癌と化学療法
Volume 36, Issue 5, 2009
Volumes & issues:
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総説
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固形癌に対するウイルス療法
36巻5号(2009);View Description Hide Descriptionウイルスは本来ヒトの細胞に感染,増殖し,その細胞を様々な機序により破壊する。遺伝子工学技術によりこの増殖機能に選択性を付加することにより,ウイルスを癌細胞のみを傷害する治療用医薬品として用いることが可能となる。Telomelysin(OBP-301)は,かぜ症状の原因となるアデノウイルスを基本骨格とし,ウイルス増殖に必須のE1遺伝子をテロメラーゼ・プロモーターで制御するよう改変された国産のウイルス製剤である。また,Telomelysin にGreen Fluorescent Protein(GFP)蛍光遺伝子を搭載したTelomeScan(OBP-401)は,高感度蛍光検出装置により微小癌組織を可視化でき,診断用医薬品として応用可能である。本稿では,従来の癌治療とは異なる新たな戦略として開発されているこれらの新規ウイルス製剤の癌診断・治療への応用の可能性を概説する。
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特集
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- セカンドライン化学療法・分子標的治療の進歩
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肺癌に対する二次治療と分子標的治療
36巻5号(2009);View Description Hide Description近年,非小細胞肺癌に対する二次治療としてdocetaxel の有用性が明らかにされた。次いでpemetrexed が奏効率・全生存期間・無増悪生存期間いずれもdocetaxel と同等の効果を示す一方で,有害事象が明らかに少なかったことから,欧米では二次治療のレジメンの一つとして承認されている。またEGFR-TKIとdocetaxelやbest supportive care の比較試験の結果から,EGFR-TKI も非小細胞肺癌に対する二次治療の選択肢の一つである。ただ,EGFR-TKIはEGFR 遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対して特異的に非常に高い効果を示すことが報告されており,そのような症例については一次治療の可能性が追求されている。現在,EGFR-TKI以外の分子標的薬も開発が進んでおり,今後さらに薬剤選択の幅が広がると思われる。一方,小細胞肺癌に対する二次治療の第III相試験は少なく,topotecanが唯一best supportive care に対して生存期間の延長を示した薬剤である。しかし本邦では再発小細胞肺癌に対しては,amrubicin の使用が考慮されることが多い。amrubicinは小細胞肺癌に対して効果の期待できる薬剤と考えられ,今後さらに臨床試験により有用性が確立されることを望みたい。 -
胃癌におけるSecond-Line化学療法・分子標的治療の進歩
36巻5号(2009);View Description Hide Description最近わが国から相次いで報告された無作為化比較試験の生存期間中央値が,以前に報告されている試験結果のそれと比べて明らかに延長している。その一因としてsecond-line 化学療法の寄与も大きいことが指摘されている。残念ながら現在までのところsecond-line に関するRCT の報告はいまだ一つもなく,second-line における標準的治療は存在しない。現在多くの臨床試験グループがsecond-line の無作為化比較試験を実施しており,標準的治療の確立が期待されている。その一方でこれら臨床試験における問題点も明らかとなり,わが国全体の問題として解決すべき点もある。さらに,わが国において他癌腫で効果が確認されている分子標的治療薬が国際共同治験として検証されており,その結果に大きな期待が寄せられている。今後,分子標的治療薬の開発において,東アジア諸国の役割は重要性を増していくものと思われる。 -
大腸癌のSecond-Line化学療法—分子標的薬の進歩—
36巻5号(2009);View Description Hide Description現在,転移性・結腸直腸癌に関してはFOLFOX またはFOLFIRI がfirst-line で選択される。一般的にFOLFOX が先行することが多いので,second-lineにはirinotecanベースの治療が用いられる。もちろん,FOLFIRIがfirst-lineになる場合にはFOLFOX がsecond-lineになる。これらのレジメンにbevacizumab またはcetuximab といった分子標的薬を併用することが重要である。新しい薬剤を加えることで,従来の化学療法はさらに優れた効果を発揮すると思われる。 -
アンスラサイクリン,タキサン,トラスツズマブ抵抗性乳癌に対する化学療法
36巻5号(2009);View Description Hide Descriptionアンスラサイクリン,タキサン,トラスツズマブは乳癌全身化学療法の中心薬剤である。その後の標準治療としてカペシタビン,S-1,ビノレルビン,イリノテカン,ゲムシタビンがある。タキサン抵抗性乳癌に対してもイキサベピロン,アルブミン結合型パクリタキセルが有効である。HER2 陽性乳癌のトラスツズマブ耐性例に対してはラパチニブが効果を示し,脳転移にも有効である。トラスツズマブ-DM1,ペルツズマブ,ネラチニブが有望な薬剤である。血管新生抑制剤としてベバシズマブはタキサンとの併用において有効であり,その他アキシチニブ,スニチニブ,パゾパニブなどが研究中である。今後,これらの薬剤の最善の投与順序,併用の可否を検討する必要がある。 -
