癌と化学療法

Volume 42, Issue 7, 2015
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総説
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肝癌に対する局所療法(経肝動脈治療と腫瘍穿刺治療)の変遷
42巻7号(2015);View Description
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肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)の局所療法として,肝の血流特性(dual supply)とHCC の腫瘍特性(多血性)に基づいた経肝動脈治療と,HCC の腫瘍形態(限局性,結節型)に基づいた腫瘍穿刺治療がある。経肝動脈治療のなかで肝動注療法は1960年代に始まり,肝動脈へのカテーテル留置は初期の開腹下に外科的に留置する方法から1990 年代にIVR 法になった。1980 年代の皮下埋め込み式リザーバーの開発により患者のQOL は向上し,在宅での持続動注が可能となった。肝動脈結紮術は1970年代前半に広く行われたが,1970 年代後半の肝動脈(化学)塞栓療法[transarterial(chemo)embolization: TACE]出現以来,ほとんど行われなくなった。肝動脈をより末±で阻血するTACE はその強力な抗癌効果により,手術不能例はもちろん,術前の補助療法や術後の再発例に対する治療法として広範囲に行われたが,腫瘍穿刺治療の出現により,その守備範囲は狭まった。TACEの基本形となっているリピオドール併用TACE は,現在,多発HCC の第一選択治療となっている。一方,早期の小HCC に対して腫瘍内に無水エタノールを注入し,腫瘍を壊死させる経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy: PEIあるいはPEIT)が日本で1983 年に開発された。小HCC に対する低侵襲治療として世界中に普及したが,被膜や隔壁の存在例や中低分化型HCC に対して局所再発率が高かった。1990 年代になってPEI の欠点を覆うべく,マイクロ波やラジオ波の熱凝固により腫瘍を壊死させる,マイクロ波凝固療法(microwavecoagulation therapy: MCT)やラジオ波凝固療法(radiofrequency ablation: RFA)が開発された。RFAはMCT に比し焼灼範囲が広く,3 cm以下3 個以内のHCC に対して外科切除と並んで推奨される治療となっている。現在,小HCC に対して切除とRFAの遠隔成績を比較するRCT が進行中である。
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特集
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- がん患者のリハビリテーション
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がんによる運動機能障害とリハビリテーション
42巻7号(2015);View Description
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がん治療の進歩は著しく,がん治療後の5 年生存率は50%を超えるようになっている。このため,がん罹患後の生存者数は大幅に増加している。しかし,がんは生命に影響を与える重大な疾患であることに変わりはなく,がんの進行やがん治療によって患者には様々な障害を生じることがある。がんによる障害の代表的なものに運動機能の障害がある。これは患者の日常生活動作能力を低下させ,在院日数を延長し,家族の介護負担増につながる問題となる。運動機能を改善し,活動性を向上するためには適切なリハビリテーション(リハ)の実施が必要である。近年ではがんのリハに関する報告も増加しつつある。それを活用して日本リハビリテーション医学会から,「がんのリハビリテーションガイドライン」が2013 年に発行された。しかし,がん患者のリハプログラムは必ずしも容易ではない。その全身状態や障害像は複雑であり,経過とともに変動することもある。がん患者のリハプログラムの際には,障害の重症度や予測される生命予後,合併症のリスクなど様々な要素を考慮に入れる必要がある。特に骨転移は練習や活動性の向上により骨関連事象のリスクも上昇するため,最も大きな問題となる。このため,リハによるメリットとリスクを考慮することが必要である。今後,がんのリハの質がより向上するためには,この分野の高い専門性をもった医師や療法士の育成が必須である。 -
嚥下・発声障害
42巻7号(2015);View Description
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頭頸部がん,食道がん,脳腫瘍患者において嚥下障害がしばしば問題となる。舌がん患者では口腔期の障害が起こりやすい。一方,咽頭がん,喉頭がん,食道がん患者では咽頭期の障害が起こりやすい。嚥下障害に対しては嚥下造影検査などの評価に基づき,間接訓練,直接訓練,代償手段の検討,歯科補綴装置の検討などを行う。喉頭全摘後は電気式人工喉頭,食道発声,シャント発声といった代用音声(無喉頭発声)訓練を施行する。 -
