癌と化学療法

Volume 43, Issue 6, 2016
Volumes & issues:
-
投稿規定
-
-
-
総説
-
-
患者申出療養解説
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
2016 年4 月から始まった患者申出療養は,第2 次安倍政権が2013 年1 月に設置した規制改革会議が発案した制度である。同会議での議論を経て,2014 年6 月24 日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」のなかで新たな保険外併用の仕組みとして書き込まれた。そして2015年4 月〜5月の国会審議を経て,同年5 月29 日公布となった「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」として,健康保険法第63 条に患者申出療養の制度が組み込まれることになったのである。本稿では,この患者申出療養制度の生まれた経緯と制度の概要解説を行う。
-
-
特集
-
- 免疫チェックポイント制御阻害療法の新展開
-
免疫チェックポイント分子を標的とした悪性黒色腫の治療の新展開
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
悪性黒色腫は免疫原性が強く,腫瘍特異的なT細胞が誘導されやすい。腫瘍免疫学の分野における近年の進歩は著しく,CTLA-4 やPD-1,PD-L1 といった免疫チェックポイント分子を標的にした薬剤の開発が進んでいる。CTLA-4 はnaiveT 細胞やregulatory T 細胞に発現しており,抗CTLA-4 抗体はCTLA-4 の有する免疫抑制的な作用を抑えることで長期間持続する臨床効果を示す。PD-1は活性化したT 細胞に発現し,その活性化を抑えている。nivolumab やpembrolizumabといった抗PD-1抗体は, T 細胞の再活性化を誘導することで抗腫瘍効果を発揮している。さらに,免疫チェックポイント阻害薬を分子標的薬や化学療法薬と併用する臨床的な試みも進められている。ただし,免疫チェックポイント阻害薬は免疫に関連する有害事象が頻発するので注意が必要である。今後,免疫チェックポイント分子を標的とした治療は,悪性黒色腫をはじめとする癌治療においてますます重要性を増していくものと思われる。 -
非小細胞肺癌
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
抗PD-1 抗体であるニボルマブは,二つの第Ⅲ相試験において有害事象が少なく良好な抗腫瘍効果が示されたことから2015年末に本邦で承認され,非小細胞肺癌の治療戦略に新たに免疫療法が加わった。免疫チェックポイントは免疫応答を制御するT 細胞上に発現する受容体で,免疫チェックポイント療法は従来患者自身がもつ腫瘍免疫ががんにより不活性化されたものを活性化し,がん細胞を攻撃する治療法である。現在,開発段階にある免疫チェックポイント阻害薬は抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体があり,従来の化学療法よりも有害事象の頻度は少なく,良好な抗腫瘍効果が相次いで報告されている。一方で,腸炎や神経障害,内分泌障害などの免疫チェックポイント療法に特徴的な免疫関連副作用があり,これらの副作用は従来の化学療法と発症機序が異なることから発症時の対処法も異なる。本稿では,肺癌における免疫チェックポイント療法の開発状況と各薬剤の特徴を中心に概説する。 -
腎癌およびその他の癌に対する免疫チェックポイント
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
免疫チェックポイント阻害薬は今や癌治療における一大分野に成長し,薬剤の数や対象疾患は膨大なものになっている。免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験は悪性黒色腫,肺非小細胞癌が先行していたが近年他癌腫においても活発に臨床試験が行われており,現在第Ⅲ相試験だけでも13 種類の癌で31 の臨床試験が行われている。特に腎癌でのCheckMate025 試験,頭頸部癌でのCheckMate141試験の結果が相次いで報告され,二次治療においてnivolumabが既存の薬剤に対して全生存を有意に延長することが明らかとなった。これらの結果から近い将来nivolumabの腎癌,頭頸部癌での承認が期待され,今後も2017〜2019年にかけて20 の第Ⅲ相試験の結果が報告される予定であり,免疫チェックポイント阻害薬の承認もますます拡大するであろう。しかしながら,バイオマーカー探索,抗腫瘍効果の評価,医療経済への影響など課題も多く残されている。本稿では,これら国内外での臨床試験の動向と免疫チェックポイント阻害薬の今後の展望について概説する。 -
