癌と化学療法

Volume 37, Issue 7, 2010
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総説
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乳がん薬物療法の新展開—PARP 阻害剤,BRCA とTriple Negative—
37巻7号(2010);View Description
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PARP とBRCA はともに遺伝子修復酵素として知られ,PARP阻害剤によりBRCA 欠損細胞ではアポトーシスを起こすことが知られている。トリプルネガティブ乳がん(TNB)はエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体,HER2 受容体の発現がない乳がんでbasal タイプ乳がんと相関することが知られている。basal タイプ乳がんはしばしばBRCA の欠損を伴い,予後不良である。basal タイプ乳がんとTNB が似ていることから,TNB の患者に対するPARP 阻害剤の第II相ランダム化試験が行われた。その結果,コントロールアームであるgemcitabine+carboplatin(GC)に対しGC+PARP 阻害剤(BSI201)は有意に無増悪生存期間,全生存期間を改善した。本稿ではPARP 阻害剤,TNB,BRCA について最新の知見を紹介する。
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特集
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- 経口薬によるがん治療の進歩
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胃癌
37巻7号(2010);View Description
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5-FU は開発から50 年経過した現在も胃癌領域における中心的な薬剤である。本邦では,静脈投与5-FUの効果を高めた経口フッ化ピリミジン系抗癌剤の開発が進められてきた。JCOG9912 試験ではS-1 の5-FU に対する非劣性が証明され,SPIRITS試験ではS-1に対するS-1/CDDP 療法の有用性が証明された。これより,切除不能胃癌症例の標準治療はS-1+cisplatin 併用療法となった。またACTS-GC 試験の結果より,StageII/III治癒切除胃癌症例の標準的治療は,S-1 単剤による術後補助化学療法となった。本稿では胃癌薬物治療における経口フッ化ピリミジン系抗癌剤(S-1,capecitabine)の臨床開発について概説する。 -
大腸がん治療における経口抗がん剤の位置付け—本邦からのエビデンスの発信—
37巻7号(2010);View Description
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大腸がんの化学療法において,フッ化ピリミジン系経口抗がん剤(UFT,S-1,capecitabine)の利点は,静注療法に劣らない治療効果と安全性を有することに加え,利便性やQOL 面で優れていることである。ただし有効な治療効果を得るためには,確実な内服指導と手足症候群に代表される有害事象に適切な対応が必要である。 -
経口剤による乳癌治療
37巻7号(2010);View Description
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間欠投与による乳癌化学療法の限界を超えるため,連続的な経口抗癌剤によるmetronomic 治療が試みられ,さらには経口投与による有望な分子標的薬が登場している。経口薬剤は明らかに利便性に優れる。時間依存性薬剤の癌細胞への長期暴露は一つの治療戦略である。抗癌剤においては,経口cyclophosphamideを含むクラシカルCMF 療法をはじめとして,UFT,capecitabine,S-1 が研究されている。経口分子標的薬剤では,チロシンキナーゼ阻害剤を中心に精力的に探索され,capecitabine,neratinib,sunitinib,pazopanib,olaparib,everolimusなどが臨床的効果が示された。化学療法,内分泌治療,分子標的治療における経口剤治療の意義についてさらに研究が必要である。 -
進行性腎細胞癌に対する分子標的治療
37巻7号(2010);View Description
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2008 年より進行性腎細胞癌に対する薬物療法としてVEGF 受容体を標的とした分子標的薬であるソラフェニブとスニチニブが承認され使用可能になった。従来使用されてきたインターフェロン-α(IFN-α),インターロイキン-2(IL-2)とは異なり,ともに経口内服薬である。さらにはmTOR阻害薬であり,同様に経口内服薬であるエベロリムス(アフィニトール)も承認され,2010年より使用可能になる予定である。さらに次世代の経口VEGFR 阻害薬も控えている。各薬剤には従来の抗癌剤やサイトカインとは異なった有害事象(副作用)があり,薬の効果を最大限に引きだすためには有害事象のコントロールが重要である。さらには,原発巣に対する効果を期待したネオアジュバント療法の導入も試みられるようになってきた。経口内服薬の分子標的薬導入によって進行性腎細胞癌に対する薬物療法は大きく変わりつつある。 -
造血器腫瘍における分子標的治療薬(経口薬)
37巻7号(2010);View Description
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造血器悪性疾患の治療においては,近年,次々と分子標的薬が導入され,その治療成績の向上に大きな貢献をしている。慢性骨髄性白血病(CML)におけるimatinib療法は,同種移植療法以外では長期生存が望めなかった従来の状況を一変させた。最近では第二世代チロシンキナーゼ阻害剤も導入された。急性前骨髄性白血病(APL)においては,分化誘導をもたらすATRA を投与することで,高頻度に合併し致命率の高かった播種性血管内凝固症候群のコントロールが容易になった他,再発率も下がり生存率の向上がもたらされた。多発性骨髄腫(MM)の治療でもサリドマイドが導入された。本稿では,主としてCML,APL,MMの治療における経口の分子標的薬の位置付けについて,その治療成績を併せて紹介する。 -
肝がん
37巻7号(2010);View Description