がん患者と呼吸リハビリテーション―非周術期を中心に―
42巻7号(2015);View Description
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がん患者の呼吸困難は半数以上に認められ,強い苦痛を伴う場合が多い。日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)の改善を目的とし,呼吸困難という苦痛を緩和するために,呼吸リハビリテーションの重要性は増している。現状では,呼吸リハビリテーションは主に周術期に行われているが,化学療法・放射線治療中およびその前後の患者,進行がん・末期がん患者への有効性が認められてきている。今後は,エビデンスの高いがんリハビリテーションの実現が必要である。 -
がんと栄養障害
42巻7号(2015);View Description
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医食同源という言葉があるように,健康および疾病と栄養との関連は古くから指摘されてきたが,その医学的根拠や定量的かつ正確な評価はなされてこなかった。特に,がんに関してはその本体が明確でないことがあり,がんと栄養との関連を追及した研究はあまり多くない。しかし,近年がんの栄養障害,特にがん悪液質(cancer cachexia)についての病態生理学的な理解が深まり,がん患者に対し適切な栄養サポートを行うことで栄養不良の進展を遅らせ,抗がん治療への耐用性向上が可能なものとなってきた。一方,がん終末期不可逆的な悪液質に至り栄養が生体にとって負担となる場合には,輸液・栄養管理の負荷の軽減,いわゆる「ギアチェンジ」を行い,投与する栄養を制限し残された身体機能を維持する治療に変更することの重要性も指摘されるようになってきている。
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Current Organ Topics:Head and Neck Tumor 頭頸部腫瘍
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原著
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日本人閉経後ER 陽性進行・再発乳癌に対する選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター「フルベストラント」の有効性と安全性に関する検討
42巻7号(2015);View Description
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フルベストラントは,エストロゲン受容体(ER)に結合して抗エストロゲン作用を示すだけでなく,ER を分解してダウンレギュレートする作用を併せもつ新規ホルモン療法剤である。今回,閉経後ER 陽性進行・再発乳癌69 例を対象に,フルベストラント500 mg の有効性と安全性をレトロスペクティブに検討した。その結果,奏効率は24.6%,臨床的有用率49.2%,無増悪生存期間(PFS)中央値203 日,全生存期間中央値794 日と良好な成績であった。また,PFS は前治療歴や臓器転移のないサブグループで延長傾向が認められた。主な有害事象は,注射部位反応,ほてりなどであり,ほとんどは軽度〜中等度であった。フルベストラント500 mgは,日本人閉経後ER 陽性進行・再発乳癌患者に対しても良好な効果と安全性を有することに加え,特に前治療レジメン数が少なく臓器転移なしの症例で,より有用である可能性が示唆された。
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医事
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トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合錠の有効性および安全性の初期評価―薬剤師外来を含めたチーム医療による安全対策について―
42巻7号(2015);View Description
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2014 年5 月にトリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合錠(ロンサーフ®配合錠)は,治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して世界に先駆け日本で販売された。新たな治療選択肢として有用性が示されている一方で,適正使用および安全性確保を図るために製薬会社より医療関係者に安全対策への協力が求められている。今回,当院において本剤を導入した患者16 例を対象として有効性および安全性の評価を行った。大腸癌取扱い規約(第8 版)の効果判定基準ResponseEvaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)ガイドラインで評価可能な4 例の解析ではCR 0 例,PR 0 例,SD 1 例で病勢コントロール率25.0%であった。三次治療以降で使用する保険適応のため,16 例のうち三次治療9 例,四次治療6 例,五次治療が1 例であった。そのためGradeの高い副作用を懸念していた。Grade 3 以上の好中球減少が7/16 例(43.8%)と高頻度に認められたが,その他の有害事象含め,この薬剤に関連した治療中の副作用での入院例はなく全例外来治療可能であった。薬剤師の医師への提案は121/126件(96.0%)が採択され,副作用に対する支持療法施行後はすべて改善を認めた。 -
