癌と化学療法
Volume 37, Issue 6, 2010
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総説
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子宮頸癌予防ワクチンの世界における現状と日本の問題点
37巻6号(2010);View Description Hide Descriptionサーバリックス(HPV-16とHPV-18へのワクチン)が本邦でも承認され,子宮頸癌予防のためのワクチンプログラムが2009 年12 月に始まった。中和抗体でHPV が細胞に感染する前にブロックする。CIN2/3 発生予防効果がほぼ100%であり,重篤な有害事象はなく安全である。本邦では11〜14 歳の少女が最も優先される対象になりそうである。近い将来において,子宮頸癌を撲滅することを期待したい。 -
日本における制吐薬の適正使用—制吐薬適正使用ガイドライン—
37巻6号(2010);View Description Hide Description近年,様々な悪性腫瘍領域において,がん化学療法の進歩は着実に成果を上げている。特に治療を安全かつ確実に進めるため,制吐療法を含めた支持療法が重要である。われわれ臨床家は制吐療法についての高いレベルのエビデンスを知り,化学療法に応じた的確な制吐予防と治療を行う必要がある。今回,日本癌治療学会が厚生労働省の研究の支援を受けながら,制吐療法に関するエビデンスを検討し,新たにわが国独自のガイドラインを作成した。ワーキンググループ委員として参加し分担した項目について,私見を交えてその概要を述べる。
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特集
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- 腫瘍随伴症候群
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自己免疫様疾患
37巻6号(2010);View Description Hide Description腫瘍随伴症候群は原発腫瘍あるいは転移性腫瘍の物理的な影響によらない症状群を指し,その発症メカニズムとして腫瘍細胞による生理活性物質の産生に加えて,腫瘍に対する宿主免疫応答を契機とした自己免疫反応が推定されている。腫瘍に伴う生理活性物質の産生により内分泌学的症状が発現する。自己免疫応答の標的臓器として,神経,皮膚・筋・関節,造血系および腎臓などが知られている。腫瘍随伴性リウマチ性疾患は炎症性ミオパチー,多発関節炎,血管炎,クリオグロブリン血症やリウマチ性多発筋痛症などに似た症状を呈する。急速な発症,非典型的な発症年齢および侵襲関節の分布,標準的免疫抑制療法に対する難反応性などを示す皮膚・筋・関節症状がある時には腫瘍随伴症候群の可能性について検討するべきである。自己免疫性造血障害として赤芽球癆,溶血性貧血および血小板減少症がみられる。説明困難な貧血や血小板減少症が持続する場合にはリンパ系腫瘍の有無について検討が必要である。腫瘍随伴性腎炎症候群として膜性腎症が有名であるが,その他膜性増殖性腎炎,微小変化型ネフローゼ症候群,抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連半月体形成性糸球体腎炎がある。膜性腎症によるネフローゼ症候群では年齢・性別に応じたがんのスクリーニングが必要である。 -
腫瘍崩壊症候群
37巻6号(2010);View Description Hide Description腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome: TLS)は治療無関連に,あるいは抗癌治療により腫瘍細胞の急速な崩壊が起こる結果発症する生命にかかわる重篤な合併症である。TLSは腫瘍細胞の崩壊に伴う高尿酸血症,高カリウム血症,高リン血症,低カルシウム血症を特徴とし,急性腎不全や代謝性アシドーシスを合併する。要因としては,高い細胞増殖能や治療感受性,治療前腎予備能の低下,LDH や尿酸高値,巨大腫瘤形成や骨髄浸潤例などの高腫瘍容量などがあげられる。TLSの予防と治療には厳格な輸液管理,尿アルカリ化,アシドーシス・電解質の是正,尿酸産生抑制と排泄促進,初回治療の減量などが重要である。特に遺伝子組み換え型尿酸オキシダーゼであるrasburicase は,TLS の治療選択肢を増やし発症率と死亡率の改善が期待される。TLSはその存在を前提とした治療開始前からの予防,早期診断,早期対応により発症や進展を抑えることが可能な病態であり,腫瘍治療を行うものとして十分な知識をもち対応すべき病態である。 -
異所性ホルモン症候群
37巻6号(2010);View Description Hide Description内分泌腺以外の組織から発生した腫瘍が,本来生成しないホルモンを産生する場合を異所性ホルモン産生腫瘍と呼ぶ。最近ではホルモンの微量測定や遺伝子発現の検出が可能となり,内分泌腺以外の多くの正常組織でも微量のホルモンを産生していることが明らかになっているが,従来より腫瘍由来のホルモン過剰により臨床症状や検査値の異常を伴う病態を異所性ホルモン症候群と呼ぶ。腫瘍随伴症候群のなかで最もよくみられ,腫瘍の診断の契機となることもまれではない。臨床症状は多彩であり,産生されるホルモンの種類により特徴付けられる。診断は, 1.ホルモン過剰による臨床症状または生化学的異常が認められる, 2.腫瘍を摘出するとこれらの症状や生化学的異常が消失し,再発すると再び出現する, 3.腫瘍の還流静脈血中のホルモンのステップアップを認める,のいずれかの項目を満たせばほぼ確実であり,最終的に 4.腫瘍組織中のホルモンの存在やホルモン産生を証明すれば確実となる。治療は原因腫瘍に対する根治治療が基本だが,手術不能の場合はホルモン過剰分泌をコントロールする対症療法が行われる。 -