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進行肝細胞がんに対する全身化学療法として経口マルチキナーゼ阻害剤であるsorafenib とプラセボを比較した第III相臨床試験であるSHARP 試験とAsian-Pacific 試験が実施され,sorafenib が病勢制御割合,無増悪生存期間と全生存期間で有意に良好な治療成績を示し標準治療として位置付けられた。しかしながら,その治療効果や副作用はいまだ満足できるものではなく,活発な新規治療薬の開発が進められている。その治療開発の中心は腫瘍の増殖や血管新生などのtumor biologyに関与する分子を標的とした治療薬である。日本では細胞障害性薬剤の開発も行われてきたが,いまだ第III相試験で有効性を示した治療薬はないが,現在,経口フッ化ピリミジン薬であるS-1 の第III相試験が実施されている。肝細胞がんの薬物療法の治療開発は活発であり,さらなる治療成績の改善が期待される。 -
肺癌
37巻7号(2010);View Description
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UFT による術後補助療法は,日本で行われた第III相試験におけるポジティブな結果から,完全切除されたI期腺癌症例に対する標準療法となった。S-1の有用性は,進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する初回治療においてはプラチナ併用療法として,二次治療においては単剤として現在第III相試験によって検証中である。Gefitinib,erlotinibなどの上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)のエビデンスは,当初は非選択的な進行NSCLC 症例の二次治療において確立した。しかし今やリスク&ベネフィットバランスの点から,同剤の高い有効性を予測する上で極めて重要な因子である活性型EGFR 遺伝子変異(exon 19 での欠損型変異やexon 21 でのL858R など)を調べることは必須である。EGFR変異陽性の進行NSCLC 患者においては,複数の第III相試験において初回gefitinib療法は従来の標準的プラチナ併用療法と比べて有意に無増悪生存期間を延長させ,新たな標準療法となった。Gefitinibは全身状態が不良な患者においてもEGFR 変異が陽性であれば高い有効性を示すが,致死的な間質性肺障害には常に注意が必要である。 -
経口薬によるがん治療の患者負担
37巻7号(2010);View Description
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日進月歩の技術進歩により,がん医療は大幅に高額化し,患者の経済的負担は重くなっている。このため,患者の経済的負担を軽減することは,質の高いがん医療を進める上で重要な要素となっている。がん患者およびがん担当医に対する全国調査から,経済的負担を最小化する方策を検討した。
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Current Organ Topics:頭頸部がん
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原著
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口腔癌患者において化学・放射線療法と同時並行で投与した経腸栄養剤の効果
37巻7号(2010);View Description
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化学・放射線同時併用療法を施行した口腔癌患者において,治療開始時より経腸栄養剤(ラコール)を投与したenteral hyperalimentation(EHA)群(20 例)と経口摂取困難となった際に静脈栄養を施行したperipheral vein nutrition(PVN)群(20例)における栄養状態および免疫能の推移,さらには有害事象の有無を比較検討した。体重減少は両群間に差は認められなかったが,EHA 群の血清アルブミン値の低下はPVN 群に比べ遅延していた。PVN 群の総リンパ球数およびリンパ球幼若化能は14 日目以降有意に低下したのに対し,EHA 群では総リンパ球数が14 日後に有意に減少したのみで,幼若化能に低下は認められなかった。口内炎は全症例において認められたが,EHA群ではPVN 群に比べその程度は軽い傾向にあった。以上よりラコールを治療開始時より投与することにより,化学放射線治療に伴う栄養および免疫状態の低下,さらには口内炎が軽減され,本剤の投与は口腔癌治療において検討すべき補助療法と考えられる。 -
Triple Negative(ER(−)PgR(−)HER2(−))転移性乳癌に対する有効レジメンの検討
37巻7号(2010);View Description
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ホルモン受容体(HR)・HER2 蛋白のいずれも発現しないいわゆるtriple negative(TN)の転移性乳癌(MBC)での薬物療法の奏効率が低く,再発後の予後が不良であることが注目されている。2001年以降当院で治療したMBC 423 例中54例がTN 例であり,再発後の50%生存期間(MST)もHR(+)HER2(−)例,HR(+)HER2(+)例,HR(−)HER2(+)例の各69,58,39 か月に比し,TN 例25 か月と最も劣っていた。TN-MBC 54 例に用いられた162 レジメンの奏効有無をretrospective に検討した結果,anthracycline を含むレジメンは18.8%の奏効率(PR 以上3 例/総例16 例)があったが,taxaneは8.1%(3/37)と極めて有効率が低く,MTX,CPT-11,VNR,gemcitabine,capecitabine,S-1 いずれも単剤での奏効は得られていない。一方,標準的な治療ではないが,DMpC(5'-DFUR,MPA,CPA 経口)46.2%(12/26),MFL-P(MTX,5-FU,Leucovorin,CDDP)28%(7/25)の高い奏効率が注目された。なお,分子標的剤bevacizumab 3例,cetuximab3 例が化学療法剤と併用され,両者の各1 例にPR を経験した。以上からわれわれはTN-MBC に対し,DMpCおよびMFL-Pを可能なら早期のラインで用い,将来の分子標的治療の発展に期待し得ると考えている。 -
乳癌術後補助化学療法としてのDocetaxel(特に投与量75 mg/m2)+Cyclophosphamide(TC)療法の安全性と忍容性に関する検討
37巻7号(2010);View Description
