癌と化学療法

Volume 39, Issue 12, 2012
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特集【第33回癌免疫外科研究会,第34回日本癌局所療法研究会】
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担癌患者へのプロシュアTM 投与による免疫栄養療法の有効性に関する臨床研究
39巻12号(2012);View Description
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われわれは担癌患者を対象として,EPA 含有の栄養剤であるプロシュアTM を1 か月以上使用して,栄養療法による炎症反応の抑制効果について検討する目的で臨床試験を計画した。3 例の胃癌術後または切除不能胃癌患者で化学療法中の患者にプロシュアTM を1 か月間投与したところ,1 例でGlasgow prognostic score(GPS)の改善がみられた。プロシュアTM のコンプライアンスを含めて臨床試験で検討する必要があると考えられた。現在,経口摂取が可能でかつ3 か月以上の生命予後が想定される担癌患者50 症例を対象として,プロシュアTM を1 か月間以上摂取し,評価項目として,血圧,体重,体温,血中Alb,グロブリン,白血球数,CRP,CD4/CD8,腫瘍マーカーなどを摂取開始時および14,28 日後に観察し,これらを測定しプロシュアTM による栄養療法の炎症反応の抑制に対する効果について検討する目的で臨床試験を計画・実施中である。 -
進行再発大腸癌に対するUFT/LV 併用ペプチドワクチンカクテル療法の臨床試験
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌に対する癌ワクチンとしての特性をもつHLA─A24 拘束性ペプチドワクチンが同定された。大腸癌特異的ワクチンRNF43,TOMM34 とUFT/LV 併用療法の臨床試験を行った。重篤な有害事象を認めず安全に施行できた。RNF43 とTOMM34 両方のCTL 反応を認めた症例は,RNF43 またはTOMM34 いずれか一方のCTL 反応を認めた症例に比べ長期生存を得た。より多くの免疫反応を得るために,新しい臨床試験を計画した。進行再発大腸癌患者に対し,複数のペプチド(RNF43,TOMM34,FOXM1,MELK,HJURP,VEGFR1,VEGFR2)とUFT/LV 併用療法を開始している。 -
大腸癌Dukes’ Stage B およびC 症例における腫瘍還流血中遊離癌細胞のバイオマーカーとしての有用性
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌Dukes’ stage B およびC 症例における腫瘍還流血中遊離癌細胞(CTC)の,再発および予後予測因子としての有用性を検討した。大腸癌Dukes’ stage B 症例111 例,およびDukes’ stage C 症例86 例を対象とした。CTC の標的遺伝子には,CEA mRNA,サイトケラチン(CK)19 mRNA,CK20 mRNA と癌幹様細胞の指標であるCD133 mRNA を用い,realtime RT─PCR 法で測定した。Kaplan─Meier 法による生存曲線の解析において,CEA/CK/CD133 陽性群は陰性群に比較して,全生存率および無病生存率が有意に低下した。Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析の結果,CEA,CK19,CK20またはCD133 mRNA(CEA/CK/CD133)は独立した再発および予後予測因子であることが明らかとなった。大腸癌Dukes’stage B およびC 症例における,腫瘍還流血中のCEA/CK/CD133 mRNA を指標としたCTC の測定は,再発高危険群の選択および補助化学療法適応症例を選択する上で有用と考えられた。 -
標準治療が無効または拒否された進行・再発乳癌における免疫・温熱併用療法の有効性
39巻12号(2012);View Description
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標準治療が無効または拒否された168 例の進行・再発乳癌患者に免疫・温熱療法を施行した。評価可能病変をもった154 例のうち有効は26 例(16.9%)で,樹状細胞(DC)の有効率が25.4%と最も高かった。有効例のうち実質臓器に転移のあった20 症例は,すべて温熱と免疫の併用療法が施行された症例であった。 -
術前免疫化学療法により遠隔転移が消失し手術にて根治し得た高度進行胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は57 歳,女性。2005 年1 月ごろより下腹部に違和感が出現し精査を受けたところ,肝転移と腹膜播種を伴う長径8 cm 大の3 型胃癌と診断された。治癒切除不能と判断し,S─1/paclitaxel(PTX)/Krestin(PSK)の多剤併用免疫化学療法を合計20 コース施行した。画像上,肝転移および腹膜播種は消失したものの原発巣はCR とならなかったため,胃全摘術(D2郭清)を施行した。術中所見では腹水や腹膜播種を認めず,また術中超音波検査にて肝転移巣は描出不能であった。摘出標本の病理学的検索結果は,ypT2(mp),N0(0/42),M0,ypStage IB で,組織学的効果判定はGrade 2 であった。UFT による術後補助化学療法を1 年間施行した。術後5 年10 か月を経過した現在も無再発生存中である。 -
化学療法著効後に外科切除を行い術後縫合不全から肝転移巣の急速増大を来した胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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悪性腫瘍において,縫合不全などの周術期感染性合併症が予後不良因子となる報告が最近増えつつある。化学療法後の手術は,これらの合併症の発生頻度が増加すると考えられる。今回,胃癌,肝転移,肺転移に対し化学療法にて転移巣がCRとなり原発巣切除を施行するも,術後縫合不全から転移巣の増大を来した1 例を経験したので報告する。 -
乳癌骨転移におけるIndoleamine 2,3─Dioxygenase 発現状態について
39巻12号(2012);View Description
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乳癌骨転移患者のindoleamine 2,3─dioxygenase(IDO)の発現程度を検討した。乳癌術後に骨転移のみを認めた9 症例を対象とした。これらの症例に対し9 週間ごとに採血を行った。得られた血漿について,high─performance liquid chromatography(HPLC)を用いてtryptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kyn ratio からIDO のactivityを測定した。手術から骨転移を認めるまでの平均期間は2.1±0.7 年であった。平均観察期間は3.6±0.6 年であった。骨転移の病巣数が多い症例ほどTrp/Kyn ratio は有意に低かった。また,経過中骨転移の病巣数が増加するとTrp/Kyn ratio は低下していった。乳癌の骨転移症例においてIDO は上昇しており,病勢の進行によって,そのactivity は上昇していた。乳癌術後の骨転移症例においても病勢の進行にIDO が関与している可能性が示唆された。 -
免疫細胞療法施行患者におけるシイタケ菌糸体抽出物摂取の免疫およびQOL 改善作用
39巻12号(2012);View Description
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シイタケ菌糸体抽出物(LEM)は,腫瘍誘導性の制御性T 細胞(Treg)抑制作用をもち,免疫療法との併用効果が期待されている。本研究では,免疫細胞療法施行癌患者におけるLEM 摂取の免疫能およびquality of life(QOL)に及ぼす影響を検討した。方法: 免疫細胞療法を施行した悪性腫瘍患者10 例を対象とした。4 週間は免疫細胞療法単独,次の4 週間をLEM経口摂取(1,800 mg/day)の併用とした。試験開始時,4 週後,8 週後にQOL 調査および免疫パラメータを測定した。結果:QOL スコアは免疫細胞療法単独時に比べLEM 併用時に改善が観察された。免疫パラメータは4 週間のLEM 併用の前後で,末梢血産生IFN─γ 量が上昇傾向を示し,この上昇とTreg(FoxP3+/CD4+)の変動に関連が示唆された。まとめ: 免疫細胞療法にLEM を併用することで,QOL および免疫能が改善する可能性が示唆された。 -
S 状結腸癌肝/肺転移に対してPSK 併用FOLFOX 療法を長期継続できた2 症例
39巻12号(2012);View Description
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肝/肺転移を有する進行再発大腸癌に対してPSK 併用FOLFOX 療法を施行し,重篤な副作用なく長期にわたって化学療法を継続できた2 症例を経験した。いずれもPSK 併用により,重度の末梢神経障害などの副作用がなくFOLFOX 療法を長期間継続でき,その治療効果を十分に引きだすことが可能であったと思われる。 -
免疫療法受療中のがん患者におけるQuality of Life の検討
39巻12号(2012);View Description
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近年,患者の主観的アウトカムであるquality of life(QOL)が治療効果指標として重要視され,治療選択の上でも重要な指標として位置付けられている。しかし,がん領域において第四の治療法として注目されている免疫療法においては,患者のQOL に関する検討が不十分である。本研究では,免疫療法受療中の患者のQOL と他の治療を受療中の患者のQOL との違いを明らかにすること,免疫療法の継続が患者のQOL にどのような影響を及ぼすか経時的に検討することを目的とした。免疫療法受療中の患者にQOL─ACD への回答を求め,39 名を対象に分析を行った。その結果,薬物療法受療中の患者のほうが免疫療法受療中の患者のQOL 得点と比較して,身体状況得点が有意に低いことが示された(p<0.01)。免疫療法よって生じる副作用は少ないため,患者のQOL は治療による副作用の有無の影響を受ける結果となったと考えられる。 -
CXCR4 発現ヌードマウス可移植ヒト胃癌株に対するCXCR4 Blocker の抗腫瘍効果
39巻12号(2012);View Description
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はじめに: ケモカインレセプターであるCXCR4 は癌細胞の転移や増殖に関与している。今回,CXCR4 blocker であるAMD3100 とKRH3955 のCXCR4 発現胃癌株(K─MK─2)に対する腫瘍増殖抑制効果を比較した。方法: K─MK─2 をヌードマウスに移植し,AMD3100 は2 mg/kg を静注投与,KRH3955 は1 mg/kg と10 mg/kg の2 群で経口投与とし5 日投与2 日休薬で5 週間施行した。35 日目に腫瘍を摘出し,平均重量を比較した。結果: 平均重量±SD はcontrol 群で7.092±1.221 g,AMD3100 投与群で5.137±1.001 g(p<0.02),KRH3955: 1 mg/kg 投与群で3.895±2.120 g(p<0.01),KRH3955: 10 mg/kg 投与群で4.257±1.169 g(p<0.01)であり,control 群と比較して有意な増殖抑制効果を認めた。まとめ: AMD3100,KRH3955 はCXCR4 発現胃癌株に対し腫瘍の増殖を抑制し,胃癌におけるテーラーメード治療の一手段となり得る。 -
乳癌分子標的治療薬投与中のIndoleamine 2,3─Dioxygenase の変化について
39巻12号(2012);View Description
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乳癌術後に行われる化学療法と分子標的治療薬による生体への侵襲程度を,indoleamine 2,3─dioxygenase(IDO)の発現程度から比較検討した。乳癌術後補助化学療法を施行した9 例と分子標的治療を施行した4 例を対象とし,化学療法施行前,EC 終了時,wPTX 終了時,全化学療法終了3 週間後に採血した。分子標的療法のみを受けた4 症例も同時期に採血し,high─performance liquid chromatography(HPLC)を用いてtriptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定した。化学療法施行群はEC 施行後,wPTX 施行後にTrp/Kyn ratio が低下し,同時期の分子標的治療施行群と比較して低かった。化学療法施行後3 週間後には施行前のレベルまで復した。分子標的治療施行群のTrp/Kyn ratio は施行前から終了後までほぼ一定であった。乳癌術後の補助化学療法による免疫学的ダメージは,分子標的治療と比較して高いと考えられた。 -
胃癌術後の体重減少の検討─ 手術単独群とS─1 補助化学療法群の比較─
39巻12号(2012);View Description
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背景: 胃癌術後の体重減少は,術後の患者の栄養状態や生活の質に関連する重要な指標であるが,未だ十分な検討はされていない。対象と方法: 2002 年3 月~2010 年3 月までに当院で根治的手術を施行したStage II/III 胃癌163 例を対象とした。手術単独群(A 群)と術後補助化学療法施行群(B 群)の2 群に分け,両者を比較検討した。結果: A 群81 例,B 群が82 例であった。背景因子は,A 群の年齢中央値67 歳,B 群の年齢中央値64 歳。術式は,A 群の幽門側胃切除(DG)39 例/胃全摘(TG)42 例,B 群のDG 36 例/TG 46 例。その他,背景因子に差はなかった。A 群の1/3/6 か月後の体重変化は93.1/92.9/94.9%,一方で,B 群の1/3/6 か月後の体重変化は92.9/90.4/91.9%であった。結論: 胃癌術後の体重減少率は,補助化学療法施行群で有意に大きかった。これらの症例に対する術後栄養療法の必要性が示唆された。 -
癌患者におけるMyeloid─Derived Suppressor Cells(MDSC) の検討
39巻12号(2012);View Description
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骨髄由来免疫抑制細胞(myeloid─derived suppressor cells: MDSC)は,未熟な骨髄細胞でがん組織やリンパ節,末梢血中に見いだされる免疫抑制細胞で免疫療法の効果を阻害する因子として注目されている。また感染や外傷によっても誘導されるため,癌の進展における炎症の関与においても重要な存在である。これらの動態を検討するために種々の癌患者末梢血のMDSC を測定した。対象癌患者は食道癌,胃癌,大腸癌,肝細胞癌,胆管細胞癌,膵臓癌,乳癌,卵巣癌,甲状腺癌,肺癌と健常成人の合計240 検体である。末梢血単核球を分離しflow cytometry にてMDSC を測定し,IFN─γ 産生能とsIL─2R 濃度をELISA にて測定した。MDSC 値は食道,胃,大腸,肝,膵,乳癌で健常成人に比べて有意に高値を示した(p<0.05)。大腸癌ではMDSC 値は好中球数,sIL─2R 血中濃度と正の相関を(p<0.05),IFN─γ の産生,albumin 濃度,リンパ球数とそれぞれ負の相関を示した(すべてp<0.05)。また卵巣癌症例では腹水中にMDSC を認めた。このようにMDSC は好中球数にみられるように炎症に関与し,リンパ球数,albumin 値などにみられるように宿主の栄養状態の悪化に関与すると推測される。 -
Human Endoplasmic Reticulum Oxidoreductin 1─Like α( hERO1─L α) の MHC class I 分子発現制御と癌免疫療法に対する効果予測因子としての可能性
39巻12号(2012);View Description
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癌免疫療法は,癌に対する新たな治療法として注目されているが,その効果は未だ十分といえず,同療法に対する効果予測因子も確定的なものがないのが現状である。癌免疫療法ではMHC class I 分子の発現制御が重要な因子であり,MHC classI 分子の安定的な発現にはS─S 結合形成が必須である。そこでわれわれは,種々の蛋白質のS─S 結合形成を担うhuman endoplasmic reticulum oxidoreductin 1─like α(hERO1─L α)に着目し,MHC class I 分子発現との関連性を検討した。大腸癌細胞株のhERO1─L α 過剰発現株にて,MHC class I 分子の細胞表面への発現増加を認めた。一方,hERO1─L α knockdown細胞株では細胞表面上に発現するMHC class I 分子が低下し,その結果癌特異的T 細胞応答が減弱した。このようにhERO1─L α はMHC class I 分子の発現および腫瘍免疫応答に重要な役割を担っており,癌免疫療法の効果予測因子となる可能性がある。 -
樹状細胞ワクチン療法の効果を治療前微量全血刺激下mRNA 定量法で予測する
39巻12号(2012);View Description
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進行癌患者の多様な免疫反応を利用して樹状細胞ワクチン療法の効果を予測した。対象は,進行癌患者26 人の治療開始前に少量の血液を採取し,7 種の免疫刺激後,17 種類のリンパ球関連mRNA を測定した。患者は,膵癌5 例,胃癌と乳癌3 例,大腸癌,卵巣癌,肺癌,食道癌と腎癌2 例,その他の癌が5 例を対象とした。7 種の刺激剤は,PHA,HAG,zymosan,IFN─γ,rIL─2,aTCR,picibanilを使用し,mRNA定量はIFN─γ,TNFSF1,TNFSF2,TNFSF5,IL─10,TGF β,CTLA4,PD1,FOXP3,GMCSF,VEGF,IL─8,CCL8,CXCL3,IL─2 を測定した。樹状細胞ワクチンの調整は,末梢血単球をGM─CSF,IL─4 で培養し,HLA─A class I 適合性のWT1 ペプチドワクチンとMUC─1.4 ペプチドワクチンでパルスし,隔週で5回接種した。樹状細胞ワクチン療法の効果は,CR+PR 4 例,SD 9 例,PD 13 例であった。治療予測は,PHA,zymosan,rIL─2 の三つの刺激剤でIFN─γ,CTLA4,TNFSF2,CXCL3,GMCSF,IL─10 の6 種のmRNA 定量でレトロスペクティブに100%の効果予測ができた。この方法により樹状細胞ワクチン療法の適応基準を明確化できる。 -
HydroCellTM を用いた末梢血単核球からの樹状細胞の培養
39巻12号(2012);View Description
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樹状細胞ワクチン療法は有効性が報告されているものの,その実施はアフェレーシスの使用や煩雑な培養手順など困難な点が多く制限されているのが現状である。われわれは,日本国内での樹状細胞ワクチンの大規模無作為臨床試験の実施をめざし,簡便で安価な樹状細胞自動培養システムの構築を研究しており,今回超低付着性細胞培養器材HydroCellTM を用いたヒト末梢血単核球からの樹状細胞培養方法を検討した。HydroCellTM で培養した樹状細胞はすべて浮遊状態を保ち,回収はピペッティングのみで容易に可能であった。回収された樹状細胞の割合は既存の培養法とほぼ同等であり,成熟樹状細胞の割合は増加が認められた。ヒト末梢血単核球からHydroCellTM を使用することで簡便に樹状細胞培養が可能であることが示され,今後の樹状細胞自動培養システムの開発への可能性が示された。 -
転移性肝腫瘍に対する定位放射線治療
39巻12号(2012);View Description
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2011 年までに定位放射線治療(stereotactic radiotherapy: SRT)を施行した転移性肝腫瘍20 症例(27 照射部位,30 結節)を検討した。平均年齢69.4 歳,平均腫瘍径22.5 mm,単発/多発13 例/7 例で,原発は大腸8 例,乳腺4 例,胃3 例,食道2 例,その他3 例であった。放射線照射は52.8 Gy/4 回/1 週で行った。治療効果は,CR 8 部位,PR 10 部位,SD 2 部位,PD 3 部位,未評価4 部位で,奏効率は78%であった。治療効果と原疾患や腫瘍径との相関は認めず,化学療法を併施した例で高い効果が得られた。生存期間は1 年以上が10 例で,うち8 例は2 年以上の長期生存であったが,一方で4 例が6 か月以内に死亡していた。早期死亡例は他部位病変を有し,SRT の効果が得られる前に死亡していた。転移個数では単発13 例中6例が2 年以上生存したが,多発7 例では2 例のみであった。転移性肝腫瘍に対するSRT は良好な局所制御効果を示した。単発で他部位病変がなく化学療法併施可能な症例が,最もよい適応と思われた。 -
肝癌に対する免疫細胞BAK リンパ球の肝動注療法
39巻12号(2012);View Description
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われわれは高度進行固形癌に対して副作用がなく耐性もできず,QOL を良好に維持しながら“がんと共生しよう”という発想の下,CD56 陽性リンパ球を中心とした新免疫細胞BAK(BRM activated killer)療法を考案した。しかし投与法がBAK 細胞の点滴静注のため,肝癌に対しては血管,リンパ管系が複雑で,リンパ球が肝癌まで到達し難いのではないかと考え行ってこなかった。今回,BAK 細胞を肝動注で肝癌に到達させる試みを患者である外科医が希望したので,その経過を報告する。2005 年,大腸癌肝転移例患者の了解の下,自己リンパ球をカテーテルにて肝動注を行い副作用がないことを確認した。そこで2008 年12 月より,直腸癌手術後肝転移を認めた52 歳の男性医師にBAK 細胞の肝動注を行った。100 億個ずつ毎月1 回ずつ6 回カテーテルによる肝動注を行い,その後通常の点滴静注によるBAK 療法を月1 回ずつ行った。その結果,CT─PET の画像上肝転移の完全な消失がみられた。2012 年2 月現在,元気に外科医師の仕事を勤めており,肝癌に対してBAK細胞の肝動注が期待される。 -
CDDP 動注が著効したVp3 肝細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は69 歳,男性。肝細胞癌に対するRFA 施行後に再発を認め,当院紹介受診となった。血液検査所見では,AFP,PIVKA─II の異常高値を認めた。画像所見では肝S7/8 に径約56 mm の腫瘍と門脈前区域枝から左門脈に腫瘍塞栓を認め,HCC,Vp3,cT3N0M0,cStage III と診断した。治療はアイエーコール(CDDP)を用いた肝動注療法(TAI)を選択した。約2 か月おきに計3 回CDDP 115 mg を右肝動脈から注入した。腫瘍マーカーはTAI 開始前AFP 367 ng/mL,PIVKA─II 18,973 mAU/mL であったが,治療開始後,著明な低下を認め,TAI 2 回目施行後にはAFP 5 ng/mL,PIVKA─II 8 mAU/mL と正常範囲内となった。画像上,TAI 2 回目施行時に門脈内腫瘍栓の縮小を認め,TAI 3 回目施行後約2 か月のCT で腫瘍,腫瘍栓の消失を認め,早期相でAP─shunt が造影されるのみであった。以上より,RECIST 基準では縮小率54%でPR,modified RECIST 基準ではCR と判断した。現在,最終TAI 施行後約1 年経過しているが,追加治療なく無再発生存中である。門脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌に対する治療として,CDDP を用いたTAI が有効な選択肢となる可能性が示唆された。 -
高度進行肝細胞癌(Vv3,IM3)に対し肝切除,TACE にて長期生存を得ている1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は76 歳,男性。HCV に対するインターフェロン(IFN)治療後SVR が得られ,その後の経過観察中,肝S7/8,S8,S5,S2 にhypervascular な腫瘍と右肝静脈内腫瘍栓を認め,多発肝内転移(IM3),右肝静脈内腫瘍栓(Vv2)を伴った肝細胞癌(HCC)と診断した。肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行し肝内病変の制御は可能であったが,肝静脈内腫瘍栓は下大静脈内まで進展(Vv3)していた。遠隔転移を認めず,肝機能が保たれていたため,拡大肝後区域切除,S2,S5,S8 部分切除,下大静脈内腫瘍栓摘除術,胆嚢摘出術を施行した。術後4 か月目より肝内再発を認めたがTACE を反復することにより制御可能であり,術後4 年2 か月現在,生存中である。HCV に対するIFN 治療によりSVR が得られ,肝機能が良好に保たれていたことと再発が肝内のみで個数も少なかったことから,肝切除および反復TACE が可能で病巣を制御でき,長期生存が得られたと考えられた。 -
DSM 動注および肝静脈閉塞併用ラジオ波凝固療法を施行した大型高分化型肝細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は70 歳,男性。C 型肝硬変の経過中,S8 に径5 cm の高分化型肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)を認めた。肝機能は不良(Child─Pugh score 7 点,肝障害度C)であるため手術不適応と判断したが,経時的に増大傾向であり,interventional radiology(IVR)による治療を選択した。腫瘍径が5 cm の乏血性高分化型HCC であることから,TACE,RFA単独では治療効果が期待できないと判断し,経カテーテルIVR による血流遮断併用下(DSM 動注および肝静脈バルーン閉塞)にRFA を施行した。併用治療後腫瘍を包括した焼灼範囲が得られ,1 年6 か月後の現在,明らかな再発を認めていない。 -
術前経皮的肝灌流化学療法と肝切除にて完全奏効した両葉多発肝細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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術前経皮的肝灌流化学療法(PIHP)と肝切除にて完全奏効した両葉多発肝細胞癌(HCC) の1 例を経験したので報告する。症例は77 歳,男性。PIVKA─II の高値を認めたため腹部MRI 検査を施行したところ,多発肝腫瘍を指摘され当科紹介となった。精査にてHCC を肝右葉に最大径4.8 cm を筆頭に計11 個,肝左葉に径3.6 cm を1 個の腫瘤を認めた。肝予備能の低下,腫瘍の局在から根治切除不能であったため,まず右葉の多発HCC 制御を目的としたPIHP を先行したところ,PIVKA─II が正常化し,4 週間後の腹部造影CT 検査にて右葉の多発HCC はいずれも早期濃染が消失し,壊死と考えられた。PIHP 後7 週間目に,左葉の残存HCC に対して拡大肝左葉切除術を施行。PIHP 施行後6 か月経過した現在,無再発生存中である。 -
TACE と腹腔鏡下肝切除で加療した後期高齢者肝細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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肝細胞癌(HCC)に対する治療は切除可能病変であれば,肝切除術が第一選択となる。しかし,全身状態や肝障害から非切除治療を選択する場合もある。一方近年,腹腔鏡下手術手技が肝切除術に導入され,同手技による低侵襲性の可能性が示されつつある。今回われわれは,HCC に対して複数回の肝動脈化学塞栓療法(TACE)と不応病変に対する腹腔鏡下肝切除術を施行し,良好な経過が得られた後期高齢者症例を経験したため報告する。症例は81 歳,女性。慢性C 型肝炎の診断で近医通院中,肝S3 に径4 cm のHCC を指摘された。単発で,Child─Pugh A であったが年齢や全身状態を考慮し,2005 年12月にTACE を施行した。その後,肝S2,S3 に再発を繰り返し,2007 年3 月,12 月,2009 年2 月とTACE を施行した。12月のCT で肝S3 のTACE 後病変の頭腹側に約1 cm の再発を認め,TACE 不応病変と判断し肝切除術を考慮した。手術侵襲の低下の可能性を目的として,2010 年1 月に腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した。手術時間は134 分,出血量は少量であった。術後経過は良好で,合併症なく術後12 日目に退院となった。術後2 年の現在,再発病変を認めず,経過観察中である。 -
胆管腫瘍栓を有する肝細胞癌に対して拡大肝切除を施行した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は61 歳,男性。近医において肝機能異常を指摘され,当科紹介となった。CT にて肝右葉にびまん性に広がる腫瘍を認め,随伴する胆管腫瘍栓を確認した。腫瘍栓の先進部は総胆管内に存在し閉塞性黄疸の原因となっていたため,経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)を先行させた。減黄・肝機能の改善後に,肝左三区域切除に胆管切開・腫瘍栓摘除を併施し,治癒切除をし得た。病理組織学的には中分化型肝細胞癌であり,胆管腫瘍栓にはviable な腫瘍細胞の増殖がみられた。術後合併症は認めず,第22 病日に軽快退院となった。術後4 か月のCT において残肝再発を認めたためTACE を施行し,術後6 か月現在,新たな病変の出現を認めない。胆管腫瘍栓を伴う肝細胞癌は予後不良との報告が多いが,拡大肝切除に腫瘍栓除去を根治的に行うことで予後に寄与する可能性が示唆された。 -
肝細胞癌異時性肋骨転移に対する1 切除例
39巻12号(2012);View Description
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症例は76 歳,男性。肝細胞癌に対して2011 年5 月,肝拡大右葉切除術,肝S2 部分切除術を施行した。原発巣切除の4 か月後より強い右背部痛があり,CT・骨シンチグラフィを施行したところ,右第8 肋骨に骨破壊像を伴う転移巣を検出した。他に再発所見は認めず,2011 年12 月に肋骨切除・腫瘤摘出術を施行した。病理組織学的に肝細胞癌の転移と確定診断され,切除断端に癌の遺残は認められなかった。局所再発予防目的の放射線療法を付加し,骨転移術後6 か月現在,癌性疼痛も消失し無再発生存中である。本症例のように,肝内・肝外再発に対するコントロールが良好な単発性骨転移においては外科的切除も治療の選択肢の一つになり得ると考えられた。 -
TACE と肝切除術により長期生存を得ている両葉多発肝細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は73 歳,男性。腹部CT 検査にてS2,S3,S4,S8,S1 に両葉多発肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)を認めた。明らかな脈管浸潤,遠隔転移はなし。肝動脈化学塞栓療法(TACE)を複数回施行することで肝右葉病変は制御でき,制御困難であった左葉に対しては肝左葉切除術を施行した。術後残肝再発を認めるも複数回TACE 施行にて制御可能であり,術後3 年8 か月経過した現在も,全身状態は良好で経過観察中である。 -
再発肝細胞癌に対するミリプラチン動注の初期治療経験
39巻12号(2012);View Description
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ミリプラチン(MP)の初期治療成績は,抗癌剤初回治療例に対して高い有効性が報告されている。今回われわれは,再発肝細胞癌(HCC)に対するMP 動注を経験したのでその効果および安全性について報告する。再発HCC 17 例(全例で化学療法治療歴あり)に対するMP 動注による初期治療評価を行った。担癌区域を選択しMP を動注し,治療効果判定でPD以外であれば治療を継続とした。投与回数は平均1.8 回で,1 治療当たりのMP 使用量は60~140 mg,総投与量は中央値120mg であった。1 回動注後の総合評価判定では,奏効率17.6%,病勢制御率47.1%,最終総合評価判定では奏効率17.6%,病勢制御率29.4%であった。無増悪生存期間は中央値86 日間であった。有害事象として,門脈腫瘍栓に対する放射線治療併用動注後の糖尿病性腎症併存例で38 日後に死亡した1 症例を除き重篤なものは経験しなかった。さらなる検討が必要であるが,再発HCC に対するMP 動注の治療効果は従来の治療法を凌駕するとはいい難いが,肝予備能や腎機能への影響が少ないことが示唆された。 -
肝癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)の麻酔法の検討─RFA 歴のある患者に対するアンケート調査─
39巻12号(2012);View Description