神経症候群・脳炎
37巻6号(2010);View Description Hide Description傍腫瘍性神経症候群paraneoplastic neurological syndromes(PNS)における悪性腫瘍の「遠隔効果」が,神経組織との共通抗原(onconeural antigens)を発現する腫瘍により惹起された自己免疫反応であることが明らかとなりつつある。この共通抗原に対する自己抗体(onconeural antibodiesまたはparaneoplastic antibodies)は,標的抗原の局在が神経細胞の内部か,膜表面上かにより大きく二つのグループに分けられる。PNS のマーカーとして臨床的意義が確立した抗体は,well-characterized onconeural antibodies(またはclassical antibodies;古典的抗体)と呼ばれ,いずれも細胞内抗原(Hu,Yo,Ri,CV2/CRMP5,Ma2,amphiphysin)を標的とし,原発腫瘍の推定にも有用である。一方,原因が未知であった辺縁系脳炎の診断マーカーとなる自己抗体が最近相次いで報告され,新たなサブタイプの存在が明らかとなることで自己免疫性脳炎の概念が拡大されつつある。これらの抗体は神経細胞表面に結合し,神経伝達物質受容体(NMDA受容体,AMPA受容体,GABAB受容体)やイオンチャンネル(VGKC)を標的としているが,必ずしも腫瘍に随伴せず,PNS のマーカーとしての特異性は高くない。神経細胞表面に結合する自己抗体を伴う自己免疫性の辺縁系脳炎は,古典的抗体を随伴するPNS としての辺縁系脳炎と臨床像に類似点はあるものの一致はせず,病態機序も異なる。古典的抗体は髄腔内での特異的産生が示されており,単なる腫瘍マーカーではなく,病態に深くかかわると考えられるが,これらの抗体を投与して受動免疫してもPNS のモデル動物は作製できず,古典型抗体そのものの病原性は証明されていない。患者の中枢神経系に多数のT 細胞浸潤を認めるなどの間接的根拠に基づいて,細胞性免疫機序による不可逆性の神経傷害が推定されている。一方,抗-神経細胞表面抗体を伴う脳炎では液性免疫による細胞障害が考えられ,治療による症状改善が得られやすいことから,何らかの機能的な作用機転も推定されるが詳細は未解明である。特に自己免疫性辺縁系脳炎の新たなサブタイプに関しては,症例を蓄積し長期経過も把握して臨床像の広がりを確認する必要がある。PNS では原発腫瘍に対する早期の適切な治療が最も重要であることは共通している。このために,上皮内癌を含めたごく早期の原発巣をいかに迅速に発見するかが課題である。さらに病態機序に基づいて,いかに個々の患者に最適化された免疫抑制/調節療法を行うかが臨床的に重要な課題である。 -
がんと電解質異常
37巻6号(2010);View Description Hide Description進行がん患者では高カリウム血症,高カルシウム血症,低ナトリウム血症を含む電解質異常は様々な要因で発生し得る。高カリウム血症には時に治療によって引き起こされる医源性の要素がある。高カルシウム血症や低ナトリウム血症は腫瘍随伴症候群として発生することも多い。いずれも,脳症や不整脈などから致命的な転帰を迎えることもあるが,適切な治療により症状は改善する可能性があることを銘記しておく必要がある。近年,臨床導入された上皮増殖因子受容体に対するモノクローナル抗体薬には,低マグネシウム血症の有害事象の頻度が比較的高い。また,その他の小分子化合物であるm-TOR 阻害薬やABL キナーゼ阻害薬にも低マグネシウム血症や低リン血症などの有害事象が知られている。これらの薬剤の使用に際して,これまであまり注意を払われなかった血清マグネシウム濃度やリン酸濃度のモニタリングなどが必要となる。 -
骨関節症
37巻6号(2010);View Description Hide Description腫瘍随伴性骨関節症には免疫機序によると思われる様々な関節炎症候群と肥大性骨関節症(HOA)があり,頻度は後者が圧倒的に高いと思われ,原発性肺がん,胸膜悪性中皮腫,慢性呼吸器疾患,チアノーゼ性先天性心疾患などに合併する。他の腫瘍随伴症候群と同様,悪性腫瘍の発見に先立って発症することがあるので,これらを認めた場合,悪性腫瘍の存在について考察することが重要である。特にばち指以外の症状が急性発症した場合は,悪性腫瘍の急速な増大を示唆する。特発性HOA については最近責任遺伝子が同定され,機序の全容が明らかになりつつあるが,腫瘍随伴性HOA の場合も共通の機序が関与している可能性が示唆される。その機序にはVEGF,PDGF のようながんの治療標的となる増殖因子も関与しており,分子標的治療における分子マーカーの代用になるかなど,新たな臨床的意義に関する研究の展開も期待できよう。
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Current Organ Topics:脳腫瘍 グリオーマ
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原著
