Volume 44,
Issue 12,
2017
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特集
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【第39回日本癌局所療法研究会】
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癌と化学療法 44巻12号, 1053-1055 (2017);
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食道癌における食道気道瘻は癌の進行度だけでなく,肺炎などによる全身状態悪化のため予後不良となる。食道癌気道瘻のうち食道肺瘻を伴った食道癌に対し,食道瘻・胃瘻によって全身状態を改善させ,化学放射線療法(CRT)および根治切除し得た症例を経験した。症例は65 歳,女性。食道癌に対する術前補助化学療法後に食道肺瘻を発症し,当院紹介となった。転院時にはPS 3 の状態であった。食道瘻,胃瘻造設にて全身状態を改善させ,CRT を施行した。癌遺残を否定できず,右開胸食道亜全摘術を,翌月に再建術を施行した。現在,切除後20 か月無再発生存中である。本邦において食道癌肺瘻に対し食道切除を行った症例報告は計6 例あり,切除後12 か月以上の生存を確認できたのは1 例のみであった。食道癌気道瘻は予後不良ではあるが,症例によっては全身状態が悪化していても集学的治療により根治をめざすことが可能である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1056-1058 (2017);
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乳房再建後の局所再発については,同側皮膚や胸壁において非再建乳房と同等の頻度で発症するとされているが,再建乳房内からの局所再発の報告は少なく発生原因など不明な点が多い。症例は42 歳,女性。3 年前に左乳癌,cT4aN0M1(PUL),cStageⅣ,Luminal A like に対して内分泌療法(tamoxifen)を行ったところ,著明に原発巣の縮小および肺転移病変の消失が認められたため乳房温存手術を行った。病理診断は充実腺管癌であった。内分泌療法単独にて治療を継続していたが,翌年に残存乳腺から局所再発を発症した。乳房全摘および腹直筋皮弁による再建術を行ったが,腹直筋皮弁の部分壊死を来したため保存的に加療した。全身療法としての内分泌療法はanastrozoleおよびGnRH agonistへと変更した。今回,再建乳房内側に約1.5 cm 大の硬結を触知し,超音波ガイド下の生検にて再建乳房からの局所再発と診断された。左前胸部腫瘤切除術を施行し,病理所見は硬癌であった。その後は再発なく外来通院中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1059-1061 (2017);
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腫瘍径5 mm以下のT1a乳癌は微小病変として扱われ,腋窩リンパ節転移を来すことはまれだと考えられている。症例は52歳,女性。検診マンモグラフィにて異常陰影を指摘され当院を紹介された。乳腺超音波検査にて,左乳腺AC 領域に4 mm大の石灰化を伴う辺縁不整・境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め,吸引式乳腺組織生検にて浸潤性乳管癌との診断に至った。全身検索では遠隔転移を認めず,左乳癌,cT1aN0M0,stageⅠ,Luminal A like にて手術(乳腺円状部分切除術およびセンチネルリンパ節生検)を施行した。術中,提出したリンパ節に4 mm 径の転移性病変が確認され,腋窩リンパ節郭清(levelⅡ)を追加した。摘出標本の主病巣の腫瘍径は4 mmのpT1aであり,病理診断で乳頭腺管癌であった。その後,残存乳腺に50 Gyの放射線照射および内分泌療法(tamoxifen 20 mg/5 年間)を行い,術後 5 年にて転移・再発は認められていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 1062-1064 (2017);
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われわれは,巨大潰瘍を伴う進行乳癌に対してpaclitaxel(PTX),bevacizumab(BEV)を導入し,良好な抗腫瘍効果を得ながら局所コントロールに難渋した1 例を経験したので報告する。症例は53 歳,女性。左前胸部に滲出液,出血,悪臭を発し,巨大潰瘍を伴う腫瘤を認めた。同時に腰痛,両下肢痛の訴えもあった。病理組織検査で浸潤性乳管癌(Luminal Btype)と診断された。また,CT で腋窩リンパ節転移,肺転移,肝転移,多発性骨転移を認めた。化学療法weekly PTX(90mg/m / 2,3 週投与1 週休薬)+biweekly BEV(10 mg/kg)を導入したところ,1 コース目終了時より潰瘍部の出血と滲出液が減少し,3 コース目終了時には腫瘍が縮小して平坦化した。上昇していたCEA,CA15-3 も4 コース目開始時には正常化した。これに伴い腰痛,両下肢痛も軽減した。しかし左前胸壁潰瘍面の縮小は遷延し,4 コース目終了時でも肋骨が露出していた。同時点のCT では左前胸壁腫瘍,リンパ節転移,肺転移,肝転移,骨転移は著明に縮小していたが,左胸壁は菲薄化し穿孔する恐れがあった。著明な抗腫瘍効果が認められながら,左前胸壁潰瘍の治癒が遷延する原因としてBEV の副作用が推定されたため,5 コース目よりBEV を中止しPTX単独投与にしたところ,潰瘍面は急速に肉芽形成してきた。しかしPTX単独2 コース目開始前に潰瘍が感染し,胸膜炎,右中葉肺炎・無気肺を来した。抗生剤の長期投与で左胸壁潰瘍の感染は軽快して縮小したが,胸膜炎,右中葉肺炎・無気肺は遷延し,右胸水貯留を来したため胸腔穿刺ドレナージを要した。また,化学療法は中止しtamoxifen(TAM)に変更せざるを得なかった。BEV のfirst-line治療は有効性が認められているが,副作用として創傷治癒遷延が指摘されている。今回のように抗腫瘍効果が著明であっても,局所の状況により早期に中止すべき症例もあることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1065-1067 (2017);
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症例は50 歳台,女性。胃部不快感精査の腹部超音波検査で多発肝腫瘤を認めた。腹部CT,FDG-PET 検査で肝両葉を大小無数の乏血性腫瘍が占拠し,肝門部リンパ節の腫大,腹水貯留も認めた。切除不能の高度進行肝内胆管癌(intrahepatic cholangiocarcinoma: ICC)と診断し,化学療法gemcitabine(GEM)+S-1 を開始した。治療開始8 週後,20 週後の腹部CT 検査で腫瘍の著明な縮小傾向を認めた。以後は著変なく経過したが,2 年4 か月後に肝右葉の病変増悪を認め,GEM+cisplatin(CDDP)へ変更したが進行が続き,陽子線照射,さらに経皮的ラジオ波焼灼術を施行した。その後まもなく肝右葉に多発病変が出現,左肺にも転移結節を認めた。他に病変のないことを確認した上で肝右三区域切除術,次いで胸腔鏡下左肺下葉部分切除術を施行した。病理検査にて形態的には肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)と考えられるが,免疫染色で胆管細胞癌の性質も認め混合型肝癌と診断された。手術から9 か月無再発,初診から4 年6か月の長期生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1068-1070 (2017);
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症例は40 歳,男性。腹痛と倦怠感を主訴に前医を受診し,高度の貧血と腹部造影CT 検査で小腸腫瘍を疑う腫瘤を指摘され当院へ紹介となった。小腸造影検査では腫瘤への造影剤の流入を認め,黒色便の所見と併せて小腸腫瘍の腸管内腔への穿破,出血が疑われた。PETでは病変部への集積亢進を認め,小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)などの小腸粘膜下腫瘍の術前診断で準緊急的に手術を施行した。腹腔鏡下に開始したが,腫瘤は腹壁へ固定されており浸潤も疑われたため,開腹下に腹膜を合併切除する形で小腸部分切除術を施行した。病理組織検査では紡錘形細胞の錯綜配列を認め,aSMA陽性,CD34 陰性,c-kit 陰性,核異型および細胞異型が高度であり,平滑筋肉腫と診断された。GISTの免疫染色による診断が確立されて以来,小腸平滑筋肉腫は極めてまれな疾患であり,ここに文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1071-1073 (2017);
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乳頭部腺腫はまれな良性疾患であるが,悪性腫瘍との鑑別が重要となる。症例は45 歳,女性。2 か月前から右乳頭部にしこりを自覚し近医を受診,精査加療目的にて当院へ紹介された。超音波検査にて右乳房E 領域に2.4 cm 大で血流豊富な類円形の嚢胞内腫瘤を認め,針生検にてduct papillomatosisの疑いであった。CT や骨シンチグラフィでは,遠隔転移は確認されなかった。MRIでは右乳頭部に早期に造影され,効果が遷延する辺縁明瞭な腫瘤性病変を認めた。これらの画像所見より悪性が否定できなかったため,確定診断および治療目的にて右乳腺腫瘤摘出術を施行した。病理組織診断ではusual ductal hyperplasia(duct papillomatosis)であり,悪性所見は認められなかった。今回われわれは,術前精査にて乳頭部乳癌が疑われ,最終診断では乳頭部腺腫であった1 例を経験した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1074-1076 (2017);
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症例は71 歳,女性。皮膚黄染と右季肋部痛を主訴に近医を受診した。腹部CT や血液検査により,十二指腸乳頭部が閉塞起点となる閉塞性黄疸と考えられた。内視鏡による精査にて十二指腸乳頭部癌と診断され,精査加療目的に当院へ紹介となった。術前CT 検査では,両肺野および左乳腺に腫瘤影,左腋窩にもリンパ節腫大が認められた。乳腺超音波検査では,左乳腺ECD 領域に1.7 cm大の不整形腫瘤を認め,針生検にて原発性乳癌と診断された。さらに肺病変の原発巣精査目的にて,胸腔鏡下右肺部分切除術を施行,原発性肺腺癌との診断に至った。骨シンチグラフィにて多発骨転移も確認された。以上より,骨転移を伴う高度進行性の同時性三重複癌と診断した。今回われわれは,同時性に乳癌・十二指腸癌・肺癌の三重複癌を認めたまれな1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1077-1079 (2017);