再発卵巣癌に対するノギテカンの使用例の報告
42巻7号(2015);View Description
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ノギテカン塩酸塩(ノギテカン)は再発卵巣癌に奏効を示す薬剤として期待されている。しかし,日本ではノギテカンが広く使用されているとはいえないのが現状である。当科で2000〜2013年にノギテカンを使用した12 症例において,治療効果と有害事象について検討した。4例が初回再発で7 例が前治療として3 レジメン以上の化学療法が行われていた。ノギテカンの初回投与量は 1.0〜1.4 mg/m2の5 日間連続投与に設定した。前治療歴や腎機能に応じて投与量は減量した。総投与回数は1〜15コースで全54 コースであった。治療効果はPR 1 例,SD 6 例であった。無増悪期間の中央値は14.4 週であった。有害事象として全例にgrade 3〜4の骨髄抑制を認めたが,発熱性好中球減少は1 例も認めなかった。前治療が多いほど重篤な骨髄抑制を認めていた。骨髄抑制以外の有害事象でgrade 3 以上のものは認めなかった。ノギテカンを使用する際には投与量を症例の状況に応じて減量すること,再発のなるべく早い段階での使用が有効かつ安全な使用方法であると考えられた。
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薬事
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胸部悪性腫瘍患者におけるシスプラチン(CDDP)後発品の安全性の評価
42巻7号(2015);View Description
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抗がん剤においてシスプラチン(CDDP)は固形がん治療のキードラッグである。そのため,先発品と後発品の有害事象の差が治療に影響を及ぼす可能性があることから,CDDP 後発品の安全性を検討する必要がある。今回,高用量CDDP(60mg/m2以上)を含むレジメンを実施した胸部悪性腫瘍患者500 例でのCDDP 先発品と後発品の有害事象発現状況,特に腎障害について検討した。両群投与前後での血清クレアチニン値の相関係数の同等性を比較した結果,有意差は認められなかった(先発群vs 後発群: 0.610 vs 0.644,p=0.528)。さらに,両群間で男女別,術後補助化学療法患者別に分類し,相関係数の同等性を比較した結果でも有意差は認められなかった。また,その他の有害事象にも差は認められず,薬剤間の有害事象における特徴は同様と考えられた。以上のことより,CDDP後発品は臨床上先発品と同様に使用できると示唆された。 -
A Study on Drug Interaction between Warfarin and Capecitabine with Special Reference to the Co-Administered Term or the Discontinuation Term of Capecitabine
42巻7号(2015);View Description
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カペシタビン併用および中止後(休薬期間中)におけるワルファリンの抗血液凝固作用の変化,すなわち作用期間および程度を評価するためにprothrombin time international normalized ratio(PT-INR)を用い,併用投与した症例を回顧的に調査した。対象は7 症例(4施設)であり,カペシタビン併用後,全例でPT-INRは上昇した。また,PT-INR最高値に達するまでに平均31.3 日を要し,併用前と比べ,PT-INR 値は平均して約3 倍に増加(p<0.05)した。一方,カペシタビン中止後,カペシタビン開始前に得られていたPT-INR値へ改善するには,平均15.1 日すなわち約14 日(約2 週間)要した。以上,カペシタビンは併用期間のみならず,中止後においてもワルファリンの抗血液凝固作用へ影響が持続する可能性が示唆された。さらにカペシタビン中止後,その開始前に得られていたPT-INR値へ改善するには,少なくとも約14 日間持続することが示されたことから,特にこの期間中は相互作用を十分考慮して注意深く血液凝固能をモニターする必要が示唆された。 -
表計算ソフトを用いた乳癌薬物療法における薬剤費計算ツールの開発
42巻7号(2015);View Description