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UFT が著効した口腔扁平上皮癌症例におけるThymidylate Synthase, Dihydropyrimidine DehydrogenaseおよびOrotate Phosphoribosyl Transferaseの発現に関する免疫組織化学的ならびに臨床病理学的検討
37巻6号(2010);View Description Hide Descriptionthymidylate synthase(TS),dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)およびorotate phosphoribosyl transferase(OPRT)は,5-fluorouracil(5-FU)の代謝経路における重要な酵素である。本研究においてわれわれは,UFTの著効したいわゆる完全奏効(CR)の口腔癌患者における臨床病理組織学的検討ならびにTS,DPD およびOPRT の免疫組織化学的検討を行った。さらにUFT に部分的効果の認められた部分奏効(PR)症例群および腫瘍縮小の認められなかった安定(SD)症例群についても検討した。症例数は,CR 3 例,PR 5 例およびSD 10 例であった。病理組織学的にCR およびPR は全例高分化型で,SD 症例群の10 例中5 例が中等度分化型あるいは低分化型であった。その5 例のうち3 例はDPD 陰性であった。CR およびPR 症例のほとんどがDPD 陽性であった。OPRT の発現とUFT の効果には相関性が認められなかった。UFT の効果とこれらの酵素の免疫組織化学的発現との間には相関性が認められなかった。DPD 高値でも高分化型であればUFT は効果がみられるが,DPD低値でも中あるいは低分化型であれば効果が認められにくいことが示唆された。 -
80歳以上の進展型小細胞肺癌患者に対する治療方法の検討—Carboplatin+Etoposide 療法について—
37巻6号(2010);View Description Hide Description進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)の標準的治療はプラチナ併用化学療法であるが,80 歳以上ED-SCLC に限定したそれらに関する報告は認めない。今回80 歳以上のED-SCLC 例に対する治療法,特にcarboplatin+etoposide(CE)療法について検討した。2005 年1 月〜2008 年8 月の当院で加療した80 歳以上ED-SCLC 12 例を対象とし,臨床情報を後ろ向きに検討。年齢中央値は82.5(80〜89)歳,PS はPS 1/2/3/4 で6/3/1/2,病期はIIIB/IV≧IIIB は2/9/1。CE 療法施行例は6 例で,全例4 コース施行可能で,2/6 例でgrade 3 以上の発熱性好中球減少を認めた。最良効果はPR/SDは4/2,生存期間中央値はCE 療法で15 か月,毒性はgrade 3 以上の好中球減少を高率に認めたが,非血液毒性は軽度であり忍容可能であった。 -
既治療小細胞肺癌に対するAmrubicin Hydrochloride単剤治療の後向き検討
37巻6号(2010);View Description Hide Description二次,三次治療としてamrubicin hydrochlorideを用いて治療を行った既治療小細胞肺癌53 例の臨床因子,治療成績を後向きに検討した。奏効率,生存期間中央値は全体でそれぞれ32%,7.4 か月であり,sensitive relapse例に限ると64%,16.4 か月,refractory relapse例では27%,5.9か月であった。血液毒性ではgrade 3 以上の白血球減少や好中球減少を72%に認めたが,非血液毒性は軽度であった。40 mg/m2以上の投与量で高い奏効率(44〜75%)が得られたが,40 mg/m2以上の投与量では白血球減少,好中球減少,感染の発現率が高くなる傾向であった。amrubicin hydrochloride治療は既治療小細胞肺癌に対し有効な治療法であるが,血液毒性に留意する必要がある。新薬承認時の用量では過量になり得ることを念頭におきたい。 -
進行・再発胃癌に対するThird-Line ChemotherapyとしてのCPT-11の成績
37巻6号(2010);View Description Hide Description目的:胃癌に対するthird-line 化学療法に関する報告は少数の症例報告があるのみである。よって当科で行ったthird-line 化学療法の成績を報告する。方法: 2004 年1 月〜2007 年8 月までに胃癌で胃切した549 例のうち,非治癒切除例または2009年7 月までに再発のあった76 例を対象とした。そのうち化学療法を施行しなかった症例あるいは1 クールも施行できなかった症例が10 例,first-line化学療法まで施行した症例が29 例,second-line化学療法まで施行した症例が26例,third-line 化学療法まで施行した症例が11 例であった。third-line 化学療法としてCPT-11(A 法)を施行した。結果:非治癒切除後または再発後の平均生存月数は16.9 か月であった。化学療法非施行例の平均生存月数は7.9 か月,first-line 化学療法まで施行した症例は11.3 か月,second-line 化学療法まで施行した症例は21.4 か月,third-line 化学療法まで施行した症例は28.9 か月で有意差を認めた(p=0.000)。third-line CPT-11 の副作用は90.9%に発生したが,全例grade 1 までの軽度のものであった。結論: third-line 化学療法を行った群が最も長い生存期間であった。performance status に問題がなければthird-line化学療法まで行うことは適当であると考えられる。 -
