Volume 39,
Issue 10,
2012
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総説
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癌と化学療法 39巻10号, 1451-1457 (2012);
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1989年にアメリカChiron社のKuo博士によってC 型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子が発見され,従来原因不明であった非A非B型肝炎のほとんどがHCV による肝炎であると判明した。HCV 感染者は現在世界で約1 億7,000 万人,国内では約200 万人いると推定される。この感染症の問題点は高率に持続感染化し慢性肝炎,肝硬変,やがては肝細胞癌を引き起こすことである。肝細胞癌は,国内男性の癌死亡者数の第3 位,女性の第5 位を占め再発や二次発癌が多く予後不良な癌の一つであり,原因として約70%がHCV に起因していると報告されている。HCV はHBV とは異なり,肝臓の持続的炎症が線維化を誘導し肝硬変から肝細胞癌を発症させる。これはHCV により肝細胞の破壊と再生が繰り返されることから,遺伝子異常を誘導し発癌を生じていることも示唆される。現在HCV感染に対する治療として,ペグインターフェロン(PegIFN)+リバビリンの併用療法が実施されウイルスの排除率は各段に進歩したが,ウイルスの種類によっては現在でも約50%の有効率である。またこの抗ウイルス療法は副作用も多く,高齢者が多いHCV感染者に対して十分に行えないのが現状である。現在,プロテアーゼ阻害剤やNS5A阻害剤などの新たな抗ウイルス薬の開発が進められ,近い将来にはより効果の高い治療法の確立がなされる可能性はあるが,ワクチン投与による終生免疫の獲得治療は医療経済面,副作用の点から優れていると思われる。今後HCV 感染による慢性肝炎の段階で治癒可能となれば肝細胞癌の撲滅も期待でき治療ワクチンの実用化が期待される。
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特集
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抗がん剤または分子標的薬治療の効果判定と変更のタイミング―私はこうしている―(その2)
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癌と化学療法 39巻10号, 1458-1461 (2012);
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乳癌治療における薬剤は(副作用が許容範囲である限りにおいて)効いていなければやめる,効いていれば続けるというのが原則である。ただし(骨転移に対する)ビスホスホネートやデノスマブ,最大用量が決まっているアンスラサイクリンなど一部例外はある。しかしトラスツズマブによるbeyond PD の有効性が確認され,この原則が当てはまらない薬剤が今後も判明する可能性がでてきた。実臨床における効果判定は,RECISTを参考にしつつも,その他の臨床情報も加味し柔軟に総合的になされるべきである。
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癌と化学療法 39巻10号, 1462-1466 (2012);
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分子標的治療薬の登場とともに腎癌治療は大きく変革した。現在,本邦では四つの分子標的治療薬(VEGF またはmTORシグナルを遮断)が使用可能である。しかし,分子標的治療薬のみで治癒することはほとんどなく,治療薬の変更が必要である。免疫療法後進展例では,sorafenib が無進展生存率の点で優れている。また,VEGF-TKI後の症例にはeverolimusが有効とされている。治療薬の変更は臨床研究ではRECIST基準に基づき病変が進展(PD)となった段階で行われるが,日常臨床では医師の考え,経済的側面,有害事象などを考慮して決められる。私は多くの場合,病変の増大スピードや病変臓器を考慮し,治療薬を変更している。また,新病変が脳や骨に存在する場合は局所療法を追加することも一つの選択肢となる。今後,治療薬変更のための基準が作成されることが必要である。
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癌と化学療法 39巻10号, 1467-1470 (2012);