がん細胞の遺伝子異常集積と治療効果
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
昨今,免疫チェックポイント制御阻害療法ががん治療の領域において大きなインパクトを与えている。わが国では2014 年以降,悪性黒色腫で抗PD-1 抗体のnivolumab と抗CTLA-4 抗体のipilimumab,さらに非小細胞肺がんでnivolumabが承認された。さらに,他のがん腫においても各免疫チェックポイント制御阻害薬の各臨床試験が進行中である。本療法は有望な新規がん薬物療法であるが,どのがん腫,どの患者にも有効なわけではない。本療法の効果予測バイオマーカーとして,最近がん細胞での遺伝子変異の多寡がその候補として提唱されつつある。がん細胞での遺伝子変異の集積の程度と免疫チェックポイント制御阻害療法の治療効果の相関について,最近の知見を紹介しつつ解説する。
-
Current Organ Topics:Central Nervous System Tumor: Glioma 脳腫瘍:グリオーマ
-
-
-
特別寄稿
-
-
オキサリプラチンと5-FU 併用による抗腫瘍効果の分子機序
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
プラチナ製剤は癌治療において,併用化学療法の一つの要素として様々な癌腫に対して使用される。特にオキサリプラチン(L-OHP,商品名:エルプラット(R))は,5-FUとレボホリナートと併用することにより進行大腸癌に対する奏効率を著しく改善することが知られているが,併用により高い抗腫瘍効果を発揮する分子機序についてはまだ完全には理解されていない。これまでに行われてきたヒト癌細胞株を用いた細胞生物学的解析からみえてきたオキサリプラチンの作用機序について概説し,5-FUと併用時の作用機序について考察する。 -
オキサリプラチンの10年間の軌跡
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
オキサリプラチン(エルプラット(R)点滴静注液)は,「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」,「結腸癌における術後補助化学療法」,「治癒切除不能な膵癌」,「胃癌」の四つの適応症を有する白金錯体系抗悪性腫瘍剤である。各適応症について海外の臨床試験の結果を基に,本邦でもオキサリプラチンの開発およびエビデンスの構築が進められてきた。本稿では本邦の臨床試験データを基にオキサリプラチンの10 年間の軌跡を振り返るとともに,未来を見据えた考察を加えた。
-
-
原著
-
-
再発進行非小細胞肺癌に対するプラチナ併用療法再投与の有効性と安全性の検討
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
目的: 再発進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準治療は,ドセタキセルまたはペメトレキセド単剤治療であるが満足すべき効果ではない。併用療法の有効性は証明されておらず,プラチナ併用療法再投与の有効性と安全性について検討した。対象と方法:プラチナ併用療法再投与が行われた再発進行NSCLC 58 例を対象とし,奏効率,無増悪生存期間,生存期間,副作用を後方視的に検討した。結果:年齢中央値73(41〜83)歳,プラチナ併用療法再投与時のPS 0〜1 が52 例,Ⅳ期が41 例であった。奏効率6.9%(95%CI: 1.9-16.7%),病状制御率70.7%(95%CI: 57.3-81.9%),無増悪生存期間中央値123日,生存期間中央値470日であった。初回化学療法PR 例ではSD/PD 例に比べ病状制御率,無増悪生存期間が有意に良好であった。再投与までの期間が90 日以上の症例では,90 日未満の症例と比べ無増悪生存期間と生存期間が有意に良好であった。副作用は薬剤性肺炎による死亡を1 例に認めたが,他に重篤なものは認めなかった。結語:プラチナ併用療法再投与は,初回プラチナ併用療法奏効例や再投与までの期間が90 日以上の症例において良好な生存期間が得られ,治療選択肢の一つとなり得ると考えられた。 -
Combination of GnRH Antagonist Degarelix and Antiandrogen Is Effective in PSA Reduction and Bone Management in Patients with Prostate Cancer
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