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4 型胃がん(スキルス胃がん)のなかに,「診断困難な症例」が少なからず存在する。内視鏡検査で粘膜面から異常が指摘できないもの,内視鏡では:太い襞>がありスキルス胃がんであるが,生検でがん組織が得られない場合である。患者は85歳,男性。太い雛壁がありスキルス胃がんと診断されたが,生検でがん組織が得られず当院に紹介された。狭窄があるため,開腹による精査と治療を説明し実施した。開腹により適切な診断ができ,本人の希望どおりに手術(胃全摘)を行った。術後化学療法なしに1 年生存中である。スキルス胃がんは内視鏡生検の結果だけに頼らず試験開腹まで行って早期に診断を付け,治療を開始すべきである。
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癌と化学療法 44巻12号, 1080-1082 (2017);
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はじめに:進行再発胃癌の二次治療として推奨されているramucirumab(RAM)+paclitaxel(PTX)療法の特徴的な有害事象(AE)として蛋白尿があげられる。今回,RAM+PTX 療法によりgrade(gr)3 の蛋白尿を来したためRAMを中止し,PTX 単剤を続行し,奏効を得た高齢の再発胃癌の1 例を経験した。症例: 77 歳,女性。76 歳時に胃癌のため幽門側胃切除術,D2 郭清を施行され,粘液癌,T4aN3H0P0CY0M0,fStageⅢC であった。S-1 による1 年間の補助化学療法後,術後 1 年 4か月目に腹膜転移再発を来した。二次治療としてRAM(8 mg/kg: 第 1,15 日)+PTX(80 mg/m2: 第1,8,15 日)を開始した。2 コース目にgr 3 の尿蛋白(定性3+,尿中蛋白/Cr 比 8.30)を認めたためRAMを中止し,以後はPTX 単剤の投与を施行した。RAM中止後に蛋白尿は速やかに改善し,2 コース後のCT 検査で腹水は減少,4 コース後には腹水は消失した。考察: RAMの適正使用ガイドでは,投与前には尿蛋白定性検査を行い,2+以上では尿蛋白定量検査を行い,3 g 以上では投与の中止が推奨されている。本症例では,適正使用ガイドに則りPTX 単剤を続行することによって奏効を得た。
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癌と化学療法 44巻12号, 1083-1085 (2017);
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大腸癌術後患者の健康関連quality of life(QOL)を評価することを目的とした。QOL評価法として,EQ-5D-5Lを用いた。2017年1 月に当科外来を受診した大腸癌術後患者30 例を対象とした。年齢中央値は67.5 歳,男性14 例,女性16 例であった。原発巣は結腸18 例,直腸および肛門が12 例であった。アンケート施行時に再発を有する症例が12 例(40.0%),化学療法中の症例は11 例(36.7%),ストーマ造設中の症例は3 例(10.0%)であった。対象症例のEQ-5D-5L スコア中央値は0.867(範囲: 0.324〜1.000)であった。再発を有する症例のスコアは0.820であり,再発のない症例の0.948と比較して有意に低値であった(p=0.002)。女性のスコアは0.834であり,男性のスコア0.942と比較して有意に低値であった(p=0.015)。その他の因子ではスコアに差を認めなかった。EQ-5D-5L スコアを用いた検討では,女性,再発を有することが大腸癌術後患者QOL の低下に関与していた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1086-1088 (2017);
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浸潤性膵管癌術後残膵癌を3 例経験したので報告する。症例1: 73 歳,男性。膵体部癌に対して膵体尾部切除(pap,pT3,pN0,M0,fStageⅡA)を施行。39か月後に残膵癌と診断し,残膵全摘を施行した。外来通院中であったが,再切除後9 か月に肺炎・敗血症で死亡した。症例2: 72 歳,女性。膵頭部癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除(SSPPD)(tub2,pT1c,pN1a,M0,fStageⅡB)を施行,術後82 か月に残膵癌を確認した。切除可能であったが手術を希望せず緩和医療を行い,診断後13 か月で原病死した。症例3: 68 歳,女性。膵頭部癌に対してSSPPD(tub1,pT3,pN1a,M0,fStageⅡB)を施行,術後20 か月に残膵癌と診断した。切除可能と判断したが,手術を希望せず化学療法併用重粒子線治療を施行し経過観察中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1089-1091 (2017);
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症例は67 歳,女性。自覚症状はなく,近医の乳腺超音波検査にて右乳腺腫瘤を指摘され,針生検にて浸潤性乳管癌との診断を受け当院紹介となった。受診時現症では視触診にて乳房腫瘤や体表リンパ節は触知せず,乳腺超音波検査にて右C領域に最大径9.8 mm 大の多発する小結節を認めた。CT および骨シンチグラフィによる全身検索では,遠隔転移は認められなかった。造影MRI では,右乳腺上外側域の結節に相応し濃染結節が多発していた。術前診断は右乳癌,cT1N0M0,Stage Ⅰであり,単純乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。病理診断では硬化性腺症内の上皮に異型が認められ,硬化性腺症内非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ: DCIS)との診断に至った。術後6 年にて無再発生存中である。術前診断に際しては硬化性腺症内DCIS も念頭に置いて,浸潤癌と過剰診断しないように注意を払う必要があると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1092-1094 (2017);
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近年,癌治療のアウトカム指標の一つとしてquality of life(QOL)の重要性が再認識されつつある。癌の疾患特異的尺度として,本邦ではQOL-ACD が使用されることが多い。今回われわれは,QOL-ACD を用いた乳癌術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)後の予後解析を行った。対象は乳癌NAC 症例228 例とし,QOL-ACD を用いて後方視的に抗腫瘍効果や予後との相関について検討した。高QOL-ACD 群208 例(91.2%)は,低QOL-ACD群20 例(8.8%)と比較して,NAC 後の無病生存期間(p=0.009,logrank)および全生存期間(p=0.040,logrank)の延長を認めた。さらにNAC 後は,NAC 前と比較して包括的評価スコアの低下を認めるものの,抗腫瘍効果との相関を認めなかった。下位評価尺度において,病理学的完全奏効(pathological complete response: pCR)症例は,non-pCR症例と比較して,「医療に対する満足感と病気に対するコーピング」尺度の変化が低い結果であったが,「身体症状・疼痛」尺度では差は認められなかった。乳癌NAC 症例において,QOL-ACDはNAC後の予後予測として有用な指標であることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1095-1097 (2017);
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潜在性乳癌を疑う1 例を経験したので報告する。症例は61 歳,女性。右腋窩部腫瘤摘出術を施行しadencarcinomaの診断となり,経過観察されていた。2 年後,同部位に再発し,右乳房部分切除術+腋窩郭清術,温存乳房への放射線療法を施行した。病理診断は乳癌であり,腋窩部に発生した原発乳癌か乳癌の腋窩リンパ節転移かは病理学的鑑別が困難であった。10 か月後,右腋窩に腫瘍が再発し腫瘤切除術を施行したところ,乳癌のリンパ節転移の病理診断であった。画像診断では右乳房内に明らかな原発病変を認めず,潜在性乳癌のリンパ節転移と考えられた。術後は予防的放射線照射の追加と内分泌療法を行い経過観察中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1098-1100 (2017);
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症例は72 歳,女性。平成某年2 月,胆嚢癌の診断で拡大胆嚢摘出術,肝外胆管切除術を施行した。病理診断は,CGnBdGb,circ,nodular infiltrating type,20×10 mm,tub2,pT3b,int,INF c,ly1,v1,ne3,pN0,pDM0,pHM0,pEM0,pPV0,pA0,R0,Stage ⅢAであり,病変の主座が胆嚢管であったため,胆嚢管癌と診断した。術後7 か月,follow up CT で肝S7 に 10 mm大の腫瘍を認め肝転移再発の診断となった。化学療法として,gemcitabine(GEM 1,000 mg/m2)を 3 週投与 1 週休薬で開始した。3 コース施行した時点の CT で肝腫瘍は不明瞭化し,6 コース目からは GEM(1,000 mg/m2)を隔週投与とした。8 コース施行した時点で肝腫瘍は指摘されずcomplete response(CR)が得られた。GEM は計21コース施行後に離脱し,術後4 年4 か月現在,再発徴候なく経過している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1101-1103 (2017);
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症例は39 歳,女性。身長 166 cm,体重 145 kg,BMI 52.6 kg/m2と極端な肥満体型であった。2015 年1 月より右乳房の発赤と硬さを自覚し,2 月に当院を受診した。視触診では右乳房全体の橙皮状皮膚と発赤・硬化を認めた。CT では右腋窩リンパ節(LevelⅠ,Ⅱ)の腫大があった。針生検でER 陽性,HER2陽性の炎症性乳癌と診断した。first-line化学療法として,pertuzumab・trastuzumab・paclitaxelの3 剤併用療法を導入した。投与量は実測体重から換算した量を用いた。同時に極度の肥満のため手術がハイリスクと考え,栄養指導の上,体重コントロールを試みた。4 コース終了後,125 kg に減量するとともに臨床的完全奏効となり,右胸筋温存乳房切除術を行った。病理学的完全奏効が得られていた。術後,5-FU,epirubicin,cyclophosphamide(FEC)療法,trastuzumab,胸壁・鎖骨上窩に対する放射線療法,ホルモン療法を行った。術後2年経過した現在,再発所見はない。超高度肥満といえども,化学療法の投与量は実測体重からの換算量で特にトラブルなく治療が可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1104-1106 (2017);