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本邦における乳癌術後補助化学療法としてのTC 療法(特にdocetaxel 75 mg/ m2+cyclophosphamide 600 mg/m2)の安全性と忍容性について検討した。対象は当科で乳癌手術を施行した47 例で,38 例(80.8%)が3 週ごと4 クールをレジメンどおり完遂した。6 例(12.8%)は好中球減少症や術後創感染のため減量・延期を要した。中止例は3 例(6.4%)で,口内炎やgrade 3 の皮膚障害が原因であった。grade 3 または4 の発熱性好中球減少症を2 例(4.3%)に認めたが,TC 療法中止には至らなかった。浮腫,筋肉痛,関節痛などの非血液毒性は比較的多くみられたが,いずれも顕著ではなかった。以上から,docetaxel投与量75 mg/m2のTC 療法は本邦においても安全に施行可能と考えられる。 -
Phase II Study of Capecitabine(Ro 09-1978)in Patients Who Have Failed First Line Treatment for Locally Advanced and/or Metastatic Cervical Cancer
37巻7号(2010);View Description
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Purpose: The objective of this study is to evaluate the efficacy and safety of capecitabine in cervical cancer patients who have locoregional failure and/or distant metastasis and failed first line therapy. The efficacy of capecitabine is determined by the overall response rate(ORR)according to WHO criteria for response and the safety by adverse event(AE)and tolerability profiles according to NCI CTC version 2.0. Patients and Methods: Patients with loco-regional failure and/or metastatic cervical cancer who have failed first line therapy were enrolled into the study. The patient received capecitabine 1,250 mg/m2 twice daily for 14 consecutive days with 7 days rest(21-day cycle). The treatment was continued for up to six cycles. Results:Forty-five patients previously treated by single or combination of surgery, or chemotherapy or radiotherapy were enrolled for study. Thirty-seven of 45 patients(82%)received at least 2 cycles of treatment and they were evaluated for response. The intention to treat analyses revealed 6/45(13%)ORR, 1/45(2%)CR and 5/45(11%)PR. Twenty-four patients(53%)had stable disease and 20% had progression of the disease. The median time to progression was 4.1 months and the median overall survival was 9.3 months. Conclusion: Capecitabine as a monotherapy has a modest response in locoregional failure and/or metastatic cervical cancer who have failed first line therapy. -
中枢神経原発リンパ腫に対する高用量Methotrexate療法と追加放射線治療の複合療法—有効性と安全性の後方視的検討—
37巻7号(2010);View Description
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中枢神経原発リンパ腫の発生頻度は近年増加し,各種化学療法や放射線治療が報告されている。当科における高用量methotrexate(MTX)療法(4 g/m2)後,放射線治療(30〜50 Gy(2 Gy/Fr)の全脳照射療法,一部追加局所照射を含む)を行う複合療法の有効性,安全性の確認を目的に後方視的検討を行った。対象は男性6 人,女性9 人,脳生検し得た10人は全員diffuse large B-cell lymphomaで,年齢中央値は59(範囲26〜79)歳であった。13人が放射線治療まで施行でき,奏効率80%であった。観察期間中央値20(範囲3〜81)か月,3 年予測生存率76%であった。治療関連毒性は血球減少,急性呼吸窮迫症候群,肝機能障害などだが,臨床的管理可能で白質脳症は認めなかった。今後,より臓器負荷が軽度なMTX の投与方法,放射線治療を検討するための前方視的検討が期待される。 -
食道癌におけるOrotate Phosphoribosyl Transferase(OPRT), Dihydropyrimidine Dehydrogenase(DPD)活性と臨床病理学的因子との関連性の検討
37巻7号(2010);View Description
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食道癌48 例を対象として癌組織と正常組織のOPRT・DPD 活性を測定し,臨床病理学的因子との関係を検討した。DPD 活性は癌組織と正常組織に差がなく,臨床病理学的因子との関連もなかった。OPRT 活性は,癌組織で有意に高値であった。リンパ節転移陽性,リンパ管侵襲陽性例で有意に低値で,StageI,IIの症例がIII,IVの症例に比べ高値であった。OPRT/DPD 比は進行度,生存率との関係を認めた。食道癌においてOPRT 活性は生物学的な悪性度に関係する可能性が示唆された。 -
切除不能または再発胃癌に対するS-1+Cisplatin(CDDP)併用療法の検討
37巻7号(2010);View Description
