Volume 42,
Issue 12,
2015
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特集 【第37回 日本癌局所療法研究会】
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癌と化学療法 42巻12号, 1451-1453 (2015);
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肝内胆管癌,膵癌,胆道癌などの難治癌の根治切除後に生じた再発巣の治療は,原発巣切除よりさらに難しい。当院では,肝胆膵難治癌の根治切除後に胸・腹部CT 検査をそれぞれ年3 回程度行い,肝内などの小結節出現に注視している。小結節発見後すぐに切除するのではなく,原則3〜6か月程度観察し,転移巣が増大傾向にあること,多発していないこと,他臓器病変がみられないことを確認して転移巣切除に踏み切っている。ただし単発の1 cm 以上の結節はこの限りでなく,直ちに切除の適応を検討している。当院で術後肝転移切除を経験した肝内胆管癌1 例,胆嚢癌1 例,膵癌の2 例について検討した。原発巣切除後肝転移出現は3〜17か月で,肝転移切除は14〜18か月に施行,肝切除後の生存期間は22〜45か月(中央値>25 か月)であった。注意深く手術適応をしぼることにより,比較的良好な結果が得られた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1454-1456 (2015);
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膵癌根治切除後の再発病巣に対して外科的切除を行った10 例を対象とし,原発巣切除から再発までの期間(無再発期間),再発部位と再発病巣切除後の経過について検討した。無再発期間が1 年を超える4 例の再発部位は残膵3 例および肺1例であり,これら4 例のなかで再々発を来した症例は1 例(残膵切除後の肺転移)のみであった。他病死した1 例を除く3 例では,再発病巣切除後3 年以上の生存が得られていた。一方,無再発期間が1 年以内であった6 例の再発部位はいずれも腹部(残膵を除く)であり,全例で再々発を認めた。このうち5 例が再発病巣切除後1 年以内に再々発を来し,4 例が2 年以内に原病死していた。膵癌根治切除後の残膵および肺転移再発は無再発期間が長く,また再発巣切除後の予後が比較的良好であることから,外科的治療の対象となり得ると考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1457-1459 (2015);
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目的: 胸部食道癌に対する標準治療は,StageⅠでは手術単独もしくは放射線化学療法(salvage CRT),StageⅡ/Ⅲでは5-FU+CDDP(FP 療法)による術前補助化学療法+手術治療である。術後再発症例に対して根治性が期待できるsalvage治療は明らかになっていない。そこで,当院において食道癌根治切除後に局所リンパ節再発を来したが,salvage CRTを行い長期生存が得られた1 例について報告する。症例: 69 歳,女性。経過:進行食道癌にて他院より紹介となり,2005 年5月右開胸食道亜全摘術を施行した。Lt,type 2,T3N1M0,Stage Ⅲであった。術後1 年4か月で右鎖骨上リンパ節再発を来した。局所60 Gy 照射とFP 療法を施行したところCR が得られた。その後,7 年5 か月間無再発生存中である。考察:食道癌根治切除後の再発症例の予後は厳しいと思われるが,salvage CRT により長期生存が得られた1 例を経験した。今後,多施設からの症例の蓄積によって,食道癌切除後再発症例に対する治療の解明が望まれる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1460-1462 (2015);
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症例は83 歳,男性。2013 年6 月,他院にて胃全摘術を施行(T3,N1,M0,P0,M0,stage ⅡB)。術後5 か月目に肝転移を指摘され,S-1 やbi-weekly CPT-11 投与を受けたが腫瘍縮小効果は一時的であったため,肝転移巣の治療目的で当院に紹介受診となった。画像検査では腫瘍濃染を有する長径約9 cm の孤立性腫瘍であったため,手術54 日前にDSM 900mg+mitomycin C 2 mg による肝動脈塞栓化学療法(TACE)と 5-FU 6,000 mg/week による高用量の肝動注化学療法(HAI)の併用療法を行い,肝切除術を施行した。術後の病理組織診断では,門脈腫瘍栓を伴う転移性腺癌で切除断端は陰性であった。術後補助化学療法としてpaclitaxelを2 コース(Grade 3 の神経障害により投与中止)施行。肝切除術後8 か月経過した時点で,明らかな再発は認めていない。術後の観察期間は短いが,本症例のような腫瘍濃染を有する胃癌術後の肝転移に対してTACE/HAIの併用療法が有用である可能性がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 1463-1465 (2015);
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S-1+cisplatin(CDDP)による進行胃癌に対する術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)について検討した。2000〜2015年までにS-1+CDDP によるNACを施行後,根治切除し得た進行胃癌16 例を対象とした。適応はbulky N2またはN3 転移を有する,またはT4a 以上の進行胃癌とした。原則2 コース投与後に画像評価し,手術とした。Grade 3以上の有害事象は7 例(43%)に認めた。奏効評価はPR が13 例(81%)であった。病理組織学的効果はGrade 0 が8 例(50%),1a 以上が8 例(50%)であった。術後1 年以内の再発死4 例,5年以上の無再発生存が7 例であった。無再発生存症例は組織学的効果がすべてGrade 1a 以上,1 年以内に再発死した症例はGrade 0 が3 例(75%)であった。S-1+CDDP によるNAC は進行胃癌に対して非常に有用であり,組織学的効果判定は予後予測に有用であると考えた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1466-1468 (2015);
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はじめに:進行胃癌において腹膜播種は最も頻度の高い転移再発形式である。当科における胃癌腹膜播種症例に対するS-1+シスプラチン療法(SP療法)の治療成績について検討する。対象: 2011 年9 月〜2013 年12 月の間に当科にて審査腹腔鏡検査を行った90 例のうち,病理組織検査にて腹膜播種病変を認め,first-lineとしてSP療法を使用した16 例について,その効果および予後について検討を行った。結果: SP療法開始後,CT にて増悪を認めなかった10 例に対しセカンドルックを行った。P 消失率44%,CY 消失率は38%であった。P0CY0症例5 例に対し根治手術を施行し,P0CY1症例1 例に非根治(R1)手術を施行した。腹膜播種症例に対するSP 療法の生存期間中央値(MST)は571 日であった。胃切除に至った6 例のMSTは748日であり,非切除例(MST 380日)よりも有意に長かった。考察:腹膜播種病変を有する胃癌に対しSP療法は有効であり,腹膜病変が奏効した症例に対する胃切除術の導入は考慮すべき治療戦略であると考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1469-1471 (2015);
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根治的化学放射線療法後の遺残・再発例に対するサルベージ胸腔鏡下食道切除術の治療成績と生存率を検討した。対象は2014 年4 月までにサルベージ胸腔鏡下食道切除を適応した27 例を用いた。8 例がCR 後の再発例で,19 例が遺残例であった。開胸移行は2 例であった。手術時間340(胸部125)分,出血量は330(胸部100)mLで,郭清リンパ節個数は18個であった。術中に重篤な合併症はなく,24 例でR0手術が可能であった。術後合併症は15 例(56%)に発症し,縫合不全が11 例と最も多かった。肺炎は3 例に発症したが,気管壊死や在院死亡例はなかった。全例の5 年生存率は40.4%で,R0例はR1,R2 例に比べて有意に予後良好であった。サルベージ胸腔鏡下食道切除術は鏡視下食道切除術に習熟した施設では安全に施行可能であるが,開胸への移行も常に考慮する必要がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 1472-1474 (2015);
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症例は60 歳,男性。2 か月前からの便の狭小化と血便を訴え2010 年7 月に近医を受診。下部消化管内視鏡検査を施行された際に止血困難な腫瘍出血を来し,同日当院へ緊急入院となった。下部消化管内視鏡で肛門縁から7 cm に全周性のtype 2 の直腸癌(tub2)を認めた。胸腹部造影CT,骨盤部造影MRIで腫瘍の仙骨前面への浸潤を疑わせる所見を認め,進行直腸癌cT4b,cN0,cM0,H0,P0,cStageⅡ(UICC TNM分類第7 版)の診断となった。術前化学放射線療法(NCRT)の方針とし,mFOLFOX6を3 コースと全骨盤照射を併用した。NCRT 終了から46 日後に超低位前方切除術,D3郭清,両側側方郭清術,回腸人工肛門造設術を施行した。切除標本の病理診断はpathological complete response(pCR)であった。術後32日目に退院,術後4 年9か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1475-1478 (2015);
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局所進行直腸癌に対する集学的治療として,術前照射療法(RT)および術前化学療法(C)の治療効果の相違を評価した。RT 群は42.6 Gy 照射後手術とした。C 群は,mFOLFX6/XELOX+bevacizumabを 3 か月施行後手術とした。RT 群43 例とC群16 例を分析した。RT 群は全例Rb 中心で,術前T3 massiveが主体であった。C 群はRb 9 例,RaやRs を主座が7 例で,T4b 主体であった。深達度,リンパ節転移,腫瘍径においてC 群がRT 群よりも進行していた。組織学的効果判定では,RT 群(Grade 1a: 7 例,Grade 1b: 10 例,Grade 2: 24 例,Grade 3: 2 例)が,C 群(Grade 1a: 10 例,Grade 1b: 4 例,Grade 2: 1 例,Grade 3: 1 例)よりも有効であった。画像による腫瘍径縮小率はRT 群36.5±17.2%,C 群28.7±18.7%。CEA 減少率は,RT 群47.2±28.2%,C 群45.2±27.8%であった。局所進行直腸癌に対する術前化学療法は,主病巣への効果は術前放射線療法に劣るものの,全身療法として,より進行した骨盤内臓器浸潤例や側方リンパ節転移例などのR0 手術をめざす治療法として期待される。
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癌と化学療法 42巻12号, 1479-1481 (2015);
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症例は67 歳,男性。肝胆道系酵素の上昇を認め当院受診。CT で肝門部胆管癌(Bismuth typeⅣ),右肝動脈浸潤,門脈左枝浸潤の診断であった。局所進行治癒切除不能と判断し,胆道ステント留置後にgemcitabine(GEM)+S-1 療法を計5コース行った。化学療法後CT で腫瘍は著明な縮小を認め,切除可能と判断し,拡大左肝切除+尾状葉切除+肝外胆管切除を施行した。術後補助化学療法としてGEM を5 コース施行後,画像上再発は明らかでなかったが,腫瘍マーカーが上昇したためGEM+S-1を8 コース施行した。現在初診から約4 年経過し,腫瘍マーカーは正常化し画像上再発所見も認めない。局所進行切除不能胆管癌に対しても術前後の化学療法,手術を含めた集学的治療により長期生存が得られる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1482-1484 (2015);
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背景: 近年,膵癌に対する強力な化学療法の開発により,根治切除不能な進行膵癌に対して化学療法施行後に切除可能となった症例をしばしば経験する。しかし,術前化学療法施行後の根治手術の安全性と忍容性に関しては十分に検討されていない。今回,当科で経験した膵癌に対するconversion surgery の安全性と忍容性に関して報告する。対象と方法: 2009〜2014 年の期間に化学療法後に根治切除が可能となった10 例を対象とした。本検討では,Clavien-Dindo 分類を用いて術後合併症を評価し,臨床病理学用語はUICC 第7 版およびEvans分類を使用した。結果:年齢中央値は68 歳,術前化学療法のレジメンはS-1療法2 例,GEM療法5 例,GEM+S-1 療法が3 例で,NAC施行日数は中央値44(19〜226)日であった。手術術式は亜全胃温存膵頭十二指腸切除9 例,脾合併膵体尾部切除が1 例,手術時間の中央値は527.5分,術中出血量の中央値は875 mLであった。Grade 2 以上の手術合併症は6 例に認められた。内訳はGrade 3 の腹腔内膿瘍2 例,Grade 2の腹腔内膿瘍1 例,Grade 2 のせん妄2 例,Grade 2 の胃内容排泄遅延が1 例,Grade 2 の尿路感染症1 例であった。手術死亡はなかった。結論:術前化学療法を施行しconversion surgery となった症例でも安全に根治的切除術が施行できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1485-1487 (2015);
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目的: 上腸間膜動脈(SMA)に対するborderline resectable膵癌(BR-SMA)の治療成績を解析し,術前治療(NAT)の意義を検討した。対象: CT 画像でSMAに180°以下で接触し,膵頭十二指腸切除を施行したBR-SMA 10 例を対象とした。結果: NAT施行7 例,手術先行(SF)は 3 例であった。NAT施行例のR0切除率は7/7(100%),術後補助化学療法(AC)導入率は6/7(86%)で,初再発部位は腹膜1 例,肝 1 例,肺 4 例であった。一方,SF例の R0率は 2/3(67%,R1: pDPM+1 例),AC 導入率は3/3(100%)で,初再発部位は局所1 例,腹膜 1 例,肝 2 例であった。disease free survivalは NAT施行例で生存期間中央値(MST)19.3か月で,SF 例の5.7 か月に比較して有意に延長した(logrank test,p=0.002)。overallsurvivalは,NAT施行例MST 51.6か月,SF 例19.5か月であった(p=0.128)。BR-SMAにおいて,NATにより全例R0切除を施行し得た。BR-SMA症例ではNAT施行で再発時期が延長,局所因子での再発が減少した。結論: BR-SMAに対しては,R0切除・予後の改善に術前治療が勧められる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1488-1490 (2015);
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背景:当科では,遠隔転移のない局所進行膵癌をborderline resectable(BR)膵癌と考え,術前化学放射線療法(NACRT)後に切除を試みてきた。対象: 2010年6 月〜2014年12 月までにNACRTを施行した局所進行膵癌20 例について検討を行った。NCCN ガイドラインにおけるBR とunresectable(UR)の両者を含む。方法:術前にlow-dose gemcitabine+S-1(GS)療法を2 コース行い,癌の近接する主幹動脈神経叢を含めて50.4 Gyの通常照射を施行した。再評価で遠隔転移の出現がなく局所のさらなる進行(PD)がなければ切除を考慮した。結果: BR 膵癌20 例中7 例に根治切除を行い,6例がR0手術(切除率35.0%,R0率85.6%)となった。NCCN ガイドラインのUR で切除可能となった症例を2 例認めた。非切除症例は患者の手術拒否3 例を含む13 例であった。切除例7 例中2 例がNACRT後約30 か月生存したが他病死であった。切除群の生存期間中央値(MST)は25.2 か月,非切除群のMSTは11.3 か月で切除群の予後は有意に良好であった。結論:当科におけるBR 膵癌に対するNACRT を含めた集学的治療は,局所高度進行膵癌の予後向上に寄与する可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1491-1493 (2015);
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われわれは,当科で術前治療を施行した乳癌症例においてKi-67 値による組織学的治療効果への影響について検討した。2010年3 月〜2015年2 月に術前治療の後に手術を施行し,治療前の針生検によりKi-67 値が測定されていた乳癌52 例を対象とした。Ki-67 値が20%未満のものを低Ki-67群(n=7),20%以上50%未満のものを中Ki-67 群(n=20),50%以上のものを高Ki-67群(n=25)に分類し,組織学的効果を著効例(Grade 3・2b)とそれ以外(Grade 0〜2a)に分類した。Ki-67 値別にみた著効率は低Ki-67 群29%,中Ki-67 群15%,高Ki-67 群48%であり,低Ki-67 群・中Ki-67 群と高Ki-67群を比較したところ,著効率は有意に高Ki-67 群で高かった(p=0.038)。Ki-67 以外ではER 陰性が有意の因子であったが,Ki-67,ER とも多変量解析では有意でなかった。術前治療前のKi-67 値は治療効果予測因子として期待される。
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癌と化学療法 42巻12号, 1494-1496 (2015);
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肝細胞癌(HCC)の肺転移再発は予後不良であり,肺転移に対する切除の適応,意義については明らかではない。HCC 肺転移の7 例に対して切除を行い良好な成績が得られたので報告する。肝治療後の無病期間(DFI)は14(6〜23)か月であった。肺転移発症時,肝内病巣が同時に存在した同時症例1 例,肺転移単独症例は6 例であった。同時症例の1 例は肺切除後18 か月で現病死した。肺転移単独6 例のうち1 例は肝内再発を来し,肺切除後66 か月に肝内病巣の進行によって原病死した。残りの肺転移単独5 例中1 例は肺切除後10 か月で脳転移を来したが,4 例は肺切除後肝内再発を認めず,3例は無再発生存中である。この4 例中単発肺転移は2 例,左右多発が2 例であった。そのうち1 例は2 回の再肺切除を行った。原発巣が制御されている症例においては,異時性肺転移に対して積極的な肺切除が予後に貢献する可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1497-1499 (2015);
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ソラフェニブは進行肝細胞癌に対して初めて有効性が示された分子標的治療薬である。今回われわれは,肝細胞癌切除後の遠隔転移例に対してソラフェニブを使用したので報告する。2004 年9 月〜2015 年3 月までの当科で肝細胞癌に対して肝切除後再発治療としてソラフェニブを投与された47 例を対象とした。全体の効果判定はCR 1 例,PR 6 例,SD 17 例,PD 13 例,PD からSD となった症例が3 例,判定不要が7 例であり奏効率17.5%であったものの,病勢制御率は67.5%であった。再発部位別でのtime to progression の中央値は肝内転移のみが2.5 か月であったのに対し,肝+遠隔転移が4.95か月,遠隔転移のみが5.25か月であり,肝内再発との間で有意差を認めた(p=0.034)。このことから遠隔転移再発に対してソラフェニブ投与が有効である可能性が示され,治療の選択肢の一つとなり得る。
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癌と化学療法 42巻12号, 1500-1502 (2015);
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症例は61 歳,女性。近医で胆嚢結石,胆嚢壁肥厚を指摘され当院に紹介されたが,当院の精査で胆嚢癌の診断となった。初回開腹時に多発肝転移,周囲進展が著明で試験開腹となった。術後からgemcitabine(GEM)+cisplatin(CDDP)(GC)療法を開始,血液毒性のために7 投目以後GEM単剤へ変更し,7 か月化学療法を継続。CT で腫瘍縮小,肝浸潤転移巣の不明瞭化を認めたが,低下したCA19-9の緩徐な再上昇があり,遠隔転移がないことを確認し,原発巣の制御目的で手術の方針とした。再開腹時,胆嚢床近傍に肝転移を疑う結節を認め,これを含めた胆嚢床切除術を施行した。病理では肝の結節は線維化のみで,viable な癌細胞を認めなかった。術後補助療法としてGEM 投与を続行,術後1 年目で明らかな再発なく,CA19-9も正常化している。
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癌と化学療法 42巻12号, 1503-1505 (2015);
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遠隔転移を伴う80 歳以上の高齢者乳癌に対する治療法と予後について検討した。全症例中,何らかの併存疾患をもつ症例は51 例(82.3%)であった。内分泌受容体陽性は59 例であり,陽性率は95.2%であった。初診時に遠隔転移を伴う症例は14例(22.6%)存在し,79 歳以下の乳癌と比較して進行症例が多かった。平均観察期間は7.4 年。予後は他病死36 例(58.1%),原病死が4 例(6.5%)であった。遠隔転移を伴わない症例(A 群)と伴う症例(B群)の内分泌受容体陽性率,手術施行率,他病死を除く累積生存率に差を認めなかった。B 群のなかで手術施行群と非手術群に分類し,累積生存率を比較したが両群間に差を認めなかった。高齢者乳癌の手術療法として今回の検討から,局所からの出血のコントロールや進行症例の悪臭対策などの場合を除いて,内分泌受容体陽性症例は手術を行うことなく内分泌療法による加療も検討すべきものと考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1506-1508 (2015);
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当科で過去1 年に遠隔転移を伴う乳癌に対し,薬物療法施行後に原発巣切除を行った症例を検討した。対象症例は8例。年齢46〜83歳,局所腫瘍径は30〜70 mm。遠隔転移部位は肝転移1 例,肺転移2 例,骨転移3 例,腎転移1 例,所属外リンパ節転移のみの症例が3 例であった。術前の薬物療法はホルモン療法2 例,化学療法が6 例であった。術式はすべて胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術であったが,植皮を必要とした症例が2 例あった。現在,術後約2 年が経過し,生存例は8 例中5 例である。すべての症例で手術後の局所コントロールは良好で,遠隔転移に対する加療継続が可能であった。しかし,死亡例中の1 例は手術後に短い経過で急速な病状悪化を来しており,手術を行う際には慎重な病勢の把握が必要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1509-1511 (2015);
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症例は39 歳,女性。局所進行乳癌の疑いで当院紹介となった。画像上肝S4 に1 cm 大の肝転移を認め,cT4bN1M1(肝),StageⅣの診断に至った。乳房の針生検は浸潤性乳管癌(硬癌),nuclear Grade(NG)3,ホルモン陽性HER2陽性との結果であった。epirubicin+cyclophosphamide(EC)投与後にdocetaxel(DOC)+pertuzumab(PER)+trastuzumab(HER)を投与したところ,肝転移と腋窩リンパ節は画像上消失し完全奏効(CR)であったが,乳房腫瘤のみ残存し部分奏効(PR)であり,局所コントロール目的にBt+Ax(Ⅰ)を施行した。術後のCT では肝転移含め顕在化転移巣を認めず,tamoxifen内服と抗HER2 療法を継続している。
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癌と化学療法 42巻12号, 1512-1514 (2015);
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乳癌術後転移性肺腫瘍に対し外科的切除,薬物療法のいずれを選択するかについては議論が多い。今回,当院で乳癌術後経過中に肺腫瘍を発見し,外科的切除を施行した9 例について検討した。全例20 mm以下の小結節で,術前診断は困難であった。原発性肺癌2 例,転移性肺腫瘍4 例,原発性肺癌と転移性肺癌の併存1 例,良性肺腫瘍が2 例であった。転移性肺腫瘍4 例において,乳癌切除から肺転移切除までのdisease-free interval(DFI)中央値6.1(1.3〜8.9)年,肺転移手術後の生存中央値は12.5(2.3〜17.8)年,全例生存中である。原発巣と転移巣のホルモン受容体,HER2に変化はなかった。原発性肺癌2 例においては両者ともStage ⅠA であり,根治的切除が施行された。良性肺腫瘍2 例は不必要な追加治療を免れた。乳癌既往のある患者で肺腫瘍を認め確定診断が困難な場合には,治療および診断を兼ねて外科的切除も考慮すべきと思われた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1515-1517 (2015);
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背景と目的:同時性切除不能肝転移を有する大腸癌の原発切除の際,当科では術前からのステロイド投与を行っており,その治療成績を報告する。対象と方法:原発巣切除を行った切除不能肝転移を伴う大腸癌症例38 例を対象とし,術前からの周術期ステロイド投与例(以下S 群),それ以外(以下N 群)に分けて成績を比較検討した。ステロイドは,コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムを執刀直前から投与した。結果: S 群でH3が多く,肝転移以外の遠隔転移も多かった。化学療法開始までの日数,合併症発生率,生存期間には有意差なし。肝機能障害例25 例での検討で,S 群で合併症が少なく,生存期間も長かった。結語:肝機能障害のある同時性切除不能肝転移大腸癌症例の周術期ステロイド投与は術後合併症を減らし,ひいては生存率を改善できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1518-1520 (2015);
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全身化学療法抵抗性の大腸癌肝転移に対して肝動注療法が奏効した2 例を報告する。症例1 は69 歳,男性。上行結腸癌,肝転移に対して結腸右半切除術を施行後に全身化学療法を行ったが,転移巣の縮小は認められず肝動注療法に変更した。26 回の投与でpartial response(PR)となり,切除術を行った。現在,初回手術から63 か月,無再発生存中である。症例2は57 歳,男性。S 状結腸癌,肝転移に対してハルトマン手術を施行後に全身化学療法で転移巣の縮小を認め,左葉切除術を行った。約2 か月後に肝に多発性再発を認め,全身化学療法を施行したが,progressive disease(PD)であった。肝動注療法に変更し,著明な縮小を認め切除術を行った。その後再発を認め,肝動注療法,切除術,全身化学療法を継続しながら初回手術から52 か月経過し,生存中である。全身化学療法抵抗性の肝限局転移に対して,肝動注療法は選択肢の一つとして考慮されるべき治療法と考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1521-1523 (2015);
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治癒切除不能StageⅣ大腸癌に対する原発巣切除の意義はcontroversialと考える。今回,当科における治癒切除不能Stage Ⅳ大腸癌症例につき検討した。2006〜2012 年までに原発巣切除,もしくはintensive な化学療法の少なくとも一方を行った治癒切除不能Stage Ⅳ大腸癌症例78 例を対象とした。原発巣切除例67 例と非切除例の11 例に分けて検討すると,原発巣切除の有無と各臨床病理学的因子に差はなかったが,原発巣切除例の予後が良好であった。原発巣切除および化学療法施行の有無別に3 群に分けて治療成績をみると,原発巣切除後に化学療法を施行した52 例の生存期間中央値は21.6 か月で,原発巣切除のみ15 例の11.8 か月,化学療法のみ施行した11 例の8.1 か月に比べ予後が良好であった。治癒切除不能StageⅣ大腸癌では,原発巣切除が予後を改善する可能性があると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1524-1526 (2015);
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切除不能病変を伴う大腸癌の原発巣の切除を行わずに化学療法を行う場合があるが,その後,原発巣切除の方針が議論となる。抗体治療薬を含む治療開始後に原発巣切除を行った5 例を調査した。初診時の年齢中央値は63 歳,全例男性,切除不能病変は肝転移4 例,原発巣2 例,2 例で人工肛門造設を先行,初回治療ではパニツムマブ3 例,ベバシズマブが2 例に使われた。初診から原発巣切除までの期間の中央値は8.3 か月,理由は狭窄症状出現3 例,人工肛門閉鎖目的2 例,全例で腫瘍縮小が得られていた。腹腔鏡下手術を開始した3 例中2 例で開腹移行した。全例で抗体治療薬を含む治療が続けられ,切除後生存期間の中央値は19 か月であった。1 例では後に肝転移も切除され無担癌生存中ある。原発巣切除により症状や人工肛門から解放され,治療も継続されて長期間の生存が得られた。原発巣切除の意義は単に症状緩和目的のみならず,より戦略的に選択すべき手段と考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 1527-1529 (2015);
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腹膜播種を伴う胃癌治療経過中に増大した卵巣転移に対し卵巣摘出術を施行した3 症例について,文献的考察を加えて報告する。症例1: 43 歳,女性。4 型胃癌(P1)に対しS-1+IV and IP paclitaxel(PTX)療法24 コース後に左付属器切除術を施行した。術後,同化学療法を再開し44 コース施行中(治療開始後34 か月)である。症例2: 77 歳,女性。3 型胃癌(P1)に対し胃全摘出術D2-#10郭清,R-Y 再建術,胆嚢摘出術を施行した。術後補助化学療法を施行するも,治療開始30 か月目に右付属器切除術を施行した。術後S-1 やnab-PTX 投与にて治療継続中(治療開始後39 か月)である。症例3: 42 歳,女性。4 型胃癌(P1)に対しS-1+CDDP などやS-1+IV and IP PTX を22 コース投与後,治療開始16 か月目に両側付属器切除術を施行した。S-1+IV and IP PTX 計31 コース施行後,治療開始26 か月目に癌死した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1530-1532 (2015);
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Stage Ⅳ大腸癌に対して,その多くは化学療法を主体とした集学的治療がなされる。原発巣切除を行うことはその後の化学療法導入から継続において計画性をもって行うことができ,予後延長にもつながる。一方,腹腔鏡補助下結腸切除術は昨今の大腸癌手術においてその低侵襲性,拡大視効果による利点から盛んに行われるようになってきた。今回われわれは,Stage Ⅳ大腸癌に対し待機的に原発巣の切除を行った症例41 例を対象に,鏡視下手術の有用性を中心に検討を行った。20例に腹腔鏡下原発巣切除が施行されており,開腹手術に比べて術中出血が少なく,入院日数および化学療法開始に至る日数が少ない傾向であった。Stage Ⅳ大腸癌に対する外科治療においては,より低侵襲で効率よく次の加療につなげられることが重要である。鏡視下手術はその低侵襲性を担保する有用な方法の一つであると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1533-1536 (2015);