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去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対するドセタキセル療法は標準治療として位置付けられている。本邦での使用状況が最近報告され欧米と同様のPSA レスポンスや有害事象が認められた。効果判定には治療開始12 週後のPSA 30%レスポンス,50%レスポンスや画像検査が用いられる。また,一過性のPSA 上昇を示すPSA フレアーやPSA の安定化を呈するPSA stabilization の概念を理解することも重要である。変更のタイミングには治療効果,後治療の選択肢,有害事象などいくつかの因子を考慮する必要がある。今後の新規薬剤の登場を前に,本邦でのドセタキセルの臨床的特徴を理解することが今後のCRPC 治療体系の構築に重要であろう。
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癌と化学療法 39巻10号, 1471-1476 (2012);
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上皮性卵巣がんでは,標準化学療法はタキサン系+プラチナ系薬物の2 剤併用療法(TC 療法)であるが,近年組織型亜型によりTC 療法に不応な腺がんが指摘されている。治療効果は腫瘍マーカー(CA125)と画像診断(CE-CT)によるRECIST v1.1 規準に準じて行われる。PDが確認された時点,血液毒性以外の副障害がG 3 となった時点でレジメンの変更を考慮する。再燃・再発がんの治療目的は治癒ではなく,QOLの高い生存期間の延長が目的となる。したがって副障害の軽度のもの,短時間で外来治療可能なレジメンが選択される。分子標的治療の治療効果判定はPFS/OSで行う。ベバシツマブとオラパリブの2薬物がTC 療法との併用のランダム化試験にてPFSを改善する。今後は,total cell kill を狙った新薬や第四の治療法と考えられる免疫療法を含めた治療法が検討されるべきである。
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原著
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癌と化学療法 39巻10号, 1495-1500 (2012);
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頭頸部扁平上皮癌に対するweekly cisplatin(CDDP)併用術後化学放射線療法の第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施した。再発ハイリスク因子としての基準は,頸部リンパ節多発転移(2個以上),被膜外浸潤または切除断端陽性例(断端から5 mm未満)とした。第Ⅰ相試験による推奨用量(RD)はCDDP 30 mg/m2であり,このRD で臨床第Ⅱ相試験を行い,安全性と耐用性を検証した。第Ⅱ相試験に登録された10 例に,第Ⅰ相試験のRD で投与された3 例を加えた13 例で評価した。有害事象では貧血が最多(50%)で,粘膜炎と悪心・嘔吐が次いで(43%)多かったが,いずれもgrade 1〜2 と軽度であった。またgrade 1 の腎障害を1 例に認め,CDDP 投与を中断した。治療完遂率は85%(11/13 例)と高く,weekly CDDP 30 mg/m2のレジメンは術後化学放射線療法において安全に施行可能であると考えた。
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癌と化学療法 39巻10号, 1501-1506 (2012);
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背景: EGFR 遺伝子変異を有する肺腺癌症例における長期的抗腫瘍効果と薬物動態との関係については検討されていない。方法: EGFR 遺伝子変異を有する肺腺癌15 症例に対してゲフィチニブ250 mg を連日投与した。ゲフィチニブの投与開始日には投与直前,投与後1,4,6,8,24 時間後の血中濃度をHPLC-MS法にて測定し,最高血中濃度(Cmax)および薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC 0-24)を求め,最良効果,無増悪生存期間(PFS),全生存期間(OS)との関連性についてレトロスペクティブに解析した。結果:ゲフィチニブのCmax はPR 症例において278 ng/mL と,SD 症例の588 ng/mLよりも有意に低値であった(p<0.05)。しかしながら,ゲフィチニブのCmaxはPFS の期間との有意な相関はみられなかった。一方で,ゲフィチニブのAUC 0-24は生存期間と逆相関を認めた(r=−0.545,p<0.05)。結論: EGFR 遺伝子変異を有する肺腺癌症例では,長期的な抗腫瘍効果を考えた場合,ゲフィチニブのより高い血中濃度は必ずしも必要ではない可能性が示唆された。
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癌と化学療法 39巻10号, 1507-1510 (2012);
