Volume 40,
Issue 13,
2013
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総説
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癌と化学療法 40巻13号, 2475-2480 (2013);
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がん罹患を国別に比較した場合,差の大きな部位としては,日本,中国,韓国を含むアジアに多い胃がん,肝臓がん,欧米に多い膀胱がんがある。また,オーストラリアとスウェーデンにおいてはメラノーマが多く,米国,英国,オーストラリアでは非ホジキンリンパ腫なども多い。大腸がんおよび乳がんは,すべての国で多いがんであるが,大腸がんは日本では近年減少がみられ,中国以外のその他の国でも増加はみられない。ただし,中国においては近年も増加傾向がみられる。乳がんは欧米の罹患率がアジア各国の罹患率の2 倍程度と異なるが,現在もどの国でも増加傾向が続いている。世界のがん死亡の特徴としては,罹患と同様にアジアでは胃がんと肝臓がんが多くを占めている。欧米では卵巣がんの死亡率も比較的多い。肺と大腸はすべての国で死亡の多い部位であり,中国とブラジル以外のすべての国で膵臓は死亡数の多い部位である。
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特集
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がん医療における多職種の関わり
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癌と化学療法 40巻13号, 2481-2484 (2013);
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がん患者に対して行われる化学療法や放射線治療は,がん細胞だけでなくその他の正常組織細胞にも為害作用を示し,多くの有害事象を引き起こす。口腔はがん治療の直接的・間接的影響を最も受けやすい部位の一つであるが,重症化した口腔の有害事象は患者のQOL を低下させるのみならず,がん治療の妨げにもなる。口腔環境の整備による口腔管理の考え方について解説する。
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癌と化学療法 40巻13号, 2485-2488 (2013);
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入院患者に対する栄養管理は,日々変化する患者の病状に対応する必要があるため,入院時の計画だけでなく,すべての入院患者を定期的にモニタリングし,入院後に発生した栄養障害も見逃さないシステムの構築が必要となる。当院では,すべての入院患者の栄養状態を経時的に把握できなかった反省から,従来の主治医からの依頼を中心とした栄養サポートチーム(nutrition support team: NST)活動を改めた。2013 年7 月に導入したシステムでは管理栄養士が核となり,看護師が行う毎週の入院患者の栄養スクリーニングから摂食状況などを加味してハイリスクを抽出し,NST サイドから対象者を選別する包括的な栄養管理をめざしている。
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癌と化学療法 40巻13号, 2489-2492 (2013);
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リンパ浮腫に関連した診療報酬の改定により,リンパ浮腫の予防教育や治療方法が注目され始めている。しかし現状として,リンパ浮腫発症予防としてのリンパ浮腫指導管理料やリンパ浮腫が発症した際の弾性着衣療養費の支給に関しては保険適応となったが,複合的治療に関しては保険適応にはなっておらず,施設によりリンパ浮腫が発症した際の対応は異なっている。リンパ浮腫を発症すると患者は長期間にわたり,リンパ浮腫と付き合っていかなくてはいけないが,施設間の対応の違いが患者の治療開始を遅らせ,治療継続を阻んでいる。患者が安心してリンパ浮腫と向き合い,治療を無理なく継続していくためには多職種の連携が不可欠である。今回,リンパ浮腫患者を支援するための多職種間の連携と今後の課題について述べる。
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癌と化学療法 40巻13号, 2493-2495 (2013);
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ストーマリハビリテーションの目的はストーマ保有者のQOL 向上にある。日本ではET,WOCN 合わせ1,700 人以上の専門家が,様々な対象に合わせた質の高いケアの提供をめざして従事している。本稿では,増加している一時的ストーマ造設患者へのケア,多様化する化学療法に対するケア,そして緩和ケア目的で造設されるストーマケアについて,われわれの役割とそのケアの特徴について述べたいと思う。
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癌と化学療法 40巻13号, 2496-2498 (2013);