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当院でも閉塞性大腸癌に対する術前ステント留置(bridge to surgery: BTS)を2012 年4 月より導入し,StageⅣ症例へも適応している。今回,Stage Ⅳ閉塞性大腸癌原発巣切除におけるBTS の安全性・有用性を検討した。対象は2012 年4月〜2014 年8 月に当科で原発巣を切除されたStageⅣ大腸癌44 例[BTS 後に切除された閉塞症例(以下,BTS群)13 例,ステント留置なしで待機的に切除された症例(以下,Ope群)31 例]。ステント留置関連合併症は認めず,BTS群全例で減圧は良好で待機手術が可能であった。BTS 群では術後合併症として吻合部出血を7.7%(1/13 例)に認めたのみで,縫合不全は認めなかった。両群の比較ではOpe 群で右側結腸症例が多く(p=0.0297),BTS 群で深達度が深かった(p=0.0115)が,その他は有意差を認めず,BTSにより過大侵襲となる緊急手術を回避し待機手術症例と同等の短期成績を得られた。ステント留置は安全に施行可能で,StageⅣ閉塞性大腸癌の局所治療手段の一つとしてBTS は有用である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1537-1539 (2015);
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緩和目的大腸ステントの有効性と安全性を評価するため,当院で緩和目的大腸ステント留置術を施行した症例を後ろ向きに検討した。2014年の1 年間に当院では,9 例に緩和治療目的大腸ステント留置術を施行した。挿入成功率は100%であり,合併症としては逸脱を1 例認め,再留置を施行された。その他大きな合併症はなかった。半分以上の症例で,食事開始はステント留置後数日で可能となったが,1 週間以上要した症例も3 例あった。緩和治療目的大腸ステント留置により経口摂取ができ,栄養状態が改善すれば化学療法が可能になることもあり,予後の延長が期待できる。大腸ステント留置は手技が簡便であり,処置時間も短く,比較的安全に施行可能であり,患者のQOLの維持に有効な治療法といえる。当院の症例においては緩和目的大腸ステントの有効性,安全性が確認できた。長期予後は現在のところ明らかではなく,今後の検討が望まれる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1540-1542 (2015);
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目的:大腸癌イレウスに対する緩和的治療目的のステント留置術の有用性について検討した。対象と方法: 2006 年7月〜2014年5 月の期間に施行した緩和的治療目的の大腸ステント留置術(S 群)9 例および根治度C 手術(O群)11 例の大腸癌イレウス症例を対象に検討した。検討項目は患者背景,病変因子,周術期の安全性,術後経過,予後とした。結果:年齢は S 群 84(65〜96)歳,O 群 74.5(58〜84)歳: p=0.0365,PS 0〜2/3〜4 が S 群 1/8,O 群 7/4: p=0.0126で差を認めた。病変因子では差を認めず,施術時間は S 群 35(20〜90)分,O群 145(35〜294)分: p=0.0011,術後合併症のあり/なしはS 群 2/7,O 群 4/7 で内訳はS 群ステント閉塞2(いずれも再留置で閉塞改善),O群 SSI 2,狭心症発作1,下血 1 であった。食事開始日(POD)はS群3(1〜7)日,O 群7(3〜13)日: p=0.0030,予後は差を認めなかった。結語:緩和的治療目的のステント留置例は,施術時間と食事開始が有意に短く,重篤な合併症を認めず,ステントは有用であると考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 1543-1546 (2015);
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背景と目的:食道狭窄を伴う切除不能進行食道癌に対する緩和手術として食道バイパス術があるが,栄養状態不良例が多い。そこで,栄養評価からみた食道バイパス術の治療成績を検討した。対象と方法: 1992 年4 月〜2015 年3 月までに切除不能進行食道癌に対して食道バイパス術を施行した11 例を対象とし,術前栄養状態も合わせて治療成績を検討した。結果:cT3/4 が 2/9 例,cStageⅢ/Ⅳa/Ⅳb が 1/9/1 例であった。再建臓器は胃管/右側結腸が8/3 例であり,術後合併症は反回神経麻痺1 例(9%),縫合不全4 例(36%),肺炎4 例(36%)が認められた。術前栄養状態を治癒切除食道癌40 例と比較すると総蛋白(p=0.04),アルブミン(p=0.01),コリンエステラーゼ(p=0.01)は有意に低値であった。生存期間中央値は5.7 か月,化学放射線療法先行7 例では15.2か月であった。結語:食道バイパス術の適応例は低栄養が多く,縫合不全と肺炎などの感染性合併症に注意が必要と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1547-1549 (2015);
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食道癌骨転移に対する放射線療法の有効性について検討した。対象は2007 年以降に当院で食道癌骨転移に対して放射線療法を施行した8 例(計9 回)。男性5 例,女性3 例で,年齢中央値は63(46〜87)歳であった。骨転移部位は脊椎4 例,肋骨3 例,大腿骨3 例,上腕・橈骨・尺骨・腸骨各1 例(重複あり)であった。骨転移時にその他の切除不能因子を全例が有していた。放射線療法の効果はPS 1 の3 例に明らかな除痛が得られた。放射線治療開始後の生存期間は中央値50 日であった。放射線療法はPS が比較的良好であれば疼痛を緩和し,QOLの改善を期待できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1550-1552 (2015);
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胆道癌術後には腹膜播種再発による癌性腹膜炎に加えて,局所再発による門脈閉塞から難治性腹水を来すことがあり,患者QOL を著しく低下させる。胆道癌術後難治性腹水症例に対する腹腔・静脈シャント留置5 症例7 回留置(再留置2 回)を検討すると,4例が右肝切除術後であり,左側腹部から左鎖骨下静脈ルートを6 回(85.7%)に選択していた。観察期間中央値136日で4 例(80%)に腹水消失と腹満症状の著明な軽快を得たが,合併症として2 例のシャント閉塞と1 例のDIC も経験した。低侵襲かつ症状軽減効果の高い腹腔・静脈シャントは難治性腹水に対する有用な緩和医療であり,術後症例では手術術式,腹腔内癒着,貯留腹水の左右差などを考慮し,より安全な留置経路を選択する工夫が必要である。一方,シャント閉塞やDICなどの特有な合併症もあり,予後や全身状態から留置適応の判断をすることも重要と考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 1553-1555 (2015);
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切除不能胆管癌に対する適切な胆道ドレナージの方法について検討した。2008 年1月〜201 4 年6 月までに当院で胆道ドレナージを施行した切除不能胆管癌28 例を対象に,ドレナージ後stent dysfunction(SD)の有無や,それに対するreintervention(RI)の頻度を,初回ドレナージ方法,病変の部位,胆管炎合併の有無ごとに比較,またステント種類別の開存期間も比較し,切除不能胆管癌の適切な胆道ドレナージ方法を後方視的に検討した。その結果,初回ドレナージ方法,病変の部位,胆管炎合併の有無の比較ではSD,RI ともに有意差は認めなかった。plastic stent(PS)とmetallic stent(MS)の平均開存期間はそれぞれ2.7か月,7.4か月で,予後が2 か月以上見込める場合はMSを選択すべきと考えられた。SD が起こった場合も安易にPS の追加を選択せずに,MS留置の可能性を検討すべきと考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1556-1558 (2015);
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症例は78 歳,男性。35 年前に胃潰瘍に対し幽門側胃切除術を施行された。黒色便を認め当院に紹介され,残胃癌,上行結腸癌と診断した。胃癌腹膜播種を認めるも,右半結腸切除術,残胃全摘術,Roux-en-Y再建による緩和手術を施行した。術後化学療法を施行するも副作用のためPS 低下を認め,BSC へ移行した。術後5 か月目に上腹部痛にて救急搬送され,腹部CT にて腹膜播種による急性輸入脚閉塞症と診断した。内視鏡的ドレナージ術は狭窄所見が強く不可であったため,経皮経肝胆道ドレナージ術(PTCD)を用いて十二指腸輸入脚を減圧し得た。今回われわれは,輸入脚閉塞症に対しPTCD にて輸入脚を減圧し,約3 か月間BSC を継続できた1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1559-1560 (2015);
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目的:切除不能進行癌に伴う上部消化管の通過障害に対する胃空腸バイパス手術の有用性を明らかにする。方法:2010〜2014 年までの5 年間に切除不能進行癌に伴う上部消化管の通過障害に対して当科で緩和治療目的の胃空腸バイパス手術を施行した21 例を対象とした。手術成績,化学療法の有無,経口摂取可能期間,生存期間などを後方視的に検討した。結果:胃空腸バイパス手術後の経口摂取再開時期は中央値6(範囲2〜42)日,再度経口摂取不能になり死亡するまでの期間は中央値4(範囲0〜26)日であった。12 例(57%)が自宅へ退院となった。術後化学療法を希望した9 例全例に化学療法が施行できた。経口摂取可能期間中央値61 日,全生存期間中央値は92 日であった。結語:胃空腸バイパス手術により,自宅退院や化学療法などの治療選択肢が広がり,生活の質の向上に貢献できる可能性がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 1561-1563 (2015);
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悪性腫瘍に対する緩和治療を目的とした新規剤形を試作し,抗腫瘍効果を基礎的に検討した。キチンをベースとしてゾルを調製し,新規剤形とした。in vitroではヒト由来腫瘍細胞株を用い,in vivoでは担癌マウスをモデルとして腫瘍内に注入し,抗腫瘍効果を観察した。新規剤形はCDDPや5-FU溶液と同様に腫瘍細胞増殖を抑制した。新規ゾルをマウス固形癌内に直接注入した結果,腫瘍の急速な増大は抑制された。癌性腹水マウスに対しCDDP配合キチンゾルを腹腔内注入した場合,他の剤形と比較し,腹水減少と生存期間延長を認めた。キチンゾルおよびCDDP配合キチンゾルの腫瘍内注入は,「腫瘍量軽減」を誘導し得る緩和的癌局所療法として有用と思われた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1564-1566 (2015);
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固形物の摂取が困難であるが,流動食は摂取可能な終末期癌患者13 例を対象とし,「あいーと(R)」の有用性を探索的に検討した。「あいーと(R)」2 食分を試供後,味付け,みた目,食べやすさに関するアンケート調査を実施した。また,継続摂取希望者には自己負担で購入してもらい,「あいーと(R)」の継続状況も調査した。食道癌3 例,胃癌7 例,膵癌が3 例であった。アンケート調査では13 例中10 例が味付けに好評価を付け,みた目,食べやすさでは13 例中12 例が好評価を付けた。13 例中11 例が「あいーと(R)」を購入し,試供後2 週間で,週に2 回以上「あいーと(R)」を摂取している患者の割合は61.5%であった。なお,CTCAEのGrade変化は全例で認めなかった。固形物の摂取が困難な終末期癌患者において,みた目や美味しさを重視した「あいーと(R)」は患者満足度の向上につながり,有用と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1567-1569 (2015);
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症例は慢性B 型肝炎の既往がある72 歳,男性。肝細胞癌に対して切除手術を繰り返すも肝外側区域に再発腫瘍および右肝下面・下大静脈腹側に肝外再発腫瘍,下大静脈内に腫瘍栓が出現した。下大静脈浸潤を伴う肝細胞癌[Barcelona clinicliver cancer(BCLC)classification stage C]症例に対して,外来にてsorafenib 800 mg/bodyの単剤投与を開始した。重度の手足症候群が出現したため,sorafenibを 400 mg/bodyに減量し投与を継続した。CT 上多発肺転移が出現し肝外側区域の転移巣は増大傾向となるも,右肝下面・下大静脈腹側の腫瘤および下大静脈内の腫瘍栓の著明な増大はなく,良好なADLを維持しつつ外来にてsorafenib開始後1 年7か月にわたり加療を継続しているまれな症例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1570-1572 (2015);
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胆道癌肺転移の多くは多発性であり,切除可能な症例は少ない。遠位胆管癌術後肺転移に対して3 回切除した症例を経験した。症例は63 歳,女性。遠位胆管癌で胃亜全温存膵頭十二指腸切除を施行した。術後1 年9か月肺転移診断,右胸腔鏡下肺部分切除を施行した。右S9: 5 mm単発。補助化学療法GEM×6 か月。術後1 年5か月再肺転移診断,2 か所の左胸腔鏡下肺部分切除。左S1+2a: 6 mm,左舌区: 5 mm計2個。4 か月後右肺断端再発,右胸腔鏡下肺部分切除。21 mm単発,胸水細胞診Class Ⅴ。補助化学療法TS-1×6 か月。術後 7 か月多発肺転移,肺門リンパ節転移再発。化学療法GEM/CDDP 開始。骨多発転移を併発し,有痛の右胸壁・左股関節に放射線治療30 Gy/10 回施行した。病状進行により 2014 年 12 月癌死。原発巣術後5年4か月,初回肺切除後3 年4か月であった。自験例と症例集積の計14 例の検討では異時性,原発巣術後無再発生存期間(DFI)>1 年6 か月,3 個以下,肺外再発がないなどの条件で長期生存の可能性があるため,積極的に切除適応を検討する必要がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 1573-1575 (2015);
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胆管癌術後の肝肺転移に対し,外科的切除により3 年無病生存を得た症例を経験したので報告する。症例は50 歳台,男性。2009年10月,尿黄染を主訴に近医を受診し,遠位胆管癌による閉塞性黄疸の診断で手術目的に当科を紹介された。亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行し,病理組織学的には胆道癌取扱い規約第6 版でtub2,pT3aN0M0,pStageⅡA,R0と診断された。術後補助化学療法は施行しなかった。術後1 年7か月で左肺に11 mmの転移を認め,胸腔鏡下肺部分切除を施行した。さらに,肺転移切除後6 か月で肝S8に17 mmの肝転移を認め,gemcitabineとS-1 併用(2 週投与1 週休薬)による化学療法を3 コース施行したが,grade 3 の皮膚障害で治療継続が困難となったため,2012 年4 月,肝S8 部分切除を施行した。術後にS-1隔日投与を開始し有害事象なく投与継続中であるが,肝転移切除後3 年経過した現在,無病生存中である。胆管癌術後の転移再発に対し,外科的切除が有用な症例がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 1576-1578 (2015);
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症例は84 歳,男性。2005年10 月に下部胆管癌(高分化管状腺癌)に対して膵頭十二指腸切除術を施行し,治癒切除した。2009 年7 月,下血を来し精査の結果,肝門部再発と診断した。S-1 による化学療法と放射線療法を行った後S-1 の継続投与を行ったところ奏効し,肝門部の再発病変は消失した。S-1 は2013 年3 月で中止したが,再発後6 年の現在も再燃なく健在である。胆管癌局所再発に対して化学放射線療法(CRT)は治療の一つの選択肢になると思われた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1579-1581 (2015);
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2007 年8 月,十二指腸乳頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行。病理診断はcancer of papilla of Vater(Ap),well differentiated papillotubular adenocarcinoma,INF a,ly1,v0,pGinf0,pPanc0,pDu1,pT2,n(0),pStageⅠBであった。術後1 年目の2008 年8 月,腹部CTにて上腸間膜動脈左側に腫瘤を認め,精査にて下膵十二指腸動脈(IPDA)根部リンパ節(14d)再発を疑った。11 月,腫瘍摘出術+横行結腸切除術+左腎静脈合併切除を行った。病理診断はrecurrentcancer,moderately differentiated tubular carcinoma,compatible with previous primary cancerであり,14d リンパ節再発と診断した。再手術後5 年以上を経過し十二指腸乳頭部癌の再発は認めなかった。十二指腸乳頭部癌術後リンパ節再発に対する治療法は確立されていないが,今回腹腔内リンパ節再発に対し積極的な切除を行い,長期無再発生存を得た1 例を経験した。十二指腸乳頭部癌に対する治療においてIPDA根部リンパ節の確実な郭清の重要性が再確認された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1582-1584 (2015);
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症例は64 歳,男性。検診で腫瘍マーカー高値を指摘され膵尾部癌の診断となり,膵尾側切除術を施行した。術後病理組織学的診断は中分化型管状腺癌,pT2N1M0,fStageⅡであった。術後補助化学療法としてgemcitabine(GEM)療法を施行した。GEM療法開始から1 年後(術後1 年2か月目)に左肺下葉に4 か所の肺転移巣を認めたため,GEM投与を終了しS-1 療法に変更した。2 コース終了後転移巣の瘢痕化を認め,6 コース終了後転移巣はすべて消失し,complete response(CR)と診断した。術後4 年6か月経過した現在,画像上CR を維持しておりS-1 投与継続中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1585-1587 (2015);
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症例は50 歳台,女性。2005年12 月にⅡc型早期胃癌に対して幽門側胃切除術,D1+b 郭清を行い,病理組織所見は印環細胞癌,Type 0-Ⅱc,T1a(M),N2,H0,P0,M0,fStageⅡ,ly1,v0(胃癌取扱い規約第13 版)であった。再発なく経過していたが,術後5 年目の2010年12 月の胸腹部CT 検査で椎骨,腸骨,大腿骨,肋骨に硬化性病変,骨シンチグラフィ検査で多発集積像を認め,胃癌による多発骨転移再発と診断された。血液検査所見では,血清 ALP値は 2,743 IU/L と上昇していた。2011年1 月よりS-1+CDDP による化学療法とゾレドロン酸投与を行い,骨転移はnonCR/nonPD が持続した。2012年10 月(14コース施行後)より汎血球減少,Dダイマー上昇(28.9 mg/mL),末梢血液中に骨髄芽球などを認め,骨髄癌腫症と診断した。輸血,paclitaxel投与を行ったが病状は改善せず,2012 年12 月に死亡した。粘膜内胃癌の術後5 年目に骨転移を来したまれな症例を経験し,S-1+CDDP,ゾレドロン酸で長期間の病勢コントロールが可能であったので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1588-1590 (2015);
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症例は71 歳,男性。2012年10 月当科にて胃癌に対し胃全摘術を施行した。術後補助化学療法としてS-1 を1 年投与した。2014年1 月よりCT にて右肺S3に空洞を伴う結節影を認めた。徐々に増大傾向を認めたため,2014 年9 月に手術を施行した。術中,他部位にも結節病変を認めたためS1+S3 部分切除に加え,S8,S10 部分切除を実施。最終的な病理組織,免疫染色の結果では当初より指摘を受けていたS3 のみ悪性所見を認め,胃癌肺転移の診断であった。術後経過は良好であり,退院後外来にて再度S-1療法を実施しながら現在経過観察中である。胃癌肺転移は癌性リンパ管症や癌性胸膜炎で発症することが多く,孤立性肺転移はまれとされている。外科的切除の適応に関して未だ統一された見解はみられず,さらなる症例の蓄積が必要とされる。今回,胃癌根治手術後,孤立性肺転移を発症し切除手術を施行した1 例を経験したのでここに報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1591-1593 (2015);
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4 型胃癌切除後の結腸転移再発・腹膜転移再発に対し,集学的治療で長期生存が得られた症例を経験したので報告する。症例は70 歳,女性。前庭部全周性の4 型進行胃癌に対し,幽門側胃切除D2・Billroth Ⅱ法再建を施行した。病理診断はLM,circ,type 4,sig,pT4a(SE),ly1,v1,pN1,M0,P0,CY0,pStage Ⅲa であった。術後補助化学療法としてS-1を開始したが,CTCAE Grade 2 の下痢を来し,6 コースまでしか施行できなかった。術後2 年9か月目に横行結腸再発を来し,横行結腸部分切除術を施行した。術後にS-1を再開したが6 コースしか施行できなかった。3 年11 か月後,上行結腸転移と腹膜転移で再々発を来した。盲腸瘻造設術を実施し,S-1+docetaxelを導入した。化学療法導入後4 か月で上行結腸再発部は画像上消失した。原発巣切除後5 年10 か月で永眠された。4 型胃癌切除後の結腸転移再発・腹膜転移再発は予後不良であるが,本症例は局所切除と化学療法の併用で長期生存を得ることができた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1594-1596 (2015);
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今回われわれは,血液透析中の大腸癌肝転移術後再発に対してXELOX+bevacizumab療法を施行した1 例を経験した。症例は73歳,男性。64 歳時に,腎硬化症による慢性腎不全で血液透析が導入された。69 歳時に,S 状結腸癌ならびに転移性肝腫瘍に対してHartmann手術,肝後区域切除,肝S3部分切除を施行した。術後3年1 か月目に,肝切除断端より肺浸潤を伴う肝再発を認め切除不能と判断し,XELOX+bevacizumab による全身化学療法を導入した。重篤な副作用の出現は認めておらず,16 コース終了時点で腫瘍は縮小傾向であり,SD 継続中である。切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法では分子標的治療薬と化学療法の併用が推奨されているが,透析患者に対する標準化された投与量は確立されていない。今後,透析患者に対する化学療法を行うケースが増えていく可能性が考えられ,その知見を集積する必要がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 1597-1599 (2015);
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症例は73 歳,女性。2003年6 月に盲腸癌に対して結腸右半切除,D3リンパ節郭清を施行した。術中所見で原発巣近傍に腹膜播種を認めたが,同部の合併切除を行うことでR0切除となった。術後補助化学療法は行わなかった。外来で経過観察していたが,2004年12 月,左肺上葉単発の肺転移に対し左肺上葉部分切除を施行した。2007 年6 月,肝S3単発の肝転移に対し肝外側区域切除を施行した。原発巣切除後11 年9 か月,肝外側区域切除後7 年9か月が経過し,現在無再発生存中である。複数臓器へ異時性に転移再発を来した場合でも,癌の遺残なく切除を行うことで長期生存が得られる場合がある。全身状態が良好でR0 切除が可能であれば,積極的に転移巣切除を考慮すべきである。
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癌と化学療法 42巻12号, 1600-1602 (2015);
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鼠径ヘルニア内播種を含む同時性,異時性大腸癌腹膜播種症例に対して積極的な切除術を施行した。症例は68 歳,男性で,貧血精査にて上行結腸癌と診断された。大網およびTreitz靭帯近傍の腹膜に播種結節を認め,右半結腸切除術および腹膜播種合併切除を施行した[moderately differentiated tubular adenocarcinoma,pT4a(SE)N0M1P2H0,stageⅣ]。術後1 年6か月後に腹膜播種再発による腸閉塞で再入院となり,回腸部分切除,右腎および肝部分切除術を施行した。術前のCT で右鼠径ヘルニアとその内部に腫瘍性病変を認め,腸閉塞治癒後にMesh-Plug法を用いた右鼠径ヘルニア手術および右鼠径部腫瘍切除術を施行した。病理検査ではすべて大腸癌の腹膜播種と診断された。退院後mFOLFOX6 を12 コース施行し,現在は未治療で経過観察中であるが,再発を認めていない。大腸癌腹膜播種再発であっても,症例によっては積極的な切除術を行うことで予後が改善される可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1603-1605 (2015);
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症例は73 歳,男性。2010 年6 月,S状結腸癌に対し腹腔鏡下S 状結腸切除術を行った。病理組織診断はtub2,pSS,n(−)のstageⅡであった。脈管侵襲陽性であったが,補助化学療法は希望にて施行しなかった。外来経過観察での術後4年6 か月のCT 検査で,左腎動脈分岐部尾側の傍大動脈リンパ節転移を指摘された。その他,明らかな腫瘤陰影は認めなかった。PET-CT 検査を施行したところ,先に指摘されたリンパ節の他に吻合部近傍にSUVmax 高値の集積が認められた。画像診断上,この2 か所以外の集積が認められなかったこと,内服・通院のコンプライアンスが不良である背景から化学療法ではなく切除の方針とした。手術所見にて画像検査で指摘された部位以外の転移巣は認められず,吻合部近傍の結節は触診上,腸管に含まれる可能性が否定できなかったため,リンパ節摘出術・吻合部を含めた腸管の切除・再吻合術を行った。病理組織診断でともに腺癌,吻合部近くの結節は播種を最も考える所見であった。現在,補助化学療法に準じて治療継続中である。大腸癌治療ガイドラインでは血行性転移への切除介入を推奨しているが,リンパ節転移については定めていないのが現状である。一般的に遠隔転移を有する場合,化学療法を行うことになるが,完全寛解へ至った報告は検索し得る限り認めない。大腸癌の孤立性リンパ節転移や限局した播種への切除は生存率改善の報告があることから,本症例に対し外科的局所療法の介入が予後改善に貢献できる可能性があり得ると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1606-1607 (2015);
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症例は62 歳,女性。2008 年2 月直腸癌に対し他院で腹腔鏡下直腸切断術を施行され,術後病理診断はpT2,pN0,M0,pStage Ⅰであった。術後補助化学療法としてUFT を5 年間内服された。術後5 年11 か月となる2014 年1 月に腹部CT 検査で,右内腸骨動脈沿いのリンパ節腫大を認め直腸癌側方リンパ節転移と診断し,当院を紹介受診された。患者本人が放射線療法を拒否したため,術前補助化学療法としてFOLFIRI+Cmab療法を6 コース施行し,効果判定はPR であった。2014 年7 月に腹腔鏡下右側方リンパ節郭清術を施行し,術後病理組織学的検査で直腸癌リンパ節再発と診断した。直腸癌根治切除後5 年以上を経過してのリンパ節再発を切除した症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1608-1610 (2015);
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症例は62 歳,女性。下部直腸癌,多発性肝・肺転移の診断で,術前放射線化学療法後に腹会陰式直腸切断術を施行した。術後はレジメンを適宜変更しながら化学療法を施行,肝部分切除術と肺部分切除術を施行し,数か月間画像上無再発の期間を得た。しかし,その後に新たな肺転移巣が出現,さらに数か月後に左小脳半球に孤立性転移を来し,小脳転移巣摘出術を施行した。いったんQOL は改善したものの,小脳の術後20 か月後に髄液細胞診がClassⅤの水頭症を来し,VP シャント術を施行するも著効せず,癌性髄膜炎にて永眠された。大腸癌脳転移は比較的まれであるが,近年の化学療法の進歩により長期生存が得られるようになったことから,今後増加する可能性が高い。本症例のごとく肺転移巣の経過が長い症例は,常に血行性ルートによる脳転移の危険性も考慮すべきであると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1611-1613 (2015);
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症例は60 歳台,男性。胃癌にて幽門側胃切除術(D2,Roux-en-Y,R1)施行[por(solid),T4b,N3b,ly3,v2,CY0,fStage Ⅲc]。その後S-1+CDDP(SP)療法を施行したが,術後2 か月のCT にて膵液漏および後腹膜膿瘍を認め,経皮的ドレナージを施行した。術後3 か月のCT にて肝S7 に径25 mm 大の転移巣を認めた。ドレナージ施行中であり,手術困難と判断し,degradable starch microspheres(DSM)動注併用ラジオ波凝固療法(radiofrequency ablation: RFA)を計画した。右肝動脈後区域枝にマイクロカテーテルを進め,DSM 300 mg+MMC 2 mgを動注しながら,CT 透視下にRFA を施行した。2 か月後に焼灼部内側に局所再発を生じたため,同様に2 回目のDSM動注併用RFAを施行した。2 回目のRFA 前に膵液漏と結腸瘻を認めたが,n-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)による経皮的結腸瘻閉鎖術にて治療し得た。RFA後2年以上経過した現在も肝転移含めた再発なく,CR を維持しており,外来にて経過観察中である。胃癌肝転移に対するDSM 動注併用RFA は外科的切除が困難な場合,治療の選択肢の一つとして考慮してよいものと考えられたため,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1614-1616 (2015);
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症例は60 歳,男性。進行胃癌に対して胃全摘術(D2郭清)を施行した。切除標本の病理診断はtub1,pT3,pN1,cM0で,最終病期はⅡB であった。S-1(120 mg/day: 4 週投与2 週休薬)による術後補助化学療法を行っていたが,6 か月目の造影 CT 検査で多発肝転移の出現を認めた。S-1 投与中の再発であることを考慮して XP 療法(capecitabine 1,600 mg/㎡day day 1〜14,cisplatin 70 mg/㎡day day 1,休薬day 15〜21を1 コース)を8 コース施行したところ奏効し,肝転移巣はS5の1 個となった。Grade 1〜2の腹痛や全身倦怠感を伴うADL低下のため化学療法の継続が困難となり,残存する肝転移巣に対してRFAを施行したところ病巣は完全消失した。血清 CEA値は,術後 5.5 ng/mL であったが,再発時には13.9 ng/mLと上昇し,化学療法とRFA施行後には2.4 ng/mL と正常化した。現在,2 年 6 か月間無再発生存中で長期CR を得ている。
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癌と化学療法 42巻12号, 1617-1619 (2015);
