癌と化学療法
Volume 40, Issue 7, 2013
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総説
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小児固形がんの臨床
40巻7号(2013);View Description Hide Description小児がんの発生は,先天異常と関連しており,いくつかの小児がんに関連する癌遺伝子や癌抑制遺伝子が明らかとなっている。神経芽腫は副腎髄質および交感神経節に発生する。神経芽腫の多くはカテコラミンを産生し,その尿中代謝産物であるバニリルマンデル酸(VMA)とホモバニリン酸(HVA)は腫瘍マーカーとして利用されている。病期分類と予後因子を組み合わせたリスク分類により治療方針を決定している。高リスク群の生存率は依然不良である。小児腎腫瘍のうち,最も頻度の多いのが腎芽腫(Wilms 腫瘍)である。先天性の合併奇形が多い。米国やわが国では腎摘出術により病理組織診断を確定し,その後適切な化学療法,放射線治療を行う。腎芽腫の予後は比較的良好である。腎明細胞肉腫は骨転移傾向を有する予後不良の腎腫瘍で,腎芽腫とは別の肉腫様の非上皮性の腫瘍である。腎横紋筋肉腫様(腎ラブドイド)腫瘍の起源は不詳で,有効な治療法が確立されておらず,予後は極めて不良である。小児の肝悪性腫瘍の多くは肝芽腫である。腫瘍マーカーとして血清a-fetoprotein 上昇が特徴的である。外科的完全切除が最も有効な治療法である。術前化学療法により完全切除率の可能性が高くなる。高リスク群の生存率は不良である。
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特集
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- 膵・消化管神経内分泌腫瘍の診療
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膵消化管神経内分泌腫瘍(GEPNET)の病理の最近の進歩
40巻7号(2013);View Description Hide Description消化管/膵臓に発生する神経内分泌腫瘍(NET; GEPNET)の病理は最近大きな概念の変遷が認められている。特に2010 年の新しいWHO 分類が提唱され,現在は神経内分泌腫瘍の総称をneuroendocrine neoplasms(NEN)として,さらにNET G1,G2,neuroendocrine carcinoma(NEC)G3 と分類を行う。この病理組織学的分類はほぼ腫瘍細胞の増殖動態だけに規範されている組織分類であり,特にKi67 の免疫組織化学を行いその標識率を算出することが肝要である。現在GEPNET患者の治療方針はほぼTNM 分類と今回提唱されたWHO2010 分類によりほとんどのNEN 患者では規範される。このことからGEPNET 患者の診療にかかわる種々の臨床医もWHO2010 分類とTNM 分類には十分習熟していることが望まれる。 -
膵・消化管内科の神経内分泌細胞の薬物療法―分子標的治療薬を中心に―
40巻7号(2013);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍はまれな腫瘍であり,従来より治療開発の遅れによりほとんど有効な治療はなかった。低分化型のNEC については小細胞肺癌に準じての治療が選択され,高分化型のNET G1/G2 に対しては第Ⅲ相臨床試験の結果から,エベロリムス,スニチニブの有効性が示され,分子生物学に基づく治療体系が急速に導入されつつある。 -
膵・消化管神経内分泌腫瘍の外科治療
40巻7号(2013);View Description Hide Description膵・消化管の神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)の治療方針の基本は切除術である。組織型で術式は異なってくるが,高分化型NET や低分化型神経内分泌癌の組織型を術前に確定することは通常困難であり,腫瘍径を含む画像診断である程度予測して術式を決定する。消化管NET では内視鏡的切除術の適応病変が示されているが,それ以外の病変はリンパ節郭清を伴う腸切除術を行う。また膵NET では,腫瘍径,主膵管との距離,機能性・非機能性,多発内分泌腫瘍の合併の有無により切除法を決定する。膵・消化管NET の肝転移巣も切除可能なら切除術を行い,切除不能例でも90%以上の減量が望める場合には切除術を含む集学的治療を行う。神経内分泌癌術後には補助化学(放射線)療法が推奨されているが,高分化型NET 根治切除後に対しては補助療法を推奨するだけのエビデンスはない。 -