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がん患者・家族の悩みや不安に対する相談支援を担っているのが,各がん診療連携拠点病院の相談支援センターの専門相談員である。患者・家族は,まず告知を受け,動揺している状態で病状説明やこれからの治療方針の説明を受ける。この際に医療者と患者では情報の非対称性の問題があり,自力で方針を選び取れる人は少ない。そこで相談員は具体的な支援として,患者が自分にふさわしい病気との付き合い方を明確にし,治療方針などを決めるための“意思決定の支援”が必要となる。また収支のバランスを保ちながら生活を維持し,治療と両立できるようにする“生活再建の支援”や,さらに人と人,人と制度など活用できるものを結び付け,関係性をつなぐ“関係調整の支援”などを提供する。専門相談員の介入により,相談者は「話すこと」をとおして,複雑に絡み合った問題を整理し,自分の意向をまとめ,行動化することができるようになる。医療ソーシャルワーカーは,当事者である患者自身が納得・理解し,自分で判断し,自発的に行動することを大切にしている。そのことをとおして自己効力感を得たり,自信を強化したり,“その人らしさ”を取り戻したりする結果につながるからである。医療ソーシャルワーカーの役割は相談者の心のなかにある答えを一緒に見つけだし,“考えを言語化”することや“問題解決の能力”を引きだすように助言することや,患者自らが自他への愛情や生命力を発揮することを助けることである。
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原著
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癌と化学療法 40巻13号, 2525-2528 (2013);
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目的: われわれは以前,StageⅡ/Ⅲ大腸癌患者を対象とした無作為化比較試験(RCT)において,テガフール・ウラシル(UFT)と蛋白結合多糖体polysaccharide K(PSK)との併用療法がUFT 単独療法と比べ,5 年無病生存率を有意に改善し,再発リスクを軽減することを報告した。今回,本RCT より得られたデータを用い,患者を術前リンパ球比率(Lym)により層別化し,PSK の有効性を検討したので報告する。方法:本 RCT において,選択基準を満たした患者205 例(UFT/PSK群137 例,UFT 群 68 例)のうち,術前Lymデータが得られた患者193 例(UFT/PSK 群 131 例,UFT群 62 例)を対象に解析を行った。結果:術前Lymが 35%未満であった患者の無再発生存率(RFS)は,UFT/PSK 群 76.5%,UFT群で 55.8%であった(p=0.008)のに対し,術前Lymが35%以上であった患者のRFS では,2 群間に差はなかった。同様に,術前Lymが 35%未満であった患者の全生存率は,UFT 群よりも UFT/PSK 群のほうが有意に高かったが,術前 Lym が 35%以上であった患者においては,群間差は認められなかった。結論: StageⅡ/Ⅲ大腸癌患者において,術前 Lym の低値が PSK の応答性に関する優れた予測因子であることが示唆される。
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癌と化学療法 40巻13号, 2529-2533 (2013);
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セツキシマブ併用化学療法が標準治療として再現性のあるものなのか,当院の実臨床症例の治療成績を用いて検討した。対象は男性20 例,女性7 例,平均年齢63 歳。三次治療14 例,二次治療9 例,一次治療4 例であった。ライン別に奏効率(RR),無増悪生存期間(PFS),全生存期間(OS)を算出し,大規模臨床試験の成績と対比した。三次治療は12 例でCPT-11 との併用療法を施行し,CR/PR/SD/PD/NE 各々 0/2/2/9/1 例。RR 14.3%,PFS 2.9 か月,OS 9.6 か月で NCIC CTGCO. 17 試験と比較してほぼ同等であった。二次治療では FOLFIRI または IRIS との併用療法が施行され,CR/PR/SD/PD/NE 各々0/2/4/1/2 例。RR 22.2%,PFS 5.7か月,OS 7.1 か月であり,BOND 試験と比較して遜色なかった。一次治療では併用療法はmFOLFOX6とFOLFIRI が2 例ずつで,CR 0 例,PR 3 例,SD 1 例。RR は75%でCRYSTAL およびOPUS試験と比較して遜色なく,PR の1 例は治癒切除が可能となった。三次および二次治療では,標準治療の再現性が実臨床でも得られている傾向が確認できた。一次治療ではまだ症例数が少ないため今後の蓄積が必要であるが,治癒をめざす症例も含めて治療戦略の一つとして今後も積極的に選択してよい治療法であることが示唆された。
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癌と化学療法 40巻13号, 2535-2538 (2013);
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フルベストラントはアゴニスト作用をもたないpure antiestrogenであり,本邦では2011 年9 月に承認された。今回,本邦承認後に当院でフルベストラント療法(HD レジメン)を行った73 例を対象とし,複数の前治療歴を有するホルモン受容体陽性進行・再発乳癌に対するフルベストラント療法の臨床的治療効果,安全性,フルベストラント療法終了後の治療につき後方視的に検証を行った。前治療で用いられた内分泌療法のレジメン数の中央値は3 であった。臨床的治療効果は奏効率5.5%,臨床的有用率19.2%,無増悪期間中央値が2.8 か月であった。忍容性は高かったが,初期の症例に注射部位が原因と考えられるGrade 3 の神経症状を認めた。フルベストラント療法後の治療として内分泌療法が選択された12 例中3 例で奏効が得られていた。三次治療以降でのフルベストラント療法の治療成績の報告は少ないが,本検討からフルベストラント療法が三次以降であってもホルモン受容体陽性進行・再発乳癌に対する逐次的内分泌療法の選択肢として治療効果が期待できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 40巻13号, 2539-2543 (2013);