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症例は56 歳,男性。2011年10 月に食道胃接合部癌に対して5-FU+CDDP(FP)による術前化学療法2 コース後に,左開胸開腹下部食道切除+胃全摘術を施行した。病理では低分化型腺癌,ypT4aN1M0,Stage ⅢAの結果であった。S-1 による術後補助化学療法を施行中であったが,術後6 か月に肝S7 に単発の転移巣が出現した。このためFP 療法とし3 コース施行も効果はPD であり,陽子線照射を行った。陽子線照射により腫瘍は縮小したため,化学療法を行わずに経過観察としていた。しかし,照射後21 か月のCT 検査で肝転移巣の増大,PETでのFDG 集積を認めた。新規病変を認めず,根治切除可能と判断し,肝右葉切除術を施行した。病理では食道胃接合部腺癌の転移,組織学的効果判定はGrade 2 であった。初回手術後45か月,肝切除後10 か月が経過するも無再発生存中である。慎重に適応を選べば,食道胃接合部癌肝転移に対して外科的手術を加えることで予後の向上が期待できる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1620-1622 (2015);
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症例は80 歳,男性。膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術施行後6 か月目に多発肝転移が出現した。原発巣の病理組織診断はadenosquamous carcinoma with anaplastic carcinoma componentで,最終病期はStage Ⅲであった。肝転移出現後,S-1単剤投与(80 mg/日,4 週投与2 週休薬)を行ったところ,3 か月後には造影CT 上転移巣はPR で,9 か月後にはCR となり1 年後もCR を継続している。肝転移出現時,軽度上昇傾向を示した血清CA19-9 値も速やかに低下し,再上昇は認めていない。S-1の投与期間中,grade 2 以上の副作用は出現せず,11 コースまで連続して治療を継続することができた。膵癌根治術後の再発に対する治療法の選択肢や治療成績について,膵癌診療ガイドラインで明確な記載はされていないのが現状である。今回,膵癌術後多発肝転移に対してS-1の単剤投与にて長期CR を得た症例を経験した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1623-1625 (2015);
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症例は71 歳,男性。2009 年7 月,上行結腸癌に対し結腸右半切除・小腸部分切除・十二指腸部分切除術を施行。術後補助化学療法は本人の希望で施行しなかったが,11 月に肝S7 に転移を認め,FOLFOX4 を6 コース施行するも効果はSDであったため,2010 年 3 月に肝拡大後区域切除・肝 S8 部分切除・下大静脈合併切除・胆嚢摘出術を施行。術後 tegafur/uracil(UFT)/calcium folinate(UZEL)を3 コース施行するも2011 年 2 月に残肝再発を認め,肝S8 部分切除を施行した。10 月に残肝再発を認め,局所療法や全身化学療法を施行したが根治に至らず,2013年6 月に中肝静脈合併拡大肝S8 切除・横隔膜合併切除術を施行した。再々肝切除後2 年無再発生存中である。大腸癌肝転移に対して抗癌剤治療を含めた集学的治療を行い,また切除術式としては部分切除施行が多いが,本症例は再発巣が同一区域内に存在し,グリソン浸潤を疑い系統的肝切除を行ったことが無再発生存につながったと考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1626-1628 (2015);
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症例は70 歳台,男性。早期胃癌ESD 後のフォロー中,食道胃接合部に2 型進行食道扁平上皮癌(cT3N1M0,cStageⅢ)が検出された。術前化学療法(docetaxel+cisplatin+5-FU)1 コース後に中下部食道切除術,2 領域郭清,後縦隔胃管再建を施行した。病理結果はsquamous cell carcinoma(mod),pT3N2M0,pStage Ⅲであった。手術6 か月後,腹部リンパ節再発を認め,化学療法(nedaplatin+adriamycin+5-FU)を開始した。減量しながら3 コース投与したが,各コースで骨髄抑制Grade 4 が出現したため,放射線治療に変更した。50.4 Gyの照射を行った後,照射野尾側に傍大動脈リンパ節再発を認め,新規病変に対しても50.4 Gy の照射を行い,CR となった。6 か月後,左頸部浅頸筋下にリンパ節再発を認め,左頸部リンパ節摘出術を施行した。摘出した3 個の腫大リンパ節はいずれも食道癌の転移であった。摘出術6 か月後の現在,再発所見は認めていない。
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癌と化学療法 42巻12号, 1629-1631 (2015);
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症例は82 歳,女性。経過:約5 年前に右乳癌でBp+Ax 施行。T2N1M0,StageⅡB であった。術後letrozoleを内服したが,術後5 年目に右胸膜結節と胸膜播種を認めた。ホルモン療法スイッチ施行するも腫瘍マーカー上昇,両側肺転移,右胸水貯留および右腋窩・縦隔リンパ節転移を認めた。高齢であることから,術後 6 年目よりcapecitabine 1,800 mg/day(3週投与1 週休薬)を開始した。副作用もなく治療効果はcCR となった。現在,約1 年6か月経過しているが再発転移は認めていない。まとめ:高齢者の再発転移乳癌症例では化学療法を施行するも,副作用の出現あるいは投与方法変更,投与量減量など継続的な治療が難しい。今回の症例ではcapecitabine単独で,副作用もなく継続投与できcCR となったため,今後高齢者乳癌症例に有効な治療法になり得るのではないかと思われたので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1632-1634 (2015);
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症例は44 歳,女性。約1 年前に左乳癌にて胸筋温存乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。病理組織診断はmucinous carcinoma,T3N0M0,stageⅡB,ER(+),PgR(+),HER2 score 0,Ki-67 20%。術後ホルモン療法を施行していたが,術後4 か月に左腋窩リンパ節腫大を認めた。術後リンパ節再発として化学療法を開始した。EC 療法およびnab-PTX療法を施行した。さらに,局所制御目的にて術後1 年目に腋窩リンパ節郭清術を施行した。結果はリンパ節転移1個を認めるのみであった。現在,引き続きホルモン療法を開始しているが,再発・転移は認めていない。考察:粘液癌は乳癌特殊型に分類される。ほとんどは乳管癌の成分を含む混合型が多く,治療も乳管癌に準じた治療が施行される。一方で,純型粘液癌は予後良好で転移することは少ない。今回は純型にもかかわらず転移をし,化学療法の効果も低かった。しかしながら,手術療法を施行することで局所制御し得たので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1635-1637 (2015);
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症例は62 歳,男性。幽門前庭部の胃癌で幽門側胃切除術を施行した。術後診断はT1b(sm2)N0M0,StageⅠA で術後補助化学療法は施行せず,経過観察していた。術後 1 年 6 か月で CEA の上昇(262.1 ng/mL)を認め,CT にて肝S7に 15mm,S7/8 に 20 mm 大の多発肝転移が出現した。原発巣の免疫組織化学検査で HER2 IHC 2+であったため S-1+cisplatin(CDDP)+trastuzumab 療法を施行した。化学療法2 サイクル終了時点でGrade 3 の好中球減少と下痢を来したこと,肝転移病巣がともにPR で新病変を認めなかったことから肝切除術を施行した。切除標本の病理組織学的検査でHER2 陽性胃癌の多発肝転移と診断され,化学療法の効果判定はGrade 2 と奏効していた。術後補助化学療法は施行せず原発巣切除より4年3 か月,肝転移切除後より2 年3か月経過した現在も無再発経過観察中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1638-1640 (2015);
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症例は 72 歳,男性。2012 年 9 月,胸部 X 線にて異常陰影を指摘され,胸腹部造影 CT で肝 S8/1 に早期濃染,washout を呈する巨大な腫瘍性病変を認めた。腫瘍は右横隔膜から右肺下葉に進展し肺浸潤が疑われた。血液検査では,HBs 抗原陰性,HCV 抗体陰性,腫瘍マーカー上昇を認め,肝細胞癌,右横隔膜浸潤,右肺浸潤,cT2N0M0,cStageⅡと診断された。計3 回肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行後,ソラフェニブ内服を継続し,治療効果SD であるため,2014 年5 月に手術目的に当院紹介受診となった。紹介時の腹部造影 CT にて,肝 S8/1 に 8.7 cm 大の主腫瘍と右横隔膜に腫瘤形成を伴い,右肺底部では肺実質への浸潤が疑われた。また,肝 S3/4 に 8 mm大の肝内転移を認めたため,術前診断cT3N0M0,cStage Ⅲの下,7月に再度TACEを施行後に肝拡大右葉切除(右葉+尾状葉),右横隔膜合併切除,右肺部分切除,胆嚢摘出術を施行した。術後経過は良好で術後10 か月目現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1641-1643 (2015);
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症例は68 歳,女性。黄疸を主訴に発症し,他院において切除不能膵頭部癌の診断の下,経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)を施行された後,転院となった。CTにおいて上腸間膜動脈(SMA)を全周性に巻き込む直径2.5 cm の腫瘤を認め切除不能と判断した。gemcitabineとS-1による化学療法(GS療法)を8 サイクル行った後,腫瘍の縮小を認めたため膵頭十二指腸切除,門脈合併切除を施行した。病理組織学的には腫瘍の大部分は線維化組織に置き換わっており,まばらに中分化型管状腺癌を認めた。病期はpT1,pN0,M0,fStageⅠであり,化学療法の効果はEvans分類のGradeⅢと判断され,R0切除をなし得た。術後化学療法としてS-1投与中であり,14 か月経過するも無再発生存中である。局所進行切除不能膵癌に対し化学療法が著効し,R0 切除を行い得た症例を経験したため,その治療戦略の有用性に関し考察を加えたい。
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癌と化学療法 42巻12号, 1644-1646 (2015);
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症例は55 歳,男性。膵尾部癌の診断で当院に紹介となった。造影CT にて膵尾部に90 mm大の巨大腫瘍を認め,隣接する脾臓・胃・左副腎・横隔膜・腹腔動脈への浸潤と肝転移・腹膜播種を認めた。腫瘍マーカーはCEA 21.2 ng/mL,CA19-9 9,530 U/mLと高値であった。手術適応はなくFOLFIRINOX 療法を開始した。有害事象としてGrade 3 の好中球減少・食思不振・下痢・高カリウム血症が出現したため,減量しながら10 サイクル施行した。腫瘍マーカーは急速に減少,腫瘍も造影CT で40 mm 大まで縮小したもののPET-CT にて膵尾部のみに遺残が疑われたため切除の方針とした。術前に総肝動脈・左胃動脈に対する塞栓を施行し,腹腔動脈合併膵体尾部切除術(DP-CAR)を施行した。術中エコーでは肝転移巣は同定できなかった。病理結果は切除部位のほとんどが線維性瘢痕となり,膵尾部・胃粘膜下層・左副腎にわずかに中分化型管状腺癌の遺残を認めるのみでR0 手術を施行し得た。現在,初回治療から18 か月,切除術後11 か月無再発生存中である。FOLFIRINOX療法はdown-stagingにより,膵癌の根治性を増加させ予後を改善させる可能性があることが示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1647-1649 (2015);
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われわれは,切除不能局所進行大腸癌に対する化学療法により根治切除が可能となった直腸癌2 症例を経験した。症例1: 72 歳,男性。初回手術で,後腹膜仙骨前面への著明な浸潤のため,S 状結腸人工肛門を造設した。capecitabine, L-OHP+bevacizumab(CapeOX+Bmab)療法を4 コース施行し,CR が得られ,高位前方切除を施行し,根治度Aの手術となった。現在まで,無再発生存中である。症例2: 73 歳,男性。初回手術では膀胱と小腸,後腹膜への浸潤のため,回腸人工肛門を造設した。CapeOX+Bmab療法を3 コース施行し,画像上PR となり,根治切除が可能となった。局所進行直腸癌に対する術前化学療法の評価は定まっていない。今回の症例ではCapeOX+Bmab 療法を施行し,画像上著明な腫瘍縮小が得られたことから,根治切除不能の局所進行大腸癌に対するneoadjuvant chemotherapy(NAC)により,根治切除が可能となる症例の存在が示唆された。今後,どのような症例がNAC の適応となるのかについて,さらなる検討が必要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1650-1652 (2015);
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症例は46 歳,男性。2012年10 月,3か月前からの血便で当科を受診した。下部消化管内視鏡検査で直腸に全周性の2 型病変を認めた。造影CT で多発肝・肺転移を認めた。直腸癌,cStage Ⅳと診断され,化学療法を行う方針となった。XELOX+Bmab 療法を1 コース施行,その後はXELOX+Cmab 療法に変更し,計21 コース施行した。21 コース目にoxaliplatinに対してinfusion reactionが出現し,化学療法を中止した。肝転移は画像上CR となり,原発巣も著明に縮小していた。2014 年4 月,低位前方切除術(D3)施行。病理はtype 2,10×25 mm,tub1,pMP,int,INF b,pN1(251)で,根治切除と考えられた。術後化学療法は施行せずに経過観察中であるが,2015 年7 月現在,再発を認めていない。Stage Ⅳの直腸癌に対して化学療法が著効し,根治切除となった症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1653-1655 (2015);
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患者は初回手術時71 歳,女性。38℃台の発熱と食欲低下で発症した肝弯曲部上行結腸癌で,門脈本幹を8 cm にわたって珊瑚状に占める腫瘍塞栓があり,切除不能と考えられた。mFOLFOX6を16 コース施行したところPR が得られ,右半結腸切除術D3郭清を行った。リンパ節転移がNo. 203と201 にあり,門脈腫瘍塞栓をM1とすれば病理学的にはtub 2 で,yp-T3N3M1a(OTH),StageⅣであった。回結腸静脈と中結腸静脈内に少数の癌細胞が残存していて,化学療法の効果はGrade1a であった。術後はmFOLFOX6を再び行ったところ,13 コース終了時にNo. 223 にリンパ節再発が出現したためそのリンパ節を切除した。再発切除後はDeGramontのregimenで9 コース施行し経過観察に移ったところ,CT 上,門脈は閉塞したままであるが,最終手術から5 年間再発なく健在である。医学中央雑誌で検索し得た限りで門脈腫瘍塞栓合併大腸癌は自験例を入れて9 例で,そのうち8 例が上行結腸癌,7 例が女性,3 例がporであった。今回,mFOLFOX6と2 回の切除で5 年無再発生存を得たが,医学中央雑誌とPubMed で調べ得た範囲で非治癒切除後の化学療法による無再発5 年生存の報告がなかったので報告した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1656-1658 (2015);
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大動脈周囲リンパ節転移を伴うS 状結腸癌に対し,原発巣切除と同時に大動脈周囲リンパ節郭清を行った1 例を経験した。症例は67 歳,男性。S 状結腸癌による通過障害で閉塞性大腸炎を合併しており,経肛門イレウス管留置後,高位前方切除術および大動脈周囲リンパ節郭清を施行した。組織診断は低分化型管状腺癌,SE,N3,H0,P0,M1(No. 216,280),stage Ⅳで根治度B であった。術後,外来にてXELOX 10 コース施行。初回手術より24 か月経過した現在,再発なく経過している。大動脈周囲リンパ節転移陽性の大腸癌に対する原発巣切除に伴う一期的な郭清の適応については議論が多いが,他に遠隔転移巣を認めない症例であれば外科的切除を考慮すべきである。
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癌と化学療法 42巻12号, 1659-1661 (2015);
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症例は47 歳,男性。腹痛と血尿を主訴に当院を受診し,多発肝転移と膀胱浸潤を伴う直腸癌と診断された。根治切除不能と判断し,人工肛門を造設後mFOLFOX6+panitumumab療法を開始した。化学療法開始3 か月後に原発巣,転移巣ともに部分奏効(PR)を示し,化学療法を継続した。化学療法開始5 か月後に腹痛が出現し,CT 検査で増大した原発巣とその周囲の血腫を認めたため,緊急手術にて原発巣切除を施行した。術後は原発巣切除後の局所再発が急速に増大したため化学療法を再開できず,初診から8 か月後に死亡した。肝転移巣は化学療法によって良好に制御されていたが,原発巣からの出血やサルベージ手術後の局所再発の急速な増大が予後規定因子となった直腸癌症例を経験した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1662-1664 (2015);
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症例は65 歳,女性。悪臭帯下あり,前医で子宮内膜組織診にて類内膜腺癌の診断となり,当院紹介となる。精査中にS 状結腸癌も認めた。術前診断は,子宮類内膜腺癌Grade 1,右卵巣転移にてcStage ⅢA,S 状結腸癌,cT4b(膀胱),N0,M0 にてcStageⅡ。術中に腹膜播種転移を認め,S 状結腸切除+単純子宮全摘+両側付属器切除を施行した。摘出子宮の肉眼所見では腫瘍は子宮内膜に広範に広がるが,筋層への浸潤は1/2 未満にとどまった。組織学的には類内膜腺癌と類似するが,免疫染色ではCK7(−),CK20(+),CDX2(+),ER(−),PgR(−)を示し,S 状結腸癌の子宮転移の診断とした。最終診断は,S 状結腸癌,tub2,type 2,pT4b(SI:膀胱),INF b,ly1,v2,pN0(0/12),M1a(子宮),P1にて pStage Ⅳであった。術後補助化学療法としてXELOX 療法を8 コース施行し,現在は11 か月再発なく経過観察中である。大腸癌子宮転移はまれであるが,大腸癌の罹患率上昇とともに今後は増加傾向となる可能性がある。適切な治療方針選択のためには原発子宮癌と転移性子宮癌を術前に鑑別することが重要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1665-1667 (2015);
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今回われわれは,切除不能胃癌からの出血に対して二度の放射線治療と経動脈塞栓術を行うことで貧血の進行を制御し,四次治療まで化学療法を継続し得た症例を経験した。症例は70 歳,男性。膵浸潤と多発性肝転移を伴う進行胃癌に対して二次治療の化学療法を施行中に Hb が 4.5 g/dL まで低下した。上部消化管内視鏡検査では腫瘍から静脈性の広範な出血が認められ,内視鏡的止血術は困難であった。放射線照射(40 Gy/20回)にて止血が得られ化学療法を再開したが,6か月後に再度Hb は6.1 g/dL まで低下した。追加照射(20 Gy/10 回)によりHbは 7.5 g/dLまで回復したが,その 3 週間後に施行したCT にて造影剤の胃内腔への漏出像を認めたため,経動脈塞栓術を施行した。その後貧血の進行はなくなり化学療法を再開したが,肺炎を併発し1 か月後に永眠された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1668-1670 (2015);
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症例は65 歳,男性。噴門部胃癌で,肺・肝転移はなく,両側鎖骨上,縦隔,大動脈周囲,小弯リンパ節に転移を認めた。cT2N3M1(LYM),cStage Ⅳ,HER2(3+)の非切除胃癌で約2 年5か月に及ぶ化学療法を施行した。一次治療はS-1+CDDP 療法4 コース,二次治療はXeloda+CDDP+trastuzumab 療法8 コース,三次治療としてXeloda+trastuzumab療法17コースを施行した。原発巣は消失し,小弯リンパ節のみ転移を認め,手術を施行した。術式は審査腹腔鏡で腹水洗浄細胞診陰性と播種のないことを確認後,下縦隔郭清,胃全摘術(D2),胆嚢摘出術を施行した。病理では主病変は消失しており,pathological CR であった。小弯リンパ節にのみ転移を認めた。転移リンパ節のHER2は3+であった。術後もXeloda+trastuzumab療法を継続し,術後5 か月経過したが,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1671-1673 (2015);
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症例は66 歳,男性。吐血を主訴に前医に救急搬送された。上部消化管内視鏡検査にて,胃体上部小弯に進行胃癌を指摘され,加療目的に当科へ紹介された。CT,PET-CT 検査で左副腎転移が疑われ,臨床病期,cT4a,N0,M1(左副腎),cStage Ⅳと診断し,術前化学療法としてdocetaxel+cisplatin+S-1(DCS)療法を2 コース施行した。効果判定PR であり,治癒切除が可能と判断し,腹腔鏡下胃全摘術,D2 およびNo. 16a2lat郭清,左副腎合併切除を施行した。術後経過は良好で,POD3に経口摂取を開始し,POD13 に軽快退院となった。病理診断結果は,pT4a(SE),N(0/19),H0,P0,CY0,M1(Lt.adrenal gl),pStage Ⅳ,R0 の結果であった。術後42 日目より術後補助化学療法としてS-1+cisplatinを開始した。胃癌の孤立性副腎転移に対し,術前化学療法施行後に根治的腹腔鏡下胃全摘副腎合併切除術を安全に施行し得た。また,術後早期に補助化学療法が可能であった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1674-1676 (2015);
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肝癌再発加療の間に重複癌の治療を行った症例について検討した。症例1: 71 歳,男性。肝細胞癌(HCC)に対し肝切除術を施行した。術後10 か月で膵腫瘍と肝癌多発肝転移を認めた。肝動脈化学塞栓術(TACE)により肝癌の病勢を制御した後,膵癌の切除を施行した。症例2: 76 歳,女性。HCC に対し肝切除術を施行した。術後6 か月に胃癌が見つかり,同時期に肝癌の多発性肝内再発が明らかとなった。肝癌に対して肝動脈塞栓術を胃癌に対してS-1 投与を行い,それぞれ6 週間を1 コースとして反復治療を施行した。症例3: 59 歳,男性。HCC に対し肝切除術を施行。1 年後に甲状腺癌切除術を施行。その後,肝癌再発し肝切除術を施行した。症例4: 69 歳,男性。肝内胆管癌(ICC)に対し肝切除術,同時性重複癌食道癌に対し食道抜去術を施行した。肝癌肝転移に対して肝切除術あるいはラジオ波焼灼術を繰り返した。肝癌に伴った重複癌の治療は肝癌再発巣の病勢制御を行いながら,組み立てていく必要があると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1677-1679 (2015);
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症例は28 歳,男性。16 か月前に多発肺転移を伴う右脛骨アダマンチノーマと診断され,術前化学療法後に腫瘍切除を行い,術後化学療法を施行中であった。経過観察のCT にて,肺病変の増悪はないものの8 cm 大の肝S7 転移,右気胸の出現を認め,手術の方針となった。肝S7亜区域切除と気胸手術(肺部分切除)を行い,病理で肝,肺ともアダマンチノーマの転移と診断された。肺転移巣は原発巣と同様の紡錘型細胞の増殖を認めたものの,肝転移巣は原発巣に比して腫瘍細胞密度が非常に高く上皮様成分が優位であり,悪性度が高い病変であった。術後は順調に経過し,追加治療はせずに経過観察中である。本症例のように腫瘍に対する治療経過で悪性度の高い転移巣の出現を認めることがあるが,他病変がコントロールされており,手術が可能であれば外科的切除による局所制御が予後改善に寄与する可能性があり,今後の症例の蓄積が求められる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1680-1682 (2015);
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S 状結腸癌術後,腹膜播種によるイレウスに二度のステント留置した後の再狭窄に対し,患者のQOL 改善目的にストーマ造設術を施行した1 例を経験したので報告する。症例は58 歳,女性。S状結腸癌に対しS 状結腸切除術を施行した。その後三度の腹膜再発を繰り返し,三度目の手術では非治癒切除となった。化学療法を施行したが高度の有害事象のため中止し,best supportive careとして経過をみていた。初回手術から4 年目に吻合部狭窄となり二度のステント留置を行うも,数か月以内に三度の狭窄を起こした。三度目の狭窄では,再狭窄までの期間も短いことからストーマ造設を施行した。その後,狭窄なくストーマ造設から4 か月後に癌死した。悪性大腸狭窄症例ではステント留置は有効な方法であるが,ステント留置後の繰り返す狭窄には患者の全身状態が許せばストーマ造設が有効な方法と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1683-1685 (2015);
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大腸癌イレウスの治療に対して,メタリックステント(self-expanding metallic stent: SEMS)を用いた加療の有用性が多数報告されている。切除不能進行大腸癌であっても長期生存例もみられ,緩和医療としての姑息的ステント治療の際に腫瘍の内腔発育による再閉塞が生じることもある。今回,大腸癌イレウスに対して姑息的ステント治療を行い,その後の内腔発育によるSEMS閉塞に対し,再挿入を実施した2 例を経験した。2 例とも再挿入後の経過は良好であり,初回挿入後それぞれ15 か月,12 か月後に永眠された。終末期大腸癌イレウス症例に対しても,姑息的ステント治療を工夫することで人工肛門造設を回避し,QOLを維持した終末期医療を可能にすると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1686-1688 (2015);
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はじめに:幽門狭窄を有する切除不能胃癌に対するステント留置の適応については,十分なコンセンサスがない。初回治療としてステント留置を行い2 年以上の長期経口摂取が可能であった症例を報告する。症例: 60 歳台,男性。心窩部不快感を主訴に来院され,精査にて肝転移,傍大動脈リンパ節転移,腹膜播種を伴うcStage Ⅳ進行胃癌と診断された。幽門狭窄のため流動食しか摂取できない状態であったため,ステントを留置した。翌日より経口摂取が可能となり,TS-1+CDDP 療法を開始した。術後8 か月目に腫瘍の縮小によりステントが十二指腸水平脚まで逸脱したため,内視鏡下に抜去した。治療開始後27 か月経過したが,四次治療を施行中で固形食の経口摂取を継続できている。結語:化学療法が奏効し,長期生存が得られる症例においても,ステント晩期の合併症に対応することができれば経口摂取の継続が可能になると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1689-1691 (2015);
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症例は70 歳台,男性。2009 年3 月,胃癌に対して幽門側胃切除術,D1郭清,Roux-en-Y再建を施行し,病理組織結果は印環細胞癌,T4a,N3a,H0,P1,CY1,M1,StageⅣ,R2であった。2009 年4 月よりS-1+CDDP を17 コース施行,2011 年1 月から術後5 年目の2014 年3 月までS-1 による化学療法19 コースを行い,再発のないことを確認して化学療法を終了した。2014年6 月に食欲不振,黄疸を認め,精査にて胃癌腹膜転移に伴う胆管狭窄,水腎症,直腸狭窄と診断された。胆管ステント,尿管カテーテルを挿入し,腸閉塞症状を伴う直腸Ra-Rsの狭窄に対して大腸ステント(NitiTM大腸ステント22 mm×6 cm)を挿入した。挿入後11 日目にステント内への腫瘍のin-growthに対してAPC焼灼を行い,食事摂取が可能となり退院し,大腸ステント留置後67 日目に原病死した。腹膜転移による直腸狭窄を伴う胃癌再発症例に対して,緩和目的の大腸ステントは有用である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1692-1694 (2015);
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症例は84 歳,女性。2008年2 月に鼻腔腫瘍を摘出したところ,鼻粘膜原発の悪性黒色腫と診断された。2010年4 月に小腸転移によるイレウスを来し,小腸部分切除を施行された。2010年10月ごろより再びイレウスが出現した。精査の結果,悪性黒色腫の小腸転移およびそれによる腸重積と診断した。イレウス解除目的で小腸部分切除を施行した。術後は経口摂取可能となり,術後2 週間で退院となった。その後,経口摂取可能な状況が続いたが,6 か月後に原病の増悪で死亡した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1695-1697 (2015);
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はじめに:甲状腺癌では一部で嚢胞形成するものの,ほとんどは充実成分である。今回われわれは,嚢胞成分が大部分を占める巨大甲状腺癌の手術をしたので報告する。症例: 64 歳,男性。頸部超音波検査にて左葉に石灰化を伴う巨大嚢胞性腫瘤を認めた。気管偏位や食道および左総頸静脈を圧排する所見も認めた。頸部造影CT 検査所見でも左葉上極に巨大石灰化を伴い,その外側に嚢胞形成を認めた。一部嚢胞は総頸静脈を圧排していた。細胞診にてclass Ⅳ,乳頭癌の疑いであった。多血症コントロール下,甲状腺全摘術およびリンパ節郭清術を施行した。術中,一部嚢胞成分が流失した。甲状腺全体が硬く,右葉にも腫瘤を認めた。血管に付着していた嚢胞壁を一部残存させた。まとめ:頸部圧迫症状の緩和目的に手術をすることは有意義と思われた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1698-1699 (2015);
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われわれは,繰り返す局所再発に対して手術や薬物療法による加療が困難となった後に,放射線療法によって局所制御を得ることができた悪性葉状腫瘍の1 例を経験した。放射線療法は葉状腫瘍の局所制御に効果が期待でき,特に緩和治療におけるQOL の改善に有用と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1700-1702 (2015);