膵・消化管NET 診療の国際比較とガイドラインについて
40巻7号(2013);View Description Hide Description近年,非機能性NET 患者の増加は顕著で,初診時に肝転移を有するNET 患者の増加と,画像診断法でたまたま見つけた小さなNET の処置が,第一線の診療現場を悩ませている。本邦でのガイドラインは作成中であるが,本邦での診療技術の国際的遅れが明らかな現状では,英文化すれば国際的ひんしゅくを招きかねない状況にある。診断技術としてsomatostatinreceptor scintigraphy(SRS)の本邦未承認と血液マーカークロモグラニンの未承認は早急に是正されねばならないし,EU で研究的治療として実施されているpeptide receptor radionuclide therapy(PRRT)がEU諸国で正式に有効性が証明されれば,本邦への導入を考慮すべきと考える。
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Current Organ Topics:Head and Neck Cancer 頭頸部癌
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原著
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肺癌骨転移症例に対するゾレドロン酸の使用経験―溶骨性骨転移の再骨化に関しての検討―
40巻7号(2013);View Description Hide Description肺癌は高頻度に溶骨性骨転移を来し,骨疼痛や骨折といった骨関連イベントは患者の生活の質や生存期間を悪化させる。ゾレドロン酸は骨の破壊的変化を抑制し,骨関連イベントのリスクを減少させる。この6 年間に当院で84 人の溶骨性骨転移を来した肺癌患者に対してゾレドロン酸投与が行われた。25%の患者で転移病変に有効な再骨化が観察され,そのような患者においては無効であった患者より長期の生存期間と全身状態の改善が認められた。ゾレドロン酸は溶骨性骨転移の再骨化などによって骨関連イベントを減少させることにより,積極的な抗癌治療(放射線±化学療法)の施行を可能にし,肺癌患者の予後に寄与することが示唆された。 -
The Clinical Benefit of High-Dose Toremifene for Metastatic Breast Cancer
40巻7号(2013);View Description Hide Descriptionトレミフェンはselective estrogen receptor modulator(SERM)の1 種で,高用量トレミフェン(HD-TOR)は再発・転移性乳癌に投与できるが,その効果についてはエビデンスが少ない。対象・方法: 2003〜2012 年の間にHD-TOR を投与した再発・転移性乳癌21 例に対し奏効率,有害事象をretrospective に検討した。骨転移のみの症例は効果判定からは除外し,有害事象でのみ検討した。結果: 追跡期間は8.3 か月で,骨転移のみを除外した19 例での奏効率はCR 0%,PR 21.1%で臨床有用性は63.2%であった。グレード3 以上の有害事象は認めなかった。結論: HD-TOR は再発・転移性乳癌に対し第1,2選択で投与した場合は第3 選択以降より臨床的有用であった。特に高度内分泌反応性症例に対し有効であった。 -
76歳以上のStageⅢ結腸癌における術後補助化学療法としてのUFT(+LV)療法の検討