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目的: プラチナ製剤感受性再発卵巣がんに対するリポソーマル化ドキソルビシン(PLD)+カルボプラチン(CBDCA)(CD)療法の安全性・有効性について検討した。方法:プラチナ製剤感受性再発卵巣がんで,適格基準を満たした症例にPLD30 mg/m2とCBDCA AUC5 をそれぞれday 1 に投与し,28 日ごとに病状の進行や重篤な有害事象がみられない限り6 サイクルを目標に施行した。結果: 2010 年12 月〜2011 年6 月まで9 例に49 サイクルを施行した。Grade 3 以上の有害事象として白血球減少1 例,好中球減少4 例,貧血2 例,血小板減少2 例を認めたが,非血液毒性はみられなかった。治療効果は奏効率77.7%,無増悪生存期間中央値15.1か月,全生存期間中央値23.7 か月であった。結論:プラチナ製剤感受性再発卵巣がんに対するCD 療法は安全でかつ有効である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 40巻13号, 2545-2549 (2013);
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TZB の投与方法は,2011 年の公知申請の際に初回投与時に忍容性が認められれば,2 回目以降は点滴時間を30 分まで短縮することが可能となった。しかし,生理食塩水250 mL 希釈による30 分間投与は,点滴速度の上昇に伴う心血管系への負荷やTZB 特有の副作用であるinfusion reactionへの影響が懸念される。以上のことを考慮し,100 mL 希釈30 分投与への変更を検討した。投与方法の変更前後においてinfusion reaction の発現頻度をレトロスペクティブに評価したところ,infusion reaction の発現頻度が増えることなく,忍容性に問題なかった。さらに,点滴時間の大幅な短縮につながり,患者にとっても医療者側にとってもベネフィットにつながると考えられた。
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癌と化学療法 40巻13号, 2551-2554 (2013);
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化学療法に伴う悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting: CINV)は,がん化学療法において患者が最も嫌う副作用である。また,中等度催吐性抗がん剤は催吐頻度が幅広くアプレピタント使用の有無はオプションとしてのみ記載され具体的な提示はない。そこで今回,大腸がん症例においてMaltinational Association of Supportive Care in Cancer(MASCC)が開発した悪心・嘔吐評価ツールであるMASCC Antiemesis Tool(MAT)を用いて中等度催吐性抗がん剤のCINVの発現状況を明らかにした。その結果,5/32 例(15.6%)に嘔吐,22/32 例(68.8%)に悪心が出現し,その発現時期および悪心スコアを正確かつ簡便に知ることができた。本研究では,特に遅発性悪心が全例にみられることから現在のレジメンを見直す必要があることが示唆され,当院のがん化学療法レジメン審査委員会をとおして制吐剤のレジメン変更を行った。制吐剤変更後は,有意に急性・遅発性の悪心・嘔吐ともに改善が認められた。
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医事
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癌と化学療法 40巻13号, 2555-2559 (2013);
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広島県内で胃癌化学療法に特化した研究会(Hiroshima Oncology Group of Gastric Cancer: HOG-GC)の参加施設(76施設)に対して,2011 年1 月に胃癌術後補助化学療法に関するアンケート調査を行った。がん診療連携拠点病院および準拠点病院(以下,拠点病院)12 施設を含む29 施設(年間対象症例数405 例)から回答を得た。① S-1 の1 年間内服完遂症例の割合は全体の約75%の施設にて70%以上の症例で1 年間完遂されていた。②S-1 の初回投与量について約30%の症例で基準量よりも減量して治療が開始され,理由として高齢,PS不良,腎機能低下の割合が高かった。③ S-1 は4 投2休の標準レジメンは約半数の施設で開始されていたが,残りの半数弱の施設では最初から標準レジメンではないレジメンが採択されていた。④ 副作用などで減量・休薬は完遂率の低い施設でより頻繁に行われていた。⑤ 投薬中止理由では自覚症状と患者の希望による中止理由が大半を占め骨髄抑制などの他覚所見のために投与中止となった施設割合は少なかった。⑥ 完遂率の高い施設でIC のための補助ツールが必要とする割合が高かった。以上より術後補助療法を安易に中止しないための標準化された副作用対策や患者教育・薬薬連携も含めた体制作りが今後の課題と思われた。