卵巣癌
36巻5号(2009);View Description Hide Descriptionsecond-lineではpalliationがprimary goalとなる。毒性と効果のバランスを重視し,より低毒性のものを,またより利便性のよいレジメンを選択せねばならない。TFI>6 か月の場合,薬剤感受性腫瘍として,TC 療法などのcarboplatin 併用療法が推奨される。TFI<6 か月では薬剤抵抗性腫瘍としてpaclitaxel やcarboplatin と交差耐性を有さない薬剤を選択する。新たな治療戦略として新しい予後因子および正確に病態を反映するバイオマーカーの検索が必須である。現時点で有効性が確認された分子標的薬はbevacizumab のみであり,欧米で複数のRCT が行われている。AZD2171(cediranib)やerlotinibを用いたRCT も行われている。 -
悪性リンパ腫
36巻5号(2009);View Description Hide Description悪性リンパ腫の治療成績は,rituximab など分子標的薬剤の導入で大きく改善された。しかし,初回治療で再発・難治性のリンパ腫の治療法は,十分には確立されていない。発症頻度の高い濾胞性リンパ腫(FL)とびまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫(DLBCL)のsecond-line治療としては,従来はアルキル化薬やプリンアナログなどによる化学療法,大量化学療法+自家造血幹細胞移植療法,同種造血幹細胞移植療法などが選択されてきた。しかし,最近では新規の抗CD20 モノクローナル抗体(IMMU-106(hA20)),やCD22 抗原を標的とするepratuzumabなど新しい抗体療法や,Y-90 ibritumomab および I-131 tositumomabといった放射免疫療法の有効性が示され,治療の選択肢が増えてきた。
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Current Organ Topics:血液,リンパ,腫瘍—T細胞系腫瘍
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原著
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実地臨床での非小細胞肺癌に対するS-1単剤療法の検討
36巻5号(2009);View Description Hide Description目的:実地臨床における非小細胞肺癌治療におけるS-1単剤療法を検討する。対象と方法: 2005 年6 月〜2007 年5 月までの2 年間に当科でS-1を投与した連続する16 例。S-1は80〜120 mg を1日2 回に分けて経口投与。4 週投与2 週休薬が6 例,2 週投与2 週休薬が10 例。結果:男性11 例,女性5 例。年齢51〜83歳,中央値68 歳,PSは0/1/2/3 が各々2/6/5/3 例。組織型は腺癌13 例,扁平上皮癌2 例,大細胞癌1例。前化学療法は,なし/1/2/3/4 レジメンが各々2/3/4/5/2 例で,前外科療法12例,前放射線療法5 例。臨床病期は,3A/3B/4 期が各々3/4/9 例。投与コース数は1〜13コース,中央値5コース。副作用grade 3 は,悪心1例,嘔吐1例,貧血1例,血小板減少1例。効果は2 コース以上施行し効果判定可能であった13 例で,PR 4 例,SD 3 例,PD 6 例。奏効率31%。S-1投与開始後の生存期間は67〜852日,平均14.0 か月,1 年生存率74.0%,無増悪期間中央値4.6か月,無増悪1年生存率25.0%。結論: S-1単剤療法は高齢者,PS不良例,多剤無効例などにおいて,非小細胞肺癌に対する忍容可能な治療選択肢の一つとなり得る。 -
当科における再発乳癌に対するCapecitabine療法の検討
36巻5号(2009);View Description Hide Descriptioncapecitabine を投与した進行性乳癌9 例,転移性乳癌42 例について種々の用法での有効性を検討した。総奏効率は30.8%,clinical benefit rate(CBR)59.6%,time to progression(TTP)平均7.1 か月と,諸家の報告と同等の成績が得られた。単剤あるいは他剤との併用療法としてcapecitabine 療法は進行再発乳癌の治療の選択肢として考慮すべき有用な治療法と考えられた。 -
HER2 過剰発現進行・再発乳癌に対するSalvage治療としてのIrinotecan HydrochlorideとTrastuzumab併用療法の検討