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目的: 経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation: RFA)では穿刺,通電により苦痛を伴うこともあり,全身麻酔(全麻)で行っている施設もある。今回,肝細胞癌に対しRFA を受けたことのある患者を対象に,アンケート調査という形で全麻法の有用性の検討を行った。方法: 東京肝臓友の会に協力していただきRFA の麻酔法,結節数,治療日数,治療後在院日数,RFA 時の苦痛の程度や再度RFA を受けることになった場合の気持ちなどの項目について行った。結果: 局所麻酔(局麻):全麻は113:24 であった。苦痛あり:なしは局麻で64:49,全麻で0:24 であった。再度RFA を行わなければならなくなった時の気持ちに関しては,「嫌」:「嫌ではない」は局麻では65:45,全麻では4:20 であった。結論: 局麻に比較して全麻では苦痛制御能に優れ,再度のRFA に対して嫌悪感が少ないことがわかった。 -
大腸癌肝転移に対してラジオ波焼灼術を併用し肝切除を行った1 例
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌多発肝転移に対して,ラジオ波焼灼術(RFA)を併用した肝切除症例を経験したので報告する。症例は53 歳,男性。S 状結腸癌,切除不能多発肝転移に対してCapeOX+bevacizumab 療法を開始した。7 コース施行して一定の腫瘍縮小効果を得たが,肝機能障害のため継続困難となった。術前肝機能評価では,広範囲肝切除による術後肝不全発症の危険性があり,可及的に肝切除量を減らす方針として肝表面に近い転移巣は肝部分切除,深部はラジオ波焼灼を予定した。原発巣の高位前方切除に続いて,肝両葉12 個の転移巣に対して9 病巣を切除,3 病巣をラジオ波で焼灼した。術後IRIS+bevacizumab 療法7 コース,S─1 単独療法を継続しているが,術後18 か月経過した現在,無再発生存中である。EBM は十分ではないが,RFA を併用した肝切除も有効と考えられた。 -
食道癌気道瘻に対する食道ステント挿入術の検討
39巻12号(2012);View Description
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当科における食道癌気道瘻に対する食道ステント挿入術の治療成績をretrospective に検討した。2000 年1 月~2012 年5 月まで6 例に瘻孔閉鎖目的にて食道ステント挿入術が施行された。全例で水分摂取以上の経口摂取が可能となり,2 例は経口摂取のみで栄養摂取が可能となった。呼吸器症状は3 例で咳嗽が挿入直後から改善し,人工呼吸器管理となっていた1 例が挿入2 日後に離脱可能となった。他の2 例では胸部X 線写真で肺炎像の改善が認められた。挿入術後の生存期間中央値は31日であった。死因はいずれも原病死で,死亡時の背景因子として吐血3 例,縦隔炎1 例,肺炎1 例を認めていた。十分なインフォームド・コンセントの下,食道ステント挿入術を施行することで呼吸器症状の軽減や経口摂取を可能とし,quality of life(QOL)を速やかに改善し得る可能性があると考えられた。 -
気管Stent 留置術を施行した4 例の経験
39巻12号(2012);View Description
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悪性腫瘍による気道狭窄に対する気道stent 留置術4 例について検討したので報告する。2008 年から施行された気道stent 留置術は4 例である。原疾患は食道癌3 例および悪性リンパ腫1 例の計4 例である。気道stent 留置術後2 例には化学放射線療法が施行され,1 例は留置後4 年生存中,1 例は留置2 年後に原病死した。1 例は化学療法を選択したが,2 か月後に喀血により死亡した。また,悪性リンパ腫による1 例は化学療法を施行中である。悪性腫瘍による気道狭窄は気道stent が有効な治療手段であり,その後の追加治療を行うことで十分な治療効果を期待し得る。 -
切除不能進行胃癌による胃・十二指腸狭窄に対する十二指腸ステント留置術の検討
39巻12号(2012);View Description
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本邦において2010 年4 月に内視鏡的胃・十二指腸ステント留置術が保険適応となった。今回われわれは,4 例の切除不能進行胃癌による胃・十二指腸狭窄に対してWallFlexTM duodenal stent(WDS)を留置した。留置成功率は100%であった。留置後には狭窄による嘔気・嘔吐症状は全例において改善した。全例が全粥食の経口摂取が可能となった。偶発症・合併症として穿孔1 例,再閉塞1 例,ステント移動1 例を認めた。経口可能期間は3~6(中央値5.3)か月,予後は5~14(中央値6)か月であった。3 例にS─1 を含むレジメンによる化学療法を施行し得た。十二指腸ステント留置術は切除不能進行胃癌による胃・十二指腸狭窄に対する有用な治療であると考えられた。 -
胆嚢癌浸潤による十二指腸狭窄にステントを3 回留置しQOL が維持できた1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は80 歳,女性。近医で胆道系酵素の上昇を認め,当科を紹介された。精査の結果,胆嚢癌,肝直接浸潤,十二指腸浸潤と診断し,化学療法を開始した。GEM を7 コースしprogression disease(PD)となったため,S─1 を7 コース行ったところ閉塞性黄疸が出現し,総胆管にmetallic stent を留置した。外来で経過観察をしていたが,十二指腸に狭窄を認め,expandable metallic stent(EMS)を挿入した。3 か月後と7 か月後に腫瘍の十二指腸EMS 内浸潤による狭窄を認め,EMSを再挿入した結果,食事は良好に摂取され,外来での経過観察が可能となりQOL を保つことができた。 -
大腸癌肝転移閉塞性黄疸例に対する内視鏡的胆道ドレナージの検討
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌肝転移症例において閉塞性黄疸を伴う場合は,胆道ドレナージの成否が予後に大きく影響する。今回われわれは,閉塞性黄疸を伴う大腸癌肝転移症例に対し内視鏡的胆道ドレナージを施行した症例についてretrospective に検討したので報告する。対象と方法: 2004 年4 月~2011 年12 月までの期間に,内視鏡的胆道ドレナージを施行した閉塞性黄疸を伴う大腸癌肝転移症例9 例についてretrospective に検討した。結果: 胆道ドレナージ後のT─Bil 値,AST,ALT,ALP は胆道ドレナージ前と比較して有意に改善を認めた。内視鏡的胆道ドレナージ施行後の生存期間中央値は133 日であった。再度,化学療法が導入可能であったのは4 例のみであり,胆道ドレナージ後に化学療法が再開できた症例は,化学療法が再開できなかった症例と比較して有意に予後良好であった(p=0 . 014)。考察・結語: 内視鏡的胆道ドレナージは閉塞性黄疸合併大腸癌肝転移症例に対し有効で,化学療法の再開につながり予後を延長する可能性があるが,原疾患の予後,PS などを十分に考慮し適切に施行すべきである。 -
薬理血管造影の原理を応用したNoradrenalin 併用動注化学療法の検討
39巻12号(2012);View Description
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薬理血管造影の考えは,動注化学療法の改良に役立つとAbrams が推測した。われわれは,抗腫瘍効果を上げるためnoradrenalin で増強した,① selective drug delivery,② increased injection pressure and,③ ischemia of tumor についてWalker─256 腫瘍を使い検討した。Walker─256 腫瘍は腫瘍移植2,4 日後,hypovascular phase,hypervascular phase に分けた。noradrenalin はhypervascular tumor に有意な抗腫瘍効果を示した。Evans blue において測定された血管透過性はnoradrenalin によりhypervascular phase で亢進し,hypovascular phase で変化がなかった。成績から,noradrenalin によりprecapillary vessels の収縮で毛細循環が低下し,hypervascular tumor の組織への血流が増加することが示された。hypervascular phase ではnoradrenalin で腫瘍内MMC は上昇し,正常組織は減少した。hypervascular tumor で腫瘍組織内圧以上の注入圧は薬剤の腫瘍組織へのよりよい搬送を可能とし,抗腫瘍効果の増強があると考えられた。noradrenalin の持続注入による腫瘍支配動脈の収縮は,腫瘍のlow blood flow を惹起し,その後再還流はhypervascular tumor に抗腫瘍効果の増強がみられた。すなわち,noradrenalin は腫瘍組織血流を低下し腫瘍壊死をもたらした。 -
集学的治療を施行した門脈内腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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門脈内腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌は,既存の治療法に対して抵抗性を示し,極めて予後不良である。今回われわれは,対側の門脈腫瘍栓を伴う(Vp4)高度進行肝細胞癌に対して肝切除およびインターフェロン(IFN)併用5─FU 動注化学療法(fluorouracil arterial infusion and interferon therapy: FAIT)を併施し,さらにその後のIFN/リバビリン(RBV)併用療法にてC 型肝炎ウイルス(HCV)抗体の陰性化が得られた1 例を経験したので報告する。症例は61 歳,男性。2008 年7月,食欲不振および体重減少が出現し当院紹介受診。慢性C 型肝炎に伴う肝細胞癌[T4(Vp4)N0M0,Stage IVA]と診断し,9 月に拡大肝右葉切除術および門脈腫瘍栓摘出術,肝動注ポート留置術を施行した。術後は2008 年10 月~2009 年2 月までFAIT を3 コース施行した。その後,再発なく2 年が経過し,長期予後が期待できると判断したため,慢性C 型肝炎に対してIFN/RBV 併用療法を48 週間施行した。治療開始後6 週間でHCV─RNA は陰性化した。現在,術後3 年8 か月で無再発生存中である。 -
大腸癌肝転移治療における肝切除時RFA 併用治療の検討
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌肝転移症例5 例に対して,肝切除時にRFA 療法を併用した。全例同時性であった。RFA 療法はRadionics 社製のCool─tip 型電極を用いて焼灼を行った。インピーダンスの上昇に応じて通電を間欠的に調節して腫瘍を焼灼した。2 例は大腸癌原発巣切除と同時に肝切除を行った。多発病変に対して補完的にRFA 治療を行い,相対的治癒切除が得られた。残りの3 例は,同時性肝切除困難と判断し大腸癌原発切除後,全身化学療法を行った。全身化学療法後には肝機能障害や肝予備能低下のため切除範囲が限定されたが,RFA を併用することによって相対的治癒切除が得られた。肝切除術後,造影CT を施行したが,RFA 病巣はsafety margin を伴って壊死に陥っていた。平均観察期間は2 年1 か月(最長4 年2 か月)で,3 例生存中である。 -
集学的治療により長期生存中の胆管癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は64 歳,男性。2006 年9 月に閉塞性黄疸のため当院へ入院。腹部CT で総胆管下部の狭窄を指摘,減黄のためPTBD を施行,細胞診でadenocarcinoma を認め,下部胆管癌と診断された。10 月減黄後に手術を施行するも,術中所見にて重症の肝硬変と診断,試験開腹術となった。術後ERBD チューブ留置の上,放射線療法(50 Gy)を施行し,さらにS─1 内服(120 mg/body)を開始した。2009 年10 月にERBD チューブ閉塞のため,胆道ステントを留置した。2011 年1 月の腹部CTで十二指腸壁肥厚を指摘,再発による十二指腸浸潤と診断され,2 月に十二指腸ステントを留置,さらにgemcitabine 点滴(1,600 mg/body)へ変更した。現在,初診時から5 年以上経過し,外来で治療を継続しながら社会復帰されている。非腫瘍因子により切除不能であった下部胆管癌に対して,集学的治療により長期生存を得た症例を経験したので報告する。 -
ダブルバルーン内視鏡で確定診断し治療した術後再発胆管癌の3 例
39巻12号(2012);View Description
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胆管癌の術後再発形式として局所再発がしばしばみられるが,画像での確定診断が困難な場合が多く,化学療法開始の判断に迷うことも多い。病理学的確診を得ることが望ましいが,従来の内視鏡では胆道再建後の吻合部に到達することが困難であった。ダブルバルーン内視鏡は,内視鏡先端とオーバーチューブ先端に装着されたバルーンを交互に拡張させることにより腸管の深部に挿入することが可能であり,胆道再建後の胆管空腸吻合部へ到達し標本を採取することが容易となった。また,ERCP 用デバイスを使用することにより,胆管の直接造影や内視鏡的胆管ドレナージも可能である。最近われわれは,胆管癌術後断端部局所再発に対してダブルバルーン内視鏡下に狭窄部の擦過細胞診・ステント留置を行い,pathological evidenceを得て化学療法を開始しているため報告する。 -
手術不能胆管細胞癌に対するCombination Therapy─全身化学療法ならびに肝動注療法─
39巻12号(2012);View Description
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右側腹部痛と食欲不振を主訴に来院されたリンパ節転移,肺転移を有する52 歳,女性の胆管細胞癌症例である。最初,全身転移に対してgemcitabine(GEM)1 g と5─fluorouracil(5─FU)1 g の隔週交互の全身化学療法を施行,次に主腫瘍に対して5─FU の短期肝動注療法を併用した。それにより症状が軽快したため,外来にて毎週5─FU の動注療法と隔週ごとにGEMの全身化学療法を施行した後,GEM(全身)+5─FU(動注)と5─FU(全身)+5─FU(動注)の併用療法に切り替えた。これにより主腫瘍の著明な縮小ならびにリンパ節転移の消失,肺転移の縮小も認めたが,その後肺転移が増大したため,GEMならびに5─FU の増量,mitomycin C(MMC)の追加と5─FU の3 日間持続投与に変えたところ,再び肺転移は縮小している。切除不能,有症状,全身転移を有する胆管細胞癌に対して肝動注療法と全身化学療法の併用療法は有用と思われた。 -
膵癌術後の残膵再発に対して再切除を行った1 例
39巻12号(2012);View Description
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膵癌の再発に対する治療は全身化学療法が一般的であるが,膵癌術後残膵再発に対する再切除は報告が少ないものの,一部に良好な成績が報告されている。今回,膵癌術後24 か月目に認めた残膵再発に対して根治切除をし得たので報告する。症例は71 歳,男性。膵尾部癌に対して術前化学放射線治療を行った後,膵体尾部切除術を施行した。最終診断は,StageIII(T3N0M0),mod,ly1,v1,ne2,mpd(-),PCM-,DPM-,R0,Evans IIa であった。術後補助化学療法に5─FU 肝動注/gemcitabine(GEM)全身化学療法を行い,完遂した。術後24 か月目のCT で残膵に約15 mm 大の再発を認め,残膵全摘を施行した。組織学的診断はmod,ly2,v1,ne1,mpd(-),PCM-,DPM-,R0,N0 であり,根治切除であった。術後6 か月経過した現在,無再発生存中である。 -
膵癌術後肝転移に対する経皮的肝灌流化学療法(PIHP)の治療経験
39巻12号(2012);View Description
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膵癌術後肝転移に対し,当科で開発した経皮的肝灌流化学療法(PIHP)による治療を行ったので報告する。症例は69歳,男性。膵体部癌にて膵体尾部切除施行(pT3,pN0,pStage III)。術後補助化学療gemcitabine(GEM)を6 か月施行後,CT で1 cm の肝転移を認めた。S─1 を開始したが肝転移が増大したため,third─line としてPIHP を施行した。薬剤は肝細胞癌での実績を基にdoxorubicin(DXR)80 mg,mitomycin C(MMC)62 mg を使用した。治療後6 週のCT では腫瘍径としては著変なかったが,内部壊死による液状化を思わせる所見を認めた。また,腫瘍マーカーはCA19─9: 44,469 → 4,268 U/mL,CEA: 28.8 → 5.4 U/mL と著減した。しかしその後腫瘍マーカーが漸増,肝転移増大,局所再発および腹膜転移が出現し,PIHP 後約1 年で原病死した。本症例では早期に肝転移増大および腹膜再発を認め,PIHP が予後に寄与したとはいい難い。しかし腫瘍マーカーの著減やCT での壊死所見を認めたことから,一定の効果も期待できるものであった。 -
胃切除および術後化学療法が奏効し長期生存が得られた肝転移を伴った胃小細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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肝転移を伴う胃小細胞癌に対して胃切除と術後化学療法を行い,長期生存が得られた1 例を経験したので報告する。症例は67 歳,男性。進行胃癌[UM,Less,Type 2,tub1,cT3,cN1(No. 3),cH1,cP0,cM0,cCY0,cStage IV]の診断で,臨床試験に登録し胃切除および術後化学療法(S─1+CDDP 療法)施行の治療方針となった。手術は胃全摘術(D1+)およびRoux─en─Y 再建を施行した。病理結果は,small cell carcinoma の診断で,同時に施行した免疫染色でchromogranin A,synaptophysin,CD56 がいずれも陽性であった。術後S─1+CDDP 療法は中止とし,biweekly CPT─11+CDDP 療法を13コース,S─1 療法を2 コース,weekly paclitaxel を5 コース施行,weekly CPT─11 を6 コース施行し,現在も外来治療を継続中である。胃小細胞癌は比較的まれとされる疾患で,予後は極めて不良である。また現在,標準治療は確立されていない。今回われわれは,胃切除および術後化学療法が奏効し長期生存が得られた肝転移を伴った胃小細胞癌の1 例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。 -
術後S─1/Paclitaxel+CDDP 同時併用化学放射線療法/S─1 の逐次療法が奏効し長期生存が得られた切除断端陽性Stage IIB 胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は31 歳,男性。進行胃癌(ML,Less,Type 3,sig,cT3,cN0,cH0,cP0,cM0,cCY0,cStage IIA)の診断で,胃切除の治療方針となった。手術は幽門側胃切除術(D2 郭清)およびRoux─en─Y 再建を施行した。病理結果は,ML,Less,Type 3,por 2,T4a,N0,H0,P0,M0,CY0,pStage IIB であったが,肛門側切除断端が陽性であった。全身制御をS─1 化学療法,局所制御を化学放射線療法で行う方針とした。まず術後1 か月目より,S─1(80 mg/m2)を1 コース投与した。次に,十二指腸断端周囲に,paclitaxel(90 mg/日,day 1,15,29)+CDDP(40 mg/日,day 1,15,29)同時併用化学放射線療法45 Gy を施行した。引き続きS─1 を5 コース施行した。その後,再発はみられず術後5 年経過した現在も無再発で外来通院中である。胃癌術後,局所制御と全身制御を同時に行う必要がある場合,今回の方法は一つのオプションとなり得る。 -
胃神経内分泌細胞癌2 症例の診断と治療の検討
39巻12号(2012);View Description
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比較的まれな疾患である胃神経内分泌細胞癌を2 例経験したので報告する。症例はともに男性。U・M 領域各1 例,病型は3 型(se,pN2,M1)が1 例と中心陥凹を伴うSMT 様1 例(sm,pN1,M1)であった。大きさはともに20 mm 以上であった。治療法は,1 例は胃全摘術+胆嚢摘出術を施行。胆囊に組織学的転移が認められ,後に大動脈周囲リンパ節転移が出現し,術後2 年4 か月で原病死となっている。1 例は肝転移を伴い,幽門側胃切除術+肝切除術+ラジオ波焼灼術(RFA)を施行。術後6 か月で多発肝転移再発を認め,現在化学療法施行中である。 -
集学的治療により10 年以上の長期病勢コントロールを得ているStage IV 小腸GIST の1 例
39巻12号(2012);View Description
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今回われわれは,原発巣切除後に多発肝転移・腹膜播種を認めたstage IV の小腸GIST に対して,経時的に肝切除,放射線治療,イマチニブ,スニチニブ,TAE による集学的治療を行い,原発巣切除から現在まで14 年間という長期にわたる病勢コントロールが得られている症例を経験した。症例は49 歳,女性。小腸原発高リスクGIST の切除3 年後に肝S4,5 に転移を認め,肝中央2 区域切除術を施行した。その1 年後に出現した単発の腹膜播種に対して放射線治療を施行した。さらに4か月後に多発肝転移が出現し,イマチニブ400 mg/日を開始した。5 年6 か月間PR を維持していたが,肝転移巣の1 か所にイマチニブ耐性が出現したため,スニチニブ50 mg/日に変更したが無効であった。再度イマチニブ400 mg/日に戻しTAEを計2 回施行したところ,現在までPR となっている。進行再発GIST の長期病勢コントロールに集学的治療が有効と考えられた。 -
薬物耐性後PS 不良に外科的介入でQOL の改善した小腸GIST の1 例
39巻12号(2012);View Description
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切除不能,薬物耐性後のPS 不良なGIST に対し,症状緩和目的の外科的介入を行い,QOL が改善した1 例を経験したので報告する。症例は60 歳台,男性。2008 年12 月に前医にて腹腔内多発腫瘍に対し腹腔内腫瘍摘出術(腫瘍残存)および小腸バイパス術を施行しGIST[α─SMA(-),S─100(-),CD34(-),c─kit(+),5/50 HPF 以上の高リスク]と診断された。術後imatinib 二次耐性,sunitinib 不耐容となり再度imatinib の投与を行ったが腫瘍は増大し,画像上PD となった。再投与から7 か月目には腫瘍圧排による腸閉塞,腹壁圧排によるコントロール不良な疼痛,下大静脈圧排による下肢浮腫が出現し,PS 3 でほとんど寝たきりの状態であった。症状緩和目的に腫瘍切除術を施行した。術前に認めていたすべての症状は著明に改善しPS 1 となり,4 か月間ではあったがQOL の大幅な改善を認め,外科的切除の意義は十分にあったと考える。 -
消化器癌術後経過観察中に発見した肺結節切除例の診断と切除のタイミングに関する検討
39巻12号(2012);View Description
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過去9 年間において,消化器癌術後経過中に肺結節を発見し肺切除を行った9 例を検討した。大腸癌術後6 例,食道癌,肝細胞癌,乳頭部癌術後が各1 例で,肺切除時の年齢は55~77(中央値63)歳,男女比は6:3 であった。原発巣切除後1 年以内に肺結節を発見したのは4 例,うち3 例は経過観察して増大傾向を確認した後に切除,1 例は直ちに生検を行い切除した。他の5 例は原発巣切除後2~7 年で肺転移と診断した。肺結節数は1,2,3 個が各7,1,1 例であり,2 例は同時に肝転移もあり肝切除も施行した。肺切除術式は食道癌の1 例が再右開胸を行い,他はいずれも胸腔鏡下手術が行われた。再肺転移・再肺切除を1 例経験した。原発巣切除後の生存期間は30~>110 か月,肺切除後の生存期間は6~>80 か月,5 例が生存中である。病理組織所見は,肺転移7 例,原発性肺癌が2 例であった。転移性か原発性を鑑別するためにも切除前の組織生検をすることが望ましいと考えるが,原発巣切除術後早期に出現した小肺結節に対しては,増大傾向を確認した上で肺切除することがタイミングとして望ましいと考えた。 -
大腸癌関連の穿孔例の検討
39巻12号(2012);View Description
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当院にて経験した大腸癌関連穿孔の手術症例を検討した。症例は13 例であり,年齢は52~77 歳,男女比は10:3。癌占拠部位はS 状結腸と直腸が合わせて10 例を占めた。穿孔部は,不明1 例,癌部5 例,非癌部(口側)が7 例で,その内訳は閉塞性腸炎部の穿孔4 例,憩室部の穿孔2 例,不明が1 例であった。癌部穿孔例は,他臓器浸潤(si)が4 例,腹膜播種(se)が1 例といずれも局所進行癌であった。閉塞性腸炎部穿孔例中の1 例は,原発巣が左側結腸で穿孔部が盲腸であった。憩室の穿孔例は,2 例とも穿孔部と原発巣は近接していた。術式は非切除1 例を除き,穿孔部および原発巣(癌部)の切除を施行した。病期はstage II 5 例,stage IIIa 3 例,stage IIIb 1 例,stage IV が4 例であった。手術直接死亡が2 例(15.4%)で,これらを除く11 例中9 例(81.8%)に治癒切除が行われた。癌死が2 例,再穿孔死,他病死が各1 例であった。6 例が2 年以上生存した。再発生存中3 例,無再発生存中が2 例である。大腸癌穿孔に対して,癌部を含めた穿孔部切除を基本術式としている。長期生存には,敗血症の積極的な管理と癌の可及的な制御が必要である。 -
直腸癌局所再発に対する集学的治療の現況と治療成績
39巻12号(2012);View Description
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直腸癌局所再発に対する集学的治療の現況と治療成績を明らかにして,その治療戦略を検討する。対象: 対象は2000~2011 年に経験した直腸癌治癒切除後の局所再発43 例。結果: 男性26 例,女性17 例,年齢は60 歳。再発部位は局所単独23例,2 臓器以上20 例,再発形式は限局型25 例,側方浸潤型が18 例であった。骨盤内臓全摘13 例を含む外科切除が24 例に行われ,R0 手術は87%で得られた。外科切除の3 年生存率42%,5 年生存率は29%であり,化学放射線療法(CRT)などの非外科的治療症例よりも有意に予後良好であった。また,限局型の予後は側方浸潤型よりも有意に良好で,側方浸潤型の無再発生存はCRT を選択した3 例のみであった。結論: 限局型に対してはR0 をめざした術前化学放射線療法と外科切除が第一選択であり,側方浸潤型では根治的CRT も考慮すべきである。 -
乳癌集学的治療における外来センチネルリンパ節生検の意義
39巻12号(2012);View Description
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乳房温存手術(Bp) およびセンチネルリンパ節生検(SNB)は乳癌手術の低侵襲化により,現在では早期乳癌の標準的治療となった。通常,Bp とSNB は一期的に行われるが,われわれは外来手術での局所麻酔下SNB にて,組織学的な診断をつけた上で,化学療法・内分泌療法やBp を施行する遂次療法を行っている。術前に針生検により乳癌の確定診断を得られたT1─2,N0─1,M0 の20 例を対象とした。2 例(10.0%)で転移が確認され,それぞれのintrinsic subtype に対応した術前補助療法が行われ,二期的にBp を施行した。SNB 陽性の症例は,二期的手術の際に腋窩リンパ節郭清を追加した。局所麻酔下でのSNB 先行の遂次療法は,術中迅速組織診断に伴う偽陰性症例や偽陽性症例に対する過大侵襲を未然に防ぐことが可能であり,乳癌集学的治療における正確な治療前診断への寄与が期待できる。 -
集学的治療を行った乳癌髄膜癌腫症4 例
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乳癌髄膜癌腫症はまれな転移形式であるが,予後は極めて不良であり未治療では4~6 週とされる。治療は全身化学療法,髄腔内化学療法,放射線療法などの集学的治療が行われるが,未だ確立された治療法は存在しない。今回われわれは,当科で経験した乳癌髄膜癌腫症4 症例に対し,集学的治療を試みたので報告する。4 症例のうち髄膜のみの転移は1 例,他の3例は脳転移を伴っていた。診断は髄液細胞診や造影MRI が有用であった。治療は局所療法としての全脳照射および抗癌剤の髄腔内投与,また化学療法の全身投与を含めた集学的治療を行った。乳癌髄膜癌腫症に対する治療は,限られた予後に対する適切な治療を選択することが課題であるが,積極的な集学的治療を行うことでQOL や予後の改善につながるケースも存在することが確認された。 -
S─1+Letrozole 投与が局所に効果的であった進行乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例: 75 歳,女性。主訴は,右上腕部腫大。現病歴は,2009 年12 月ごろより右上腕部腫大を認めた。そのまま放置していたが,右乳房の皮膚も変化を認めたため当院を受診。局所所見では,右乳房および右腋窩にかけて皮膚潰瘍を伴う腫瘤を触知した。針生検にてpapillotubular carcinoma の診断であり,T4bN1M1,stage IV,ER(+),PgR(+),HER2 score 0であった。心機能低下および精神的不安定があることから,S─1(80 mg/body)を2 週間投与2 週間休薬とletrozole(2.5mg/po)で開始した。投与後,著明にリンパ節縮小,皮膚潰瘍消失,腫瘍縮小,上腕リンパ浮腫は改善し,腫瘍マーカーも減少した。結語: 高齢者局所進行乳癌では,化学療法は副作用も強いため使用薬剤が制限されるが,third─line であるS─1 を投与したことでcPR を得られたことから,S─1 のfirst─line での投与も可能であることが示唆された。 -
盲腸癌肺転移術後の胸腔鏡ポートサイト再発を切除し得た1 例
39巻12号(2012);View Description
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盲腸癌肺転移胸腔鏡下切除後のポートサイト再発を切除し得た1 例を経験した。症例は57 歳,女性。51 歳時に盲腸癌の診断で,結腸右半切除術を施行した。術後2 年で肺転移を認め胸腔鏡下肺部分切除術を施行した。初回術後3.5 年で後腹膜骨盤壁再発を認め,再発腫瘍切除術を施行した。初回術後5.5 年で胸壁ポートサイト再発を認め,左転移性胸膜胸壁腫瘍切除術+左肺上葉および前鋸筋部分的合併切除術+胸壁再建術を施行した。以降,bevacizumab+FOLFIRI による化学療法を行い初回手術から7 年11 か月,胸壁再発手術から2 年2 か月後の現在も新たな転移再発を認めていない。この症例は,異時性かつ複数部位の転移巣に対して積極的な切除術と化学療法を行うことにより,良好な結果を得ている。 -
放射線化学療法によりCR が得られた高齢者Stage IV 肛門管癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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放射線化学療法によりCR が得られた高齢者Stage IV 肛門管癌の1 例を経験したので報告する。症例は81 歳,女性。肛門出血,肛門痛を主訴に近医を受診し,直腸癌の疑いにて紹介となった。現症では肛門右側を中心に6.5 cm 大の腫瘍を認め,右鼠径部に腫大したリンパ節を触知した。SCC は16 ng/mL と上昇し,CT では肛門右側に外表露出する7 cm 大の不整な腫瘤を認め,右鼠径リンパ節の腫大,肝S7 に転移病巣も伴っていた。生検結果は扁平上皮癌。化学療法のレジメンは高齢者でありlow─dose S─1+CDDP とした。放射線治療は,原発~骨盤内~鼠径リンパ節を含めた4 門照射(1.8 Gy×28=50.4Gy)を行った。治療終了時にPR,6 か月後にはCR が得られた。外来ではS─1 の内服を行っている。現在1 年3 か月経過するが,再発もなく通院中である。高齢者Stage IV 肛門管癌において放射線化学療法は有用であると考えられた。 -