進行・再発大腸癌に対するBevacizumab併用化学療法の有用性と有害事象についての検討
37巻6号(2010);View Description Hide Description今回われわれは,bevacizumab(BV)併用化学療法35 例を経験したのでその臨床成績を検討した。対象は約2 年間にBV 併用化学療法を施行した進行・再発大腸癌35例で,年齢中央値66(41〜86)歳,PSは全例2 以下,一次治療が21 例,二次が12 例,三次が2 例であった。併用化学療法はmFOLFOX6 24例,5-FU/LV 8 例,FOLFIRI 3 例であった。治療効果はCR 2 例,PR 10 例で全体の奏効率は34.3%であった。grade 3 以上の有害事象を7 件認め,うち4 件は白血球減少であった。全生存期間は全症例およびどの併用化学療法群においても中央値には至らず,無増悪生存期間の中央値は全症例およびmFOLFOX6/FOLFIRI 群において191 日と良好な値が得られた。進行・再発大腸癌に対するBV 併用化学療法は,その治療効果の高さから積極的に一次治療から導入されるべきであると考えられた。 -
転移性胃癌・大腸癌患者を対象にした抑うつ状態についてのスクリーニング調査
37巻6号(2010);View Description Hide Descriptionがん患者において抑うつなどの精神症状は通常より高頻度で認められ,進行癌患者ではさらにその有病率が高いことが知られている。しかし,がん患者の抑うつはがん医療の現場で看過されやすいにもかかわらず,精神症状がしばしばみられる手術不能転移性がん患者に対してさえ,ルーチンに抑うつ状態を評価することはなされていない。抑うつを含めた精神症状は,身体的・心理学的・臨床的因子など様々な要因により影響される。そこで今回,当院に入院している転移性胃癌・大腸癌患者(n=47)を対象に,早期に精神症状をすくい上げることを目的として自己評価式抑うつ尺度(SDS)を用いた心理学的なスクリーニング検査を行い,上記因子とSDS スコアとの関係について解析した。SDSスコアは,性別や年齢,PS,がん腫,心理面接の受け入れ態度により有意差を認めなかった。一方,化学療法中の患者(groupA)と比べて化学療法の適応がなくなり緩和医療のみを受けている患者(group B)では明らかにSDSスコアが高値を示した(p<0.001)。また,経時的にSDSスコアの推移を追えた4症例では,病状の進行に伴い,それぞれスコアが有意に上昇していた(p<0.05)。以上より化学療法の適応がない終末期の患者では支持的で細やかな精神症状のケアがより重要であることが示唆された。 -
大腸癌術後補助化学療法における経口UFT/Leucovorin療法の治療継続性に関する研究
37巻6号(2010);View Description Hide Description経口のUFT/Leucovorin(LV)療法は,従来の標準治療であった経静脈的な5-fluorouracil/LV 療法との比較試験(NSABP C-06)の結果から,大腸癌術後補助化学療法の標準治療の一つになったが,本邦では治療継続性についての報告はほとんどない。今回,治癒切除が行われた大腸癌症例99 例を対象として,UFT/LV 療法による補助化学療法5 コース(25 週)の治療継続性について検討を行った。UFT/LV 療法の完遂率は82%(81/99),relative dose intensityは平均0.87 であった。投与コースは平均4.5 コースであった。有害事象でUFT 単独投与になった例,および治療を中止した例が各々9 例であった。有害事象は全体的に軽度であったが,重複発生を含めるとgrade 3 の食思不振と下痢が各々6 例認められた。grade 3 の有害事象を認めたのは99例中15 例(15%)であった。以上よりUFT/LV 療法の完遂率は,様々な癌腫におけるUFT 単独補助化学療法における完遂率(80%台)と同等であり,良好な治療継続性が得られた。 -
切除不能進行・再発大腸癌に対する二次治療としてのBevacizumab併用化学療法
37巻6号(2010);View Description Hide Description切除不能進行・再発大腸癌に対する二次治療におけるbevacizumab(以下BV)を併用した外来化学療法の安全性と抗腫瘍効果をretrospective に検討した。対象は初回治療増悪後の二次治療として施行したBV 併用療法の30 例であった。BV は全例5 mg/kgで投与し,併用療法はmFOLFOX6 が2 例,FOLFIRIが28 例。BV 施行回数は平均20 回で,前治療を含めた全コース施行回数は平均37 回。BV併用二次治療における抗腫瘍効果はPR 7 例,SD 17 例,PD 5 例(奏効率24%)で,無増悪生存期間の中央値は8.0 か月,BV開始後の生存期間中央値は20.3 か月であった。有害事象は93%であったが,grade 3 以上は20%で,BV に特有な有害事象は消化管出血・穿孔・高血圧が各1 例でみられた。BV併用療法は消化管出血や穿孔を念頭において治療に当たる必要があるが,外来化学療法で安全に継続可能であり,二次治療においても抗腫瘍効果は高く有用性が確認できた。 -
Altered Gut Bacterial Flora and Organic Acids in Feces of Patients Undergoing Autologous Stem Cell Transplantation with Quinolone-Based Antibacterial Prophylaxis