36巻5号(2009);View Description Hide Description研究の背景: irinotecan hydrochloride(CPT-11)は1994 年に本邦で承認されたが,その後の調査報告がほとんどないため,現在CPT-11の進行・再発乳癌治療における位置付けは明確ではない。また,CPT-11とtrastuzumabの併用療法に関する調査報告もない。目的: human epidermal growth factor receptor 2(HER2)が過剰発現しており,標準的薬剤に耐性となった進行・再発乳癌に対するsalvage 治療としてのCPT-11 とtrastuzumab の併用療法の有用性を後ろ向きに検討する。対象と方法: 2002 年2 月〜2007 年3 月まで,当科で進行・再発乳癌に対してCPT-11とtrastuzumabの併用療法を受けた10 症例。奏効率,腫瘍マーカーの推移,time to treatment failure(TTF),time to progression(TTP),CPT-11開始後のoverall survival(OS),有害事象を調査し,本療法の有用性と認容性を考察した。結果:年齢の中央値は57(40〜67)歳,前化学療法レジメン数の中央値は5(2〜9)であった。奏効率は20%(2/10)であったが,何らかの腫瘍縮小効果を認めた症例は計7 例であった。CEAは78%(7/9)の症例で,CA15-3は63%(5/8)の症例で低下していた。TTF,TTP,OS の中央値はそれぞれ3,4,6か月であった。有害事象としては重度の好中球減少が3 例に認められ,うち1 例は敗血症で治療関連死した。下痢は7 例に認められたがいずれも軽度であった。重度の悪心が2 例に発現していた。5 例がCPT-11 の減量を要し,3 例がCPT-11を中断したが,主な理由は易疲労感,悪心,好中球減少であった。4例がすべて入院で治療を行い,6 例は通院治療可能であった。考察:多剤耐性となったHER2 過剰発現進行・再発乳癌に対する本療法は,抗腫瘍効果という観点からは良好な結果であった。しかし,自験例の検討では本療法は認容性が高いとはいい難い。有害事象を予測し,支持療法を充実させた上でリスクマネジメントをすれば本療法の認容性は上がり,臨床上有用となる可能性があると考えられた。 -
転移性乳癌におけるCentauer HER-2/neu キット(CLIA法)による血清中HER-2測定の意義
36巻5号(2009);View Description Hide Description転移性乳癌(metastatic breast cancer: MBC)51 例,未再発乳癌3 例に計92 回,血清中HER-2/neu の測定を,CLIA法および旧来のEIA 法にて同時測定し,両者の測定値比較を,IHC HER-2 の染色度および臨床経過と対比しつつ行った。IHC HER-2/3+(HER-2/2+FISH+を含む)のMBC 有病例20 例にて,CLIA法14 例70%が高値(>cut off 15.2 ng/mL)であったがEIA 法高値(>cut off 6.5 ng/mL)は4 例20%のみであり,CRまたは未再発例で両法とも高値例はなかった。IHC HER-2(−)例でも高値例がみられ,CLIA法にて高頻度であった。両法にて臨床経過と対比すると,EIA法にて低感度であるのみならず,trastuzumab 投与による干渉(異常低値)がみられ,CLIA 法にてのみ臨床経過とよく一致した。CLIA法にて血清HER-2 を測定した有病MBC 93 例にて,HER-2初回測定値を至近時期に測定したCEA,CA15-3と比較すると,IHC HER-2/3+32 例中血中HER-2 25 例,CEA 13 例,CA15-3 12 例が高値となり,IHC HER-2(−)例41例でも血中HER-2,CEA,CA15-3各高値例は19,16,17 例であった。以上,CLIA法血清HER-2値はHER-2陽性例MBCの最も鋭敏な腫瘍マーカーである。 -
Gemcitabineによる薬剤性肺障害が疑われた膵胆道癌の7 例
36巻5号(2009);View Description Hide Descriptiongemcitabine(以下GEM)は膵胆道癌に対して用いられる有効な抗癌剤であり,比較的安全性が高いが,その副作用として肺障害が知られる。今回われわれは,GEM 治療中に薬剤性肺障害が疑われた膵胆道癌の7 例を経験したので,それらの臨床的特徴について報告する。男女比は5:2,平均年齢は71 歳,疾患の内訳は膵癌4 例,胆道癌3 例であった。症例当たりの1 回投与量,投与回数はそれぞれ平均1,141 mg,5.9 回であった。CT で全例両側下肺野を中心にすりガラス様陰影がみられた。3例が肺障害により不幸な転機をとった。CT画像上肺気腫が5 例に,転移性肺腫瘍が2 例にみられ,全例に肺の既存病変を認め,薬剤性肺障害発症の危険因子である可能性が示唆された。 -
大腸がんのmFOLFOX6 療法時における好中球減少に対する5-FU急速静脈内投与中止の影響—減量法との比較—
36巻5号(2009);View Description Hide Description本邦における進行再発大腸がんの化学療法は,Leucovorinと5-fluorouracil(5-FU)の急速静注および持続静注にoxaliplatin(L-OHP)を加えたmFOLFOX6 療法が標準的治療の一つとして行われている。5-FU の急速静注と持続静注を比較した際,副作用の出現プロファイルに差があり,好中球減少については急速静注時にその発現率が高いとされている。われわれはmFOLFOX6 療法により好中球減少症が発現した症例を対象に,L-OHP と5-FU の急速静注および持続静注の減量を行った投与量減量群(n=6)と5-FU の急速静注のみを中止した急速静注中止群(n=6)に分け,好中球数の回復状況について後ろ向きの調査を行った。減量前および減量後の治療における好中球数の回復状況を両群で比較したところ,投与量減量群: 769±801/mm3,急速静注中止群: 2,139±1,575/mm3であった。両群とも5-FU 投与変更後に好中球数の回復を示したが,減量群と比較し急速静注中止群において有意に高い回復傾向が認められた(p=0.032)。mFOLFOX6療法に起因した好中球減少において,5-FU急速静注の中止が好中球回復の有効な手段である可能性が示唆された。 -