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切除不能または再発胃癌に対してS-1+CDDP 療法施行例について検討したので報告する。NAC を行った5 症例についても検討した。対象は2006 年4月〜2009 年3 月31 日までに切除不能・再発胃癌24 例にfirst-line化学療法としてS-1+CDDP 療法を施行した。OS,PFS,TTF,RR,安全性について検討した。結果は,平均年齢は60.1(46〜79)歳,男性21例,女性3 例でいずれの症例もPS 0〜1。OS は1 年生存率50.1%,2 年生存率は37.6%でMSTは273 日,PFS のMSTは240 日,TTF のMSTは73 日,奏効率はPR 12 例,SD 4 例,PD 8 例で50%であった。有害事象は,grade 3 以上はWBC減少4%,好中球減少4%,Hb 減少12%,全身倦怠感4%,発疹12.5%であった。以上の結果はSPIRITS試験とほぼ同等の結果を得ることができた。5 例に対して手術加療(幽門側胃切除もしくは胃全摘術D-2郭清)を行い根治度A手術3例,Bを2 例施行し得た。 -
進行再発大腸癌に対するFOLFIRI 療法の多施設共同第II相試験
37巻7号(2010);View Description
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今回,われわれは多施設共同研究グループである神奈川県中部大腸癌懇話会として,CPT-11を本邦保険適応量(150 mg/m2)で使用したFOLFIRI 療法の効果および安全性を検討した。対象と方法:進行再発大腸癌でPS 0〜1,前化学療法未施行例,術後再発症例の場合は術後補助化学療法終了後4 週以上経過している症例を対象とし,文書による同意を得て施行した。FOLFIRI 療法はCPT-11 150 mg/m2,bolus 5-FU 400 mg/m2,infusion 5-FU 2,400 mg/m2,l-LV 200 mg/m2で投与した。評価は抗腫瘍効果をRECIST で,安全性をNCI-CTC により有害事象を判定した。結果:適格症例は20 例で治療コース数の中央値は10 コースであった。奏効率は60%(CR: 2,PR: 10,SD: 4,PD: 4),disease-control rate(DCR)は80%であった。有害事象は血液毒性を白血球減少55%,好中球減少65%に認めgrade 3/4 はそれぞれ25%,50%であった。非血液毒性は消化器症状を80%に認め,grade 3 は胃潰瘍の1 例のみであった。30%に脱毛を認めたがいずれもgrade 1/2 であった。結論: FOLFIRI療法(CPT-11 150 mg/m2)は安全に行われ,抗腫瘍効果も従来の報告と比べて遜色ないものであった。 -
癌組織中Orotate Phosphoribosyl Transferase(OPRT),Dihydropyrimidine Dehydrogenase(DPD)活性よりみた低分化型大腸癌に対する抗癌剤選択
37巻7号(2010);View Description
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大腸癌76 例を対象として,正常部と癌部のDPD 活性・OPRT 活性を測定し,臨床病理組織学的因子との関係を検討した。DPD 活性は正常部と癌部で差がなかった。OPRT 活性は癌部で有意に高かった。低分化型腺癌はDPD 活性が有意に高く,OPRT 活性は有意に低かった。さらに,リンパ節転移陽性例でOPRT 活性は有意に低かった。DPD・OPRT 活性からみると,低分化型腺癌は5-FU 抵抗性であり,S-1などのDPD阻害剤を含む抗癌剤が有効であると思われる。 -
大腸癌肝転移に対する肝動注療法の成績
37巻7号(2010);View Description
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従来教室では大腸癌の多発肝転移に対して積極的に肝動注療法を行ってきた。今回65 例の多発肝転移に対する肝動注治療の成績を検討した。レジメンは5-FU 1,500 mg/bodyあるいは5-FU(400 mg/mm2)/l-LV(200 mg/mm2)であり,RECIST による多発肝転移動注症例の奏効率(PR+CR)は55%であった。肝機能障害により治療継続困難となった症例は2 例のみでPS 不良症例に対しても維持継続できた。肝動注治療の全生存期間の中央値は13.5 か月で5年生存率は8%と予後不良であったが,肝動注後に切除可能と判断された9例では5年生存率は21%と改善していた。同時性,異時性あるいは同時性肝切除後の再発例間では予後に差は認めなかった。肝動注療法は比較的忍容性が高く,肝切除可能となれば積極的に肝切除することにより,予後の改善に寄与する治療法と考えられた。 -
Gefitinib治療時に重篤な肝機能障害を呈した後にErlotinib投与を開始した際の安全性の検討
37巻7号(2010);View Description
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gefitinib とerlotinib は非小細胞肺癌治療において使用可能な上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)である。これらのEGFR-TKI を投与するに当たっては肝機能障害に注意が必要であり,時に重篤化する症例に遭遇する。gefitinib 治療時に重篤な肝機能障害を呈した後でerlotinib を開始した際に安全に投与できたとする学会報告は散見されるが,いずれも1 もしくは2 例報告であり,十分に検討されているとはいい難い。今回,gefitinib 治療時にCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v3.0でgrade 3 以上の肝機能障害を呈し,その後の治療においてerlotinibが投与された症例のerlotinib投与時の肝機能障害について調査した。対象症例は8 例であった。gefitinib 投与時の肝機能障害は全例でgrade 3 であり,erlotinib 投与時にgrade 3 以上の重篤な肝機能障害を呈した症例は1 例のみであった。この1 例は,休薬後にerlotinib 100 mg での減量投与時にもgrade 4 の肝機能障害を呈した。gefitinib 治療時に重篤な肝機能障害を呈した症例に対してerlotinib を投与した場合には安全に施行できることが多いが,まれに肝機能障害の再増悪を来す症例が認められる。また,肝機能障害発現時は自覚症状に乏しいこともあるため,患者への初期症状の事前説明だけでなく,より頻回な肝機能のモニタリングが重要と考えられる。 -
Paclitaxel投与後の呼気中アルコール濃度の経時的変化と関連因子の検討
37巻7号(2010);View Description