集学的治療にて寛解状態を維持している切除不能高度進行直腸癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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切除不能高度進行直腸癌に対し,化学放射線治療を含めた集学的治療にて良好なQOL を保っている症例を経験した。症例は52 歳,女性。2008 年6 月に腹痛を主訴として初診。大腸内視鏡にて直腸Rb に全周性2 型癌を認めた。CT では肝肺転移はみられないものの,高度の局所進展(子宮付属器浸潤および左尿管浸潤)を認めた。切除不能進行直腸癌と診断し,2008 年7 月横行結腸人工肛門造設後,S─1 併用放射線治療(50 Gy)を施行。引き続き,mFOLFOX6+bevacizumab(BV)療法を開始した。2 コース終了時に両側水腎症が増悪したため,右腎瘻を造設した。計20 コース施行したところ画像上病変は縮小し,CEA も正常化した。続いてsLV5FU2+BV 療法およびS─1 内服にて寛解状態が持続していたため,2011 年2 月右腎瘻抜去可能となった。治療開始より4 年経過時点で再燃兆候なく,PS 0~1 を維持しつつ外来通院中である。 -
術前にイマチニブ投与を行って切除した下部直腸GIST の2 例
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症例1 は58 歳,男性。下痢を主訴に受診,精査で下部直腸GIST と診断した。直腸切断術が必要と考えられたが,肛門温存の希望のためイマチニブ術前投与(400 mg/日)を開始。23 週間の投与の結果,腫瘍は約67%に縮小を認め,手術による完全切除を行うとともに肛門温存が可能であった。症例2 は66 歳,男性。感染性心内膜炎に対する入院加療中に下血を認め,精査で下部直腸GIST と診断した。感染性心内膜炎の治療を優先する必要からイマチニブ術前投与(400 mg/日)を開始したが,11 週でイマチニブによる横紋筋融解症を発症し投与を中止。この時点で腫瘍は約53%に縮小しており,手術を行って完全切除と肛門温存が可能であった。GIST に対するイマチニブ術前療法は,現時点で臨床試験段階の治療として位置付けられているが,完全切除率や手術の安全性を向上させる集学的治療として有効な選択肢になり得るものと考えられた。 -
直腸GIST 腹膜転移症例に対して減量手術でQOL 改善が認められた1 例
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症例は49 歳,男性。排便困難を主訴に他院を受診した。精査にて腹腔内巨大腫瘍を認めたため開腹生検を施行し,GISTの診断を得たので2008 年4 月よりimatinib の内服を開始した。しかし増大傾向を認めたため,sunitinib 導入目的にて当院に紹介となった。腫瘍は長径30 cm で肝周囲には腹膜転移を認めた。2009 年2 月よりsunitinib の内服を開始した。PR が継続していたが,2010 年8 月より増大傾向を認めた。症状緩和目的にて2011 年4 月に腫瘍の減量手術(不完全切除)を施行した。10 月に腫瘍の再増大による腹部膨満が著しくなり,減量手術を再度施行したが12 月に永眠された。GIST に対する症状緩和目的での減量手術が,best supportive care の一つとなり得る可能性が示唆された。 -
広範な皮膚浸潤を伴う高齢者進行性乳癌手術の工夫
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症例1 は63 歳,女性。主訴は左乳房腫瘤。左乳頭の陥没,胸骨前面の巨大腫瘤と皮膚の発赤を認めた。胸骨への直接浸潤を伴ったためT4cN3M0,stage IIIC と診断した。術前化学療法FEC100(5─fluorouracil,epirubicin,cyclophosphamide)6 コースとnab─PTX 260 mg/m2 5 コースを行った。partial response(PR)であった。症例2 は83 歳,女性。主訴は右乳房腫瘤と皮膚の発赤。右乳房AC 領域に皮膚発赤と20×15 cm の乳房腫瘤,右腋窩リンパ節腫脹を認めた(T4bN1M0,stageIIIB)。いずれの症例も皮膚と乳房腫瘤から針生検(core needle biopsy)を行い,浸潤性小葉癌,TN 乳癌[ER(-),PgR(-),HER2(-)]と診断された。手術は広範な皮膚浸潤を含むように切除線を描き,乳房切除術と腋窩郭清を行った。皮膚移植を予定していたが健側のretromammary space を広背筋前縁まで剥離し,その健側の皮膚を患側の欠損部に当てるようにした。その結果,健側の下垂した乳房は挙上される。この方法は整容性に優れ,また自家皮膚を充填するため皮膚トラブルなく,その後の放射線治療も円滑に行え,高齢者には有用であると考えられた。 -
局所療法(外科的切除とSBRT)と全身療法により長期生存が得られた乳癌再発症例
39巻12号(2012);View Description
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症例は52 歳,女性。1994 年,右乳癌にて胸筋温存乳房切除術,腋窩リンパ節郭清術を施行し,術後補助化学療法を行った。1997 年に両側肺,右卵巣転移,2003 年に2 回目の左肺転移,2004 年に3 回目の肺転移,胸壁再発を認め,それぞれに手術,化学療法,ホルモン療法を施行した。2008 年に胸骨,左第7 肋骨に骨転移が出現し,抗体療法(trastuzumab),ホルモン療法,放射線療法を行いPR を得た。しかし,2010 年に骨転移が進行し疼痛コントロール不良となったため,定位放射線治療を施行したところ除痛が得られた。全身療法と局所療法により長期生存が得られている再発症例であると考えられる。 -
術前診断cStage II 胆管癌に対する術前化学放射線療法
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当科では,術前診断がcStage III,IV の根治切除可能な胆管癌に対し,局所進行制御を目的としてgemcitabine(GEM)を用いた術前化学放射学療法の臨床試験を施行している。今回,術前cStage II と診断された胆管癌にも術前化学放射線療法の意義があると考え検討した。当科の2008~2011 年の胆管癌手術企図症例のうち,術前診断と病理診断の比較が可能であったのは75 例で,術前診断cStage II の症例は19 例(25%)であった。これら19 例の病理診断で12 例(63%)はpStage III 以上であった。また,pT 因子は9 例(47%)でpT3 以上,pCur A は12 例(63%)にとどまった。これに対し,cStage II と診断され術前化学放射線療法を施行した5 例の胆管癌切除症例では,すべてHM0,DM0,EM0,pCur A を得ている。術前化学放射線療法が術前診断困難な局所進展を制御していることが推察される。今回の検討でcStage II 胆管癌においても,術前化学放射線療法による局所制御が手術成績向上に有益と示唆された。 -
術前治療後に腹腔動脈合併膵体尾部切除を行った局所進行膵体部癌の5 年生存例
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症例は59 歳,男性。総肝動脈・脾動脈・腹腔動脈周囲神経叢浸潤を伴う高度局所進行膵癌と診断された。術前化学放射線療法(NACRT)として,gemcitabine(GEM)600 mg/m2 を隔週投与し体外照射を計24 Gy 行ったところ,CT 上明らかな腫瘍縮小効果は認めなかったが,CA19─9 の半減を認めた。腹腔動脈合併膵体尾部切除術を施行した。病理診断では,高度な膵内神経・膵外神経浸潤を認め,膵切離断端にも膵外神経浸潤を認めたことからR1 手術と判断された。術後化学療法としてGEM 1,000 mg/m2 を隔週投与し,膵断端再発抑制のためGEM を5 年間継続したところ,術後5 年を無再発で経過した。高度局所進行膵癌において,NACRT,外科的切除,術後化学療法を組み合わせた集学的治療が治療成績の向上に寄与する可能性があると考えられた。 -
局所進行直腸癌に対する術前化学放射線療法
39巻12号(2012);View Description
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2008~2011 年に当科において,術前化学放射線療法を行った37 例の局所進行直腸癌について検討した。治療レジメンは放射線照射45 Gy(1.8 Gy/日×25 日間)にS─1 とirinotecan(CPT─11)の投与を並行して行った。CPT─11 はday 1,8,22,29 の4 回(80 mg/m2)投与し,S─1 は80 mg/m2/日をday 1~5,8~12,22~26,29~33 に分2 で投与した。治療終了,6~8 週間後に根治手術を行った。手術前,画像診断時のdownstage 率は40%であった。観察期間の中央値は664 日で全例生存中である。再発は8 例にみられ,局所再発は骨盤内リンパ節再発の1 例のみである。grade 3~4 の有害事象は27%にみられ,うち1 例は間質性肺炎であったが,いずれも保存的に軽快した。局所進行直腸癌に対する術前化学放射線療法は局所制御率が高く,有害事象も認容できるが,さらなる症例の集積と長期のフォローアップが必要である。 -
T4 直腸癌に対する術前化学療法で病理学的完全奏効が得られた1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は48 歳,男性。肛門部痛と尿の混濁を主訴に近医を受診した。下部消化管内視鏡検査で上部直腸に全周性の2 型病変を認め,生検で高分化型腺癌の診断を得た。CT 検査で上部直腸を中心とした壁肥厚,直腸膀胱境界の消失,膀胱内ガス像が認められた。膀胱浸潤を伴うT4 直腸癌であり,根治切除には骨盤内臓全摘術が必要と判断され,膀胱温存をめざした術前化学療法の方針とした。回腸ストーマ造設後にmFOLFOX+bevacizumab を5 コース施行しPR の評価が得られ,膀胱温存が可能と判断して手術を施行した。手術所見では膀胱部分切除で膀胱温存が可能であり,低位前方切除と膀胱部分切除術を施行した。病理組織学的検査では,切除標本に癌細胞の残存は認めずに病理学的完全奏効と判定された。若干の文献的考察を加え報告する。 -
術前放射線化学療法後,薄筋皮弁で会陰再建をした痔瘻癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は47 歳,男性。24 年前から痔瘻に対する治療を繰り返していた。今回,痔瘻が改善しないため生検を施行したところ痔瘻癌と診断された。腹部骨盤造影CT およびMRI で海綿体への浸潤が疑われたため,術前化学放射線療法(S─1/照射60 Gy)を施行した。これにより腫瘍は縮小したため腹会陰式直腸切断術を施行し,広範囲に及ぶ会陰欠損に対しては薄筋皮弁を用いた会陰再建を行った。海綿体は温存でき,病理組織検査でも切離断端陰性であった。局所進行痔瘻癌に対し,術前放射線化学療法が有効であることが示唆され,広範な会陰欠損に対する再建手技の向上は治癒切除をめざす上での重要な要素になると考えられた。 -
ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子を主成分としたTrafermin(フィブラストスプレー) を用いた胃癌術後難治性瘻孔の治療
39巻12号(2012);View Description
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胃癌術後の十二指腸断端縫合不全は重篤な合併症の一つであり,保存的に加療可能であっても治療に難渋することも多い。われわれは,十二指腸断端縫合不全による難治性瘻孔に対しヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growthfactor: bFGF)を主成分としたTrafermin(フィブラストスプレー)を用いて完治させた症例を経験したので報告する。症例は70 歳,男性。胃体部早期胃癌(T1bN0M0,Stage IA)に対し,幽門側胃切除術,D1 郭清,Roux─en Y 再建を施行した。術後十二指腸断端縫合不全を認め保存的に治癒するも再燃し,約1 年2 か月に及ぶ難治性瘻孔となった。Trafermin を50 μg/日ドレナージチューブから瘻孔内注入したところ,約4 週間で瘻孔閉鎖に至った。適応を十分に検討すれば,Trafermin は胃癌術後難治性瘻孔に対する新たな治療戦略の一つになると考えられる。 -
肝腸間膜動脈幹型の肝動脈が膵内を走行した十二指腸癌の1 切除例
39巻12号(2012);View Description
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膵頭十二指腸切除術を安全で根治的に施行するには,肝動脈の分岐形態とその走行を十分把握して手術に臨む必要がある。上腸間膜動脈と総肝動脈の共通管は,肝腸間膜動脈幹と呼ばれ非常にまれである。肝腸間膜動脈幹より分岐した総肝動脈が膵実質内を走行する症例に対して膵頭十二指腸切除術を施行する場合,まずは根治性を第一に考えて総肝動脈を温存するか合併切除するかを判断する必要がある。次に合併切除する場合は再建するか非再建かを判断し,再建する場合には再建方法を,非再建の場合は総肝動脈の術前コイリングや術中のドップラー血流計による肝血流測定などを術前から計画しておくことが重要である。 -
mFOLFOX6 が奏効した十二指腸癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は73 歳,女性。食思不振,体重減少のため当科を受診した。血液検査で炎症,胆道系酵素の上昇を認めたため,精査目的に入院となった。CT では,胸腹水,下部総胆管に不整形の濃染像,総胆管,肝内胆管,主膵管の拡張,傍大動脈リンパ節腫大を認めた。上部内視鏡検査では,十二指腸下行脚,正常なVater 乳頭周囲に管腔の3/4 周にわたり腫瘍を認めた。傍大動脈リンパ節に腫大を認め,根治的な手術は困難と判断し,ERBD tube を挿入,減黄した後にmetallic stent の挿入を行った。生検の結果は,papillary to well differentiated tubular adenocarcinoma であった。免疫染色の結果,intestinal typeと考え,中心静脈ポート留置の上,mFOLFOX6 を開始したところpartial response となり,現在,外来で治療継続中である。 -
十二指腸癌術後腹膜播種再発に対して集学的治療にて長期予後を得た1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は65 歳,男性。2006 年6 月に原発性十二指腸癌の診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した。術後はS─1 による補助化学療法を施行した。2007 年2 月に右水腎症と右腎門部の結節を認め,腹膜播種再発と診断した。水腎症に対して尿管ステントを挿入した。3 月よりDOC+S─1 を開始し,病変進行にて8 月よりCDDP+S─1 を開始した。2009 年5~6 月に放射線治療を施行し,再発巣の縮小を認めた。2010 年2 月より病変の再拡大にてbi─weekly CTP─11 を開始し,2011 年1 月よりweekly PTX を開始した。その後,再発巣は徐々に拡大し,術後5 年経過した2011 年6 月に死亡された。治療期間中,重篤な合併症は認めなかった。本症例は,化学療法と放射線治療・ステント治療を組み合わせることにて,再発病変は残存・経時的拡大はしたものの,QOL を保ちつつ長期予後を得ることができた。 -
空腸癌術後再発に対しFOLFOX6 が有効であった1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は73 歳,男性。腸閉塞にて当院入院。小腸内視鏡にて空腸癌と診断された。空腸部分切除,横行結腸切除,リンパ節郭清施行(空腸転移あり,Stage IV)。術後6 か月のCT にて転移性肝腫瘍,肺腫瘍を認め再発と診断された。FOLFOXを行いpartial response と診断される。9 コースの化学療法後progressive disease と診断され,FOLFIRI に変更し化学療法を継続中である。 -
イマチニブ増量投与により長期生存を得ている小腸再発GIST の1 例
39巻12号(2012);View Description
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再発GIST の治療には難渋することが多い。再発を繰り返すもののイマチニブ増量と外科的治療を行い,長期生存している小腸GIST の1 例を報告する。症例は67 歳,女性。空腸原発GIST で空腸部分切除が行われた。2 年後腹壁などに再発を認め,イマチニブ400 mg/日が開始されたが,2 か月後には新規の転移巣が出現した。原発腫瘍の遺伝子解析でKIT exon 9に変異が確認されたため,イマチニブを800 mg/日に増量してPR─SD が得られた。初回手術から3 年後には新規病変が出現し,同病変に対する腫瘍切除を行った。再手術から10 か月後に再度新規病変が出現したが,イマチニブ800 mg/日の増量投与でPR─SD を維持し,初回手術より約7 年5 か月が経過した現在も継続加療中である。再発小腸GIST に対して,イマチニブの増量と外科的治療を組み合わせた集学的治療は有効な治療法と考えられた。 -
術中肝腫瘍同定困難例に対するICG 蛍光肝臓手術ナビゲーション
39巻12号(2012);View Description
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はじめに: indocyanine green(ICG)蛍光法は術中の肝区域染色や胆道造影の他,ICG 試薬の術前投与によって肝腫瘍にICG が取り込まれる特性より,微小な肝癌を術中に特定するのに有用とされる。今回,最近2 年間に当科で経験した術中視触診および腹部エコー(US)において,腫瘍の同定が困難であった肝腫瘍症例をICG 蛍光法により腫瘍部位特定が可能であった数例を経験したので報告する。方法: 全例手術1~2 週間前に肝機能検査としてICG 試薬の静脈内注射を行った。カメラはPhotodynamic Eye(PDE)赤外線カメラ(浜松ホトニクス社)を使用した。結果: transcatheter arterial chemoembolization(TACE)および局所凝固療法治療後の再発肝細胞癌症例3 例,大腸癌術後化学療法奏効後の転移性肝癌症例3 例,肝内胆管細胞癌2 例,術前CT 検査で指摘されなかった肝表面存在肝癌症例2 例が,腫瘍同定および切除ライン決定においてICG蛍光法が有用であった。TACE 治療後の再発肝細胞癌症例においては,視触診およびUS において再発肝癌部位の切除ライン決定は困難であったが,PDE カメラ使用により肝表面腫瘍の蛍光発色が明瞭に描出された。しかし実質切離中においては,前治療による瘢痕組織にも蛍光発色が認められた。化学療法後転移性肝癌では,化学療法により転移巣が縮小してもPDE カメラ使用により明確に腫瘍部位特定は可能であったが,腫瘍壊死もしくは腫瘍細胞残存の術中の質的診断は不可能であった。胆管細胞癌においては,US で胆管拡張は確認できるが腫瘍辺縁が不明瞭であった。PDE カメラ使用により,腫瘍を含めた胆管拡張部に蛍光発色が明瞭に描出された。術前CT 検査で指摘されなかった肝表面存在肝癌症例においても,腫瘍の同定にICG蛍光法が有用であった。考察: 肝癌に対する前治療後の術中視触診およびUS において腫瘍同定困難な症例に対して,PDE 赤外線カメラを用いたICG 蛍光法により腫瘍部位は明瞭な蛍光発色を呈した。胆管細胞癌における報告はこれまで少ないが,ICG 蛍光法による腫瘍描出機序としては,胆汁うっ滞を来すことにより担癌肝区域として描出される。同手法は切除術式の選択を含めた肝臓手術ナビゲーションとして有用であった。 -
肝細胞癌との鑑別が困難であった限局性結節性過形成(FNH)の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は59 歳,男性。アルコール性肝障害にて治療歴があり,当院受診3 年前より禁酒していた。人間ドックの腹部エコーにて肝腫瘤の指摘あり,2011 年3 月精査加療目的で当院紹介となった。肝障害度A,HBs─Ag(-),HCV─Ab(-),腫瘍マーカーは正常範囲内であった。腹部CT で肝S7 に単発の25 mm 大の腫瘤を認め,dynamic CT では早期相で濃染,後期相でwash out された。MRI ではT1 強調画像,T2 強調画像ともにhigh intensity であり,EOB─MRI 肝細胞相で造影効果を認めた。肝細胞癌(HCC)として典型的な画像所見ではなかったが,結節性限局性過形成(FNH)などの良性腫瘍としても典型的な所見でなく,臨床的に高分化型HCC を否定できず,2011 年5 月肝S7 部分切除術を施行した。病理組織学的検査でFNH の診断となった。 -
内科的治療後の肝細胞癌リンパ節転移に対し摘出術を施行した1 例
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症例は66 歳,男性。2009 年6 月から多発肝細胞癌(HCC)に対して他院で,TACE 治療2 回,RFA 治療を2 回施行していた。2010 年11 月,腹部CT で肝十二指腸間膜内に単発のリンパ節転移(径23 mm 大)を認め,精査加療目的で12 月当科に紹介受診となった。当科の画像検査では,2011 年2 月腹部EOB─MRI 検査で肝内病変のコントロールも良好であったが,リンパ節転移が径33 mm 大と増大傾向を認めた。PET─CT 検査ではリンパ節転移以外の肝外転移を認めなかった。リンパ節転移が単発で,肝内病変のコントロールも良好であるため,2011 年3 月リンパ節摘出術を施行した(病理組織所見: 低分化型HCC リンパ節転移)。術後経過は良好で術後11 日目に退院となった。2012 年1 月腹部CT で肝内多発再発を認めたため,2 月TACE 治療を施行した。リンパ節摘出術から1 年3 か月経過現在,肝外転移は認めていない。 -
十二指腸癌術後の肝細胞癌に対して塞栓術と肝切除を行った1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は65 歳,女性。十二指腸癌に対して,膵頭十二指腸切除術を施行後1 年目に肝S8 に直径2 cm の腫瘍を指摘。診断的治療として肝動脈化学塞栓療法(TACE)を先行し,TACE 後十二指腸癌の再発がないことを確認した後,右第8 肋間開胸・開腹による肝S8 部分切除術を施行した。肝切除後2 年目に肝S7,S8 に肝細胞癌(HCC)の再発を認め,右葉・前後区域分岐部を切離ラインの指標とし,肝門部の血流遮断をせず肝右葉切除術を施行した。胆道再建後のHCC に対する治療は,肝膿瘍や胆管壊死などの胆道合併症を引き起こすリスクが高いが,選択的TACE や術式の工夫により胆管合併症を回避し根治治療を行うことが可能である。 -
動注化学療法後に門脈腫瘍栓が縮小し切除した肝細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は84 歳,女性。心窩部痛およびPIVKA─II の上昇を認めたため,当院へ紹介受診となった。血清AFP 22,640 ng/mL,PIVKA─II 35,140 mAU/mL と上昇,腹部造影CT にて肝右葉に7 cm 大の腫瘍および門脈本幹からSMV に腫瘍塞栓を認めた。同意の上,sorafenib+CDDP 分割肝動注併用療法を行った。3 コース施行後,血清AFP 16,283 ng/mL,PIVKA─II 2,924 mAU/mL へと低下,腫瘍径は2 cm へと縮小(PR),門脈瘍塞栓はVp3 へ縮小した。切除可能と判断し,拡大肝右葉切除術を施行した。術中超音波検査にて門脈本幹に腫瘍塞栓が疑われたため可及的に摘出したが,病理組織学的には腫瘍壊死像を呈していた。術後は胸腹水遷延を認めたが,術後70 日目に軽快退院され,術後6 か月現在,再発兆候を認めていない。Vp4 進行肝細胞癌(HCC)に対するsorafenib+CDDP 分割肝動注併用療法は有効的な治療法の一つと考えられた。 -
肝細胞癌術後肺転移に対しS─1 療法後に根治切除し得た1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は57 歳,男性。2006 年1 月に近医にて肝細胞癌(HCC)と診断され,当院を紹介受診した。術前TACE を施行した後,5 月に肝右葉切除術を施行した。その後,外来にて経過観察されていたが,2008 年11 月に単発の肺転移を認めた。肺転移に対してテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤(S─1)を2 コース投与した。この間,新規病変の出現を認めなかったため,2009 年5 月に左肺下葉切除術を施行した。術後病理診断はHCC の肺転移であった。肺切除後,補助療法としてS─1 を4 コース追加投与した。初回肝切除より6 年が経過したが,肝内再発を認めたため2012 年5 月に肝部分切除術を施行し,現在無再発生存中である。 -
右三区域切除と集学的治療を施行したびまん性肝細胞癌(Vp4)の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は59 歳,女性。右上腕骨骨折にて当院に入院となった。肝機能障害の精査の結果,肝細胞癌の診断となった。肝右葉から内側区域にかけてびまん性に広がる腫瘍を認め,門脈腫瘍栓が門脈右枝に充満,本幹内にまで伸び,cavernous transformation を伴っていた(Vp4)。手術を含めた集学的治療を計画した。手術は,肝右三区域切除術と門脈腫瘍栓摘除術を施行した。経過は良好で肝不全の徴候はなく,術後15 日目に残肝S1・S2 の腫瘍に対して肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した。術後2 か月後よりIFN─α 併用5─FU 肝動注化学療法(FAIT)を3 コース施行した。術後3 か月後に腫瘍マーカーは陰性化し,5 か月目のCT にてviable な腫瘍は認めなかったが,8 か月目に急速な再発と全身状態の悪化を認め,術後9 か月目に再発死した。門脈腫瘍栓合併肝細胞癌は予後不良だが,腫瘍栓を含む積極的な外科的切除手術を優先させ集学的治療を行うことで,患者の予後を改善し得ると考えられた。 -
無症候性破裂肝細胞癌の2 切除例
39巻12号(2012);View Description
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手術時に初めて破裂が判明した肝細胞癌2 例を報告する。症例1: 62 歳,女性。腹部CT で肝外側区域に最大径3.6 cmの腫瘤を認めた。初回CT 検査より39 日目に手術となった。その間,何ら自覚症状を認めなかった。腹腔鏡下に手術を開始したが,腫瘍破裂を認め持続的な出血を認めた。左胃動脈から分枝する左肝動脈を処理後軽減し,そのまま腹腔鏡下に外側区域切除術を完遂した。症例2: 82 歳,男性。腹部CT で肝左葉に13 cm 超の腫瘤が指摘された。初回腹部CT 検査より25 日目に手術を行った。その間,何ら自覚症状を認めなかった。開腹すると,およそ200 mL の血液と外側区域腫瘍下面に血腫を認めた。速やかに左グリソンを遮断し,肝左葉切除術を行った。2 例ともに破裂時期は不明であり,ショックを伴う大量出血でもなかったが,手術時には持続的に破裂部から出血しており,手術開始後可及的早期の流入血行遮断を行うことで安全に切除し得た。 -
TAE,RFA 後に局所再発した細胆管細胞癌の成分を含む肝内胆管癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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肝内胆管癌(intrahepatic cholangiocarcinoma: ICC)は一般的に造影検査で乏血性を示すことが多いが,細胆管細胞癌(cholangiolocellular carcinoma: CoCC)の成分を含む症例では多血性を示すこともあり,肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)との鑑別が困難なことがある。今回,慢性肝障害を背景に動脈早期濃染を示すICC を経験した。症例は77 歳,男性。C 型慢性肝炎で通院中,肝S2 に早期濃染する腫瘍を認め,HCC の診断でTAE を施行した。その後,局所再発に対しTAE,RFA を繰り返したが,境界不明瞭な扇状の形態で再発したため,TAE,RFA 不応と判断し,肝左葉切除を施行した。病理組織検査では腫瘍のほとんどがICC で占められていたが,一部に腺腔の吻合状増殖,周囲細胞への置換性増殖を認めるCoCC成分を認めた。 -
放射線化学療法にて長期生存を得た切除不能肝内胆管癌の2 例
39巻12号(2012);View Description
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症例1 は65 歳,女性。右季肋部痛を主訴に近医受診。腹部CT 検査にて肝右葉に最大径約9 cm の腫瘍を認め,腫瘤形成型肝内胆管癌と診断。腫瘍浸潤により門脈本幹は閉塞しており,根治切除不能と判断した。肝動注化学療法と放射線療法を施行したところ腫瘍は著明に縮小し,その後主病変の増悪なく経過。初診時より7 年2 か月後に他病死した。症例2 は59歳,女性。全身倦怠感を主訴に近医受診。腹部CT 検査にて肝左葉に最大径約8 cm の腫瘍を認め,腫瘤形成型肝内胆管癌と診断。肝門部転移リンパ節による右肝動脈浸潤がみられ,根治切除不能と判断した。主腫瘍およびリンパ節に対し肝動注化学療法と放射線療法を施行したところ,治療開始10 か月後のCT 検査では腫瘍は著明に縮小した。その後出現した遠隔リンパ節転移に対し全身化学療法を導入。以後初診時より5 年4 か月が経過しているが,無増悪で外来化学療法中である。 -
眼球脈絡膜原発悪性黒色腫の肝転移に対し肝切除術を行った1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は55 歳,男性。左眼の霧視を認め,近医を受診した。眼球の耳側上方網膜下に隆起性病変があり,当院眼科を紹介された。3 か月後の左眼眼球摘出術にて悪性黒色腫と診断された。4 か月後,全身転移検索のためPET─CT 施行したところ肝内S4 に異常集積を認め,生検で悪性黒色腫肝転移と診断され,経皮的ラジオ波焼灼術を施行された。3 か月後に再発を認め,内科治療困難となり当科に転科となった。術前MRI で肝両葉に多発する腫瘍を認めた。悪性黒色腫肝転移例の治療方針は不確立であったが,説明の上,肝部分切除を行った。術中超音波での腫瘍同定を行い,術中迅速組織診断で悪性黒色腫肝転移の診断を得て14 か所の肝部分切除を行った。その後,術後化学療法を行うも術後9 か月に肝不全のため永眠となる。悪性黒色腫肝転移例に対して,肝切除による生存率の改善が認めたとの報告もあり,今後症例を積み重ね治療法を確立することが必要であると考えられた。 -
転移性肝腫瘍と鑑別が困難であった肝原発類上皮血管内皮腫の1 例
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌多発肝転移と鑑別が困難であった肝類上皮血管内皮腫(epithelioid hemangioendothelioma: EHE)の1 例を報告する。症例は71 歳,男性。高脂血症の精査のため腹部エコー施行。肝に多発する腫瘍を認めたため当院消化器肝臓内科を紹介された。精査にて転移性肝腫瘍が疑われ,下部消化管内視鏡検査で直腸S 状部に1 型腫瘍を認めたため,大腸癌多発肝転移と診断した。原発巣を切除後,全身化学療法を施行するも肝臓病変の増大を認めたため,肝外側区域切除術と肝部分切除術(11 か所)を施行した。病理組織学的検査では淡好酸性の細体を有する類円形または紡錘状の細胞の増殖を認め,factor VIIIとCD34 の免疫組織染色が陽性であったことからEHE と診断した。肝EHE は比較的まれな疾患であり,文献的考察を加え報告する。 -
エホバの証人のGIST 多発肝転移に対しSize Reduction 後に肝切除を施行し得た1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は42 歳,男性。エホバの証人の患者。十二指腸GIST(中間リスク)に対し十二指腸部分切除後2 年間,imatinibを投与継続した。投与終了後8 か月目に,肝外側区域と下大静脈と接するS7 領域を含む多発肝転移を認めた。肝切除時の出血量過多が予想され,患者が信教上の理由で無輸血手術を希望したため,sunitinib 投与を開始し8 か月間で42%の腫瘍径縮小が得られた時点で肝左葉切除兼部分切除を施行した。術中に希釈式自己血600 mL,回収式自己血240 mL を併施した。術後1 年間再発なく経過している。 -
胆嚢炎を契機に判明した肝原発悪性リンパ腫の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は50 歳,男性。入院約2 か月前より,繰り返す右季肋部痛を認め,前医より胆嚢炎の診断にて紹介。入院時,右季肋部に軽度の圧痛を認めた。血液生化学検査では,炎症所見は軽微であった。CT では胆嚢内に小結石と胆嚢壁の軽度肥厚を認めた。同時に胆嚢床から広がる肝S4─5 の低吸収域を認めた。MRCP では総肝菅の圧排性の狭窄を認めた。慢性胆嚢炎および炎症の肝実質への波及を考えたが悪性病変も否定できず,抗生剤による保存的加療後,第26 病日に診断的意義も含め胆嚢摘出術を施行した。術中肝生検を施行し,迅速検査に提出したところ肝類洞に核異型の強いリンパ球の浸潤を認め,悪性リンパ腫が疑われた。その後の精査にて肝原発CD5 陽性びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫の確定診断が得られた。血液内科転科後R─CHOP を8 コース施行し,8 か月目にはCR となったが,術後1 年目に口腔底の腫瘤として再発を認め,現在化学療法施行中である。 -