37巻6号(2010);View Description Hide Description大量化学療法に伴う消化管粘膜障害および種々の感染症は,がん化学療法における重要な問題である。抗生剤の予防投与はグラム陰性菌による感染症の頻度を減少させる効果があるものの腸管の正常細菌叢を撹乱し,また耐性菌を誘導する可能性がある。われわれは,ニューキノロンによる予防投薬を併用し自己末梢血幹細胞移植を実施した6 名の患者について便中の細菌叢と有機酸の経時的変化を解析した。すべての患者はgrade 2〜3 の下痢を来し,4 名はgrade 3 の発熱性好中球減少を併発した。便中の総偏性嫌気性菌数はday 7 に有意に減少したが,総通性嫌気性菌数は移植中に変化がなかった。EnterobacteriaceaeおよびLactobacillusはday 7 に減少し,Staphylococcusは移植後に増加していた。また,総有機酸量と短鎖脂肪酸はday 7 に減少した。腸管細菌叢と有機酸はニューキノロンを予防投薬に用いた自己造血幹細胞移植患者において著明な変化を示した。これらの変化は,消化管障害と感染症発症に寄与している可能性がある。
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医事
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胃がん術後地域連携クリニカルパスの導入と現状
37巻6号(2010);View Description Hide Descriptionわれわれは胃がん術後地域連携パスを作成し,2009 年7 月より運用を開始した。対象は胃がん治癒切除後で,StageI〜IIIの症例とした。術後補助療法の有無で2 種類のパスを作成し,術後フォローアップに関しては,胃癌治療ガイドラインを参考にした上で5 年間とした。パス作成後に連携医向けに説明会を開催しアンケートを行い,導入可能と判断した。連携パスは医療者用パスと患者パンフレット,その他の資料から構成され,2009 年7 月から運用を開始し,現在まで連携患者は11 人である。パスにより術後の診療計画が明らかになることで,がん患者の不安を軽減し,連携医への診療移行が行いやすくなると思われた。また,運用・導入には連携担当者による十分な患者への説明および連携医とのコミュニケーションの形成が必要である。
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症例
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S-1/Paclitaxel 併用化学療法,S-1維持療法が著効した肝転移再発乳癌の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description患者は50 歳台,女性。1998 年8 月に乳癌に対してtotal glandectomyが施行され,以後,局所再発に対して化学療法(5'-DFUR,CMF,uracil・tegafur,CEF,docetaxel)および放射線治療,外科的切除が施行された。2007 年9 月多発肝転移を認めたため,S-1/paclitaxel(PTX)併用化学療法を施行した。白血球減少(grade 3),食欲低下(grade 2)の副作用を認め,2 コース目より減量投与とした。CT 上肝転移の消失を認め,S-1/PTX 併用化学療法6 コース終了後S-1 単独療法を6 コース施行した。2009 年3 月現在治療効果CR が持続しており,QOL も維持され外来経過観察中である。再発乳癌のthird-line以降の化学療法に確立したものはなく,S-1/PTX 併用化学療法はレジメンの一つになり得ると考えられ,今後の第II相,第III相臨床試験を期待したい。 -
Trastuzumab+Paclitaxel療法が長期間奏効した乳癌肝転移の1例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は64 歳,女性。右乳癌に対し乳房部分切除術,腋窩郭清を施行した。病理診断は乳頭腺管癌,t2,n1(6/14),ER(−),PgR(−),HER2(3+)であった。術後補助療法としてCMF療法と放射線照射を実施した。術後1 年で肝転移が判明しtrastuzumab 投与を開始した。腫瘍マーカーが上昇した際は,paclitaxel を間欠的に併用することで病勢制御が可能であった。術後4 年で肝門部転移による閉塞性黄疸が出現し,胆管ステントを留置したが減黄が不良であった。患者の同意の下,trastuzumab とvinorelbine の併用療法を施行したところ黄疸は改善し腫瘍マーカーも正常範囲内に低下した。trastuzumabは累計5 年8 か月使用したが有害事象はみられず,いまだに効果を有していると考えられた。HER2陽性転移・再発乳癌では,trastuzumab 単剤の長期投与と化学療法の併用によって病勢を制御するという治療戦略が可能であると考えられた。 -
多剤耐性となった進行・再発乳癌におけるSalvage療法としてのCPT-11の有用性