The Efficacy and Toxicity of FOLFOX Regimen(A Combination of Leucovorin and Fluorouracil with Oxaliplatin)as First-Line Treatment of Metastatic Colorectal Cancer
36巻5号(2009);View Description Hide Description[背景]Oxaliplatinは,日本で合成された第3 世代の白金錯体系の抗悪性腫瘍剤であり,欧米ではOxaliplatin と持続投与5-FU/LV 併用(FOLFOX 療法)が進行再発大腸癌に対する標準的な化学療法としての地位を確立し広く施行されている。本邦では,2005 年4 月にOxaliplatinが承認され,当院でも切除不能進行・再発大腸癌に対するfirst-lineの化学療法としてFOLFOX 療法を積極的に施行している。[方法]2005 年6 月より2007 年8 月までに切除不能進行・再発大腸癌に対し,first-line としてFOLFOX4 およびmFOLFOX6 を施行した23 例を対象とし,その効果・安全性を検討した。FOLFOX4 は13 例に,mFOLFOX6は10 例に施行された。[結果]奏効率は50.0%であり,全生存期間は17.4 か月であった。投与回数の中央値は8.0,Oxaliplatinのrelative dose intensityは74.5%である。有害事象は,血液毒性ではGrade 3 以上の白血球減少を4 例,好中球減少を12 例に認め,非血液毒性ではGrade 3 の消化器毒性を1 例,Grade 3 の末梢神経障害を1例に認めたのみであった。[結語]FOLFOX 療法は,日本人においても進行再発大腸癌に対するfirst-lineの化学療法として比較的高い奏効性と安全性をもつ治療法であることが確認された。
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症例
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Gefitinib(イレッサ)が骨転移の鎮痛に有効であった非小細胞性肺癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は79 歳,女性。放射線療法,S-1による化学療法後の進行非小細胞肺癌の終末期緩和ケア目的で当院へ入院した。第6 胸椎転移による疼痛があった。gefitinib を投与したところ,痛みは迅速に軽減した。始めの4 か月は測定可能病変はすべて少しずつ縮小したが,やがて胸椎以外の病変は増大しはじめ,5 か月後に亡くなった。痛みはコントロールされた状態が持続したため,gefitinibは亡くなる直前まで投与した。gefitinibは症例によって骨転移の緩和に有効な薬剤かもしれない。 -
Fourth-Seventh-LineのS-1単剤治療でPR が得られた進行肺腺癌の2 症例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例1 は76 歳,女性。2004 年6 月に多発肺内転移がある肺腺癌(cT4N0M1,stageIV,mucinous BAC)と診断された。その後,7 月よりcisplatin+vinorelbine,gefitinib,pemetrexed,gemcitabine,docetaxel,paclitaxelと抗癌剤治療が継続され,2006 年4 月から投与したseventh-line のS-1 単剤治療が奏効しPR を得た。症例2 は60 歳,女性。2004 年10 月に多発肺内転移のある肺腺癌(cT4N3M1,stageIV)と診断された。10 月より抗癌剤による化学療法が開始され,cisplatin+vinorelbine,docetaxel,gefitinib と投与後にfourth-line としてS-1 単剤治療を2007 年2 月より行ったところ奏効しPR を得た。繰り返し抗癌剤治療が施行された症例であっても全身状態の良好な場合,抗癌剤のローテーションによって化学療法が奏効することがある。その際にS-1単剤治療は忍容性,有効性の点から有用な選択肢となり得ると考える。 -
Exemestaneが著効した乳癌肝転移の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description転移性乳癌の治療目標は症状緩和,QOL 向上および延命であり,通常治癒を達成することは不可能に近い。今回,われわれは肝転移発症後,約1 年のexemestane 単剤投与によりcomplete response(CR)を得た症例を経験したため報告する。患者は左乳癌術後10 年間再発の兆候がなく,経過した後に右乳房E 領域に腫瘤が出現した30 代,女性。右乳房切除を施行され,病理組織学的に右乳癌,腋窩リンパ節転移陽性と診断された。再発リスク群としてCMF による術後化学療法が施行されたが肝障害が出現したため中止され,以後外来で約2 年間goserelin とtamoxifen による内分泌療法を施行し,経過観察されていた。経過中に閉経と考えられたため,tamoxifen 単剤投与に変更された。術後34 か月後のfollow up CT で肝S4 に肝転移が認められたため,tamoxifen からexemestane に変更された。治療開始3 か月後のCT 検査で著明な肝腫瘍の縮小傾向を認められ,治療開始約1 年後にはCR と判定された。exemestane投与約1 年経過後に性器出血が認められ,産婦人科医師の診察により月経再開を否定できなかったため,以後はgoserelin+exemestane による併用療法が施行された。2008年4 月現在なおgoserelin+exemestaneを継続投与中であるが再発の兆候なく経過している。 -