診断に難渋した糖尿病性乳腺症の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は73 歳,女性。糖尿病でインスリン治療中であった。左乳房C 領域に辺縁不明瞭な径2 cm の硬い腫瘤を触知し,マンモグラフィで高濃度の局所的非対称性陰影,超音波検査で不整形,境界不明瞭で後方エコーの減弱を伴う14×21×10 mmの低エコー腫瘤を認めた。針生検で悪性所見を認めず,経過観察となった。半年後の超音波検査で変化はなかったが,造影CT・MRI で癌の可能性が否定しきれず,本人の切除希望があり腫瘤摘出術を施行した。病理組織診断では,乳腺間質の硝子線維化と乳管周囲にリンパ球浸潤を認め,糖尿病性乳腺症と診断された。糖尿病性乳腺症は,長期罹患の糖尿病患者に認める病変で,視触診,画像所見では乳癌との鑑別が難しく,針生検で確定診断につながった症例が多くみられる。過剰診療を避けるため知っておくべき病変であり,本症例においても臨床像や針生検の所見から糖尿病性乳腺症と診断することは可能であったと考えられた。 -
乳腺葉状腫瘍に対する内視鏡補助下手術の有用性について
39巻12号(2012);View Description
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乳腺葉状腫瘍は良性病変,中間病変,悪性病変に分類される。悪性葉状腫瘍の頻度は低く,整容性と十分なマージンを確保することを両立することが重要となる。針生検で葉状腫瘍と診断され,過去10 年間に手術を施行し,胸筋温存乳房切除を行わず,手術を施行できた38 症例を対象とした。通常の腫瘤摘出術(n=33)と内視鏡補助下腫瘍摘出術(n=5)を行った症例について,切除マージンと整容性の検討を行った。全例が病理組織学的に切除断端は陰性であった。切除マージンは腫瘍下面方向が内視鏡補助下群で有意に低かったが,他は両群間に差を認めなかった。整容性も両群間で差を認めなかったが,切開創は有意に内視鏡補助下群が小さかった。乳輪切開法による内視鏡補助下葉状腫瘍摘出術は,切除マージン,整容性ともに従来法と遜色なく,切開創が小さくてすむため,有用な方法であると考えられた。 -
術前化学療法後乳房温存手術を施行しpCR が得られた乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は40 歳,女性。乳癌検診にて左乳房腫瘤を指摘され,当科受診。乳腺超音波検査にて左DE 領域に2.5×2.5 cm大,微細石灰化を伴う形状不整な低エコー腫瘤を認めた。針生検を施行し,病理学的診断は浸潤癌(apocrine carcinoma),ER(-),PgR(-),HER2(-),T2N0M0,Stage IIA と診断された。術前化学療法としてTC 4 コース+EC 4 コースを施行した。施行後の乳腺超音波検査では腫瘤描出なく,1.0 cm の低エコー領域のみとなった。MRI でTC 療法施行後,腫瘍造影効果は消失していたが,EC 療法施行後では腫瘍造影効果の強まりとリング状造影効果が散在していた。切除範囲に難渋したが,左乳房温存円状部分切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行したところ病理組織診断は腫瘍の遺残なく,化学療法効果判定はgrade 3 であった。術後残存乳房に放射線治療を行い経過観察中であるが,再発・転移は認めていない。 -
乳房温存術後の局所再発における人工物を用いた乳房再建術の検討
39巻12号(2012);View Description
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乳房温存術後の乳房内再発(IBTR)に対しては,乳房切除術が推奨されている。しかし,乳房温存術後のように胸壁照射が施行されていても乳房再建術を希望する患者が増加している。胸壁照射後の乳房再建術は,合併症の頻度が高く,その適応には十分な注意が必要である。今回われわれは,IBTR に対して乳房切除術+人工物による再建を施行した患者5 例(放射線照射群)を対象とし,同時期に初回乳癌手術で乳房切除術+人工物による再建術を施行した21 例(非放射線照射群)と患者背景,合併症,再建完遂率,被膜拘縮について比較検討した。2 群間において有意な差は認めなかった。放射線照射後の乳房再建術は放射線非照射に比べ,合併症,被膜拘縮などの頻度が高いことが報告されている。しかし患者が再建を強く希望した場合は,リスクを説明した上で選択肢の一つになると考えられた。 -
局所療法を断念したLCIS とDCIS が混在した乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は54 歳,女性。右乳房腫瘤を主訴に当科を受診した。初診時,右乳房AC 領域に1 cm 大の腫瘤を触知し,超音波ガイド下に吸引式針生検を施行したが悪性の診断を得られなかった。画像所見から悪性所見が完全に否定できなかったため,腫瘤摘出術を施行した。摘出標本の病理組織診断では,LCIS とDCIS の混在していた。画像検査にて,腫瘍進展範囲が同定するのが困難であったため,胸筋温存乳房切除術を施行した。LCIS とDCIS が混在する病態はまれであり,今後,症例を蓄積して適正な治療方法を開発していく必要があると考えられた。 -
両側異時性多発乳管癌に対して両側乳房温存手術を施行した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は55 歳,女性。2 年6 か月前に左乳癌に対し乳房円状切除術とセンチネルリンパ節生検術が施行されている。病理組織診断は乳頭腺管癌,ER 陽性,PgR 陽性,HER2 score 0 であり,臨床病期はT1N0M0=Stage I であった。術後補助放射線療法施行後,内分泌療法で経過観察されていた。術後2 年6 か月後のマンモグラフィ検査で,対側乳房に淡く不明瞭な石灰化の集簇像を認めた。ステレオガイド下吸引式針生検術を施行したところ病理検査で乳管内成分を認め,対側転移ではない乳頭腺管癌(ER 陽性,PgR 陽性,HER2 score 0)と診断された。乳房扇状切除術とセンチネルリンパ節生検術を施行し,最終病期はT1N0M0=Stage I であった。術後放射線療法施行後前回とは異なった内分泌療法を継続している。2 回目の手術より2 年6 か月の現在,明らかな転移・再発を認めず,新規の多発癌も認めていない。 -
タモキシフェンにより長期間のCR が得られた高齢者乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例: 患者は82 歳,女性。約3 年前より左乳房腫瘤に気付いていたが放置していた。出血を伴うようになり近医を受診され,精査加療目的にて当院紹介となる。初診時,左A 領域の皮膚に2×2 cm の潰瘍を伴う約2.5×3 cm の腫瘤を触知した。全身検索にて転移は認められず,左乳癌T4bN0M0,stage IIIB と診断した。皮膚生検標本の免疫組織化学染色にてER 陽性,PR 陽性,HER2 陰性であり,タモキシフェンの内服を開始したところ潰瘍は徐々に上皮化し,約8 か月目で触診,超音波検査上ともに腫瘍は消失しcCR と判定した。内服継続にて約6 年近くCR が持続したが,6 年9 か月目で腫瘍の増大を認めたため,局所麻酔下に乳房部分切除術を施行した。術後1 か月目現在,外来にて経過観察中である。まとめ: 高齢者において,内分泌療法は副作用が少なく長期継続が可能であり,有用な治療選択肢の一つであると思われた。 -
内分泌療法が有用であった104 歳超高齢者乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例: 患者は104 歳,女性。家人が左乳房腫瘤に気付き受診された。超音波検査にて左乳腺EAC 領域に辺縁不整の2.4×2.4×1.4 cm 大の低エコー腫瘤が確認され,針生検にて浸潤性乳管癌と診断された。全身検索にて転移は認められず,左乳癌T2N0M0,stage IIA と診断した。ER 陽性,PR 陽性,HER2 陰性のsubtype であったために,内分泌療法(アナストロゾール1 mg/日)を選択した。治療開始半年後にはPR が確認され,約2 年間PR が維持された。治療期間中,認知症や骨折など内分泌療法に伴う有害事象は認められず,良好なQOL が得られた。まとめ: 超高齢者の癌治療は限られた余命のQOL を尊重した癌治療の定着が課題であるが,本症例のような良好な経過をたどる症例も存在する。超高齢者乳癌に対する内分泌療法は有用な治療手段であり,内分泌感受性を視野に入れた的確な治療前診断をつけることが望まれる。 -
Infusion Reaction によるTrastuzumab 使用不可症例におけるLapatinib の有用性について
39巻12号(2012);View Description
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乳癌術後のHER2 陽性肝転移症例においてinfusion reaction によるtrastuzumab 投与が不能になり,lapatinib を投与して良好な予後を得たので報告する。症例は71 歳,女性。1 年前より左乳房に腫瘤を自覚しており,徐々に増大するため当科を受診した。マンモグラフィ検査では辺縁不明瞭で中心高濃度な腫瘤影を認め,カテゴリー4 と診断された。超音波検査では左C 領域に直径22 mm の辺縁不整な腫瘤を認めた。生検の結果,乳癌と診断され,全身に転移がないことを検索した後,手術を施行した。病理組織診断は硬癌,ER 陰性,PgR 陰性,HER2 score 3 であり,臨床病期はT2N0M0=Stage IIA であった。術後8 か月後の検索で肝転移を認め,trastuzumab の投与を開始したがinfusion reaction のため断念した。lapatinib とcapecitabine の投与を開始したところコンプライアンスもよく,継続することができた。肝腫瘍はPR の後,現在のところlongSD を保っている。 -
超音波検査で描出できない石灰化病変に対する乳房温存手術の問題点
39巻12号(2012);View Description
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症例は58 歳,女性。乳癌検診で異常を指摘され,当科を受診した。マンモグラフィでは右に構築の乱れを認めた。超音波検査では病変を描出できなかった。造影MRI 検査では右AC 領域に7 mm の造影部位を認めた。ステレオガイド下マンモトームを施行したところ,乳癌と診断された。術中超音波検査を施行したところ,組織を採取した後と思われる構築の乱れた部位とマイクロマークの位置は3 cm ほど離れていた。最初に構築の乱れた部位を中心に2 cm のマージンをとって切除した。術中迅速診断で病変が含まれており,切除断端は陰性との診断であった。最終病理診断でも切除断端は陰性であり,追加切除した部位にはマイクロマークは存在したが,癌が存在しなかった。乳癌検診の普及により,今後このような症例が増加してゆくことが予想される。マンモトーム後に留置するマイクロマークについて,固定性,超音波検査でのみえやすさなどを考慮したものの開発が望まれる。 -
Mohs’ Paste とホルモン剤治療にてQOL を改善した進行乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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Mohs’ paste は皮膚腫瘍の削切に先立ち,塩化亜鉛による24 時間固定を目的とした軟膏である。われわれは,局所進行乳癌の出血に対してMohs’ paste を用いて止血した1 例を報告する。症例は73 歳,女性。右進行乳癌からの持続出血のため当院に搬送された。Mohs’ paste を15 分塗布後,腫瘍止血が得られ滲出の減少も認めたため,毎週の塗布処置を行った。患者は手術,化学療法も拒否したがホルモン治療のみ同意し,2 年間の外来通院による内服にて腫瘍はコントロールされている。Mohs’ paste の短時間処置は,有害事象なく乳腺腫瘍の出血と渗出をコントロールし,患者のQOL に貢献すると考えられた。 -
Stage IIIC 乳癌に対し集学的治療により局所制御が得られた1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は40 歳台,女性。右腋窩リンパ節腫大を主訴に近医を受診し,当初悪性リンパ腫の疑いで当院血液内科を紹介されるも,乳房に腫瘤を認めたため当科紹介受診となる。腫瘍は25 mm 大であったが,腋窩・鎖骨周囲・胸筋間・乳房内と多数のリンパ節の転移を認めた。生検でluminal A type 乳癌であったがCAF 療法ならびにdocetaxel 療法を行い,臨床上完全奏効を得られた。本人の希望で胸筋合併乳房切除術を行い,原発巣は組織学的完全奏効を得られていたが,リンパ節に癌の違残を認めたため胸壁および領域リンパ節に放射線照射を行い現在,無再発生存中である。 -
治療方針の決定にOncotype DX を用いた男性乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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男性乳癌は,比較的まれな疾患で全乳癌の1%未満と報告されており,術後療法については女性乳癌に準じて行われている。今回,治療方針の決定にoncotype DX を用いたので報告する。症例は60 歳台,男性。他疾患精査中に左乳房腫瘤触知のため当科を紹介受診し,精査の結果Stage I 乳癌と診断し乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を行い,郭清は省略したが永久標本で微小転移が判明した。後日腋窩郭清を行い,最終診断がStage IIA(T1c,N1mi,M0),luminal A type であった。治療方針の決定にoncotype DX を用い,recurrence score(RS)が8 と低RS 群であったため,化学療法は省略し現在tamoxifen による内分泌療法を行っている。 -
Paclitaxel 投与が有効であった再発乳癌による心タンポナーデの1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は44 歳,女性。呼吸苦を主訴に受診。2 年前に他院で左乳癌に対してBt + Ax 施行された[T2N1M0,ER(3+),PgR(3+),HER2: 1+]。術後補助療法はホルモン療法のみであった。呼吸苦を主訴に当院を受診し,CT で両側胸水・心嚢水の貯留を認めた。胸水穿刺・心囊穿刺を施行,血性の心囊水が700 mL 引け,胸水・心囊水ともに細胞診はclass V であった。全身状態安定後weekly paclitaxel(PTX)を開始,18 回施行後胸水はほぼ消失し,呼吸苦は消失した。現在,心囊水の再貯留はなく,weekly PTX 投与を継続中である。乳癌転移の癌性心膜炎による心タンポナーデは予後不良である。報告例では局所化学療法や癒着療法があるが,近年の傾向として全身化学療法が選択される報告が多い。本症例は穿刺ドレナージ後の全身化学療法が有効であった。 -
乳癌皮膚転移の疼痛に対するリドカイン含有ゼリーの使用経験
39巻12号(2012);View Description
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乳癌の皮膚転移は,出血や疼痛などにより患者のQOL を著しく低下させるが,有効な対処療法が確立されていないのが現状である。今回われわれは,一時的な疼痛増悪時にリドカイン含有ゼリー(キシロカインゼリー: XJ)を塗布し,有効な結果を得た。乳癌の診断で,乳房切除術施行後に皮膚転移を来した女性5 例を対象とした。皮膚転移部の疼痛にNSAIDs やオピオイドが併用されていたが,疼痛増悪時のコントロールに苦慮していた。しかし,疼痛増悪時または包交時に,XJ 約5 gを転移巣に塗布することで迅速な疼痛の軽減が得られ,鎮痛薬の減量や副作用の軽減が可能であった。XJ 塗布後のリドカイン血中濃度は安全域内で,その他重篤な有害事象も認めなかった。乳癌皮膚転移に対し,XJ による疼痛コントロール法は,簡便かつ安全に行え,さらに鎮痛薬の減量や副作用によるQOL の低下も軽減することができる有効な方法と考えられた。 -
乳癌術後肝転移に対して肝動注療法を行い長期生存中の1 例
39巻12号(2012);View Description
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乳癌術後肝転移に対して集学的治療の一環として肝動注療法を行い,長期生存中の1 例を報告する。症例は50 歳,女性。1998 年9 月,乳房腫瘤を主訴に当院初診。左乳癌(T2N0M0,Stage IIA)と診断され,11 月,BT+AX(児玉法)施行。術後tamoxifen(TAM)20 mg 内服。2002 年2 月のCT にて単発性肝転移(S5,4 cm)出現。4 月,肝動注ポートを留置し,docetaxel(DOC)20 mg ia weekly(17 コース)にてPR。2004 年3 月,CT にて肺転移が出現。DOC 40 mg div weekly(18コース)に変更し,2005 年3 月まで治療するも,その後中止。2006 年5 月当院再診。CT にて肝・肺転移の増悪を認めたため,anastrozole 1 mg 内服開始。EC 療法6 コースにてPR。DOC 120 mg div 3 weekly(4 コース)施行。2007 年1 月,抗癌剤拒否。7 月のCT では肝・肺転移はNC であったが,以後通院中断。2011 年1 月,他院にて多発肝転移と肝機能障害を診断され,2 月当院再診。CT にて多発肝・肺転移の増悪,リンパ節転移を認め,exemestane 25 mg 内服開始。2 月より,nab─paclitaxel(PTX)400 mg div 3 weekly 開始。2012 年3 月現在,nab─PTX 続行中(15 コース)で,PR にて生存中である。 -
黄疸進行する肝転移にTrastuzumab 単剤投与が著効した乳癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は60 歳,女性。右腋窩の違和感を主訴に近医を受診し,右乳癌・腋窩リンパ節転移の診断となった。PET─CT で縦隔,腹腔内リンパ節の多発腫大を認め,精査加療目的にて当科に紹介受診した。急激なT─Bil の上昇(6.6 mg/dL) を認め,閉塞性黄疸の疑いで緊急入院した。造影CT にて肝臓に明らかな腫瘤性病変を認めず,ERCP では総胆管から肝内胆管までびまん性の狭小化を認め,明らかな閉塞起点は認めなかった。乳癌肝転移他,自己免疫性肝胆道系疾患が鑑別疾患として考えられ,肝生検を施行した。病理結果で肝内のリンパ管主体に腺癌の浸潤を認め,乳癌肝転移と診断した。HER2 過剰発現が確認されたためtrastuzumab を開始したところ,黄疸の改善と腫大リンパ節の縮小を認めた。黄疸を伴うびまん性肝転移に対してtrastuzumab 単剤投与が著効したStage IV 乳癌の1 例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。 -
集学的治療によって長期生存が得られたHER2 強陽性乳癌脳転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は55 歳,女性。右乳腺腫瘤を主訴に当院を受診され,精査したところ両側乳癌[Rt: ABCDE,T3N1M0,ER (-),PgR(-),HER2: 3+,Stage IIIA; Lt: C,T2N0M0,ER(-),PgR(-),HER2: 1+,Stage IIA]と診断された。NAC(EC followed by docetaxel)を施行し効果がPR であった。手術(Rt Bt+Ax,Lt Bp+Ax)を施行し,病理では両側ともに組織学的治療効果はGrade 1b であった。術後は左残存乳房に対する放射線治療を行い,経過観察していた。術後9 か月目に肝転移が出現し,weekly paclitaxel+trastuzumab を12 コース施行しPR を得た後,trastuzumab で単剤投与を継続していた。術後19 か月目に小脳転移を認め,腫瘤摘出およびgamma─knife を施行した。術後26 か月目に新たな小脳転移が出現し,再びgamma─knife を施行。さらに肝転移もPD となりvinorelbine+trastuzumab に変更し,肝転移はCR であった。術後45 か月目に前回治療部位の近傍に小脳転移が出現しgamma─knife を行った。術後59 か月目に肺転移を認め,lapatinib+capecitabineに変更し,30 か月(術後89 か月目)経過したが脳・肝・肺転移ともにPR を維持している。 -
単独の乳癌副腎転移に対し外科的切除,内分泌療法を行った1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は46 歳,女性。42 歳時に右乳癌(T4bN0M0,Stage IIIB)のため手術(Bt+Ax)を施行した。病理組織検査では,浸潤性乳管癌(乳頭腺管癌),n(-),ER(+),PgR(+),HER2(1+)であった。術後薬物療法はゴセレリン+タモキシフェンを2 年間,その後はタモキシフェンを内服していた。術後フォローアップのCT 検査,MRI 検査で右副腎腫瘍を認めた。その他に転移を疑う所見はなかった。確定診断と治療を兼ねて腹腔鏡下右副腎摘出術を行った。病理組織検査では乳癌の転移と考えられ,ER(+),PgR(+),HER2(0)であった。術後,高用量トレミフェンに変更し内分泌療法を行っている。術後約2 年4 か月経過するが,再発なく経過している。副腎転移は全身転移の一部として乳癌終末期にみられることが多く,孤立性の乳癌副腎転移は非常にまれである。孤立性の乳癌遠隔転移に対し外科的切除,薬物療法を組み合わせて行うことで,長期生存を得られることがあるのではないかと考えられた。 -
Capecitabine が奏効した再発乳癌による両側水腎症の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は54 歳,女性。左乳癌に対して術前化学療法施行の後に,Bp+Ax を施行した。術後診断は,硬癌,pT3N1M0,Stage IIIA, ER(+),PgR(+),HER2: 0 であった。残存乳房照射と補助療法としてアロマターゼ阻害剤の内服を開始した。術後18 か月で骨転移が出現し,ホルモン剤の変更とbisphosphonate 製剤の投与を行うも,術後28 か月に後腹膜転移,両側水腎症と肺転移を来し,capecitabine を開始した。腎機能が保たれていたため,ステント留置や腎瘻造設は施行していない。投与開始後4 か月で両側水腎症は消失し,腫瘍マーカーも正常化した。現在まで32 か月間capecitabine を継続し,水腎の増悪はみられていない。 -
Nab─Paclitaxel 投与にてCR を得たリンパ節転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は50 歳,女性。右乳房腫瘍を自覚し来院。触診にて右乳房に2 cm の弾性硬の腫瘤を触知した。針生検に浸潤性乳管癌の診断であった。遠隔転移は認められず,右乳癌(T2N0M0=stage IIA)の診断で,術前化学療法としてEC×4 回(E:90 mg/C: 600 mg/m2/tri─weekly)とTC×4 回(T: 75 mg/C: 600 mg/m2/tri─weekly)を行った。75%の縮小効果を認めPRであった。その後,乳房扇状部分切徐術+腋窩リンパ節郭清術(level II)を施行。術後残存乳房に対し放射線療法を行った。術後6 か月目の検査で,右鎖骨上リンパ節転移を認めた。一次化学療法としてnab─paclitaxel の投与を行った。8 回施行後には超音波検査,CT 検査にて右鎖骨上のリンパ節転移巣は消失しCR を得た。nab─paclitaxel 投与中の有害事象はGrade 3 以上のものはなく,外来化学療法室で安全に投与することができた。nab─paclitaxel は,転移・再発乳癌に対して有用である可能性が示唆された。 -
気胸を伴う乳癌術後の胸壁局所再発例に胸壁切除再建を行った1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は41 歳,女性。右乳癌(T3N3cM0,Stage IIIc)に対して,2004 年3 月29 日に右乳房切除および腋窩リンパ節郭清が施行された。2008 年1 月に多発骨転移や左腸腰筋などにて再発し,2010 年5 月ごろより右前胸部にも局所再発を来し,後に潰瘍形成した。12 月2 日未明に呼吸苦を自覚し当院受診。胸壁局所再発の胸膜浸潤による開放性気胸の診断で入院となった。胸腔内と局所再発創それぞれを陰圧ドレナージした。その後全身状態が安定したため,12 月22 日に胸壁切除再建(有茎広背筋皮弁)を施行した。術後経過は合併症なく経過し,2012 年1 月6 日に当科退院した。遠隔転移が認められる症例であっても予後がある程度期待できれば,QOL 改善のために上記手術は有効な選択肢の一つになり得ると考えられる。 -
ゲムシタビン+ドセタキセルが長期奏効した乳癌再発の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は58 歳,女性。45 歳時,他院にて右乳癌に対し胸筋温存乳房切除術を施行(T2N2M0,stage IIIA,ER+,PR+,HER2 0)。術後タモキシフェンを内服するも骨転移が出現,その後肺転移も出現し加療中に当院転院となった。治療中肝転移が出現,各種ホルモン療法,CEF 療法,パクリタキセル単剤を含む計5 種の化学療法が無効となり,術後13 年目に肺転移の増大による呼吸苦が出現した。六次化学療法としてゲムシタビンを導入することとし,パクリタキセル単独投与は無効であったため,ドセタキセルを併用薬とした。血液毒性により減量投与となったが肺転移は縮小し,腫瘍マーカーにも著明な低下がみられた。副作用としてはgrade 2 の神経毒性がみられているが,QOL を維持したまま外来投与継続中で現在まで14 か月間進行はみられていない。乳癌再発症例の治療において,ゲムシタビンは有力な選択肢である。また,併用薬選択の際に未投与のタキサンを選択することが奏効の可能性を高めると考える。 -
悪性胸腹水中のMyeloid─Derived Suppressor Cells(MDSC) と化学療法による変動の検討
39巻12号(2012);View Description
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癌の治療において胸水や腹水のコントロールに難渋することが多く,排液しても再び貯留し完治は困難である。骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)は未熟な骨髄細胞で,癌組織やリンパ節や末梢血中に見いだされる免疫抑制細胞で癌の進展に伴う免疫抑制と炎症に密接に関係するとされるが,胸水や腹水中に存在していることは知られていない。対象は,癌患者222 症例と健常成人18 人である。そのうち,腹水を伴う胃癌1 例,胸水を伴う乳癌2 例,腹水を伴う乳癌1 例,卵巣癌3 例であった。方法は末梢血と胸腹水中の単核球を分離し,flow cytometry にてMDSC( CD11b+CD14-CD33+) を測定した。血中のMDSCの化学療法による変動は,MDSC が低下した症例ではCR 3 例,PR 9 例,SD 1 例,PD 1 例であり,MDSC が上昇した症例ではCR 1 例,PR 2 例,SD 3 例,PD 3 例であった。胸腹水中のMDSC は血中MDSC と関連していた。このように,末梢血中,胸腹水中のMDSC 値は化学療法の臨床効果と関連して変動すると推測される。 -
当科におけるStage II,III(Non─T4)食道癌化学放射線療法の検討
39巻12号(2012);View Description
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目的: 切除可能Stage II,III(non─T4)食道癌に対する化学放射線療法の治療成績について検討する。対象と方法: 2005年4 月~2010 年12 月に臨床診断Stage II,III であった食道癌93 例のうち5─FU,CDDP(FP)を用いた化学放射線療法を施行した20 例を対象とした。結果: 化学放射線療法後の評価はCR 13 例(65%),PR が3 例(15%)であり,奏効率は80%であった。CR 症例と非CR 症例でリンパ節転移,術前Stage に有意差を認めた。手術群と化学放射線療法群では,無再発生存率, 5 年生存率に有意差は認めなかった。CR 症例,非CR 症例の5 年生存率は,CR 群71.6%,非CR 群で22.2%(p=0.04)とCR 群で有意に高い結果であった。結語: Stage II,III 食道癌における化学放射線療法は手術と比較し,遜色なくハイリスク症例,手術拒否例に有用な治療法である。 -
当院における食道癌に対するDOC とCDGP 2 剤併用化学療法の検討
39巻12号(2012);View Description
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目的: 進行再発食道癌に対する二次治療以降の治療方針については,定まったものがない。今回,進行再発食道癌患者の二次治療以降の治療の一つとして,Docetaxel(DOC)+Nedaplatin(CDGP)化学療法の有用性を検討した。対象と方法:2009~2011 年の間に,当院でDOC+CDGP(DOC 60 mg/m2,CDGP 70 mg/m2)を4 週ごとに投与した進行再発食道癌患者9 例を対象とし,有害事象,治療効果をretrospective に検討した。結果: 有害事象は非血液学的毒性でGrade(G)4 は認められず,血液学的毒性では好中球減少(G4),貧血(G3)が認められたが治療により改善した。治療効果はSD,PD がそれぞれ3 例,6 例であった。DOC+CDGP 療法開始後の,TTP,OS の平均値は,それぞれ4.3 か月,8.1 か月であった。考察: DOC+CDGP 化学療法は安全性,有効性に関して,他のレジメンに劣らない有用なレジメンと考えられた。 -
食道癌リンパ節転移陽性例における術後補助化学療法の有効性の検討
39巻12号(2012);View Description
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実地臨床におけるリンパ節転移陽性食道癌に対する術後5─FU+cisplatin(FP)療法の意義についてretrospective に検討した。初回治療として治癒切除を行い,組織学的にリンパ節転移陽性であった食道扁平上皮癌37 例を対象。FP 施行群と非施行群の間で背景因子,予後を比較検討した。また,FP 施行群における完遂率,有害事象についても検討した。FP 施行群13 例,FP 非施行群24 例。両群間に年齢,性別,占拠部位,リンパ節郭清個数,リンパ節転移個数に有意差を認めなかったが,FP 施行群のほうが3 領域郭清の頻度が高く(p=0.04),手術リスクが低い傾向であった(p=0.06)。無再発生存期間(p=0.46)に有意差を認めなかったが,全生存期間はFP 施行群のほうが良好な傾向であった(p=0.06)。FP 施行群の4 例(31%)にGrade 3 の有害事象を認め,治療完遂率は77%であった。少数例での検討ではあるが,実臨床においてリンパ節転移陽性食道癌に対する術後FP 療法は再発予防に寄与しない可能性がある。 -
食道・胃癌治療における腸瘻チューブ逸脱症例に対する腹腔鏡下腸瘻再造設法
39巻12号(2012);View Description
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食道・胃癌における手術症例やPEG 造設不能非切除症例など,腸瘻栄養は周術期管理,全身状態改善,化学放射線療法完遂に有用であることが示唆されている。しかし,腸瘻チューブは外形が細く消化管内視鏡によるアクセスが困難であるため,チューブ閉塞や逸脱に対する対策が必要である。当科では,2007 年1 月~2011 年12 月の5 年間で胃癌40 例と食道癌29例,計69 例に腸瘻造設術を施行した。腸瘻チューブ入れ替えを要するチューブ閉塞は7 例(10.1%),チューブ逸脱は9 例(13.0%)に認めた。これらの症例のうち14 例(87.5%)はinterventional radiology(IVR)法にて再挿入し得たが,2 例は瘻孔閉鎖によりガイドワイヤー挿入が困難であったため,腹腔鏡下に腸瘻再造設術を施行した。腸瘻チューブは閉塞や逸脱に対する対策が必要である。IVR 下に再挿入困難な症例に対しては,腹腔鏡下腸瘻再造設術が有効な手段である。 -
放射線治療が奏効したFP 療法抵抗性食道癌肺転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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今回われわれは,食道癌術後肺転移に対してFP 療法が著効(PR)後PD となり,docetaxel(DOC)併用S─1 投与にてSD を維持,その後RFA を施行したが再燃し,放射線治療を施行して奏効した症例を経験したので報告する。症例は,現在55 歳,女性。他院にて食道癌(Lt,2 型,t3,n1,ly0,v2,M0,Stage III)に対し右開胸開腹食道亜全摘術を施行。1 年後に肺転移が認められFP 療法を7 か月で計5 コース施行。一時PR となるもPD となり当科紹介。DOC 併用S─1 化学療法を13 か月で合計14 コース施行した。一時CT にて肺転移は軽度縮小していたが再燃。その後CT ガイド下ラジオ波焼灼術(RFA)を他院で施行したが,5 か月後のCT にて再度肺転移巣は増大したため,計60 Gy の放射線治療を施行した。単純X線では,照射終了5 か月後に腫瘤影は縮小し瘢痕化が出現。約2 年後の現在は瘢痕を残すのみとなっている。CT では,照射終了後2 か月で肺転移は縮小しはじめ,7 か月後は瘢痕のみとなり,約2 年後の現在も瘢痕のみで大きな変化はない。現在も緩和ケア科へ通院中だが,肺病変による症状はなくQOL を維持したまま通院経過観察中である。食道癌は放射線感受性が比較的高い疾患であり,肺転移に対しても経過観察にて他の部位に病変が出現しない単発例などで,照射範囲が限定され照射後の肺炎などによる生命危険が起きない程度であれば,積極的に適応を考慮すべきと思われた。 -
食道癌cStage I(T1bN0M0)に対し放射線化学療法が奏効した2 例