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症例は59 歳,女性。右腋窩に腫瘤を自覚し,前医を受診した。超音波検査で明らかな悪性所見を認めず経過観察されていたが,腫瘤が増大したため摘出術を施行された。病理組織診断で副乳癌と診断され,切除断端が陽性であったため,治療目的に当院へ紹介された。画像上,両側乳腺,腋窩リンパ節に異常を認めず,遠隔転移を認めなかった。切除部周囲組織の追加切除および右腋窩リンパ節郭清を施行した。術後病理組織診断では切除した組織内に浸潤癌の遺残を認めたが,追加切除断端は陰性で,リンパ節転移を認めなかった。副乳癌は副乳に発生した癌を指し,乳癌全体の1%未満と比較的まれな疾患である。発生部位としては腋窩が最も多く,手術は局所広範切除と腋窩リンパ節郭清が第一選択となる。今回われわれは,右腋窩に発生した副乳癌の1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1107-1109 (2017);
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症例は48 歳,女性。左乳房腫瘤を主訴に当院を受診した。精査にて浸潤性乳管癌,T2N2M0,stage ⅢA,LuminalHER2 typeの診断にて術前化学療法後,乳房温存手術+腋窩リンパ節郭清を施行した。術前化学療法の組織学的効果判定はGrade 1b であった。温存乳房と鎖骨上に放射線治療を行い,ホルモン療法とtrastuzumab療法を行い,外来にて加療中であった。術後7 か月,意識消失発作で救急搬送された。精査にて右前頭葉に周囲に浮腫を伴う3 cm の転移性脳腫瘍を認めた。全身検査で脳以外に再発巣を認めず,脳転移は単発であったため脳神経外科,放射線治療科と検討し,手術治療方針とし開頭脳腫瘍摘出術を行った。術後はlapatinib+capecitabine療法を行った。以後脳転移は再燃と寛解を繰り返し,4 回の開頭腫瘍摘出術,5 回の脳定位外科的照射を施行するも脳転移発症後約7 年で死亡した。脳転移発症後長期生存し得たのは,手術,放射線治療による局所療法と化学療法による全身療法が奏効した結果と思われた。転移性脳腫瘍の治療には放射線治療科と脳神経外科との連携が重要であると思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1110-1113 (2017);
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症例は63 歳,男性。主訴は食後の胸部不快感。上部消化管内視鏡検査にて下部食道に潰瘍浸潤型病変と隆起性病変が混在し,さらに食道胃接合部(esophagogastric junction: EGJ)に主座を有し胃内へ進展する巨大な1 型隆起性病変を認めた。胸腹部CT でも下部食道壁の肥厚と内腔の隆起成分が存在し,fornixには長径6 cm の腫瘤を認め,生検では内分泌細胞癌類基底細胞癌が疑われた。免疫染色の結果,食道類基底細胞癌と診断した。術前化学療法としてTS-1+CDDP を計4 コース施行した。その後腫瘍が著明に縮小したため,初診から約5 か月後に右開胸・開腹食道切除,胸腔内胃管再建術を施行した。病理結果は扁平上皮癌を多中心性に伴う類基底細胞癌であった。術後は,術前に効果を認めたTS-1+CDDP による化学療法を継続していたが,8 か月後に肝転移が出現した。また,同時期より血小板数が著明に減少したため化学療法は中止した臨床経過から悪性腫瘍に伴う二次性血栓性血小板減少性紫斑病と診断し,血漿交換療法,ステロイドパルス療法を施行したが,治療効果なく死亡した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1114-1116 (2017);
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はじめに:腹腔鏡下胃全摘術(laparoscopic total gastrectomy: LTG)を施行した多発性内分泌腫瘍症1 型(multipleendocrine neoplasia type 1: MEN1)に伴うと考えられる多発胃神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)の2 例を経験したので報告する。症例1: 患者は66 歳,女性。血液検査でCEA高値を指摘され,精査にて多発胃NET と診断された。下垂体腫瘍,副甲状腺機能異常,胃以外の膵消化管腫瘍を認めず,LTGを施行した。症例2: 患者は58 歳,女性。下垂体腫瘍の手術歴あり。人間ドックの上部消化管内視鏡検査にて多発粘膜下腫瘍を指摘され,精査にて多発胃NET と診断された。副甲状腺機能異常,胃以外の膵消化管腫瘍を認めず,LTG を施行した。考察:本症例では多発胃NET に対し,腹腔鏡下に根治切除を行い得た。MEN1 に伴うNET は小腫瘍が多発するケースが多く,外科的切除が行われることが多い。低侵襲とされているLTG のよい適応と考えられる。結語:多発胃NETにおいては,腹腔鏡下胃切除術がよい適応になると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1117-1119 (2017);
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腹腔鏡下幽門側胃切除術(LADG)は開腹手術に比べて低侵襲であるが,術前合併症比率の高い高齢者に対しても安全に行えるか検討した。対象は2005 年1 月〜2016年10 月までのLADG およびLDG 症例160 例で,75 歳以上の48 例(elder群)と75 歳未満の112 例(non-elder 群)とした。術前評価指数としてAmerican Society of Anesthesiologists physical status(ASA-PS)score,prognostic nutritional index(PNI),Charlson comorbidity index(CCI)などを用いた。性別,占拠部位,組織型では有意差を認めなかったが,PNIはelder群50.2,non-elder群52.7 と有意差を認めた。ASA-PS,CCIはともにelder群で有意に悪かった。手術時間,出血量,リンパ節郭清度,術後在院日数,吻合法,組織型,pStageでは有意差は認めず,Grade 2 以上の術後合併症は呼吸循環器系ではelder 群2 例(4.2%),non-elder 群3 例(2.7%),手術関連ではelder 群5 例(10%),non-elder群12 例(11%)で,ともに有意差を認めなかった。術前合併症の多い高齢者に対してもLADGは安全な治療と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1120-1122 (2017);
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症例は82 歳,男性。貧血があり上部消化管内視鏡検査を施行したところ,十二指腸球部後壁に易出血性の1 型腫瘍を認め,生検にて神経内分泌癌の診断を得た。その他の画像診断では遠隔転移を認めず,膵頭十二指腸切除術を施行した。病理所見より,neuroendocrine carcinoma(NEC)と診断した。術後補助化学療法は施行せず外来経過観察を行い,術後16 か月無再発生存中である。消化管原発NECのなかでも,乳頭部発生を除く十二指腸NEC の報告例はまれであるので若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1123-1125 (2017);
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症例は80 歳台,男性。血便精査のため当院に紹介された。精査で直腸S 状部癌による腸重積症と診断された。腸閉塞には至っていなかったため,待機的に腹腔鏡下手術を行った。上部直腸で腸重積を起こしており,経肛門的に消化器用サイザーを挿入して重積を整復した後,腹腔鏡下でHartmann手術を完遂した。直腸癌による腸重積症の報告はまれであり,切除前の整復は困難な場合もある。経肛門的に挿入した消化器用サイザーが重積の整復に有用であったと考えられたため,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1126-1128 (2017);
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症例は73 歳,男性。下腹部痛を主訴に受診し,精査で上行結腸癌,多発肝転移と診断され,結腸右半切除を施行した。術後のKRAS遺伝子検査ではcodon 12 の変異を認めた。CapeOX+bevacizumab(Bv)療法後に肝部分切除を施行したが,5 か月後に新規肝転移病変を認めた。FOLFIRI+Bv療法後に再度肝部分切除を施行し,8 か月後にダグラス窩と右横隔膜下の腹膜播種を認めたため,同病変に対して低位前方切除,腹膜播種切除を施行した。6 か月後に右横隔膜下の腹膜播種,肺転移,胸膜播種を認め,sLV5FU2(+Bv)療法を継続している。初回手術から5年9か月,全身状態良好で通院中である。近年,抗酸化ストレス蛋白の一つであるNAD(P)H: quinone oxidoreductase-1(NQO1)の抗癌剤耐性に関する報告が散見される。本症例の原発巣切除標本の免疫組織化学染色ではNQO1発現が陰性であり,病勢制御や長期生存に関与している可能性が考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1129-1131 (2017);
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著明な低蛋白血症に起因する浮腫,体腔液貯留を主訴に初診となった巨大大腸癌切除例を経験したので報告する。症例は74歳,女性。血液検査でHb 8.8 g/dL と貧血を認め,総蛋白4.5 g/dL,アルブミン1.1 g/dLと高度の低蛋白血症を認めた。胸腹部CT 検査で両側胸水,中等量の腹水,右側結腸に12.5×10.5 cm の腫瘤像を認めた。精査の結果,進行大腸癌と診断され明らかな遠隔転移を認めず,通常開腹手術でD3 リンパ節郭清を伴う結腸右半切除術を行い一期的に吻合再建した。切除標本では上行結腸に18×12 cm の1 型腫瘍を認め,盲腸回腸末端への浸潤を認めた。組織所見は中分化腺癌,pT3N0M0,fStage Ⅱの結果であった。術後経過は良好で,血中蛋白濃度も徐々に上昇した。自験例では病変からの蛋白漏出を証明し得ていないため確定診断には至らないが,術後経過からは蛋白漏出性胃腸症の合併を強く疑うものである。
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癌と化学療法 44巻12号, 1132-1134 (2017);