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paclitaxel(PTX)は難溶性の薬剤であるため,無水エタノールおよび合成溶媒を含む製剤として販売されている。そのためPTX 投与後,呼気中にアルコールが検出されることが報告されている。今回,PTX投与後の呼気中アルコール濃度(breath alcohol concentration: BAC)について測定し,経時的変化について調査した。またBACと関連する因子について調査した。その結果,PTX 投与直後の呼気中アルコール濃度の検出率は52%だった。このBAC の検出は投与3 時間後においても認められた。そのため,PTX 投与後は十分な休憩が必要であり,自動車運転は避ける必要性が証明された。また,BAC 検出群と未検出群を比較した結果,性差,年齢,投与量,体表面積などは有意な差が認められなかったが,時間当たりの投与量についてBAC 検出群において有意に多かった。これらの結果から,単位時間当たりの投与量が多いほどBAC の検出率が高くなる可能性が示唆されたが,通常診療でBAC検出を予想することは困難であり,外来化学療法でPTXの治療を受ける場合は,自動車などの運転による通院をしないのはもちろんのこと,帰宅後も注意をする必要があると考えられた。
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症例
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S-1とZoledronic Acid の併用投与により長期CR が得られた転移性乳癌の1 例
37巻7号(2010);View Description
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骨,胸膜転移性乳癌に対してS-1とzoledronic acid(ZOL)の投与により,長期CR が得られた症例を経験した。術後化学療法としてCE 療法(epirubicin 75 mg/m2,cyclophosphamide 600 mg/m2)を4 回,続いてpaclitaxel(80 mg /m2)weekly療法を12 回行ったが,術後1 年5か月後に胸膜転移および骨転移が認められたためS-1 とZOL の投薬を開始した。S-1は100 mg/day(分2)で2 週間経口投与し1週間休薬,ZOL は4 週間ごとに4 mg を点滴投与するレジメで開始したところ3 コース終了時には腫瘍マーカーが正常値となり,胸水も消失し,骨転移巣も著明に改善した。そして5 コース終了時には臨床的完全奏効(cCR)が得られた。 -
S-1+Trastuzumab併用療法が奏効した肝・リンパ節転移を有するLuminal B 再発乳癌の1 例
37巻7号(2010);View Description
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肝・リンパ節転移を有するLuminal B の再発乳癌に対してS-1+trastuzumab の併用投与を施行することにより,完全奏効を得た症例を経験した。症例は47 歳,女性。再発治療としてtrastuzumab 単剤投与を開始したが,病勢が悪化したためtrastuzumabにS-1 を上乗せして併用療法を開始した。S-1 100 mg /day(分2)を4 週投与2 週休薬,trastuzumabは 2 mg/kg で毎週投与するスケジュールにて治療を行ったところ,画像上,1 コース終了時点でリンパ節転移が消失し,2コース終了時点では肝転移巣も消失した。その後,新病変の出現を認めなかった。S-1+trastuzumabの併用療法は,肝・リンパ節転移を有するLuminal B の再発乳癌に対しても,QOLを保ちながら安全に施行できる有効な治療法であると考えられた。 -
AnthracyclineおよびTaxane耐性の進行・再発乳癌に対してS-1単独投与にて著効が得られた1 例
37巻7号(2010);View Description
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anthracycline およびtaxane に耐性となった乳癌多発肝・骨転移にS-1 が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は52 歳,女性。2000 年に他院で左乳癌にて左乳房温存手術を施行されたが,詳細不明。2008 年5 月肝機能障害で当院を受診した。US/CT/PET にて多発性肝腫瘍,びまん性骨転移病変を診断された。右肋間よりUS下に肝腫瘍針生検を施行し,病理にて乳癌の転移と診断され,ER+,PgR+,HER2 抗体(0)であった。EC 4 コース後docetaxel 4 コース投与を行い,いったん治療効果PR を得たため,その後同治療を再度追加した(EC 4 コース→docetaxel 4 コース)が,PETでは多発肝腫瘍および骨病変ともに増悪しPD となった。その後患者が内服剤のみでの治療を強く希望したため,S-1(4 週間連続内服投与2 週間休薬/1 コース)を2 コース投与した。PET では骨に有意な異常集積は指摘されず,肝への集積も著明に低下していた。現在,臨床症状なく健在であり,S-1 内服継続中である。S-1 単独療法はanthracycline およびtaxane 耐性の進行・再発乳癌に対して有用であると考えられる。 -
術後早期再発を来した乳房Paget病の1 例
37巻7号(2010);View Description
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症例は66 歳,女性。右乳房の発赤,びらんを主訴に受診し,精査で乳房Paget病と診断された。単純乳房切除術を施行し,病理組織診断は乳房Paget病(8×7.5 cm)で,皮膚断端陰性,乳管内進展を伴い,一部の真皮下に微小浸潤巣とリンパ管侵襲を認めた。原発巣はER(−),PgR(−),HER2(3+)であった。術後1 年半ごろより右上腕浮腫,胸壁の発赤が出現。右胸壁の生検で乳房Paget病再発と診断した。その他癌性リンパ管症,右腋窩・縦隔リンパ節,胸壁再発,対側乳房再発を認めた。その後化学療法(paclitaxel+trastuzumab)を施行し,12 コース終了時点でCR を得,現在も治療継続中である。術後短期間で再発を認める乳房Paget 病はまれであるため報告する。 -
再発胆道癌に対してWeekly Paclitaxelが奏効した1 例
37巻7号(2010);View Description