39巻12号(2012);View Description
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食道癌cStage I(T1bN0M0)に対し,根治的放射線化学療法が奏効し制御良好な2 症例を経験したので報告する。症例1: 70 歳,男性。胸部下部食道癌(0─IIc 型,扁平上皮癌)指摘。造影CT・PET─CT で明らかな転移なくcT1bN0M0 と診断。根治的放射線化学療法として5─FU 250 mg/m2+CDDP 5 mg/m2 の5 日間× 6 週間投与,放射線治療2 Gy × 30 回の計60 Gy 照射を行い,内視鏡検査で病変の消失を認めた。症例2: 78 歳,男性。胸部上部食道癌(0─I+IIb 型病変,扁平上皮癌)と早期胃癌の重複癌と診断。造影CT,PET─CT で明らかな転移は認めず。食道癌,胃癌同時切除は耐術能なしと判断し,根治的放射線化学療法を行った。治療後の内視鏡検査で食道病変の消失を確認し,胃癌に対し胃切除術を行った。結論: cStageI の食道癌に対する放射線化学療法の第II 相試験においては,完全奏効率(% CR)87.5%,4 年生存率80.5%と良好な成績をあげており,放射線化学療法は有用な治療であると考えられる。 -
集学的治療を行ったBarrett 食道癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は50 歳,男性。検診で異常を指摘され,食道胃接合部に隆起性病変を認め,低分化型腺癌の診断であった。CT で縦隔内,腹腔内,大動脈周囲にリンパ節転移を認めた。臨床診断cT2,cN4,cM0,cStage IVa の食道腺癌に対して,docetaxel,CDDP,5─FU 併用療法(DCF 療法)を2 コース施行した。原発巣,縦隔リンパ節は縮小したが,腹腔内リンパ節は増大した。根治性には乏しかったが,大動脈周囲リンパ節転移は拡大郭清すれば切除可能と判断し,胸腔鏡補助下食道亜全摘,3 領域郭清,腹部大動脈周囲リンパ節郭清を施行した。総合所見は,Barrett’s esophageal carcinoma,EG,0─III,23×18 mm,mod─por,CT─pT1b(sm3),pN4,sM0,fStage IV であった。縦隔リンパ節は病理組織学的に化学療法による転移消失がみられたが,腹部リンパ節に効果は認めなかった。術後補助療法として腹部中心のradiation(50 Gy)と,5─FU,CDDP 併用療法(FP 療法)を2 コース追加した。その後外来でS─1 単剤投与に切り替え,術後1 年10 か月,無再発生存中である。 -
塩酸ゲムシタビンによる術前化学療法後に切除し得た細胆管細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は57 歳,女性。画像診断より胆管細胞癌cT3N1M1(右副腎),cStage IVB,下大静脈浸潤と診断され,術前補助化学療法にてSD 以上の治療効果があれば手術を施行する方針とした。塩酸ゲムシタビン3 週投与1 週休薬を2 コース投与し,CT 上SD であったため肝右葉尾状葉切除,右副腎・下大静脈合併切除,下大静脈再建を施行した。最終病理診断はcholangiolocellular carcinoma,im(-),eg,fc(-),sf(-),s0,n0,vp0,vv0,va0,b1,p0,sm(-),200 μm,pT2N0M0,pStage II,Cur A2 であり下大静脈浸潤は認めず,副腎はadrenocortical adenoma であった。術後化学療法を継続中であり,術後4 か月現在,無再発生存中である。細胆管細胞癌の治療は確立されていないが,集学的治療を行うことで良好に病勢をコントロールできる可能性がある。 -
Gemcitabine 単独療法により長期生存中の肝門部胆管癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は80 歳,女性。2010 年12 月皮膚の黄染,褐色尿が出現し当院を受診した。精査の結果,肝門部胆管癌と診断した。遠隔転移は明らかでなく,cT4N0M(-),cStage IVa であった。根治手術が可能と考えたが,患者および家族が手術を希望せず,化学療法を行う方針とした。2011 年4 月下旬よりgemcitabine(GEM)療法を開始した。GEM 療法開始後,CA19─9 は著明に低下し,CT 検査にて腫瘍はPR からSD を維持しており長期生存中である。今回われわれは,GEM 単独療法により長期生存している肝門部胆管癌の症例を経験した。若干の文献的考察を加え報告する。 -
肝門部胆管癌術後の膵内胆管再発に対して膵頭十二指腸切除術を行った2 例
39巻12号(2012);View Description
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肝門部胆管癌術後の遺残胆管再発に対して根治術を行った2 例を経験したので報告する。症例1: 74 歳,男性。肝門部胆管癌に対し肝右葉切除,断端陰性,pT1,pN0,fStage I,fCur A。術後18 か月でCA19─9 上昇を認め,PET にて膵頭部に異常集積,MRI にて腫瘤を指摘,ERCP にて遺残胆管内に陰影欠損像。術後20 か月後に膵頭十二指腸切除。病理にてpT3,pN0,fStage III,fCur A。術後12 か月現在,無再発生存中。症例2: 68 歳,女性。肝門部胆管癌に対し肝右葉切除,断端陰性,pT3,pN2,fStage IVa,fCur B。術後1 年のCT にて遺残胆管拡張を認め,ERCP にて遺残胆管の狭窄,PET にて異常集積。術後14 か月後に膵頭十二指腸切除。病理にてpT4,pN2,fStage IVb,fCur B。術後3 か月で局所再発,6 か月で原病死。 -
硬化性胆管炎合併胆管癌に化学療法を行い長期生存した2 例
39巻12号(2012);View Description
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症例1: 69 歳,男性。上腹部痛を契機に近医を受診し,精査にて両葉の肝内胆管拡張と肝門部の狭窄像を認め,肝門部胆管癌が疑われた。左肝管にENBD,右前区域枝にPTBD を留置され当院に紹介受診となった。MRCP では肝門部中心に高度胆管狭窄を認めた。造影検査では肝内胆管は全体に広範な先細り状狭窄がみられ,浸潤範囲が特定できず手術適応外とし,gemcitabine による全身化学療法を行い,化学療法開始後37 か月で死亡した。症例2: 70 歳,女性。心窩部痛・発熱にて近医を受診し,胆管炎を疑われた。ERCP では肝門部胆管に狭窄を認め,胆汁細胞診で腺癌と診断された。当院に紹介受診し,左右肝内胆管とも広範な多発狭窄を認め手術適応外と考えられ,GEM による全身化学療法を行い,化学療法開始後57 か月現在生存中である。 -
胆管原発神経内分泌癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は74 歳,男性。黄疸を主訴に近医を受診。肝門部腫瘍による閉塞性黄疸の診断でERBD を留置され,手術目的に当院紹介。血液検査所見では肝胆道系酵素,CA19─9 の上昇を認めた。ERCP では肝門部から中部胆管にかけて腫瘍性狭窄を認め,腹部造影CT では肝門部胆管に造影効果を伴う壁肥厚を呈し,PET─CT でも同部位にFDG 異常集積を認めた。術前診断は肝門部胆管癌で残肝容積を確保するためPTPE を施行し,肝拡大右葉切除術,左肝管空腸吻合術を施行。病理組織学的検査にて腫瘍はchromogranin A,synaptophysin,CD56 陽性,Ki67 labeling index 70%であり神経内分泌癌と診断。術後6か月目より多発肝転移を来しTACE を施行。一時的に腫瘍縮小効果を認めたが,肝膿瘍を繰り返しTACE 継続困難となり術後16 か月目に肝不全にて死亡した。胆管原発神経内分泌癌は非常にまれで,予後不良な疾患とされている。近年報告されている治療法を含め,文献的考察を加え報告する。 -
胆嚢に発生した粘液産生乳頭癌の1 切除例
39巻12号(2012);View Description
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症例は81 歳,男性。腹痛を主訴に近医を受診し,腹部超音波検査で胆嚢腫大を指摘され当院紹介となった。腹部CT検査で胆嚢内に乳頭状の隆起性病変を認めた。ERCP では胆嚢体部から底部にかけて乳頭状腫瘍を認めた。その他の画像検査で浸潤,リンパ節転移を認めなかった。以上より,胆嚢癌の診断で胆嚢層切除術を施行した。胆嚢内に乳頭状の腫瘍と粘液の貯留を認めた。病理組織学的検査で粘液産生乳頭癌,T1N0M0, Stage I と診断された。 -
3 管合流部結石嵌頓を伴う胆嚢癌の1 切除例
39巻12号(2012);View Description
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3 管合流部結石嵌頓を伴う胆嚢癌の1 切除例を経験したので報告する。症例は71 歳,男性。2011 年9 月14 日ごろより全身の黄染が出現し,同月17 日より心窩部痛が出現したため20 日に当科へ紹介受診された。腹部CT 検査では総胆管結石が3 管合流部に嵌頓しており,ERCP などの内視鏡的処置は困難であると判断し,同日胆囊摘出術および総胆管切開結石除去術,T─tube 留置術を施行した。肉眼上胆囊は炎症による壁肥厚が強く漿膜面は白色に変化していたが,腫瘍性病変ははっきりしなかったが内腔面は頸部から体部にかけて平坦隆起型腫瘍を認め,病理組織診断で胆囊癌(Gbn,Flat type,tub2,pSS,pHinf0,pBinf1,pPV0,pA0,pT3)と診断した。胆囊管に癌浸潤が疑われ12c リンパ節は陽性であり,総胆管への浸潤も疑われ追加切除が必要と判断し,10 月14 日に肝床部切除,2 群リンパ節郭清,肝管空腸吻合,Roux─en Y 再建術を施行した。病理組織診断では総胆管への浸潤を認めた。術後補助療法としてGEM 単剤投与を施行したが,再発を来し最終的に術後8 か月で癌死した。 -
メタリックステント留置後の膵頭十二指腸切除症例
39巻12号(2012);View Description
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はじめに: 肝炎症性偽腫瘍(肝inflammatory pseudotumor: IPT)と,転移性肝癌の鑑別が困難であった膵頭十二指腸切除を行った中部胆管癌の症例を経験したので報告する。症例: 75 歳,男性。近医にて中部胆管癌,肝転移と診断された。非切除のため胆管内にメタリックステント(expandable metallic stent: EMS)が経乳頭的に挿入された。その後肝内病変は自然消退し,IPT と診断された。切除可能と判断され当院に紹介され,膵頭十二指腸切除を施行した。考察: 術前に内視鏡的にEMSの抜去を試みたが不可能であった。術中,幸い胆管は上流で切離することができた。しかし,EMS の存在は手術手技の煩雑さや困難さを増加させる。したがって,EMS 留置には慎重を期すべきである。 -
術中検索で多発病変が確認され膵全摘術に至った膵頭部癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は67 歳,男性。2011 年5 月,褐色尿にて近医を受診。血液検査にて肝障害を認め,6 月に当院紹介。腹部CT 上,約2 cm 大の膵頭部腫瘤を認め,膵頭部から体部に至る主膵管拡張と総胆管拡張を伴っていた。閉塞性黄疸を伴う膵頭部癌[cT3(CH+,DU+),cN0, cM0, cStage III]と診断し,減黄の後,8 月に手術を施行した。術中検索にて膵体部表面と尾部前壁に白色結節を認めた。迅速組織診で浸潤癌を認めた。癌の存在範囲の特定は不可能であると考え,多発あるいは膵全体癌と考え,予定していた膵頭十二指腸切除術から膵全摘術に変更した。永久標本をみると多発非連続病変であり,術中視触診による精査を行わず術中の断端評価だけでは癌が遺残してしまう可能性があった。視触診を含む術中診断が重要であることを改めて再認識した1 例であった。 -
膵体尾部切除術後の膵頭部癌に対し残膵全摘術を施行した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は74 歳,女性。C 型慢性肝炎にて加療中,腹部CT にて膵尾部腫瘤を指摘された。画像上,膵管内乳頭粘液性腫瘍由来膵尾部癌と診断し,膵体尾部切除術を施行した。病理組織診断は膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)の浸潤癌であった。術後の補助化学療法として,gemcitabine(GEM)を6 コース施行した。術後2 年4 か月目から腫瘍マーカーの上昇を認め,腹部CT 検査にて残膵に22 mm 大の乏血性腫瘤を認め,残膵癌と診断した。術前化学放射線療法後,初回手術後2 年8 か月目に残膵全摘術を施行した。病理組織診断は中分化型管状腺癌で,腫瘤とその周囲組織ともに膵管内の腺腫成分や乳頭状増殖は認めなかった。2 回目の手術より1 年が経過した現在,再発兆候は認めていない。 -
膵癌骨転移に対して疼痛緩和放射線照射が有効であった1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は63 歳,女性。膵体尾部癌,多発肝肺転移,腹膜播種の診断で,S─1 とgemcitabine(GEM)による全身化学療法と疼痛コントロール目的のオキシコドン塩酸塩(オキシコンチン)内服治療を開始した。治療開始後2 か月に,右上腕にしびれ感,右第4,5 指に疼痛を自覚。頸椎X 線およびPET─CT で第7 頸椎転移の診断となった。以後,メキシレチン塩酸塩,塩酸アミトリプチリンおよびクロナゼパムによる鎮痛補助薬の投与を開始したが効果は得られず,疼痛緩和放射線照射(37.5Gy, 2.5 Gy/回)を開始した。照射開始3 週後より,右上腕しびれ感および疼痛は徐々に軽快。照射開始5 週後には,神経症状をほぼ感じないレベルにまで回復した。照射5 か月後には,神経障害が完全に消失した。骨転移を有する進行癌に対する疼痛緩和目的の放射線照射療法は,モルヒネ製剤や鎮痛補助薬よりも疼痛緩和効果が高く,有用であると考えた。 -
膵尾部癌,横行結腸血行性転移に対し一期的手術を施行した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例: 51 歳,男性。既往歴: 大腸ポリープ。現病歴: 便潜血陽性にて当院を受診。下部消化管内視鏡施行し,横行結腸に腫瘍性病変,腹部造影CT にて膵尾部に腫瘤を認め,膵尾部癌と診断した。膵癌,横行結腸癌の重複癌の可能性を考え,膵体尾部切除術,横行結腸切除術を施行した。病理組織学的所見: 膵病変は中分化型管状腺癌であり,脾静脈浸潤を伴っていた。横行結腸病変は粘膜下層が主体であり,粘膜内,筋層,漿膜下層浸潤を認める管状腺癌であった。膵病変と同様の組織形で病変の主座を考慮し,膵癌の横行結腸血行性転移と診断した。術後経過: gemcitabine(GEM) 3 週投与1 週休薬を9 コース施行後,肝転移が出現した。GEM+S─1 療法を7 コース追加したが,奏効せず1 年6 か月にて死亡した。まとめ: 血行性転移を伴う膵癌は一般的には手術適応ではない。術前診断することが困難なことも多く,本症例は同時切除により比較的長期の生存期間を認めた。 -
膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)との鑑別に苦慮した中年女性の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)由来浸潤癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は57 歳,女性。エコー,MRI にて膵尾部嚢胞性腫瘤を指摘され当院初診。腹部に圧痛や腫瘤は触知せず。造影CTにて膵尾部に壁内不整結節を伴う8 cm 大の嚢胞性腫瘤を認めた。悪性膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)を疑い手術を施行。開腹すると膵尾部に嚢胞性腫瘤を認め,炎症による硬化が著明で胃後壁に広範囲に癒着していた。胃から剥離し,膵体尾部脾切除術を施行。病理では嚢胞壁の背側が肥厚し,浸潤性膵管癌であった。卵巣様間質を認めず,浸潤部周囲にはPanIN 1~3 の膵管上皮異型を認め,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)由来浸潤性膵管癌と診断した。病期はpT3pN0M0, fStage III。術後補助化学療法を施行するも,多発肺転移を来した。IPMN/MCN 国際ガイドラインではほとんどの例でIPMN とMCN を術前に鑑別することが可能と記載されているが,難渋する例も散見される。術前に膵MCN との鑑別が困難であったIPMT 由来浸潤癌の1 切除例を経験したので報告する。 -
腎癌術後11 年目に肺転移,15 年目に膵転移を来し切除した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は73 歳,男性。1996 年,他院で左腎細胞癌に対し左腎摘出術を施行。経過観察中の2007 年,CT にて右肺S5 およびS6 に結節影を認めた。原発性肺癌または転移性肺腫瘍の診断で12 月,胸腔鏡補助下S5, S6 右肺部分切除術を施行。病理組織診断にてS5 病変は原発性肺腺癌,S6 病変は腎細胞癌肺転移と診断。2011 年,CT にて膵体部に境界明瞭な多血性腫瘍が認められた。腎細胞癌膵転移または膵内分泌腫瘍が疑われ,尾側膵切除術を施行。病理組織診断にて腎細胞癌膵転移と診断。手術3 か月後に多発肝転移が出現し,スニチニブによる加療中である。腎細胞癌は長期潜伏後,再発の報告例が散見される。再発症例であっても根治切除にて長期生存を望めるという報告が多い。また分子標的薬の使用も可能となり,治療の選択肢は拡大した。転移性腎細胞癌に対しては切除を積極的に考慮し,切除不能例に対しても継続した治療を検討すべきである。 -
膵頭部領域癌との鑑別を要したIgG4 関連硬化性疾患の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は56 歳,男性。右季肋部痛を主訴に,精査・加療目的で紹介となる。初診時,発熱・黄疸は認めず。腹部は平坦・軟で右季肋部に軽度圧痛を認めた。採血検査にて肝胆道系酵素,CA19─9 およびHbA1C の上昇を認めた。単純CT 検査にて,肝内胆管から総胆管の拡張を認めた。膵は,びまん性に腫大していた。MRCP およびERCP 検査にて,下部胆管に先細り状の閉塞を認めた。主膵管は狭小化し,膵はびまん性に腫大していた。また,腹部大動脈下部周囲に軟部影を認めた。経過中に黄疸を呈したため,下部胆管にERBD チューブを留置した。胆管擦過細胞診はnegative であった。採血にてIgG4 の上昇を認め,後腹膜線維症・硬化性胆管炎を合併した自己免疫性膵炎と診断した。プレドニゾロンが著効し,糖尿病も改善を認めた。今回われわれは,膵頭部領域癌との鑑別を要したIgG4 関連硬化性疾患の1 例を経験したので,文献的考察を加え報告する。 -
膵癌Gemcitabine 併用陽子線療法後に発症した間質性肺炎の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は69 歳,女性。検診の腹部超音波検査で異常を指摘され,精査の結果,局所進行切除不能膵体部癌と診断された。兵庫県立粒子線医療センターにてgemcitabine(GEM)併用陽子線治療(陽子線67.5 GyE/25 Fr+GEM 800 mg/m2 day 1,8)。その後当院にてGEM(1,000 mg/m2 day 1,8,15/28 day)による化学療法を開始した。GEM 初回投与から212 日目,呼吸困難を主訴に来院した。胸部CT 検査で両側肺野末梢優位に非区域性すりガラス様陰性を認め緊急入院となった。気管支鏡検査では,びまん性肺胞出血の所見を認め重篤な間質性肺炎と診断した。入院2 日目よりmethylprednisolone 1 g/日×3 日のステロイドパルス療法を開始し以後は経口prednisolone 40 mg/日より開始し徐々に減量した。自他覚所見は比較的速やかに改善し,第24 病日軽快退院した。GEM 関連びまん性肺胞出血を伴う報告は3 例のみで救命例の報告はない。今回われわれは,肺胞出血を伴った間質性肺炎に対しステロイドパルス療法を行い救命し得た症例を経験したので報告する。 -
大腸癌術後L─OHP 併用化学療法による補助化学療法の現状
39巻12号(2012);View Description
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海外の臨床試験において結腸癌治癒切除後の補助化学療法としてoxaliplatin(L─OHP)併用化学療法の有効性が示され,本邦においても認可された。しかし副作用や経済的な問題もあり,本邦での実臨床のL─OHP 併用化学療法についての報告は少ない。本邦で認可され約2 年余経過した時点での結腸癌補助化学療法に対するL─OHP 併用化学療法の現状について報告する。対象は2009 年9 月~2011 年12 月までの治癒切除可能であったStage III 結腸癌(RS を含む)66 例とした。Stage III症例の33.3%(IIIa: 18.9%,IIIb: 55.5%)がL─OHP 併用化学療法を選択した。化学療法施行中,重篤な副作用は認めなかった。副作用やポート使用,経済的な不利益な点があっても,L─OHP 併用化学療法に対して,結腸癌治癒切除後の再発予防効果にStage IIIb の患者で多く期待していることが示唆された。 -
Stage IV 大腸癌の治療成績とTNM 細分類の妥当性の検討
39巻12号(2012);View Description
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近年,化学療法の奏効率の向上によりstage IV 大腸癌の治療成績は改善している。TNM 分類第7 版では,新たにstageIV が転移臓器個数によりIVA とIVB に細分化された。今回,当科におけるstage IV 大腸癌の治療成績から,stage IV 細分類の予後因子としての妥当性について検討した。当科で2006 年1 月~2011 年6 月の期間にstage IV 大腸癌と診断された170 例を対象に治療成績を検討した。stage IVA 78 例,stage IVB 92 例で腹膜播種単独例は21 例であった。stage IVA とIVB の全生存期間の中央値は,29.2 か月,16.1 か月(p=0.13)であった。stage IVB のうち腹膜播種単独例の全生存期間の中央値は37.6 か月であり,stage IVA のそれと同等であった。今回の検討でstage IV の細分類と予後に関連性が認められず,腹膜播種単独例をstage IVA として扱うことが妥当であると考えられた。 -
大腸癌における血清抗p53 抗体測定の有用性の検討
39巻12号(2012);View Description
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今回,大腸癌の診断における血清抗p53 抗体(S─p53 Ab)測定の有用性を検討した。当科で大腸癌375 例および健常成人115 例(コントロール群)を対象にELISA 法でS─p53 Ab(cut─off 値1.3 U/mL 以下)を測定し,大腸癌患者ではCEAやCA19─9 との相関についても解析した。大腸癌群とコントロール群のS─p53 Ab 値の中央値は,それぞれ0.69(0.69~10,610)U/mL,0.69(0.69~19.5)U/mL であり,陽性率は各々30.4%,10.4%(p<0.01)であった。大腸癌群におけるCEA とCA19─9 の陽性率は40.0%,18.9%であり,S─p53 Ab のみが陽性な症例が16%に認められた。CEA,CA19─9,S─p53 Ab のいずれかが陽性となる率は61.6%であった。S─p53 Ab とCEA およびCA19─9 の間に相関は認められなかった。stage 別のS─p53 Ab の陽性率は,stage 0,I: 19.4%,stage II: 27.0%,stage III: 36.1%,stage IV: 61.0%であった。S─p53Ab は大腸癌の早期でも陽性率が高く,大腸癌の検出率を60%程度に高めることから,大腸癌の診断におけるS─p53 Ab の測定の有用性が示唆された。 -
血清抗p53 抗体の大腸癌治療モニタリングマーカーとしての有用性の検討
39巻12号(2012);View Description
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血清抗p53 抗体(S─p53 Ab)値の治療モニタリングマーカーとしての有用性を明らかにするために,大腸癌治癒切除前後のS─p53 Ab 値の推移を検討した。術前S─p53 Ab 値が高値であり,stage II/III 大腸癌に対し治癒切除が行われた16 例を対象に,S─p53 Ab 値の経時的推移を検討した。また,CEA 値も高値であった6 例について半減期を比較検討した。術前S─p53 Ab 値の中央値は29.9 U/mL,半減期は40.3 日であった。4 例が術後79~142 日後に基準値範囲まで低下した。S─p53Ab とCEA がともに高値であった6 例の半減期は,S─p53 Ab のほうがCEA より長い傾向にあった(S─p53 Ab 32.3 日,CEA13.2 日)であった。肝再発を来した1 例では,再発とその後治療の時期とほぼ同時期にCEA 値が低下したのに対し,S─p53Ab は遅れて低下していたことから,治療のモニタリングマーカーとしての有用性は低く,CEA 値や画像診断を優先すべきと考えられた。 -
Laparoscopic Lateral Pelvic Lymph Node Dissection for Lower Rectal Cancer: Initial Clinical Experiences with Prophylactic Dissection
39巻12号(2012);View Description
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Aim: To evaluate the technical feasibility of laparoscopic lateral pelvic lymph node dissection (LPLD) following total mesorectal excision (TME) as prophylaxis for patients with advanced lower rectal cancer but no radiologic evidence of lymph node involvement. Patients and methods: TME was performed on 30 patients with cT3N1─2M0 lower rectal cancer. LPLD was performed by laparoscopic surgery in 12 patients (LAP group),and open surgery in 18 patients (Open group). Statistical analysis was used to compare the number of harvested lymph nodes, operative time, operative blood loss, transfusion rate, and volume of transfusion between the groups. Results: No significant difference was observed in the number of harvested lymph nodes. Operative time was significantly longer in the LAP group; however, operative blood loss, transfusion rate, and volume of transfusion were significantly lower in the LAP group. Conclusion: Laparoscopic LPLD, when performed by a well─trained laparoscopic team, is safe and feasible in some selected lower rectal cancer patients. This approach has the potential to achieve oncologic lymph node clearance equivalent to open surgical LPLD, and to overcome the cited disadvantages of LPLD, which include greater operative blood loss and urinary dysfunction. -
下部直腸癌に対する直腸局所切除術の治療成績
39巻12号(2012);View Description
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下部直腸癌に対して直腸局所切除術を施行した後,病理組織学的検査結果でリンパ節転移高リスク群のSM 癌と判明されても,肛門温存の観点から患者の意向で追加の腸管切除を施行しない症例もある。2001~2009 年までに,当科で経験した下部直腸SM 癌に対する直腸局所切除術15 例の治療成績について臨床病理学的に検討した。粘膜下層を単純に三等分してSM浸潤度を検討した結果,SM1 癌3 例,SM2 癌11 例,SM3 癌1 例であり,全例切除標本で切除断端癌細胞陰性であった。追加腸管切除を行ったのはSM3 癌の1 例のみで,超低位前方切除を施行した結果,251 番リンパ節に転移を認めた。追加腸管切除を行わないSM2 癌9 例中で再発を来したものは1 例であり,超低位前方切除術で救命し得た。残る症例は,他の癌や重篤な合併症などを理由に追加切除を受けなかったが,現時点で再発はみられていない。 -
肛門扁平上皮癌に対する化学放射線療法の治療経験
39巻12号(2012);View Description
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肛門扁平上皮癌に対して,化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)を施行した6 例の治療成績を検討した。放射線療法(RT)は,小骨盤腔と両側鼠径部に40 Gy/30 回照射後,肛門部に20 Gy/10 回照射した。RT 開始日から5─FU 750mg/m2/day をday 1 ~ 5 持続静注し,mitomycin C 10 mg/m2 をday 1 に静注し,4 週間ごとに3 コース施行する化学療法を標準治療とし,高齢のT3症例ではS─1(40 mg/日)を内服した。腫瘍サイズはT1: 1 例,T2: 4 例,T3: 1例で,T1 症例は同時性膣癌によるVirchow リンパ節への転移を認めたが,5 例はリンパ節転移を認めなかった。全例で血行性転移は認めなかった。CRT 中3 例にGrade 2,1 例にGrade 3 の有害事象を認めたが,RT の中断や化学療法の開始を1 週間以上遅らせることなく全例でCRT を完遂できた。CRT の効果は肛門病変に関して全例がcomplete response(CR)であった。S─1 を内服したT3 症例を除く5 例は再発なく経過観察中である。肛門扁平上皮癌に対するCRT は安全に施行が可能で,根治が期待される治療法と考えられた。 -
Kohne’s Index を用いた切除不能大腸癌肝転移に対する二次治療FOLFIRI 療法の効果予測
39巻12号(2012);View Description
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目的: 切除不能大腸癌肝転移に対し二次治療の効果予測に関するKohne’s index(KI)の有用性について,retrospectiveに検討した。対象・方法: 切除不能・再発大腸癌肝転移に対し,oxaliplatin ベースの一次治療にfailure 後,二次治療にFOLFIRI 療法(bevacizumab 併用23 例)を施行した44 例を対象に,二次治療の治療効果とKI との関係について検討した。結果: KI により,high risk 22 例,intermediate risk 7 例,low risk 15 例に分類された。H 群(high risk)とnon─H 群(intermediate risk+low risk)の間で,奏効率(14% vs 27%,p=0.45),病態制御率(50% vs 68%,p=0.36),無増悪生存期間(中央値: 4.1 か月 vs 7.1 か月,p=0.33)に差を認めなかったが,全生存期間はnon─H 群のほうが有意に良好であった(中央値: 10.8 か月 vs 23.9 か月,p=0.03)。肝切除(conversion therapy)が行われた症例はなかった。結語: 大腸癌肝転移に対する二次治療FOLFIRI 療法の効果予測としてのKI の有用性は限定的であり,conversion therapy を踏まえた腫瘍縮小効果の予測に用いることはできないことが示唆された。 -
K─Ras 野生型切除不能再発大腸癌における一次治療Bevacizumab 併用Oxaliplatin ベース化学療法の治療成績
39巻12号(2012);View Description
