癌と化学療法
Volume 40, Issue 1, 2013
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総説
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Field CancerizationとField Therapy―イミキモドによる日光角化症治療―
40巻1号(2013);View Description Hide Descriptionアルコールや紫外線などの発癌因子により,領域として癌が発生しやすい状態をfield cancerization という。中下咽頭,食道癌においては,アルデヒド脱水素酵素2 の欠損により,アルコール摂取時のホルムアルデヒド濃度が高くなることが原因として重要視されている。また高齢者の頭部顔面皮膚に生じる日光角化症も,紫外線が原因で同時性,異時性に多発することがある。日光角化症に対しては,イミキモドクリーム外用によるfield cancerization を起こしている領域全体の治療,すなわちfield therapyが可能になった。イミキモドはToll 様受容体7 を介した免疫賦活作用のある薬剤で,従来の治療と比較し再発が少ないと考えられている。
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特集
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- 新しい分子標的治療薬による治療戦略
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大腸がんに対する新しい分子標的薬(レゴラフェニブとアフリバセプト)
40巻1号(2013);View Description Hide Description大腸がんに対する分子標的治療薬は,抗VEGF 抗体ベバシズマブと抗EGFR 抗体セツキシマブ,パニツムマブの開発以来しばらくとどまっていたが,近年の第Ⅲ相試験の結果により,レゴラフェニブとアフリバセプトという新しい分子標的薬剤の有用性が証明された。レゴラフェニブはマルチターゲット型受容体チロシンキナーゼ阻害剤であり,アフリバセプトはVEGF-A,VEGF-B およびPIGF(胎盤成長因子)と結合・阻害を起こす融合抗体蛋白質である。これら薬剤は小分子化合物と可用性結合蛋白製剤という構造上の違いはあるが,主な作用機序の一つに血管新生阻害効果がある点で共通する。これら薬剤において治療効果がみられたことは,bevacizumab beyond progression(BBP)のコンセプトがML18147試験で証明されたことと合わせ,大腸がん治療における血管新生阻害の意義が一次治療からそれ以降の治療期間を通じて常に重要であることが示されたものとも考えられる。 -
HER2 陽性乳癌に対する新しい分子標的薬(T-DM1とPertuzumab)
40巻1号(2013);View Description Hide DescriptionHER2 陽性乳癌に対する抗HER2 療法薬の開発は,分子標的治療の先駆けであり,最も成功しているものの一つである。トラスツズマブがHER2 陽性乳癌に対する最初のモノクローナル抗体薬として承認されて以来,チロシンキナーゼ阻害薬であるラパチニブなど,様々なメカニズムの抗HER2療法薬の開発が進められている。近年,新しい抗HER2療法薬であるT-DM1 やpertuzumab の第Ⅲ相臨床試験の成績が相次いで発表された。本稿では,これらの第Ⅲ相試験の結果を中心に新しい抗HER2 療法について概説する。 -
消化管間質腫瘍に対する新しい分子標的薬(Regorafenib 他)
40巻1号(2013);View Description Hide Description消化管間質腫瘍(GIST)は消化管に発生する間質腫瘍中最多の疾患である。イマチニブ,スニチニブの有効性が証明され標準治療として組み込まれており,さらに新規分子標的薬の開発が進んでいる。regorafenibは,イマチニブ,スニチニブ使用後のGIST を対象としたランダム化第Ⅲ相試験で無増悪生存期間を有意に延長することが報告され,新たな標準治療に組み込まれると想定される。 -
悪性黒色腫に対する新しい分子標的薬
40巻1号(2013);View Description Hide Description悪性黒色腫は化学療法に対して低感受性であり,転移性黒色腫の標準治療は長年ダカルバジンであった。最近,黒色腫についてもBRAF 変異をはじめとしてMAP kinase 系を中心とした分子異常の詳細が明らかになってきており,分子標的治療薬の開発が進んでいる。まず有効性が証明されたのは変異BRAF 阻害剤であるvemurafenib で,50%以上の奏効率とダカルバジンとの第Ⅲ相比較試験における生存期間の改善が報告された。有害事象としては平上皮癌をはじめとする皮膚症状が問題になっている。さらに新規のBRAF 阻害剤dabrafenib,MEK阻害剤trametinibについても優れた効果が報告されている。一方,悪性黒色腫は免疫原性が強く,サイトカインや細胞免疫療法の有効性が報告されてきた。