40巻7号(2013);View Description Hide Description目的: 76 歳以上のStage Ⅲ結腸癌の術後補助化学療法としてのUFT(+LV)療法を後ろ向きに検討した。対象: 2002年1 月〜2011 年12 月までに当院で根治度A の治癒切除したStage Ⅲ結腸癌333 例(含むRs)のうち,76 歳以上の高齢者52 例でUFT(+LV)を投与した25 例。結果: 男性12 例,女性13 例,年齢の中央値は78 歳,Stage Ⅲa 19 例,Stage Ⅲb は6 例であった。3 年無病生存率はStage Ⅲ全体で65.1%,Stage Ⅲa 83.1%,3 年の全生存率は全体で79.9%であった。有害事象の発現率は肝機能障害が8%と最も多く認めたが,Grade 3 以上の有害事象は認められなかった。結論: Stage Ⅲ結腸癌に対する術後補助化学療法としてのUFT(+LV)療法は76 歳以上の高齢者に対して忍容性が良好で,特にStage Ⅲa 症例に優れた治療法である。 -
原発性腹膜癌15例の臨床的検討
40巻7号(2013);View Description Hide Description2001〜2010 年までに当科で経験した原発性腹膜癌に関して,組織型,進行期およびその治療法と予後について検討を行った。進行期別ではⅡ期3 例,Ⅲ期11 例,不明1 例だった。全症例でCA125 が上昇していた。化学療法は全例でパクリタキセルとカルボプラチンを併用したTC 療法を第一選択として実施した。Ⅱ期3 例中2 例は5 年以上再発を認めず,残り1 例も3 年以上経過した現在まで再発徴候を認めていない。転帰不明の1 例を除いたⅢ期10 例中4 例は治療開始後3 年未満で原病死している。今回の検討で,Ⅲ期の予後は依然不良であるが,Ⅱ期の予後は良好である可能性が示唆された。 -
ドセタキセル静注用製剤ワンタキソテール®点滴静注からの脱アルコール化注射剤の調製とラットにおける体内動態の検討
40巻7号(2013);View Description Hide Descriptionドセタキセル(DOC)の点滴静注用製剤であるワンタキソテール®点滴静注(OTAX)には,溶解補助剤の一つとしてアルコールが含有されている。このため,OTAX はアルコール不耐性や過敏症を示す患者には使用することができない。本研究では50℃の湯浴中においてOTAX のバイアル内のアルコールを窒素ガス気流により留去することで,脱アルコール化DOC 注射剤の調製を試みた。その結果,アルコールを無菌的にほぼ完全に留去でき,また脱アルコール化製剤中のDOC は28 日間安定であった。調製した脱アルコール化注射剤をラットに静脈内投与した後のDOC 体内動態は,未処理のOTAX投与時と一致した。これらの知見から,本研究で調製した脱アルコール化DOC 注射剤はアルコール不耐性を示す患者にもOTAX と同等に使用できる可能性が示唆された。
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薬事調査
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Cetuximab投与時のマグネシウム早期投与の有効性における後視的検討
40巻7号(2013);View Description Hide Description進行・再発の結腸・直腸癌患者へのcetuximab 投与における有害事象として,低Mg血症が高頻度に認められる。従来,低Mg 血症に対する予防法はなく,重症の低Mg血症が発症すると治療の中止を余儀なくされる。今回,cetuximab を投与した進行・再発の結腸・直腸癌患者を対象に,低Mg血症の頻度と発症時期を検討した。また低Mg 血症に対して早期より予防的にMg 製剤を投与する院内マニュアルを策定し,その有用性を検討した。2008 年10 月〜2010 年11 月にcetuximabを投与した15 症例を対象に調査を行った。低Mg 血症(Grade 1)の発現時期は平均7.5±4.8 週であり,血清Mg 値の低下がみられた患者は15 例中13 例と高頻度に認められた。重症度別では,Grade 1 が11 例,Grade 2 が1 例,Grade 3 が1例であった。なお2009 年11 月の院内マニュアル策定以降は,Grade 2 以上の低Mg 血症は認められなかった。以上より,低Mg 血症は高頻度に認められること,また定期的な血清Mg 値の測定ならびに早期のMg 製剤補充により低Mg 血症の重症化を回避する可能性が示唆された。
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薬事