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大腸癌非孤立性脾転移の2 切除例を報告する。症例1: 67 歳,男性。横行結腸癌,多発肝転移にて横行結腸切除,肝部分切除術を施行した。術後1 年6か月で残肝再発,脾転移を認め,肝部分切除および脾臓摘出術を施行した。その後,残肝再々発に対し肝部分切除施行,脾臓摘出から3 年6か月経過したが,新たな再発巣なく経過している。症例2: 53 歳,女性。腹部膨満感を主訴に受診した。CT,MRIにて回盲部腫瘍,両側卵巣腫大,脾腫瘍を指摘された。結腸右半切除,子宮全摘,両側付属器切除,骨盤内リンパ節郭清,傍大動脈リンパ節郭清,大網切除,脾臓摘出術を施行した。盲腸癌の両側卵巣,脾転移と診断された。術後8 か月で多発肝転移が出現し,化学療法継続中である。悪性腫瘍の脾転移は0.3〜7.3%と比較的まれとされる。孤立性脾転移については切除が有効であるとの報告も散見するが,非孤立性脾転移例であっても自験例1 のように長期生存例もあることから,症例によっては切除を考慮してもよいと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1135-1137 (2017);
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症例は67 歳,女性。早期下行結腸癌(pTis,pN0,cH0,cM0,Stage 0)に対し,腹腔鏡補助下左半結腸切除術を施行した。術後は発熱や吻合部の圧痛所見など吻合部縫合不全を示唆する所見を認めず,経過良好であった。退院1 か月後,肝左葉外側区域に直径約80 mm の膿瘍と左副腎に直径約30 mm の膿瘍形成を認めた。吻合部近傍には少量のfree air とfluid collection を認め,minor leak を疑ったが腹膜刺激症状はまったくなく,ガストログラフィン注腸検査でも吻合部からの造影剤の逸脱や周囲のpooling 所見は認めなかった。抗菌剤の投与を開始し,肝膿瘍に対しては経皮経肝膿瘍ドレナージも施行した。画像検査上,肝膿瘍,副腎膿瘍ともに縮小し,解熱したため退院となった。しかしその1 か月後に肝膿瘍の再燃を認めたため,難治性肝膿瘍と考え肝外側区域切除術を施行した。肝切除後は残肝や副腎に膿瘍の再燃は認めず,経過良好である。大腸癌に肝膿瘍が合併した症例は多数の報告があるが,副腎膿瘍が合併した症例の報告はない。本症例は,術直後から退院後初回外来受診時まで縫合不全を示唆する所見はなく術後経過は良好と判断していたが,minor leakにより難治性肝膿瘍と副腎膿瘍を形成したと考えられた示唆に富む症例であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1138-1140 (2017);
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症例1 は80 歳,女性。4 日前からの発熱,食欲不振を主訴に近医を受診,肝膿瘍の診断で当院紹介となった。経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)と抗生剤投与による治療後,原因検索で盲腸癌と診断,腹腔鏡下右半結腸切除を施行した。最終診断はT2,N0,M0,StageⅠであった。外来通院中であるが,大腸癌,肝膿瘍の再発を認めていない。症例2 は59 歳,男性。2 週間前からの頭痛を主訴に当院を受診した。肝膿瘍の診断で,PTAD と抗生剤投与による治療後,原因検索でS状結腸癌と診断,腹腔鏡下S 状結腸切除を施行した。最終診断はT3,N0,M0,StageⅡであった。術後10 か月で肺転移が出現し,全身化学療法を施行中である。肝膿瘍を合併する大腸癌においても,肝膿瘍の軽快後であれば腹腔鏡手術が安全に施行可能と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1141-1142 (2017);
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症例は60 歳台,男性。2011 年2 月,下部直腸癌に対し低位前方切除術,両側側方リンパ節郭清術を施行し,tub2,pT2,N0,M0,StageⅠの診断であった。術後5 年8 か月で局所再発による大腸閉塞を来し,ステント留置後に直腸切断術を施行した。術後,骨盤死腔炎が遷延し,長期のドレナージを要した。術後12 日目,30 日目に骨盤からの出血がみられたが,造影CT では出血源は特定されず,保存的に止血された。術後35 日目に再度出血を認めたため造影CT を撮像すると,左内腸骨動脈領域に仮性動脈瘤を認めた。直ちに選択的血管造影を行い,塞栓術により止血した。直腸癌局所再発手術は骨盤死腔炎の合併が多く,仮性動脈瘤破裂の可能性を念頭に置く必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1143-1145 (2017);
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胆道出血を来した混合型肝癌を経験したので報告する。症例は65 歳,男性。右季肋部痛で受診した。腹部超音波検査で肝外側区の胆管拡張,血液検査所見で肝胆道系酵素の上昇を認めたため,ERC 検査を施行したところ十二指腸乳頭部からの出血を認めた。胆管造影では左肝管の拡張と陰影欠損像を認め,経口胆道鏡では左肝管に乳頭状の易出血性の隆起性病変を同定し,生検の結果,腺癌と診断された。肝内胆管癌の診断で肝左葉,尾状葉切除,肝外胆管切除,リンパ節郭清,右肝管空腸吻合術を施行した。切除標本では左肝管に16 mmの隆起性病変を認め,肝実質内へ浸潤していた。病理組織学的所見は混合型肝癌であった。術後1 年8 か月後,2 か所に肝転移再発を認めgemcitabineを開始したがPD となり,現在はS-1に変更し2年間SDとなっている。
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癌と化学療法 44巻12号, 1146-1148 (2017);
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症例は72 歳,女性。5 年以上前より左乳房腫瘤を自覚していたが放置した。腫瘤が増大するにつれ出血を認め,貧血や低栄養のため全身状態が悪化し救急搬送された。左乳房全体を占める巨大な腫瘤を認めた。腫瘍表面の皮膚は一部が壊死,自壊して多量の血液が混じる滲出液を認めた。胸部CT検査では18×12 cm の巨大な腫瘤を認め,辺縁は分葉状で不整,内部は不均一で造影不良な部分と造影される部分が混在し,葉状腫瘍が疑われた。針生検は線維肉腫を疑う所見であった。出血および感染コントロール目的に左乳房切除術を行った。切除標本の重量は2.6 kg であった。組織病理学的検査にて悪性葉状腫瘍と診断した。今回われわれは,高度貧血を認めた乳腺悪性葉状腫瘍の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1149-1151 (2017);
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腋窩リンパ節転移を契機に発見され,術前化学療法(NAC)後に乳房温存療法(BCT: 乳房非切除+腋窩郭清後の乳房照射)を施行した潜在性乳癌(OBC)の4 例を経験した。腋窩リンパ節の病理診断で3 例が腺癌,1 例が扁平上皮癌の診断であった。画像検査で乳房内および他臓器に原発巣を認めず,遠隔転移を認めなかったためNAC後にBCT を施行した。治療効果は腋窩リンパ節転移が消失したものは1 例で,その他3 例はリンパ節転移が残存した。1 例は急速な転帰をたどり,術後7 か月で肺転移が出現し,10 か月で死亡した。その他は局所および遠隔再発を認めていない。OBC は適切な全身治療が必要となるが,近年MRIなどで乳房内に病変を認めない場合,乳房切除術とBCT で予後や局所制御に差はないとする報告もある。NAC後のBCT は有用な選択肢となり得ると考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1152-1154 (2017);
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症例は47 歳,女性。右側頸部腫瘤を主訴に受診され,画像検査で右頸部内部に結節性病変の突出を伴う25 mm 大の嚢胞性病変が認められたため,生検目的に腫瘤摘出術を施行した。病理組織学的所見では腺上皮あるいは化生性の扁平上皮に覆われた嚢胞壁に一部甲状腺組織が存在し,乳頭状に増殖する異型細胞が認められた。以上より,病理組織学的に甲状舌管嚢胞に特徴的な上皮成分と遺残甲状腺組織からの癌化が証明されたこと,甲状腺に明らかな原発となる腫瘍性病変の存在を認めなかったことから,右側頸部に発生した甲状舌管嚢胞由来の甲状腺乳頭癌と診断した。初回手術後1 年5か月目に右頸部リンパ節再発を来したため,右頸部リンパ節郭清を行った。再発手術後2 年10 か月を経過しているが,再発転移の所見は認められていない。側頸部腫瘤の診療に当たって,頻度は低いが甲状舌管嚢胞由来の甲状腺乳頭癌も念頭に置く必要性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1155-1157 (2017);
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症例は71 歳,男性。急激な腹痛を主訴に当科を受診した。心房細動,脳梗塞,心弁置換術後の既往を有し,ワーファリンを内服中であった。腹部造影CT で血性腹水と十二指腸水平脚に接する巨大な腫瘤を認めた。腫瘤は石灰化を伴う充実性部分と新旧の血腫とが混在して被包化されていた。十二指腸原発の消化管間質腫瘍の穿破による腹腔内出血が疑われ,開腹手術が施行された。術中所見で右側結腸間膜原発の脂肪肉腫が疑われ,結腸右半切除術を伴う腫瘤摘出術が施行された。病理組織学的にて腫瘍内出血を伴う混合型脂肪肉腫と診断された。術後は合併症なく経過し,術後第8 病日目に退院した。術後52か月が経過した現在,無再発生存中である。非常にまれではあるが,特に抗凝固療法中においては脂肪肉腫が腹腔内出血の一因となることもある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1158-1160 (2017);
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症例は64 歳,男性。右後腹膜巨大腫瘍に対し腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的検査では高分化型脂肪肉腫と診断された。初回手術より2 年4か月後,結腸肝弯曲部背側に再発病変を認め,再摘出術を行った。その1 年1か月後に右後腹膜に再々発を認めた。右腹壁および右側横行結腸に浸潤があり合併切除した。摘出した腫瘍はいずれも高分化型脂肪肉腫であった。最終術後1年6か月の現在まで再発の徴候は認めていない。後腹膜脂肪肉腫は外科的完全切除が唯一有効な治療法とされている。再発例に対しても積極的な切除が生命予後に寄与するが,再発を反復するたびに悪性度の高い脱分化型への変性を来し再発までの期間が短くなるという報告もあり,今後厳重な経過観察が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1161-1163 (2017);
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進行食道癌における食道・気道狭窄や瘻孔形成はしばしばquality of life(QOL)を低下させる。このような症例に対するステント留置術は治療の選択肢の一つとなる。今回われわれは,当科における食道および気道のダブルステント症例の治療成績を検討した。2010〜2016年の間に食道および気道ステントを挿入した症例は8 例であった。4例で待機的にダブルステント留置を施行した。1 例では食道ステント挿入により気管の狭窄が起こり,翌日緊急で気管ステントを挿入した。3 例は食道ステントを挿入後に徐々に腫瘍が増大し,後日気道ステントを挿入した。8 例のうち5 例(67.5%)で嚥下障害スコアの改善を認め,全例(100%)で呼吸器症状の改善を認めた。4 例(50.0%)で一時的な自宅退院が可能であった。食道ステント挿入時からの生存日数の中央値は70.5 日であった。進行食道癌に対する食道および気道のダブルステント留置はQOLの改善に有用であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1164-1166 (2017);