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2009 年5 月〜2010 年4 月に神戸市立医療センター中央市民病院において非小細胞肺がんに対しペメトレキセド単独療法を施行した33 名を対象に,70 歳未満を非高齢者群(14名),70 歳以上を高齢者群(19名)としてペメトレキセド投与の安全性を検討した。Grade 3 以上の好中球減少は,非高齢者群14.3%,高齢者群で36.8%であり(p=0.297),高齢者群において高い傾向であった。しかし,発熱性好中球減少症は両群とも1 例,それぞれ7.1%と5.3%であり(p=0.606),治療関連死はみられなかった。一方,非血液毒性のうち斑状丘疹状皮疹の発現は非高齢者群28.6%,高齢者群で36.8%であり(p=0.347),高齢者群で高率で発現していたが,ステロイド投与により対応できた。このことから,ペメトレキセド単独療法は高齢者においても選択可能な治療であると考えられた。
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癌と化学療法 39巻10号, 1511-1515 (2012);
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他複数の癌腫においてパクリタキセルとドセタキセルの交叉耐性は不完全といわれているが,胃癌においての検討はない。われわれは,パクリタキセル不応の進行再発胃癌におけるドセタキセル単剤療法(50〜60 mg/m2,3 週毎)の有効性と安全性をレトロスペクティブに調査した。対象となった21 例は,全例で2 レジメン以上の前治療を受けていた。測定可能病変を有する12 例において,奏効率は8.3%(1例),病勢安定率は33.3%であった。無再発生存期間(PFS)は中央値2.6か月,全生存期間は中央値6.7 か月であった。ドセタキセルのPFS と前治療のパクリタキセルのPFS との関連は認めず,また,ドセタキセルのPFS とタキサン無治療期間(TFI)の関連も認めなかった(スピアマンの相関係数r=−0.14 およびr=−0.02)。副作用としてGrade 3/4 の好中球減少症8 例(38%),Grade 3 の発熱性好中球減少症1 例(4.8%)を認めた。パクリタキセル不応の進行再発胃癌におけるドセタキセル療法は,少数ながら効果の認められる症例が存在したものの,前治療のパクリタキセルの効果やTFI との関連は認められなかった。
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癌と化学療法 39巻10号, 1517-1521 (2012);
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悪心・嘔吐はオピオイドによる癌性疼痛治療において頻度の高い副作用であり,患者のQOL を著しく低下させる。悪心・嘔吐に対する予防法は確立されていないが,およそ3 人に1 人が悪心・嘔吐に苦しむ。われわれはオキシコドン導入時にクリニカルパスを使用し,悪心・嘔吐対策に主として抗ドパミン作用を有するプロクロルペラジンを予防投与している。悪心・嘔吐の発症率は15.8%であり,これまでの報告よりも低率であったがプロクロルペラジン非投与例と発症率に差はなく,その有用性を示すことができなかった。ドパミン受容体(D2)に拮抗するプロクロルペラジンは悪心・嘔吐の予防に有用である可能性はあるが,D2とともに悪心に大きく関与するヒスタミン受容体H1阻害にも留意した予防対策をとることで,より悪心・嘔吐の発症率を低下させられる可能性がある。
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癌と化学療法 39巻10号, 1523-1526 (2012);
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われわれは,がん患者のせん妄に対して非定型抗精神病薬を用いた際の高血糖の出現頻度について診療録を基にして後ろ向きに調査した。2008 年6 月〜2009 年5 月までにせん妄と診断された189 例のうち非定型抗精神病薬を使用した154例を対象とした。3%(5/154)の症例で非定型抗精神病薬服用中に350 mg/dL以上の血糖値が確認されたが,薬剤の関係は疑われなかった。せん妄を合併したほとんどが非定型抗精神病薬で治療されていたが,高血糖を来す頻度は低かった。
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特別寄稿
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癌と化学療法 39巻10号, 1527-1532 (2012);