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経口分子標的薬治療における薬剤師外来有用性の検討
40巻7号(2013);View Description Hide Description目的: 当院では2010 年4 月より薬剤師外来を開設し,経口抗がん剤の服薬指導を行ってきた。医師診察後の面談では,薬剤適正使用に関してタイムリーな反映が困難であった。今回,経口分子標的薬治療において医師診察前に患者面談を行う方法を導入し,有効性を検討した。方法:日立総合病院において経口分子標的薬を服用中の患者95 人を対象として,服薬モニタリングレポートを使用し有効性を検討した。さらに,分子標的薬をコーディネートする薬剤師の業務についてアンケート調査を患者および医療者を対象に行った。結果: 薬剤師が医師へ処方を提案し,245/259 件(94.6%)が採択された。そのうち,支持療法の反映は212/245 件(86.5%)であった。支持療法を施行した患者はすべて症状が改善した。また,当院でのソラフェニブ使用患者(19 人)の平均投与日数比較は,薬剤師介入前66±20.3 日であり,介入後102±30.8 日であった。さらにアンケート結果より,分子標的薬コーディネータ薬剤師が必要であるいちばんの理由は,患者は「安心感」,医師は「有害事象支援」,看護師は「処方提案」で100%であった。考察: ソラフェニブにおいて薬剤師介入前は,患者自己判断や重篤な有害事象による中止が各3 例ずつあったが,介入後は1 例もない。さらに平均投与日数が延長されたことは,薬剤師による患者アドヒアランスのサポートと薬剤適正使用を推進することが副作用回避に直結する一因と考えられた。処方反映は薬学的介入により専門性を発揮できたと思われた。今後は,患者の治療薬選択をサポートする業務を展開したい。
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症例
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乳癌局所再発に対してLapatinib(Tykerb)とCapecitabine(Xeloda)併用療法が著効した1例
40巻7号(2013);View Description Hide Description乳癌に対する術後補助化学療法としてのtrastuzumab(Herceptin®)加療中に,局所再発を来した症例に対してlapatinib(Tykerb®)とcapecitabine(Xeloda®)併用療法を行い,局所再発が消失した。本治療は経口投与の化学療法であるため通院加療が可能であり,QOLの向上に寄与し得ると考えられる。HER2 陽性乳癌でtrastuzumab 抵抗性に終わった場合でも,優れた抗腫瘍効果を期待できる。 -
進行再発乳癌に対する低用量Albumin-Bound Paclitaxelの使用経験
40巻7号(2013);View Description Hide DescriptionAbraxane(ABX)はCA012 試験にて有用性が示され,承認されたpaclitaxel(PTX)製剤である。従来に比べ高用量を投与できるため高い効果が期待できる。しかし,多くの化学療法の治療歴がある患者に対し260 mg/m2では,副作用のコントロールに難渋する例もみられる。今回われわれは,ABX を進行再発乳癌に対して低用量(180〜220 mg/m2)で投与した8 例を経験した。奏効率は62.5%でありGrade 3 以上の有害事象は好中球減少の2 例のみであった。PTX の投与歴のある患者においても50%と高い奏効率を示した。転移性乳癌に対する治療は,効果とともに認容性が高い治療法が望まれる。低用量ABX 投与は副作用を軽減でき,PTX の前治療歴があっても効果が認められた。今後治療のオプションとして十分に考慮できる使用方法であると考えられた。 -
非小細胞肺癌外来化学療法患者のQOL に対する補中益気湯の効果
