3 の神経障害が発現した時のコース数・蓄積投与量の中央値は,12(5〜27)コース・802.2(273.2〜1,952.4)mg/m2であった。また,L-OHP の蓄積投与量が〜500-520 mg/m2での神経障害の発現状況をGamelin らの文献値と比較した結果,glutathione を使用した場合,Ca/Mg 投与群と有意差は認められなかったが,Ca/Mg非投与群(神経障害対策なし)と比べ有意に神経障害のgrade が低かった。glutathione の投与は,L-OHP による神経障害の予防対策の一つとして有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 35巻13号, 2377-2381 (2008);
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大腸癌に対するFOLFOX 療法のkey drugであるoxaliplatin(L-OHP)による末梢神経障害の発現は個々の薬理学的多様性が強く関与している。そこで末梢神経障害とGSTP1(342G>A),ABCC2(1249G>A)の遺伝子多型(SNP)との相関について検討した。FOLFOX 投与症例の平均投与回数は8.6 回でfirst-line が36 例,second-line 32 例,third-line 以降9 例であり,それぞれの50%生存期間は801,360,328 日。first-lineで投与された症例がsecond-,third-lineと比べて有意に生存期間(OS)が延長していた(p=0.01)。奏効率は24.2%,病巣制御率は74.2%であった。副作用として,急性期神経症状74.3%,慢性の神経症状67.1%,アレルギー反応26.3%,血液毒性68.4%,消化器症状は30.3%に発現した。治療を変更した理由としてはPD 41.6%,副作用増悪51.4%であり,後者のうち45.9%は神経障害増悪によるものであった。L-OHPの薬剤代謝酵素であるGSTP1 がwild type で53.3%,hetero type で41.7%の治療完遂率であった。投与回数とGSTP1 SNP との相関はp=0.57,ABCC2とはp=0.11 であった。FOLFOX療法はfirst-lineでの治療効果が高く,また神経毒性により治療中止となった症例は生存期間の延長を認めていた。治療継続のために副作用の出現をコントロールしながら治療を継続させることが重要であり,ABCC2蛋白のSNP 解析は治療継続の指標となる可能性がある。
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癌と化学療法 35巻13号, 2383-2387 (2008);
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がん化学療法患者における真菌血流感染症を適切に診断することは重要である。われわれは2002 年9 月〜2006 年3 月の期間に,静岡がんセンターにおいて発症した真菌血流感染症の詳細をまとめた。血液培養によって59 株の真菌が検出された。血液培養から検出された分離菌種としてはCandida albicansが39.0%と最多であり,次いでC. glabrata 22.0%,C.parapsilosis 20.3%,C. tropicalis 13.6%の順であった。59 株中,感受性検査の結果が得られた真菌は32 株において,fluconazoleに対する耐性株は7 株,itraconazole の耐性株は8 株認められた。研究期間中,アゾール系薬剤とポリエン系薬剤のMIC 値は大きく変化しなかったのに対して,ファンギン系の感受性の低下傾向が認められた。抗真菌剤の感受性の継続的モニタリングと標準的評価法の確立が必要と考えられた。
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症例
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癌と化学療法 35巻13号, 2389-2391 (2008);
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右鼻腔原発腺癌の両側頸部リンパ節転移症例(T3N2cM0: Stage IVA)において,化学放射線療法による一次治療後の残存病変に対してS-1 単独による外来化学療法を施行し,QOL を低下させることなく投与開始後2 年5 か月にわたりpartialresponse(PR)が維持できているtumor dormancy therapy(TDT)成功例について報告する。症例は65 歳の女性。化学放射線療法による一次治療後に鼻腔および頸部リンパ節は縮小するも残存(PR)したため,TDT目的にS-1(80 mg/日)による化学療法を開始した。投与開始から2 年5 か月が経過した現在,2 週投薬2 週休薬にてPR を維持したまま継続加療中である。有害事象は重篤なものは認めず,grade 1 の白血球およびヘモグロビン減少のみである。今後もさらに長期の経過観察が必要で,また頭頸部腺癌についてさらに症例蓄積が必要であるが,S-1 は進行頭頸部腺癌に対してQOL を損なうことなくTDT に適した薬剤であると考えられた。
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癌と化学療法 35巻13号, 2393-2395 (2008);