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患者は72 歳,男性。2007 年10 月に広範囲胆管癌にて肝右葉尾状葉切除兼亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後3 か月のCT にて肺転移が出現し,以後S-1 100 mg/body を計5 コース施行した。評価のCT で増悪を認め,GEM 1,600 mg/body に変更し投与を行った。好中球減少および血小板減少の血液毒性により減量,休薬しながら計6 コース施行した。再検した評価CT では効果がみられなかった。本人,家人に十分なインフォームド・コンセントを行った上で,weekly PTX 130 mg/body を使用した。3コース終了時の腫瘍マーカーは正常化し,CT でも多発肺転移は,縮小,気腫状瘢痕化していた。GEM およびS-1 がfailure した症例のなかにPTX の奏効例が存在する可能性もあり,副作用も許容範囲と思われ,third-line以降に試してみる価値があるかもしれない。 -
Gemcitabine奏効後放射線治療を行い40か月経過観察中の膵癌非手術症例
37巻7号(2010);View Description
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症例は65 歳,男性。腹痛を主訴に来院し,精査により急性膵炎と診断された。1 か月後のMRI で膵頭部にT1 およびT2 で低信号を呈し,動脈相でhypovascularity を呈する充実性病変を認めた。MRCP では同部位に相当して下部総胆管の途絶像を認めた。膵癌が疑われたためFDG-PET を施行し,浸潤性膵管癌とリンパ節転移が疑われた。また,血管造影にて門脈の狭窄があり,同部位への浸潤が疑われた。T4N1M0,StageIVa の膵癌と診断し,gemcitabine(GEM)を用いた化学放射線療法を施行した。画像上病変の消失を認め,現在外来でS-1 100 mg内服にて40 か月再発なく経過観察中である。 -
S-1単剤によるダウンステージ後,治癒切除し得た多発性肝転移を伴う非機能性膵神経内分泌癌の1例
37巻7号(2010);View Description
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症例は73 歳,男性。2008年11 月近医にて多発性肝転移を伴う膵体部癌と診断され,当院に紹介。患者が経口薬での治療を希望したためS-1 80 mg/day(4週間投与2 週間休薬)にて治療を開始。有害事象がなかったことから徐々に150 mg/day まで増量した。4 コース終了後に肝転移巣は消失し,原発巣も縮小したため,2009 年6 月に膵体尾部切除術を施行。病理診断は非機能性膵神経内分泌癌であった(pT4,pN0,pM0,StageIVa)。術後6 か月の時点で無再発生存中である。今後S-1が膵神経内分泌癌の薬物治療選択肢の一つになる可能性が示唆された。 -
R-CHOP 療法が著効した肝胆道原発と考えられた悪性リンパ腫の1 例
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症例は65 歳,男性。褐色尿を主訴に当科を紹介され肝門部領域の腫瘤による閉塞性黄疸で入院した。超音波ガイド下の針生検を行い,悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma: DLBCL)と診断した。R-CHOP療法を施行し,画像上腫瘍の著明な縮小および胆道狭窄の改善を認めた。肝胆道系腫瘍の鑑別として悪性リンパ腫を念頭におく必要がある。 -
食道癌を合併した頭頸部癌5 症例に対するS-1,Nedaplatin/放射線同時併用療法の効果
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頭頸部癌症例に重複癌を認めることはまれではなく,治療方針を決定する上で重要な因子となってくる。特に下咽頭癌では,他の頭頸部癌に比較し食道癌の合併が多い。当科では器官および機能温存と根治をめざし,頭頸部癌と食道癌を別々に治療するのではなく,同時に治療を行っている。以前より頭頸部の進行癌に対して,当科ではS-1,nedaplatin/放射線同時併用療法(SN療法)を行っているが,今回食道癌合併の頭頸部癌に対しても同療法を行ったので報告する。2005 年4 月〜2009 年3 月までに,当科で治療を行った食道癌を合併した頭頸部癌5 例を対象とした。組織型はすべて扁平上皮癌であった。内訳は喉頭癌2 例(T3N2cM0,T3N0M0),下咽頭癌3 例(T3N2cM0,T4N2cM0,T3N2bM0)である。結果として5 例中3 例は非担癌生存中であり平均観察期間は29.3 か月である。1例は心疾患のため他因死し,残りの1 例は腫瘍が消失せず原病死した。今後も症例数を増やし生存率を検討していくことが必要と考えられた。 -
Bi-Weekly Docetaxel/S-1療法が著効した多発肝転移を伴う食道浸潤胃癌の1 例
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症例は61 歳,男性。近医で胃噴門部に全周性の3 型病変を指摘され,当院に紹介受診した。上部消化管内視鏡検査で,噴門部中心に食道浸潤を伴う3 型病変があり,腹部CT 検査でリンパ節(#1,2,7)腫大と肝両葉に多発する最大径29 mmの辺縁不整な低吸収領域を認めた。腫瘍マーカーはCEA 200 ng/ mL,CA19-9 2,490 U/mL と上昇していた。生検病理組織学的診断はadenocarcinoma(tub2〜por1)で,進行胃癌(UE-circ 3 型,c-T3N2H1P0M1,StageIV)と診断した。根治切除不能胃癌として,bi-weekly docetaxel(DOC)/S-1 療法(DOC 40 mg/m2 day 1,14,S-1 80 mg/m2 day 1〜7,14〜21)を開始した。1コース終了後,胸部つかえ感は消失し,腹部CT 検査でリンパ節腫大,肝臓の低吸収領域は縮小しPR と判定した。2 コース終了時の上部消化管内視鏡検査で周堤は平低化し潰瘍も瘢痕化し,その後7 コース継続しPR を維持した。有害事象は,grade 2 の悪心・嘔吐,grade 1 の爪痛以外,grade 3 以上のものはみられなかった。7コース終了後CEAが再上昇したため,CPT-11/CDDP を4 コース,weekly PTXを2コース施行され,現在治療開始後17 か月で外来通院中である。bi-weekly DOC/S-1 療法は,その高い抗腫瘍効果と外来で投与継続可能な安全性から進行胃癌に対して有用な治療法であると考えられ,現在進行中の第II相試験の結果が期待される。多発肝転移を伴う食道浸潤胃癌に対して良好な抗腫瘍効果が得られ,外来で安全に継続できた1例を経験したので報告する。 -
S-1をBaseとした化学療法により長期生存が得られた胃癌腹膜播種再発の1 例