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本研究の目的は,がん専門病院が地域緩和ケアの向上のために行っていること,課題,解決策を収集することにより,地域緩和ケアを向上させる方策の具体的な工夫に関する洞察を得ることである。六つのがん専門病院の医師,医療ソーシャルワーカー,看護師を対象としたフォーカスグループを行い,質的分析を行った。緩和ケアの知識の普及,患者・家族・住民への啓発,専門的な緩和ケアの提供,緩和ケアの連携の促進についての取り組みとして合計19 カテゴリーが,現場では有効な解決策が見当たらない課題として合計7 カテゴリーが同定された。本研究で作成されたリストは各活動を行う上での工夫を系統的に整理することに役立つと考えられる。さらに,同様のフォーカスグループを全国的に行いその結果を迅速に公開する仕組みを作ることは,全国水準での地域緩和ケアの向上に貢献する可能性がある。
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症例
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癌と化学療法 39巻10号, 1533-1537 (2012);
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今回われわれは,術前導入化学療法としてcarboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX),bevacizumab併用療法が奏効し,完全切除可能であった非扁平上皮非小細胞性肺癌の1 例を経験したので報告する。症例は69 歳,女性。検診胸部単純X線写真で右中肺野の異常陰影を指摘され,当科紹介。胸部CTで右肺下葉S6に21 mm大の結節影を認め,さらに同一肺葉内孤立性肺転移と37 mm大の気管分岐部リンパ節腫大を認めた。肺腺癌cT3bulkyN2M0,Stage ⅢAと判断し,術前導入化学療法としてCBDCA+PTX,bevacizumab併用療法を2 コース施行。同一肺葉内転移の消失,気管分岐部リンパ節の縮小を得たため,右下葉切除術,併せて2 群リンパ節郭清を行い,完全切除することができた。手術時の気管支断端瘻予防の工夫として,肋間筋弁による補強を行い良好な結果を得た。最終病理結果として,明らかなリンパ節転移はなくpT1aN0M0,Stage ⅠA の報告であった。局所進行肺癌に対する外科治療の成績は決して良好ではないため,種々の集学的治療による予後向上の試みがなされている。CBDCA+PTX,bevacizumab 併用療法は,奏効率上昇の観点から術前導入化学療法として有用かもしれない。
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癌と化学療法 39巻10号, 1539-1541 (2012);
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われわれは,以前にS-1と放射線療法(RT)とを併用することで非小細胞肺癌に対し長期奏効した症例を報告した。今回,既報の症例と,S-1とRT の併用療法で長期奏効を経験した新たな1 症例を報告する。症例1 は35 歳,女性。肺腺癌p-T2N2M0。本症例は術後36 か月まではすでに報告した。術後71 か月現在,PET-CT検査においても明らかな転移や再発を疑わせる異常影やFDG の異常集積は認めていない。症例2 は37 歳,女性。右肺腺癌c-T1N3M0。前化学療法としてCBDCA+GEM,gefitinibを使用後,右肺部分切除術を施行したが転移を認めたため,縦隔,右頸部に放射線(RT)を総量60 Gy/30 Fr照射し,同時にS-1療法[50 mg/day(35 m2/day)分2 投与,2 週投与1 週休薬]を開始した結果,長期奏効を得た。術後16 か月現在,CT検査上,再燃を疑う所見は認めていない。
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癌と化学療法 39巻10号, 1543-1546 (2012);
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悪性胸膜中皮腫と気胸の合併は比較的まれであり,気胸を契機に発見された悪性胸膜中皮腫の報告は数%であるとされている。さらに,悪性胸膜中皮腫により両側の気胸を起こした症例報告は少ない。今回われわれは左気胸を契機に悪性胸膜中皮腫と診断され,経過中に右気胸を併発したまれな症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 39巻10号, 1547-1550 (2012);
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症例は85 歳,男性。2010年10 月に腹部不快感を自覚して入院となった。巨脾と腹腔内リンパ節腫脹を認め,末梢血と骨髄生検で異型リンパ球の増加を認めた。骨髄生検で異型リンパ球のcyclin D1 免疫染色は弱陽性であった。FISH 法でcyclin D1 と免疫グロブリン重鎖の融合シグナルが確認され,白血化マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma: MCL)と診断した。Ki-67陽性率が10%未満であり,2011年1 月よりrituximab 単剤で治療し完全寛解(complete response: CR)を維持している。