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がん患者にとって薬剤費は,治療継続にかかわる重要な因子であると考えられる。しかし,個別の薬剤費を計算するのは困難であり,われわれは薬物療法を開始する患者に薬剤費に関する情報提供を十分に行えていなかった。この問題を解消するために,電子カルテ端末上で起動する乳癌薬物療法の薬剤費計算ツールを作成した。このツールの有用性を検証する目的で,架空の10 名の患者セットを作成し,5 名の薬剤師がA法(ツールを使用せず)とB 法(ツールを使用)を用いて薬剤費の計算を行った。まず,それぞれの患者に対して1 レジメンの計算を行い,A法とB 法で計算に要した時間を比較した。次に,それぞれの患者に対して3 レジメンの計算を行い,同様の比較を行った。1 レジメンの計算では,B 法(22.6±6.9秒)がA 法(145.2±28.3秒)より6.4倍速く計算することが可能であった(p<0.0001)。3 レジメンの計算では,B 法(35.5±5.0 秒)がA法(315.8±43.1秒)に比べ,さらに顕著に速く計算することが可能であった(8.9倍,p<0.0001)。われわれが開発したツールを使用すると,より短時間で薬剤費の計算が可能となり,医療スタッフの負担が軽減されると考えられた。
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症例
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肺腺癌に対するGefitinib投与中に発症した腸管囊腫様気腫症の1 例
42巻7号(2015);View Description
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症例は71 歳,男性。骨転移,脳転移を伴う肺腺癌に対して,2 年 5 か月前よりgefitinib(250 mg/日)を連日投与され,安定(stable disease: SD)を維持中に腹痛,下痢,嘔吐を発症した。腹部骨盤造影CT 検査を施行すると小腸壁内ガス像,腹腔内遊離ガス像,中等量の腹水を認め,腸管囊腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis: PCI)の診断となった。バイタルサインが安定し,腹部理学所見で腹膜炎を疑う所見がみられなかったため,gefitinib を休薬して保存的に治療を開始した。自覚症状は徐々に改善し,治療開始7 日後の腹部骨盤造影CT 検査では画像所見も著明に改善した。 -
S-1隔日投与とLetrozole併用が著効した乳癌胃転移の1 例
42巻7号(2015);View Description
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症例は62 歳,女性。食思不振,嘔吐を主訴に受診し,上部消化管内視鏡検査,CT 検査,組織診検査にて胃転移を伴うestrogen receptor(ER)陽性,human epidermal growth factor receptor 2(HER2)陰性,浸潤性小葉癌と診断された。通過障害に対してステント留置後S-1 隔日投与とletrozole 併用を行ったところ著効し,1 年以上にわたりPR を維持している。ER 陽性・HER2 陰性乳癌に対してS-1 とletrozole の併用は有望な選択肢であり,かつS-1 隔日投与はさらに有害事象を抑えることでperformance status(PS)が低下した進行例でも安全に施行できる有用かつ継続可能な治療法と考えられる。 -
抗凝固療法が奏効した食道癌化学療法中の右内頸-上大静脈感染性静脈血栓症
42巻7号(2015);View Description
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症例は63 歳,女性。食道癌(Mt T4N2M0,c-Stage ⅢC)と診断され,加療目的にて当科紹介となった。術前化学療法として5-FU+CDDP(FP)を施行したところ,1 コース終了後15 日目より40℃の発熱を認めたため,中心静脈カテーテル感染症を疑いカテーテル抜去し,抗生剤cefepime(CFPM)を開始した。発熱は持続し,右頸部から前胸部にかけ腫脹が出現したため,精査目的にて頸胸部造影CT 検査を施行したところ,右内頸静脈から上大静脈にかけ血栓形成を認めた。血液培養よりStaphylococcus hominisを認めたため,感染性静脈血栓症の診断となった。ヘパリン療法にて血栓の縮小を認めたため,抗凝固療法を持続しながら化学療法,放射線療法や手術を行ったが,静脈血栓症の再発は認めなかった。今回われわれは,化学療法施行中に発症した右内頸-上大静脈感染性静脈血栓症を経験したが,抗凝固療法により再燃など認めず治療を継続し得た症例を経験した。 -
胃原発の悪性黒色腫に対して集学的治療を行った1 例
42巻7号(2015);View Description
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症例は61 歳,女性。つかえ感を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査で胃噴門部隆起性病変を認めた。生検で悪性黒色腫診断となった。腹部骨盤部CT 検査所見では肝外側区域,横隔膜脚に直接浸潤を認めていた。肝外側区域・横隔膜脚合併切除を伴う胃全摘術,D2 郭清,Roux-en-Y法再建を行った。術中洗浄細胞診が陽性であることから,ダカルバジン単剤療法と,ダカルバジン,ニムスチン,シスプラチン,タモキシフェンによる多剤併用療法(DAC-Tam療法)を術後に施行した。術後第146 日目に癌性腹膜炎により原病死した。胃原発の悪性黒色腫はまれであり,非常に予後不良とされている。本症例は発症時から高度進行状態であり,集学的治療を行ったが十分な遠隔成績は得られなかった。 -