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症例は52 歳,男性。2000 年7 月に胃癌に対して幽門側胃切除術を受けた。2005 年7 月腹部CT および注腸検査にて腹水および腹膜播種と診断されたためS-1 内服を開始,2 コース投与を行うもCEA の上昇傾向を認めS-1+cisplatin(CDDP)投与を開始した。同治療にて腹水および播種は消失し,7 コース終了後2006 年7 月よりS-1+paclitaxel(PTX)投与を開始,しかし8 コース投与後,指先のしびれが出現,増強したため12 月よりS-1 単剤に変更した。2007 年7 月腹部膨満感を自覚,CT 上多量の腹水を指摘されたため再度S-1+CDDP 併用療法に変更。しかし,3 コース施行後に倦怠感および食欲不振が増強したため再度10 月よりS-1 単剤に変更した。11 月にさらに嘔気,嘔吐が出現,これ以上の抗癌剤投与は困難と判断しbest supportive care(BSC)に移行。徐々に全身状態は悪化し,12 月永眠された。本症例は高度の腹膜播種再発と診断されてから化学療法により約2 年5 か月の長期生存が得られた比較的まれな症例である。S-1 をbase とした化学療法は再発胃癌に対して有効であったと考えられた。 -
術前化学免疫療法(S-1/Paclitaxel/Lentinan)が奏効し治癒切除を施行した進行胃癌の1 例
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症例は71 歳,男性。心窩部不快感とめまいを主訴に入院。精査にて腹部リンパ節転移と肝転移を伴った高度進行胃癌と診断された。根治切除困難と判断し,S-1/paclitaxel(PTX)/Lentinan(LNT)による術前化学免疫療法を5コース施行した。終了後腹部CT 検査で腹部リンパ節の著明な縮小・消失,肝転移巣の消失を認めPR と判断したため胃全摘術,D1+β郭清を施行した。術中所見は,腹部リンパ節(#7,8,9)は一塊となっており,術中エコーでは肝転移は認めなかった。組織学的所見ではpor,T2(ss),N0,効果判定は原発巣がgrade 2,リンパ節がgrade 3 であった。術後は合併症なく経過しMRI では肝転移を認めなかった。肝転移を伴う高度進行胃癌の症例に対し,S-1/PTX/ LNT による術前化学免疫療法は安全で有効な治療法であると考えられる。 -
女性化乳房を呈し血清hCG-β異常高値を示した壁外発育型進行胃癌の1 例
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血清hCG-βが著明高値であった進行胃癌の1 例を報告する。症例は51 歳,男性。腹部腫瘤と乳房腫瘤を主訴に来院し,CT 検査で壁外性発育形態を示す内部壊死を伴う巨大な胃腫瘍と多発性肝腫瘍を,上部消化管内視鏡で前庭部大弯にBorrmann 2 型腫瘍を認め,生検で低分化腺癌であった。血清hCG-β著明高値(21,551.6 mIU/mL)および肝生検で胃癌組織と酷似したhCG 染色陽性低分化腺癌を確認し,hCG 産生進行胃癌と診断し化学療法を施行したが,診断約8 か月後に死亡した。女性化乳房と血清hCG-β高値を有す症例にはhCG 産生胃癌を鑑別診断として考慮すべきである。 -
化学療法により完全寛解が得られた巨大リンパ節再発胃未分化癌の1 例
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症例は67 歳,男性。1996年胃癌に対して幽門側胃切除術を施行し,最終病理はpT1(M)pN0M0,StageIA であった。2001 年11 月に肝十二指腸靭帯近傍に12 cm 大の腫瘤性病変を指摘された。腫瘍切除術を施行し,原発不明の扁平上皮成分を伴うリンパ節転移と診断された。1 か月後,腹部腫瘤の再発を認め,bleomycinと50 Gy の放射線治療を施行したが腫瘍は増大した。2002 年2 月にCPT-11 を投与したが,さらに増大したため,2003 年8 月からcisplatin(CDDP)とgemcitabine(GEM)の併用療法を開始した。2 剤投与により著明な腫瘍の縮小を認め,8コース後に腫瘤は完全に消失した。免疫組織学的検査により腫瘍は胃未分化癌のリンパ節転移と判明した。2005 年4 月に抗癌剤投与を中止したが,腫瘍の再発はなく生存中である。化学療法によりリンパ節再発の消失をみたまれな胃未分化癌のリンパ節再発の1 例を経験した。CDDPとGEM併用療法は胃未分化癌に対して有効な治療法の一つであると考えられた。 -
胃癌術後異時性多発性肝転移に対しS-1単独療法にてCR が得られた1 例
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胃癌の診断に対して胃切除術後に異時性多発性肝転移を認めた症例に対しS-1 単独投与を施行した。多発性肝転移が消失し,S-1投与を中断した現在も肝転移巣は消失,新たな転移巣も認めず,外来通院中である。 -
S-1+CPT-11による術前化学療法が奏効した進行胃癌の1 例
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われわれは進行胃癌に対し,術前化学療法としてS-1+CPT-11 併用療法を施行し,down staging により根治的手術が可能となった1 例を経験したので報告する。症例は65 歳,男性。上部消化管内視鏡検査にて胃体部小弯の3 型胃癌(tub2)を指摘された。腹部CT 検査では小弯側および腹腔動脈周囲にbulky なリンパ節腫大が認められ,患者が外来での治療を希望されたため,インフォームド・コンセントを得た上でS-1+CPT-11併用療法(S-1 80 mg/m2 day 1〜21, CPT-11 80 mg/m2 day 1, 15/5 weeks×2 courses)を施行した。2コース終了後には原発巣およびリンパ節の著明な縮小が認められ,総合診断でgastric cancer(cType 3,T2,N2,M0,cStageIIIa)と診断した。胃全摘術が施行され,病理所見はpT2(ss),pN0,sH0,pCY0,sP0,sM0,tub2,INFβ,ly0,v1,n0,stageIb,CurAで組織学的奏効度はGrade 1b であった。S-1+CPT-11併用療法はbulkyなリンパ節腫大を有する進行胃癌に対する術前化学療法の外来レジメンとして期待される。 -
進行胃癌術後の頸部リンパ節再発に対してS-1+CDDP+Docetaxel併用療法が著効した1 例