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癌と化学療法 39巻10号, 1551-1554 (2012);
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慢性リンパ性白血病(CLL)肝浸潤により,肝傷害を伴った慢性C 型肝炎(CH-C)患者を経験した。症例は74歳,男性。白血球数増多精査のため当院へ受診した。CT で軽度肝脾腫とリンパ節腫脹を認め,骨髄穿刺でCLL と診断した。C型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性で,transaminaseとHCV-RNA は高値を呈した。肝生検で門脈域にCLL 浸潤と小葉・門脈域にT リンパ球を認めた。CH-C に対してペグインターフェロン(PEG-IFN)-α療法を施行したところSVR が得られ,CLL の肝浸潤は減少した。本症例ではPEG-IFN-αがCH-CとCLL の両方に有効であった。
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癌と化学療法 39巻10号, 1555-1557 (2012);
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症例は60 歳,男性。胸部食道癌に対して,食道亜全摘,胃管による再建を行った。術後10 か月のCT 検査で多発肝転移を認めた。全身化学療法は,副作用により本人の希望にて短期間で中止となった。その後,肝転移の増大に対し,肝動注化学療法を行った。5-FU+CDDP のレジメンで肝転移は縮小し,特に有害事象なく約2 年間PR を維持した。肝動脈の閉塞により動注化学療法を中止するとともに肝転移の増大傾向がみられたため,50 Gy の放射線治療を行った。その後も肝転移の増大傾向があり,手術(肝右葉切除)を行った。本例では,集学的治療により食道切除後5 年,肝転移判明後4年2か月の生存が得られた。肝転移単独であれば,肝動注療法は集学的治療の一つの選択肢として考慮し得る。
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癌と化学療法 39巻10号, 1559-1561 (2012);
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症例は58 歳,男性。嚥下困難と黒色便を主訴に来院。精査にて食道胃接合部扁平上皮癌[GE,T4(pancreas),N1,H0,M0,cStageⅣa]と診断した。2001 年6 月よりlow-doseFP 療法(5-FU 500 mg/day 24h 持続投与+CDDP 10 mg/dayを5 日間投与)を開始した。画像上CR を得た。1 年半の休薬を経て胃体上部後壁に低分化腺癌として再発を認めたため,同メニューを再開した。腫瘍は消失し,再度CR となった。その後,化学療法を終了したが,化学療法終了後4 年8か月の現在まで,無再発生存中である。化学療法単独療法にて長期無再発生存中の食道胃接合部癌の1 例を経験した。
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癌と化学療法 39巻10号, 1563-1566 (2012);
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S-1/CDDPおよびcapecitabine/CDDPは,切除不能進行・再発胃癌(AGC)に対する標準一次治療である。しかしS-1 前治療歴のあるAGC 患者に対するcapecitabine の有効性に関する報告はほとんどない。今回われわれは,一次治療S-1/CDDP後の増悪により,二次治療irinotecan,三次治療paclitaxel,四次治療docetaxel と施行し,増悪後にcapecitabine/CDDPを施行し,部分奏効および約6 か月の無増悪生存が得られた症例を経験したので報告する。S-1 およびcapecitabineは経口fluoropyrimidine系のprodrugである。活性代謝物は同じ5-fluorouracil(5-FU)であることから,交叉耐性があることが推測される。S-1には,5-FU 不活性化の律速酵素であるdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)に対する阻害剤が配合され,capecitabineは腫瘍内thymidine phosphorylase(TP)により腫瘍選択的に5-FU へ活性化される。腫瘍内DPDおよびTP発現の違いによっては,必ずしも交叉耐性を示すとは限らないことが推測される。S-1 治療後のcapecitabine 治療についても検討の余地があるものと考えられた。
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癌と化学療法 39巻10号, 1567-1570 (2012);