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症例は74 歳,女性。体重減少(10 kg),全身倦怠感,食思不振を主訴として来院された。約30 年前に肝内結石のため右葉切除を受けた。CT にて肝外側区域全域を占める腫瘍を認めたため,当初胆管癌か大腸癌肝転移と診断,短期大量肝動注療法を施行したが,精査の結果,直腸癌の肝転移と診断した。肺転移もあるため緩和療法の一貫として,症状も緩和したため短期大量肝動注療法を続行したところ,食欲が戻り主訴が排便困難となったため直腸癌を切除した。その後6 か月間,長らく発熱,全身倦怠感が続いたため,予後決定因子である肝転移に短期大量肝動注療法のみを続けたところ,体重が5 kg 増加し,症状が消失したため全身化学療法を追加した。初診時より約9 か月目に背部痛が生じ,第9 胸椎に骨転移を認め,放射線療法を施行した。また,約1 年1か月目に肛門痛が生じ,吻合部再発と診断,放射線療法を施行した。その間も,可能な限り肝動注療法と全身化学療法を施行し,2 年を過ぎて10 kg 減少した体重もほぼ元に戻り,良好なQOLを維持しつづけ外来通院中である。なお,放射線療法を施行した2 か所は現在もPRであり,肺転移のみ両葉10 か所ほどに増加,最大径が約2 cm に増大しているが,特に症状はでていない。
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癌と化学療法 42巻12号, 1703-1705 (2015);
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切除不能進行胃癌からの持続する出血による貧血に対して放射線療法(RT)が効果的であった2 症例を報告する。症例1 は70 歳台,男性。切除不能進行胃癌に対し化学療法中であったが,繰り返す腫瘍出血に対して輸血と内視鏡による焼灼止血術および血管内治療(IVR)による塞栓術を施行した。止血困難であったため,出血コントロール目的に31 Gy/10 FrのRT を施行。その後は貧血の進行は止まり,良好な止血を得ることができた。症例2 は70 歳台,男性。出血性胃癌に対し手術を考慮したが耐術能がなく手術適応とはならず,出血予防目的に 39 Gy/13 Fr の RT を施行した。その後は貧血の進行は認めず,良好な止血を得ることができた。RTは出血性進行胃癌に対する治療法の選択肢の一つとして有用である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1706-1708 (2015);
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小腸悪性腫瘍は非常にまれな疾患であり,当院で2001 年以降4 例を経験した。症例1 は46 歳,男性。主訴は腹痛,黒色便。CTで空腸に腫瘍性病変を認め,部分切除,リンパ節郭清を施行した。中分化型腺癌,SEN0H0P0M0 と診断。13年間無再発生存中である。症例2 は84 歳,女性。主訴は腹痛,嘔吐。内視鏡で空腸に腫瘍性病変を認め,生検により腺癌と診断。SEN0H0P0M0であり,小腸部分切除術施行後7 年間無再発生存中である。症例3 は66 歳,女性。主訴は心窩部不快感,背部痛。精査にて多発肝転移,リンパ節転移を伴う低分化型腺癌と診断。化学療法は希望せず,1 か月後に死亡した。症例4は60歳,男性。主訴は腹痛,嘔吐。CTで空腸に腫瘤性病変を認め,生検により低分化型腺癌と診断。開腹時腹膜播種,リンパ節転移を認め,SIN2H0P3M1 であった。姑息的切除後化学療法(S-1+CDDP)を2 コース行うもPD で,3 か月半後に死亡した。リンパ節転移や播種を伴う2 例は予後不良であったが,根治切除が得られたN0症例は無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1709-1711 (2015);
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症例は56 歳,男性。幼少期から肥大型心筋症を指摘されており,難治性心室頻拍(VT)に対して心室中隔焼灼術,カテーテルアブレーション,植え込み型除細動器埋め込みが行われ在宅療養していた。2014 年7 月より出現したイレウスは保存的加療で軽快するが,その後短期間で繰り返すため原因精査を施行したところ,小腸癌の診断となった。耐術能の問題があったが心機能の予後と経口摂取ができない状況を考慮し,手術にてQOL の改善が必要と考え切除術を行った。腹膜播種を認め,根治手術は不可能であった。しかし,術後経口摂取は可能となり再び在宅療法となった。術後3 か月,患者の強い意志もあり,心機能が安定していることから術後化学療法を行うも副作用の水様便が出現,脱水からVT を起こし化学療法は中止となった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1712-1714 (2015);
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症例は70 歳,女性。6 か月前から心窩部痛を認め,4か月前に上下部内視鏡検査を施行したが異常所見を認めず,様子観察となった。その後も症状が継続し,腹痛の増強を認めたため当院を受診した。腹部CT 検査で小腸癌イレウスが疑われたため,イレウス管で減圧処置後に小腸内視鏡検査を施行した。結果,小腸癌の診断で外科紹介となった。手術は腹腔鏡補助下回腸部分切除術+周囲リンパ節郭清術を施行した。最終病理結果は大腸癌取扱い規約に準じるとpT3(SS)N1(2/27)M0,pStage Ⅲa であった。経口UFT+LV の補助化学療法を外来で施行しており,術後6 か月の現在,再発を認めていない。小腸癌は特異的症状に乏しいため早期発見が難しい疾患であるものの,早期発見により良好な予後が期待できる可能性が高い。単一施設では本疾患の症例数は少ないため,多施設での小腸癌の検討を行う必要があると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1715-1717 (2015);
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家族性大腸腺腫症(FAP)に対する大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術後に子宮体癌・卵巣癌,十二指腸癌が異時性に発生した1 例を経験したので報告する。症例は48 歳,女性。母方がFAP家系。20 歳時,FAPに対して大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術を施行した。その後,長期にわたって随伴病変のサーベイランスを行ってきた。48 歳時,子宮体癌および右卵巣腫瘍の診断で単純子宮全摘,両側付属器切除,大網切除術を施行した。病理診断は,子宮体癌(endometrioid adenocarcinoma),StageⅠB,卵巣癌(endometrioid adenocarcinoma),StageⅠAであった。50 歳時,Spigelman分類Stage Ⅳの十二指腸ポリポーシスに対し,膵温存全十二指腸切除術を施行した。2 病変(最大径20 mm,25 mm)にcarcinoma in adenoma,tub1,Tis,Stage 0 が認められた。膵温存十二指腸切除術から20 か月経過した現在,再発などは認めていない。大腸切除後のFAPでは,十二指腸癌に対する長期にわたるサーベイランスが必要であるが,婦人科癌について従来関連性は低いと考えられてきた。この点を明らかにするには症例の集積が必要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1718-1719 (2015);
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症例は66 歳,男性。黄疸・肝機能障害にて紹介受診となった。ERCP にて中部胆管に円形の欠損所見があり,嵌頓結石を疑いERBD を留置。胆嚢摘出および総胆管切開採石術の予定で手術開始となったものの,術中所見にて腫瘍と診断し腫瘍生検を行った。病理結果にて胆管癌であったため膵頭十二指腸切除を勧めたが,本人の希望にて姑息的な肝外胆管切除術が行われた。病理結果では結節浸潤型,tub2,se,顕微鏡学的な周囲リンパ節転移を認めた。十二指腸側・肝側・剥離面すべての断端で陽性であった。再度本人と相談したものの追加切除の希望はなく,S-1 療法が開始となった(100 mg/日,4週内服2 週休薬)。一時的にCEA の軽度上昇を認めたものの,6 か月ごとの造影CTでは再発兆候は認めず,その他副作用合併症もなく3 年が経過した。姑息的な腫瘍切除とS-1 投与により,3 年以上再発兆候なく生存している中部胆管癌につき報告した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1720-1722 (2015);
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はじめに:胃癌が肝腫瘍を伴った場合,肝腫瘍が肝原発か胃癌の肝転移か鑑別に難渋することがある。初診時に胃癌の同時性肝転移と診断し,S-1+cisplatin(SP)療法が奏効しため手術を施行したが,最終病理診断が胃癌と肝内胆管細胞癌の重複癌であった症例を経験した。症例:80 歳,男性。心窩部痛を主訴に近医受診,胃癌と診断され当科紹介となった。CT検査で多発リンパ節転移,肝外側区域の肝腫瘍と胃癌の膵浸潤の可能性を指摘された。dynamic CT 検査,造影超音波検査,MRI検査を施行したが,肝腫瘍が肝原発か胃癌の肝転移か鑑別が困難であったため肝生検を施行した。肝生検組織の免疫染色はcytokeratin(CK)7(+),CK20(−)であり,胃癌組織と同じ染色パターンを示した。胃癌の同時性肝転移と診断し,SP 療法を開始した。3コース終了後,胃癌,肝腫瘍ともに縮小した。R0手術が可能と判断し,胃全摘術,肝左葉切除術を施行した。病理組織診断は胃癌と肝内胆管細胞癌の同時性重複癌であった。無再発経過観察中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1723-1725 (2015);
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症例は77 歳,男性。2001 年に胃癌にて幽門側胃切除術の既往があり通院中。2010年4 月に黄疸が出現した。画像診断により,閉塞性黄疸を呈し,S4を中心に広範囲の肝浸潤,肝動脈を巻き込み門脈を圧排,肝門部からNo. 12 領域のリンパ節を一塊となして拡がり,十二指腸・膵頭部に接する切除不能進行胆嚢癌と診断された。胆管ステント留置による減黄の後,gemcitabine(GEM)単独療法による化学療法を施行したところ,腫瘍の縮小効果は著明で,化学療法開始6 か月後には胆嚢底部から肝へわずかに浸潤する腫瘤を指摘できるのみにまで改善した。1 年6 か月後には腫瘤影をほぼ指摘できなくなり,5年経過した2015年5 月までに計54コース施行し,腫瘍影の出現なく生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1726-1728 (2015);
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症例は58 歳,女性。発熱と右季肋部痛を自覚し当院を受診した。高度の炎症所見を伴い,腹部造影CT にて胆嚢体底部に肝浸潤を伴う7.5 cmの巨大な腫瘍と大動脈周囲リンパ節腫大,広範なGlissoni浸潤を認め,局所進行切除不能胆嚢癌と診断した。gemcitabine+cisplatin 併用化学療法を6 コース施行したところ炎症所見が消失し,主腫瘍は縮小,Glissoni浸潤も消褪したが,新たに肝S5肝転移が出現した。肝S4a+S5 切除・肝外胆管切除・領域および大動脈周囲リンパ節郭清術を施行した。病理学的診断はpT3a,pN1,pM1(Hep,LYM)でfStage ⅣBであったが,pDM0,pHM0,pEM0でR0 を得た。局所進行切除不能胆嚢癌の予後は極めて不良であるが,downsizing chemotherapy によりR0 切除が可能となる症例があるため,conversion therapyは有用な集学的治療戦略となり得る。
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癌と化学療法 42巻12号, 1729-1731 (2015);
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症例は74 歳,男性。検診で肝胆道系酵素の上昇を指摘され,腹部超音波検査で肝内胆管の拡張を認め,当院を紹介受診した。内視鏡的逆行性胆管膵管造影で中下部胆管に陰影欠損を認め,胆汁細胞診でadenocarcinomaと診断された。また,術前に施行した腹部造影CT で上腸間膜静脈は上腸間膜動脈の左側に位置しており,腹部右側に小腸,腹部左側に結腸を認め,門脈は十二指腸前面を走行しており,腸回転異常症,十二指腸前門脈と診断して手術を行った。開腹時,トライツ靭帯は欠損しており,中腸の発生過程で回転が90 度で停止したnon-rotation typeであった。予定どおり膵頭十二指腸切除術を施行し,Child 変法で再建を行った。術後,一過性に胃排泄遅延を認めたが保存的に軽快し,術後42 日目に退院した。本症例では術前に解剖学的な変異を診断し,安全に膵頭十二指腸切除術を施行することが可能であった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1732-1733 (2015);
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症例は83 歳,男性。発熱と上腹部痛を主訴に外来受診した。腹部CT にて総胆管の拡張を認め,血液検査にて肝胆道系酵素の上昇を認めた。閉塞性黄疸の診断で同日より当科入院となる。ERCP は施行困難であり,PTBD を施行し,手術の方針となった。術中膵頭部,残胃周囲の強固な癒着を認め,切除不能と判断した。診断,治療目的にPTCSを施行する方針へと変更した。約8 週間かけてPTBD 瘻孔径を拡張し,PTCSを施行した。その後,下部胆管癌と診断した。さらに経皮経肝的に胆管ステントを留置した。その後,原発巣の進展を認め,十二指腸狭窄を認めたため十二指腸ステントを留置した。在宅緩和治療を希望され,入院から約5 か月で自宅退院となる。PTCSは時間を要する治療法だが,内視鏡的治療,手術治療が困難な場合は有効な治療法と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1734-1736 (2015);
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症例は83 歳,男性。胆嚢癌に対して拡大胆嚢摘出術・肝外胆管切除術・リンパ節郭清を施行した。術後13 日目に発熱・炎症高値を認め,腹部造影CT にて膿瘍を疑う液貯留を認めた。術後16 日目に超音波ガイド下ドレナージを施行し,胆汁漏と診断した。ドレーン造影ではB5 離断胆管が描出され,離断型胆汁漏の所見であった。ドレナージを継続するも排液が持続したため,エタノール注入を施行した。その後も排液が持続したため,術後80 日目に部分的肝機能廃絶を目的として肝動脈塞栓術(TAE)を施行した。以降,排液は著明に減少し,術後92 日目にドレーン抜去,術後95 日目に退院となった。現在,術後16 か月が経過するが,再発・合併症なく生存中である。難治性離断型胆汁漏に対して,TAEは有効な治療法の一つとなり得ると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1737-1739 (2015);
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症例は75 歳,男性。胆道系酵素異常高値で発症し精査の結果,胆嚢癌の胆管浸潤を認めた。切除には拡大右葉切除が必要であり,門脈浸潤も疑われた。門脈塞栓術を施行した後,手術を施行した。門脈は三分岐型であり合併切除することなく,前,後枝を根部で切断し得たが左枝と門脈本幹が"く"の字に屈曲した形であった。D2郭清,肝切除,胆道再建を行った。しかし,術後に黄疸遷延と腹水貯留が続くため,門脈屈曲による血流障害を疑いexpandable metallic stent(EMS)留置を目的に経皮経肝的門脈造影を行った。その結果,手術直後"く"の字であった箇所の血流障害が明らかになり,屈曲部の前後の圧を計測したところ圧格差が5 mmHg存在した。EMSを留置したところ門脈圧格差は0 mmHgとなり,血流は回復,翌日より黄疸・腹水貯留は速やかに改善した。現在術後1年7か月経過するが再発なく,またEMSの問題も経験していない。
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癌と化学療法 42巻12号, 1740-1742 (2015);
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症例は43 歳,男性。S 状結腸癌・同時性多発肝転移に対し原発巣切除を施行した。mFOLFOX6+BV 療法が著効したため,肝(S7)ラジオ波焼灼療法(RFA)および肝外側区域切除・肝S5 部分切除・胆摘を行った。6 か月後に肝(S7)転移再発のため再度RFA を行い,XELOX+BV 療法を8 コース投与した。治療中断6 か月後に肝転移が再燃し,閉塞性黄疸出現のため内視鏡的に胆管ステントを留置した。IRIS+BV 療法を開始するも肝転移増大による閉塞性黄疸再出現のため,経皮経肝的に肝内胆管ステント3 本を留置した。全身化学療法のメニューを変更しながら現在,原発巣切除から4 年生存中である。進行消化管癌による閉塞性黄疸は,減黄処置不能例と比べ処置成功例の良好な予後が報告されており,減黄後の化学療法再開の寄与が考えられる。本症例は,二度の閉塞性黄疸への減黄処置と全身化学療法再開により長期生存を得ており,大腸癌肝転移への集学的治療と減黄などの適切な局所治療併施の重要性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1743-1745 (2015);
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胆嚢未分化癌(undifferentiated carcinoma: UC)はまれで予後不良な疾患とされている。今回われわれは,根治手術を施行し長期生存を得た胆嚢UCの1 例を経験したので報告する。症例は77 歳,女性。右上腹部痛を主訴に当院を受診した。CT 検査では胆嚢底部に80 mm 大の腫瘤を認めた。肝S4 内に10 mm 大の低吸収域を2 か所認め転移が疑われた。PET 検査では胆嚢への異常集積を認め,胆嚢癌[cT3,cN1,cM1(Hep),cStage ⅣB]の診断となった。一期的に根治切除可能と判断し,肝S4a+S5 切除,胆嚢摘出,大網合併切除,横行結腸部分切除,肝外胆管切除再建,2 群リンパ節郭清を施行した。胆嚢から肝実質に浸潤する100×70×60 mm 大の灰白色調充実性腫瘤性病変を認め,病理組織学的には腫瘍の大部分に多形性を示し,多核・巨核細胞や奇怪な核を有する多菱形から紡錘形細胞の増生からなるUC 領域を認めた。以上の所見より,WHO分類に準じてUC の診断となった。術後の補助療法は施行せず,12か月経過した現在再発の徴候はみられていない。
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癌と化学療法 42巻12号, 1746-1748 (2015);
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症例は58 歳,女性。外来透析治療中の近医にて施行した腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘され,当院当科紹介受診となった。腹部造影CT にて胆嚢底部に造影される腫瘤と,胆嚢床にリング状の造影を認める腫瘤を認めた。FDG-PET にて遠隔転移の所見はなく,審査腹腔鏡検査にて洗浄細胞診陰性と播種病変のないことを確認した。以上より,胆嚢癌,cT3,N0,M0,H0,P0,CY0,cStageⅢA(UICC TNM分類)と診断し,胆嚢摘出術ならびに肝S4a/5 切除術を施行した。病理組織における免疫染色にてCK7(+),CK20(+),chromogranin A(+),synaptophysin(+),CD56(+),Ki-67 標識率は約50%で,神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma: NEC)と診断した。また,ソマトスタチンレセプターは陽性であった。術後14 日目に自宅退院となった。術後3 か月目に多発肝転移再発と下痢症状の再燃を認めたため,外来にてソマトスタチンアナログの投与を行い,下痢症状は改善した。胆嚢原発NEC 1 例を経験したため,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1749-1751 (2015);
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症例は81 歳,男性。発熱と上腹部痛を主訴に近医を受診し,腹部超音波検査にて肝内腫瘤を指摘され当科紹介となった。腹部CT 検査にて肝S5に不整形な低濃度腫瘤を認めた。肝膿瘍を疑い経皮経肝ドレナージを施行し,速やかにsepsis を離脱した。ドレーン造影にて膿瘍腔から瘻孔を介して胆嚢が造影された。膿瘍腔は縮小傾向なく,肝膿瘍または肝原発悪性腫瘍胆嚢浸潤の診断で手術を施行した。開腹所見では肝S5 を中心に腫瘍性病変を認め,横行結腸と胆嚢へ直接浸潤していた。肝S4a,S5 亜区域切除,胆嚢摘出術,横行結腸合併切除,所属リンパ節郭清を施行した。病理組織診断は腫瘤形成型中分化型肝内胆管癌,pT3N0M0,fStage Ⅲであり,粘膜下層に至る横行結腸浸潤と固有筋層に至る胆嚢浸潤を認めた。gemcitabineによる補助化学療法を施行し,術後9 か月現在,無再発生存中である。腫瘍内部に膿瘍を形成し他臓器浸潤を来した肝内胆管癌は非常にまれであり,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1752-1754 (2015);
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症例は70 歳代,男性。心筋梗塞の既往があり,抗血小板薬2 剤内服中。心筋梗塞6 か月後の定期検査で貧血を指摘された。下部消化管内視鏡検査で上行結腸癌を認め,造影CT にて肝門部胆管癌および小腸GIST を疑う病変が指摘され,同時性三重複悪性腫瘍の術前診断となった。薬剤溶出性ステント挿入6 か月後であるため抗血小板薬の休薬が不可能であること,結腸癌からの出血が持続していること,手術侵襲が大きく肝不全などのリスクが高いことを考慮し,二期的に手術を行う方針とした。初回手術は開腹下に門脈塞栓術を行った後,右半結腸切除術および腸間膜腫瘍摘出術(術後脂肪肉腫と判明)を行った。初回手術から約2 か月後,残肝の肥大を確認し,肝右葉切除,肝外胆管切除,胆道再建術を行った。三重複悪性腫瘍(肝門部胆管癌,上行結腸癌,脂肪肉腫)に対し二期的手術を選択し,安全に切除することが可能であった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1755-1757 (2015);
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症例は56 歳,女性。心窩部不快・黄疸を主訴に近医より当院紹介となった。造影CT 検査にて膵頭部と十二指腸の間に早期濃染を伴うf30 mmの腫瘤を認め,上部消化管内視鏡でVater乳頭部に軽度陥凹を伴った隆起性病変を認めた。腫瘍マーカーは CA19-9 のみ 38 U/mL と軽度高値を示し,血中ホルモン測定はいずれも正常値であった。内視鏡下生検で adenocarcinomaが検出されVater乳頭部癌と診断し,リンパ節郭清を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD-ⅡA-1)を行った。病理所見は,腫瘍のほとんどが大十二指腸乳頭部から十二指腸側に存在し,漿膜下組織を経て膵臓に及んでいた。シナプトフィジン・クロモグラニンA 陽性細胞が40%程度散見され,加えて腺癌成分が60%程度存在することから混合型腺神経内分泌癌(mixed adenoneuroendocrine carcinoma: MANEC)の診断となった。現在,術後補助化学療法としてTS-1投与を行い無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1758-1760 (2015);
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症例は63 歳,女性。検診で肝機能異常を指摘され,精査の結果,同時性肝転移(S7,単発)を伴う十二指腸乳頭部癌と診断された。gemcitabine+S-1療法を2 コース施行し,原発巣,転移巣ともに大きさは不変であり,新規病変の出現を認めなかったので,根治切除として亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,肝S7 部分切除術を施行した。術後gemcitabine単剤による補助化学療法を1 年間施行した。術後2 年10 か月が経過した現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1761-1763 (2015);
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はじめに:家族性大腸腺腫症(FAP)に随伴する十二指腸ポリポーシス(DP)に対する膵温存全十二指腸切除術(PPTD)に関する報告は世界的にも少ない。われわれは,小切開下にPPTD を施行したので報告する。症例: 27 歳,女性。経過: FAPのフォローアップ中,上部消化管内視鏡検査にてSpigelman分類(SC)stage ⅣDP と診断し,2014 年11 月,上腹部正中7cm の小切開をおきPPTD を行った。病理組織診断はすべての病変がadenomaであった。術後6 か月で体重減少はなく,糖尿病や脂肪肝の発生を認めていない。考察: SC stage Ⅳは,進行癌を前提としない予防的切除の意味合いが強いことから,手術治療として膵頭十二指腸切除術は過大侵襲が否めない。若年女性のFAP に対する小切開下のPPTD は,低侵襲性,安全性かつ整容性の面においても推奨されるものと考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1764-1766 (2015);
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はじめに:家族性大腸腺腫症(FAP)の重要な随伴病変として,十二指腸ポリポーシス(DP)などが知られているが,神経内分泌腫瘍(NET)の合併はまれである。また,DP に対する膵温存全十二指腸切除術(PPTD)に関する報告は少ない。症例: 62 歳,女性。経過: FAPに対して49 歳時に結腸全摘・回腸直腸吻合術を施行。サーベイランス目的の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚を中心にポリープが多発し,傍Vater 乳頭部に35 mm 大のやや不整な扁平隆起を認めた。Spigelman分類(SC)stageⅣDP と診断し,PPTD を行った。病理組織検査にて,Vater乳頭部に7×5 mmのNET G1を認めた。DP に癌化は認めなかった。考察: FAP に随伴する十二指腸乳頭部NET G1 は極めてまれであり,さらにPPTD を施行した症例の報告はない。今後,厳重な経過観察が必要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1767-1769 (2015);
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症例は62 歳,男性。閉塞性黄疸に伴う全身掻痒感を主訴に当院を受診した。精査の結果,十二指腸乳頭部癌の診断となり,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行された。病理組織学的検査で印環細胞癌と診断された。リンパ節転移は認められなかった。術後補助化学療法を施行せず経過観察されていたが,術後38 か月目にイレウスを発症し,癒着剥離術,回腸部分切除術を施行された。病理組織学的検査では切除回腸の狭窄部に印環細胞癌を認め,腹膜播種再発と診断された。化学療法としてS-1 隔日投与を開始し,14 か月間,腹膜播種増悪によるイレウスを発症するまで継続した。術後58 か月で原病死となった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1770-1772 (2015);
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中間期乳癌のなかには癌の伸展・転移が早いタイプのものもあり注意が必要である。今回われわれは,neuroendocrinecarcinoma様の分化を伴った中間期乳癌を経験したので報告する。症例は66 歳,女性。55 歳時より定期的にマンモグラフィ併用乳癌検診を受けていた。直近の検診より1 年6 か月後に左乳房腫瘤を自己触知して来院した。左乳房CD 領域に可動性のある直径20 mmの腫瘤を触知した。マンモグラフィ検査では異常なく,超音波検査では左乳房CD 領域に辺縁不整な直径20 mm の低エコー腫瘤として描出された。乳房造影MRI 検査では同部に造影効果のある腫瘤として描出された。針生検の結果,浸潤性乳管癌と診断された。T1N0M0,StageⅠの術前診断で,乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節生検術を施行した。病理組織検査では充実腺管癌(neuroendocrine carcinoma様の分化を伴う),T1N0M0,StageⅠと診断された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1773-1775 (2015);
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症例は32 歳,女性,閉経前。2013年11 月より右乳房腫瘤を自覚し,徐々に増大したため2 月に当院を受診した。視触診では,右乳房BE 領域に波動を伴う8 cm の腫瘤があった。乳房超音波検査では嚢胞内に充実成分を含んだ混合性腫瘤で,充実成分の基部は広く不整形であり,カテゴリー4 と診断した。嚢胞内液の細胞診断ではclass Ⅴであり,そのセルブロックで異型の強い細胞からなる集塊がみられた。CTでは右乳房に充実成分を含む約8 cm の嚢胞があり,胸郭を圧排していた。以上より右乳癌と診断し,胸筋温存乳房切除術を行った。病理学的には扁平上皮癌,浸潤性乳管癌,紡錘細胞癌の成分が混在した化生癌であり,浸潤径は1.5 cmで,腋窩リンパ節転移はなかった。免疫組織学的にはER 陰性,PgR 陰性,HER2 陰性であった。術後,補助化学療法として5-FU,epirubicin,cyclophosphamide(FEC)療法,triweekly docetaxel療法を行った。術後1 年経過した時点で再発所見はない。
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癌と化学療法 42巻12号, 1776-1778 (2015);
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症例は71 歳,女性。10 年前,右腋窩リンパ節転移を伴う右腋窩部の潜在性乳癌で,腋窩部皮膚切除術+全層植皮+右腋窩リンパ節郭清術を施行した。術後,化学療法施行後にホルモン療法を約5 年間施行した。その後の約5 年間は通院されなかった。初診より10 年後,右腋窩部腫瘤を主訴に再来院され,皮下腫瘤摘出術+腋窩リンパ節再郭清術を施行した。病理組織診断は初回手術時と同様,乳癌からの転移が最も疑われ,初回手術時と癌細胞の形態が類似しており再発と考えられた。全身検索を再施行するも,乳房内および副乳の存在を含めて原発巣は同定できなかった。本症例のように,長期間にわたり腋窩部局所にのみ転移・再発を繰り返す潜在性乳癌はまれである。転移を伴う原発巣が不明な潜在性乳癌の治療方針・術後経過観察方法を考えさせられる症例であった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1779-1781 (2015);
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症例は46 歳,女性。検診マンモグラフィ(MMG)にて微小石灰化を指摘され,切除生検にて非浸潤性乳管癌(DCIS)の診断であった。断端陽性のため皮膚温存乳房切除,組織拡張器を挿入施行した。追加切除標本に3 mmの浸潤巣を認め,最終病理診断は浸潤性乳管癌[T1a,NX,MX,g,ly0,v0,ER(−),PgR(−),HER2(3+),StageⅠ]であった。補助療法は施行せず。術後9 か月で肝不全症状にて救急搬送され,CT 上多発肝転移を認めたためweekly trastuzumab,paclitaxel併用(HT)療法を施行し,CR を得た。その後肝転移巣の増悪は認めず。以降HT 療法を継続するも,術後1 年11 か月で脳圧亢進症状を訴え,CT にて多発脳転移があり,全脳照射の後,ガンマナイフを計2 回施行した。その後も新たな脳転移巣が出現し,lapatinib 内服を開始し,6 か月SD であった。以降,サイバーナイフを施行するも脳転移のコントロールが不良となり,術後4 年3か月にて死亡した。T1a 乳癌は一般的に5 年生存率が95%以上とされるが,HER2強陽性症例については厳密な経過観察が必要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1782-1784 (2015);
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乳癌は,わが国における女性のがん罹患率の最も高いがんであり,平均寿命の延長に伴い高齢者乳癌は増加している。今回われわれは,当院において手術時80 歳以上43 例の高齢者乳癌の手術例を対象に病理組織検査,予後因子をretrospectiveに検討した。年齢中央値は84 歳。40 例が併存症をもち5 例に他がんの既往があった。発見契機は検診発見例が6 例と少なかった。浸潤腫瘍径は中央値2.4 cmでリンパ節転移陽性は7 例であった。ER 陽性30 例,PgR陽性26 例であった。予後における検討では,全生存率に及ぼす臨床病理学的因子はリンパ節転移陽性例でのみ有意差を認めた。高齢者乳癌の明確な治療方針は示されていない。高齢者は他の年代に比べて個人差が大きく,認知症などの併存症を合併する症例が多く,乳癌以外の原因で死亡することも多いことより高齢者特有の身体的・社会的個人差を十分に評価し,治療方針を決定することが必要と考えた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1785-1787 (2015);