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症例
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癌と化学療法 40巻13号, 2561-2563 (2013);
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症例は55 歳,男性。胸腺癌に対して胸腺・胸腺腫瘍摘出除を施行した(扁平上皮癌,pT3N0M0,Stage Ⅲ)。手術6か月後,癌性心膜炎のため入院。全身検索より,左大腿骨転移,多発肺転移,多発肝転移を認めた。心嚢ドレナージ後,左大腿骨転移に対しては放射線治療を行った。nedaplatin(NDP)/docetaxel(DOC)による化学療法を4 コース施行したところ,肺転移は消失,肝転移は著明な縮小を認め,治療効果はPR であった。肺扁平上皮癌に対してその有効性が報告されているNDP/DOC は,胸腺扁平上皮癌に対しても有効であり,治療選択肢の一つとなり得ると考える。
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癌と化学療法 40巻13号, 2565-2567 (2013);
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症例は85歳,女性。2008 年8 月,他院において左乳癌と診断されたが,手術不能と判断。認知症もあるため無治療で経過観察されていた。2010 年3 月,当院受診。左乳房に易出血性の5 cm径の腫瘤性病変を認めた。転移検索の結果,腫瘍は胸壁に浸潤し,腋窩,内胸リンパ節転移を認め,さらに左胸水,胸膜転移,骨転移を有する進行癌であった。針生検を施行し,乳管癌,ER(+),PgR(+),HER2(1+)と診断された。遠隔転移があるものの患者の全身状態は良好であり,治療の適応はあると考えletrozoleによる治療を開始した。治療はよく奏効し,投与開始後6 か月で原発巣は縮小,胸水も消失した。現在,治療開始から3 年が経過しているが,病変の増悪,新病変の出現を認めていない。ホルモン感受性がある高齢者進行乳癌には内分泌療法は有効な治療である。
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癌と化学療法 40巻13号, 2569-2571 (2013);
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患者は77 歳,女性。乳癌手術後5 年で骨,軟部組織に再発した。内分泌療法,続いて化学療法を逐次投与したが,再発治療開始8 年後に癌性胸水,背部皮膚に新病巣を認めた。皮膚生検ではER 強陽性,HER2 陰性,Ki-67 10%で,ex-emestane(EXE)(25 mg/day, po)を 3 か月投与後にethinyl estradiol(EE2)(3 mg/day, po)を開始した。4 か月でリンパ節は35%縮小,胸水減少し,奏効と判断した。効果は10 か月間継続したが,背部病巣の悪化を認め,fulvestrant(500 mg/body/4 week, im)に変更し,その後10 か月間継続している。EE2の副作用として悪心,全身倦怠を投与初期に,その後乳頭,乳輪の色素沈着,子宮頸部嚢胞性腫大を認めた。本療法は高度の薬物療法が行われたER 陽性再発乳癌に対して有効であり,新たな治療戦略と考えられる。
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癌と化学療法 40巻13号, 2573-2575 (2013);
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症例は82歳,男性。2000 年1 月,69 歳時に小腸GISTの切除術を施行された。2002 年6 月に播種性再発を認め,二度の手術を施行後,遺残した直腸周囲の病変に対しては,その後7 年間以上にわたりイマチニブ投与によるコントロールを行った。2011 年3 月にイマチニブ耐性化を認め,スニチニブ投与に治療を切り替えた。通常量(50 mg/日,28 日内服14 日休薬)より開始したスニチニブは有害事象や類天疱瘡の発症のため,2 回の減量の後休薬となった。休薬にて腫瘍増大を認め癌性疼痛が出現したため,スニチニブを12.5 mg/日,隔日投与という極めて低用量にて再開したところ,腫瘍縮小や疼痛消失など効果を得ることができた。若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 40巻13号, 2577-2579 (2013);
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症例は30 歳台,男性。腹痛と背部痛を主訴に受診した。腹部CTで腹腔内の腫瘍性病変を指摘され,小腸内視鏡検査で空腸腫瘍が明らかとなり,生検で低分化型腺癌と診断された。根治切除後,mFOLFOX6療法を行ったが,再発を来し再切除を行った。その後,irinotecan+cisplatin 療法を行うも,再発を起こし切除不能となった。組織検査でEGFR が高発現でKRASがwild-type であったため,panitumumabとS-1 を併用したところ,6週間後には画像上complete response(CR)を認めた。小腸癌は確立された化学療法もなく,予後不良とされている。分子レベルでの解析が進み,症例の集積や臨床試験が行われることを期待したい。