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一次治療でbevacizumab(Bmab)併用oxaliplatin(L─OHP)ベースの化学療法を行ったK─ras 野生型の切除不能再発大腸癌34 例を対象に治療成績を調べ,その有効性と安全性について検討した。奏効率は,CR 2 例,PR 13 例で44%であった。無増悪期間の中央値は11.1 か月,全生存期間は25.1 か月であった。有害事象は,grade 3 以上が18 例(53%)に認められ,好中球減少10 例と末梢神経障害6 例であった。今回の結果は,これまで報告されてきた抗EGFR 抗体を含む第III 相試験での治療成績とほぼ同等の成績であり,一次治療でのBmab 併用のL─OHP ベースの化学療法の有効性と安全性を確認することができた。また,肝転移を標的病変とする症例と肝以外を標的病変とする症例では,肝転移を標的とする症例の予後が不良であることが示唆された。この点については今後の症例を集積し,さらなる検討が必要であると考えられた。 -
再発大腸癌に対する術前化学療法
39巻12号(2012);View Description
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背景と目的: 再発大腸癌に対する切除後の成績は良好とはいい難い。術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)により再々発率を低下できる可能性があり,当科では切除可能な再発大腸癌に対しNAC を推奨している。再発大腸癌に対する治療方法,成績を報告する。対象と方法: 当科でNAC を施行した肝・肺転移以外の再発大腸癌19 例を対象とした。レジメンはFOLFIRI3 に分子標的治療薬を組み合わせて4~8 コース施行し,終了後4~6 週で根治術を施行した。結果: 画像上の治療効果は,CR 1 例,PR 7 例,SD 10 例で,PD は1 例も認めなかった。13 例でR0 の手術が施行され,組織学的治療効果はGrade 1a が10 例,Grade 1b が5 例,Grade 2 が1 例であった。3 年全生存率が83.6%,3 年無再発生存率が50.3%と良好な成績が得られた。結語: 少ない症例で短い観察期間ではあるが,NAC の施行により再発大腸癌の切除率を上げ,再々発率を下げられる可能性が示唆された。 -
大腸癌同時性・異時性転移切除後の補助化学療法としてのmFOLFOX6 療法
39巻12号(2012);View Description
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目的: 大腸癌転移巣切除後の補助化学療法としてのmFOLFOX6 療法の成績について検討した。対象・方法: 2003 年12月~2011 年11 月の間に,術前化学療法を施行せずに転移巣を切除した大腸癌40 例を対象とし,患者背景,術後補助化学療法,予後について検討した。結果: 補助化学療法は30 例に施行された(mFOLFOX6: 26 例,5─FU 系経口薬: 4 例)。mFOLFOX6 施行例のほうが5─FU 経口,または化学療法非施例より無再発生存期間が長い傾向(28.5 か月vs 14.8 か月,p=0.11)であったが,全生存期間に差がなかった(37.9 か月vs 31.3 か月,p=0.56)。mFOLFOX6 施行例を同時性転移切除11 例と異時性転移切除15 例に分けて検討すると,両者の間に無再発生存期間(p=0.46),全生存期間(p=0.29),Grade 3の有害事象発生率(p=0.32)に有意差を認めなかった。結語: ① 大腸癌転移巣切除後のmFOLFOX6 療法は無再発生存期間の延長に寄与する,② 転移巣の出現時期は転移切除後のmFOLFOX6 の成績に影響を及ぼさないことが示唆された。 -
Kohne’s Index による切除不能・再発大腸癌肝転移に対する一次治療mFOLFOX 療法の効果予測
39巻12号(2012);View Description
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目的: 切除不能・再発大腸癌肝転移に対するoxaliplatin ベースの一次治療の効果予測に関するKohne’s index(KI)の有用性について,retrospective に検討した。対象・方法: oxaliplatin ベースの一次治療を行った切除不能・再発大腸癌肝転移84 例を対象とし,治療効果とKI との関係について検討した。結果: KI により,high risk 群12 例,intermediate risk 群20 例,low risk 群52 例に分類された。奏効率,病態制御率,無再発生存期間,全生存期間,肝切除移行率のいずれにおいても,3 群間に有意差を認めなかった。結語: KI は,切除不能・再発大腸癌肝転移に対するoxaliplatin ベースの一次治療の効果予測には有用でないと考えられた。 -
mFOLFOX6+Cetuximab 療法で発症したと思われた間質性肺炎症例の検討
39巻12号(2012);View Description
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症例1: 69 歳,男性。2010 年10 月,直腸癌ならびに同時性転移性肝腫瘍と診断され低位前方切除術後,mFOLFOX6+cetuximab 療法を開始した。しかし6 コース終了後に呼吸苦が出現し,間質性肺炎と診断され肝切除は断念した。その後mFOLFOX6+bevacizumab 療法を継続していたが,2012 年6 月に死亡した。症例2: 71 歳,男性。2005 年,S 状結腸癌に対してS 状結腸切除術を施行。2006 年,転移性肺腫瘍に対し右下葉部分切除術を施行。2007 年~多発転移性肝腫瘍に対しRFA,TACE を断続的に施行したが治療効果は乏しかったため,2010 年~ FOLFOX4 療法,2011 年~ mFOLFOX6+cetuximab 療法を開始した。しかし,8 コース終了後に呼吸不全を呈し間質性肺炎と診断され,2012 年3 月に死亡した。2 症例とも死因は呼吸不全であり,間質性肺炎発症が影響したと思われた。間質性肺炎の危険因子保有症例の場合は,cetuximab 投与前に慎重な検討が必要であると思われた。 -
進行直腸癌に対し術前に化学療法を行いIntersphincteric Resection(ISR) を施行し得た1例
39巻12号(2012);View Description
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症例は55 歳,男性。直腸癌(RbP),cT3(cA),cN3,cM0,cStage IIIb。肛門温存の希望が強く,術後補助療法として予定していたmFOLFOX6 を先行させ再評価後に術式を決定する方針とした。腫瘍,リンパ節転移は縮小し,肛門温存術が可能と判断し,ISR,D3,予防的回腸ストーマ造設術を行った。病理所見は深達度pA,効果判定基準Grade 2 であった。術後側方郭清部に膿瘍を形成したが保存的に治癒した。退院後,補助化学療法を追加し,再発所見なく肛門機能も保たれている。直腸癌に対する術前化学療法には局所と遠隔転移の制御により肛門温存手術の適応拡大が期待される。本症例を踏まえ,下部直腸進行癌に対する術前化学療法の課題を検討する。 -
S 状結腸癌(cStage IV) に対し術前化学療法(mFOLFOX6+Bev)が奏効し根治術を施行し得た1 例
39巻12号(2012);View Description
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切除不能と診断された進行大腸癌や他臓器浸潤大腸癌に対し化学療法を行い,down staging や腫瘍縮小効果を得た後に,拡大手術を回避したり根治手術し得た報告例が増加している。今回われわれは,S 状結腸癌(cStage IV)に対し術前化学療法を施行し,経過良好な症例を経験したので報告する。症例は57 歳,男性。内視鏡通過不能なS 状結腸癌が膀胱部腹膜に広範囲に浸潤癒着し周囲にeffusion を伴っており,腹膜播種性転移が疑われた。さらに,所属リンパ節と大動脈周囲リンパ節が多数腫大していた。Stage IVのS 状結腸癌と診断し術前化学療法[mFOLFOX6+bevacizumab(Bev)]を施行したところ,内視鏡が通過する程度まで腫瘍が縮小し,腫瘍周囲のeffusion は消退,腫大リンパ節は縮小した。手術所見では腹膜播種は認められず腫瘍の膀胱部腹膜癒着は小範囲であり,腹膜合併切除は小範囲に抑えられた。結果的には,病理組織学的診断でStageII,薬物治療での組織学的効果判定はGrade 1b であった。現在,局所進行大腸癌に対する術前化学療法についての臨床試験が行われているが,明確なエビデンスがなく治療指針として確立されていない。今後,術前化学療法の有用性を示す臨床試験による検証の結果が待たれる。 -
集学的治療により長期生存が得られているStage IV 大腸癌の2 例
39巻12号(2012);View Description
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症例1: 67 歳,男性。2006 年9 月に直腸癌,転移性肝癌の診断にて直腸前方切除術,肝S4,S5,5/8 部分切除術,胆嚢摘出術を施行した。9 月の初回手術後59 か月間に,肺転移,肝転移,結腸転移に対して計5 回の手術および術後補助化学療法を施行した。初回術後69 か月経過しており,最終手術後7 か月の現在,無再発である。症例2: 42 歳,男性。2007 年5 月にS 状結腸癌,多発転移性肝癌の診断にてS 状結腸切除術を施行した。5 月の初回手術後58 か月間に,肺転移,肝転移に対して計7 回の手術および術後補助化学療法を施行した。初回術後61 か月であり,現在経過観察中である。Stage IV 大腸癌に対して,化学療法と積極的な外科的切除を併用した集学的治療により長期生存の可能性が考えられた。 -
腸重積を主訴に発見されたS 状結腸癌の3 例
39巻12号(2012);View Description
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成人腸重積は小児に比べて頻度は少なく,まれな病態である。今回,腸重積様症状にて発見されたS 状結腸癌を3 例経験した。3 例のうち2 例は術前に腸重積を解除できたため,待機的に手術が可能であった。1 例は重積解除不能であり,緊急手術となった。いずれの症例も対応が早期の段階で可能であったため,術後経過も良好であった。成人の腸重積症は器質的な疾患,特に癌に起因するものが多いとされており,腸重積の解除のみならず,原疾患を考えて治療に当たる必要がある。悪性所見をいち早くとらえ,適切な治療戦略を立てることが必要と考えられた。 -
術前化学療法により根治切除し得た広範な後腹膜浸潤を伴う盲腸癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は54 歳,男性。貧血の精査のため大腸内視鏡検査を施行し,盲腸に2 型進行癌を指摘され,同時に検索したK─ras遺伝子検査ではwild type であった。腹部CT では盲腸から上行結腸にかけて造影効果を伴う腫瘤影を認め,腹壁および右側腸腰筋への浸潤が疑われた。局所の過伸展のために根治切除は困難と考え,術前化学療法としてmFOLFOX6+panitumumab併用療法を6 コース施行した。化学療法後,腫瘍は約41%縮小してPR と判定,後腹膜への浸潤も改善したため,根治手術を行った。病理学的にも根治度A であり,切除標本の組織学的効果判定はGrade 1a であった。現在術後約14 か月経過し,無再発外来通院中である。分子標的治療薬を併用した術前化学療法は,根治性を高める有用な治療法の一つと考えられた。 -
腹腔鏡下手術中に広範囲皮下気腫を生じた上行結腸癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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腹腔鏡下結腸切除術の術中に広範囲皮下気腫を生じたため,開腹手術に移行した1 例を経験した。症例は76 歳,女性。腹腔鏡下右半結腸切除術中に広範囲の皮下気腫を起こし,PaCO2 64.3 mmHg まで上昇したため気腹操作を中止し,以後の手術操作を開腹にて行った。術後経過は順調で,術後第16 病日に軽快退院となった。いったん広範囲の皮下気腫が起きると,気腹操作を中止せざるを得ない場合もある。標準的な気腹圧であっても患者因子によっては皮下気腫を生じる危険があり,握雪感などの理学所見,ETCO2 の継続的なモニタリング,不整脈などの異常の早期発見に努め対処することが重要であると考えられた。 -
家族性大腸腺腫症術後の胃底腺ポリポージスを伴う青年期肝細胞癌
39巻12号(2012);View Description
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症例は23 歳,男性。母親が家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polysposis: FAP)と診断されていた。そこで,大腸内視鏡検査を施行し大腸ポリポージスが認められた。また,胃底腺ポリポージスも認められた。血縁関係者の遺伝子検査などは拒否された。15 歳時J 型回腸嚢肛門吻合術が行われ,術後排便機能は良好である。本症例は23 歳時に肝機能検査異常とCEA 値の異常を指摘され精査した。肝S8 に大きさ4 cm の単結節型肝細胞癌が指摘された。S8 肝部分切除術後経過は良好で,再発なく元気に外来通院中である。また,胃底腺ポリポージスも変化を認めていない。 -
大腸癌術後補助療法としてのFOLFOX 療法後肝転移切除例における肝障害
39巻12号(2012);View Description
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結腸癌の術後補助療法としてFOLFOX が認可され,ハイリスク症例を中心に普及している。FOLFOX には,特有の末梢神経障害に加えて,病理学的類洞拡張を特徴とした肝障害が報告されている。われわれは,上行結腸癌stage IIIb 術後,補助療法としてmFOLFOX6 を12 コース施行後,肝転移に対して切除を行った1 例を経験した。症例は45 歳,男性。上行結腸癌のため,腹腔鏡下右半切除術施行。stage IIIb であったため,術後mFOLFOX6 よる補助療法を行った。その後,肝転移を認め,肝外側区域切除施行。切除標本の病理検査では,肝臓の非腫瘍部では抗癌剤の影響とみられる類洞の不規則の拡張と肝細胞のアポトーシスが散見された。結腸癌補助療法としてmFOLFOX6 を12 コース行った直後に肝転移が発見された場合,肝機能障害が残存している可能性があり,手術と術後管理には細心の注意を要すると考えられた。 -
胃癌・直腸癌同時肝転移が鏡視下術後S─1 にて肝転移CR の1 例
39巻12号(2012);View Description
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今回われわれは胃癌および直腸癌同時多発肝転移に対し,腹腔鏡下前方切除後S─1 にて肝転移がCR となり,胃切除した1 例を経験したので報告する。症例は72 歳,男性。便潜血陽性のため大腸検査の下剤内服後,イレウスとなった。大腸検査で全周性の直腸癌および胃カメラで前庭部大弯に胃癌を認めた。2010 年8 月腹腔鏡下前方切除術を先行し施行した。退院前,腹部造影CT にて多発肝転移が判明し,S─1(25)4 カプセル分2 を4 週投与2 週休薬で開始したところ4 コース後に多発肝転移は消失,CR を維持しているため,胃癌に対し2011 年3 月幽門側胃切除術,Billroth I 再建術を施行した。術後S─1投与を再開し,2012 年1 月現在無再発生存中である。 -
集学的治療により長期無病生存を維持している大腸癌多発肝転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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根治不能と考えられた大腸癌多発肝転移に対し集学的治療を行い,術後3 年を経過した時点で無再発生存が得られている症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。 -
術前化学療法による画像上CR 症例に対し肝切除した大腸癌肝転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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患者は70 歳,男性。2006 年近医にて直腸癌(SS,N0,H1,Stage IV)に対して低位前方切除術を施行された。その後,術前より指摘された約1 cm 大のS2,S3,S6,S7 に多発する転移性肝腫瘍に対し,当院に紹介を受け化学療法を行った(mFOLFOX6,計5 コース)。化学療法後,画像上complete response (CR)となったが,肝外側区域切除術を行った。術後病理組織検査によって,病変部位に腫瘍細胞の存在が確認された。肝切除7 か月後にS6,S7 の経過観察していた部位と,S8に新たな再発を認め,肝後区域切除およびS8 部分切除を施行した。その後,術後補助化学療法(mFOLFOX6,計12 コース)を行い,無再発生存中である。大腸癌肝転移は,化学療法の奏効によりdown stage が可能となれば,切除により生存期間の延長が期待できる。しかし今回のように画像上CR となったにもかかわらず,術後病理組織検査によって腫瘍細胞の存在が確認されたとする報告が散見され,今後化学療法による画像上CR 病変の取り扱いを検討すべきであると考えられた。 -
集学的治療により根治を得られた大腸癌肝転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は68 歳,男性。2009 年8 月,S 状結腸癌・転移性肝癌の診断で,S 状結腸切除術,中心静脈ポート留置を施行。転移性肝癌は肝右葉と尾状葉を占拠する巨大な腫瘍で,切除にはリスクが伴うことや切除後早期に再発する可能性が高いことを考え,術後化学療法を選択,bevacizumab(Bev)+FOLFOX を9 コース施行した。腫瘍は縮小を認めたが,依然として右葉および尾状葉を占拠する状態であった。この時点で,腫瘍が最初より縮小していること,新たな転移巣の出現がないことから,外科的治療を選択した。残肝の機能を考え,まずPTPE を施行し,その後2010 年2 月に肝右葉切除術を施行。補助化学療法として術後より再度Bev+FOLFOX を施行していたが,2010 年8 月に残肝に転移性肝癌の再発を指摘された。肝切除より約6 か月目の再発であったため,すぐに切除せずに化学療法を継続することとした。しかしながら,腫瘍は縮小に至らずむしろ増大傾向にあり,PET では肝内に3 か所あったため,2011 年2 月,3 か所とも肝部分切除術を施行した。以後,患者の希望もあり化学療法は施行していないが,2012 年3 月に至るまで明らかな再発なく経過している。大腸癌における転移性肝癌の治療方針については,ガイドライン上では化学療法が発達した現在でも局所療法が可能なものに関しては外科的手術などを推奨している。本症例のように切除後すぐに再発した場合,再切除を施行するべきなのか,化学療法を追加して再切除を考慮すべきなのかは悩むところである。局所療法や全身化学療法を組み合わせた結果,tumor free の状態が得られることができた症例を経験したので報告する。 -
肝動注療法と肝切除により制御できたS 状結腸癌肝転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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切除不能大腸癌肝転移に対する治療は全身化学療法が適応されるが,高齢者,PS 低下例,家族の介護が十分には得られない症例に対して,FOLFOX やFOLFIRI などの全身化学療法を適応するのは困難なことがある。肝動注療法は全身化学療法の最近の進歩によりfirst─line で使用されることは少なくなってきたが,肝転移のみの症例に対する治療効果は優れており,有害事象は少ない。今回,performance status(PS)3 の71 歳,女性で肝両葉に大きな転移を伴ったS 状結腸癌症例に対して,原発巣切除後全身化学療法が困難なため,肝動注療法を12 か月施行し肝転移の縮小を得た。その後,段階的肝切除(1 回目: 左葉切除,2 回目: 右葉S7,S5)を施行し2.5 年の生存を得ている。現在2 個の小さな肺転移を来しているが,自宅介護の状態で外来化学療法を継続できている。PS が悪く,療養環境が十分に整わない患者などには肝動注療法は現在も治療選択肢となると考えている。 -
大腸癌肝転移・腹膜播種に対して集学的治療を行い長期生存中の1 例
39巻12号(2012);View Description
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新規抗癌剤が使用できる現在においても,肝・腹膜転移を伴う大腸癌の治療方針は確立されていない。今回,新規抗癌剤と複数回の手術によって長期生存を得ている高度進行大腸癌の1 例を経験したので報告する。症例は69 歳,男性。後腹膜に浸潤するRS 癌,同時性肝転移(H2)・腹膜播種(P2)に対し,Hartmann 手術,腹膜播種切除を施行した。原発巣の切除断端は癌細胞陽性であった。術後にmFOLFOX6 を14 回施行した。新病変の出現はなく肝転移がPR となったため,肝部分切除術を施行した。肝切除後にmFOLFOX6 を6 回追加投与した。その後PET─CT 検査にて肝S4 に異常集積を認めたため,mFOLFOX6 を8 回施行したところ,異常集積は消失した。初回手術から2 年7 か月後,肝S3 に転移を認めたため,肝外側区域切除術を施行した。原発巣手術後4 年7 か月,無再発生存中である。 -
門脈腫瘍栓を合併した大腸癌の1 例と本邦報告9 例の検討
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌の門脈内腫瘍栓形成は予後不良と考えられるが,その特徴は十分に検討されていない。今回,横行結腸癌門脈腫瘍栓症例を報告するともに,臨床病理学的特徴について文献的考察を行った。自験例は48 歳,女性。横行結腸癌,門脈腫瘍栓の診断で結腸右半切除術,膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除術を施行。最終診断は横行結腸癌2 型,tub2,pSI,ly3,v3,pN3,sP0,sH0,cM1(胃体弯リンパ節),fStage IV。術後6 か月で多発肝転移を認め,化学療法を施行するも術後18 か月で原病死した。自験例を含めた本邦報告10 例の検討では,年齢47~80(中央値70)歳。男性4 例,同時性6 例。血栓部位は門脈7 例,上腸間膜静脈2 例,下腸間膜静脈1 例。治癒切除後の再発形式は肝転移3 例であった。治癒切除例の無再発生存期間中央値は300 日であり,全症例の全生存期間中央値は420 日であった。大腸癌門脈内腫瘍栓では,高率に生じる肝再発を念頭に強力な補助化学療法を導入する必要がある。 -
集学的治療によりcCR を維持しているStage IV 盲腸癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は52 歳,男性。盲腸癌 肝S4,S6 転移にて回盲部切除術,肝左葉切除術,S6 部分切除術を施行した。術後1 か月で縦隔・傍大動脈リンパ節転移,左副腎転移が出現したため,capecitabine+oxaliplatin(CapeOX),CapeOX+bevacizumabを施行したところ,縦隔・傍大動脈リンパ節転移はcCR となったが,左副腎転移はPD であった。左副腎転移がさらに増大すると腎合併切除となる可能性が強く懸念されたため,この段階で左副腎摘出術を施行した。術後補助療法を施行し,副腎摘出後2 年現在,画像上転移巣を認めず,cCR を維持している。本症例ではリンパ節転移が化学療法で制御でき,増大傾向で左腎動静脈への浸潤が懸念された副腎転移の切除を行った。腎を温存することで術後の化学療法を十分施行できたことが,cCRの維持につながっている可能性がある。 -
化学療法が著効したVirchow リンパ節転移を伴ったS 状結腸癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は71 歳,女性。左下腹部痛・便の狭小化を自覚し,近医にてS 状結腸癌を指摘され当科紹介となり,2008 年1 月にS 状結腸切除術を施行した。病理組織診断は低分化型腺癌,3 型,pSE,ly2,v1,pN0,sH0,sP0,cM0,fStage II であった。術後補助療法としてcapecitabine 2,400 mg/日を8 サイクル施行した。8 月に左頸部腫脹を自覚した。左鎖骨上窩リンパ節腫大を認めたため生検を施行し,S 状結腸癌のリンパ節転移と診断した。CT 検査では大動脈周囲にもリンパ節転移を指摘された。9 月よりFOLFOX+bevacizumab(Bmab)を開始し,PR の抗腫瘍効果を得た。8 サイクル投与後にoxaliplatin(L─OHP)を休薬しsLV5FU2+Bmab としたが,抗腫瘍効果PR を継続した。その後はL─OHP の再開・休薬を繰り返し,FOLFOX/sLV5FU2+Bmab を合計33 サイクル施行,2009 年6 月にCR を示した。この間,有害事象は好中球減少(Grade1),食欲不振(Grade 1),末梢神経障害(Grade 1)のみであった。その後化学療法を中止したが,現時点(2012 年7 月)まで約3 年間CR を継続している。 -
下行結腸癌術後腋窩リンパ節転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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消化器の悪性腫瘍の腋窩リンパ節転移はまれである。下行結腸癌術後に左腋窩リンパ節転移を来した1 例を経験したので報告する。症例: 78 歳,女性。既往歴: 53 歳時 右乳癌手術,70 歳時 胃癌手術。現病歴: 2011 年4 月下行結腸癌によるイレウスに対して,左半結腸切除術(D3)を行った。中分化型腺癌,pSS,pN0,pStage II で,術後補助化学療法は行わず経過観察していた。術後4 か月のCT で,術前から指摘されていた左肺S10 の小結節が増大し,2 か所の新病変が出現した。さらに左腋窩に11 mm に腫大したリンパ節を指摘された。諸検査にて左乳房内に腫瘍性病変はなかったが,左腋窩リンパ節は不整形に腫大し,転移を疑った。転移性肺腫瘍,左腋窩リンパ節転移の診断で,胸腔鏡下左肺部分切除,左腋窩リンパ節を摘出し,ともに中分化型腺癌で下行結腸癌の転移と考えられた。術後,UFT/LV 内服を行い,再発の所見はなく経過中である。 -
直腸癌術後に膣転移・鼠径リンパ節転移を発症した1 例
39巻12号(2012);View Description
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大腸癌の転移巣として膣転移は極めてまれである。今回われわれは,直腸癌術後に膣転移,鼠径リンパ節転移を認めた症例を経験したので報告する。症例は78 歳,女性。2007 年7 月,直腸癌,子宮筋腫に対し低位前方切除術(上方D3,右側方郭清)・単純子宮全摘術を施行した(直腸癌Rb,pA,N1,H0,M0: fStage IIIa)。本人の希望で術後補助化学療法は施行しなかった。2008 年10 月,術後1 年目に血尿を認めたが病変は尿道に認めず,膣後壁に腫瘍を認めたため粘膜切除術が施行された。病理結果からは直腸癌術後のリンパ行性転移が疑われた。11 月,MRI・PET で左鼠径リンパ節転移を疑われ,2009 年1 月に左鼠径リンパ節郭清を施行した。病理の結果,直腸癌術後転移巣であった。術後補助化学療法は施行せず,転移再発巣治療後3 年5 か月無再発で経過している。 -
直腸癌孤立性大動脈分岐部リンパ節再発に対して血管合併切除再建術を施行し長期生存が得られた1 例
39巻12号(2012);View Description
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直腸癌孤立性大動脈分岐部リンパ節再発に対して血管合併切除再建術を施行し,長期生存が得られた1 例を経験したので報告する。症例は79 歳,男性。2 型進行直腸癌と腹部大動脈瘤を同時性に認め,Y 字型人工血管置換術を先行,1 か月後に前方切除術を施行した。術後病理組織所見は,RS,type 2,mod,pSS,int,INF b,ly2,v2,pN0,pPM0,pDM0,pRM0,p─Stage II。術後11 か月目に孤立性大動脈分岐部リンパ節再発を認め,手術を施行した。術中所見では,再発巣は大動脈分岐部を主座に人工血管右脚と右内外腸骨動脈分岐部および左総腸骨動脈に接していた。左総腸骨動脈は剥離可能であったが,右内外腸骨動脈分岐部の剝離は困難であった。右内腸骨動脈は瘤遠位側で結紮切離,人工血管右脚と右外腸骨動脈は遮断して再発巣と一括切除し,直接端々吻合した。術後病理組織所見で,再発巣はmetastatic adenocarcinoma。術後補助療法は施行していない。現在,再発切除後から10 年以上経過しているが,無再発生存中である。孤立性大動脈リンパ節再発は,完全切除が可能であれば長期生存の可能性があるため,積極的な切除も考慮すべきである。 -
直腸癌術後局所再発に対して術前化学放射線療法にてpCR を得た1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は57 歳,男性で,直腸癌に対して低位前方切除術が施行された。病理診断は直腸癌(Ra),2 型,tub2>tub1,pSS,INF b,int,ly2,v2,pPM0,pDM0,no,M0,H0,P0,fStage II であった。本人希望により術後補助化学療法は行われなかった。術後無再発で経過していたが,2 年11 か月後局所再発を認めたため,CPT─11+UFT/LV+RT 50 Gy にて術前化学放射線療法を施行した。術前化学放射線療法により画像上partial response(PR)を得たが骨盤内臓全摘術を施行し,病理学的に腫瘍細胞を認めなかったためpathological complete response(pCR)と判定された。 -
mFOLFOX6+Bevacizumab が有用であった直腸癌肺転移,癌性リンパ管症,骨転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は48 歳,男性。呼吸苦を主訴に近医を受診。精査の結果,直腸癌肺転移,癌性リンパ管症,胸骨転移と診断された。performance status(PS)2 であったため,mFOLFOX6+bevacizumab(Bmab)を20%減量し導入した。3 コース施行後,呼吸苦は改善しPS 1 となった。4 コース後の胸部CT で胸水はほぼ消失し,肺の陰影も改善した。20 コース施行後PDとなったため,irinotecan(CPT─11)+Bmab を投与した。直腸癌肺転移と診断後,16 か月で原癌死した。化学療法はすべて外来で施行可能であった。近年,切除不能大腸癌に対する多剤併用療法はその有用性が認められ,一次治療の中心となっている。その反面,薬物有害反応も高頻度に認められ,PS の悪い症例への投与は推奨されていない。今回われわれは,mFOLFOX6+Bmab が有効であったPS 2 の直腸癌肺転移,癌性リンパ管症,胸骨転移症例を経験したので報告する。 -
直腸癌術後肺再発に肺RFA 療法とFOLFIRI 長期投与が奏効した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は50 歳,男性。下血精査の結果,直腸癌(Rb)と診断。画像上遠隔転移は認めず,腹会陰式直腸切断術,D3,病変側のみ側方リンパ節郭清を行った。閉鎖リンパ節に転移を認め,病理組織学的検査はtub2,pA,pN3 でStage IIIb。術後補助化学療法はFOLFOX4 療法を施行。途中,臀部膿瘍により休薬したが,10 コース終了。補助化学療法後の胸部CT 検査にて左S8 の横隔膜直上に12 mm 大の小結節を認め,肺転移と診断。単発腫瘍であり,肺ラジオ波凝固療法(radiofrequencyablation: RFA)療法を施行。その後に術後補助化学療法をFOLFIRI 療法に変更した。明らかな有害事象は認めず,休薬期間なく継続可能であった。病変部は徐々に縮小し,50 コース目でPR からCR となり,さらに半年間継続したところでFOLFIRI療法を中止。FOLFIRI 療法は計62 コース施行した。その後,画像上再発所見は認められない。今回,肺RFA 療法およびFOLFIRI 長期投与により,直腸癌術後肺再発に対してCR を得た1 例を経験したので報告する。 -
原発巣切除と全身化学療法が著効した腹膜播種進行結腸癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は62 歳,男性。2010 年6 月,イレウス上行結腸癌・腹膜播種に対し右半結腸切除+横行結腸人工肛門造設を施行(pSE, pN3H0P3M0, fStage IV,R2)。遺残病変に対し術後1 か月よりSOX 療法を開始。SOX 療法4 コース施行後のCT で腹膜播種巣は画像上消失し,人工肛門閉鎖術を施行。術中検索でも腹膜播種を認めなかった。人工肛門閉鎖術後は,患者の希望もあり化学療法をせずにフォローアップ中で,2012 年6 月現在,腹膜播種の再燃兆候を認めていない。本症例は原発巣切除術後早期に短期間の全身化学療法を行い,良好な腹膜播種のコントロールを得られた。その結果,人工肛門の閉鎖および全身化学療法の長期離脱が可能となり,患者の高いQOL を長期間保てている。切除不能腹膜播種を伴った大腸癌に対して減量手術を行う際,原発巣切除を含んだ縮小手術により重篤な合併症を起こさず,かつ術後早期にスムーズな化学療法を導入することが,腹膜播種の良好なコントロールにつながり得ると思われる。 -