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症例は86 歳,女性。2006 年8 月,右乳癌に対してBp+SNB(negative)。病理結果は浸潤性乳管癌,T1N0M0,StageⅠ,ER(+),PgR(−),HER2(−)。術後tamoxifenを5 年間内服,その後無再発にて経過していた。2014 年11 月,CA15-3 の上昇を認め,PET-CT を施行したところ,右傍結腸溝にFDG の集積を認めた。乳癌腹膜転移あるいは腹膜腫瘍を疑い,確定診断のため外科的切除の方針とした。術中所見にて右傍結腸溝に腫瘤を認め,腹腔鏡補助下右半結腸切除術を施行。病理結果にて低分化腺癌を認め,免疫染色にてCK7(+),CK20(−),mammaglobin(−),GCDFP-15(−),ER(−),PgR(−),HER2(−)であり,乳癌以外の原発巣を認めないため乳癌腹膜転移と診断した。乳癌の腹膜転移の頻度は低く,本症例は確定診断のため病理学的診断が必要であった。またsubtypeの変化も確認でき,その後適切に治療方針を決定できた。乳癌腹膜転移に対して安全に手術が可能な場合は,外科的切除も考慮すべきと考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1788-1790 (2015);
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早期乳癌に対する局所治療の手段としてnon-surgical ablationが報告されているが,その長期成績は未だ不明である。今回われわれは,原発性乳癌に対してラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)を行い,その根治性・整容性・合併症を中心に長期的な成績について検証した。2006〜2010年にRFAを行った26 例を対象とした。皮膚熱傷などの有害事象は認めず,すべての症例において焼灼範囲に一致して硬結が生じ,経過とともに有意に縮小した(p<0.001)が,完全には消失しなかった。9 例では陳旧性の粗大石灰化が生じた。焼灼範囲が乳輪下領域に及んだ2 例では,乳頭変位などの変形が残存した。観察期間中央値88 か月において,再発を来した症例は認めなかった。厳密に症例を選択した場合,RFAの局所制御は良好であるが,硬結の残存や乳房の変形は皆無ではないことを十分に認識すべきと考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1791-1793 (2015);
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乳癌において腋窩リンパ節郭清術の適応を決定する方法として,色素法によるセンチネルリンパ節生検は広く行われている術式である。しかしながら,乳房部分切除後の乳腺においてはリンパ流の途絶や変化によりセンチネルリンパ節の同定が困難になる可能性がある。2013年度版「乳癌診療ガイドライン」では,乳房温存手術後(腋窩リンパ節郭清なし)の乳房内再発に対するセンチネルリンパ節生検は推奨グレードC1 であるが,センチネルリンパ節の同定に苦慮するケースもあり,その適応に関しては検討が必要であると考えられる。今回われわれは,腫瘤摘出術および乳腺切除術の既往がある患者を対象とし,色素法におけるセンチネルリンパ節同定率を検討した。腫瘤摘出術を施行した患者4 例,乳房部分切除を施行していた患者は3 例であった。7 例中6 例でセンチネルリンパ節の同定は可能であり,同定できた症例では全例転移は認めなかった。術後においても,色素法におけるセンチネルリンパ節生検は十分に有用であると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1794-1796 (2015);
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はじめに: 乳房温存手術後の局所再発を防ぐことは重要である。対象と方法: 2007 年1 月〜2013 年12 月までに当院で乳房温存手術を施行し,断端の迅速病理検査を施行した66 例を対象とし,乳腺切除断端の状態と局所再発の関係をレトロスペクティブに検討した。結果:観察期間中央値は52 か月。14 例に断端陽性を認め,9 例で乳腺全摘,5 例に追加切除を行った。偽陰性は2 例に認めた。断端陽性で追加切除もしくは乳腺全摘を行った患者は全例で局所再発を認めなかった。断端陽性率は閉経,年齢,サイズ,リンパ節転移,脈管侵襲,核グレード,ホルモン受容体,HER2とは有意な相関は示さず,組織型が浸潤性小葉癌であるもの,乳管内進展を認めたものは有意に高率であった。まとめ:術中迅速病理検査には手術時に追加切除を行うことで極めて高い確率で切除断端を陰性にすることが可能である。術中迅速病理診断は局所再発率を低下させることが期待でき,有用な検査法と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1797-1799 (2015);
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背景:乳癌手術は全身麻酔下に行われることが一般的であるが,併存症など患者状態によっては全身麻酔を避けるべき症例もあり,このような症例に対し当科では低濃度大量局所浸潤麻酔(TLA)法で手術を行っている。対象:術前に乳癌と確定診断されTLA 下に手術を施行した7 例。結果:全例TLA 下に手術が施行でき,全身麻酔移行例はなかった。乳房の術式は乳房切除(Bt)3 例,部分切除(Bp)4 例。腋窩の術式は郭清2 例,サンプリング1 例,センチネルリンパ節生検(SNB)2 例,腋窩操作なし2 例であった。麻酔方法はTLA のみ2 例,硬膜外麻酔併用5 例であった。局所麻酔剤はリドカインを使用し,極量に達した例はなかった。術後合併症を来した例はなかった。術後1〜67か月の観察期間で,局所再発や転移の新規出現は認めなかった。結論:全身麻酔ハイリスク症例においてTLA下乳癌手術は安全に行え,根治性も良好である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1800-1802 (2015);
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癌の自然退縮は,「無治療か悪性疾患に対して有用でないと考えられる治療によって,悪性腫瘍が一部ないし完全に消失することであり,最低1 か月はそれを持続し,退縮が明らかなもの」と定義され,極めてまれである。症例は73 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚し近医を受診,精査加療目的にて当院紹介となった。左乳癌,cT2N0M0,stageⅡAと術前診断し,両肺野乳腺円状部分切除術および腋窩リンパ節郭清を施行した。最終診断はpT2N1aM0,stageⅡB(充実腺管癌,ER 陰性,PR陰性,HER2 陰性)であった。術後は,放射線照射の後にUFTによる術後補助療法を2 年間行った。術後6 年目のCT にて両肺野に多発する小結節が認められた。高齢でありTS-1 の投与を開始したが,口内炎のために1 サイクルにて中止した。その後は本人の希望もあり,無治療となった。定期的なCT 検査を行っていたが,肺転移病変は徐々に縮小した。現在,治療中止後4 年6 か月が経過したが,肺転移の退縮は継続している。
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癌と化学療法 42巻12号, 1803-1805 (2015);
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症例は64 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚し当科を受診した。精査の結果,左乳癌cT4bN3(左腋窩,胸筋間,左鎖骨上リンパ節転移陽性),M0,cStage Ⅲc と診断され,針生検診断は浸潤性乳管癌,サブタイプはトリプルネガティブであった。術前化学療法としてadriamycin+cyclophosphamide(AC)療法4 コースを施行したが,grade 2 の薬剤性肺障害が出現したため継続を断念した。遠隔転移を認めなかったことから,局所制御に重点を置いた治療方針の下,ハルステッド手術,術後放射線療法を施行した。9 か月経過した現在も再発を認めていない。化学療法有害事象発生例においては,患者の状態に合わせ施行可能な治療法を選択することが重要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1806-1808 (2015);
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症例: 53歳,女性。48 歳時,右乳癌に対し乳房部分切除センチネルリンパ節生検,術後放射線照射施行。病理診断は浸潤性乳管癌,T1cN0M0,stageⅠA,ER+,PR+,HER2−であった。術後ホルモン療法中,腋窩リンパ節と肝臓に再発を来した。化学療法が選択され四次治療まで行ったがすべて無効であった。続いてエベロリムス+エキセメスタンの投与を開始した。再発リンパ節は急速に縮小したが投与開始3 か月後,右鎖骨下の仮性動脈瘤破裂による出血性ショックを来し,IVR にて鎖骨下動脈にステントを留置し止血した。胸壁は欠損し気管支皮膚瘻を形成していた。その後,腫瘍の再増大により投与開始から6.5 か月で永眠された。考察:本症例はエベロリムス投与後の急激な腫瘍縮小により,腫瘍が浸潤していた血管や肺組織の壁が破綻し重篤な状態となったと考えられ,著効例に同様の合併症が生じる可能性があることを念頭に置く必要がある。より緩徐な効果を狙ったプロトコールの開発が望まれる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1809-1811 (2015);
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患者は67 歳,女性。左乳癌に対し手術,放射線療法,adjuvant内分泌療法を施行した。その後,約3 年6か月再発はみられなかった。手術より8 年11 か月後に胸壁腫瘤を認め,これを生検した。病理組織的に乳癌再発と診断された。CT・US などで左前胸壁,左Level Ⅱリンパ節,両側腋窩リンパ節,左肺に転移を疑われ,高用量toremifene(HD-TOR)120mg/dayを開始した。その3 か月目ごろより全身倦怠感,皮膚黄染を自覚し受診,高ビリルビン血症(grade 4),AST・ALT値異常(grade 3)を認め入院となった。CT・MRI 検査では肝胆道系に明らかな異常所見は認めなかった。HD-TORによる薬物性肝障害を疑いHD-TOR を中止し,保存的治療を行ったところ軽快傾向を認め, 第10 病日に退院した。約5 か月半後に血液検査値はほぼ正常化した。肝生検や薬物リンパ球刺激試験などは行っていないが,肝細胞障害型の薬物性肝障害により惹起された肝不全と思われた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1812-1814 (2015);
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症例は64 歳,女性。右乳房にしこりを自覚し,しだいに増悪してきたため近医を受診し,乳癌の疑いで当院紹介受診となった。初診時,右乳房EC 領域に周囲に炎症を伴う50 mmの腫瘤を認め,一部皮膚に露出していた。超音波検査にて同部に50×30×28 mmの境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め,針生検で浸潤性乳管癌,ER(+),PgR(+),HER2(−)と診断された。また,腋窩に15 mmと16 mmに腫大したリンパ節を認めた。右局所進行乳癌,cT4bN1M0,stage ⅢBと診断し,アナストロゾールによる内分泌療法を開始した。7 か月後,腫瘤は24×19×19 mmに縮小し,腋窩リンパ節腫大は消失した。治療効果判定はPR と診断し,手術可能と判断し右乳房切除+腋窩リンパ節郭清+ティッシュ-エキスパンダー留置術を施行した。術後病理検査にて充実腺管癌,nuclear grade 1,Ki-67<1%,リンパ節転移は1 個であった。術後経過は良好で補助化学療法を施行し,インプラントへの入れ替えを行った後,放射線療法を施行中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1815-1817 (2015);
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症例は44 歳,女性。右胸の腫脹を主訴に当科に紹介となり,精査の結果,腋窩リンパ節転移を伴う局所進行浸潤性小葉癌の診断が下った。また,MRIにて大胸筋内に孤立性に造影結節を認めた。術前化学療法を施行した後に,clinical partialresponse の診断で大胸筋・小胸筋切除を伴う乳房全摘術と腋窩リンパ節郭清術を施行した。手術標本ではE-cadherin 陽性で大胸筋内に転移巣は認めなかった。小葉癌は多くは細胞間接着因子であるE-cadherinを欠き,多様な転移様式を示す。小葉癌は化学療法や放射線療法に抵抗性を示すことが報告されており,本症例のように大胸筋に転移を認めた場合,手術治療が局所コントロールにどの程度寄与するかは今後症例の集積が必要と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1818-1820 (2015);
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症例は51 歳,女性。他院で乳癌の診断で治療歴あるも,早期に積極的治療は望まれずに対症療法にて経過観察とされていた。病状の進行に伴い緩和ケア移行を希望され,緩和ケア病院へ転院された。しかし,全身状態から積極的治療をあきらめる状況ではないと判断され,加療目的に当院へ紹介となった。来院時,胸壁浸潤を伴う左乳癌,右乳房転移,多発肝・肺転移,胸膜播種に伴う左胸水貯留,左上肢浮腫を認めていた。骨転移は認めなかった。疼痛管理はオキシコドン塩酸塩徐放物の内服を1 日当たり320 mg,レスキューはオキシコドン塩酸塩徐放物の内服を1 回当たり80 mg という高用量であった。初診の病院へ確認し,免疫組織診断がER(−),PgR(−),HER2/neu 陽性であり,first-lineとしてpaclitaxel(PTX)+trastuzumab(Tmab)を開始した。評価にてSDであったが,途中taxane系抗癌剤が原因と考えられる薬剤性間質性肺炎を発症し中止した。second-lineとしてTmab emtansin(T-DM1)へ変更した。しかし,3 サイクル以降に上肢を中心とした関節痛を訴えるようになり,オキシコドン塩酸塩徐放物を増量し1 日当たり600 mg となった。しかし関節痛は一向に改善せず,骨転移も否定的であったことからT-DM1の副作用を疑い,7 サイクル目から一段階減量を行ったところ,著明に症状が改善した。オキシコドン塩酸塩徐放物は高用量であり,眠気で日常生活への支障がでてきたため,部分ローテーションとしてフェンタニルクエン酸塩の外用薬と併用し,当初オキシコドン塩酸塩徐放物1 日当たり600 mg であったが,フェンタニルクエン酸塩12 mgとオキシコドン塩酸塩徐放物は40 mgまでの減量ができた。疼痛調節不能な関節痛は,T-DM1の副作用の可能性があり得ると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1821-1823 (2015);
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症例は71 歳,男性。心窩部痛を主訴に当科を受診し,上部消化管内視鏡検査にて胃体中部後壁に2 型様の潰瘍性病変を認め,生検で胃原発T 細胞性悪性リンパ腫の診断であった。胸部CT 検査では,右肺尖部に原発性肺癌を疑う3 cm 大の結節影を認めた。胃原発T 細胞性悪性リンパ腫に対する外科的切除を先行し,胃全摘,D2郭清,術中所見で膵臓への浸潤を認めたため膵体尾部切除術を施行した。術後73 日目右肺中葉に肺膿瘍を発症し,右肺尖部腫瘍を含め右肺上葉S1 楔状切除,中葉切除術を施行した。病理検査で肺尖部腫瘍は肺MALTリンパ腫,中葉は緑膿菌による肺膿瘍の診断であった。胃切除術後12 か月,傍食道リンパ節再発増大により食道狭窄を来し,誤嚥による窒息で永眠された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1824-1826 (2015);
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症例は40 歳,女性。切迫早産,既往帝切,筋腫合併にて近医より当院産婦人科へ救急搬送され,31 週0 日で緊急帝王切開にて第二子を出産した。術中所見で筋腫と考えられていた腫瘤が子宮と連続していないことが判明し,外科コンサルトとなった。CT 上肝外側区域に長径18 cm大の巨大腫瘤,縦隔腫瘤,肺多発結節影を認めた。この時点では縦隔転移・多発肺転移を伴う原発性肝腫瘍を第一に疑い,転移性肝腫瘍の可能性も考えた。肝病巣が予後規定因子となると判断し,出産後8日目に肝左葉切除術,S5 部分切除術を施行した。病理組織学的には神経内分泌腫瘍(NET)G2 と考えられたが,肝原発NET の発生頻度がまれであることから胸腺原発腫瘍の可能性を考えて追加免疫組織化学染色を行ったところ,p63,CD5,c-kit,bcl-2 が陽性となり,最終的に胸腺癌の多発肝転移・多発肺転移と診断した。出産直後に発見された若年胸腺癌肝転移はまれであり,若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1827-1829 (2015);
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患者は56 歳,女性。主訴は咳嗽。2011年に右肺S6 に46 mmの腫瘍および対側の肺転移を認め,肺腺癌Stage Ⅳと診断された。6 種類の全身化学療法を施行されたが最終的に不応となり,2014 年当院を受診した。CEA は 9.8 ng/mL,造影CT で右肺S6 に75×73×54 mm の腫瘍を認めた。腫瘍は右主気管支に浸潤し,咳嗽の原因と考えられた。2014 年10 月〜2015年3 月にかけて5 回の動注塞栓術を施行した。選択血管は気管支動脈とし,薬剤はCDDP 20 mg,DOC 20 mg,5-FU250 mg を用いた動注とした。ヘパスフィア(R)25 mg にDOC 20 mg を含浸させて塞栓し,血管造影で腫瘍濃染の消失を確認した。手技は成功し,有害事象は認めなかった。1 回の治療で咳嗽は軽快し,5 回の治療でCEAは 4.3 ng/mL に低下,腫瘍は48×42×40 mmに縮小,右主気管支への浸潤は解除された。初診から現在まで9 か月の無症状期間を得ている。
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癌と化学療法 42巻12号, 1830-1832 (2015);
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肺の粘表皮癌(mucoepidermoid carcinoma: MEC)は,比較的太い気管支の粘膜下層から発生するまれな唾液腺型の肺癌で,細胞学的・組織学的特徴から低悪性度と高悪性度に分類され予後とよく相関する。初回の閉塞性肺炎のエピソードで発見された36 歳,男性の肺MECの1 例を報告する。CT と気管支鏡検査で,右肺B3の気管支腔内腫瘍と末梢の無気肺を認めた。治療方針の決定のため生検は重要であるが,本症例では術前・術中生検とも偽陰性であった。右肺上葉切除により腫瘍は完全切除され,最終病理診断で低悪性度のMEC と判明した。補助療法なしで術後2 年経過し,再発徴候を認めていない。唾液腺MECと同様に,肺MECでもt(11; 19)転座によるCRTC1-MAML2融合遺伝子が高率に認められ,同遺伝子が誘導するEGFR リガンドのamphiregulin を介した増殖シグナルを抑制することにより,EGFR-TKIが奏効する可能性が推定されている。
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癌と化学療法 42巻12号, 1833-1835 (2015);
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家族性大腸腺腫症(FAP)は,常染色体優性遺伝性疾患であり大腸以外の他臓器に随伴病変を発生し,女性では甲状腺癌を合併する可能性が高い。今回,FAP で異時性に多発甲状腺癌を合併した1 症例を経験したので報告する。症例は36歳,女性。19歳時,左甲状腺乳頭癌に対し甲状腺左葉切除術を施行された。この際にFAPは指摘されなかった。今回,検診の上部消化管造影検査で胃に多発するポリープを指摘され,下部消化管内視鏡検査にて大腸全体に100 個以上の多発するポリープを認め,非密生型FAPと診断した。術前CT 検査で甲状腺右葉に腫瘍性病変を認め,穿刺吸引細胞診で乳頭癌と診断された。大腸全摘術の4 か月後に残存甲状腺全摘術を施行した。病理でcribriform-morula variant of papillary thyroid carcinomaと診断された。甲状腺手術後から2 年6か月経過した現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1836-1838 (2015);
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症例は67 歳,男性。糖尿病のため近医に通院中であった。左側腹部痛を契機に脾腫瘍を指摘され,精査加療目的に当院紹介受診となった。腹部CT,MRI検査では脾臓に10 cm 大の腫瘍を認め,横隔膜との境界が不明瞭となっていた。また,PET-CT 検査では左鎖骨上窩,左腋窩にもFDG の集積を認めた。血液検査ではLDH,sIL-2Rが高値であり悪性リンパ腫が鑑別にあがった。脾臓破裂のリスクがあると考え脾臓摘出術を先行し,病理検査にてびまん性大細胞型B 細胞悪性リンパ腫と診断された。現在,他院にて化学療法中である。脾悪性リンパ腫においてはまれながら脾臓破裂を起こす症例が散見される。なかには悪性リンパ腫の治療中に脾臓破裂を発症した症例もある。脾臓破裂のリスクを評価する明確な基準はないものの,本症例のようにすでに腫瘍細胞が脾被膜に及んでいる場合には,脾臓摘出術を先行させることは選択肢になり得ると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1839-1841 (2015);
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症例は72 歳,女性。臍部の腫瘤と悪臭を主訴に来院。診察時,臍部の壊死を伴った腫瘤に加え,下腹部中心に可動性に乏しい巨大腫瘍を触知した。CT にて臍部の腫瘍と嚢胞を伴う巨大卵巣腫瘍,腹膜播種,肝転移,脾転移,尿膜管腫瘍を認めた。消化管通過障害の症状や画像所見は認めなかった。原発巣検索を行ったところ,卵巣腫瘍は卵巣原発ではないと診断した。残すは大腸内視鏡検査となったが,腫瘍による圧排とS 状結腸憩室にてスコープの挿入は困難であり,大腸の評価が不可能であった。このため,臍部の腫瘍の切除生検を行った。病理組織診断では大腸癌と尿膜管癌の可能性が高い所見であったため,大腸癌にも効果が期待でき尿膜管癌で奏効したと報告のあるmFOLFOX6を選択した。現在,評価病変は腫瘍コントロールが良好である。一般的にSister Mary Joseph結節の報告は散見される。腹腔内悪性腫瘍の原発巣として胃,膵,卵巣が多いが,本症例ではこれらが否定的であり,原発巣診断ができないなかで治療選択に苦慮した症例であった。若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1842-1844 (2015);
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症例は51 歳,男性。既往にB 型肝硬変,肝細胞癌(HCC)に対するラジオ波焼灼療法(RFA)および肝動脈化学塞栓療法(TACE)があり経過観察されていたが,門脈右枝へ進展する腫瘍栓を伴う肝S6 の再発を認めた。切除後早期再発の可能性が高く,残肝予備能不良であることから,この時点では切除困難と判断し,腫瘍栓に対する放射線照射(RT)とTACEを施行した。RT 後,腫瘍栓は画像上器質化した所見を呈し,経過中左葉への肝内転移再発を認めず,また左葉の容量が増大したため耐術可能と判断した。肝右葉切除術,門脈合併切除再建および脾臓摘出術を施行した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1845-1847 (2015);
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脈管侵襲を伴う肝細胞癌(HCC)は予後不良であるが,肝予備能が良好な場合は手術も選択される。症例はC 型肝炎ウイルスキャリアの68 歳,男性。肝中央二区域を占拠する約10 cm の腫瘍をはじめ,左葉にも肝内転移を認め,Vp2,Vv3の高度脈管侵襲を伴う多発HCC と診断した。cisplatinによる肝動注化学療法(HAIC)とsorafenib内服を開始し,主腫瘍の著明な縮小を認め,viable lesionに対して腹腔鏡下肝部分切除を施行した。主腫瘍はほとんどが凝固壊死に陥っていた。術後4 か月で肝内多発再発を認め,HAICと経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA),sorafenib内服を再開し,初回HAICから25か月の時点で病勢の制御が得られている。脈管侵襲を伴う多発HCC に対して手術を含めた集学的治療を行うことにより,予後の延長が期待できると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1848-1850 (2015);
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症例は59 歳,女性。2014年3 月に腹部膨満感を主訴に,近医で肝左葉に10 cm 大,尾状葉とS6 に1 cm大の計3か所の肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)と診断された。腫瘍栓は門脈臍部から対側三次分枝および門脈本幹まで認めVp4 と診断された。多発HCC に対して肝動注化学療法,門脈腫瘍栓に対して放射線療法を施行後に拡大左葉切除,S6 部分切除,腫瘍栓摘出術を施行した。術中出血コントロールと残肝機能を保つために側副血行路を温存した。術後14 日で退院となり,退院1 か月後に肝動注化学療法を開始し,現在,術後12 か月生存中である。高度門脈内腫瘍栓を伴ったHCC に対し集学的治療を施行し,12か月生存中の症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1851-1853 (2015);
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高度脈管侵襲併存肝細胞癌(HCC)は予後不良であるが,外科切除のみ唯一根治が望める治療法である。術前肝動脈化学塞栓療法(TACE)の併施や術後肝動注化学療法(HAIC)などの集学的治療を施行し,切除したVp3を伴うHCC 2 例について報告する。症例1: 73 歳,男性。慢性C 型肝炎にてフォロー中,腹部超音波検査で肝S1 に腫瘤を認め,精査の結果HCC(Vp3)の診断にて手術を施行した。術後HAICを施行し,2 年2 か月無再発生存中である。症例2: 77 歳,男性。2009年6 月,NASH-LCによるHCC に対し肝切除後,内科にてTACE など治療継続をしていた。経過中,肝S2 およびS5 再発病変を認め,精査の結果HCC(Vp3)の診断にて手術を施行した。術後補助療法は施行せず,1 年8 か月無再発生存中である。高度脈管侵襲を伴うHCC は切除施行により長期生存例も認めることがあり,肝切除前後にTACE やHAICなどの補助療法を組み合わせることにより長期生存する可能性があることが示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1854-1856 (2015);
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症例は65 歳,男性。2014 年7 月,前医にて直腸癌(Rs)に対して高位前方切除術,D3リンパ節郭清術を施行[2 型,T3(A)N0M0,StageⅡ]。術中に肝S4 に小結節を触知した。術後,腹部造影CT 検査にて肝S4/8 に径 5 cm 大の腫瘍と門脈左枝から本幹へ延びる腫瘍栓を認めたため,8 月に当院紹介受診となった。腹部造影MRI検査では腫瘍の辺縁が分葉状で,早期相で辺縁優位に造影,肝細胞相では低信号であった。18F-FDG-PETでは,腫瘍に異常集積(SUVmax=18.3)を認めたが,他に明らかなリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった。CA19-9,CEA,AFP,PIVKA-Ⅱは正常範囲内であった。以上より,門脈内腫瘍栓を伴った混合型肝癌または大腸癌肝転移と診断し,9 月,肝拡大左葉切除術,門脈内腫瘍栓摘除術を施行した。切除標本では主腫瘍,門脈内腫瘍栓とも高分化型腺癌で,免疫染色ではCK7 陰性,CK20 陽性,CDX2陽性であった。以上より,門脈内腫瘍栓を伴った大腸癌肝転移と診断した。術後6 か月経過後,肝転移再発を認め,化学療法を施行中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1857-1859 (2015);
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症例は77 歳,女性。左腸骨動脈瘤術後に施行した腹部CT にて肝腫瘤を認め前医を受診した。精査にて肝細胞癌(S8)と診断された。腸骨動脈瘤治療直後であったため,transcatheter arterial chemoembolization(TACE)による治療が選択された。TACE を計2 回施行するも腫瘍マーカーの漸増を認め,手術目的に当科紹介された。当科における術前精査で主腫瘍以外に前縦隔にdynamic CT およびEOB-MRI にて径20 mm 大の腫瘍を認め,前縦隔リンパ節転移が疑われた。その他の部位には明らかな転移病変は認めなかったため,手術の方針となった。手術は肝S8 亜区域切除術,腹腔アプローチによる前縦隔腫瘍摘出術を施行した。周術期合併症を認めず,術後12 日に退院となった。病理診断は混合型肝癌および前縦隔リンパ節転移の診断であった。術後腫瘍マーカーは低下を認め,患者は術後6 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1860-1862 (2015);
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症例は46 歳,女性。混合型肝癌に対し肝右葉切除術,胆嚢摘出術,肝門部リンパ節のサンプリングを施行した。術後にS-1 内服を開始したが,血清CEA 値は経時的に漸増した。術後12 か月目のPET-CT 検査で孤立性の大動脈周囲リンパ節再発と診断され,大動脈周囲リンパ節郭清を施行した。組織学的にリンパ節再発巣は肝細胞癌成分で構成されていた。術後にソラフェニブ内服を開始した。肝切除後17 か月が経過し,生存中である。混合型肝癌の孤立性大動脈周囲リンパ節転移再発に対しては,特にリンパ節転移個数が少数であれば外科切除を含む集学的治療により予後改善が期待される。
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癌と化学療法 42巻12号, 1863-1865 (2015);
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症例は82 歳,男性。1977年からC 型慢性肝炎があり,1997 年に膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対し手術を施行した。2005年8 月に胆管細胞癌(CCC),肝細胞癌(HCC)に対して肝臓亜区域切除術を施行した。2007 年2 月に右横隔膜上にCCC のリンパ節再発を認め,胸腔鏡補助下右横隔膜上腫瘍切除術を施行した。ここまでの経過は既報であるが,2012 年1月には左肺扁平上皮癌に対して胸腔鏡補助下左上葉切除,S6 部分切除を施行した。2015 年 2 月に肝 S5,S5/8 に HCC を認め,経皮的ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)を施行した。18 年間で膵臓,肝臓(CCC,HCC),肺に四重複癌を認めたが,積極的に治療を行ったことにより,現在も癌病巣はなく生存中である。CCC を含めた6 病変四重複癌はまれであり,文献的考察を含めて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1866-1868 (2015);