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今回,われわれは化学療法と放射線療法を異時性に行い,7 年4 か月無再発生存中のStageIVb,食道癌症例を経験した。症例は63 歳,女性。気管への直接浸潤,甲状腺転移にてStageIVb と診断し,low-dose FP 療法(5-FU 500 mg/day/body,day 1〜7,CDDP 10 mg/day/body day 1〜5,6 週間投薬,5-FU のみ中2 週休薬),その後,UFT+CDDP(UFT 400mg/day,CDDP 10 mg/day)を施行した。治療開始から4 年8か月後,縦隔リンパ節腫大を認め,放射線療法(total 60 Gy)を施行した。現在,放射線療法後よりUFT内服を継続し再発を認めていない。
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癌と化学療法 35巻13号, 2397-2400 (2008);
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症例は31 歳,女性。肝転移と著明なリンパ節転移を伴った切除不能胃癌に対して,S-1/CDDP 併用療法を行いPR を得たが,その後,肺の癌性リンパ管症を併発したため,second-lineの化学療法としてdocetaxel/CDDP/S-1(DCS)併用療法を施行した。DCS併用療法1 コース施行後,癌性リンパ管症は改善し,約2 か月間再燃することはなかった。S-1/CDDP併用療法中に併発した肺の癌性リンパ管症にDCS 併用療法が有効であった症例であり報告する。
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癌と化学療法 35巻13号, 2401-2404 (2008);
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われわれは,従来なら治療不能とされる高度進行癌に対し,S-1 ベースの化学療法と外科的アプローチが奏効し長期生存が可能であった症例を経験した。症例は57歳,男性。主訴は食欲不振,嘔吐で入院時経口摂取不能であった。胃内視鏡にて胃体下部の全周性狭窄を認め3 型胃癌と診断され,腹部CT にて多発性肝転移,大動脈周囲リンパ節転移と診断された。初回手術時は膵浸潤により切除不能であり,バイパス術を行うことで,経口摂取可能となった。S-1/CDDP 療法5 コース行い,肝転移の消失,大動脈周囲リンパ節転移の縮小,膵浸潤の軽減などdownstagingが得られ,減量手術として幽門側胃切除術が可能となった。切除術後S-1 療法にて経過良好であったが,16か月後CT 検査にて大動脈リンパ節再発が認められ,S-1/PTX 療法を開始した。7 コース後大動脈周囲リンパ節の著明な縮小を認め,QOLも良好で治療継続中である。
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癌と化学療法 35巻13号, 2405-2407 (2008);
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症例は75 歳,男性。胃穹窿部に3 型胃癌を認め,浸潤により食道胃接合部は狭窄していた。多発肝転移,膵・脾臓浸潤のため切除不能進行胃癌と診断し,内視鏡的胃瘻造設後にS-1 の経胃瘻投与を開始した。腫瘍マーカーとしてCEA,CA19-9の上昇はなかったが,CYFRA21-1(シフラ)の上昇を認めた。シフラは原発巣,転移巣の縮小に伴って低下を示し,病状の進行に伴い画像所見に先行して鋭敏に再上昇した。本症例から,シフラは進行胃癌の有用な腫瘍マーカーとなる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 35巻13号, 2409-2412 (2008);
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胃癌の肝転移に関しては様々な治療法が試みられているが,効果の持続や再発に対していまだ問題点が残されている。polysaccharide K(PSK)の投与と化学療法を併用することで腫瘍の縮小効果を認めた症例の報告があり,また胃癌術後補助化学療法を対象とした臨床経験のメタアナリシスにより,化学療法単独よりもPSK を併用投与することで予後の改善効果があるとされている。しかしながら,その投与により病状が著しく改善する症例はまれである。今回われわれは胃癌の肝転移に対し,低用量のUFT およびPSK の投与を行い肝転移巣の縮小と腫瘍マーカーの改善を得た症例を経験した。症例は78 歳の男性,胃癌の同時性肝転移症例であった。胃切除およびmicrotase coagulation therapy(MCT)を行い術後補助化学療法としてUFT 300 mg/dayの投与を行っていたが,術後6 か月で肝転移巣の再発,肝新病変の出現を認めた。この治療としてPSK の追加投与のみを選択したところ,肝病巣は消失,腫瘍マーカーも正常化し,術後38 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 35巻13号, 2413-2416 (2008);