腹腔鏡下大腸切除術後2 年で手術創に再発した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は72 歳,女性。全盲で認知症あり。2009 年11 月,RS 全周性の進行大腸癌に対して腹腔鏡下前方切除術を施行。臍から臍下にかけ4 cm の小開腹先行で,マルチフラップゲート(MFG)を装着して創縁を保護しつつ手術施行。ダグラス窩洗浄腹水細胞診は陰性。MFG から腸管を引きだす際,腫瘍塊が一部rupture した。病理診断はtype 2,tub2,SS,ly1,v1,N0,M0,Stage II であった。術後2 年の2011 年11 月臍部に腫瘤を触知。画像検査と穿刺吸引細胞診で大腸癌の腹壁再発と診断。他部位への再発の可能性もあると考え,全身化学療法を施行した。腫瘍は縮小傾向(SD)で,他部位への再発がみられないため,2012 年2 月に腹壁再発腫瘍切除術を施行。臍部の手術痕と臍を切除する形で皮膚から腹膜まで一括切除した。腹腔鏡下大腸切除術後,創部に再発を来した1 例を経験したので報告する。 -
肛門管扁平上皮癌鼠径リンパ節再発に対する治療
39巻12号(2012);View Description
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はじめに: 肛門管扁平上皮癌に対する初回標準治療は化学放射線療法であることが確立しているが,再発の治療については様々な対応がある。症例: 76 歳,女性。主訴は便柱狭小。穿刺生検にて扁平上皮癌T2N0M0,Stage II と診断し,計60 Gy の放射線照射(鼠径リンパ節は照射野外)とS─1 を60 mg/m2/day で1 コース投与。その後2 年目に右鼠径リンパ節に再発。右鼠径リンパ節の郭清を行った後,両側鼠径部に計20 Gy の電子線照射を行った。4 年を経過しているが,再発を認めていない。考察: 肛門管扁平上皮癌の再発では,原発巣であればサルベージ手術であり,遠隔転移であれば化学療法が主体となる。今回のように照射野から外れていた鼠径リンパ節のみの再発では,リンパ節郭清手術後,鼠径部に放射線照射を追加するのが妥当で,NCCN ガイドラインでも支持されている。 -
大腸癌両側卵巣転移に対し切除によりQOL 改善に至った1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は52 歳,女性。2010 年9 月に盲腸癌,多発肝転移に対し腹腔鏡下右半結腸切除術を施行し,病理組織学的検査はtub2,SE,ly0,v3,PM0,DM0,RM0,N3,H3,P0,stage IV であった。術後化学療法bevacizumab(Bev)+IRIS を10コース施行され,多発肝転移巣に関しては制御良好であったが,2011 年10 月ごろより腹部症状を自覚し,11 月の腹部CT 検査で両側卵巣転移の増大を認め,症状改善を目的に両側卵巣腫瘍摘出術を施行した。切除した卵巣は病理検査では大腸癌の転移であることが示された。術後,腹部症状の改善が得られQOL の改善に至った。本症例は,多発肝転移を伴う大腸癌両側卵巣転移に対し,局所治療である卵巣摘出術を施行した。その結果,術後の腹水消失と腫瘍による腹部膨満感を解除することによりQOL 改善に至った。手術により化学療法が中断されるデメリットはあるものの,ある程度他の転移巣が制御されている状況では,QOL 改善をめざした緩和目的の本手術の意義はあると考えられた。 -
S 状結腸癌術後再発に対する集学的治療にて長期生存している1 例
39巻12号(2012);View Description
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S 状結腸癌術後の局所再発および遠隔転移再発に対して,手術を含めた集学的治療を行い,原発巣切除から約7 年半,再発後から約4 年半の生存が得られている1 例を経験したので報告する。症例は60 歳台,男性。2004 年12 月,S 状結腸癌(pSE, pN1, sH0, sP0, fStage IIIa)に対してS 状結腸切除術を施行し,術後補助化学療法(UFT/LV,6 か月)を完遂した。術後3 年で吻合部近傍に局所再発し,尿管浸潤を伴っており,結腸部分切除および左腎臓・尿管合併切除術を施行した。再発巣手術の約1 年後,局所再々発を認め,放射線治療を行った。照射後約1 年で多発肺転移が出現し,全身化学療法を開始した。腎摘出に伴う腎機能障害を認めたが,irinotecan(CPT─11)単剤投与,capecitabine+oxaliplatin(CapeOx)療法,CPT─11+panitumumab 療法を施行し,再発後から4 年半経過した現在SD が得られている。 -
直腸印環細胞癌の1 切除例
39巻12号(2012);View Description
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症例は76 歳,女性。便潜血陽性のため2010 年4 月に当院を受診し,下部直腸癌と診断された。生検では印環細胞癌であった。腫瘍の浸潤が原因と考えられる両側水腎症を認め,化学療法を先行した。XELOX+bevacizumab 療法を8 コース施行後の評価では,両側水腎症は改善し,腫瘍マーカーも陰性化していた。2011 年2 月に腹会陰式直腸切断術を行い,切除標本では組織学的CR であった。術後,腫瘍マーカーの上昇と,PET─CT にて骨盤腔内の再発と多発骨転移を認めた。現在,化学療法を再開し経過観察中である。大腸癌のなかでも印環細胞癌はまれであり,通常の大腸癌に比べても多臓器転移の頻度が高い上,腫瘍の増殖速度も速く,予後不良と報告されている。今回われわれは,直腸印環細胞癌の1 例を経験したので報告する。 -
虫垂杯細胞カルチノイドの1 例
39巻12号(2012);View Description
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虫垂杯細胞カルチノイド(goblet cell carcinoid: GCC)は,古典的カルチノイドに比べ頻度はまれであり予後不良である。症例は60 歳,女性。急性虫垂炎の診断で虫垂切除を行い病理組織検査でGCC の診断となった。深達度がSM であることとGCC の悪性度を考慮し,追加切除を行った。切除検体に腫瘍の遺残はなく,最終病理診断はGCC,0─II b 型,15×8 mm,pSM,int,INF b,ly0,v0,pPM0,pDM0,R0,pN0 (0/8),P0,H0,Cyx,M0,Stage I,Cur A であった。現在外来通院中で再発は認めていない。 -
肝動脈塞栓療法が著効した直腸カルチノイドの異時性多発肝転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は60 歳台,男性。径15 mm 大のSM 浸潤直腸カルチノイドに対し,根治切除術を施行した。術後1 年目の腹部造影CT にて,リング状に造影される5 ~ 35 mm 大の腫瘤が肝両葉に多発・散在しているのを認め,肝生検にて直腸カルチノイドの異時性多発肝転移と診断された。肝転移巣の広がりから手術は困難と判断し,初期治療として肝動脈塞栓療法(TAE)を選択し,2 か月間の間隔をあけて2 回施行した。4 か月後のCT・MRI にて肝転移巣は縮小率80%と著明に縮小しており,TAE が著効したことがわかった。直腸カルチノイドの肝転移は,手術による切除が困難な場合,抗癌剤の効果はあまり期待できず,治療に難渋することが多い。TAE は治療効果が高く低侵襲で繰り返し施行可能であり,予後延長に寄与すると考えられるため,初期治療として考慮すべき選択肢である。 -
急速に進行した直腸肛門部悪性黒色腫の1 例
39巻12号(2012);View Description
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急速に進行した直腸肛門部悪性黒色腫の症例を経験した。症例は66 歳,男性。便通異常および肛門痛を主訴に当院紹介受診。消化管の精査にて下部直腸から解剖学的肛門管にかけて,黒色調を呈する半周性の1 型腫瘍を認めた。生検にてmalignant melanoma と診断した。まず腹会陰式直腸切断術を施行した。術後第18 病日目よりDAV─feron 療法を開始した。しかし,早期に多発性肝転移・多発性肺転移・多発性皮膚転移が出現した。その後も急速に転移は増大していき,最終的に術後第138 病日目に永眠された。 -
胃癌の視触診によるリンパ節転移診断能の評価と応用
39巻12号(2012);View Description
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これまで,MDCT,PET/CT,MRI などの画像診断による術前リンパ節転移診断が行われてきたが,病理診断結果とは依然乖離があり,さらなるmodality の開発が必要と考えられる。今回,外科医が日常診療により経験的に習得している視触診での硬さを中心としたリンパ節転移診断能をまず評価することで,組織弾性イメージングを胃癌リンパ節転移診断に応用可能かを検討した。2008 年2 月~2009 年7 月までの進行胃癌切除症例で,手術時の病理標本整理で視触診によるリンパ節転移診断を行った連続症例57 例を対象とし病理結果と比較検討した。結果,感度63.1%,特異度86.8%,正診率82.8%であった。感度は1 群リンパ節で高いが,特異度・正診率は2 群リンパ節のほうが高い傾向にあった。個数別の検討では,No.12,No.7,No.5,No.11p のリンパ節視触診個数と病理個数の一致率が高かった。リンパ節転移診断での硬さの情報は有用であり,組織弾性イメージング(real─time tissue elastography)技術を胃癌診療に応用できる可能性が示唆された。 -
胃癌術後吻合部出血の検討
39巻12号(2012);View Description
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背景: 胃癌術後の吻合部出血は比較的まれな合併症であるが,発生時は緊急的処置が必要な重篤な合併症である。胃癌術後に吻合部出血を来した症例の臨床経過を検討した。対象と方法: 2000 年1 月~2010 年12 月に根治胃切除を受けた胃癌患者は約1,700 名で,術後吻合部出血を来した9 例について検討を行った。結果: 患者背景は,年齢の中央値が62 歳,全例が男性。術式は幽門側胃切除術2 例,腹腔鏡補助下幽門側胃切除1 例,胃全摘術6 例,吻合方法はBillroth I 再建法2 例,Roux─en─Y 再建法7 例であった。出血部位は,残胃(食道)空腸吻合部5 例,残胃十二指腸吻合2 例,Y 脚部の空腸空腸吻合が2例であった。治療方法は,5 例は保存的治療を施行,2 例は手術による止血術を施行,2 例は内視鏡的治療のみで完全止血が得られた。内視鏡治療例では治療後の退院が早い傾向にあった。結語: 胃癌術後の吻合部出血に対して,上部消化管内視鏡は出血の確認および治療的介入の両方に対し有用と思われた。 -
胃癌に合併する重複癌の臨床的検討
39巻12号(2012);View Description
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背景と目的: 近年の診断技術・治療成績の向上により,胃癌に同時性・異時性の重複癌が発見される頻度が増加している。重複癌の臨床的影響を明らかにした。対象: 1997~2009 年に胃癌手術し,追跡可能な1,086 例を解析した。結果: 1)重複癌有群が166 例(15%),重複癌無群が920 例(85%)であった。重複癌有群で高齢者,分化型胃癌の頻度が有意に高かった。2)重複癌死を含む予後解析では,重複癌の有無は独立した予後因子となり,重複癌が血液疾患,肝胆膵領域癌,食道癌の場合,全体の予後は不良であった。一方,大腸癌,尿路系癌では比較的予後良好であった。重複癌個数は予後に影響を与えなかった。3)胃癌原病死のみの解析では,重複癌の有無は胃癌の予後に影響を与えなかった。総括: 重複癌個数より重複癌の種類が生命予後に影響を与えることが明らかとなった。 -
進行再発胃癌のSP 療法における外来CDDP 投与の認容性に関する検討
39巻12号(2012);View Description
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当院では,進行再発胃癌のS─1/CDDP 併用療法(SP 療法)に際し,short hydration レジメンを導入し,CDDP を外来で投与している。2009 年8 月~2011 年11 月の間に進行再発胃癌の一次治療としてSP 療法を開始し,外来でCDDP を投与した23 例を対象にshort hydration レジメンの認容性を検討した。short hydration レジメンでは,day 8 に2,550 mL/4 時間55 分の補液を行い,day 7~9 に1,000 mL/日以上の水分を摂取するよう指導した。非血液毒性において,クレアチニン値上昇はgrade 1/2 を22%に認めたのみであり,心不全は認めなかった。測定可能病変を有する16 例の奏効率69%,23 例の治療成功期間中央値(mTTF)11.5 か月,1 年生存率77.8%,2 年生存率44.7%であり,short hydration は認容性があると思われた。 -
高度進行胃癌に対するS─1+CDDP とS─1+Weekly CDDP 療法の比較検討
39巻12号(2012);View Description
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根治切除不能進行胃癌患者を対象として,当院にて2007 年4 月~2010 年12 月に施行した一次治療としてのS─1+CDDP 療法(CS 療法)とS─1+weekly CDDP 療法(w─CS 療法)に関して有用性と安全性を比較検討した。CS 療法(SPIRITSレジメン)は15 例,w─CS 療法(CDDP 20 mg/m2 day 1,8,S─1 80 mg/m2/day day 1~14 q3w)は17 例。奏効率はCS 群33.3%,w─CS 群が70.1%であった。全生存期間中央値はCS 群205 日,w─CS 群が352 日(p=0.034)。無増悪生存期間中央値はCS 群135 日,w─CS 群が174 日(p=0.113)。観察期間中央値はCS 群が196 日,w─CS 群が352 日(p=0.196)。有害事象はw─CS 群はCS 群に比べ血液毒性,非血液毒性ともに頻度が少ない傾向がみられた。根治切除不能進行胃癌においてw─CS 療法はCS 療法と比較して効果,安全性ともに有用な治療法であることが示唆された。 -
進行胃癌に対する術後補助化学療法としてのDocetaxel+S─1 療法
39巻12号(2012);View Description
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背景: Stage IIIB 高度進行胃癌では,ACTS─GC の結果からS─1 による術後補助化学療法では不十分である可能性がある。そこで,より効果の期待できる術後補助化学療法を検討する余地がある。対象: 当院で施行したdocetaxel+S─1 を術後補助化学療法として投与した10 症例を安全性と継続性につきretrospective に検討した。方法: day 1 にdocetaxel(40 mg/m2)を経静脈的に投与し,S─1(120 mg/body)を2 週間(day 1~14)経口投与,その後1 週休薬とし3 週を1 コースとした。術後6 週以内に開始し,術後1 年間の予定とした。結果: 投与期間の中央値は12.5(2~23)コース。5 症例が1 年間の継続治療が可能であった。Grade 3/4 の血液毒性を10%(1 例),Grade 3/4 の非血液毒性を20%(2 例)に認めた。有害事象による中止を3 例に認めた。考察: 術後補助化学療法としてのdocetaxel+S─1 は十分に認容性があり,高度進行胃癌に対する術後補助化学療法の候補レジメンと考えられる。 -
胃癌再発に対する定位放射線療法(SRT)の有用性
39巻12号(2012);View Description
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進行胃癌の再発転移巣(肝・肺)に対して局所制御を目的に定位放射線療法(SRT)を施行したので,その有用性について報告する。対象は肝転移3 例,肺転移1 例の計4 例。それぞれ単発ではあるものの化学療法にて制御困難な病変であり,これらを標的に52.8 Gy/4 Fr のSRT を施行した。肺転移の1 例では効果はみられなかったが,肝転移の3 例においては病変の縮小・嚢胞化がみられ,完全奏効と考えられた。このうち1 例では多発肝転移のため死亡例となったが,2 例においては照射部位に現在27~41 か月間,再燃を認めていない。有害事象として,気胸・胸水を1 例に認めたがgrade 3 以上の重篤なものは認めなかった。今回,SRT によって胃癌転移巣の良好な局所制御を得ることができた。限局性病変に対しては,放射線治療が集学的治療の一つとして有用であると考えられた。 -
支持療法を包括した胃癌S─1/CDDP 療法の外来クリニカルパスの有用性
39巻12号(2012);View Description
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進行再発胃癌の標準レジメンであるS─1+CDDP 併用療法は,入院治療で行われることが一般的であったが,最近では外来治療が可能となってきている。外来治療の実現のためには支持療法の強化が必要であり,われわれは支持療法を包括したクリニカルパス(パス)を作成することにより実施した。薬剤師の専門性を活かし,パスを用いることで,支持療法の強化の結果,副作用が軽減し治療強度が上昇する傾向が示唆された。 -
高度進行胃癌に対する化学療法後の局所療法としての大動脈周囲リンパ節郭清の意義
39巻12号(2012);View Description
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近年,化学療法が進歩し大動脈周囲リンパ節(PALN)転移などの非治癒因子がコントロール可能となった症例も散見される。高度進行胃癌症例に対して施行したPALN 郭清525 例について検討した。術前診断でPALN に転移が認められ直ちに手術を行った症例は56 例で,幽門側胃切除術(幽切)9 例,胃全摘術(全摘)は47 例。平均手術時間は幽切265 分,全摘で296 分。平均出血量は幽切530 mL,全摘で825 mL。化学療法が施行されダウンステージが得られ,PALN 郭清が施行された症例は11 例(幽切2 例,全摘9 例)。平均手術時間は幽切275 分,全摘で297 分。平均出血量は幽切650 mL,全摘で760mL。PALN 転移を伴う高度進行胃癌に対する化学療法後のPALN 郭清は,化学療法による修飾が加わり手術が困難であることが予想されるが,手術時間や出血量に関しては化学療法を行っていない症例とほぼ同等であった。 -
根治切除不能胃癌における減量手術と姑息手術の臨床上の差異
39巻12号(2012);View Description
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根治切除不能胃癌に対する手術療法には,減量手術と緩和手術(姑息的胃切除,バイパス術)がある。姑息的胃切除は,減量手術と同様に腫瘍量を減らす手術となる。今回,目的が異なるが,類似した二つの手術療法の臨床上の相違点について検討した。初回治療として手術を施行した根治切除不能胃癌58 例を対象とした。減量手術38 例,姑息手術20 例で年齢,性別に有意差を認めなかった。減量手術は姑息的胃切除と比較して,術前performance status(PS)がよい症例が多く(PS0: 65.8 vs 40.0%,p=0.06),術後の化学療法導入率も高かった(92.1 vs 65.0%,p<0.01)。減量手術のほうが姑息手術より有意に生存期間が良好であった[生存期間中央値(MST): 18.2 vs 11.0 か月,p<0.01]。二つの術式は背景因子,抗癌剤導入率,予後について差がみられ,その臨床的な位置付けは異なるものと考えられた。 -
化学療法に耐性となった大動脈周囲リンパ節転移に対して化学放射線療法が奏効した再発胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は63 歳,男性。L 領域の0─II c 型胃癌に対して,2004 年7 月幽門側胃切除術,胆摘,D2 郭清,Roux─en Y 再建を施行し,病理組織結果は中分化腺癌,T1 (SM),N2,H0,P0,CY0,M0,Stage II(胃癌取扱い規約13 版)であった。2007 年10 月からCEA 上昇,大動脈周囲リンパ節(#16LN)の腫大に対し,胃癌再発としてS─1 による化学療法を開始した。その後二次治療としてCPT─11 を3 コース,三次治療として隔週投与docetaxel を14 コース,四次治療としてpaclitaxel+cisplatin を15 コース施行した。#16LN が再増大するため,2010 年10 月からS─1(80 mg/body)を併用した強度変調放射線照射(IMRT)による化学放射線療法(CRT)(65 Gy/26 Fr)を行いPR となった。有害事象として,Grade 1 のHb 減少,倦怠感,食欲低下を認めた。CRT 後は無治療で1 年6 か月間無増悪生存中である。化学療法に耐性となった胃癌のLN 再発が局所に限られている場合は,S─1 を併用したCRT も治療法の選択肢となり得る。 -
Weekly Paclitaxel(PTX)+5′─DFUR 併用療法が奏効し組織学的CR を得た胃癌腹膜播種再発の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は77 歳,男性。胸痛,胸焼けを主訴に受診。前庭部後壁に3 型胃癌を認め,幽門側胃切除術,D2 リンパ節郭清を施行。病理所見はtub2(一部poorly), pT2(SS),ly2, v0, pN1, H0, P0, CY0, M0, pStage II,Cur A であった。補助療法としてS─1 の内服を行った。術後16 か月よりCA19─9 の上昇,CT では少量の腹水を認めるも他に有意な所見は認めなかった。内視鏡検査にて肛門縁より20 cm に発赤隆起性病変を認め,生検にてGroup V で胃癌の転移を認めた。S─1 治療後の腹膜播種再発と考え,paclitaxel(PTX)のweekly 投与(3 投1 休)とdoxifluridine(5′─DFUR)(連日経口投与)併用療法を施行。CA19─9 は漸減し3 か月で正常化,4 か月で腹水はほぼ消失。9 か月目の内視鏡検査にて,同部はGroup I で組織学的CR を認めた。有害事象として脱毛を認めるも,重篤な副作用は認めなかった。治療開始から21 か月たった現在,CR を維持している。weekly PTX+5′─DFUR 併用療法は,副作用も少なく外来での治療が継続可能であり,S─1 前治療のある胃癌腹膜播種再発症例に対して有効な治療法と考えられた。 -
サルコイドーシス合併胃癌の術前進行度診断の問題点
39巻12号(2012);View Description
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サルコイドーシスは,全身のリンパ節や他臓器に原因不明の非乾酪性肉芽腫性病変の形成を認める一方,古くから様々な悪性腫瘍への合併も報告されている。今回われわれは,癌に合併したサルコイドーシスによる変化のため,その術前進行度診断に難渋した症例を経験したので報告する。症例は69 歳,女性。胃体部癌の術前検査で腹腔・胸腔内の多発リンパ節腫脹,脾腫瘤を指摘された。多発リンパ節転移,遠隔転移を伴った高度進行胃癌の可能性が考慮されたが,サルコイドーシスの合併も否定できないため,十分な説明の上で診断も兼ねた手術療法を選択し,結果的に治癒切除を施行できた。悪性疾患の術前に認められた非特異的な多発リンパ節腫脹,他臓器腫瘤に関しては,サルコイドーシスなどの全身性疾患の合併も念頭に置いた術前診断,治療方針の決定が重要であると考えられた。 -
嚢胞性変化を示した胃外発育型胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は65 歳,男性。上腹部痛を主訴として受診し,腹部造影CT で胃前庭部および横行結腸に接する長径12 cm 大の嚢胞性腫瘤を認めた。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部大弯側の2 型腫瘍,および後壁の外方からの圧排所見を認めた。腫瘍の生検結果は,adenocarcinoma であった。PET─CT では,腫瘍へのFDG の著明な集積亢進を認めた。囊胞変性を伴う胃癌の診断で幽門側胃切除術+D1+リンパ節郭清,横行結腸部分切除術を施行した。病理結果は中分化型管状腺癌~低分化型腺癌であり,横行結腸への癌細胞の浸潤は認めなかった。術後補助化学療法は施行せず,現在術後12 か月が経過し再発を認めていない。 -
胃癌再発にCPT─11 が著効した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は70 歳,男性。68 歳時,胃癌ss,n1,Stage II に対して胃全摘を行い,術後S─1 内服を開始した。術後10 か月目に傍大動脈リンパ節再発を来した。術後21 か月に尿路閉塞による水腎症となり腎瘻を造設した。PTX に変更したところ,腫瘍マーカーは徐々に上昇しPD と診断,28 か月後にCPT─11 に変更した。直後より著明な食思不振が続き,7 日目に入院した。39℃の熱発,高CRP 血症が続き,14 日目に無尿となり腎不全を来した。輸液のみで1 か月後に軽快した。その後,腫瘍マーカーが低下し,画像上PR となった。 -
切除不能Stage IV 胃癌に対してトラスツズマブ,パクリタキセルによる化学療法を行い著明な治療効果が得られた1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は54 歳,男性。病変は胃体中部から前庭部にかけて存在する幽門狭窄を伴う3 型腫瘍で,病理検査ではwelldifferentiated adenocarcinoma と診断された。腹部CT で多発肝転移が認められStage IV と診断された。胃空腸吻合術が行われた後にS─1(120 mg/body),シスプラチン(85 mg/body)4 コースが施行されたが,効果不良でありPD と判断された。病変部からの組織採取によるHER2 判定検査にて強陽性が得られたため,二次化学療法としてトラスツズマブ(270 mg/body),パクリタキセル(115 mg/body)の投与が開始された。トラスツズマブ7 回,パクリタキセル5 コースの投与で原発巣,肝転移巣などに著明な縮小効果が認められた。切除不能Stage IV 胃癌に対しトラスツズマブ,パクリタキセルによる化学療法を行い,著明な治療効果が得られた1 例を経験したので報告する。 -
ESD 後4 か月で局所再発した漿膜外浸潤陽性胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は52 歳,女性。他院で胃角部小弯のadenoma に対し内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が施行され,病理組織検査結果はtub1,pSM1,ly0,v0,pHM0,pVM0 であり,拡大治癒切除であった。ESD 後4 か月目の上部消化管内視鏡検査でESD 後の瘢痕上に隆起病変を認め,再発が疑われた。生検ではtub1 であり,肉眼的深達度がSM massive で内視鏡治療適応外のため当科に紹介となった。再発診断後67 日目に腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した。切除標本では3 型,漿膜外浸潤が疑われた。小弯リンパ節転移も認め,最終病理組織診断はtub2,pT4a(SE),pN2,ly0,v0,fStage IIIb であった。今回の症例は局所に遺残したわずかな癌細胞がESD による局所炎症により,増殖したと考えられた。今後,拡大適応治癒病変においてはESD 後局所再発に対する慎重な経過観察が必要であることが示唆された。 -
早期胃癌術後5 年経過後に頸部リンパ節転移再発を来した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は61 歳,男性。2003 年8 月に空腹時の心窩部違和感を主訴に上部消化管内視鏡検査を受けたところ,早期胃癌と診断された。術前検査にて明らかな転移を認めなかったため幽門側胃切除術(D1+郭清)を施行した。摘出標本の病理学的検索にて,T1a(m)N0, ly0, v0, pStage IA と診断されたため術後補助化学療法は不要と判断し,外来にて定期的に経過観察していた。5 年間無再発生存であったが,術後5 年7 か月目に頸部腫瘤に自覚し,精査の結果頸部リンパ節転移と診断された。全身検索にて明らかな原発巣は認めず,組織型から胃癌の頸部リンパ節転移再発であると考えられた。S─1 による化学療法を開始し1 年間無増悪生存していたが,化学療法開始後15 か月目に急速に重篤なDIC に陥り,永眠された。臨床的に骨髄癌腫症が疑われたが,はっきりとしたDIC の原因は解明し得なかった。早期胃癌根治術後の晩期再発症例はまれであり,文献的考察を含め報告する。 -
肝転移に対してWeekly PTX 療法が著効した高度進行胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は63 歳,女性。2011 年2 月下旬にStage IV(P+,CY+)胃癌に対して,出血コントロールを目的に幽門側胃切除術を施行した。術後3 か月目に施行した腹部CT 検査にて肝右葉に約6.5 cm の転移巣を認めた。S─1/CDDP 併用療法を開始したが,2 コース目途中にgrade 3 の血液毒性を認めたためS─1 内服を中止した。その時点での腹部CT 検査では腫瘍は2cm 程度に著明な縮小を認めた。血液毒性が遷延したためS─1 の服用継続は困難と判断し,抗癌剤レジメンをweekly PTX に変更した。3 コース施行後の腹部CT 検査では肝転移巣はほぼ消失しており,画像上CR と診断した。現在までにweekly PTX療法を5 コース施行し術後15 か月目になるが,画像上CR 継続中である。今回,胃癌肝転移に対しS─1/CDDP 併用療法および二次治療としてweekly PTX 療法が著効した高度進行胃癌の1 例を経験したので報告した。 -
鏡視下胃癌・大腸癌同時手術の留意点
39巻12号(2012);View Description
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術前検査で発見される胃癌・大腸癌の重複例は珍しくなく,当科では根治性・安全性が確保される症例に腹腔鏡下同時手術を積極的に取り入れている。成功・開腹移行の代表例から同時手術の留意点について検討した。2 例とも胃・大腸切除の小切開創は上腹部を共有し,5 ポートによる大腸切除を先行し,胃切除の際2 ポート追加して行った。成功例は腹腔鏡下に横行結腸切除と幽門側胃切除術(LADG)を行い,同切開創で安全に吻合可能であった。開腹移行例は右半結腸切除と胃全摘術(LATG)を行い,circular stapler 法による食道空腸吻合を施行したが,縫合不完全となり開腹へ移行した。上腹部切開創から挿入した吻合器と,腹部食道との角度が問題で吻合部に緊張がかかり縫合不完全となったと考える。腹腔鏡下胃癌・大腸癌同時手術において小切開部やポート位置,再建法,吻合法などが極めて重要である。 -
再発胃癌に対し三次治療としてのCPT─11+CDDP 療法が著効した1 例
39巻12号(2012);View Description
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胃癌術後リンパ節再発に対し,三次治療としてのCPT─11+CDDP 療法が著効した1 例を経験した。症例は78 歳,男性。前庭部進行胃癌に対し幽門側胃切除術D2 を施行し,病理結果は,tub1,pT2(MP),ly2,v1,n1,stage II であった。術後約3 年経過後,腫瘍マーカーの上昇を認め,膵体部の腹側に4 cm 大のリンパ節再発を認めた。膵管拡張を伴い再発巣の膵浸潤が疑われ,化学療法の治療方針となった。S─1 の投与を開始したが,全身皮疹が出現し投与を中止した。二次治療としてpaclitaxel を2 コース施行したが腫瘍マーカーはさらに上昇し,再発巣の門脈浸潤が疑われPD と判断した。その後,三次治療としてCPT─11+CDDP 療法を開始した。3 コース後,腫瘍マーカーは正常化し,再発巣は著明な縮小傾向を認めた。膵管拡張と門脈内浸潤像はともに消失した。再発胃癌に対する三次治療であっても著効例が存在し,PS が保たれる症例に対しては,化学療法の継続を検討すべきであると考えられた。 -
胃癌術後脊椎転移による横断性脊髄障害を呈した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は45 歳,男性。心窩部痛・体重減少を主訴に発見された進行胃癌に対して幽門側胃切除術,D2,Roux─en Y 再建を行い,術後診断はpT4aN3bCY1,stage IV であった。術後S─1 による化学療法を施行中,術後3 か月に背部痛が出現した。PET─CT ではTh4─6 の骨転移を指摘された。直ちに骨転移に対し放射線療法を開始したが,第5 治療日より脊髄横断症状を呈し座位保持も不能となった。その後,癒着性の小腸イレウスが発症し小腸部分切除術を施行することとなり,同時に直腸肛門機能低下による排便困難に対しS 状結腸ストーマ造設を併施した。その結果,排便の自己管理が可能になり,さらに放射線治療の完遂ならびに,その後の化学療法と緩和治療が在宅で可能であった。胃癌の骨転移はまれであるが,その予後は極めて不良である。胃癌の骨転移の特徴・対策を知り,早期診断と集学的治療は重要であり,本症例の経験に文献的考察を加え報告する。 -
S─1+CDDP 療法で切除可能となった食道異型性と進行胃癌の重複症例
39巻12号(2012);View Description
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症例は72 歳,男性。心窩部痛と背部痛が出現し受診。上部消化管内視鏡検査で胃噴門部に3 型腫瘍,食道には高度異型性を認めた。腹部CT で小弯側リンパ節が腫瘍として一塊となっており膵臓にも浸潤が疑われ,S─1+CDDP の術前化学療法を3 コース施行した。腫瘍は著明な縮小を認め,食道の異型性は病理学的に消失し,肉眼的に根治的な胃全摘術を施行することが可能となった。 -