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症例は57 歳,男性。56 歳時に胃前庭部の進行胃癌に対して胃全摘術およびD2 郭清を施行し,病理検査にて中分化型腺癌,SE,N2,M0,StageIIIB と診断され,退院後S-1 の内服を継続していた。しかし術後1 年2か月経過したころより左頸部のリンパ節腫脹を認め徐々に増大傾向を示し,CA19-9 の上昇も認めたことから再発を疑われ,加療目的で再入院となった。S-1 100 mg/ body,14 日間連続内服,day 8 にCDDP 60 mg/m2,docetaxel 40 mg/m2をそれぞれ投与し,day 15〜21まで休薬期間とし,これを1 コース(以下DCS 療法)とし,合計5 コースを投与した。5コース終了後,画像検査上,左頸部のリンパ節再発は消失し,腫瘍マーカーも正常化した。投与後13 か月経過した現在も頸部リンパ節を含め再発所見は認めず,外来通院中である。進行胃癌術後の術後補助化学療法後に認めた頸部リンパ節再発に対して,DCS 療法は長期生存を期待し得る有用な治療法の一つとなる可能性が示唆された。 -
結腸癌・肝転移・大動脈周囲リンパ節転移術後再発に対しBevacizumab+mFOLFOX6 にてCR となった1 例
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われわれは結腸癌・肝転移・大動脈周囲リンパ節転移術後再発に対し,bevacizumab+mFOLFOX6併用療法を行い,CR を得た1 例を経験したので報告する。患者は65歳,男性。盲腸癌,大動脈周囲リンパ節転移,多発肝転移を認めた。右結腸切除+肝部分切除+大動脈周囲リンパ節郭清に加えて小腸間膜リンパ節郭清を行った。術後病期分類は,SSN3H1P0M1(#216)-pStageIV であった。術後補助療法としてS-1+CPT-11 を開始し,17 コース施行後に腎門部レベルでの大動脈周囲リンパ節腫大を認めた。再発後の初回治療としてbevacizumab+mFOLFOX6 併用療法を選択し,14 コース施行後にRECIST基準でのCR となった。その後も化学療法を継続しているが,術後2 年11 か月,CR確認後10 か月経過した現在もCR 継続中である。 -
側方リンパ節再発と肝再発に対して集学的治療が有効であった直腸癌の1 例
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側方リンパ節再発と肝再発に対して集学的治療が有効であった直腸癌の1 例を報告する。症例は61 歳,男性。下部直腸癌(中分化管状腺癌)に対して低位前方切除術,D2(prxD2)郭清を施行した。総合所見はpA,pN1,sH0,sP0,cM0,fStageIIIa であり,術後補助化学療法としてS-1を開始した。術後7 か月に腹部CT とPET-CTで右側方リンパ節(283rt)の再発を認めた。PET-CT ではSUVmax 23.6 の高集積を認めた。FOLFOX4 を開始したがCEA の上昇を認め,同時化学放射線療法(FOLFOX4 と60 Gy の体外照射)を行った。CEA はいったん低下したがFOLFOX4 単独治療で再上昇した。レジメンをFOLFIRI に変更し,CEA は正常値まで低下した。FOLFIRI を8 コース,FOLFIRI+bevacizumabを5コース行った。以後はCPT-11 単剤治療を継続した。術後20 か月のPET -CT では異常集積はなかった。術後26 か月に2 cm 以下の単発肝転移に対してラジオ波焼灼療法を行った。術後39 か月の腹部CT で再発を認めず,CEAは正常値であった。 -
A Case of Pathological Complete Response of Advanced Rectal Cancer to Preoperative Chemoradiotherapy Using S-1
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進行直腸癌の治療において,手術前の化学放射線療法(CRT)は術後のCRT と比較し,より少ない毒性で高い括約筋温存率と治療切除率をもたらす点で優れている。今回,進行直腸癌に対しS-1 を用いた術前CRT を施行し,病理学的完全奏効を得た1 例を経験したので報告する。最初の2 サイクル(2 週投薬1 週休薬を1 サイクルとした)は,S-1(100 mg/日)のみを経口投与した。第3 サイクルの間,放射線療法を併用し,総線量45 Gy まで照射した。最も重篤な副作用は,第3 サイクルの間のgrade 3 の白血球減少症だった。放射線療法の終了後42 日目に超低位前方切除を施行した。組織学的検査にて,生存する癌細胞は原発巣とリンパ節ともに認められなかった。手術後に吻合不全が起こったが,経肛門的ドレナージにて軽快した。手術前のS-1 を用いたCRT によって,括約筋温存と治療的切除が可能であった。この治療法は進行直腸癌の術前治療として有効であると考える。 -
抗癌剤感受性試験を用いた化学療法が効果的であった原発不明癌の1 例
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症例は64 歳,男性。胃癌の診断にて1998 年に噴門部胃切除術を施行。2007 年9 月,経過観察中に行った腹部CT 検査にて脾門部周囲に多発性腫瘍を認めたが,明らかな原発巣の同定が困難であり原発不明癌と診断された。開腹生検において大網の腹膜への強固な癒着を確認し,同部位に散在していた易出血性の腫瘤の一部を摘出し,熱可逆性ハイドロゲルを用いた三次元抗癌剤感受性試験を行ったところ,CDDP,5-FU に感受性を示した。この結果に基づき化学療法のレジメンを選択し,腹水の著明な減少,腹囲の減少,疼痛の改善を認めQOL が改善した。抗癌剤感受性試験は原発不明癌の化学療法のレジメンを選択する際の有効な手段であることが示唆された。 -
Bevacizumabを投与中に発生した不安定狭心症の2 例
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bevacizumab(BV)の副作用には,出血,創傷治癒の遅延,動脈血栓塞栓症がある。BVを含んだ化学療法中に不安定狭心症が発生し,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention: PCI)を行った大腸癌の2 例を報告する。症例1 は74 歳,男性。肝転移を有する直腸癌のためBV を含んだ化学療法を4 コース行った後,不安定狭心症のために緊急入院した。高齢以外,冠動脈危険因子はなかった。冠動脈造影にて左回旋枝中央部に有意狭窄を認めたために冠動脈ステントを使用してPCI を施行した。合併症はなかった。症例2 は67 歳,男性。肝と肺転移を伴った大腸癌に対してBV を含んだ化学療法を28 コース行った後,不安定狭心症が発生したため内科に転科した。冠動脈危険因子として家族性高脂血症と喫煙を有していた。冠動脈造影にて左前下行枝の近位部に有意狭窄を認めたために,冠動脈ステントを使用してPCI を施行した。合併症はなかった。2 例ともPCI 後狭心症は消失した。BV を含んだ化学療法後でも,不安定狭心症の患者に冠動脈ステントを使用したPCI は安全であった。
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