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症例は51 歳,女性。主訴は左乳房腫瘤。初診時に腹部膨隆,肝機能障害を認めた。マンモグラフィでは,左乳房にカテゴリー5 の腫瘤と右乳房にカテゴリー4 の区域性石灰化を認めた。病理検査では両側浸潤性乳管癌,左乳房がcT2N1M0,StageⅡB,右乳房がcT1N0M0,StageⅠであった。CT で巨大な子宮筋腫と下大静脈の圧迫を認め,これらによる肝機能障害と疑った。乳癌治療は術前化学療法を予定した。婦人科医は,「子宮筋腫による肝機能障害は考えられない」と子宮摘出術を拒んだ。しかし,化学療法による深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PTE)を回避するためと粘り強く交渉し,子宮摘出術(3.6 kg)を行った。術後,肝機能は正常化し,その後の乳癌治療は順調に進めることができた。一般に良性疾患と悪性腫瘍がある場合,悪性腫瘍の治療が優先される。しかし,悪性腫瘍よりも先に良性疾患の治療を優先する場合がある。他科の医師と粘り強く話し合うことが重要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1167-1169 (2017);
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症例は59 歳,女性。食欲不振を主訴に近医を受診し,大腸内視鏡検査にて肛門縁より20 cm のS 状結腸癌と診断された。腹部CT 検査で多発肝,肺転移と腹膜播種を認め,T3N2M1b(P2,H3,PUL2),Stage Ⅳと診断された。初診時はperformance status(PS)3 であり,腫瘍による閉塞で経口摂取も不良な状態であったため,まず横行結腸人工肛門造設術を施行した。その後,cetuximab単剤で化学療法を開始し,4 コース終了後にはCT 上で原発,肺転移,肝転移ともにPR となり,また全身状態もPS 0 まで改善した。このため強力な治療が可能と判断し,mFOLFOX6+cetuximabに変更した。レジメン変更後の副作用はgrade 1〜2 のざ瘡様皮疹のみで,その他の重篤な副作用の発現はなく,現在も化学療法継続中(術後5 か月)である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1170-1172 (2017);
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症例は73 歳,女性。2014年12 月に横行結腸癌に対して腹腔鏡下右半結腸切除術,D3郭清を施行した。病理組織学的検査所見はtub2,pT4b,pN1,sH0,sM0,ly2,v0,Stage Ⅲa であった。術後にXELOX 2 コース→FOLFIRI+panitumumab(Pmab)12 コースを施行した。経過中(2015年12 月)に十二指腸播種による狭窄を認め,腹腔鏡下胃空腸吻合術を施行した。その後,腫瘍マーカーが著明に増大,腹部CT でも十二指腸播種が増大し,2016 年4 月よりmFOLFOX6+Pmabに変更した。計5 コース施行するも腹壁転移が出現した。マイクロサテライト不安定性検査でMSI-Hであったため抗PD-1抗体であるpembrolizumabの臨床試験に登録し,6 月より投与を開始した。腫瘍マーカーは著明に低下し,腹部CT でも十二指腸播種は経時的に縮小,腫瘍縮小効果が著明にみられた。免疫療法が著効する症例もあると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1173-1175 (2017);
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2014 年10 月にoxaliplatin(L-OHP)が胃癌に適応となり,高度進行再発胃癌患者の一次治療のSP 療法に加え,CapeOX 療法も標準治療として使用可能となった。今回,CY(+)単独陽性・進行胃癌術後に長期のS-1 ベース化学療法を行い腹膜播種再発した症例に対して,5-FU チェンジとして機序の異なるcapecitabine を用いたCapeOX 療法を行い,complete responseとなり得た症例を経験した。in vivoでL-OHP は腫瘍のTP 活性を亢進し,capecitabineの有効性を高めるとの報告がある。S-1 ベースの化学療法後でも,CapeOX療法は有効である可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1176-1178 (2017);
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症例は66 歳,男性。2 年前から膀胱癌に対して当院泌尿器科で治療を開始し,二度目の手術目的の入院中に突然の腹痛を発症した。腹部CT 検査で腹腔内遊離ガスと腹水貯留を認め,穿孔性腹膜炎の診断にて外科へ転科し,同日緊急手術となった。Treitz靭帯から40 cm肛門側の空腸に3 型腫瘍が存在し,穿孔していた。術後に患者より9 年前に治療した肺癌が再発していると申告があり,病理結果は肺癌の小腸転移に矛盾しなかった。急性腹症の患者では,他臓器癌の小腸転移も念頭に置いた病歴聴取と全身検索が重要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1179-1181 (2017);
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症例は69 歳,女性。他院にて直腸癌(Rb)に対して低位前方切除術(D2)が施行された。pStage Ⅲa にて術後補助化学療法としてUFT 療法が施行された。術後1年7か月,吻合部再発にて腹会陰式直腸切断術が施行され,術後にS-1 療法が施行された。初回術後3年8か月,左肺転移が2 個出現し,capecitabine療法が開始された。緩徐に増大するも4 年間継続されていた。初回術後8年5か月,右下肢感覚障害が出現し,頭部CT・MRIにて脳転移(左頭頂葉,単発,18 mm)と診断され,当科を紹介受診した。脳転移に対してガンマナイフ治療を施行し縮小を得た。肺転移は切除不能となっており,多剤併用化学療法を施行した。脳転移は2 回再発したがガンマナイフ治療により制御され,QOL も保たれた。麻痺などの脳転移症状は認めず,脳転移出現後3 年1か月と長期生存が得られている。
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癌と化学療法 44巻12号, 1182-1184 (2017);
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症例は81 歳,女性。B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアである。右季肋部痛と発熱を主訴に受診し,腹部造影CT で胆石胆嚢炎と11 cm 大の肝腫瘤,傍大動脈リンパ節腫大を認め,精査加療目的に入院となった。胆石胆嚢炎に対してはpercutaneous transhepatic gallbladder drainage(PTGBD)を施行し軽快した。肝腫瘤についてはHBV キャリアでalphafetoprotein(AFP)63,073 ng/mL,PIVKA-Ⅱ 9,620 mAU/mL ともに高値であり,原発巣となり得る肝外病変がないことから肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)と診断した。胆嚢摘出術と肝右葉切除術,傍大動脈リンパ節切除術を施行した。切除標本にて胆嚢腫瘍を認め,病理では胆嚢癌,肝転移,傍大動脈リンパ節転移の診断であった。免疫染色では胆嚢癌部,肝転移病変ともにAFPが陽性であり,AFP産生胆嚢癌と診断した。術後35 日目のCT で多発肺,肝,リンパ節再発を認め,術後4 か月で死亡した。AFP 産生腫瘍としてHCC,胎児性癌以外には胃癌での報告が最も多く,胆嚢癌はまれである。今回診断に難渋した巨大肝転移を伴うAFP産生胆嚢癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1185-1187 (2017);
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破骨細胞様巨細胞の出現を伴う乳癌は極めてまれであり,発生機序や悪性度について不明な点が多い。今回われわれは,破骨細胞様巨細胞の出現を伴う乳癌の1 例を経験したので報告する。症例は41 歳,女性。左乳房腫瘤を主訴に受診した。乳房超音波検査にて左乳房内下領域に径1.7 cm の不整形で辺縁明瞭粗造な腫瘤像形成性病変を認めた。腫瘤の針生検にて浸潤性乳管癌の診断となり,左乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。摘出標本における病理診断は,破骨細胞様巨細胞の出現を伴う乳頭腺管癌,ER 陽性,PgR 陽性,HER2陰性,MIB-1 index<5%であった。破骨細胞様巨細胞の出現を伴う乳癌の特徴として,炎症や線維化,血管増生を伴い,高〜中分化型乳管癌が多く,出現する多核巨細胞は組織球由来であるとされる。今後の症例を蓄積することで,その生物学的特性が明らかになると考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1188-1190 (2017);
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当科において2006 年1 月〜2016 年12 月の10 年間に経験した胃癌穿孔症例8 例の検討を行ったところ,同時期の上部消化管穿孔における入院症例の15%を占め,良性上部消化管穿孔症例と比較して有意に高齢であった[中央値66(37〜80)歳vs 55(12〜97)歳,p=0.033]。治療後3 か月未満に死亡した3 例を短期死亡群,治療後3 か月以上生存した5 例を長期生存群として比較したところ,短期死亡群は発症時Glasgow prognostic score(GPS)が全例2 と,長期生存群と比較して高値の傾向(p=0.05)にあり,発症時アルブミン値も低値の傾向(p=0.05)にあった。長期生存群5 例は全例腹膜炎治療の後,二期的に手術を施行しており,うち4 例は根治的胃切除術,1 例は胃空腸バイパス術であった。胃癌穿孔症例は,発症時低アルブミン血症であることは短期予後を悪化させる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1191-1193 (2017);