最近,T細胞の活性化を調整する免疫調節物質(immune checkpoints)としてcytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4(CTLA-4)-B7 系やprogrammed cell death protein-1(PD1)-PD1 ligand(PDL1)系などの機能が明らかになり,これらの免疫調節物質を標的としその機能を抑制することによって腫瘍免疫反応を促進する分子標的治療薬が期待され,臨床試験でも有効性が明らかになってきている。CTLA-4 抗体ipilimumab は二つの第Ⅲ相比較試験において生存期間を改善することが報告された。副作用としては種々の自己免疫様反応(腸炎,皮疹,肝障害,内分泌障害)が報告されている。さらにPD1,PDL1抗体については第Ⅰ相試験でipilimumabより高い奏効率が報告され,比較的自己免疫様反応の比率が低いことが報告されている。今後,これらの2 種類の分子標的治療が悪性黒色腫の標準治療になることが期待される。 -
腎癌に対する新しい分子標的薬(AXIS trial)
40巻1号(2013);View Description Hide Description最近,新たなtyrosine kinase inhibitor(TKI)のaxitinibが,一次治療に抵抗する進行性腎癌を対象に承認された。これは,サイトカインあるいはTKIによる全身療法(一次治療)に治療抵抗性を示した転移性腎癌を対象とした日本人を含む国際共同無作為オープンラベル試験(AXIS trial)で実施された第Ⅲ相試験結果に基づくものである。本稿ではaxitinib ならびにAXIS trialについて概説した。 -
前立腺癌による新しい分子標的薬―Abiraterone およびMDV3100 に関する第Ⅲ相試験結果―
40巻1号(2013);View Description Hide Description現在,去勢抵抗前立腺癌に対する薬剤の開発が盛んである。前立腺癌は,抗アンドロゲン療法に著効を示すが,進行癌では,多くが再燃するからである。2011 年のASCO では,二つの第Ⅲ相試験結果の発表が注目を浴びた。abiraterone acetateとMDV3100が,それである。本稿では,この二つの発表内容についてを概説する。
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Current Organ Topics:Genitourinary Tumor 泌尿器系腫瘍
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原著
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進行胃癌に対する多次化学療法後XP 療法の施行経験
40巻1号(2013);View Description Hide Description主要薬剤を使い切った多次化学療法後の進行胃癌症例に対する治療には難渋する。多次化学療法後進行胃癌症例に対してXP 療法を施行したので,その経験を報告する。症例は当センターで治療中の進行胃癌5 例。59(46〜76)歳。男性3 例,女性2 例。PS は0/1/2 各2/2/1 例。一次治療開始からXP 療法までの期間は653(372〜1,107)日で,四次治療後3 例,五次治療後2 例。全例ともS-1,CDDP,CPT-11,PTX,DOC の5 剤は使用済であった。レジメンはカペシタビン2,000 mg/m2/day 2 週投与1 週休薬+CDDP 80 mg/m2/q3w。施行コース数は2〜5 コース。TTP は107 日,MSTは245 日であった。効果はPR とSD を各1 例で得られた。有害事象は管理可能な範囲であった。XP 療法は,多次化学療法後進行胃癌症例に対する治療の一つとして有用であると考えられた。 -
一般病院における進行・再発胃癌症例に対するHER2 検査の検討―院内検査と外注検査との比較―
40巻1号(2013);View Description Hide Descriptionはじめに:胃癌ガイドラインでは化学療法選択前のHER2 検査の実施が推奨されている。当院ではこれまで胃癌に関して免疫組織化学的方法(IHC法)によるHER2 検査を行っていなかったので,院内と検査会社(外注)の検査結果を比較検討した。対象と方法: 対象は当院で診療を行った切除不能胃癌,再発胃癌,Stage Ⅳの切除胃癌症例26 例(31 検体)とした。対象患者の検体に対して,IHC 法によるHER2検査を院内病理科と外注で行い,HER2発現の判定結果を比較した。結果: HER2 過剰発現の判定結果(院内/外注)は,陰性/陰性: 18 例,陰性/境界域: 2 例,陰性/陽性: 1 例,境界域/境界域: 2 例,陽性/陽性: 3 例であった。院内と外注の判定の一致率は88.4%(23/26)で,不一致率は11.6%(3/26)であった。院内のHER2 陽性率は19.2%であった。結語: IHC 法によるHER2 検査において院内と外注との検査結果はおおむね一致していたが,11.6%に不一致症例を認め,診断精度の向上と標準化が必要である。 -