Capecitabine・Docetaxelの併用療法が著効したTriple Negative胸壁再発乳癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は59 歳,女性。9年前に左乳癌の診断で非定型乳房切除術を施行されたが,今回,左前胸部に腫瘤を自覚し当院を受診した。胸部CT では前胸部腫瘤,肺門部および前縦隔リンパ節の腫大を認め,PET 検査では腫瘤に一致して集積が認められた。腫瘍マーカーは著明に上昇していた。胸壁腫瘤の生検を行った結果,浸潤性乳管癌[ER(−),PgR(−),HER2 score(0)]であった。治療はcapecitabineとdocetaxelの併用療法(XT 療法)を施行したが,7 コース終了した時点で腫瘍は消失し,腫瘍マーカーも正常範囲内となった。triple negative の胸壁再発乳癌に対してXT 療法は有用な治療法の一つと考えられた。 -
16年間のTamoxifen療法を受け術後19年目に腹腔内リンパ節,胸膜,皮膚転移,骨転移が出現した超高齢者再発乳癌に対しAnastrozole,UFT,Cyclophosphamideの併用療法が奏効した1例
36巻5号(2009);View Description Hide Description術後補助療法としてtamoxifen を16 年間の長期投与を受け,術後19 年目に腹腔内リンパ節・胸膜・皮膚・胸骨転移を来した超高齢者再発乳癌を経験した。その再発に対し,anastrozole,UFT,cyclophosphamideの併用療法を開始し,5 か月後には,投与開始時にみられた胸水は消失し,胸骨転移巣は縮小,皮膚転移巣は消失,腫瘍マーカーCEAならびにCA15-3 は減少した。本療法に伴う副作用はほとんど認めなかった。現在8 か月,本療法を継続投与中である。本症例では,tamoxifen療法終了後比較的短期間の経過のうちに全身再発を認めたこと,経口抗癌剤との併用ではあるがanastrozole 療法によく反応したことからtamoxifen療法が長期に奏効していた可能性が考えられた。 -
CPT-11とCDDP による肝動注化学療法が奏効した胆管原発内分泌細胞癌術後再発の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。下部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除を施行した。免疫組織化学的検査で胆管原発の内分泌細胞癌と診断された。gemcitabine による全身化学療法を施行したにもかかわらず,術後6 か月目のCT で多発肝転移,リンパ節転移が明らかとなった。全身状態が不良となったため,CPT-11(40 mg/body)とCDDP(20 mg/body)の肝動注を2週に1 回継続した。腫瘍マーカーは正常化し,腫瘍縮小効果は肝転移のみならず,リンパ節転移にも認められた。胆管原発の内分泌細胞癌は予後不良とされているが,自験例は化学療法による治療の可能性を示す1 例であると考えられた。 -
A Case of Acute Promyelocytic Leukemia Showing Transient Thrombocytosis Caused by Increased Interleukin-6 and Thrombopoietin after Treatment with All-Trans Retinoic Acid and Chemotherapy
36巻5号(2009);View Description Hide Description急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia: APL)の症例において,all-trans retinoic acid(ATRA)および化学療法による寛解導入療法後の骨髄回復期に著明な血小板増多を発症した。血小板増多はその程度は漸減したものの寛解後療法後にも起こった。血小板増多のピーク時には血漿中のinterleukin-6(IL-6)は著明に増加していたが,thrombopoietin(TPO)は増加していなかった。一方,骨髄抑制時にはTPO は増加していた。これらの事実よりAPL症例におけるATRAおよび化学療法後の血小板増多は異なる時期の血漿IL-6 とTPO の増加により惹き起こされることが示唆された。 -
CDDPとCPT-11併用化学療法が奏効したStageIVb食道小細胞癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。2003 年4 月28 日近医にて上部消化管内視鏡検査を施行し,胸部中部食道に2 型病変を認め,生検にて小細胞癌と診断された。5月15 日当院紹介入院となり,胸腹部CT にて気管分岐部直下の食道壁の肥厚,縦隔リンパ節腫大,多発性肝転移,膵転移を認め,StageIVb と診断した。CDDP 60 mg/m2(day 1),CPT-11 60 mg/m2(day 1,8,15)による化学療法を開始した。1コース終了後効果判定にて原発巣,肝転移,膵転移は著明に縮小し,QOL も改善,以後もPR を維持し当科外来通院となる。有害事象は特に認めなかった。5 コース施行後の2004 年1 月19 日膵周囲リンパ節再発を来し,CBDCA,VP-16併用療法に変更するもその後閉塞性黄疸,頭蓋骨転移を来し7 月21 日永眠された。 -