目的: 新規前立腺癌症例に対するデガレリックスと抗アンドロゲン剤併用療法の効果をみる。対象・方法: 12 名の前立腺癌患者にデガレリックスとビカルタミド併用療法を行い1 年間前向きに観察した。投与3,7,14,28 日目にPSA,LH,FSH,テストステロンを測定しその後は1 か月ごととした。骨転移症例では骨マーカーを測定すると同時に骨関連事象(SRE)の有無についても観察した。結果: 1 年でのPSA無再発生存率は65%であった。PSA は14 日目で80%,28 日目で93%低下した。3 日目で全例去勢域へ到達し,経過中全例去勢域を維持した。LH,FSH は3 日目で正常域となった。骨マーカーは28日目でいったん上昇するがその後減少に転じた。経過中にSRE を認めた症例はなかった。結論:少数例の検討ではあるが,デガレリックスと抗アンドロゲン剤併用療法は有効であったが,今後デガレリックス単剤との比較試験が必要である。 -
EGFR 遺伝子変異形式とペメトレキセドの効果との関係
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
背景: LUX-Lung3 の日本人のサブグループ解析において,シスプラチン+ペメトレキセド(PEM)のprogressionfreesurvival(PFS)は,EGFR 遺伝子変異形式によって異なっていた(L858R群8.3 か月,19 del群3.1 か月)。方法: 2009〜2013 年の間に当院で診療したEGFR 遺伝子変異陽性肺腺癌を対象に,PEMとプラチナ製剤併用療法を施行した症例を後ろ向きに検討した。結果: L858R群13 例と19 del 群19 例を解析した。L858R 群のPFS は5.13 か月,19 del群は5.40 か月(p=0.824,HR=1.098)と2 群間に有意差は認めなかった。結論: EGFR 遺伝子変異陽性肺腺癌においてPEMとプラチナ製剤併用療法を施行した際に,L858R群と19 del 群にPFSの有意差は認めなかった。前向きな検討が望まれる。
-
-
薬事
-
-
Docetaxelによる流涙に関する後方視的検討
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
docetaxel は乳がんをはじめとして多数のがん種で使用されている抗悪性腫瘍薬である。代表的な副作用として骨髄抑制や浮腫などがあげられるが,流涙や涙道閉塞などの眼障害についても多数報告されている。しかしながら,本邦からの報告は限られており,発現時期や発現頻度など未だ不明な点が多いのが現状である。そこで,日常診療における有益な知見を得るため,docetaxelの流涙に関する後方視的な調査を実施した。本検討期間で3 週ごとのdocetaxel投与が新規に開始となった48 名の乳がん患者のうち,流涙が発現した患者は6 名(12.5%)であった。流涙が発現した患者は発現しなかった患者と比較して,docetaxelの dose intensity(mg/m2/3 weeks)が有意に大きかった(72.7 vs 67.1,p=0.0427)。また,発現時期に一定の傾向はなく,症状の程度はいずれもGrade 1 または2 で可逆的であった。以上より,3 週ごとの投与法によるdocetaxel の流涙は可逆的で軽微な症状であるものの,本邦においてもある程度の頻度で存在していることが明らかとなった。また,dose intensityが大きいことは流涙発現の危険因子となる可能性も示された。今後,より多くの施設で詳細な検討が行われることが望まれる。 -
分子標的治療薬調製時の薬剤廃棄による経済的損失と経費削減に向けたシミュレーション
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
抗がん薬調製時,高額な分子標的治療薬でも余剰分は分割投与されず,残液は廃棄され医療資源の無駄が発生する。そこで今回,大垣市民病院において汎用される分子標的治療薬12 品目の廃棄金額を調査し,薬剤費の経済的損失の検討を行った。その結果,年間52,593,182 円と膨大な薬剤が廃棄され,特にベバシズマブ16,646,300 円,ボルテゾミブ15,866,289 円,リツキシマブは8,401,324 円と高額であった。なかでもボルテゾミブは治療1 回当たりの平均廃棄金額が67,325円と高額であり施行数も多いため,小容量規格注射剤を考慮する必要がある。また,調製当日のみ分割投与可能と仮定した場合,ベバシズマブ1 年間当たりの廃棄金額は12,542,191円(75.3%)の削減が可能であった。そのため,分割投与を薦めることにより経済的損失を減らし医療資源の有効利用を高めることが可能となる。
-
-
症例
-
-
急激な転帰をとった乳腺扁平上皮癌の1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