40巻7号(2013);View Description Hide Description癌薬物療法の進歩により,化学療法の外来への移行が進んでいる。生活の質(quality of life: QOL)の維持が必要であり,近年その支持療法としての漢方薬の有効性が注目されている。外来化学療法施行中の非小細胞肺癌に対する補中益気湯の併用効果をQOL の観点から客観的に測定し因子解析を行うことを目的として本臨床研究を行った。PS 0〜1 の高齢非小細胞肺癌患者11 名(53〜90 歳,平均72.5 歳)に対して補中益気湯を投与し,その前後でのQOL 変化を厚生労働省栗原班「がん薬物療法におけるQOL調査票」を用いて検討した。overall QOL score および各因子いずれも低下することなく入院から外来への移行が可能であることが明らかとなり,補中益気湯の非小細胞肺癌患者の外来化学療法における有用性がQOLの観点から示された。 -
経動脈的抗癌剤動注-塞栓療法(TACE)により著明な腫瘍縮小効果を確認した腎機能障害を伴う高齢者肺扁平上皮癌の1 症例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は腎障害合併の91 歳,男性。2009 年に左肺野に小腫瘤影を指摘されたが放置。腫瘤は徐々に増大し2010 年4 月にTBLB とCT から肺扁平上皮癌で,病期は右肺腫瘍の存在からstage Ⅳ期と診断した。全身化学療法は高齢で軽度腎障害がみられることから施行せず。われわれは,同意を得た後に抗癌剤量が少ない経動脈的抗癌剤動注-塞栓療法(TACE)を施行したが治療中やその後において副作用は観察されなかった。患者は通院しなくなったものの8 か月後に感冒治療にて来院され,その際のCT で腫瘍は87%縮小していた。この方法は,高齢者や肺合併症を有する非小細胞肺癌症例に対し副作用の少ない新しい治療法となるかもしれない。 -
S-1/CDDP による術前化学療法が著明に奏効した食道浸潤胃癌の1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は75 歳,男性。食道浸潤を伴った胃噴門部癌に対して,開胸手術を避けて手術侵襲を低減させることを目標にS-1 とCDDP による術前化学療法を行った。S-1 は80 mg/m2を21 日間経口投与し14 日間休薬した。CDDP は60 mg/m2をday 8 に投与した。2 コース施行後,内視鏡所見上で腫瘍は著明に縮小して食道浸潤は消失したため,経腹操作のみで胃全摘,脾臓合併切除術を施行できた。摘出標本の病理組織学的効果判定はGrade 2 であった。術後1 年無再発生存中である。食道浸潤胃癌に対する術前化学療法により,開胸を回避して手術侵襲の大きな軽減が図れる可能性があると考えられた。 -
Stage Ⅳ(P1CY1)の進行胃癌に対して姑息的幽門側胃切除術を施行後5年間QOL を保ちつつ外来化学療法を継続している1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。主訴は心窩部痛と食思不振。遠隔転移を伴わない胃体部から前庭部に及ぶ4 型進行胃癌(group5 低分化型腺癌)の術前診断で開腹手術を施行した。開腹所見にて横行結腸壁に至る直接浸潤に加えて横行結腸間膜,大網および網嚢内に腹膜播種を認め,そのうちの一つの結節を迅速病理診断に提出したところ低分化型腺癌の診断を得た。また,腹腔洗浄細胞診断も陽性であった。術前の症状の改善を期待して姑息的な幽門側胃切除を施行した。術後にS-1 120 mg/body の内服(2 週間服用後1 週間休薬)を開始し,術後約半年後からは80 mg/body に減量し外来通院を続けていたが,術後約1 年9 か月経過したころより左上腹部腫瘤とともに経口摂取の不良が著明となり,腹部CT上,癌性腹膜炎による胃空腸吻合部狭窄と残胃の著明な拡張などを認めた。そこで,化学療法をweekly paclitaxel(PTX)100 mg/body(週1回3週連続投与後1 週休薬)に変更したところ2 コースごろより症状が著明に改善し,以降術後約5 年経過した現在に至るまで経口摂取および栄養状態良好でかつ日常生活のQOL を保ったまま外来化学療法(43 コース施行中)を継続している。 -