Docetaxel/5-Fluorouracil/Nedaplatin併用化学放射線療法にてCR が得られた同時性食道下咽頭進行重複癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。嚥下困難を主訴に来院。上部消化管内視鏡検査で下咽頭と胸部下部食道に腫瘍を認め,生検で両腫瘍ともに中分化型扁平上皮癌であった。CT検査にて右頸部,噴門部リンパ節転移を認め,下咽頭癌(T1,N1,M0,StageIII)と胸部下部食道癌(T3,N1,M0,StageIII)の同時性重複癌と診断した。docetaxel(DOC)/5-fluorouracil(5-FU)/nedaplatin(CDGP)併用化学放射線療法を行った。有害事象は,grade 2 の白血球減少と消化器症状であった。治療終了後のCT,内視鏡検査を行い,画像および組織学的にも腫瘍は消失していたため,complete response(CR)と判定した。治療終了後20 か月経過したが再燃,増悪を認めていない。DOC/5-FU/CDGP 併用化学放射線療法は,同時性重複癌合併食道癌に対して有効であり安全に施行できた。 -
5-FU/CDDP 療法による術前化学療法にて原発巣pCR を示し根治切除を施行した食道癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。進行胸部食道癌,縦隔内・腹腔内多発リンパ節腫大を認め(T3N3M0,stageIII)の診断で,術前化学療法として5-FU/CDDP 療法を1 コース施行した。本療法で食欲低下,嘔気の副作用はgrade 3,口内炎はgrade 2であった。1 コース後原発巣,リンパ節に著効したため2 コースの化学療法を行った。本療法終了後の内視鏡検査では腫瘤は消失し,生検でも炎症性肉芽組織であった。CT検査では腹腔内リンパ節は消失し,縦隔内リンパ節は縮小したが,遺残を認めたため手術を施行した。手術は右開胸開腹・胸部食道亜全摘,胸骨後経路,頸部食道胃管吻合術を施行した。摘出標本病理検査では主病巣は癌の遺残を認めず,grade 3 であった。3個のリンパ節転移を認め,pStageIIIであった。術後15か月再発なく経過している。術前化学療法にて原発巣,リンパ節転移に著明な奏効を示し,根治切除を施行した食道癌症例を経験したので報告した。 -
全身化学療法と肝転移巣へのTAE・動注化学療法の併用が奏効したAFP 産生胃癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。食思不振,体重減少,心窩部腫瘤にて当院入院。血清α-fetoprotein(AFP)42,307 ng/mL と高値であり,胃癌生検標本の免疫組織学的染色でAFP染色陽性を認め,巨大肝転移と多発リンパ節転移を伴うAFP産生胃癌と診断した。S-1 による全身化学療法と,肝転移巣に対する局所療法として経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE)とepirubicin(EPI)持続肝動注療法を施行した。これらの治療が奏効し,AFPの著明な減少と原発巣・転移巣の縮小を認めた。その後,AFPの再上昇やリンパ節転移巣の増大を認めるようになったが,paclitaxel (PTX),cisplatin(CDDP)/irinotecan(CPT-11),S-1 などの各種抗癌剤を順次変更しながら継続投与した。胃癌に有効なこれらの各種抗癌剤の継続的な全身化学療法と,肝転移巣へのTAE・肝動注療法の併用治療が奏効し,治療開始から3 年2か月間の長期生存が得られた。 -
S-1/CDDP 併用療法が著効し3年3か月CR が得られている多発肝転移を伴う胃癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description多発肝転移を伴った進行胃癌に対してS-1/CDDP 併用療法で3年3か月CR を持続している症例を経験した。症例は70 歳,男性。胃体上部小弯の2 型腫瘍で当科紹介となり,精査にて多発肝転移(S5,S8 に計3 か所)およびリンパ節転移を認めた。腫瘍による通過障害がなかったため化学療法を行う方針とした。レジメンはS-1/CDDP 併用療法で投与方法はS-1 100 mg/body/day(分2)を21 日間連続投与,その後14 日休薬,day 8 にCDDP 80 mg/body投与を1 コースとした。3 コース終了後には肝転移は消失した。原発巣も著明に縮小・瘢痕化し,生検で悪性細胞を認めずCRと判断した。同レジメンを1 コース追加後にS-1 単剤に変更し,その後UFT 単剤に変更して現在も内服を継続している。治療開始より3 年3 か月経過した現在も再発なくCRを継続している。 -
胃癌術後再発に対しS-1(一次治療)と5'-DFUR+Paclitaxel(二次治療)がともに有効でCR 継続している1 症例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は82 歳,男性。上部消化管内視鏡検査にて胃体中部後壁にIIa+IIc 病変を指摘され当科入院となった。2006 年1 月23 日,幽門側胃切除+2 群リンパ節郭清術を施行した。術後病理組織診断は,低分化型腺癌(por 2),pT2(mp),pN2,P0,H0,M0; StageIIIA,Cur B であった。術後3 か月目に肝S5,S6 に転移巣が出現した。S-1単独療法を開始し,計8コースでCR となったが,新たに残胃小弯にリンパ節転移再発が出現した。二次治療として5'-DFUR+paclitaxel を行った。2コース終了した時点でリンパ節転移は完全消失(CR)した。計18 コース行い,肝転移およびリンパ節転移ともにCR を継続している。5'-DFUR+paclitaxel による併用療法は,高齢者にも安全かつ長期に投与できるため,S-1に続く有効な二次治療であると考えられた。 -