術後早期に再発し,急激な転機をとった乳腺扁平上皮癌の1 例を経験したので報告する。症例は38 歳,女性。左乳房腫瘤を主訴に当科を受診し,精査の結果,左乳腺扁平上皮癌と診断され,手術を施行した。術後早期に局所再発,肺転移を来し,化学療法,放射線療法の効果が得られず,術後9 か月で永眠された。乳腺扁平上皮癌はまれな疾患で,通常型乳癌と比較し予後不良とされている。治療抵抗性の経過をたどることが多い。basal-type乳癌に準じた治療が効果的であったという報告も散見されるが,未だ有効な治療法が確立していないのが現状である。今後,本特殊型に有効な化学療法のレジメンを検討する必要がある。 -
エベロリムス,エキセメスタン併用療法が著効したが重篤な口内炎,間質性肺炎などの有害事象を来した高齢者再発乳癌の1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
症例は80 歳,女性。6 年前に右乳癌Stage ⅢAで乳房切除術,腋窩リンパ節郭清を受けた。病理診断は浸潤性微小乳頭癌,n(+),ER(+),PgR(+),HER2(−)であった。術後補助療法としてCEF,パクリタキセルを投与した。レトロゾール内服中の術後4 年目に胸壁に再発し,エキセメスタン,トレミフェン,フルベストラントとホルモン療法を1 年5か月行った。その後,癌性胸膜炎を発症し,エリブリンを投与したが効果はなかった。エベロリムス,エキセメスタンを開始し,5 週間後には胸水は著明に減少し著効を示した。その後,grade 3 の口内炎,下痢,貧血,間質性肺炎を発症したが,エベロリムスの休薬やステロイド投与により改善した。エベロリムス,エキセメスタン併用療法はホルモン療法抵抗性乳癌に対して効果が期待できるが,有害事象の管理が重要である。 -
Regorafenib投与により空洞変化を生じた直腸癌術後転移性肺腫瘍の1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
症例は61 歳,女性。直腸癌・子宮浸潤に対して低位前方切除術および子宮・両側付属器摘出術を施行した。術後補助化学療法としてmFOLFOX6を12 コース施行した後,多発肺転移で再発した。KRAS変異がありFOLFIRI+bevacizumabを開始し,6 コース投与で肺転移の充実成分が減少し空洞が出現した。12 コース投与後にPD となりregorafenib に切り替え,6 コース投与でRECIST 上はSD であるが肺転移の著明な空洞化を認め,長期に病変の制御が可能であった。分子標的薬の抗腫瘍効果は従来のRECIST によるsize の評価だけでなく形態の変化,すなわちmorphologic response も考慮すべきである。 -
Trastuzumab投与中に消化管穿孔するも術前補助化学療法を継続し得たHER2 陽性食道胃接合部癌治癒切除の1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
症例は60 歳台,男性。体重減少と胸部つかえ感を主訴に受診し,食道胃接合部癌・左胃動脈周囲リンパ節転移(StageⅢB)と診断された。術前補助化学療法の方針にてcapecitabine/CDDP+trastuzumab(Tmab)併用療法(ToGA regimen)を開始したが,3 コース開始前に胃癌穿孔を発症した。保存的治療を行うことで根治性を維持したまま穿孔部閉鎖を得ることができ,S-1/CDDP+Tmab併用療法(HERBIS-1 regimen)にて術前補助化学療法を継続した。以上により治癒切除を施行することができ,外来にて術後補助化学療法中である。 -
S-1/Docetaxel療法によりPathological Complete Responseが得られた石灰化を伴うStageⅣ胃癌の1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
症例は70 歳台,女性。5 型進行胃癌(cT4a,N2,M0,P1,CY0,H0,cStageⅣ)に対しS-1/cisplatin療法を施行した。5 コース終了後,progression disease(PD)のためS-1/docetaxel療法に変更した。6 コース終了後,画像上,原発巣・転移巣ともにcomplete response(CR)となったため,治癒切除目的に手術を施行した。開腹時,明らかな非治癒因子は認められず胃全摘術を施行し,病理検査でpathological CR(pCR)を得た。術後12 か月現在,無再発生存中である。 -
SOX+Bevacizumab療法が著効しPathological Complete Responseが確認されたS状結腸癌StageⅣの1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
症例は50 歳台,男性。便秘を契機に腹膜播種を伴うS 状結腸癌を指摘された。腸閉塞症状があったため,横行結腸人工肛門造設術を施行した。その際,提出した大網の播種結節からも腺癌が検出された。SOX+bevacizumab療法8 コース施行後の画像検査で原発巣,播種結節とも指摘不能なまで縮小を認めた。bevacizumab休薬8 週間後にS 状結腸切除を行った。開腹所見上も腹膜播種は消失していた。切除標本の病理組織学的検査では癌組織の遺残なく,効果判定上Grade 3,pathologicalcomplete responseが確認された。 -