37巻6号(2010);View Description Hide Description多剤既治療の進行・再発乳癌では,QOL を重視した治療が求められる。そこで,多剤耐性後のsalvage 療法として CPT-11 を使用した7 例の使用経験を報告する。症例はPS 1 および2 の症例で,投与法は80〜100 mg/m2を1 週ごとに3回投与・2 週間休薬を1 コースとして開始した。副作用はgrade 3 の好中球減少を2 例に,grade 2 の下痢を2 例に認めたが全例外来通院で施行し得た。PR を1 例に認め,68週継続し得た。多剤耐性となった進行・再発乳癌においてCPT-11はPSを損なうことなく継続可能であり,長期に病状安定を望める症例もあることからsalvage 治療の選択肢として有用と考えられる。 -
Docetaxel/NedaplatinのBiweekly投与継続で再燃のみられない進行食道癌の非治癒切除の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Descriptiondocetaxel/nedaplatinのbiweekly投与継続で,再燃のみられない進行食道癌の非治癒切除の1 例を経験したので報告する。患者は59 歳,女性。2007 年9 月,下行大動脈へ直接浸潤の疑いを有する進行食道癌に対し,右開胸開腹胸部食道切除術を行った。手術所見では主病変が下行大動脈へ浸潤しており,手術は非治癒切除に終わった。術後補助化学療法として, 1 年6 か月間,biweeklyにdocetaxel/nedaplatin(DOC/CDGP)を32 回継続投与した。この間,画像上および臨床上,異常所見を認めず,患者は職場に復帰している。 biweekly DOC/CDGP は,非治癒切除に終わった進行食道癌においても有効な場合や長期生存につながる場合がある。外来での施行が可能で,患者のQOL を保ちながら行うことができる補助療法であり,今後さらに症例を積み重ね,その有用性が確認されるべき治療法と考えられた。 -
S-1/CDDP 併用療法が奏効し胃切除術を施行した腹部大動脈周囲リンパ節転移胃癌の3 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description今回,腹部大動脈周囲リンパ節転移を伴う高度進行胃癌で,S-1/CDDP 併用療法が奏効した3 例に根治術を施行した。症例1 は,1 コースで原発巣は軽度縮小した程度であったが,No. 16 転移リンパ節が著明に縮小したためD3リンパ節郭清を伴う切除術を施行した。症例2 は,2 コースで原発巣は著明に縮小し,No. 16 転移リンパ節がほぼ消失したためD2リンパ節郭清を伴う切除術を施行した。症例3 は,2 コースで原発巣は瘢痕化した。No. 16 転移リンパ節は徐々に縮小していたため3 コース目を行ったところ,1 個のリンパ節が増大傾向となったためNo. 16b1 lat 郭清を伴う切除術を施行した。いずれも術後補助化学療法を行い,58 か月,42 か月,18 か月無再発生存中である。他の非治癒因子のない大動脈周囲リンパ節転移を有する進行胃癌において,S-1/CDDP 併用療法が奏効した症例では切除術を組み合わせることで長期生存が期待できる。 -
化学療法により肝転移が消失し胃を切除し得たAFP 産生胃癌の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。主訴はふらつき。2005 年1 月,高度の貧血があり,精査の結果,多発肝転移を伴うalpha-fetoprotein(AFP)産生胃癌と診断された。手術適応なしと判断しS-1 内服を開始した。肝転移巣は順調に縮小したものの原発巣は消失せず,一度正常化したAFP も再上昇したためsecond-line としてpaclitaxel,third-line としてCDDP/CPT-11 へ変更した。2006 年8 月,AFPは上昇するも肝転移巣は画像上消失,原発巣以外には病変を認めないと判断し,胃全摘術を施行。mp,n0,StageIB であった。現在,術後36 か月を経過しているが再発は認めていない。AFP産生胃癌は肝・リンパ節転移例が多く予後不良とされているが,今回,third-line までの化学療法により肝転移巣が消失し,切除し得た1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。 -
肝,肺転移を伴う胃癌に対しmFOLFOX6 療法が奏効した1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は66 歳,女性。上行結腸癌にて結腸切除術を施行後,CT にて肝,肺に転移を認めた。精査にてリンパ節転移を伴う進行胃癌を認めた。転移が結腸癌由来であった場合の効果も考慮し,mFOLFOX6療法にて治療を開始した。結果,CTにて肝,肺転移の縮小,胃小弯側リンパ節の縮小を確認した。内視鏡検査では胃癌病変は瘢痕のみとなった。胃癌に対し,mFOLFOX6 療法の有効性が示唆された。 -
S-1/CDDP 療法およびS-1単独療法にてCR が得られているStageIA 胃癌術後肝転移再発の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description患者は72 歳,男性。胃癌で胃全摘術を行った。進行度はStageIA で術後補助化学療法は行わず経過観察していたが,1 年後の腹部CT 検査で肝左葉外側後区に単発の転移巣が認められた。化学療法としてS-1/CDDP 療法(S-1 120 mg/body,3 週投与2 週休薬,CDDP 95 mg/body,day 8)を施行した。2コース終了後のPET-CTで肝転移巣へのFDG の集積は消失し,CR と判定した。本治療を計5 コース行った後,S-1 単独療法(S-1 120 mg/body,2 週投与1 週または2 週休薬)に変更した。再発から18 か月経過した現在も新たな再発巣は認められていない。予後不良な胃癌異時性肝転移に対してS-1/CDDP 療法およびS-1単独療法は有効な治療と考えられる。 -