高度食道浸潤を伴った進行胃癌切除後 Virchow リンパ節再発に対してS-1/CDDP 併用療法が著効した1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description今回われわれは,高度食道浸潤を伴った進行胃癌切除術後にVirchow リンパ節転移を伴う急速かつ広範なリンパ節再発に対してS-1/CDDP 併用療法が著効した1 例を経験した。症例は73 歳,女性。約5 cm に及ぶ食道浸潤を伴った胃噴門部癌に対して2007 年11 月左開胸・開腹胃全摘,胸部下部腹部食道切除術を施行した。術後65 病日にCT 検査にてVirchowリンパ節,傍大動脈リンパ節再発と診断した。腫瘍マーカーはCEA 37.55 ng/mL,CA19-9 3,235 U/mL と著増した。S-1/CDDP 併用療法を3 コース施行後,Virchowリンパ節,傍大動脈リンパ節腫大の著明な縮小が得られた。さらにS-1 単独療法を2 コース行い,腫瘍マーカーは正常化した。その後再発なく化学療法を継続中である。 -
Docetaxelを用いた集学的治療がリンパ節再発に奏効した胃癌術後多臓器転移の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は77 歳,男性。2006年12 月,胃癌(stageIV,多発性肝転移あり)に対し幽門側胃切除術(2/3 切除)を施行。退院後もS-1(TS-1)単独療法を行っていたが,食欲不振と全身倦怠感出現のために継続困難となり2007 年7 月に中止。特記すべき症状など認めず,経過するもセカンドオピニオン目的にて9 月,当院腫瘍内科外来を受診。PET-CT施行にて肝には異常集積を認めずも右上縦隔リンパ節転移を認め,減量にてS-1 内服再開も2008 年5 月,PET-CT にて左鎖骨上窩リンパ節転移を認めた。集学的治療(docetaxel による化学療法,放射線照射,温熱療法)により,Virchow リンパ節転移はcomplete remission,縦隔リンパ節転移に関してはpartial remission(PR)であり,RECIST総合効果測定ではPR を得るに至った。docetaxel療法4 クール施行後,現在のところ新たな再発病変を指摘せず,performance statusは0 にて外来通院継続中である。 -
胃癌に対する術前化学療法のS-1/CDDP が奏効した同時性肝細胞癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は57 歳,男性。B型肝炎の既往歴あり。心窩部痛,左下腹部痛にて近医を受診し胃膵にわたる腫瘍,肝腫瘍を指摘され,当院へ紹介された。精査にて胃体下部小弯後壁に広範囲の3 型進行胃癌を認め,膵臓への浸潤,bulky N2リンパ節を認め,T4(panc)N2 と診断。また,肝腫瘍はS5に1 個存在し,AFP,PIVKA-IIの上昇を認め,dynamic CT,血管造影検査で肝細胞癌と診断された。治癒切除不能と判断し,S-1/CDDP による術前化学療法(NAC)を1 コース施行した(S-1 100 mg/day,CDDP 20 mg/週2 回を2 週投与1 週休薬)。肝細胞癌はCT 上縮小は認めなかったが,胃癌はリンパ節とともに縮小を認めたため,一期的に開腹幽門側胃切除術,D2+a リンパ節郭清,肝S5 亜区域切除術および胆嚢摘出術を施行した。病理組織検査結果で胃癌はpor2,ss,n1,f-stageIIで根治度A,肝細胞癌はmoderately differentiated hepatocellular carcinoma,s0,n0,f-stageIIで治癒度A2であった。組織学的効果判定は,胃癌でGrade 1b,肝細胞癌では胃癌の場合に相当するgrade 2(癌の2/3 以上の著明な変性,壊死)であった。S-1/CDDP によるNACを施行し,その組織学的治療効果が確認できた1 例を経験し,S-1/CDDP は肝細胞癌において全身化学療法としての有効な治療選択肢の一つになる可能性が示唆された。 -
mFOLFOX6 導入後に意識障害を伴う高アンモニア血症を来した再発大腸癌の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide DescriptionFOLFOX 療法は再発大腸癌に対する標準的化学療法の一つとなっているが,有害事象の一つである急性の神経毒性についてはあまり報告されていない。今回われわれは,再発大腸癌に対するmFOLFOX6療法初回導入後に発症した意識障害を伴う高アンモニア血症の1 例を経験したので報告する。症例は74 歳,女性。2007 年8 月,S 状結腸癌に対するS 状結腸切除後の経過観察中にCT およびPET/CT 検査で肝・肺転移および腹膜再発を認めた。入院の上mFOLFOX6 療法を導入したところ,投与翌々日に振戦や意識障害を来した。頭部CT 検査では異常を認めなかったが,血液生化学検査にて血中アンモニア値が367μg/ dL と著明に上昇していたため,高アンモニア血症による意識障害と診断した。分岐鎖アミノ酸製剤と大量輸液により,発症6 時間後に意識障害は改善した。実地臨床におけるFOLFOX 療法の有害事象として,まれではあるが意識障害を伴う高アンモニア血症があることを念頭に入れるべきである。 -
S-1を使用した化学放射線療法が著効した進行篩骨洞腺癌の1例