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症例は67 歳,女性。上腸間膜動静脈浸潤および遠隔リンパ節転移を伴う膵頭部癌に対し,S-1 による化学療法を施行した。2 コース終了後に腫瘍マーカーの正常化,主病変の著明な縮小を認めた。化学療法を継続したが,増悪所見を認めず治療開始から8 か月後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。切除後の病理診断では,主腫瘍は著明な線維性変化と軽度異型細胞をわずかに認めるのみでリンパ節転移も認めず,組織学的完全奏効と診断した。術後10 か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1194-1196 (2017);
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再発大腸癌治癒切除例の予後を明らかにし,再発大腸癌治療の指標とすることを目的とした。1993〜2013年までに当科で加療した初発大腸癌治癒切除後の再発例のうち,治癒切除が可能であった109 例を対象とした。再発部位は肝58 例,肺27 例,腹膜11 例,局所9 例,リンパ節8 例,吻合部6 例で,うち10 例は2 臓器への再発であった。再発巣治癒切除後の生存期間は75.3か月,5 年生存率は53.8%であった。予後との関連では,原発巣の組織型が低分化腺癌・粘液癌,初発時の進行度がStage Ⅲb 以上,再発までの無病期間が2 年未満症例の予後が不良で,組織型と無病期間が独立した因子として抽出された。一方,再発臓器数,再発病巣数,再発後の治癒切除の回数では予後に差がなかった。再発大腸癌治癒切除例では組織型と無病期間が予後を規定するが,治癒切除可能であれば多発例や複数回の再発例でも積極的に切除すべきと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1197-1199 (2017);
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症例は80 歳,女性。直腸癌(Ra)に対し低位前方切除術+D2(prxD3)郭清を施行した。血清CEA高値のため,再発巣不明のまま術後 16 か月より TS-1(80 mg/day)内服を開始した。術後 27 か月の PET-CT で膣後壁に集積を認め(SUVmax 11.28),MRIおよびCT で直腸前壁と膣後壁の間に腫瘤を認めた。術後28 か月に横行結腸人工肛門造設後,放射線治療(60 Gy)を行った。放射線治療後のCEA値は正常値まで改善し,CT 上も明らかな腫瘍は指摘できなかった。放射線治療後112か月経過した現在,再発は認めていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 1200-1202 (2017);
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当院でeribulin(ERI)を投与した進行再発乳癌32 例を対象に,最良効果と予後について後方視的に解析した。主要評価項目はprogression-free survival(PFS),副次評価項目は最良効果,overall survival(OS),post-progression survival(PPS),有害事象とした。前化学療法歴の中央値は3(1〜9)レジメンで,全体の奏効率15.6%,臨床的有用率31.3%,PFS,OS,PPS 中央値はそれぞれ2.9 か月,8.5か月,5.6 か月であった。relative dose intensity(RDI)の検討ではRDI<85%群のOS,PPS が7.2 か月,3.4 か月に対し,RDI≧85%群で14.5 か月,11.4 か月と有意に延長していた。OS,PPS の多変量解析ではestrogen recepter,内臓転移の有無,総投与量,RDIが共通した予後因子であった。主なGrade(G)3 以上の有害事象は好中球減少18 例(56%)で,非血液毒性はすべてG1-2であり,安全性に優れていた。総投与量≧10 mg/m2,RDI≧85%を達成できる症例はPPS 延長による予後改善が期待される。
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癌と化学療法 44巻12号, 1203-1204 (2017);
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大腸癌イレウスに対する緊急手術はリスクが高いとされ,減圧処置を行ってからの根治術が選択されることがある。減圧処置は手術,イレウス管,ステントのうちから病状に応じて選択される。そこで当院での大腸癌イレウスに対する緊急処置について後方視的に検討を行った。対象は2012 年1 月〜2016 年12 月までの間に手術を行った大腸癌イレウス症例42例である。そのうち,ステント留置18 例,経鼻イレウス管挿入10 例,経肛門イレウス管挿入6 例,人工肛門造設5 例,減圧を行わずに病変切除を行った症例が3 例であった。原発巣切除の方法として腹腔鏡下大腸切除術を選択した症例はステント群で11 例と最も多かった。3 年全生存率は治療群間で差は認めなかった。ステント群で,減圧後に検査を行い重複癌の診断が可能となった症例を経験した。大腸癌イレウスに対する緊急処置としてステント留置は腹腔鏡手術が可能であり,術前検査を行うことができるため選択肢となり得る。
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癌と化学療法 44巻12号, 1205-1207 (2017);
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症例は73 歳,男性。主訴:胸焼け。既往歴:糖尿病性腎症にて腹膜透析(CAPD)中。上部内視鏡検査にて胃体中部大弯側に0-Ⅱa 病変を認め,生検結果group V,胃癌,cT1aN0M0と診断された。消化器内科にてESD を施行されたが,術後穿孔性腹膜炎を併発し,保存的加療にて経過観察していた。ESD の病理結果にてpT1b,INF b,UL(−),ly2,v0,pHM0,pVM0 であったため,追加切除目的にて外科紹介となった。術前血液透析に移行し,胃全摘術+D1 郭清+Roux-en-Y 再建術を施行した。術後にWBC,CRP 上昇を認めるも,術後6 日目に施行した上部消化管内視鏡検査にて吻合部狭窄・縫合不全は認めなかったため,飲水を再開した。術後7 日目よりCAPD 再開とし,以後問題なく術後20 日目に退院となった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1208-1210 (2017);
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初診時に切除不能でも,化学療法の奏効によりR0切除が可能となるStage Ⅳ胃癌が存在する。2004〜2013年,当科で初診時にStage Ⅳ胃癌と診断され,化学療法後にR0 切除を施行し得た5 例を後方視的に検討した。切除不能因子は領域外リンパ節転移2 例,腹膜播種2 例,領域外リンパ節・腹膜播種・左副腎転移が1 例であった。多剤併用化学療法を2〜6 コース施行後,全例PR となり手術が行われた。領域外リンパ節転移陽性例や腹膜播種陽性例では,転移巣の癌が消失していた。術後合併症を3 例に認めたがいずれもClavien-Dindo分類Ⅱ以下であり,周術期死亡を認めなかった。組織学的効果判定は全例grade 1b 以上であった。3 例に再発を認めたが,2 例は無再発生存中で,生存期間中央値は28(14〜61)か月であった。化学療法後にR0 切除が行われたStage Ⅳ胃癌のなかには長期生存例も存在した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1211-1213 (2017);
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高齢者では全身状態や手術侵襲を考慮し術式が決定されている。今回,高齢者大腸癌における至適なリンパ節郭清範囲について検討した。Rb を除く75 歳以上の大腸癌手術症例中,cT3 以深またはcN+でD2 以上の郭清を伴うR0 切除を行い,12個以上のリンパ節検索を行った141 例を対象とした。5 年全生存率(overall survival: OS)は79.1%,5 年疾患特異的生存率(disease specific survival: DSS)は89.4%。OSに影響する因子は,術前併存疾患2 疾患以上,肉眼型3〜5 型が独立した予後因子であり,郭清範囲では差を認めなかった。また,年齢別にD2/D3郭清の成績を比較すると,80 歳未満ではDSSでD3郭清のほうが良好な傾向であった(p=0.110)が,80 歳以上ではDSSでD2のほうが良好な傾向であった(p=0.143)。高齢者大腸癌において,D2/D3 郭清で有意な差は認めず,特に 80 歳以上の症例ではR0手術が可能であればD2郭清でも十分な可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1214-1216 (2017);
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初期治療の化学療法と抗HER2 療法が著効した,局所進行かつ同時性肝転移を有するHER2 陽性乳癌の1 例について報告する。症例は48 歳,女性。両側乳癌,T4cN1M1,StageⅣ,ER 陰性,HER2陽性。paclitaxel毎週投与,trastuzumab/pertuzumab(HP)の3 週毎投与を施行し,早期に肝機能障害は軽快した。治療開始8 日目にpaclitaxelでアナフィラキシーショックを起こし,eribulinに変更した。1 サイクル後の評価で肝転移の57.0%縮小,左乳房腫瘤の縮小,皮膚びらんの上皮化を認めた。8 サイクル後に局所腫瘤が再燃し,両側乳房切除術を施行した。左胸壁照射後,docetaxel+HP を6サイクル施行した。PET-CTで異常集積は消失し,新病変も認めずcCR と判定された。StageⅣ,HER2陽性乳癌では,積極的な治療介入で病勢の改善と無増悪期間の延長が期待できると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1217-1219 (2017);
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患者は53 歳,男性。2007 年の検診で左頸部に腫瘤を指摘され当院を受診し,精査で胸部食道癌(Ut,cT3N1M0,cStage Ⅲ)と診断された。手術は行わずに根治的化学放射線療法(definitive chemoradiotherapy: dCRT)を行うこととなり,2008 年2 月より低用量FP と60 Gy の照射による治療を行ったところ臨床的完全奏効が得られた。2013 年12 月のCT検査で噴門部リンパ節の腫大を認め,リンパ節再発と診断した。2015 年10 月のPET-CT検査で孤立性のリンパ節再発と判断したが,同時期の上部消化管内視鏡で胸部中部食道に表在癌を認めた。治療として,表在癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し,病理組織診断で追加切除が不要であることを確認後,噴門部リンパ節に対して腹腔鏡下リンパ節切除術を行った。術後は良好に経過し,現在まで1年6か月の間再発は認めていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 1220-1222 (2017);