進行再発大腸癌に対するPanitumumabの使用経験
40巻1号(2013);View Description Hide Descriptionpanitumumab 投与症例における治療効果や副作用について後ろ向きに検討を行ったので報告する。当科にてpanitumumabを投与した進行再発大腸癌10 例を対象とした。平均年齢は65.7 歳,男性7 名,女性3 名であった。治療レジメンとしては,panitumumab単独7 例,他剤との併用が3 例であった。panitumumab投与の中央値は8 回,病勢制御率は66.6%であった。副作用は,ほぼ全例に特有の皮膚症状を認めた。マグネシウム(Mg)の投与を要した低Mg血症は1 例に認めた。比較的安全にpanitumumabの投与が可能であった。 -
切除不能進行・再発大腸癌に対するBevacizumab併用化学療法の治療成績
40巻1号(2013);View Description Hide Description進行・再発大腸癌患者に対する全身化学療法は近年大きく進歩している。2007年11 月〜2010 年6 月末までに当科にて受診した未治療進行・再発大腸癌患者をretrospectiveに検討した。全72 例中,化学療法単独施行は39 例,bevacizumab(BV)併用化学療法施行は33 例であった。無増悪生存期(progression-free survival: PFS)中央値は,BV 非併用群209 日,併用群329 日であった(p=0.0189)。BV 併用群では,70 歳以上,70 歳未満の両群でPFS 中央値に差は認められなかった(368日/306日,p=0.7872)。また,FOLFOX+BV療法群,XELOX+BV 療法群では,oxaliplatin(L-OHP)のrelative doseintensityは,それぞれ80%(n=15),92%(n=8)であった。一次治療においてBV 併用化学療法の治療成績は良好であった。 -
Pemetrexedの発疹予防に対するSteroidの有効性に関する検討
40巻1号(2013);View Description Hide Descriptionpemetrexed(PEM)の発疹は,高頻度にみられる有害事象である。海外の臨床試験では,発疹予防としてPEM投与前日よりdexamethasone(DEX)1 回4 mg を1 日2 回3 日間の経口投与が行われており,発現率や重症度が抑えられたという報告があるが,その後steroidの投与量や投与期間について十分に検証されていない。今回,2009 年5 月〜2010 年8 月までの間にPEM 単剤療法を開始した患者81 例を対象として,steroid の予防内服が発疹の発現率および重症度,その他の有害事象などに影響を与えるかどうか後ろ向きに調査を行い検討した。患者背景は,steroidの追加予防内服なし(追加予防内服なし群)47 例,steroidの追加予防内服あり(追加予防内服あり群)34 例,予防投与量中央値はDEX 換算で1日2mg×3 日間であった。発疹の発現率は追加予防内服なし群36.2%,追加予防内服あり群23.5%で,発疹の重症度は追加予防内服なし群G1: 27.7%,G2: 8.5%,追加予防内服あり群G1: 20.6%,G2: 2.9%で,追加予防内服あり群のほうが発疹の発現率および重症度において低かったが,統計学的有意差は認められなかった(順にp=0.166,p=0.663)。今回の研究では,発疹の予防対策としてsteroid の予防投与量が少なかった可能性が考えられた。発疹の発現率をさらに低下させるためには,海外の臨床試験で使用された投与量と同様に,より高用量での検討が必要と考えられる。
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症例
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Gefitinibによる肝障害に対し低用量Erlotinib治療が有効であったEGFR 変異陽性肺腺癌の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は80 歳台,女性。左肺腺癌術後再発に対し,carboplatin+paclitaxelによる全身化学療法を開始。12 コース終了後に左肺転移の増大を認めたため,gefitinib 250 mg/day の内服治療を開始した。治療開始6 か月後に薬剤性肝障害を認め,gefitinib投与を中止し低用量erlotinib 50 mg/dayに変更した。erlotinibに変更後は肝障害の再燃なく,約3 年間病勢制御が可能であった。gefitinibによる肝障害のため治療継続困難なEGFR 変異を有する非小細胞肺癌に対し,低用量erlotinib治療は安全でかつ有効な治療方法である可能性を示した貴重な症例を経験した。 -