CPT-11+CDDP 併用療法が著効を示した胃癌術後再発の1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。2008 年4 月,胃癌に対し胃全摘+脾摘術(D2,Roux-en-Y 再建)施行,(pT3N2M0,stage ⅢA)。術後S-1 による補助化学療法を行うも薬疹,全身倦怠感のため5 か月で中止。2010 年1 月,腹痛,食欲不振にて当科受診。CEA の上昇を認め,諸検査の結果,局所再発,縦隔/Virchow リンパ節転移,胸椎転移と診断され,CPT-11+CDDP 併用療法が開始となった。3 コース終了後,局所再発巣はほぼ消失し,CEA は正常化した。5 コース終了後のPET では,すべての病巣で縮小とFDG の集積消失を認めた。10 コース施行し化学療法を中止とした。経過観察中のPET-CT にて右肺腫瘤が出現し徐々に増大傾向を認めたため,2012 年5 月,右肺S6 区域切除術が施行された。病理結果では扁平上皮癌であり,原発性肺癌(pT1aN0M0,stage ⅠA)と診断された。胃癌に関しては,再発から2 年9 か月経過した現在も再発を認めていない。 -
三次化学療法でトラスツズマブ+カペシタビン+シスプラチン療法が奏効したHER2 陽性胃癌の1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は67 歳,女性。胃体部癌(低分化腺癌),多発肝転移の診断で,S-1+シスプラチン療法,weekly パクリタキセル療法を施行し不応となった。HER2 強陽性のため,三次化学療法としてカペシタビン+シスプラチン(XP)+トラスツズマブ療法を導入したところ,原発巣・肝転移巣ともに著明な縮小を認めた。ToGA 試験では一次療法におけるHER2 陽性胃癌に対するトラスツズマブの上乗せ効果が証明されたが,本例から三次療法でも有効である可能性が示唆された。また,有害事象はGrade 2 の好中球減少症と手足症候群のみで,カペシタビンを適宜減量・休薬することにより安全に投与可能であった。 -
術前イマチニブ投与にて切除可能となった巨大直腸GISTの1例
40巻7号(2013);View Description Hide Description直腸に発生するGIST は消化管原発GIST の約5%といわれているが,自覚症状に乏しく,巨大な腫瘍で発見される症例も少なくない。進行GIST に対する術前イマチニブ投与の第Ⅱ相試験(RTOG S-0132)において比較的良好な長期成績が報告されたものの,術後の補助療法などについては未だ確立していない。今回われわれは,イマチニブを術前投与し切除可能となった巨大直腸GIST を経験したので報告する。症例は64 歳,男性。検診でPSA が高値であり,精査したところ前立腺に浸潤する直腸GIST と診断された。骨盤腔を占める巨大なGIST であり,size と周囲臓器への浸潤を考慮し術前化学療法を施行した。画像上,90×85 mm→60×50 mm と腫瘍縮小効果を認め(RECIST ガイドライン: 縮小率33%),治療効果はPR であった。切除可能と考え,骨盤内臓全摘術を施行した。術後もイマチニブ(400 mg/日)を継続し,現在術後8 か月を経過して再発は認めていない。 -
Bevacizumab併用化学療法中に二度の消化管穿孔を発症した直腸癌の1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳の男性。直腸癌,腹膜播種,肺転移に対して低位前方切除術を施行後mFOLFOX6+bevacizumab(BV)療法を導入した。28 コース目のBV 投与26 日目に腹痛,発熱が出現,CT 検査で骨盤内膿瘍とfree air,虫垂内の石灰化を認め緊急手術を施行した。虫垂穿孔による膿瘍形成を認め虫垂切除・膿瘍ドレナージ術を施行した。術後2 日目に骨盤内留置ドレーンより腸液の流出を認め,再手術を行ったところ回腸穿孔を認めた。穿孔部は境界明瞭な円形であり,播種など腫瘍性変化は認めず,単純閉鎖術を行った。再手術後は経過良好で,初回術後19 日で退院した。虫垂の病理学的所見は直腸癌播種の腫瘍崩壊による穿孔を示唆していた。消化管穿孔はBV の重篤な副作用の一つである。本症例では短期間に二度,異なる部位に消化管穿孔を認め貴重な症例と考え報告する。 -
SOX療法後UFT持続投与により長期CR が得られているStageⅣ上行結腸癌の1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は72 歳,女性。2010 年10 月,上行結腸癌[cSS,cN3,cH0,cP0,cM1(肺,No. 216): Stage Ⅳ]に対し腹腔鏡補助下右半結腸切除術(D2,根治度C)を施行した。術後S-1/oxaliplatin(SOX)療法を施行し,3 コース終了後には画像上complete response(CR)が得られた。その後,副作用の点から本人の意向を踏まえSOX 療法を中止し,UFT単剤投与に変更した。術後約20 か月現在,良好なQOL を保ちながら腫瘍マーカーも正常化し,CR を維持している。 -