S-1/Gemcitabine併用療法が奏効し原発巣切除が可能となった肝内胆管癌の1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
進行肝内胆管癌に対してS-1/gemcitabine併用療法(GS療法)を行い,根治的外科切除ができた1 例を報告する。症例は67 歳,女性。右側腹部痛を主訴に2011 年7 月に入院した。腹部造影CT で大動脈周囲のリンパ節腫大を伴う肝内胆管癌と診断した。GS 療法2 コース後,腹部造影CT で肝臓内の腫瘍および大動脈周囲のリンパ節腫大は縮小した。9 月に肝S4a+S5切除を施行した。術後合併症もなく経過し,術後もGS療法を22 コース施行した。2013 年8 月でGS 療法を中止し,経過観察中である。診断後49 か月経過したが,再発徴候はない。進行肝内胆管癌に対して,GS療法は有用な治療法であると考えられた。 -
Cabazitaxelによる視神経症が否定できなかった1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
cabazitaxel は,前立腺がんにおいて使用されているtaxane 系の抗悪性腫瘍薬である。代表的な副作用として好中球減少,疲労などが知られているが,眼障害についての論文報告はなく,詳細は明らかになっていない。今回,cabazitaxelによる視神経症が否定できなかった1 例を経験したので報告する。症例は78 歳,男性。3 年前に前立腺がん(cT3aN1M1b,stageⅣ)と診断され,bicalutamide,leuprorelin,flutamide,docetaxel,abirateroneおよびenzalutamideの治療歴があった。2 回目および3 回目のcabazitaxel投与時に視力低下の訴えがあったため,患者は眼科を受診された。その結果,視力低下,中心フリッカー値の低下,視野狭窄,色覚障害の所見を認め,視神経症と診断された。その後もcabazitaxelの投与は6回目まで継続されたが,症状は不変で顕著な増悪は認められなかった。本症例ではcabazitaxel による視神経症の可能性が否定できなかった。taxane 系抗悪性腫瘍薬による視神経症はpaclitaxel やdocetaxel でも報告されており,十分な注意が必要である。今後,より多くの施設において詳細な検討が行われることが望まれる。 -
Paclitaxel・Bevacizumab療法中に発症した薬剤性肺障害の1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
症例は61 歳,女性。乳癌再発後の三次治療としてpaclitaxel(PTX)・bevacizumab(BV)療法を選択した。3 コース目のPTX 投与中に突然呼吸不全を発症し,胸部X 線,CT で両側肺の浸潤影を認めた。ステロイドパルス療法により呼吸器症状,画像所見ともに改善していき,血液検査や経過より感染症も否定的であったことより急性薬剤性肺障害と診断した。PTX・BV 両者ともに薬剤性肺障害を引き起こす可能性があり,発生頻度は低いものの念頭に置くべき副作用の一つであると考えられる。 -
パゾパニブ塩酸塩錠投与にて重篤な血球減少を認めた1 例
43巻6号(2016);View Description
Hide Description
パゾパニブ塩酸塩錠(PAZ)は,悪性軟部腫瘍に対する血管新生阻害剤である。主な有害事象として高血圧,肝機能障害が高頻度である。重篤な血球減少の報告はほとんどないが,われわれはPAZ服用開始後,アムロジピン錠併用により血球減少(血小板数減少,好中球数減少)を認め,休薬・減量により治療継続が可能であった症例を経験したため報告する。症例は46 歳,女性。後腹膜平滑筋肉腫に対してゲムシタビン,ドセタキセル併用療法で治療後,再発に対してPAZ 800 mgを連日投与で開始した。服用開始後7 日目で血小板数は9.2×10^4/μlまで減少し,21日目には5.4×10^4/μl まで減少した。好中球数は 28 日目に 0.97×10^ 3/μl,35 日目で0.68×10^3/μl となったため35 日目で休薬した。42 日目には血小板数13.0×10^ 4/μl,好中球数1.28×10^3/μl に回復したためPAZを600 mgに減量して服用を再開した。その後,259 日目に病勢悪化と診断されるまで服用を継続した。PAZによる血球減少の頻度は低いとされているが,本症例のように因果関係の否定できない症例があること,また他の有害事象と同様に休薬・減量により投与継続が可能であることは臨床上重要であると考える。
-