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症例1: 58 歳,女性。肝転移を伴うS 状結腸癌に対して腹腔鏡下直腸低位前方切除を施行した。術後化学療法としてmFOLFOX6,二次治療としてFOLFIRI を使用したが,肝転移は徐々に増大し腫瘍マーカーも増大した。三次治療としてpanitumumabを単独で開始した。8 コース施行し腫瘍マーカーは著明に低下した。肝転移も著明な縮小が得られた。症例2:81 歳,男性。直腸Ra に対して腹腔鏡下直腸切断術を施行。術後XELOX にて経過観察していたが,転移性肝癌が出現。XELOX+bevacizumab を開始し,二次治療としてIRIS を使用したが,腫瘍マーカー,転移性肝癌も増大したため,panitumumabを単独で開始した。2 コース施行し腫瘍マーカーは著明な減少を認め,転移性肝癌も著明な縮小を認めた。結語:panitumumab 単独療法でも,K-RAS遺伝子野生型の再発大腸癌に対して治療効果を認める可能性がある。
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癌と化学療法 39巻10号, 1571-1573 (2012);
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症例は62 歳,女性。S 状結腸癌,肝転移(H2, cStageⅣ)の診断で術前化学療法mFOLFOX6療法を開始した。2コース目終了より粘血便および腹痛が出現したため精査を行ったところ,S 状結腸癌に起因した腸重積症を疑い,非観血的整復術を行ったが整復困難のため緊急開腹手術を行った。開腹時,S 状結腸が肛門側に約10 cm にわたり重積していた。重積状態のままS状結腸と直腸の一部を切除し,D2リンパ節郭清を行った。
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癌と化学療法 39巻10号, 1575-1577 (2012);
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症例は68 歳,男性。上行結腸癌の多発肝転移にて,結腸右半切除術を施行した。切除標本のk-ras検査結果は,野生型であった。術後,panitumumabと5-FU/LV/irinotecan(FOLFIRI)療法を7 コース施行した。7 コース後の腹部CT 検査では,転移巣の著明な縮小が認められ,手術切除可能と診断した。左葉切除とS5 の部分切除,ラジオ波による焼灼術を行った。切除標本の病理学的診断では,PR と診断された。切除不能大腸癌に対して化学療法により腫瘍縮小を行い,完全切除した場合には予後が改善されるとされている。多発切除不能大腸癌に対して,化学療法によりpanitumumabにFOLFIRI療法と肝切除手術を組み合わせた集学的治療は,大腸癌多発肝転移に対しての有効な治療法であると考えられる。
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癌と化学療法 39巻10号, 1579-1581 (2012);
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症例は37 歳,男性。右精巣の混合型胚細胞腫瘍に対して高位精巣腫瘍摘出術を施行された。術後経過観察中に血清AFP上昇・多発性肺転移を認め,BEP 療法を開始した。治療後よりAFPは正常化するも,肺腫瘍は増大傾向にあったため胸腔鏡下に肺残存腫瘍摘出術を行った。病理結果は成熟奇形腫のみであり,術後6 か月経った現在,再発はみられていない。胚細胞腫瘍の治療中・治療後に血清腫瘍マーカーが正常化するにもかかわらず残存腫瘍が増大することがある。これはgrowing teratoma syndrome(GTS)と呼称される病態であり,若干の文献的考察を交えて報告する。
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癌と化学療法 39巻10号, 1583-1586 (2012);
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2010年2 月〜2011年3 月までの間に,当院においてcapecitabine+oxaliplatin±bevacizumab(CapeOX±BV)療法を施行している患者で,oxaliplatin(L-OHP)投与中に血管痛を訴えた患者7 例にdexamethasone(DEX)3.3 mg を混合し,L-OHP/5%ブドウ糖液投与時との違いを数値的評価スケールnumerical rating scale(NRS)を用いて比較を行った。L-OHP/5%ブドウ糖液にDEX 3.3 mg を混合することで,NRS が平均7.1 から2.4 へと改善傾向がみられた。以上の結果より,末梢からのL-OHP 投与時にはL-OHP/5%ブドウ糖液内にDEX 3.3 mg を混合することは血管痛軽減に有用であると考えられる。