S-1単剤療法が著効し長期に臨床的CR が継続している根治切除不能食道胃接合部癌の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は74 歳,女性。通過障害を認め他院を受診,上部内視鏡検査にて食道胃接合部にtype 3 の腫瘤を認め,当科に紹介された。生検の結果は高分化型腺癌で,大動脈周囲リンパ節転移,肝転移を認めたため根治切除不能食道胃接合部癌と診断し,S-1単剤(4 週間投与2 週間休薬)で治療を開始した。3 コース終了後の内視鏡検査にて噴門部腫瘍の著明な縮小が認められ,さらに投与1 年半後には肝転移,大動脈周囲リンパ節転移の消失を確認しCR と判定した。現在までに重篤な副作用の発現もなく,投与開始後2 年半が経過し,現在も内服継続中であるが再発なく生存中である。 -
S-1/CDDP 療法が有効であった胃癌による癌性心膜炎の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は48歳,女性。2005 年7 月,胸水貯留の精査目的にて入院した。胸部X線にて心嚢水および胸水貯留を認めた。心囊ドレナージを施行し,心囊液の細胞診はclassⅤであった。上部消化管内視鏡検査にて進行胃癌を認めたため,癌性心膜炎を合併した胃癌と診断した。腫瘍マーカーとして血清TPA が高値であった。心囊ドレナージを行い,8 月よりS-1+CDDP 療法(S-1 100 mg/body・day 1〜21,CDDP 100 mg/body・day 8,2 週間休薬を1 コース)を開始した。2 コース後には心囊水は消失し,TPAは低下した。3 コース後に心囊水が出現したため,weekly docetaxelさらにはpaclitaxel/CDDP療法を行った。しかしTPAは上昇し,胸水貯留さらには呼吸困難が出現した。このため,2006 年3 月よりS-1/CPT-11 療法(S-1 100 mg/body・day 1〜14,CPT-11 100 mg/body・day 1 およびday 8,2 週間休薬を1 コース)を開始した。S-1+CPT-11 療法を10 コース続けたが,胸水はコントロール困難となり呼吸困難が出現し,2006 年12 月死亡した。癌性心膜炎を合併した胃癌は予後不良であるが,S-1を中心とした全身化学療法は有効であると考えられた。 -
S-1+Low-Dose CDDP 療法にて組織学的CR となり根治切除が可能となった肝転移合併進行胃癌の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は70歳,女性。2010 年5 月,心窩部痛が出現し近医を受診した。精査の結果,胃癌の肝転移と診断され当科に紹介された。上部消化管内視鏡検査で前庭部に2 型の腫瘍を認め,CT 検査では肝S6 に37 mm の単発腫瘍を認めた。S-1+low-dose CDDP 療法を開始し,計10 コース施行した。CTで肝S6 の腫瘍は5 mm に縮小し,2011 年1 月,幽門側胃切除,D2郭清,肝S6 部分切除を施行した。病理結果は胃,リンパ節,肝に腫瘍細胞の残存を認めず,組織学的効果判定はGrade3 であった。術後経過は良好で第12 病日に退院した。外来でS-1 単独補助療法を再開し,術後1 年1か月の現在まで再発所見はない。 -
胃癌異時性肝転移に対して2 回の肝切除を施行し長期間無再発生存中の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description胃癌肝転移の標準治療は化学療法であるが,近年肝切除による良好な成績も報告されている。しかし,肝内再発に対して再肝切除を行った報告は少ない。われわれは胃癌肝転移切除後の肝内再発に対して再肝切除を行い,長期間無再発生存中の1 例を経験した。症例は68 歳,男性。2005年10 月,検診にて胃体中部大弯から後壁の2 型胃癌を発見され,幽門側胃切除術,D2郭清を施行。病理組織診断はtub2,43 mm,T3(SS),#11pに1 個の転移を認めN1であった(胃癌取扱い規約第14 版)。術後無治療で経過観察していたが,2006 年11 月,CTにて肝S3 に2 個の転移を認め,12 月肝外側区域切除施行。術後補助化学療法としてS-1(100 mg)を1 年間投与した。2008 年3 月,CTにて肝S8に単発の肝転移再発を認め,4月肝S8 部分切除術施行。その後化学療法は行わず経過観察しているが,再肝切除後4 年2か月,無再発生存中である。 -
集学的治療により長期生存中である若年発症の大腸癌多発肝転移の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は42 歳,女性。2005 年2 月,35歳時に同時性多発肝転移のある上行結腸癌に対して結腸右半切除術,肝動注リザーバー挿入,ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)を施行した。その後5-FU の肝動注とUFT 内服を10 か月投与した。2006年3 月に吻合部再発を認め,結腸部分切除を施行した。補助療法としてmFOLFOX6 を6 コース投与した後,UFT 内服へ変更して以後継続した。2 回目手術より1 年後の2007 年3 月に肝転移・リンパ節再発を認め,RFA追加とmFOLFOX6 を6コース追加した。肝転移は消失したがリンパ節転移の遺残を認めたため,bevacizumab+mFOLFOX6 を4コース追加した。治療効果CR を得たため,その後はUFT内服へ変更した。2008 年5 月に肝転移再発,縦隔リンパ節再発を認め,bevacizumab+FOLFIRI2 を4 コース施行した。治療効果CR であったが4 コース追加した。その後,irinotecanによる下痢が出現したため,bevacizumab+LV/5-FU を4 コース投与した。以後の再発は認めず,現在初回手術より7 年経過したが無再発で生存中である。 -