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症例は48 歳,女性。婦人科にて子宮筋腫に対して腹腔鏡下子宮全摘術を施行された際の上腹部の観察において肝外に突出する腫瘤を認め,当科紹介となった。肝S6尾側に突出する3 cm 大の腫瘤は,腹部超音波検査での内部エコーで肝実質と同程度であった。単純CT では筋肉と同程度の濃度を示し,造影CT では早期濃染を示した。MRIではT1,T2強調画像ともに正常肝と同程度の信号強度であった。肝細胞相では軽度高信号を示した。これらの画像所見からはFNH を疑い,腹腔鏡下肝S6 部分切除術を施行した。腫瘤の割面像は肝組織と類似していた。病理組織結果では正常肝組織と脈管を介した肝組織であることから,副肝葉であった。腫瘤内には高分化型肝細胞癌が認められた。以上より,副肝葉に発生した肝細胞癌と診断された。婦人科手術時に発見された肝外肝組織の報告はなく,今後腹腔鏡による腹腔内観察により肝外肝組織の発見が増加することが予想される。
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癌と化学療法 42巻12号, 1869-1871 (2015);
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症例は62 歳,女性。増大傾向を示した肝S3 低エコー腫瘤を指摘され,手術目的で2015 年1 月に当科に紹介受診となった。腹部造影CT 検査では肝S3 に径36 mm 大の早期濃染腫瘤を認めた。EOB-MRI検査では肝S3 腫瘤は早期濃染し,後期相でも濃染が持続し,肝細胞造影相では高信号を示した。1 年前の画像検査では肝腫瘤は径30 mm大であり,明らかに増大傾向を示した。肝限局性結節性過形成(FNH),高分化型肝細胞癌(HCC)などの鑑別診断が考えられた。脂肪肝,胆嚢結石症の所見も認めた。肝腫瘤が増大傾向を示し,高分化型HCC も否定できないため,2015 年2 月に腹腔鏡下肝外側区域切除術,胆嚢摘出術を施行した。術後経過良好で,術後11 日目に当科を退院した。病理組織所見は構成する肝細胞に異型性は認められず,FNHと診断した。本症例は増大傾向を示し,画像診断上,HCC との鑑別診断に苦慮した。術前診断精度の向上のために,非典型例を含めたFNH 症例の集積と解析が重要であると考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 1872-1874 (2015);
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直腸NET 多発肝転移に対して,集学的治療による長期生存を得た1 例を経験したので報告する。症例は71 歳,男性。2005 年 6 月に下血を主訴に当院内科を受診し,直腸癌肝転移の診断で UFT/LV 療法を開始した。2 コース施行し progressivedisease であり,2005年10 月よりS-1を開始しpartial response で経過した。2010年2 月に直腸前方切除術,4月に肝後区域切除術,S2/8 部分切除術を施行し,術後病理検査にて直腸NET およびNETの多発肝転移と診断された。2011 年 12月に多発肝転移再発を来し,肝動脈塞栓化学療法(TACE),ラジオ波焼灼術(RFA)を開始し,それぞれ計4 回,2 回施行した。2014年3 月よりソマトスタチンアナログ投与を開始し,現在も継続している。初診時より10 年,再発後3年6か月経過しているが生存中である。本症例は,術後再発後の集学的治療が長期生存に寄与したと考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1875-1877 (2015);
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症例は62 歳,女性。肺炎の診断で入院となり,受診時のCT で肝右葉を占める腫瘤を認めた。AFP 101.05 ng/mL,PIVKA-Ⅱ 2,177 mAU/mL と高値を認めた。肝機能検査では Child-Pugh 分類 A,肝障害度 B,ICG R15 34%であり根治切除は不能と判断した。new FP 肝動注療法にて治療を行う方針とした。new FP 療法変法(CDDP 50 mg+リピオドール5 mL:day 1,8,5-FU 250 mg bolus: day 1,8,5-FU 250 mg: day 1〜5,day 8〜12)を開始した。1 コース目は副作用なく2 コース目の治療を開始したところ,発熱,肝機能悪化を認め中断,2 コース目day 8 の投与を開始したが,発熱,血尿を認め中止とした。PR の抗腫瘍効果を得ることができ手術を予定している。new FP 療法は大結節型肝細胞癌に対し高い奏効率が期待でき,集学的治療の一部として有用であることが示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1878-1880 (2015);
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進行肝細胞癌(HCC)に対して腫瘍縮小効果に優れた肝動注化学療法と生存期間延長に寄与するソラフェニブの併用療法が奏効した1 例を経験した。症例は57 歳,男性。アルコール性肝硬変の加療中にHCC を指摘され,当院を紹介受診。その約1 か月後のMRI 検査でHCC の急速増大と門脈腫瘍栓形成を認め,アイエーコール(R)の肝動注化学療法を施行した。しかしながら,腫瘍の増大を認めたためTAEを3回施行した。いったんは腫瘍の全体的な縮小を認めたものの,TAE 1 か月後には腫瘍は再び増大したためソラフェニブの内服を開始した。その後,動注リザーバーを留置しlow-dose FP 療法3 回,エピルビシンおよびマイトマイシンC の動注療法を1 回施行したが腫瘍の増大を認め,初回治療10 か月後よりアイエーコール(R)の肝動注化学療法を約6 週間隔で施行。5 サイクル施行後より急速に腫瘍マーカーの低下を認め,CT 画像上も腫瘍の縮小と動脈濃染の消失を認めた。初回治療23 か月後の現在,腫瘍のviability はほとんど消失し制御された状態が維持されている。
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癌と化学療法 42巻12号, 1881-1883 (2015);
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症例は36 歳,日本人女性。2010 年6 月,肝細胞癌,B 型肝炎,多発性肺転移の診断でカナダにて肝右葉切除術を施行した。さらに,ベバシツマブ,ドキソルビシンによる化学療法を施行した。しかし,肝内多発再発および多発性肺転移悪化のため,帰国し当院受診となった。本人希望にて免疫治療を併用しながら,局所療法として肝動脈化学塞栓術やリピオドリゼーションを施行した。さらに,肺転移に対して全身化学療法としてゲムシタビン,5-FU,シスプラチン,ソラフェニブなどを使用しながら加療を進めた。多発性肺転移は少し大きさが小さくなることもあったが,徐々に増大傾向であった。腫瘍マーカーとしてPIVKA-Ⅱが指標となったが,化学療法が徐々に効果を示さなくなるにつれ,数値も上昇し始めた。PET 検査では肺以外には明らかな集積は認めなかった。このため,外科的切除を試みることとなった。まず,2014 年3 月に胸腔鏡補助下に右肺上葉S3区域切除,右肺下葉S10,S8 部分切除術を施行した。さらに,その1か月後に左肺S1+2 部分切除+S3区域切除+S9+10区域切除+S10 部分切除術を施行した。また,8 月に残肝S4 に18 mm の再発病変を認め,リピオドリゼーションを施行した。以後,現在に至るまでPIVKA-Ⅱも正常範囲内となり,明らかな再発病変を認めていない。病理学的診断では,肝細胞癌再発に矛盾しない所見と考えられた。肝細胞癌の遠隔転移に対する治療は,奏効する化学療法があまりなく治療に難渋する。今回,外科的治療と全身化学療法,血管造影下による治療を組み合わせた結果,QOLがよく無再発での経過が得られているため,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1884-1886 (2015);
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目的:腹腔鏡下肝切除術は低侵襲性と整容性に優れた術式であり,2010 年4 月に先進医療から保険収載されてからは多数の施設で施行されつつある。一方で,再発肝癌では前回手術の癒着があり,鉗子の動作制限や視野の方向制限がある腹腔鏡下手術では施行困難な状況も予想される。当院では再発肝癌に対し腹腔鏡下肝切除術を適用しており,結果を報告する。方法と成績: 2010 年6 月〜2014 年12 月までに当院で施行した180 例の肝細胞癌に対する腹腔鏡下肝切除術を対象とした。肝細胞癌180 例中33 例で切除後腹腔鏡下再肝切除術を施行し,うち26 例は肝部分切除術であった。癒着は肝切離面,前回開腹創直下に限局していた。肝部分切除術の手術時間242 分,出血量は少量,術後在院日数は12.0 日であった。開腹肝切除術後と腹腔鏡下肝切除術後の再肝切除はそれぞれ12例,21 例で,手術時間303.5分,248 分(p=0.382),出血量はともに少量(p=0.112),術後在院日数は9.0日,11.0日(p=0.236)であった。考察と結語:腹腔鏡下再肝切除術は安全に施行できた。腹腔鏡下肝切除術後の再肝切除術症例では開腹創直下の癒着がなく,有意差は認めないものの開腹肝切除術後症例に比較して良好な結果が得られた。一方,肝切離面近傍の再発では癒着剥離に時間を要する場合も多く,今後の検討課題であった。腹腔鏡下肝切除術は,poly-surgeryとなり得る再発肝癌に対して有用な選択肢と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1887-1889 (2015);
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背景: 当科では肝切除の術前腸管処置として術前日にニフレック(R)2 L を内服していた(N群)が,2012 年11 月より術前日のマグコロール(R)250 mL 内服へ変更した(M 群)。方法: 2012 年4 月〜2013 年6 月まで当科で施行した胆道再建,消化管合併切除を伴わない肝切除症例90 例(N 群39 例,M群51 例)を対象として手術時間,出血量,術後在院日数,surgicalsite infection(SSI)発生頻度,術後の白血球,血小板,CRP,アンモニアの値を検討した。結果:対象疾患,術式,手術時間,出血量,術後在院日数はいずれも両群間で有意差を認めなかった。SSI発生は両群ともに認めなかった。術後の白血球,血小板の値は両群間で有意差を認めなかったが,CRP は1POD,3POD,5POD でM 群が有意に低値であり,アンモニアは5PODでM群が有意に低値であった。結語:簡便なマグコロール(R)による術前腸管処置に変更してもSSIの増加,血中アンモニアの上昇は認められず,炎症反応の低下が認められた。肝切除の術前腸管処置を安全に簡略化することが可能であった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1890-1892 (2015);
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症例は67 歳,男性。健診の上部消化管内視鏡検査で胸部中部食道の表在型扁平上皮癌と,腹部食道のBarrett上皮に続く表在型腺癌を認めて当院紹介となった。扁平上皮癌(Mt,cT1bN0M0)と腺癌(Ae,cT1aN0M0)の同時性食道多発癌と診断し,食道亜全摘(右開胸開腹・胸骨後経路胃管再建)を施行した。病理組織学的に腹部食道病変はBarrett腺癌と証明された。食道癌は多中心性発生が示唆されており多発癌を認めることも少なくないが,本邦ではほとんどが扁平上皮癌どうしであり,扁平上皮癌とBarrett 腺癌からなる食道多発癌はまれである。しかし近年,Barrett食道の増加を認め,Barrett腺癌が増加する可能性が考えられており,扁平上皮癌とBarrett 腺癌からなる食道多発癌についても念頭に置いて診療を行うことが重要と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1893-1895 (2015);
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症例は50 代,女性。嚥下困難を主訴に前医を受診した。食道癌と診断され,当院を紹介受診になった。精査にて胸部上部中部食道に気管浸潤を伴う局所進行食道癌を認め,生検組織診は類基底細胞癌であった。遠隔転移は認めず,治療前診断はcT4N2M0,cStage Ⅳaであった。治療は全身化学療法の方針となり,FAP療法(5-FU+DXR+CDDP)を行った。病変は著明な縮小を認めたが1 年後再増大したため,二次治療としてCDGP+DOC 療法を行った。さらにその後,つかえ感が出現したため,病変部に対し放射線治療を行ったところ,再び著明な縮小を得た。現在治療開始から4年経過したが,経口摂取も可能で化学療法を継続できている。類基底細胞癌の局所進行食道癌で,これまで本症例のように長期生存を得た報告はない。本症例では,奏効率の高い化学療法と放射線治療を組み合わせたことで長期の生存が得られていると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1896-1898 (2015);
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食道癌皮膚転移は比較的まれであり,予後不良である。今回われわれは,食道癌皮膚転移症例を経験したので報告する。症例は70 歳,男性。潰瘍を伴う鼻翼の腫瘤にて当院受診され,皮膚の生検で転移性皮膚癌と診断された。全身の皮膚に多発腫瘤が認められており,原発巣精査のためにPET 検査を施行したところ,皮膚,肝臓,食道にFDG の集積を認めた。上部消化管内視鏡検査では,胸部中部食道に3 型腫瘍を認め,生検で扁平上皮癌と診断された。多発遠隔転移を伴う進行食道癌と診断し,化学療法を施行した。また,鼻翼の腫瘍は疼痛,出血を伴っておりquality of life(QOL)が低下していたため放射線治療を施行した。放射線治療にて鼻翼の腫瘍は縮小し,治療開始から3 か月で瘢痕化し,原病死する6 か月まで増大しなかった。食道癌皮膚転移症例に対し,良好なQOL を得るのに放射線治療が有効であった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1899-1901 (2015);
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ヨード染色でまだら不染帯を呈するまだら食道には,多発食道癌の頻度が高い。一方,食道類基底細胞癌は非常にまれな疾患で,特徴としては粘膜下層に発育の主座を置き,粘膜下腫瘍様の形態をとる。また,生物学的に悪性度が高いとの報告がある。今回,まだら食道に異時性に上皮内扁平上皮癌と表在型類基底細胞癌を合併した1 例を経験したので報告する。症例は63 歳,男性。45 歳時に胃癌に対して切除を施行した。その後のサーベイランスの内視鏡検査にて,2000年に食道に0-Ⅱc 病変を認め,第1 回目のEMRを施行した。病理検査では上皮内扁平上皮癌であった。この後まだらなヨード不染帯を認め,dysplasiaの診断で計2 回EMR を施行した。2014年に高異型度上皮内腫瘍の診断で,第4 回目のEMRを施行した。病理検査では上皮内に扁平上皮癌と粘膜固有層に類基底細胞癌を認めた。T1a-LPM,ly0,v0,pHMX,pVM0。約1 年経過した現在,再発はない。
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癌と化学療法 42巻12号, 1902-1904 (2015);
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症例は54 歳,男性。嚥下時つかえ感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査にて切歯より28〜33 cm に全周性の2 型腫瘍を認め,扁平上皮癌の診断を得て,加療目的に当科紹介となった。cT3N2M0,cStageⅢ食道癌に対して術前化学療法(5-FU+CDDP 療法)を2 コース施行後に,右開胸開腹食道亜全摘術,3 領域リンパ節郭清,胸骨後経路胃管再建術を施行した。病理結果はCT-pT1a-EP(T2),pN0,sM0,fStage 0 であり,術前化学療法の治療効果判定としてはGrade 2 であった。術後8 か月時のPET-CT にて右前頭頭頂葉にFDG 集積低下域を指摘され,頭部MRI により右前頭葉に分葉状の造影腫瘤性病変を認め,転移性脳腫瘍と診断しガンマナイフ療法を施行した。現在,治療後27 か月を経過し,無再発生存中である。Stage 0 食道癌の脳転移例はまれであり,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1905-1907 (2015);
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まれな食道悪性腫瘍である癌肉腫は手術療法が標準であるが,今回化学放射線療法で比較的良好な治療効果が得られたので報告する。症例は87 歳,男性。主訴は吃逆。治療前診断は癌肉腫T2N0M0,cStage Ⅱであった。高齢であり,脳梗塞の既往のため抗血栓療法が欠かせず,慢性腎不全に加え高血圧症や大動脈弁硬化症などの循環器系疾患の併存などから根治手術を選択せず,化学放射線療法(TS-1 40 mg/day 2 週間投与1 週間休薬,66 Gy照射)を実施した。有害事象はほとんど認めなかった。治療後の評価では,主病変は著明に縮小し基部を残すのみとなった。癌肉腫の治療は食道癌に準じリンパ節郭清を伴う根治切除とされているが,耐術能に問題のある症例や手術拒否例においては,TS-1 併用放射線療法は高齢者や腎機能異常を有する症例でも適宜減量して安全実施可能な一つの選択肢であると考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1908-1910 (2015);
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症例は67 歳,女性。食事つかえ感を主訴に当院を受診した。精査にて胸部中部食道進行癌と診断した。術前のCT 検査で右鎖骨下動脈起始異常(ARSA)も診断した。NAC(FP 療法)2 コース施行後に右開胸食道亜全摘,3 領域リンパ節郭清術を施行した。右反回神経は右鎖骨下動脈を反回せず,右迷走神経より直接分岐し,喉頭に横走する非反回下喉頭神経(NRILN)を呈していた。胸管は右鎖骨下動脈前面を上行し右静脈角に流入していた。#106 recLリンパ節もほぼ通常どおりに郭清できた。現在,術後1年経過し,無再発生存中である。ARSAは比較的まれな先天奇形であり,安全な手術を施行するために術前からNRILN などの脈管の走行異常の存在を認識しておくことが肝要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1911-1913 (2015);
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症例は58 歳,女性。41 歳時に特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)と診断。55 歳時に腹腔鏡下脾摘術を施行するも無効であり,以降もプレドニゾロンを内服していた。食物のつかえ感があり上部消化管内視鏡検査を行ったところ,食道に腫瘍性病変を指摘され当科紹介となった。精査にて食道扁平上皮癌,cT3N1M0,StageⅢAの診断であった。免疫グロブリン大量療法,血小板輸血を行い,血小板数は11.0×10 / 4mm3まで上昇したため食道亜全摘,後縦隔胃管再建,3 領域郭清を施行した。術後血小板は低下を認めたが,血小板輸血により術後5 日目以降は回復し,術後合併症なく退院した。現在,術後9 年経過しているが,無再発生存中である。脾摘術が有効ではないITPを合併した食道癌の報告は自験例が初めてであり,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1914-1916 (2015);
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食道亜全摘術後の消化管再建には胃管が用いられることが多いが,術後胃内容排泄遅延や逆流などの合併症を時折経験する。食道切除胃管再建術後の通過障害に対し外科的介入を行い,胃管排泄能の改善を認めた症例を経験した。症例は59歳,男性。Barrett 食道癌に対し腹腔鏡補助下の非開胸食道亜全摘,縦隔腹部リンパ節郭清および胸骨後経路胃管再建術を行った。術後上部消化管造影検査で胃管幽門部狭窄による通過障害を認めた。数日の絶食管理後に食事を再開したが,術前からの併存症であった精神疾患のため保存的治療は困難となり,再手術を行った。右胃大網動静脈を温存する形で幽門部で胃管を切離し,Roux-en-Y法で再建した。術後胃管排泄能が改善された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1917-1919 (2015);
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症例は68 歳,男性。早期食道癌に対して右開胸食道亜全摘術,後縦隔胃管再建術を施行した。術後上部消化管造影検査および上部消化管内視鏡検査で胃管の屈曲による通過障害が疑われた。バルーン拡張では効果が低く,再手術は侵襲が大きいと考え,一時的にステント(Flexella-J Esophageal Stent(R))を留置した。ステント留置により経口摂取が可能となり,2週間後にステントを抜去した後も通過障害を認めていない。食道癌術後早期通過障害において胃管狭窄は極めてまれである。食道癌術後の良性胃管狭窄に対して,自己拡張型・抜去可能なFlexella-J Esophageal Stent(R)を用いた報告は本邦初であり,有効なオプションになり得ると考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1920-1922 (2015);
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食道癌非治癒切除症例の予後は不良である。今回われわれは,食道癌非治癒切除症例の検討を行った。2003〜2014年までに当院で初診時にcT3,T4で遠隔転移のない胸部食道癌に対し,術前治療後に食道切除術を施行した35 例を対象とした。これらを,R0 手術が行えた27 例(R0群)とR0 手術が行えなかった8 例(R1R2 群)とに分け,両群間で臨床病理学的因子の比較を行った。術前に得られる因子のなかで両群間に差を認めたものはなかった。術後に得られる因子のうち,深達度はR1R2群で有意に進んでいた。また,組織学的効果はR1R2 群で悪い傾向にあった(p=0.055)。より正確な術前の深達度診断が必要であると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1923-1925 (2015);
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症例は67 歳,男性。統合失調症のため精神科病院に入院中であった。嚥下困難,嘔吐を主訴に近医を受診したところ,食道癌と診断され当院に紹介となった。統合失調症合併進行食道癌に対し外科,放射線科,精神科の各医師および看護師と連携し,S-1+CDDP による化学療法を併用した根治的化学放射線療法(CRT)を施行した。治療中にリンパ球減少,放射性食道炎および尿閉に伴う尿路感染症などの合併症を併発したが,緩和ケアチームおよび泌尿器科医師と迅速に連携をとることで,いずれの有害事象もコントロールされ,治療完遂が可能であった。
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癌と化学療法 42巻12号, 1926-1928 (2015);
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症例は61 歳,男性。2013年4 月に嘔気・嘔吐を主訴に内視鏡検査を行ったところ,食道胃接合部領域に3 型食道癌を認めた。PET-CT検査では大動脈周囲リンパ節(No. 16a2)に転移を認め,cT3N4M0,cStage Ⅳa と診断した。根治切除術は困難と判断し,DCF 療法を開始した。2 コース施行したところ,No. 16a2リンパ節のFDG 集積の消失を認めたため,7 月に2 領域リンパ節郭清を伴う食道亜全摘術を施行した。病理組織結果はCT-pT3N2M0,pStage Ⅲ,化学療法の治療効果はGrade 1a であった。術後は補助化学療法を施行せずに経過観察していたところ,術後5か月目の腹部CT 検査にて膵体部頭側に29.4 mm,大動脈周囲に9.9 mmのリンパ節腫脹を認めた。リンパ節転移再発と診断し,PTX療法を開始した。2コース施行後のCT 検査では腫脹リンパ節は著明に縮小し,抗腫瘍効果はPRであった。現在までに6 コース施行したが,Grade3以上の有害事象なく治療継続できており,画像上もリンパ節の再増大は確認されていない。
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癌と化学療法 42巻12号, 1929-1931 (2015);
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背景:切除不能進行食道癌では化学療法,化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)などで治療されることが多いが,食道狭窄に伴う通過障害から生じる低栄養状態がしばしば問題となる。目的:切除不能進行食道癌のCRT 開始前にPEGを造設し,早期栄養介入することの安全性およびその効果についてレトロスペクティブに検討した。対象: 2006 年4 月〜2014 年3 月までの間に当科を受診し,一次治療としてCRT を施行した切除不能進行食道癌51 例を対象とした。結果:初診時に通過障害を32 例(63%)に認め,PEG 造設あり22 例(43%),なし29 例(57%)であった。一次治療としてのCRT完遂率は,PEG あり91%,なし79%。PEG 造設術後合併症は1例(5%)に瘻孔周囲炎を認めるのみであり,PEG 造設から癌治療開始までの期間(中央値)は4(3〜7)日であった。結語: 早期段階での栄養療法開始も治療戦略として重要であり,早期PEG 造設術は有効な栄養療法の一つである。
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癌と化学療法 42巻12号, 1932-1934 (2015);
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症例は70 歳,女性。胸部中部食道癌に対し食道亜全摘+2 領域リンパ節郭清を施行した[病理組織診断: type 0-Ⅱa+Ⅱc,pT1bN1(2/25)M0,pStageⅡ]。術後 1 年 2 か月,腹部 CT および PET-CTにて傍大動脈リンパ節(#16a2)腫大を認めた。Stage Ⅳ食道癌術後傍大動脈リンパ節転移の診断で全身化学療法を開始予定であった。しかし,好中球減少の遷延を認めたため,術後1 年4か月でリンパ節切除の方針に変更し,傍大動脈リンパ節(#16a2,#16b1)郭清および右副腎部分切除術を行った。切除標本の病理組織診断でsquamous cell carcinomaの転移を認めた。術後も好中球減少は続いており,術後補助化学療法を行わなかったが,現在術後5 年経過し癌再発を認めていない。食道癌術後傍大動脈リンパ節単独再発はまれであり,本邦における同部の局所切除で長期生存を得た報告は自験例を含めて2 例のみであった。リンパ節切除による長期予後の可能性はあるものの症例数は少なく,今後の症例の蓄積と検討が必要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1935-1937 (2015);
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症例は80 歳,男性。倦怠感,食思不振を主訴に近医を受診し,上部内視鏡検査で胸部下部食道に2 型腫瘍を指摘され,当科に紹介となった。生検で扁平上皮癌が検出され,CT 検査にて多発肺転移を認めたため,胸部食道癌Stage Ⅳの診断の下,5-FU+CDDP 併用化学療法を開始した。化学療法開始後,第7 病日に左側腹部に軽度の間欠的な腹痛を認め,第18 病日に血液検査で炎症反応の上昇とともに,CT 検査で小腸間膜内に膿瘍形成を認めた。小腸穿孔に伴う腹腔内膿瘍を疑われ,小腸部分切除術,膿瘍ドレナージ術が施行された。術後病理検査では小腸憩室の間膜内穿通と診断された。食道癌化学療法中に小腸憩室穿通を発症したまれな1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1938-1940 (2015);
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後腹膜リンパ管腫は膵近傍に発生した場合,膵嚢胞性腫瘍と鑑別に苦慮することがある。術前診断に難渋したリンパ管腫の1 例を経験したので報告する。症例は38 歳,女性。2011 年6 月上腹部痛精査のCT で膵体尾部腫瘍を指摘され,切除目的に当科紹介となった。CTで膵体尾部に55×43×40 mm の隔壁構造のある多房性病変を認め,MRI T2強調画像で内部は高信号を呈した。超音波検査ソナゾイド造影で隔壁の造影効果を認めた。mucinous cystic neoplasmと診断し,膵体尾部切除予定で開腹。術中所見で腫瘍は白色多房性嚢胞性で被膜構造を有し,膵実質から剥離し腫瘍摘出術を施行した。病理組織検査で後腹膜リンパ管腫と診断,悪性所見を認めなかった。術後経過良好で術後12 日目に退院,術後4 年が経過したが無再発で外来通院中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1941-1943 (2015);
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後腹膜腔に生じた脂肪肉腫に対し,術前診断を下に鏡視下に切除し得た1 例を経験した。症例は67 歳,女性。腹部CT・骨盤MRIで骨盤左側に径15 cm 大の腫瘤を認め,画像から高分化型脂肪肉腫と診断された。画像上,周囲臓器への浸潤の可能性は低いと予想され,腹腔鏡を用いた手術を行った。腫瘍の局在は術前の画像診断の結果と同様であり,臓器を合併切除することなく鏡視下で切除し得た。経過は良好で,術後4 日目で退院となった。脂肪肉腫に対し,術前の詳細な画像検索により,低侵襲手術につながると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1944-1946 (2015);
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症例は22 歳,女性。3 年前に家族性大腸腺腫症(FAP)で腹腔鏡下結腸全摘術を施行した。発熱,腹部痛を主訴に受診した。右下腹部から骨盤に硬い腫瘤を触知し,圧痛を認めた。血液検査で炎症反応上昇を認め,腹部造影CT で右下腹部から骨盤内に17 cm大の充実性腫瘤を認めた。手術所見は小腸間膜原発の腫瘍で,十二指腸,回腸,右卵管,直腸浸潤,膿瘍形成を認め,十二指腸部分切除,小腸大量切除(残存小腸120 cm),直腸切除,右卵管切除,空腸人工肛門造設術を施行した。病理結果で感染を伴うデスモイド腫瘍と診断した。術後19 日目に退院。通常のデスモイド腫瘍は四肢,躯幹に好発するが,FAP に随伴するデスモイド腫瘍は腹腔内の小腸間膜に多く発症し,上腸間膜動静脈などを巻き込みながら浸潤性発育するため,根治切除率が低く,再発率が高く,予後は悪い。今回,FAP合併の若年女性に発症した多発デスモイド腫瘍を経験したので,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1947-1949 (2015);
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症例は21 歳,女性。多発大腸癌を伴う家族性大腸腺腫症に対し,腹腔鏡補助下大腸全摘・回腸人工肛門造設術を施行した1年3か月後,人工肛門を圧排する長径10 cm を超える腫瘤が出現した。CT 検査では,人工肛門周囲の腸間膜や仙骨前面に多発する腫瘤と両側水腎症を認め,Church 分類Ⅳ期の腹腔内デスモイド腫瘍と診断した。手術にて人工肛門周囲のデスモイド腫瘍(15×9 cm)は完全切除し得たが,仙骨前面のデスモイド腫瘍(5×4 cm)は不完全切除となった。小腸間膜には最大径10 cmを超えるデスモイド腫瘍の他に,前駆病変と考えられる多数のfibromatous plaqueを認めた。術後残存デスモイド腫瘍に対して,dacarbazine+doxorubicinによる化学療法を4 コース施行した。化学療法終了後12 か月の現在,残存デスモイド腫瘍の増大は認めていない。遺伝学的検査では,APC 遺伝子の生殖細胞系列変異がデスモイド腫瘍の発生リスクが高い領域に認められ,切除したデスモイド腫瘍からもsecond-hitとなる体細胞変異を同定した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1950-1952 (2015);
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はじめに:今回われわれは,胃上部のGISTに対し術前化学療法を行い,腹腔鏡下胃局所切除術を施行した。しかし,病理組織診断で断端陽性が確認され,追加切除が必要となった症例を経験した。症例:患者は68 歳,女性。体重減少,貧血のため上部消化管内視鏡検査を施行したところ,噴門部に粘膜下腫瘍を指摘された。直径8 cm の胃GISTで,脾動静脈を圧排し,同部位で腫瘍の浸潤が疑われた。術前補助化学療法としてイマチニブ 400 mg/day の投与を行った。化学療法開始 5 か月後に腹腔鏡下胃局所切除術を施行した。病理組織診断で切除断端に腫瘍の残存が確認された。追加切除として,腹腔鏡下噴門側胃切除術を施行した。術後合併症なく,術後5 か月現在,順調に経過している。まとめ:分子標的薬による術前補助化学療法が奏効し,根治切除・機能温存手術が施行できる可能性はあるが,切除範囲の設定には慎重な検討が必要であると思われる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1953-1955 (2015);