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癌と化学療法 40巻13号, 2581-2584 (2013);
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5-FU が原因と考えられる高アンモニア血症を来した切除不能大腸癌に対して,XELOX 療法を継続し得た1 例を経験したので報告する。症例は60 歳代,男性。食欲不振,体重減少で当院を受診し,Stage Ⅳの直腸癌と診断された。切除不能であり,XELOX 療法を導入した。2 コース終了時にcapecitabine の内服が困難との訴えがありmFOLFOX6 療法に変更したところ,2 日目に悪心・嘔吐,3 日目に意識障害が出現した。血液生化学検査で高アンモニア血症を認めたため,分枝鎖アミノ酸製剤投与を行い,翌日には症状は改善した。その後は再度XELOX 療法を施行し,現在も継続中である。
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癌と化学療法 40巻13号, 2585-2587 (2013);
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直腸癌術後の局所再発は比較的頻度の高い再発形式ではあるが,ほとんどが5 年以内に再発を来す。今回われわれは,初回手術より10 年を経て局所再発した直腸癌症例を経験したので報告する。症例は60 歳台,男性。2000 年に他院で下部直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行。病理組織学的診断は中分化腺癌で,Rb,A,ly2,v2,N0,H0,P0,M0,StageⅡ,curA であった。術後補助化学療法後,経過観察していたが2010 年にCEA の上昇を認め,PET-CT にて骨盤内に異常集積を伴う長径40 mmの腫瘍を指摘。局所再発の診断で,再発病変に対して経会陰的に摘出術を施行。病理組織学的診断は中分化腺癌で,初回手術後の再発を示唆するものであり,切除断端は陰性であった。自験例では,再発巣切除後,補助化学療法を行うことなく2 年6 か月経過した現在も無再発生存中である。直腸癌術後の局所再発は比較的頻度が高く,その多くは術後3 年以内に再発を来す。自験例のように,初回手術から10 年以上を経て局所再発を来す症例は非常にまれであり,その腫瘍の悪性度は低いものと推測される。このような症例に対しては,切除可能であるならば積極的に外科的治療を行うことが望ましいと考えられる。
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癌と化学療法 40巻13号, 2589-2592 (2013);
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症例は45 歳,女性。2012年1 月より血性帯下,過多月経を認め,4 月に当院産婦人科受診。MRIにて子宮頸部にT1で低信号,T2 で中等度の信号を示す f11 cm の腫瘤と多数の骨盤内リンパ節腫脹を認め,PET/CT で同部位に強い集積を認めた。子宮頸部細胞診はclass Ⅴで,経膣的生検では中〜大型単核球の浸潤を認め,CD20,CD79a 陽性,CD3,CD5,EBER 陰性であった。骨髄浸潤は認めなかった。びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,病期ⅡAE と診断した。R-CHOP療法8 コース終了後,完全寛解を維持している。子宮頸部原発悪性リンパ腫は節外性リンパ腫の0.5%とまれである。
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癌と化学療法 40巻13号, 2593-2597 (2013);
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症例は80 歳,男性。汎血球減少のため当院へ受診となった。骨髄穿刺で3 血球系の異型を認め,染色体分析で5q13q31 の単独欠失を呈したことから5q−症候群の診断となった。lenalidomide を開始したが,2 コース目にStevens-Johnson 症候群を併発して血液学的改善は得られなかった。その後汎血球減少が進行し,RAEB-2 の診断となった。azacitidine療法を施行したところ,細胞遺伝学的奏効が得られた。
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医事レポート
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癌と化学療法 40巻13号, 2599-2602 (2013);
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外来でのがん化学療法は,時間的な制約の観点から患者-医療者間のコミュニケーションが希薄になりやすく,副作用の把握が難しい。副作用の発現状況を正確に得るには患者からの情報が重要である。今回われわれは,患者参加型の副作用モニタリングを導入し,アンケート調査によってその有用性を検討した。その結果,本モニタリングの導入により,① 患者自身が治療への参加意識が持てる,② 副作用の発現パターンと対処方法を獲得することができる,③ 患者-医療者間のコミュニケーションが促進され,信頼関係が構築されることが明らかとなった。以上より,外来がん化学療法における本モニタリングの導入は有用であると考えられた。