腹膜播種を伴う高度進行直腸印環細胞癌に対して腹腔鏡下切除を行い術後化学療法が著効した1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description症例は58 歳,男性。腸閉塞を伴う直腸癌(RS)に対して腹腔鏡下に手術を行った。肝転移はなく,骨盤腔内に腹膜播種を疑う多数の結節を認めたが,主病巣は切除可能と判断し前方切除術を施行した。手術所見はsSE,sN2,sP3,sStage Ⅳで,病理組織学的にはsignet-ring cell carcinoma,pSE,pN2,pP+,pStage Ⅳであった。術後補助化学療法としてmFOLFOX6 療法を計8 コース施行したところCEA は正常化し,PET-CT でも転移を疑う異常集積を認めなかった。効果判定のため術5 か月後に腹腔鏡下腹膜生検術を施行し,病理組織学的に腹膜播種病巣の消失を認めた。現在初回手術後1 年が経過し,S-1 投与にて経過観察中であるが再発を認めていない。 -
リポソーム化ドキソルビシン投与により長期SDを得られた胸水貯留を伴う再発子宮体癌の1 例
40巻7号(2013);View Description Hide Description既治療歴のある再発子宮体癌に対しpegylated liposomal doxorubicin,ドキシル注(PLD)を投与し,長期のdiseasecontrol が可能であった症例を報告する。症例は82 歳,女性。76 歳時に子宮体癌(漿液性腺癌)Stage Ⅲc に対し,準広汎子宮全摘術+両側付属器切除術+骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術を施行し,術後TC(paclitaxel/carboplatin)療法6 コースと,全骨盤照射(50.4 Gy)を行った。初回治療より46 か月後,腫瘍マーカーCA125 の上昇と腟断端再発・腹膜播種を認め,DC(docetaxel/carboplatin)療法6 コース施行した。病巣はいったん消失したが,6 か月後に再びCA125 上昇,腹膜播種と胸水貯留を認め,子宮体癌再々発の診断となった。呼吸苦が強く,performance status(PS)も不良であることからPLD 単剤療法を行った。投与5 コース目まで胸水減少とCA125 低下を認め,6 か月間stable disease(SD)を維持することができ,副作用も軽微であった。PLD 療法は,既治療子宮体癌再発に対して有望な化学療法であると考えられた。 -
パクリタキセル注NK とタキソール®注射液の安全性の比較検討
40巻7号(2013);View Description Hide Descriptionわが国では年々医療費が増大しており,患者負担の軽減および医療保険財政の改善を目的として後発医薬品(以下,後発品)の利用が推進されている。しかし,後発品に対する臨床試験は行われていないことから有効性や安全性の問題が指摘されているため,後発品での安全性の確立には臨床効果や有害事象発現状況を調査する必要がある。タキソールはがん治療レジメンのキードラッグである。そのため,先発品と後発品での有害事象発現の差異が治療に影響する可能性が考えられることから,タキソール後発品の安全性を検討する必要がある。本検討では,乳がん,胃がん,肺がんでの後発品パクリタキセル注NK と先発品タキソール®注射液タキソールとの有害事象発現状況の実態調査,特に神経障害について検討を行った。有害事象発現について比較検討した結果,しびれの項目でgrade 1 副作用は後発品群に多く発現していたが,grade 2 は先発品に多く発現していた。また,両群で減量および中止された割合に有意な差を認めなかった。以上のことから,タキソール先発品と後発品での有害事象発現,特に重篤な副作用はなく,臨床上先発品と同様に使用できるものと示唆された。
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