肝細胞癌術後再発に対してSorafenib少量投与を行い長期間Stable Diseaseとなった2 症例
42巻7号(2015);View Description
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症例1: 64 歳,男性。C 型慢性肝炎からの肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)に対して局所治療反復後,肝右葉の3 か所のHCC に対して2012年4 月に肝右葉切除を行った。残肝多発再発に対して肝動脈化学塞栓療法(transcatheterarterial chemoembolization: TACE)施行後,腫瘍増大に対し 11 月から sorafenib 200 mg/day を開始した。200 mg/day と少量にもかかわらず全身×怠感が強く200 mg 隔日投与に変更したところ,投与継続が可能となり長期間(6 か月以上)のstable disease(long-term stable disease: long SD)となった。症例2: 75 歳,男性。HCC のため肝S6 切除後に肝右葉に多発再発。TACE を繰り返していた。2008 年1 月胸椎転移に対して放射線療法,12 月に左肋骨転移に対してラジオ波凝固療法(radiofrequency ablation: RFA)を行った後sorafenib 400 mg/day を開始した。下痢,高血圧,全身×怠感などで400 mg/dayを維持できず,減量,中断を繰り返しながらもsorafenibの少量投与(200 mg/day 以下)を継続した結果,longSD が得られた。HCC術後再発に対して少量のsorafenibを用いてlong SDとなった2 症例を経験した。 -
骨転移を有する大腸癌加療中に発症したFanconi症候群の1 例
42巻7号(2015);View Description
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症例は60 歳台,女性。S 状結腸癌,多発骨転移と診断し,化学療法およびゾレドロン酸投与を施行した。経過中,電解質異常,尿所見の異常を認め,ゾレドロン酸が原因のFanconi症候群と診断した。薬剤中止により電解質,尿所見は正常化した。大腸癌に関しては化学療法を継続可能であり,完全奏効が得られた。大腸癌骨転移例に対して投与したゾレドロン酸が原因となったFanconi症候群を経験したので報告する。 -
レゴラフェニブを80 mgから導入し5 か月間奏効したPS 3再発大腸癌症例
42巻7号(2015);View Description
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症例は59 歳,女性。盲腸癌術後10 年目に脾,肺転移で再発した。5-FU/LV,オキサリプラチン,イリノテカン,ベバシズマブ,抗EGFR 抗体薬による2 年3か月の治療後,多発骨転移と副腎転移も出現してperformance status(PS)3 となった。レゴラフェニブを80 mg/日で開始したところ,2 コース目からPS 2 に改善し,120 mg/日に増量して5 か月間治療が継続できた。レゴラフェニブは開始初期に強い有害事象が出現する傾向がある。標準量での開始が原則であるが,減量して導入し,有害事象が落ち着いたところで増量することにより,比較的状態の悪い患者にも治療対象を広げられる可能性がある。 -
パニツムマブの単独療法導入が奏効した門脈内腫瘍栓合併直腸癌の1 例
42巻7号(2015);View Description
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症例は66 歳,男性。肝門部に及ぶ門脈内腫瘍栓を合併した進行直腸癌であったが,サブイレウスを来していたため,腹会陰式直腸切除術を施行した。KRAS 遺伝子野生型であり,術後パニツムマブ単剤にて治療を開始した。2 か月後に腫瘍マーカーが正常化し腫瘍縮小効果がみられていたため,補助的にカペシタビンを併用し,12 か月でパニツムマブをいったん休止した。26か月現在,カペシタビンのみを継続しPRで経過している。一般に予後不良とされる門脈内腫瘍栓に対して,パニツムマブ単剤投与が著効した1 例を経験した。 -
再発卵巣癌化学療法中に発症したニューモシスチス肺炎の1 例
42巻7号(2015);View Description
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症例は53 歳,女性。卵巣明細胞癌再発例に対し,初回治療から4 レジメン目にliposomal doxorubicin単剤化学療法を開始し,4 サイクル目のday 28 に,39℃台の発熱と咳嗽が出現した。胸部CT にてびまん性すりガラス陰影を認め,画像からは薬剤性間質性肺炎も疑われたが,b-D-glucan 高値のためニューモシスチス肺炎と診断した。ST 合剤とamphotericin Bを投与したところ著効し,自覚症状ならびに画像所見も改善した。ニューモシスチス肺炎は日和見感染であり,強力な免疫抑制療法時やHIV感染者,臓器移植患者のみならず,抗癌剤による化学療法時にも発症するリスクがある。癌化学療法中の肺炎をみた場合,本疾患も鑑別診断にあげることが肝要である。 -