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症例は69 歳,男性。40 歳ごろに十二指腸潰瘍のため幽門側胃切除術,Billroth Ⅱ法再建を施行されている。貧血の精査のため前医を受診し,残胃空腸吻合部に2 型癌を指摘された。精査の結果,残胃癌,空腸間膜内リンパ節転移と診断した。切除可能であったが根治性を高めるため,術前化学療法としてS-1/cisplatin併用療法を2 コース行った。原発巣は著明に縮小し,転移を疑われた空腸間膜内リンパ節も縮小を認めた。空腸間膜内リンパ節郭清を伴う残胃全摘術を施行した。切除標本では病理学的complete response(pCR)と診断された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1223-1225 (2017);
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今回われわれは,胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)後のリンパ節再発例に対し,腹腔鏡下小弯リンパ節郭清術を施行した症例を経験したので報告する。症例は77 歳,男性。2013 年1 月,前医にて胃噴門下部小弯中心の80 mm 大の0-Ⅱc 病変に対しESD を施行した。病理検査にて追加切除が必要と判断されたが,本人の強い希望にて厳重経過観察の方針となった。ESD 後2 年目のCT 検査にて小弯リンパ節の腫大を認め,精査加療のため当院へ紹介となった。リンパ節郭清を含む定型的胃切除術に強い不安と難色を示し拒否されたため,代替治療として腹腔鏡下小弯リンパ節郭清術を施行した。胃切除術の影響が大きい高齢者などでは,選択肢の一つとして再発危険領域のリンパ節のみを郭清することも考慮してよい可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1226-1228 (2017);
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胃癌ではしばしば神経内分泌成分の混在がみられ,WHO 分類では腺癌と神経内分泌成分の割合によりneuroendocrine carcinoma(NEC)やmixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)に分類される。今回われわれは,神経内分泌成分を伴う食道胃接合部腺癌の1 切除例を経験した。症例は54 歳,男性。検診を契機に食道胃接合部癌を指摘された。上部消化管内視鏡検査では食道胃接合部に3 型腫瘍を認め,生検ではchromogranin A が一部で陽性となる低分化な腺癌の像がみられた。CTおよびFDG/PET検査では領域リンパ節に転移が疑われた。食道胃接合部癌の診断に準拠し,噴門側胃切除+下部食道切除術を施行した。病理所見では,中〜低分化な腺癌の形態を示しており,免疫染色では,chromogranin Aが陽性となる腫瘍細胞が混在しており,神経内分泌成分を認めた。腫瘍の大部分が腺癌であったことから,adenocarcinoma withneuroendocrine differentiation(NED)と診断した。NED を伴う胃癌に対する定まった治療法は確立されておらず,今後のさらなる症例の集積と検討が望まれる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1229-1231 (2017);
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2012年4 月〜2017 年3 月の5 年間で閉塞性大腸癌に対しbridge to surgery(BTS)としてステント留置を行った34例を対象とし,短期成績を中心に検討した。男女比は男性22 例,女性12 例で平均年齢は72.6 歳であった。全例で留置および減圧に成功し,留置より平均2.5日後から経口摂取が開始された。留置に伴う重篤な合併症はなかった。留置後全例に待機的手術を施行し得た。手術までの平均日数は24.7 日であった。術式としては14 例に腹腔鏡下手術が行われた。術後合併症では1 例にminor leakage,1 例に腫瘍の腹壁浸潤による腹壁膿瘍を認め,重症合併症として心不全と肺炎を1 例ずつ認めた。閉塞性大腸癌に対する大腸ステント留置は比較的簡便で安全な手技であり,術前の良好な腸管減圧が得られ一期的な切除が可能となる有効な治療法といえる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1232-1234 (2017);
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症例は46 歳,女性。血便を主訴に受診した。直腸癌(Rs)の診断となり,腹腔鏡下前方切除およびD3リンパ節郭清術を行った。pT4a(SE),N2,M0,pStage Ⅲb のため,術後補助化学療法としてXELOX療法を6 コース行った。6 コース施行終了2 か月後,CEA値が上昇したため,胸腹部CT 検査を施行した。両側肺に5 個の結節を認め,肺転移(PUL2)と診断した。直腸癌異時性多発性肺転移PUL 2(Grade C)に対し,IRIS+bevacizumab(BV)による化学療法を行った。3 コース施行後の効果判定はSD であった。術後補助化学療法からの再発期間と今回の所見より,化学療法に効果が乏しい直腸癌肺転移病変に対し減量手術が妥当と判断し,胸腔鏡補助下両肺部分切除術を施行した。術後再発抑制のため,全身化学療法としてBV 併用TAS-102療法を開始した。現在12 か月間,無再発生存中である。集学的治療が奏効した大腸癌異時性多発性肺転移の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1235-1237 (2017);
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症例は46 歳,女性。左下腹部痛を主訴に受診し,dynamic CT にて膵頭部に境界明瞭で辺縁整な漸増性に増強する40 mm大の腫瘤を認めた。内部は不均一で一部低吸収を認めた。超音波内視鏡でも腫瘍は辺縁整,境界明瞭,内部不均一で,周囲に無エコー域を伴っていたため,充実成分を伴う嚢胞性病変が疑われた。以上より術前診断はsolid pseudopapillary neoplasm(SPN)と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後経過はおおむね良好であり,術後13 日目に退院となった。術後病理診断は膵腺房細胞癌であった。画像所見と年齢などから,SPN との鑑別診断が困難であった膵腺房細胞癌の1 例を経験した。今後は内部不均一な造影効果を伴う膵腫瘍に関しては,本疾患も念頭に置くことが必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1238-1240 (2017);
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当院においてbridge to surgery(BTS)目的に大腸ステント治療が行われた閉塞性大腸癌34 例を対象とし,ステント留置後の内視鏡検査所見を中心に臨床的検討を行った。大腸ステント留置後の大腸内視鏡検査は29 例(85.3%)に施行され,そのうち28例(96.6%)では全大腸を観察し得た。併存病変は全大腸内視鏡検査を施行した28 例中22 例(78.6%)と高率に認められた。病変の内訳は,腺腫性ポリープ17 例(60.7%),多発癌5 例(17.9%),閉塞性大腸炎3 例(10.7%)であった(重複あり)。多発癌合併例では手術は全例一期的に行われ,多発癌も同時に切除された。大腸ステント留置後の大腸内視鏡検査は併存病変の術前診断と切除範囲の決定に重要であり,この点からもBTS としての大腸ステントの有用性が示された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1241-1244 (2017);
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gemcitabine+nab-paclitaxel(GN)療法は,腫瘍縮小効果が高く,転移を有する膵癌に有効性が確立している。一方,奏効例に対する補助的外科切除(conversion surgery: CS)で長期生存が得られると報告されている。切除不能膵癌に対するGN 療法により企図したCS の可能性を検討した。対象は切除不能膵癌で,2015 年1 月以降にGN 療法を開始した29 例。URLA(主要動脈に半周以上接触)・UR-M(微小遠隔転移)で,GN 療法で一定期間以上の臨床的奏効を認めた場合にCS を企図した。年齢中央値62.5歳,男性18 例:女性11 例,頭部20 例:体尾部9 例であった。切除不能理由は,UR-LA 18 例:URM11 例であった。29 例中9 例(31%)でCSが施行された。UR-LA 18 例中5 例(28%),UR-Mで11 例中4 例(37%)であり,切除不能理由に差はなかった。CS 遂行例では2 年生存率67%であり,不能例に比べ有意に生存率が高かった(p=0.039)。切除不能膵癌に対して,GN療法を用いた集学的治療はCSを導入し得,予後改善に寄与する可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1245-1247 (2017);
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症例1: 患者は80 歳,男性。盲腸癌,多発肝転移,腹膜播種と診断され,腸閉塞症状があるため原発巣切除術を施行した。術後,肝動注化学療法(hepatic arterial infusion: HAI)+cetuximab(Cmab)を導入し計12 回施行した。肝転移は縮小し全身状態も改善したため,全身化学療法に移行した。症例2: 患者は44 歳,男性。S 状結腸癌,多発肝転移,肺転移,骨転移,肝門部リンパ節転移と診断され,閉塞性黄疸,急性胆管炎を伴いperformance status(PS)3 であった。ENBD で減黄を図りつつHAI+Cmabを導入し18 回施行したところ,肝転移は縮小し,PS 1 まで改善し,全身化学療法に移行できた。重症肝障害を伴う肝転移はoncologic emergencyであり,副作用が少なく肝転移に対する奏効率の高いHAI+Cmabが有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1248-1250 (2017);
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症例は25 歳,女性。左側腹部痛と下痢を主訴に当院を受診し,腹部CT 検査にて腸重積を認めた。下部消化管内視鏡検査にて脾弯曲部に腫瘍を認め,翌日準緊急手術を行った。術中所見では脾弯曲部で横行結腸の重積嵌入を認め,Hutchinson手技により重積を整復するも完全には漿膜の変形は解除されず,同部位の結腸部分切除を行った。術後病理診断にてtub1相当のadenocarcinoma,SM2と診断されたため,リンパ節郭清を伴う追加切除を行った。腸重積症は成人では比較的まれな疾患であり,多くが腸管内にポリープや腫瘍といった器質的疾患を有する。また,大腸癌による腸重積症は高齢者に多く,若年者においてはまれである。今回,若年の大腸癌による腸重積の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1251-1253 (2017);