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症例は76 歳,男性。全身倦怠感,ふらつきを主訴に近医を受診し,血液検査で貧血がみられたため当院に紹介された。上部消化管内視鏡検査では胃体上部大弯側に約5 cm 大の2 型腫瘍を認め,生検結果はGroup 5,porであった。造影CT 検査では多発肝転移を認め,Stage Ⅳの胃癌と診断した。輸血後にS-1 による化学療法を開始したが,原発巣からの出血が続いたため出血制御目的で胃全摘術を施行した。切除標本にて病変の首座は筋層〜漿膜下層で,粘膜への露出を認めた。腫瘍細胞は紡錘形を呈し,c-kit陽性,cytokeratin陰性,Dog-1陽性よりGISTと診断された。術後はイマチニブによる化学療法を開始し,術後1 年現在,無増悪生存中である。今回,術前診断が困難であった胃GISTの1 例を経験した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1956-1958 (2015);
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患者は70 歳台,男性。検診で施行した上部消化管内視鏡にて胃粘膜下腫瘍を指摘され当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査,腹部CT 検査の結果,腫瘍径4 cm の胃体中部後壁の管内発育型粘膜下腫瘍と診断し,単孔式腹腔鏡下胃内手術を施行した。病理組織検査ではc-kit(+),CD34(+)で胃GIST,低リスク群と診断された。単孔式腹腔鏡下胃内手術は管内発育型胃GISTに対して安全確実な術式として有用であると考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 1959-1961 (2015);
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症例は71 歳,男性。2000年1 月胃腫瘍に対して胃噴門側切除術を施行した。病理組織はKITが陽性で胃原発胃粘膜下腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)と診断された。腫瘍径は約50 mm大,核分裂像数は5/50 HPFで中リスク群の胃GIST であった。術後外来にて経過観察していたところ,2002 年1 月の腹部CT 検査にて肝内に多発するSOL と下腹部腫瘍が指摘され,胃 GIST 術後多発肝転移腹膜転移再発と診断された。十分な説明の後,イマチニブ 400 mg/日の内服を開始した。イマチニブ内服開始後2 か月の腹部CT 検査で腫瘍の縮小がみられた。多発肝転移腹膜転移再発後12 年8 か月,肝転移病巣は嚢胞変性状態となり,腹膜転移は縮小消失,CR を維持している。
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癌と化学療法 42巻12号, 1962-1964 (2015);
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症例は67 歳,男性。検診で胃隆起性病変を指摘され当院を紹介された。上部消化管内視鏡検査では胃体上部粘膜は萎縮性変化が強く,胃体中部領域前壁に10 mm大のポリープを認め,生検にて胃カルチノイドと診断された。血液検査で血清ガストリン値は 2,800 pg/mL と高値であった。以上より Rindi Type 1 胃カルチノイドと診断し手術を行った。術式は腹腔鏡補助下幽門側胃切除(LADG)の予定であったが,術中迅速病理検査で口側断端にカルチノイド腫瘍を認めたため,腹腔鏡補助下胃全摘(LATG)に変更した。病理所見ではクロモグラニン陽性の腫瘍が粘膜から粘膜下層に認め,胃粘膜筋板内に内分泌細胞微小胞巣(ECM)が広範囲に広がっていた。明らかな脈管浸潤は認めなかった。術後血清ガストリン値は正常化し,無再発で外来経過観察中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1965-1967 (2015);
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進行性胃癌からの出血に対して経皮的動脈塞栓術(TAE)により止血され,化学療法を継続できた3 例を経験したので報告する。症例1: 70 歳台,男性。貧血の改善なくTAE施行した。胃十二指腸動脈,左胃動脈を塞栓。TAEの2 週間後から化学療法を開始し,外来治療へ移行した。症例2: 60 歳台,男性。貧血が進行するためTAEを施行した。左胃動脈,右胃大網動脈を塞栓。出血はコントロールされ,現在も化学療法を継続している。症例3: 70 歳台,男性。化学療法中の吐血に対して,内視鏡にて止血困難でありTAE を施行した。後胃動脈から造影剤の血管外漏出あり,脾動脈本幹を金属コイルで塞栓した。脾梗塞,左胸水貯留,左側腹部痛を認めたものの,TAE の4 週間後から化学療法を開始できた。TAE は出血性進行胃癌に対する治療として有効な選択肢であると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1968-1970 (2015);
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症例は68 歳,男性。胃体中部大弯の0-Ⅰ型病変に対してESD を施行中に胃壁に穿孔を発症した。緊急で幽門側胃切除術を施行し,術後病理組織学診断でpT3N2M0,pStage ⅢAと診断された。補助化学療法として術後からTS-1を開始した。術後 10 か月の血液検査で白血球が 19,100/mL と上昇を認め,PET-CT にて骨髄および上行結腸周囲への FDG の集積を認め,胃癌の腹膜播種再発,骨転移と診断した。二次治療としてnab-PTXを開始したが,白血球は増加傾向であった。術後16 か月の血清granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)は 1,640 pg/mL と高値であり,G-CSFの免疫組織染色で陽性であるため,G-CSF 産生胃癌による腹膜播種再発と診断した。免疫染色でHER2 抗体が3+であったため,TS-1+CDDP+trastuzumab療法を開始した。その後,白血球,G-CSFは改善傾向にあり,術後30 か月経過した現在も生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 1971-1973 (2015);
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症例は56歳,男性。再発直腸癌に対し根治術・術後補助療法を行い,術後1 年6か月は無再発で経過していた。外来経過観察通院中のCT と上部消化管内視鏡検査で,胃内に中心陥凹を伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた。組織型,発育形態から,直腸癌胃壁内転移もしくは原発性胃癌を鑑別にあげ,根治術を施行した。直腸癌との対比のために行った術後の胃切除標本と直腸原発巣の免疫染色(HER2 など)の結果より,最終的に原発胃癌と診断した。
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癌と化学療法 42巻12号, 1974-1976 (2015);
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症例は77 歳,男性。2013 年3 月,体重減少と呼吸苦を主訴に当院紹介受診となった。精査で進行胃癌と間質性肺炎を認めた。膠原病肺を念頭に行った術前検査で抗SS-A 抗体,抗SS-B 抗体が陽性,BALF や口唇腺の病理所見からシェーグレン症候群に伴う間質性肺炎と診断した。呼吸機能障害のため手術不能と判断し,ステロイドと免疫抑制剤による治療を開始した。間質性肺炎マーカーKL-6(正常値400 U/mL 未満)は 3,577 U/mL から 1,586 U/mL に低下したが,CT 上肺炎像の改善はなかった。呼吸機能的には改善がみられたため,耐術可能と判断し,進行胃癌に対し胃全摘術を施行した。手術後にCT 上肺炎像が著明に軽快したことから,シェーグレン症候群と間質性肺炎が腫瘍随伴症候群であった可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1977-1979 (2015);
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症例は81 歳,女性。両下腿浮腫を自覚し前医受診され,ネフローゼ症候群疑いで当院紹介となった。入院時,高度蛋白尿と低アルブミン血症,脂質異常症を認め,ネフローゼ症候群と診断された。腎生検(蛍光抗体法)で係諦壁に顆粒状に沈着するIgGを認め,膜性腎症と診断された。悪性腫瘍合併のスクリーニング目的に上部消化管内視鏡検査を施行すると,進行胃癌を2 病変認め,生検にてadenocarcinoma と診断された。胃癌(cT3N0M0,cStageⅡA)に対し幽門側胃切除術,D1+郭清を施行した。術後病理診断でType 2,pT2N0pM0,pStageⅠB,Type 0-1,pT1aN0M0,pStageⅠAと診断された。術後約1 週間アルブミンを投与し,徐々にAlb,TP 上昇を認め,術後 19 日目に自宅退院となった。術後 6 か月には尿蛋白/クレアチニン比0.36 g/g・Cr,Alb 4.2 g/dL,TP 6.9 g/dLで蛋白尿も陰転化した。8 か月後には尿蛋白/クレアチニン比が0.12 g/g・Crまで改善し,ネフローゼ症候群は軽快した。胃癌切除により膜性腎症が改善した1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1980-1982 (2015);
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背景: 癌患者における血小板増多症例と予後不良に関する報告がなされている。今回われわれは,治癒切除術を行った進行胃癌患者における術前血小板数の臨床的意義について検討した。対象と方法: 2001〜2010 年に当院で施行した306 例のpStage Ⅱ/Ⅲ胃癌の術前血小板数を測定し,臨床病理学的因子について検討し,生存解析を行った。術前血小板増多症例のcut-off値は250.9×10 / 3mL(平均値)とした。結果:血小板増多症例はnodal status(p=0.0349),pStage Ⅲ(p=0.0326)との相関を認めた。Cox 比例ハザードモデルに関しては血小板増多症例(p=0.0402),静脈侵襲(p=0.0234),pStage(p=0.0310)が独立した予後因子として選択された。総括: 進行胃癌患者における術前血小板数増多症例はリンパ節転移など腫瘍の進行や予後不良と関連している可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 1983-1985 (2015);
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2010年の胃癌取扱い規約改訂に伴い,胃下部癌において早期でもNo. 1 リンパ節(No. 1LN)が郭清必須となった。今回,当院で1997 年1 月〜2014 年12 月までに施行されたL,LD 領域の胃下部癌に対して,根治的胃切除を施行した344 例を対象に各所属リンパ節郭清度効果指数を算出し,No. 1LN について検討を行った。No. 1LN への転移頻度は4.7%,転移例の5 年生存率58%,郭清度効果指数は2.7で,No. 6(8.9),No. 3(5.5),No. 8a(5.2),No. 5(4.9),No. 4d(3.3)に次いで高かった。No. 1LN転移陽性群と陰性群についての臨床病理学的因子の比較検討では,進行癌型肉眼型,pT2以深,未分化型,リンパ管浸潤陽性の症例で有意にNo. 1LN 転移が多かった。早期症例のNo. 1LN 転移率は1.2%で,転移例はすべて未分化型の転移であった。さらに,腫瘍の中心から幽門輪までの距離(DPT)が50 mm未満の症例ではNo. 1LN への転移を認めなかった。これらのことから,L,LD 領域の分化型の早期胃癌でDPT<50 mm の症例においてはNo. 1LN 郭清を省略できる可能性がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 1986-1988 (2015);
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近年増加傾向のU 領域胃癌の術前診断は術式決定において重要である。しかし,術前と術後病理の深達度診断には乖離を認めることがあり,関連する危険因子,臨床的問題点を解析した。対象: 2008〜2012年の胃癌治癒切除連続551 症例中,U 領域胃癌119 例。結果: 全119 例中,術前診断(cT)と病理診断(pT)の一致した正診群71 例(60%),術前診断過大評価群(cT>pT)18 例(15%),過小評価群(cT<pT)が30 例(25%)であった。臨床的に問題となる過小評価群と,正診および過大評価群の2 群に分け比較すると,過小評価群ではTNM 分類未分化型(未分化成分混在)が有意に多く,ロジスティック回帰分析では未分化成分混在は過少評価診断の独立した危険因子となった(p<0.05)。結論:未分化組織を含むU領域胃癌では術前深達度診断が過小評価される可能性があり,注意を要する。
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癌と化学療法 42巻12号, 1989-1991 (2015);
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症例は66 歳,女性。2010年10 月ごろより心窩部不快感が出現したため当院内科を受診,精査にて幽門前庭部小弯の胃癌と診断された。上部消化管内視鏡検査では幽門前庭部小弯に2 型胃癌を認め,生検の結果はtub2であった。胸腹部CT検査では幽門前庭部から胃体下部の小弯に壁肥厚とリンパ節の腫大を認めたが,明らかな肝転移や腹膜播種はみられなかった。2010年12月,手術施行。2 群リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行したが,肝S2 に1.5 cm 大の腫瘍を認めたため合併切除した。病理診断はL,Less,Type 2,tub2,pT4a,INF b,ly1,v1,pN2(6/34),pPM0,pDM0,HER2陰性,liver metastasis(+),pStageⅣ(pT4aN2M1)であった。術後にS-1 単剤療法を開始したが,POD 5Mに肝外側区域(S3)に肝転移再発を認めた。初回手術から短期間でかつ再発が新たな部位であることから,化学療法と肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization: TACE)の併用とした。TACE は動注用CDDP 製剤を用い,化学療法としてS-1/CPT-11 療法を開始した。grade 2 の消化器症状のためcapecitabin/CDDP 療法に変更し,S3 の転移巣の制御は良好であった。しかし,POD 17Mに S2,S3,S8に再発を生じ,以後全身化学療法としてweekly PTX療法,S-1/DOC 療法,S-1/PTX/Lentinan 療法を,また,局所療法としてTACE を6 回施行した。2014 年6 月ごろより両葉の肝転移巣の増大が顕著となったため,緩和治療を中心に在宅療養となった。2015 年3 月,術後4 年3か月に死亡した。同時性胃癌肝転移の予後は不良とされているが,集学的治療により長期生存できる可能性があると考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 1992-1994 (2015);
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症例は71 歳,男性。心窩部痛を主訴に精査を行ったところ,胃癌同時性肝転移の診断となった。以後S-1+CDDP による全身化学療法を3 コース行い,評価目的にCT 検査を施行したところ,肝転移巣,リンパ節は著明に縮小を認め,根治切除可能と判断し,胃全摘術,D2 郭清を施行した。肝臓転移巣は経皮的ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)を施行した。術後S-1による補助化学療法を施行し,現在17 か月無再発生存中である。胃癌肝転移症例は予後不良といわれているが,化学療法を行い著明な縮小効果が得られた症例では手術,RFAを含めた集学的治療も一つの選択肢となり得ると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1995-1997 (2015);
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症例: 77歳,男性。2008年1 月胃癌に対して,胃全摘+D2郭清+脾臓摘出術を施行した。病理結果は2 型,sig,pT4a(SE)N2H0P0M0,Stage ⅢB であった。術後はS-1 内服を開始していたが,有害事象で中止となっていた。2010 年3 月腫瘍マーカーの上昇を認めたため精査したところ,肝 S5 に約 2 cm の転移を認めた。まずは化学療法を行う方針とし,S-1/CDDP 療法を開始した。しかし,2 コース終了後の CT にて増大を認めたため S-1/CPT-11 療法に変更し,6 コース施行した。結果: CT にて転移巣の縮小を認め,また新規病変の出現を認めなかったため2011 年1 月肝転移巣の切除を施行した。術中所見では2 か所の肝転移を認めたが,2 か所とも切除可能と判断し肝部分切除を施行した。術後はS-1 を内服した。現在,初回手術より7 年6か月,肝転移巣切除術より約4 年6か月経過しているが再発を認めず経過している。胃癌肝転移に対しては,症例を選べば切除を含めた集学的治療により長期生存が期待できると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 1998-1999 (2015);
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長期生存が得られた胃癌の同時性副腎転移の1切除例を経験したので報告する。症例は74 歳,男性。上部消化管内視鏡にて食道胃接合部直下の近位側胃に3 型病変を認めた。CT 上,両側副腎に腫瘤を認め,右はsoft tissue densityで腫瘍を疑い,左はhigh densityにて血管腫を疑った。副腎以外の他臓器転移やリンパ節腫大は認めなかった。血液検査上も,下垂体,副腎の内分泌学的異常は認めなかった。2003年8 月胃全摘術,D2郭清,右副腎摘出術を施行した。右副腎腫瘍は低分化型腺癌で,病理組織学的所見はpor1,105×65 mm,pT2(SS),pN1(#1: 2/8,#3: 1/11),P0,H0,CY0,pM1,pStage Ⅳであった。術後2か月目からTS-1による補助化学療法を1年9 か月間施行した。術後9 年3か月無再発で経過した。
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癌と化学療法 42巻12号, 2000-2002 (2015);
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症例は75 歳,男性。2011年7 月に進行胃癌に対して幽門側胃切除術(横行結腸間膜合併切除)を施行した。病理組織検査結果はadenocarcinoma(tub2,tub1),L,Ant-Gre,type 2,pT4b(SI: 横行結腸間膜),pN3b,H0,M0,P0,CY0,Stage ⅢC であった。7 か月後の腹部CT 検査にて横行結腸脾弯曲部近傍に播種性転移を認め,増大傾向にて2012 年7 月に播種巣切除術,横行結腸合併切除術を施行した。病理組織検査結果では胃癌の腹膜播種と診断された。再発巣切除後はS-1(80 mg)+paclitaxel(PTX)(80 mg)隔週投与,PTX(80 mg)隔週投与の全身化学療法を施行し,初回手術から4 年,再発巣切除から3 年経過した現在も無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2003-2005 (2015);
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症例は59 歳,女性。下腹部痛を認め精査の結果,子宮体癌および腹膜播種と診断された。同時に胃癌も指摘され,当院紹介となった。両者の進行度から子宮体癌からの腹膜播種を疑い,子宮体癌の治療を優先した。単純子宮全摘術・両側付属器切除術・大網部分切除術を施行した。腹腔内全体に播種結節を認め,病理結果は子宮体部癌肉腫,pT3bNXM1,StageⅣb であった。術後 paclitaxel/carboplatin(TC)療法6コースを施行した。CT にて腹水や播種結節は消失し,完全奏効と診断した。second lookを兼ねて,子宮手術より8 か月後にD2郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した。開腹にて播種病変は認めず,病理結果は,pT4aN1M0P0Cy0,Stage ⅢAであった。S-1 による術後補助化学療法を1 年間行い,子宮手術より2年7 か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2006-2008 (2015);
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症例は57 歳,女性。2011年10 月,胃癌に対して幽門側胃切除術(D2郭清),Roux-en-Y再建術を施行した[pT4a,pN3b,Stage ⅢC(JCGC第14 版)]。術後補助化学療法としてS-1+CDDP 併用療法およびS-1 による化学療法を1 年間施行後,外来経過観察中であった。2013 年4 月,CA19-9の有意な上昇を認め,CT にて右卵巣腫瘍が指摘された。胃癌卵巣転移としてweekly PTX を3 コース施行したところ効果判定はSD であり,卵巣以外に転移を疑う所見を認めず,7 月に付属器切除術を施行した。術後はCA19-9の基準値以下への低下を認め,本人の希望もあり経過観察の方針とした。初回手術より3 年6か月,付属器切除術より1 年9か月経過した現在も再発を認めていない。一般的に胃癌卵巣転移は予後不良例が多いとされているが,胃癌術後・異時性卵巣転移切除後の長期生存例を経験したので文献的考察を含め報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 2009-2011 (2015);
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症例は68 歳,男性。胸焼けを主訴に他院で上部消化管内視鏡検査が施行され進行胃癌と診断,当院を紹介受診した。精査施行したところ多発性肝転移も認めた。出血を伴うこともあり,原発巣に対して幽門側胃切除術,D2郭清施行後,抗癌剤加療を施行の上,二期的に肝切除術を予定した。術後,TS-1含む抗癌剤を施行し,肝転移巣に関してCR が得られた。その後も外来継続加療中であったが,ふらつきを主訴に精査施行したところ異時性脳転移を認め,脳転移巣の切除,放射線加療の集学的治療を行い,診断時より5 年間生存した。進行胃癌同時性肝転移,異時性脳転移に対して集学的治療を行った1例を経験した。
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癌と化学療法 42巻12号, 2012-2014 (2015);
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AdachiⅥ型の血管破格を伴う胃癌に対して,安全に腹腔鏡下幽門側胃切除を施行した1 例を経験したので報告する。症例は72 歳,女性。早期胃癌[前庭部小弯0-Ⅱa(SM),tub1]の手術目的で当院に紹介された。腹部造影MDCT でAdachiⅥ型の血管破格を認めた。術中所見でも腹腔動脈から分岐する総肝動脈を認めず,門脈腹側に総肝動脈がみられなかった。肝十二指腸間膜の肝側で門脈露出を先行させ,門脈に沿う形で尾側にNo. 8a リンパ節郭清を進め,門脈損傷を来すことなく安全に郭清を行った。鏡視下手術では触診による確認ができないため,あらかじめ画像診断にて血管破格を認識し手技を工夫することが重要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2015-2017 (2015);
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症例は83 歳,男性。2010 年より難治性冠攣縮性狭心症に対して当院循環器内科通院中であった。2013年7 月より黒色便を認め,精査の上部消化管内視鏡検査で胃角部後壁に易出血性の2 型腫瘍を認め,生検で低分化型腺癌と診断された。造影CT 検査では遠隔転移やリンパ節転移などは認めなかった。血液検査ではHb 8.8 g/dLと高度な貧血を認める以外は大きな異常は認めず,腫瘍マーカーの上昇も認めなかった。手術目的に当科紹介となった。術前よりICU に入室し,8 月に2型進行胃癌,cT2N0M0に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した。術中は冠攣縮を誘発せず,定型どおり腹腔鏡下手術を施行し得た。術後もICU での管理を継続,心血管系合併症なく術後4日目にICUを退室した。誤嚥性肺炎を認めたものの抗生剤にて軽快,術後19日目に軽快退院とした。
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癌と化学療法 42巻12号, 2018-2020 (2015);
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症例は79 歳,女性。幽門狭窄症状のため当院を受診した。精査の結果,進行胃癌,膵浸潤と診断された。開腹手術時,腹膜播種や大動脈周囲リンパ節転移などの非治癒因子を認めず,膵頭十二指腸切除術(PD)を実施した。R0 手術を施行できた。術後補助化学療法として,S-1内服を1年間実施した。現在,2 年2 か月間無再発生存中である。明らかな非治癒因子を伴わない局所浸潤進行胃癌に対して,PDは考慮すべき妥当な術式である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 2021-2023 (2015);
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胃リンパ球浸潤癌は高度なリンパ球浸潤を呈する組織型であるが,まれな組織型であるためまとまった報告は少なく,また術前診断は困難とされ治療指針は定まっていない。当院で切除された胃リンパ球浸潤癌14 例を対象に,臨床病理学的特徴と術前診断の可否および治療指針について検討した。年齢は 69(41〜78)歳で,部位は U/M/L:6/8/0 例,肉眼型は 0-Ⅱc/0-Ⅰ/Type 2/Type 3:8/1/4/1 例,深達度はM/SM1/SM2/MP/SS:0/0/9/3/2 例であった。Epstein-Barr virus感染は12例が陽性で,リンパ節転移は1 例にのみ認め,全例再発を認めていない。生検時の診断はtub1/tub2/por:2/3/9 例で,術前にリンパ球浸潤癌と診断がついた症例はみられなかった。リンパ球浸潤癌はリンパ節転移が少なく予後良好であり,積極的な切除により根治が得られる可能性が高いが生検での診断は困難であり,さらなる症例の集積と術前診断の開発が求められる。
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癌と化学療法 42巻12号, 2024-2026 (2015);
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腹腔鏡補助下幽門側胃切除術,BillrothⅠ法再建後早期に発症したgastritis cystica polyposa(GCP)の1 例を経験した。GCP は胃切除術後長期経過した胃腸吻合部に生じることのある特異な慢性炎症性胃粘膜病変であり,十二指腸液による持続する化学的刺激が主な発症誘因と考えられている。その他に,逆流やうっ滞による吻合部への慢性的な物理刺激も誘因となり得ると考えられ,外科医は手術の際に機能的かつ生理的な吻合口の形成を心掛ける必要があると考えられる。また,持続するヘリコバクターピロリ(H. pylori)感染やプロトンポンプ阻害薬の継続服用による高ガストリン血症もGCP の発症にかかわる可能性があり,予防のためには適切な術後のフォローアップが望まれる。本例では複合的な要因が作用した結果,術後早期にGCP を発症した可能性が考えられた。GCP は前癌病変としても注目されている病変であり,適切な予防と治療が必要である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2027-2029 (2015);
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症例は76 歳,男性。残胃癌に対して残胃全摘,Roux-en-Y再建術を施行した。術後7 日目に心窩部鈍痛が発症し,腹部CT で急性輸入脚閉塞症と診断した。同日の緊急経鼻内視鏡検査ではY脚吻合部に著明な浮腫と狭窄を認め,内視鏡は通過不可能で,Y 脚内にENBD チューブを留置してドレナージを開始し,心窩部痛は消失した。発症18 日目の内視鏡検査では吻合部狭窄の改善はなく,経口内視鏡を用いて挙上空腸とY 脚の間にERBD チューブを1 本留置した。発症25 日目の内視鏡検査では吻合部狭窄はやや改善し,経鼻内視鏡は吻合部を通過可能となり,ERBD チューブを合計3 本追加留置してENBD チューブは抜去した。発症28 日目の腹部CT ではY 脚の拡張は軽減しており,翌日より経口摂取を開始した。本症例は残胃全摘術後早期に発症しており,食道空腸吻合部への負荷を考慮して,経鼻内視鏡を愛護的に操作することで内視鏡的治療を安全に施行でき,低侵襲で良好な輸入脚の減圧が得られた。
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癌と化学療法 42巻12号, 2030-2033 (2015);
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胃癌切除後には約20%の症例に術後合併症が生じ,これらに適切に対応することが治療の結果に大きな影響を及ぼす。術後の腹腔内膿瘍に対してinterventional radiology(IVR)による介入を行った6 例を対象とし,腹腔内膿瘍の発生時期や介入方法について検討した。腹腔内膿瘍は4 例では縫合不全に,2 例では術前の胃穿孔に起因しており,腹腔内膿瘍の発生時期の中央値は術後12 日目で,診断後治療介入までの日数の中央値は1 日であった。ドレーン留置期間の中央値は26 日,ドレーン抜去後の在院日数の中央値は6.5日であった。全例開腹手術に移行することなく軽快した。術後の腹腔内膿瘍に対するIVRによる早期治療介入は有効と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 2034-2036 (2015);
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症例: 81歳,男性。既往歴:胃癌で幽門側胃切除,Roux-en-Y再建。主訴:心窩部痛,嘔気,吐血。現病歴:当院受診の前日より心窩部痛,嘔気,吐血が出現した。上部消化管内視鏡検査で小腸粘膜が広範囲にうっ血し,胃手術に起因する病態が疑われ,当科へ紹介となった。腹部造影CT 検査で絞扼性イレウスの診断となり緊急手術の方針となったが,3 時間後の手術室入室時には腹部は著明に膨満した状態となった。そして,麻酔導入後には血圧が40 mmHg 台に低下しショック状態となった。Y 脚の腸間膜縫合部の間隙から小腸が陥入し絞扼性イレウスとなっており,陥入した腸管壁は著しく変色し,腸管内への出血により著明に拡張していた。腸管の大量切除は高リスクと判断し,腸管の整復のみを施行した。出血性ショックを来す絞扼性イレウスはまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 2037-2039 (2015);
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ウェルニッケ脳症はビタミンB1の欠乏によって発症し,その多くはアルコール多飲者にみられるが,低栄養,妊娠悪阻や胃切除後にも発症し得ることが報告されている。今回,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行後,9 か月で発症したウェルニッケ脳症を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は58 歳,男性。9 か月前に胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術,D1+郭清,BillrothⅠ法再建術を施行し,数日前からの食思不振と嘔吐にて緊急入院となったが,頭部MRIを含め諸検査にて異常を認めず,第5 病日には経口摂取を再開した。第8 病日に嚥下障害が発生したため頭部MRIを再検したところ,ウェルニッケ脳症の診断を得たため同日よりビタミンB1大量補充療法を開始した。誤嚥性肺炎を発症し,嚥下障害が改善しないことから第77 病日に腹腔鏡下胃瘻腸瘻造設術を施行した。以後,経過良好にてリハビリ目的での転院となった。胃切除後の食思不振から神経症状が発生した場合,本症を疑うべきである。
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癌と化学療法 42巻12号, 2040-2042 (2015);