Trousseau 症候群,肺塞栓症を発症した進行胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は60 歳台,男性。2011 年6 月,肺塞栓を発症し貧血を指摘され,精査にてstage IV の進行胃癌と診断された。その後,多発脳梗塞を発症しTrousseau 症候群と診断された。胃癌からの出血のリスクが高いため,出血のコントロール目的に胃全摘術を行った。術後経口摂取可能となり,在宅医にヘパリンの皮下注射を依頼し退院可能となった。退院後外来にて化学療法を行っている症例を経験したので報告する。 -
EPA 強化栄養剤併用による化学療法が有効であった低アルブミン高CRP 血症を伴う進行胃癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は50 歳代,男性。現病歴: 上腹部不快感を主訴に当科受診。3 か月で4 kg の体重減少(60 kg → 56 kg)。検査所見:血液検査はHb 11.0 mg/dL,Alb 3.0 g/dL,CRP 2.4 mg/dL。上部消化管内視鏡検査にて胃体部中心の3 型病変(group 5,tub2)を認め,腹部CT にて大動脈周囲リンパ節転移を含む高度リンパ節転移を認めた。経過: 低Alb 高CRP 血症を伴う進行胃癌と診断し,EPA 強化栄養剤(プロシュア)を併用しながらのS─1+CDDP 併用療法(S─1 120 mg/day/day 1~21,CDDP 60 mg/m2/day 8/q35 days)による化学療法を開始した。治療開始6 週間後,体重は60 kg に回復し,血液検査もHb 13.6mg/dL,Alb 4.6 g/dL,CRP 0.14 mg/dL に改善した。治療開始12 週間後のCT では,高度リンパ節転移,多発性肝転移は著明に縮小していた。治療開始後6 か月経過した現在も治療継続中である。結語: 低Alb 高CRP 血症を伴う進行胃癌に対する化学療法において,EPA 強化栄養剤併用による支持療法は有用である可能性が示唆された。 -
胃全摘後,腹膜播種による輸入脚閉塞症を来した2 例
39巻12号(2012);View Description
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胃全摘後,腹膜播種による輸入脚閉塞症を来した2 例を報告する。症例1 は57 歳,男性。5 年前に胃癌の診断で胃全摘,Roux─en Y 再建術を施行。腰痛で発症し,CT で拡張した輸入脚を認め,ENBD tube を留置後,バイパス手術を施行した。症例2 は61 歳,女性。2 年前に胃癌の診断で胃全摘,Roux─en Y 再建術を施行。腹痛で発症し,CT・MRI で輸入脚の拡張とY 吻合近傍の腫瘤を認めた。経皮経肝十二指腸ドレナージ後,十二指腸ステントを挿入した。手術療法と非手術療法の異なる治療経過にて狭窄を改善した2 症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
胃癌術後腹膜播種による十二指腸閉塞に対して内視鏡的ステント留置術が奏効した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は79 歳,男性。十二指腸潰瘍の手術既往による残胃の吻合部に残胃癌を指摘され,残胃部分切除・Roux─en─Y 再建を行った。術後Treitz 靱帯近傍に再発腫瘍を指摘され,化学療法を施行中に腸閉塞症状が出現した。CT で十二指腸の著明な拡張を認め,既知の再発腫瘍によるY 脚部の通過障害と診断した。閉塞部位が一か所であったことから,ダブルバルーン小腸内視鏡を用い狭窄部にステントを留置した。ステント留置後腸閉塞は解除され,経口摂取と化学療法の再開が可能となった。近年普及してきたダブルバルーン内視鏡により従来困難であったRoux─en─Y 再建後の十二指腸側Y 脚へのアプローチが可能となった。本症例では狭窄部へのステント留置により手術を回避し得たことから,緩和治療として悪性腸閉塞症治療の1選択肢になり得ると考え報告する。 -
10 年生存中である胃癌・同時性肝転移の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は69 歳,男性。食後の嘔気,黒色便,体重減少を主訴に前医受診。胃透視で胃癌と診断され,2002 年9 月当院紹介となった。CT・US 上,肝S7 に30 mm 大の肝転移を認めたが,その他の遠隔転移はなかった。10 月,幽門側胃切除,横行結腸部分切除,肝S7 部分切除術を施行。病理結果はL, Circ, Type 2, por1>por2, 9.8×9.5 cm, ly2, v3, T4, N1(#6, 2/35),H1, P0, CY0, M0, pStage IV であった。術後S─1 を内服していたが2003 年2 月に肝再発を認めたため,4 月より肝動注を開始した。しかし8 コース後,肝動脈が閉塞し肝動注は継続不能となった。他部位に再発所見を認めなかったため,2003 年8 月に開胸下RFA 焼灼術を施行した。その後無治療経過観察中であるが,現在まで10 年間再発所見は認めていない。 -
化学放射線療法が有効であった食道胃接合部癌術後リンパ節再発の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は52 歳,男性。2002 年11 月,3 型の食道胃接合部癌に対して左開胸開腹胃全摘,D2 およびNo.16b1,No.110,No.111,No.112 リンパ節郭清を施行された。術後3 年11 か月でCEA の上昇を認め,胸部CT 検査にて右頸部食道傍リンパ節転移が確認された。同リンパ節切除が施行され切除断端陽性であったため,補助療法としてS─1 内服(120 mg/body/day)4 週間投与2 週間休薬,同時に右頸部から上縦隔に総線量60 Gy の化学放射線療法が施行された。その後,無治療経過観察中であるが,術後8 年11 か月経過した現在,無増悪生存中である。化学放射線療法は,胃癌局所再発例に対しては有効な治療手段の一つとなる可能性があると考えられた。 -
全身化学療法により腫瘍の縮小を認めたStage IV 胃小細胞癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は70 歳台,女性。上部消化管内視鏡検査にて噴門部に5 cm 大の3 型進行腫瘍を認めた。生検組織病理より,免疫染色にてchromogranin(+)であり,胃小細胞癌と診断した。腹部CT では同部位に壁肥厚を認め,噴門部から小弯側に4cm 大のリンパ節腫大,大動脈周囲にも結節影を認めた。以上からT4aN3M1,cStage IV と診断し,全身化学療法の方針とした。初回治療としてS─1(80 mg/m2)+CDDP(60 mg/m2)療法を開始。1 コース目day 8 のCDDP 投与後Grade 4 の低Na血症,意識障害を認めたため中止し,S─1 単独療法(2 投1 休)を再開した。3 コース終了後PR を確定が,7 コース終了時点で,上部消化管内視鏡検査にて原発巣の増大を認めたためPD と判断した。二次療法としてCPT─11(60 mg/m2)+CDDP(30 mg/m2)療法を施行した。2 コース終了後,SD を維持している。 -
大動脈周囲リンパ節再発に対しCPT─11+CDDP 療法が奏効した胃原発神経内分泌細胞癌の1 治験例
39巻12号(2012);View Description
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症例は50 歳台,男性。胃内視鏡検査にて体下部後壁に10 mm 大のIIc の早期胃癌が発見され,endoscopic submucosaldissection(ESD)が施行されたものの,#3 リンパ節転移再発を来し外科へと紹介された。ESD 標本の病理像は充実型低分化腺癌でpSM2 であったが,免疫染色でchromogranin A 陽性細胞が認められ,神経内分泌細胞癌の診断であった。幽門側胃切除D2 を施行した。切除胃には腫瘍の遺残は認められなかったが,#3 リンパ節2 個に転移が確認された。S─1 の補助化学療法が追加されたが,術後3 か月目のX─CT で大動脈周囲リンパ節再発が確認された。S─1 無効と考え,化学療法をCPT─11+CDDP に変更した。2 コースでリンパ節腫大は消失,clinical CR(cCR)が得られ,20 か月余りCR は維持された。胃原発神経内分泌細胞癌は予後不良であるが,本例では遠隔転移にCPT─11+CDDP が奏効しcCR が得られた。 -
腹膜播種を伴った有茎性発育型胃GIST の1 手術例
39巻12号(2012);View Description
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症例は73 歳,女性。腹痛・背部痛を主訴に前医を受診し,精査にて左上腹部に腫瘤性病変を認めたため,当院当科に紹介受診。腹部造影CT にて胃体部後壁に長径13 cm の内部不均一な腫瘤性病変を認め,血管造影検査では左胃動脈から栄養されていたため,胃GIST を疑い手術を施行。術中所見にて,左右横隔膜下,Douglas 窩,網嚢腔に播種結節を認めた。腫瘍は胃体上部大弯後壁と径約1 cm の茎を介して連続していた。病理組織学的には紡錘形細胞が錯綜配列を示し,c─kit およびCD34 は陽性であった。以上より腹膜播種を伴う壁外有茎性発育型胃GIST と診断した。術後,イマチニブによる治療を開始し,術後15 か月経過した現在も経過観察中である。有茎性発育型胃GIST は比較的まれであるが,予後は良好との報告があり,本症例においても腹膜播種を認めたものの,イマチニブ投与により術後15 か月経過し得た。若干の文献的考察を加え報告する。 -
当院における局所進行非小細胞肺癌に対する化学放射線療法後外科切除例の検討
39巻12号(2012);View Description
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現在,外科切除の困難な局所進行非小細胞肺癌に対する標準治療は化学放射線療法であると考えられている。しかし長期生存の観点から,その成績は満足できるものではない。より良好な治療成績を求めて化学放射線療法と外科切除の併用も検討されているが,その有効性は未だ明らかにされていない。今回われわれは,2002 年1 月~ 2011 年12 月までに当院で化学放射線療法施行後に外科切除が行われた局所進行非小細胞肺癌症例8 例について,後ろ向きに検討を行った。対象患者の年齢中央値は59.5 歳であった。術後合併症としてはHorner 症候群,気管支断端瘻でそれぞれ1 例ずつみられたが,致死的な合併症は発生していなかった。術後無再発生存期間の中央値は34.2 か月であった。2 例では5 年以上の長期生存が得られており,症例によっては化学放射線療法後の外科切除が有用である可能性が示唆された。 -
術後再発巣に対して放射線治療が奏効したα─Fetoprotein(AFP)産生原発性肺腺癌,いわゆる高悪性度胎児肺型肺癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は71 歳,女性。α─fetoprotein(AFP)高値を契機に全身検索が行われた結果,右肺中葉の結節性病変(28×13mm)を指摘された。原発性肺癌疑いとの診断で胸腔鏡補助下右肺中葉切除+縦隔リンパ節郭清術を施行した。病理組織検査で混合型腺癌(乳頭型および高分化胎児型)と診断され,免疫染色で高分化胎児型腺癌の部分がAFP 陽性でありAFP 産生肺癌と診断した(pT2aN2M0,pStage IIIA)。補助化学療法を施行したが術後4 か月目よりいったん正常化していた血清AFPの再上昇を認め,縦隔リンパ節再発を確認した。これに対して放射線療法(60 Gy/30 回)を施行したところ,再発巣の著明な縮小消失とAFP の正常化を認めた。術後1 年11 か月の現在,再燃なく経過している。本症例はAFP 産生肺腺癌術後再発巣に対する放射線療法が奏効した貴重な1 例であり,放射線治療が治療の選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された。 -
びまん性肺炎型の浸潤性粘液腺癌に減量手術を行った1 例
39巻12号(2012);View Description
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60 歳台の非喫煙者の女性で,持続する痰を主訴に受診。胸部X 線・CT で左肺下葉底部に広汎なconsolidation を認め,抗生剤やステロイドを投与したがconsolidation は改善せず下葉全体に及び,両肺の一部に多発結節影も出現。肺楔状切除生検で確定診断後,多量の喀痰による呼吸困難軽減のための減量手術として左肺下葉切除術を行ったが,喀痰減少効果は短期間にとどまり,病巣は急速に全肺に広がり,初診から8 か月後に呼吸不全にて死亡した。病理診断はlepidic,acinar,solid の増殖パターンを示す浸潤性粘液腺癌(従来のmucinous BAC)のびまん性肺炎型であった。本型は,粘液に混じった腫瘍細胞が経気管支性に他肺葉や対側肺まで散布しやすく制御し難い病態で,EGFR─TKI やpemetrexed の有効例の報告はあるが,未だ有効な治療法は確立されていない。 -
反回神経麻痺に対して姑息的放射線治療を行った肺癌の1 例
39巻12号(2012);View Description
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高齢患者の増加に伴い,嚥下障害の治療に遭遇する機会も多くなってきている。原因は脳血管障害などの結果起きる機能的な障害,外傷や腫瘍による器質的な障害に分けられ,前者では嚥下リハビリテーション,後者では手術などの原疾患に対する治療を要する。障害の程度によって誤嚥性肺炎の合併につながることもあり,経口摂取から経管栄養や胃瘻増設を行うことも多い。今回,進行肺癌症例に対して姑息的放射線治療を施行し,経口摂取を再開し得た。 -
肺癌術後腋窩リンパ節再発に対して手術を施行し経過良好な1 症例
39巻12号(2012);View Description
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症例は78 歳,男性。73 歳時,右肺癌に対して右上葉切除およびリンパ節郭清を施行。病理で低分化腺癌,pT1N0M0,pStage IA であった。術後15 か月目CT で右胸腔内肺尖部再発を認め,放射線照射を施行。術後33 か月目PET 検査で右腋窩・鎖骨下リンパ節にFDG の集積を認めた。さらに癌性心膜炎を発症し,pemetrexed 単剤を開始した。心嚢水は消失したが,右腋窩・鎖骨下リンパ節の増大と同側腕全体のしびれが出現した。腕のしびれと痛みが増悪したため,右腋窩・鎖骨下リンパ節に対し手術を施行した。病理では肺癌リンパ節転移であった。腕の痛みはnumerical rating scale で5 から術後1 まで低下した。リンパ節術後9 か月経過しているが,再発も認めていない。肺癌腋窩リンパ節転移は遠隔転移とされる。しかしながら,本症例のように局所コントロールによりQOL が改善されることもあり,局所治療も念頭に置くべきである。 -
中心静脈(CV)ポート合併症の検討
39巻12号(2012);View Description
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目的: 中心静脈(CV)ポート留置に伴う合併症を検討するため,われわれは当院でポート留置を行った患者につき調査を行った。方法: 対象は2006 年1 月~ 2011 年12 月までに当院にてCV ポート留置を行い1 か月以上観察した担癌患者171 例で,臨床的因子と合併症の関連を検討した。結果: 171 例のうち化学療法目的が119 例,栄養・輸液目的が52 例で,合併症によりポート摘出を受けた患者は35 例(20.5%)であった。合併症の内訳は,感染24 例(14.0%),ポート埋没部創離開2 例(1.2%),カテーテル閉塞6 例(3.5%),静脈血栓1 例(0.6%),カテーテル断裂・逸脱が2 例(1.2%)であった。年齢,性別,挿入部位目的,挿入目的,術者,カテーテル素材,bevacizumab 投与,留置期間などの因子と合併症の頻度に有意な関連性は認められなかった。まとめ: CV ポートの合併症は高率に発生し,比較的早期から発症するため,定期的な診察・検査が必要と考えられる。 -
甲状腺癌におけるMonopty Biopsy Instrument による針生検
39巻12号(2012);View Description
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甲状腺病変の診断には穿刺吸引細胞診(ABC)が施行されるが,石灰化や嚢胞性病変などの診断において細胞採取が困難であり,臨床経過や手術により治療方針を決定せざるを得ない場合も存在する。一方で,乳癌の診断において行われている針生検では,甲状腺領域においては確実な安全性を担保するのは難しい。今回,甲状腺癌に対するMonopty 針生検の有用性を検討した。甲状腺癌を疑い,Bard Monopty Biopsy Instrument(short stroke)を用いて針生検を施行した20 症例を対象とした。甲状腺癌と診断された症例は7 例であり,乳頭癌5 例,未分化癌2 例であった。甲状腺癌に対するMonopty 針生検は,診断困難症例を確実に拾い上げることが可能であり,正確な治療前診断への寄与が期待できる。 -
透析中の甲状腺癌の手術
39巻12号(2012);View Description
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今回われわれは,透析中の甲状腺癌の手術症例を経験したので報告する。症例: 40 歳,女性。慢性糸球体腎炎にて透析中の頸部超音波検査で左右甲状腺腫瘤を指摘され,精査目的に紹介。細胞診にてclass IIIb,papillary cancer の疑いであった。頸部リンパ節腫大もあり,甲状腺全摘術および頸部リンパ節郭清(D2a)を施行した。抗凝固剤を使用していたため,術中に摘出後の頸部にオキセルコットンを留置した。術翌日より透析を開始したが,出血などは認めなかった。結語: 透析中は抗凝固剤などを使用しているため,手術適応であっても休薬することはできない。しかし,術中操作を慎重に行うことも重要だが止血操作を的確に行うことで,術後出血などの合併症もなく安全に手術を施行することできたので報告した。 -
肛門管扁平上皮癌の治療方針について
39巻12号(2012);View Description
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肛門管癌扁平上皮癌に対しては,化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)が治療方針として確立されつつある。当院においても近年,手術療法からCRT を基本とした治療に切り替わってきている。当院においてabdominoperineal resection(APR)選択例は4 例で,うち1 例は術後にCRT を追加した。RT を施行した症例は3 例で,うち1 例は放射線腸炎のためAPR を追加した。CRT を施行した症例は2 例であり,治療後3 年以上経過後も再発を認めていない。RT やCRT は患者のQOL を保ち,かつ治療効果の期待できる治療法であり,本邦においても組織型に合わせた治療方針の確立が期待される。 -
Treatment Results of Diffuse Malignant Peritoneal Mesothelioma
39巻12号(2012);View Description
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During the last 7 years, 21 patients with DMPM were treated. Histologic types were epitheloid type in 18 patients, biphasic type in 2 patients and sarcomatoid type in 1 patient. Preoperative systemic chemotherapy, hyperthermic intraperitoneal chemotherapy(HIPEC) by laparoscopy(LHIPEC), and intraperitoneal(IP) chemotherapy were done in 14, 3 and 1 patients, respectively. Cytoreductive surgery(CRS) was done in 13 patients. Ten patients received HIPEC after CRS. Partial responses were experienced in 4 of 13 patients treated with preoperative systemic chemotherapy. One of three patients treated by LHIPEC showed complete response. Among 13 patients received laparotomy, complete removal of PC was done in 4(31%) patients. The other 9 patients who received incomplete cytoreduction had diffuse involvement on the small bowel and its mesentery. Allover 5─year survival was 17%. Patients treated with HIPEC survived significantly longer than non─HIPEC group. Neoadjuvant laparoscopic HIPEC may have a great role in the preoperative control of small PC on the surface of small bowel. -
腫瘍随伴症候群としての血小板減少症を来した腹壁脂肪肉腫の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は59 歳,女性。2011 年6 月より右側胸部痛が出現。8 月に整形外科を受診し,右胸水を指摘された。精査目的に胸腹部CT を行ったところ,右胸水と径5 cm の右側腹壁腫瘤が認められた。針生検でundifferentiated sarcoma と診断された。右胸水細胞診では陰性であったが徐々に増量した。臨床的に胸膜浸潤を考え化学療法を予定したが,腫瘍随伴症候群と思われる血小板減少を来し,最低値4,000/mm3 まで低下した。血小板輸血にも反応しなかったが,デキサメサゾン2.0 mg/日の経口投与にて6×10 4/mm3 前後を推移するようになった。抗血小板抗体は陰性であった。化学療法は不可能と考え,9 月29日に腹壁腫瘍切除,横隔膜部分切除,第11・12 肋骨合併切除,コンポジックスメッシュによる腹壁再建術を行った。最終的な病理組織学的診断は脱分化型脂肪肉腫であった。手術直後より血小板値は正常に復した。しかしながら局所再発,胸膜播種,腹膜播種を来し,術後69 日に死亡した。 -
後腹膜脂肪肉腫の2 切除例
39巻12号(2012);View Description
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経時的な観察を行った後腹膜脂肪肉腫の2 切除例を経験したので報告する。症例1: 53 歳,女性。主訴は,腹部の著明な膨満・呼吸困難。18 kg の巨大な後腹膜脂肪腫の切除を行った。左腸腰筋前面に腫瘍基部を認めた。組織学的には高分化型脂肪肉腫であった。術後7 年目に左骨盤腔内に局所再発を来し,再切除を行った。前回同様の高分化型脂肪肉腫であった。症例2: 82 歳,女性。7 年前からCT で右後腹膜に脂肪腫を指摘されていた。半年前より右腸骨内側に雪だるま状の充実性腫瘤が出現,急激に増大した。同部を含めた後腹膜腫瘍切除術(回盲部・右腎合併切除)を行った。腫瘍総重量は2.6 kg であり,脱分化型脂肪肉腫であった。後腹膜脂肪腫は時間依存性に,また再発を繰り返す症例では脱分化を起こしやすい。後腹膜脂肪肉腫は外科的完全切除が唯一,コンセンサスを得られている。本疾患は臨床症状がでにくいため,術後も厳重に経過観察を行う必要がある。 -
後腹膜脂肪肉腫の臨床病理学的特徴と治療成績
39巻12号(2012);View Description
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当科で経験した後腹膜脂肪肉腫について検討。対象は2001 年1 月~2012 年5 月に経験した後腹膜脂肪肉腫6 例。臨床病理学的因子,初回治療,術後再発形式と治療,無再発生存期間,全生存期間をretrospectiveに検討。年齢中央値67(48~82)歳,男女比は2:4。初回治療は6 例全例に手術を施行。腫瘍最大径は190(100~250)mm,腫瘍切除3 例,多臓器合併切除3 例。病理組織学的分類は高分化型3 例,脱分化型2 例,粘液型1 例。再発は5 例に認め,再発形式は局所3 例,広範囲2 例。局所再発3 例には切除が行われたが,再々発が2 例に認められ切除を行った。無再発生存期間中央値は21 か月,3 年生存率は62.5%。脂肪肉腫は手術以外に有効な治療がないため,腫瘍細胞の遺残のないよう被膜を残さずに正常脂肪組織も含めた切除が必要であり,場合によっては隣接臓器の合併切除も積極的に考慮する必要があると考えられた。 -
急速な増大傾向を示した後腹膜脱分化型脂肪肉腫の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は75 歳,男性。全身倦怠感・食欲不振を主訴に来院され,腹部CT にて後腹膜腫瘍を認めたため,後腹膜腫瘍摘出術,膵尾部・脾臓合併切除術施行とした。経過良好にて第16 病日に退院し,病理診断では後腹膜脱分化型脂肪肉腫,膵臓浸潤であった。術後約2 か月の腹部CT にて腹膜播種,大腸浸潤,肝転移を認め,本人の希望にて緩和療法を選択とした。後腹膜脱分化型脂肪肉腫は外科的切除以外に有効な治療法が確立されておらず,早期の摘除が重要である。また再発率が高いため,有効な全身治療の開発が望まれる。 -
胃癌に合併した脾原発悪性リンパ腫の1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は85 歳,女性。2011 年4 月,貧血と心窩部痛がみられたため消化管精査を施行し,胃癌と診断された。上部消化管内視鏡検査では噴門部から胃体上部にびまん浸潤する4 型の胃癌を認め,生検の結果はpor であった。CT 検査では明らかな遠隔転移はみられなかったが,脾臓に約4 cm の腫瘍が認められた。2011 年6 月,2 群リンパ節郭清を伴う胃全摘術および脾摘術を施行した。胃癌の病理組織の結果はp─Stage IV(T4aN3aM1P0CY1H0)であった。また,脾臓腫瘍はHE 染色と免疫染色より濾胞性リンパ腫と診断された。現在,高齢ではあるがPS 1 と全身状態が良好であり,胃癌に対するS─1 単剤療法を施行している。胃癌および悪性リンパ腫の再発は認めていないが,胃癌の腹腔洗浄細胞診が陽性であったこと,また濾胞性リンパ腫の再発率が比較的高いことから,慎重に経過をみていく必要がある。 -
Management of Peritoneal Dissemination of Recurrences Granulosa Cell Tumor of the Ovary
39巻12号(2012);View Description
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Recurrences of granulosa cell tumor (GCT) of the ovary often occur as disseminated peritoneal metastasis or local mass in the pelvis. Although, various treatment options including surgery with/without systemic chemotherapy and/or radiotherapy have also been reported for treatment of recurrent GCT, there is no standardized management for recurrence of this disease. Here, we report our management strategies for the patients with peritoneal dissemination of GCT. Prior to admission to our unit, four patients were treated with total abdominal hysterectomy and bilateral salpingo─oophorectomy with the diagnosis of primary adult type GCT of the ovary. They were not received adjuvant therapy because of the localized disease in the ovary and followed─up by their gynecologists until they referred to us with metastases. The median disease free survival after primary treatment was 4.7 (range, 1─9) years. All patients with peritoneal metastases from recurrent GCT were treated with cytoreductive surgery (CRS) using peritonectomy procedures and intraoperative hyperthermic intraperitoneal chemotherapy(HIPEC) using 100 mg cisplatin for 40 min at 43 °C in our unit. Postoperative complications were graded according to National Cancer Institute’s Common Toxicity Criteria. No complication and no in─hospitalization mortality were experienced in all patients. The median length of operation was 3.55 (range, 2.50─5.50) hours. The median length of stay in hospital was 13(range, 12─21) days. After a median follow─up of 4(range, 1─6) years, 1 patient was died and other 3 patients were alive with no disease progression. Our study identified that recurrent adult type of GCT with peritoneal metastases could be managed with definitive CRS and HIPEC. Larger series and long term outcome data of CRS and HIPEC will be mandatory to develop standard management option in these patients. -
薬剤耐性再発GIST に対して肝・横隔膜合併腫瘍切除した1 例
39巻12号(2012);View Description
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症例は69 歳,男性。60 歳時 空腸GIST に対して空腸部分切除,61 歳時GIST の肝転移再発に対してS5,6,7 切除が施行された。肝切除2 年4 か月後,肝切離断端部近傍に不整な腫瘤およびS4 に造影効果のある腫瘤を認めた。再々発と診断し,imatinib 次いでsunitinib による内科的治療を行ったが,肝切離断端部近傍の腫瘤が薬剤耐性となり,切除を目的に3 回目の入院となった。手術は周囲の癒着を外し,肝および右横隔膜の一部とともに腫瘤を切除し,さらにS4 の部分切除を施行した。術後4 か月再発の徴候はない。内科的治療に部分的耐性GIST に関しては外科的切除も考慮すべきと考えられた。 -
MRSA 感染を伴う難治性深部手術部位感染に対しリネゾリド投与が有用であった1 例
39巻12号(2012);View Description
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MRSA 感染を伴う難治性深部手術部位感染に対し,リネゾリド投与が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は66 歳,男性。進行接合部癌に対し術前化学療法を施行後,左開胸開腹胃全摘術を施行した。術後3 日目に開胸創部に深部手術部位感染を併発し,培養検査にてMRSA が検出された。創部のデブリドメント,洗浄処置を続けたが排膿は継続し,術後10 か月後には肋骨が露出するようになった。術後11 か月後より抗MRSA 薬のリネゾリドの経口投与を開始したところ,1 週間でMRSA は陰性化し,1 か月後には創の治癒が得られた。外来患者で難治性のMRSA 深部手術部位感染に対し,リネゾリド投与は有用な治療法と考えられた。
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