S-1投与と孤立性脾転移切除で無再発生存が得られている胃癌術後肝,肺,脾臓転移の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description患者は70 歳,女性。2001年11 月,StageIIIAの進行胃癌に対して幽門側胃切除術を施行。患者希望にて術後補助療法として化学療法は施行しなかった。2002 年5 月にCEAの上昇を認め,8 月のCTにて肝,肺転移を認めた。S-1 100 mg/dayを2 週間投与1 週間休薬,6 週を1 コースとして投与し,2003 年8 月のCTにて肝,肺転移は消失しcomplete response(CR)を得た。CR持続後,S-1 は2 年間投与し終了。その後再発なく経過していたが,2007 年6 月の腹部CT にて脾上極に9 mm 大の腫瘤を指摘されるも経過観察となった。12 月の腹部CT にて15 mm 大と増大傾向であったため,脾転移の診断の下S-1投与を前回と同様のregimenにて再開。いったんは縮小したものの2008 年8 月に11 mm大,12 月には25mm大と増大を来したため,S-1投与を中止した。他の化学療法も考慮したが孤立性脾転移であり,2009 年1 月,脾臓摘出術を施行。その後化学療法を行っていないが,再発病変は指摘されていない。 -
S-1/Paclitaxel/Lentinan併用化学療法が奏効した大動脈周囲リンパ節転移胃癌の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。胃癌の大動脈周囲リンパ節転移に対し,S-1/paclitaxel/Lentinan 併用化学療法を施行した。1コース終了時からリンパ節転移巣の縮小がみられ,8 コース終了時には著明に縮小し以後増大を認めなかった。原発巣も著しく縮小したが,23 コース終了時の上部消化器内視鏡検査による生検で癌組織を認めたため,26 コース終了時に幽門側胃切除術D1+αを施行した。病理組織学的にはpT1(SM),pN0,P0,CY0,H0,M0,StageIAであった。手術後も本治療法を継続し,治療開始から4年1か月の現在(胃切除術後2年6か月)再燃を認めておらず,この間重篤な有害事象も認めていない。 -
S-1/CDDP による術前化学療法により根治術を施行し得た胃原発絨毛癌の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide DescriptionS-1/CDDP による術前化学療法により根治術を施行し得た胃原発絨毛癌の1 例を経験した。患者は43 歳,女性。心窩部不快感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査にて胃の潰瘍性病変を指摘され当科へ紹介された。生検ではchoriocarcinoma で,全身検索でも他に原発巣は指摘されず胃原発絨毛癌と診断された。Virchow リンパ節および腹腔内リンパ節に転移を伴っていたためS-1/CDDP による化学療法を5 コース施行し,リンパ節転移の完全消失を得ることができたため膵尾部切除,脾摘,横行結腸部分切除を伴う胃全摘術を施行した。病理組織学的検索では,pType 0-IIc,pT2(SS),int,INF β,ly3,v1,PM(−),DM(−),pN2(No.8a),stageIIIAであった。術後,S-1 による化学療法を追加したが術後2 か月目に多発肝転移,両側副腎転移,多発リンパ節再発を来し,術後4 か月目に死亡した。 -
テガフール/ウラシル顆粒が著効したStageIVB(Vp3,肺転移)肝細胞癌の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description患者は65 歳,女性。肝右葉の大部分を占め,肝転移と門脈右枝に腫瘍栓を有するびまん性の肝細胞癌に対してUFT単独内服療法を開始した。2年4か月間の投与にて,AFP,PIVKA-IIの低下とともに原発巣,転移巣が消失し,著効を得ることができた。肝細胞癌に対する経口化学療法は,一般的には奏効率は低率で推奨される治療法ではないが,本症例のようにごく少数に著効する例も存在するため,遠隔転移を伴う進行肝細胞癌症例,局所治療が不可能な症例には試みられるべき安全な治療法の一つであると考えられた。 -
切除不能進行膵体部癌に対してS-1/Gemcitabine併用化学療法を施行しComplete Response(CR)を得られた1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description膵癌は消化器癌で最も予後不良であり,特に切除不能症例では長期生存を得ることは困難である。今回われわれは,切除不能進行膵体部癌に対しS-1/ gemcitabine(GEM)併用化学療法が著効した1 例を経験したので報告する。症例は72 歳,女性(StageIVb)。S-1 80 mg/dayを2 週間,GEM 1,000 mg/ m2をday 8,15に投与した。休薬期間は2 週間とした。2 コース目終了後の腹部CT 検査で腫瘍の著明な縮小を認め,9コース終了後には腫瘍を同定し得なくなりCR と判定した。初診から1 年4 か月たった現在も腫瘍の再発なく,PS 0 と全身状態も良好である。S-1/GEM 併用化学療法は,切除不能進行膵体部癌の予後改善に有効であると考えられた。 -