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症例は60 歳台,男性。食後の嘔吐を主訴に来院した。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に全周性の3 型腫瘍を認めた。幽門狭窄のため十二指腸の観察は不能であった。生検ではGroup 5,中分化型腺癌の診断であった。腹部CT 検査では遠隔転移を認めないものの,腫瘍は肝左葉に直接浸潤していた。左肝合併切除にて治癒切除は可能と考えられたが全身状態は不良で,バイパス術の後に術前化学療法を行い改めて根治術を検討することとした。S-1/CDDP を 5 コース行った。左肝への直接浸潤は解除されなかったが,効果判定はPR であった。胃全摘および左肝切除を併施し治癒切除が可能であった。近年,切除不能胃癌にかかわらず術前補助化学療法が注目されている。本症例のように術前補助化学療法によってsize reduction を図ることで,より安全で根治度の高い切除が可能となると考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 2043-2045 (2015);
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症例は61 歳,男性。心窩部不快感を主訴に当院を受診された。上部消化管内視鏡検査にて前庭部に2 型病変あり,同部生検にて胃腺癌(tub2,HER2: IHC3+)と診断された。腹部造影CT 検査にて所属リンパ節に多数腫大を認めた。また,No. 6 に膵浸潤を認める長径43 mm 腫大とNo. 3,No. 11p にも30 mm 以上の腫大を認めた。bulky リンパ節転移を伴うcT4aN3M0,cStage Ⅲc と診断した。術前化学療法としてS-1+CDDP(SP)+trastuzumab(Tmab)療法を2 cycle行った。2 cycle 終了時の効果判定はPR であった。幽門側胃切除術(D2+No. 16 リンパ節郭清)を施行した。病理組織学的検査で主病巣,リンパ節ともに癌細胞の遺残はなく,組織学的効果判定はGrade 3(pCR)であった。術後は化学療法を施行せず経過観察中である。術後10 か月経過しているが無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2046-2048 (2015);
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症例は71 歳,男性。胃癌(LM,Less,type 2,T4aN2M0,cStage Ⅲb)の診断に対して診断的腹腔鏡を施行した。腹膜播種は認めなかったが,漿膜浸潤を認める進行胃癌のため術前化学療法(NAC)の方針とし,DTX/CDDP/S-1(DCS)療法を2 コース施行した。投与スケジュールは,CDDP(50 mg/m / 2)およびDTX(20 mg/m2)をday 1 に静脈内投与とし,S-1(120 mg/day)を day 1〜7に経口投与し,day 8〜14を休薬とした。これを2 回繰り返し1 コースとした。治療効果判定はPR であった。このため手術(幽門側胃切除,D2 リンパ節郭清,Billroth Ⅰ再建)を施行した。切除標本では原発巣,リンパ節ともに残存腫瘍は認めず,治療効果grade 3,pCR と診断した。術後補助化学療法としてS-1 単剤療法を6 コース施行した。投与スケジュールは,S-1(120 mg/day)4 週投与2 週休薬を1 コースとした。現在,治療開始から 2 年 10 か月経過するが,無再発生存中である。今後,より安全で効果的な治療法として高度進行胃癌に対してDCS 療法が期待される。
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癌と化学療法 42巻12号, 2049-2051 (2015);
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症例は59 歳,男性。心窩部痛を主訴に近医を受診し精査したところ,胃体部から幽門前庭部に最大径160 mmの全周性の3 型胃癌(tub2)を認めた。CT 所見と審査腹腔鏡から,胃癌MLU,Circ,Type 3,160 mm,tub2,cT4b(SI: panc),cN1,cM0,cH0,cP0,cCY0,cStage ⅢB と診断した。狭窄進行と潰瘍底からの出血を来したため,十二指腸用ステント(uncovered type)を留置した。DCS 療法[docetaxel(20 mg/m2,day 7・21),cisplatin(50 mg/m2,day 7・21),S-1(80mg/m2,day 1〜7・15〜21)]を2 コース施行後のCT でリンパ節縮小(16.7%)を認め,RECIST(v1.1)でSDと診断した。治癒切除可能と判断し,胃全摘,D2(No. 10 を除く)リンパ節郭清を施行した。術後診断は胃癌MLU,Circ,Type 3,100 mm,muc,ypT4a(SE),ypN3a(13/51),ypM0,ypH0,ypP0,ypCY0,ypStage ⅢCであった。術後合併症はなく,術後4 か月経過した現在,再発なく外来通院中である。ステント留置後の化学療法で切除可能となった進行胃癌症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 2052-2054 (2015);
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症例は72 歳,男性。胃癌の診断で開腹した。肉眼的に結腸間膜に播種を認めたため幽門側胃切除術,拡大結腸右半切除術を行った。術後S-1/CDDP 療法4 コース施行後,S-1 単剤療法を8 コース行い終了となった。術後 3 年 5か月経過時点で腹部CT 検査にて腹水を認め,病理検査でclass Ⅴ,adenocarcinomaと診断された。S-1/docetaxel(DOC)併用療法を開始したところ10 コース終了時点での腹部CT 検査では腹水が消失し,その他再発を認めなかった。また,腫瘍マーカーは著明に減少していた。初回手術より 4 年 7か月経過した段階で再発所見なく,引き続き外来で通院加療中である。S-1/DOC併用療法は,進行・再発胃癌に対しQOL の向上と維持が期待できる治療法の一つと考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 2055-2057 (2015);
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症例は80 歳,男性。検診で胃体中部大弯側に胃癌を指摘されcT4a,N0,M0,cStageⅡB と術前診断し,胃全摘術,D2-No. 10 郭清を施行した。術中所見は,病変部が胃脾間膜に進展しT4a であり,左横隔膜下に白色結節が集簇しており一部生検した。術中採取した腹腔洗浄細胞診は陽性,白色結節も播種であり,病理組織診断は,pT4a(SE),N3b,M1(P1,CY1),pStage Ⅳであった。術後化学療法としてS-1 80 mg,ドセタキセル(DOC)40 mgを6コース完遂後,S-1 単剤を継続投与した。術後1年6か月のCT検査で胃癌の再発所見なくS-1 内服を終了,その後6か月ごとのCT 検査で経過観察とした。以降の定期検査でも明らかな再発所見なく,現在5 年間無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2058-2060 (2015);
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腹膜播種の進行により救急処置を必要とした初発胃癌に対し,救急処置施行後抗癌剤治療を導入することで寛解し,外来通院治療へ移行できた2 症例を経験したので報告する。症例1 は腹膜播種の進行により,S 状結腸狭窄によるイレウスにて緊急入院となった。人工肛門造設後S-1+paclitaxcel 併用療法を2 年2 か月間施行し,現在2 年7 か月経過し生存中である。症例2 は高度腹膜播種による水腎症,閉塞性黄疸を呈し緊急入院後,DJ カテーテル,ENBD チューブ挿入により検査データの改善の後,S-1+oxaliplatin+paclitaxel併用療法を導入し,現在外来通院にて治療継続中である。高度腹膜播種症例のoncologic emergency 状態に対しても救急処置+化学療法導入により経過良好となる例もあり,積極的治療の意義はあると考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 2061-2062 (2015);
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症例は54 歳,男性。胃癌に対して,胃全摘,脾摘術,D2リンパ節郭清を施行した。病理診断はT3N0H0P0CY1M1,StageⅣで,腹腔内洗浄細胞診陽性であった。術後はS-1/CPT-11併用療法を開始し,16 コース施行した。その後,倦怠感のためCPT-11 を中止し,1 年間S-1単剤療法を継続した。術後 7 年経過した現在,無再発生存中である。今回,S-1/CPT-11 併用療法にて長期生存を得た胃癌StageⅣの1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 2063-2065 (2015);
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症例は76 歳,男性。2005年3 月から前胸部・心窩部の重圧感を自覚した。近医を受診し,7 月に上部消化管内視鏡検査を受けたところ,噴門直下〜胃角部小弯に及ぶ4 型腫瘍を認め,生検でGroup 5,tub2>porであったため,胃癌と診断され当院へ紹介された。8 月試験開腹にて播種陽性であったため,根治切除不能胃癌,cT4N1M1P1CY1H0,StageⅣとしてS-1+paclitaxelを開始し,以降S-1,paclitaxel,CPT-11,docetaxel,trastuzumab,nab-paclitaxelなどをローテーションしながら投与し,8 年9 か月間の長期生存を得た。切除不能進行胃癌の予後は一般に1 年程度と短く,異例の長期生存例と考えられた。
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癌と化学療法 42巻12号, 2066-2068 (2015);
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全身転移を伴う胃癌は予後不良である。結腸,全身骨,両側卵巣転移を伴う進行胃癌に対し長期全身化学療法後,conversion surgeryを施行した1 例を経験したので報告する。症例は52 歳,女性。背部痛,ALPの異常高値を主訴に当科紹介受診された。上部消化管内視鏡では胃前庭部に0-Ⅱa 様多発病変を認め,生検で低分化型腺癌HER2陰性と診断された。大腸内視鏡では盲腸に小隆起を認め,生検にて胃癌大腸転移と診断された。CT にて全身骨転移および両側卵巣転移を認めた。S-1+cisplatin による化学療法を継続した結果,胃大腸病変は消失した。その後,胃領域リンパ節と両側卵巣が再増大し,胃体中部大弯に新規に腫瘍が出現した。治療開始から2 年6か月後に幽門側胃切除,両側付属器切除を施行した。切除不能進行胃癌に対しては全身化学療法が標準治療であるが,治療抵抗部位が限局した場合conversion surgery が適応される。予後改善には切除後も化学療法の施行が不可欠である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2069-2071 (2015);
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症例は80 歳,女性。貧血精査の上部消化管内視鏡検査にて噴門直下に潰瘍性病変を認め,biopsyにてGroup 5,高分化型腺癌の診断となった。治療前精査にて遠隔転移なく,治療としては手術適応と考えたが,高齢かつ慢性心不全にて心機能の低下があり,まずは抗癌剤S-1+パクリタキセル療法の方針とした。全身状態,副作用に応じて投与量および投与間隔を変更し,外来通院にて治療を継続した。徐々に腫瘍は縮小し,2011 年1 月25 日上部消化管内視鏡検査では腫瘍は消失し,biopsyでも悪性所見を認めず完全奏効と診断した。治療開始後,7 年9 か月生存中である。S-1+パクリタキセル療法は副作用が少なく,高齢や基礎疾患などの危険因子のある患者にも比較的安全で有意義であると考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 2072-2074 (2015);
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症例は32 歳,男性。心窩部痛を主訴に当院を受診した。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部後壁に5 型進行胃癌を認めた。血液検査では CEA が 16.5 ng/mL と上昇していた。内視鏡超音波検査や造影 CT 検査で腹膜転移を疑う所見を認め,cStage Ⅳ(T4aN3H0P1M1)と診断し,化学療法を導入した。一次治療CDDP+S-1 療法は有害事象のため継続困難で,二次治療docetaxel+S-1 療法ではPD となり,三次治療nab-paclitaxel 療法に移行した。4 サイクル施行後にCEA 再上昇傾向を呈したが,CT では胃壁肥厚や腹水は消失していた。審査腹腔鏡にて非治癒因子がないことを確認し,幽門側胃切除術(Roux-en-Y再建)を行った。病理組織検査結果はypStageⅠA(T1bN0H0P0M0)であり,治療効果判定はgrade 3 であった。術後11 か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2075-2077 (2015);
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TS-1が奏効した胃癌頸部・傍腹部大動脈リンパ節再発の1 例を経験したので報告する。症例は55 歳,女性。2002 年6 月胃癌に対し,胃全摘術,D2郭清術を施行した。病理組織学的診断はtype 4,por1,pT3(SE),pN1(#4d: 1/5),H0,P0,M0,CY0,pStage ⅢAであった。本人の希望により術後補助化学療法は施行しなかった。1 年7 か月後に左頸部腫瘤を自覚し,CTにて左鎖骨上窩に2.5 cm 大の腫瘤像を認めた。超音波下吸引細胞診にて胃癌左頸部リンパ節再発と診断した。2004 年1 月からTS-1 の投与を開始した。5 か月で腫瘍は消失し,計2 年5 か月間投与した。左頸部リンパ節の再燃は現在に至るまで認めていない。その後,腹部CT にて傍腹部大動脈周囲に増大傾向にある腫瘤を認め,positron emission tomography(PET)にても陽性所見であった。2009年10 月摘出術を施行し,病理組織学的に胃癌のリンパ節転移と判断された。TS-1 投与を再開し現在まで継続しているが,5年9か月経過し再発を認めていない。
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癌と化学療法 42巻12号, 2078-2080 (2015);
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症例は69 歳,男性。主訴は左側腹部痛。GF にて噴門部中心に約4 cm のⅢ型病変を認め,生検で低分化型腺癌の所見であった。CT で両側副腎の腫大を伴っており,副腎転移を来した胃癌(stage Ⅳ)と診断し,XP 療法を行った。3 か月後には症状が消失し,GF で腫瘍は著明に縮小した。CT でも副腎転移が縮小した。しかし,7か月後より側腹部痛が再出現し,副腎転移の増悪がみられた。12 か月後には,局所の増悪による通過障害のためステントを留置した。14 か月後,原癌死した。
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癌と化学療法 42巻12号, 2081-2083 (2015);
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進行胃癌に対する化学療法におけるprotein-bound polysaccharide K(PSK)併用効果を評価することを目的とした。S-1 を用いて化学療法が施行された進行胃癌190 例を対象とし,propensity score を用いてマッチングを行ったS-1 群,S-1+PSK 群それぞれ62 例の全生存期間(OS)を好中球/リンパ球比(NLR)を指標として検討した。OSは S-1 群に比してS-1+PSK群が良好な傾向であった。特に,治療前のNLR が2.2 以上群でOSはS-1 群に比してS-1+PSK 群が良好な傾向であった(ハザード比: 0.071,95%CI: 0.114-1.144,p=0.071)。治療後12 か月までのNLRの推移は,S-1 群に比してS-1+PSK 群が低く推移する傾向であった。胃癌に対する化学療法において,PSK を併用することで生存期間を延長できる可能性が示唆された。特にNLR 高値の場合,PSKを併用することで治療効果を高められる可能性がある。
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癌と化学療法 42巻12号, 2084-2087 (2015);
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背景: ACTS-GC試験の結果から,StageⅡ/Ⅲ胃癌症例に対するS-1 術後補助化学療法が推奨されているが,ACTSGC試験ではpT1 症例は対象から除外されており,胃癌治療ガイドライン第4 版でもpT1 症例は術後補助化学療法の対象から除かれている。今回,当科におけるpT1症例の治療成績から,pT1症例における最適な術後補助化学療法の対象について検討した。対象と方法: 2000〜2008 年に当科で初発胃癌に対し胃切除術を施行した1,063 例のうちpT1 と診断された474例から術前・術後補助化学療法例と術後在院死亡例を除いた 461 例を対象に検討した。結果:深達度 M/SM は 2 40/221 例。リンパ節転移陽性例はM癌で4 例(1.7%),SM癌で37 例(16.7%)であった。観察期間中央値6 年1か月で,5 年無再発生存率はM癌100%,SM癌96.2%であった。SM癌における再発のリスク因子は,リンパ節転移3 個以上[HR: 6.53(95%CI:1.10-31.29),p=0.040]とリンパ管侵襲中等度以上[HR: 5.07,(95%CI: 1.05-27.85),p=0.044]であった。SM癌におけるリンパ節転移数0〜2個(n=212)の5 年無再発生存率97.5%に対し,3 個以上(n=9)では66.7%であった(p<0.0001)。結語:胃癌取扱い規約第14 版のT1bN2-3M0症例は他のStageⅡ胃癌と同様に術後補助化学療法の対象と考える。
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癌と化学療法 42巻12号, 2088-2090 (2015);
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症例: 66歳,女性。進行胃癌T4aN3M1(LYM,OTH)P1CY1,StageⅣに対し,一次治療(S-1+L-OHP),二次治療(weekly paclitaxel),三次治療(CPT-11),四次治療(S-1+docetaxel),五次治療(XP)を施行したが,いずれも腫瘍の増悪にて治療中止となった。六次治療としてnab-paclitaxel を投与したところ,腹水の減少と卵巣転移巣の縮小を認め,約4 か月間治療効果が継続した。有害事象は末梢性感覚ニューロパチーGrade 1 と関節痛Grade 1 のみで,治療開始後1 か月でECOG PSが2から1 へと改善した。胃癌治療におけるnab-paclitaxelの臨床使用経験は未だ少なく,今回,タキサン耐性後にnab-paclitaxelが奏効した胃癌の1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 2091-2093 (2015);
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目的: トラスツズマブ投与症例の検討を行った。対象と方法:切除不能進行胃癌,再発胃癌に対し当院で一次治療にトラスツズマブを用いた化学療法を施行した症例を対象とし,無増悪生存期間(PFS),全生存期間(OS)についてレジメン間の比較検討をretrospectiveに行った。結果:一次治療のPFS の中央値(95%信頼区間)は,カペシタビン+シスプラチン+トラスツズマブ(XP+Tmab)療法が138(118〜187)日,S-1+シスプラチン+トラスツズマブ(SP+Tmab)療法が169(83〜251)日で有意差は認めなかった(p=0.9684)。一次治療のOS の中央値(95%信頼区間)は,XP+Tmab療法が393(240〜469)日,SP+Tmab療法が466(256〜482)日であり,有意差を認めなかった(p=0.4703)。また,二次治療のPFSの中央値(95%信頼区間)は,イリノテカン+トラスツズマブ(CPT-11+Tmab)療法が63(52〜266)日,パクリタキセル+トラスツズマブ(PTX+Tmab)療法が58(26〜184)日で,これらも有意差を認めなかった(p=0.5447)。まとめ:今回の検討では,一次治療でXP+Tmab 療法とSP+Tmab 療法でPFS,OS に関して有意差は認められず,二次治療でもCPT-11+Tmab療法とPTX+Tmab療法でPFS に関して有意差は認められなかった。
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癌と化学療法 42巻12号, 2094-2096 (2015);
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患者は69 歳,男性。2010年胃癌に対して胃全摘術を施行された(tubular adenocarcinoma,tub2,pT3N0M0,stageⅡA)。術後8 か月目に吻合部再発を認め,吻合部切除術を施行し,さらに補助化学療法としてS-1 内服治療を行った。2014年,吻合部背側の下縦隔内に腫瘍性病変を認め再々発と診断,当科紹介となった。病変は下行大動脈を3/4 周性に囲み,切除不能と判断し,S-1(120 mg/m2 day)+CDDP(80 mg/m2)(SP療法)を開始したが画像上不変であった。病理検査にてHER2 陽性が判明しSP 療法に加えトラスツズマブ療法を行ったところ,著明な腫瘍縮小効果を認めた。4 コース施行後,画像上大動脈浸潤が解除され切除の方針とした。吻合部切除,大動脈外膜切除,皮下右側結腸再建を施行した。現在,S-1+トラスツズマブ併用化学療法を継続中であり,術後10 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2097-2099 (2015);
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患者は76 歳,女性。2010 年2 月,当科にて下部直腸癌に対して腹腔鏡補助下低位前方切除術を施行した。病理組織診断の結果,tub1,ly0,v0,pT1bN0M0,pStageⅠ,Cur Aで術後補助化学療法は施行せず経過観察となった。2013 年8 月,最大径12 mmの肺転移巣が両肺に3 個認められ,PUL 1,Grade Aであった。腫瘍マーカーはCEAは正常範囲であったが,CA19-9(≦38 U/mL)は 72 U/mLと上昇が認められた。外科的切除はせずXELOX+bevacizumab(Bev)療法を施行する方針となった。抗癌剤治療開始前の画像評価で肺転移巣は最大径15 mm,CA19-9は 166 U/mL であった。XELOX+Bev 療法を 4 コース施行後,肺転移巣は 3 個とも瘢痕化し,CA19-9 は 4 U/mL と正常範囲となり,追加の抗癌剤治療は施行せず経過観察としている。多発肺転移出現後,約2 年経過するが肺転移巣の増大,腫瘍マーカーの上昇はなく,他部位への遠隔転移も認めず生存中である。外科的切除が困難な大腸癌多発肺転移症例に対し,XELOX+Bev 療法は安全に施行可能で有効な治療法である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻12号, 2100-2102 (2015);
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症例は69 歳,女性。下行結腸癌多発肝転移の診断にて,結腸左半切除術を施行した。肝転移巣に対し術後化学療法としてCapeOX+bevacizumab(Bmab)療法を施行した。5 コース施行時点で肝転移の縮小を認め,12 コースから末梢神経障害のためoxaliplatin のstop-and-go 投与とした。14 コース施行時点で肝転移は消失した。33 コースからはcapecitabine 単剤療法とした。術後約3 年経過したが14 か月間のCR が得られている。多発肝転移を伴う下行結腸癌に対し,術後CapeOX+Bmab療法のstop-and-go投与で長期完全寛解が得られている1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 42巻12号, 2103-2105 (2015);
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今回われわれは,経口摂取不能の大腸癌術後胃転移に対しmFOLFOX6+cetuximab(Cet)を投与し,経口摂取可能となった1 例を経験したので報告する。症例は56 歳,男性。2013 年2 月便秘と腹満があり,近医でイレウスと診断し,当院に紹介となった。注腸にて横行結腸に狭窄を認め,内視鏡で大腸癌と診断,拡大右半結腸切除術を行った。術後補助化学療法としてcapecitabine内服を6 か月施行した。その経過観察中,2014 年7 月CEA上昇,10月食欲不振,嘔吐にて受診,腹部エコー・CT 上腹腔リンパ節腫大,胃壁肥厚を認め,大腸癌リンパ節再発・胃転移と診断となった。上部消化管内視鏡上,潰瘍性病変・粘膜肥厚を認め,生検にて胃への浸潤と診断した。また胸部CT 上,左肺に腫瘤影を認め,転移性肺腫瘍と診断した。食事再開も嘔吐し胃管挿入した。その後mFOLFOX6+Cet 開始。2 コース後胃管抜去し,食事を再開した。4 コース後PR と判定し,2015年3 月まで計12 コース施行し,生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2106-2108 (2015);
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播種性骨髄癌腫症は,しばしば播種性血管内凝固症候群(disseminatedintravascular coagulation syndrome: DIC)を合併して急激な転帰をたどるが,大腸癌での報告は少なく,確立された治療法はない。症例は66 歳,女性。盲腸癌・多発リンパ節転移・肝転移・骨転移と診断され治療開始予定であったところ,DICを伴う播種性骨髄癌腫症にて緊急入院となった。mFOLFOX6による全身化学療法を施行したところ,速やかにDICを離脱することができた。
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癌と化学療法 42巻12号, 2109-2111 (2015);
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症例は87 歳,男性。直腸癌(T4a,N2,M0,Stage Ⅲb)に対して前方切除術を施行した。術後補助化学療法は施行せずに経過観察していた。術後 2 年 6 か月の CT 検査で肝S7/8 に径 30 mm大の肝転移再発病変を認め,手術を施行した。肝切除施行約1 年後に,右肺S1 に9 mm大の腫瘤影を認めた。経過観察していたが2 か月の経過で増大傾向を認め,肝転移切除後の肺転移再発と診断し,定位放射線照射による放射線治療(50 Gy/10 Fr)を行い,肺転移は完全奏効を得た。現在,放射線治療後7 か月経過しており,化学療法は施行せず,無再発生存中である。肺切除は大腸癌肺転移に対して第一選択と考えられるが,合併症などの理由で手術適応とならない症例が存在する。その場合,定位放射線照射は有効な治療法と考えられる。
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癌と化学療法 42巻12号, 2112-2114 (2015);
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背景と目的:進行大腸癌に対する術後補助化学療法において,oxaliplatin 併用レジメンの有用性については多数の報告がある。一方で,本邦におけるoxaliplatin併用レジメンの忍容性に関する報告は少なく,その忍容性を明らかにすることは重要である。方法:当院で手術加療を施行した大腸癌Stage Ⅲ症例のうち術後補助化学療法を行った158 例において,oxaliplatin併用群(44例)と非併用群(114例)での有害事象や完遂率について検討した。結果: oxaliplatin併用群で休薬や減量(p<0.001)が有意に多く,その原因として好中球減少(p<0.001),血小板減少(p<0.001),末梢神経障害(p=0.005)が有意に多かった。一方,完遂率については両群間での有意差を認めず,oxaliplatinのrelative dose intensity(RDI)中央値は85.7%であった。総括:術後補助化学療法におけるoxaliplatin 併用レジメンにおいて,良好な治療継続性が確認できた。多施設共同臨床研究を立ち上げ,さらなる長期の観察と症例の蓄積をめざしている。
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癌と化学療法 42巻12号, 2115-2117 (2015);
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症例は60 歳台,女性。上行結腸癌に対し右半結腸切除が施行され,臨床病期はT4(SE), N1(2/42)M0,stage ⅢAであり,術後補助化学療法としてtegafur/uracil の内服を6 か月間行った。術後 1 年経過したころより,徐々に腫瘍マーカー(CEA)の上昇を認めていた。術後3 年目にFDG/PET-CT 検査を行ったところ,右下腹部の腫瘤にFDG の異常集積を認めたため同部での転移が疑われ切除の方針となった。手術所見や病理組織学的検査の結果,右外腸骨動脈周囲リンパ節への転移と診断された。このような転移形式は極めてまれであるため報告し,今後の症例蓄積と転移ルートの解明を期待したい。
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癌と化学療法 42巻12号, 2118-2121 (2015);
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症例は76 歳,女性。2006 年8 月,S 状結腸癌に対しS 状結腸切除術およびDouglas窩の腹膜播種巣を切除。組織学的にはtub2>tub1>por2,pSE,int,INF b,ly2,v0,pN0,p1(Douglas),Stage Ⅳであった。術後FOLFOX を4 コース,TS-1+CPT-11 を8 コース,その後UFT+LV を施行。2010 年9 月吻合部再発の疑いで結腸部分切除術を施行し,術後TS-1 を開始した。2012 年 3 月 CEA が 13.7 ng/mL まで上昇。胸部 CT で右 13×15 mm,左 19×23 mm の spicula を伴う不整形腫瘤を認め転移性肺腫瘍を疑い,左肺下葉切除術および右中葉部分切除術を施行した。術後CEAは正常となった。化学療法は施行せず,現在肺転移摘出術後2年8か月無再発生存中である。大腸癌腹膜播種症例の長期生存例はまれであるが,外科的治療を含めた集学的治療により長期生存が期待できる可能性が示された。
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癌と化学療法 42巻12号, 2122-2124 (2015);
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症例は29 歳,女性。盲腸癌に対して結腸右半切除術を施行し,病理組織検査で中分化型管状腺癌>粘液癌,pSS,pN1,cM0,pStage Ⅲa,Cur Aであった。術後に5-FU/l-LV 療法を施行したが,1 年 2 か月後に両側卵巣転移と腹水貯留を認めた。手術ではゼリー状腹水が腹腔内に充満し,腹膜偽粘液腫の診断で両側卵巣切除,腹腔内洗浄後CDDP の腹腔内投与を行い,術後にS-1/CDDP 療法を施行した。再発後2 年で膣円蓋部での腹膜再々発を来し,子宮全摘,膣部分切除および腹膜播種摘出を施行した。術後にmFOLFOX6療法を施行し,再々発後8 年9か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻12号, 2125-2127 (2015);
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症例は63 歳,女性。検診で便潜血陽性を指摘され当施設を受診した。下部消化管内視鏡検査にて盲腸に3 型腫瘍を指摘され,病理組織結果はGroup 5,高分化型腺癌,K-ras変異ありであった。CT 検査にて多発肝転移を認めた。原発巣に対して腹腔鏡補助下回盲部切除術,D3 郭清術を施行後,FOLFIRIを開始,33 コース施行したが,徐々に肝転移が増大してきたため術後2年3か月でmFOLFOX6+ベバシズマブへ変更,15 コース施行した。その際,発熱,全身倦怠感を主訴に入院となった。腹部全体に点状の発赤を認め皮膚生検をしたところ,腺癌の診断,CDX2陽性であり,大腸癌の皮膚転移として矛盾しなかった。肝転移の増大も認めたこともあり,術後2 年11 か月でレゴラフェニブを開始した。しかし,全身状態が