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症例は64 歳,男性。左季肋部痛を主訴に当院を受診し,精査にて膵体部に4 cm 大の腫瘍を認め,主要動脈,門脈系への浸潤を認める局所進行切除不能膵体部癌と診断された。gemcitabine(GEM)1.2 g/body/week による化学療法を開始したが,2 コース終了した時点で髄膜癌腫症を発症した。原発巣の制御は良好であったため全脳照射を施行した。その後,GEM 単独療法を継続し初診から2 年後に原発巣の増悪を認め放射線治療を施行した。さらにGEM 単独療法を継続するも初診から2 年6か月後に脊椎転移と診断された。GEM+S-1 併用療法により病状は制御可能となったが,最終的にはイレウスとなり初診から3 年6か月後に腹膜播種により死亡した。GEMは放射線治療中も減量し継続,総投与量は113.2 g であった。
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癌と化学療法 35巻13号, 2421-2423 (2008);
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症例は80 歳,女性。被爆者検診で2005 年12 月に胆嚢癌・多発肝転移と診断され当科を受診した。手術不能と判断されたが,主要臓器機能は保たれており,2006 年2月より投与量を減量してcisplatin,epirubicin,5-fluorouracil併用療法(CEF 療法)を開始した。2クール後にCR となり10 クール施行した。2007 年9 月に肺転移を認めPD となったため,11 月よりsecond-lineとしてGEM,2008 年2 月からthird-lineとしてS-1 に変更して化学療法を継続した。全経過でgrade 3 以上の有害事象は認めず,治療開始後25 か月を経過した現在も外来通院中である。CEF 療法は,切除不能胆嚢癌に対して有効であると考えられた。
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癌と化学療法 35巻13号, 2425-2428 (2008);
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虫垂杯細胞カルチノイド(goblet cell carcinoid of appendix)は,まれな組織型で,高齢で治癒切除不能例における適切な化学療法は確立されていない。症例は77 歳,女性。主訴は腹部膨満感。既往歴は62 歳で虫垂切除術。2006 年7 月より下腹部痛,10 月より腹部膨満感を自覚し,精査目的で近医より紹介された。入院,精査したところ,大腸内視鏡検査で虫垂開口部付近に約3 cm大の腫瘍が認められ,生検でadenocarcinoid(goblet cell tumor)と診断した。腹腔鏡検査では腹膜に多数の白色結節を認め,癌性腹膜炎と診断した。根治切除術不能と判断し,paclitaxel(PTX)70 mg/m2/weekの腹腔内投与を開始したところ,腹水の穿刺排液が即座に不要になった。しかし両側の間質性肺炎を合併したため,PTX による治療を中止,ステロイドパルス療法で軽快した。以後,S-1単独療法に変更し反復したところ,1 年間,遠隔転移や腹水の再増量を認めなかったが診断から13 か月目に腫瘍死した。PTX 腹腔内投与とS-1 全身投与がある程度有効であったが長期予後は厳しく,今後症例を集積し,さらなる治療法の開発が望まれる。
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癌と化学療法 35巻13号, 2429-2432 (2008);
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症例は62 歳,女性。便柱の狭小化,下血,下腹部痛を主訴に2006 年3 月に当院を受診し,S 状結腸癌による腸閉塞と診断された。肝表面に腹膜播種と腹水を認め,CEA が663.7 ng/mL と高値であった。4 月中旬に人工肛門を造設し,大網の結節の病理診断は中分化型腺癌であった。4 月下旬よりFOLFOX4 療法を開始,4 クール後の6 月の注腸造影で原発巣はPR となり,2007 年4 月まで16 クール施行しPR が持続したが,その後grade 3 の末梢神経障害を認めたため5 月よりsecond-line としてS-1 を開始した。4 クール後にPD となったため,third-line としてS-1+CPT-11 療法に変更した。全経過でgrade 3 以上の有害事象は末梢神経障害と白血球減少のみで,治療開始から24 か月後の現在も外来通院中である。FOLFOX4療法は,腹膜播種を伴う進行大腸癌に対して有効であると考えられた。
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癌と化学療法 35巻13号, 2433-2435 (2008);
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乳癌治療中に反回神経麻痺による嗄声が出現した乳癌術後9 年のtriple negative 乳癌の症例を経験した。FDG-PETを併用した画像診断により,頸部リンパ節再発が反回神経麻痺の原因であると考慮された。そこで,DMpC(doxifluridine,medroxyprogesterone acetate,cyclophosphamide)療法による治療を開始した結果,5 か月に再発巣の著明な縮小効果を認め,6 か月には嗄声は完全に消失した。治療に伴う副作用は認めず,9 か月の現在も再発なくDMpC 療法を継続している。triple negative 乳癌の再発に対する治療としてDMpC 療法は高い有効性が期待でき,副作用も少なく経口投与可能でQOLも損なわれず有望な治療選択肢であると思われる。