膵癌腹壁転移の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は74 歳,女性。膵尾部癌の診断で2005年4 月に膵尾部切除術を施行予定であったが開腹時に腹膜播種を認めたため,胃空腸吻合術のみを施行した。手術後のCT で肝転移の出現を認めたが腹膜播種は評価不能であった。全身化学療法施行の方針とし,gemcitabine+S-1 併用化学療法を施行した。5コース終了後,原発巣および肝転移は軽度縮小したが上腹部の術後創近傍に皮下腫瘤の出現を認め,膵癌の腹壁転移と診断した。腹壁転移は手術時のimplantationによるものと考えられた。原発巣および肝転移の制御は良好であり,治療の選択肢も限られていることからgemcitabine+S-1 併用化学療法を継続した。7コース終了後,腹膜播種の増悪により経口摂取が困難となり,投与を中止とした。全身状態が徐々に悪化し,10月に死亡された。腹壁転移は低頻度の転移形式であり,膵癌の腹壁転移の報告はわれわれの調べる限り2 例を認めるのみであった。implantation によると思われる腹壁転移を伴った膵癌の1 例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。 -
Nephrotoxicity Induced by Repeated Cycles of Oxaliplatin in a Japanese Colorectal Cancer Patient with Moderate Renal Impairment
37巻6号(2010);View Description Hide Description腎障害患者におけるoxaliplatin の薬物動態は不明である。本報は中程度腎障害(クレアチニンクリアランス(Ccr):20〜30 mL/min)日本人大腸癌患者におけるoxaliplatin反復投与による腎毒性を述べる。本症例は慢性腎障害がある77 歳,男性で,2 週間ごとにmFOLFOX6 が施行された。8サイクル目に安全性を確認するため,oxaliplatin(66 mg/m2)の血中濃度を測定した。血清蛋白非結合型白金濃度は投与開始後1,2,3 時間,1,2 週間でそれぞれ800,1,000,300,<200,<200 ng/mLであり,健常腎機能日本人患者における薬物動態とほぼ同等であった。一方で,血清クレアチニンは6 サイクル後,徐々に増加し,その結果としてCcr は減少した。day 1〜59 とday240〜299 間の平均Ccr はそれぞれ26.5±2.8(mean±SD)と9.6±1.9 mL/minと有意に異なった。化学療法は10 サイクル後に完全奏効を示したが,患者はday 311 に透析導入となった。結論として,oxaliplatin の反復投与は中程度腎障害日本人患者における腎機能に蓄積性の障害を与えた1 例を経験した。 -
FOLFOX4による術前化学療法により治癒切除可能となった直腸癌同時性肝転移の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。直腸癌の同時性肝転移の診断であったが,肝転移巣の切除断端の確保が難しいと判断し,FOLFOX4による術前化学療法を施行した。原発巣と特に肝転移巣は著効し10 コース施行後にPR が得られたため手術を行った。直腸前方切除術,肝左葉切除術,肝S7,S8部分切除術を施行し,遺残なく切除することが可能であった。 -
82歳の直腸癌再発例に対してBevacizumab併用mFOLFOX6 療法が奏効した1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は80 歳,女性。下腹部痛と下痢を主訴に来院。精査の結果,直腸癌と診断された。ハルトマン手術を施行した。術後病期はstageIIIaであった。術後補助化学療法としてtegafur/uracil(UFT)300 mg/body/day(tegafur 300 mg/day)を6 か月間施行した。術後1 年の腹部CT 検査で傍大動脈リンパ節および局所に再発が確認された。高齢であるがPS 0 であったためbevacizumab併用mFOLFOX6 療法を施行した。5コース終了後の腹部CT 検査でリンパ節,局所ともに再発巣の縮小を認め奏効例と判断した。有害事象としては白血球減少grade 2,好中球減少grade 3,蛋白尿grade 2,高血圧の悪化grade 2 が出現した。 -
全身化学療法を施行した切除不能遠隔転移を有する上行結腸癌の1 例
37巻6号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。近医で肝機能障害を指摘され,当院を受診。精査の結果,全周性の上行結腸癌,両葉に散在するびまん性肝転移,左腋窩リンパ節転移を認めた。原発巣による狭窄症状がコントロール可能であったため,原発巣は切除せずにmFOLFOX6 による全身化学療法を開始した。10コース終了後,bevacizumab導入に備えて原発巣切除を施行した。術後は,FOLFIRI,mFOLFOX6 にbevacizumab を併用し全身化学療法を施行した。計19 コース終了後,全身状態が徐々に悪化し,原発巣診断時より1 年7か月後,原発巣切除より1 年1か月後,癌死した。切除不能遠隔転移を有する進行大腸癌症例における原発巣切除の要否についてはコンセンサスが得られていないが,全身化学療法を施行することによって原発巣,転移巣ともに腫瘍制御が得られるため,今後,治療法の選択肢の一つになると考えられた。
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