XELOX+Bevacizumab療法と放射線療法により治癒切除し得た腹膜播種陽性直腸S 状部癌の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳,女性。全周性の直腸S 状部癌によるイレウスで手術を施行したが,腹水細胞診および腹膜播種陽性であった。S状結腸人工肛門造設術後,放射線療法(合計40 Gy)とXELOX+bevacizumab療法を8 コース施行した。放射線化学療法後のFDG-PET で異常集積は指摘されなかった。S 状結腸切除術を施行したが術中所見で腹膜播種はなく,洗浄細胞診も陰性であった。XELOX+bevacizumab療法および放射線療法は,進行結腸直腸癌に対してdown stagingを可能とする有用な治療方法と考えられた。 -
FOLFOX4/Bevacizumab療法中にストーマ腸管潰瘍を認めた再発直腸癌の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は73 歳,女性。子宮浸潤を伴う直腸癌に対して手術を施行,根治手術となりUFT/Leucovorin内服療法を16 か月行った。初回手術3 年6か月後に膀胱,尿管浸潤を伴う局所再発を来し,出血コントロールのため膀胱尿道全摘術を行った。術後FOLFOX4/bevacizumab による化学療法を導入したが,4 コース終了後にストーマ腸管に潰瘍を認めたためbevacizumabを中止し,保存的加療にて軽快した。本例のように潰瘍発生部位が容易に観察できる部位であったため迅速な対応が可能であったが,化学療法中は患者の症状を注意深く観察することが必要である。 -
心筋梗塞発症後にXELOX 療法にて病勢をコントロールできた進行直腸癌の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Description症例は81 歳,男性。進行直腸癌の診断で腹会陰式直腸切断術による根治的手術を予定したが,術中血圧の低下を認め,人工肛門を造設しただけで手術を終了した。術後に緊急心臓カテーテル検査にて急性心筋梗塞と診断され,PCI にて治療した。根治的手術は断念し,化学療法を行うこととなり,術後25 日目よりcapecitabine(2,000 mg/m2)2 週間投与1 週間休薬,oxaliplatin(130 mg/m2)day 1 投与を行った。腹部CT にて直腸壁の肥厚の改善,周囲リンパ節腫脹の縮小および腫瘍マーカーの減少を認め,1 年4 か月の間良好なQOLを保ちつつ,病勢コントロールができた。XELOX初期導入時の症例ではあったが,心筋梗塞後のハイリスクな症例に対してXELOX 療法は安全に施行でき,良好なコントロールが得られた。 -
Docetaxel/Nedaplatin併用放射線化学療法が奏効した再発肛門管扁平上皮癌の1 例
40巻1号(2013);View Description Hide Descriptiondocetaxel(DOC)/nedaplatin(CDGP)併用放射線化学療法が奏効した再発肛門管扁平上皮癌の1 例を経験した。症例は69 歳,女性。肛門管扁平上皮癌で腹会陰式直腸切断術を施行した。4 年5 か月後に腹腔内と骨盤にリンパ節再発を来し,DOC 35 mg/m2とCDGP 35 mg/m2を2 週ごとに点滴で投与した。両病変ともにPR が得られたが,20 サイクル終了後(10か月目)に骨盤リンパ節が増大し放射線療法(54 Gy)を施行した。16 か月目の現在,再発は認めていない。有害事象はGrade 2 の白血球減少と好中球減少を認めたのみであった。DOC/CDGP 併用放射線化学療法は,肛門管扁平上皮癌に対する有用で安全なレジメンになる可能性が示唆された。 -
がん性疼痛の治療にオキシコドン注射剤が奏効した3 症例
40巻1号(2013);View Description Hide Description経口オピオイドでがん性疼痛治療を続けていた患者が嚥下困難な病態に陥った時は,オピオイドの持続静脈内投与,持続皮下投与が有用な選択肢となる。今回,がん性疼痛治療にオキシコドン注射剤が有効であった3 症例を経験したので報告する。症例1 では,化学療法施行中に経口摂取困難となった患者を一時的にオキシコドン注射剤に切り替えることで良好な疼痛コントロールが得られ,内服可能になった段階でオキシコドン徐放錠への再切り替えも円滑に行うことができた。症例2 では,高度の神経障害性疼痛に対してフェンタニル貼付剤からの切り替えが奏効した。症例3 において,オキシコドン注射剤は腎機能障害患者に比較的安全に使用できた。
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