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癌と化学療法 35巻13号, 2437-2440 (2008);
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症例1: 71 歳,女性。胃部不快感にて当院を受診。上部内視鏡検査にて潰瘍性病変を認めた。Helicobacter pylori(H.pylori)が陽性であったために,除菌療法が行われた。生検の結果,DLBCL の診断が得られ,当科に紹介となった。除菌後の上部内視鏡にて病変は改善を示し,リンパ腫細胞を認めなかった。再発なく経過している。症例2: 49 歳,男性。検診の上部内視鏡にて異常を指摘され,当院紹介となった。他院にてMALTリンパ腫疑いと紹介されたために,H. pylori除菌が行われた。当院での上部内視鏡では慢性胃炎の所見のみで,リンパ腫細胞を認めなかった。除菌前の標本を再度検討したところ,リンパ腫細胞は大型でびまん性大細胞型リンパ腫の診断となった。再発なく経過している。限局期びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫に対する治療は化学放射線療法が一般的に施行されているが,今回われわれは,H. pylori除菌療法を施行し完全寛解となり,その後も再発なく経過良好な胃限局びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫の2例を経験したので報告する。
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Source:
癌と化学療法 35巻13号, 2441-2443 (2008);
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症例は54 歳,女性で全身痛,口渇を主訴に来院し,採血,骨髄穿刺にて原発性形質細胞性白血病と診断された。VAD療法を3 コース行いcomplete remission(CR)となった。その後,cyclophosphamide(4 g/m2)大量投与後,自家末梢血幹細胞を採取し,melphalan(200 mg/m2)大量療法を前処置に用いタンデム自家末梢血幹細胞移植を行った。移植は発熱,口内炎以外に大きな問題なく,2 コース終了し56 か月後も継続的なbisphosphonate 内服のみでCR を維持している。原発性形質細胞性白血病はまれな予後不良の造血器腫瘍であるが,タンデム移植のような強力な化学療法を行うことにより予後を改善できる可能性がある。
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Source:
癌と化学療法 35巻13号, 2445-2448 (2008);
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目的・背景: Oxaliplatin を含む化学療法施行後に転移巣切除などの手術を行った大腸癌患者に慢性神経障害の急性増悪が起き,そのメカニズムとして,赤血球中の白金化合物が溶血によって血漿中に移行する可能性が報告されている(Gornetら,2002年)が,この点に関する追試は行われていない。対象・方法: mFOLFOX6施行後に手術を施行した3 例の手術前後,末梢神経障害の変化と術前後の血中および赤血球中の白金濃度について検討した。結果: 3 例いずれも術後に末梢神経障害の増悪は認めなかった。またICP-MS(inductively coupled plasma mass spectrometry )法によって測定した血漿中,限外濾過液中,および赤血球中の白金濃度は,術直前と術後4,24,48 時間の間で差を認めなかった。結語:結論を得るには症例の集積が必要であるが,oxaliplatin 投与後の患者では手術後に白金のプールが変化することで,末梢神経障害が増悪する可能性は低いと考えられる。
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Journal Club
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Source:
癌と化学療法 35巻13号, 2388-2388 (2008);
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Source:
癌と化学療法 35巻13号, 2392-2392 (2008);
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Source:
癌と化学療法 35巻13号, 2396-2396 (2008);
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用語解説
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Source:
癌と化学療法 35巻13号, 2408-2408 (2008);
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