Carboplatin過敏性反応を有する再発卵巣癌にGemcitabine+Nedaplatin併用療法が奏効した1 例
42巻7号(2015);View Description
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症例は57 歳,女性。2 経妊1経産。卵巣癌Ⅳ期の診断で手術を施行するも完全切除は不可能で,術後paclitaxel(PTX)+carboplatin(CBDCA): TC 療法を6 サイクル施行しcomplete response(CR)となった。platinum free interval(PFI)20か月で再発し,再度TC 療法を施行するも2 サイクル目のCBDCA 投与で過敏性反応を認め投与中止した。PTX+nedaplatin(NDP)へレジメンを変更,計6 サイクル施行しCR を得た。その後PFI 8 か月で再再発。third-lineとしてgemcitabine(GEM)+NDP: GN 療法を6 サイクル施行しCR を得られた。発生した有害事象はgrade 2 の白血球減少のみであった(CTCAE v4.0)。CBDCA過敏性反応を示したプラチナ感受性再発卵巣癌に対するGN 療法の有用性が示唆された。
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短報
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オキサリプラチンの末*静脈投与における血管痛発現に関する因子の探索
42巻7号(2015);View Description
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We investigated the relationship between vascular pain and various characteristics (age, sex, cancer stage, performance status[PS], height, weight, body mass index [BMI], body surface area, oxaliplatin dose, and presence and absence of the initial administration of dexamethasone)in colorectal cancer patients who were administered initial doses of oxaliplatin intravenously. The study population included 29 patients treated at Higashi Totsuka Memorial Hospital between June 2010 and April 2014. One-way analysis of variance showed that vascular pain was significantly associated with weight(p=0.015), body surface area(p=0.013), and oxaliplatin doses(p=0.0026), where the significance level was p=0.05. Logistic regression analysis and the likelihood ratio test demonstrated that the likelihood of vascular pain increased with the increase in the oxaliplatin dose. According to the cut-off value of vascular pain determined using the receiver operating characteristic (ROC)analysis, a single dose of oxaliplatin was determined to be 175 mg or more. According to the cut-off value established using the ROC analysis, a single dose of oxaliplatin at which vascular pain is expressed was determined to be 175 mg or more. At this dose, 13 patients complained of vascular pain and 8 did not. At doses less than 175 mg, none of the 8 patients complained of vascular pain. These results suggest that lowering the diluted concentration and reducing the infusion rate of intravenously administered oxaliplatin may reduce vascular pain.
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