36巻5号(2009);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。左篩骨洞より発生し前頭洞,前頭蓋内および眼窩内に進展浸潤した低分化型腺癌(T4bN0M0,StageIVB)で,患者の希望もあり機能温存を目標に根治手術に先行して三次元原体照射を1 回3 Gy の5 日間照射2 日間休照射として4 週間繰り返し総線量60 Gy 行い,この間S-1 を80 mg/ body/day で照射開始日より28 日間併用投与した。この結果,肉眼上も画像上も腫瘍は消失しCR と考えたため,手術を行わずに2年半以上経過観察中であるが現在再発は認めていない。このように篩骨洞腺(系)癌の進行例に対する治療方針として,根治手術に先行してS-1 を併用した化学放射線療法を行うことは,制御率と機能温存率の双方の点で一つの有効な選択肢になるのではないかと考えられた。 -
S-1による色素脱失の1 例
36巻5号(2009);View Description Hide Descriptionわれわれは65 歳,男性の右舌扁平上皮癌患者に対して,右舌部分切除術と右肩甲舌骨筋上頸部郭清術を行った。術後はアジュバント療法としてS-1(80〜120 mg/day)の投与を行った。6か月後腹部から背部にそう痒感を伴った発疹を認めた。その後,顔面と両手に白斑が出現,さらに拡大し皮膚科にて色素脱失と診断された。現在術後4 年を経過し再発はなく良好であるが,色素脱失に変化はない。
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特別寄稿
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がん薬物療法に重要な薬物相互作用—Important Drug Interactions in Medical Oncology—
36巻5号(2009);View Description Hide Description抗悪性腫瘍薬は狭い治療域と複雑な薬物学的プロファイルをもつだけでなく,より高い臨床効果を狙い投与量が最大耐量に近い推奨用量となっているため,その薬物動態に影響を及ぼす他剤との薬物相互作用には注意が必要である。各薬剤の薬物動態とそれらに影響する因子ならびに支持療法の知識は,安全で効果的ながん薬物療法を行うに当たって必須である。患者教育によるコンプライアンス維持も含め,これらに関する知識を活かしながらがん薬物療法の効果を最大限に引きだすことが重要である。この総説では,日々のがん患者の診療において重要と考えられる配合変化と,吸収,蛋白結合,代謝および排泄の各段階における薬物相互作用についてまとめた。
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診療報告
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がん診療連携拠点病院における緩和ケアチームの立ち上げと取り組み—大阪府南河内二次医療圏モデル—
36巻5号(2009);View Description Hide Description背景:「がん対策基本法」および「がん対策推進基本計画」において,緩和ケアの提供体制を整備していくことが目標として定められている。その実現のために,がん診療連携拠点病院の果たすべき役割は非常に大きい。がん診療連携拠点病院における緩和ケアチームは,病院内だけでなく,地域の緩和ケアの普及・啓発についても取り組むことが期待されている。目的:当センターでは2007 年4 月に,一般病棟での緩和ケアの実践ならびに医療スタッフに対する専門的な情報提供や教育・啓発活動を目的とした緩和ケアチームを立ち上げた。方法:当チームは多職種合同チームで,病棟からの診療依頼により,回診・カンファレンスを行った上,病棟に対する助言・提言などの活動を行った。結果:依頼件数は1 年間で70 件あり,チーム活動によりオピオイドの使用頻度に変化がみられた。結語:当センターの緩和ケアチームの立ち上げと取り組みについて報告する。
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通信
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愛知県病院薬剤師会オンコロジー研究会第6 分科会の取り組み—Melphalan・Cyclophosphamide・Etoposide・Dexamethasone 併用療法(LEED 療法)の副作用解析に基づく患者パンフレットの作成—
36巻5号(2009);View Description Hide Descriptionがん化学療法を受ける患者に対する服薬指導は,個々の薬剤による情報提供が主であり,レジメン単位で副作用情報を提供している報告は少ない。そこでわれわれはmelphalan(L-PAM)・cyclophosphamide(Endoxan)・etoposide・dexamethasone(Dexa)併用療法(LEED 療法)施行後に末梢血幹細胞移植を受けた悪性リンパ腫患者の有害事象のデータを集積し,得られたデータを基に薬剤師が患者指導に行く際に使用するパンフレットを作成した。有害事象の発現はその症状により発現率,発現時期が異なるため,パンフレットには有害事象の発現時期や発現期間などを患者がわかりやすいようにグラフで表し,抗がん剤の投与スケジュールや有害事象の対策方法なども記載している。パンフレットは患者の治療に対する理解度や治療に参加する意欲の向上に寄与し,患者の抗がん剤治療に対する不安解消につながる薬剤師の積極的な介入を可能にするツールと考えている。
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Journal Club
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用語解説
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