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症例は58 歳,男性。直腸癌で低位前方切除を行った。術前から多発肝・肺転移があり,術後FOLFOX を行ったところ肝転移巣が縮小したため肝部分切除+RFAを行い,肺転移に対し肺部分切除を行った。その後,繰り返す肝・肺転移に対し,RFAや肝動注療法,肺部分切除を繰り返した。KRAS野生型と判明したため,CEAが再上昇した際にイリノテカン+セツキシマブを導入し,著効を認めた。その後,肝・肺転移が再増悪したため肝右葉切除+両肺転移巣切除を行った。化学療法を継続していたが,肺門リンパ節・左副腎転移が出現しパニツムマブ投与に変更した。副腎転移が残存したため摘出術を行った。その後はパニツムマブのみで3 年間の病勢コントロールを得た。本症例では,化学療法で全身療法を行いつつ,化学療法耐性の転移巣に対し手術・RFA・肝動注療法・放射線療法といった局所療法を組み合わせることで,術後10 年間の長期生存を得ている。
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癌と化学療法 44巻12号, 1254-1256 (2017);
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乳癌術後直腸転移の1 例を経験した。乳癌既往のある大腸腫瘍は粘膜面に病変が露出していないことも多く,診断に難渋することもある。直腸病変では一期的切除による診断的治療が困難なこともあるため,経肛門的針生検は手術や薬物療法などの治療の選択に際して有用な診断方法であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1257-1259 (2017);
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症例は54 歳,女性。右乳癌術後8 か月目に多発肺転移・肝転移と診断した。その2 週間後に38℃の発熱を主訴に受診し,肝転移巣の急速な増大を認めた。血清G-CSF は高値を示し,原発巣のG-CSF 免疫染色でG-CSF 陽性細胞を少数認めたことから,臨床経過と合わせてG-CSF 産生乳癌と診断した。化学療法が一度は奏効したが再発から4 か月後に死亡した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1260-1262 (2017);
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エベロリムスは本邦で転移・再発乳癌に対して2014 年3 月に承認されたmTOR 阻害薬であり,BOLERO-2 試験の結果を受けて,ER陽性HER2陰性のアロマターゼ阻害薬に抵抗性の進行・再発乳癌にエキセメスタンとの併用で用いられている。エベロリムス+エキセメスタンを使用した11 例の治療効果ならびに有害事象についてretrospective に検討した。年齢中央値は64(58〜86)歳であり,StageⅣ乳癌2 例,再発乳癌9 例であった。ER 陽性HER2陰性9 例,ER 陽性HER2陽性が2 例。転移臓器はリンパ節8 例,肺7 例,骨6 例,肝5 例,胸膜3 例,脳1 例(重複あり),11 例中9 例が内臓転移を伴っていた。再発9 例のDFI中央値は4.5(3.0〜7.4)年であり,前治療歴は中央値3(2〜7)レジメン,6 例に化学療法の治療歴があった。治療効果はSD 7 例(うちlong SD 3 例),PD 2 例,評価不能2 例,臨床的有用率27%,病勢制御率64%であった。PFS中央値は4.7(1.2〜13.9)か月であった。有害事象は全例に認められ,口内炎9 例(82%),発疹3 例(27%),非感染性肺有害事象3 例(27%)を認めたが,いずれもGrade 1 また2 であり重篤なものは認めなかった。Grade 3 以上の有害事象として蜂窩織炎2 例(18%),高血糖2 例(18%)が認められた。転移・再発乳癌に対するエベロリムス+エキセメスタン治療は,適切な有害事象への対応を行うことで治療継続ならびに病勢制御を可能とする有用な治療である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1263-1265 (2017);
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症例は67 歳,男性。2016 年5 月,貧血と体重減少のため近医を受診した。上部消化管内視鏡検査にて3 型胃癌と診断され紹介となった。上部消化管内視鏡検査では胃体中部小弯中心に巨大な3 型胃癌を認め,生検の結果はtub2,HER2 scoreは1+であった。胸腹部CT 検査では胃体部小弯に漿膜浸潤を伴う壁肥厚と肝両葉に20 個以上の多発肝転移を認め,cStage Ⅳ(T4aN0M1)と診断した。6 月よりSP 療法(S-1 80 mg/m2,day 1〜14q3wks,CDDP 60 mg/m2,day 1q3wks)を開始したが,1 コース後にCEA値が 634.6 ng/mLと急上昇したためSOX 療法(S-1 80 mg/m2,day 1〜14q3wks,L-OHP 130mg/m2,day 1q3wks)に変更した。SOX療法3 コース後,主病巣および肝転移巣は著明に縮小し(PR),CEA値は8.4 ng/mLに低下した。主腫瘍の出血が続いたため9 月に手術を施行した。肝両葉に一部瘢痕化した多発転移巣を認めたが,腹膜播種はなく腹腔洗浄細胞診も陰性であった。1 群リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した。病理診断はypStageⅣ(T3N0M1)で,組織学的効果はgrade 2 であった。SOX 療法を再開したが,3 コース施行後の造影CT 検査ではS2 肝転移巣のみPD で,他の転移巣はSD を維持していた。2017 年1 月,肝S2 病変に対して肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoem-bolization: TACE)を施行した。TACE 後 2 か月の評価で CEA 値が 18.0 ng/mL に再上昇したため,PTX/RAM 療法に変更した。3コース後にCEA値は正常化し,同治療法を継続している。同時性胃癌多発肝転移の予後は不良とされているが,集学的治療により長期生存できる可能性があると考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1266-1268 (2017);
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症例は77 歳,女性。2016年春,腹部違和感,腹痛の精査目的に当院を紹介受診した。胃前庭部〜十二指腸球部にかけて全周性の2 型進行癌があり,多発リンパ節転移,肝転移を伴っており,治癒切除不能のHER2陽性進行胃癌[cT3-4,cN3,cM1(HEP,LYM),cStage Ⅳ]と診断し,XELOX+trastuzumab(Tras)療法を施行した。治療が進むにつれ腫瘍マーカーは減少し,4 コース終了した際のCT 検査では胃原発巣,肝・リンパ節転移は縮小していたが,胃内視鏡検査でfiberは通過するものの腫瘍部での管腔狭小化を認めた。経口摂取量の低下,体重減少があり,胃原発巣の狭窄症状と判断した。5 コースが終了し,さらに経口摂取が困難になったところで手術に同意され,腹腔鏡下胃空腸バイパス術を施行した。術後経過は良好で経口摂取量も回復し,術後15 日目に退院した。術後34日目にXELOX+Tras療法を再開した。腫瘍マーカーは徐々に上昇傾向にあるものの,画像上腫瘍は縮小を維持している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1269-1271 (2017);
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症例は65 歳,女性。54 歳時に早期胃癌で幽門保存胃切除の既往がある。嘔吐を主訴に救急受診し,上部消化管内視鏡検査で胃吻合部に嵌頓胃石を認めた。嵌頓は解除できたが,噴門を通過せず一期的な胃石回収が不可能であったため,連日のCoca-Cola(R)飲用により胃石溶解を行う方針となった。ところが,治療開始3 日目に胃石が幽門を通過して小腸イレウスを来したため,緊急開腹術にて回腸内の胃石(80×35×30 mm)を採石した。胃石形成には胃内容排出遅延が関与するとされており,幽門保存胃切除後に胃内残渣を多く認めるような場合には,胃石発生を念頭に置いた食事指導や内視鏡スクリーニングが重要である。胃石溶解療法を行う場合,胃石の小腸落下によりイレウスを発症することがあるため,小型化した胃石も可能な限り回収しておくことが望ましいと思われる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1272-1274 (2017);
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症例は50 歳,男性。心窩部痛,発熱,倦怠感を主訴に来院し,S 状結腸癌,下行結腸癌および切除不能の多発肝転移と診断された。予後規定因子は肝転移と考え,早期に化学療法(CapeOX+cetuximab)を導入したところPR となり,6 コース施行後に同時切除を行った。近年,切除不能大腸癌の肝転移症例に対して,conversion surgeryの施行によりR0手術が施行できた症例の良好な予後が報告されている。本症例も同様に手術可能となったが,その成功のためには適切な一次治療を行うとともに,常に外科切除の機会と可能性を念頭に置き,腫瘍が縮小し治癒切除が可能となった段階で速やかに切除に移行することが重要であると考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1275-1277 (2017);
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症例は55 歳,女性。2014年11 月,直腸S 状部癌,T3N1M1(H3,PUL2),stage Ⅳに対し腸閉塞予防目的に腹腔鏡下高位前方切除術+D2 リンパ節郭清を施行した。2015 年 1 月,肝転移 9 個,最大 55 mm,肺転移両側 3 個,CEA 682 ng/mLに対しpanitumumab(Pmab)併用 FOLFOX を開始した。11 コース時点でCEA 5.6 ng/mL まで低下,画像上肺転移はCR,肝転移はH2 へdowngradeした。化学療法により高度脂肪肝を伴う肝障害と肝外病変(肺転移)があり,根治が望めないため侵襲の大きくないラジオ波焼灼療法(RFA)を選択した。2015 年9 月にS6,S8,S8 の3 か所に,2016 年3 月にS2,S3 の2 か所に対しRFAを施行し,根治焼灼であった。oxaliplatin に対しアレルギー症状が出現し,2016 年10 月よりPmab併用FOLFIRI へ変更した。RFA後10 か月間経過したが,無再発生存中である。予後不良である大腸癌肺肝転移の治療戦略として,化学療法併用RFAは選択肢の一つとなる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1278-1280 (2017);
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大腸癌同時性肝転移に対して腹腔鏡下同時切除を施行し得た2 例について報告する。症例1 は76 歳,女性。肝S5 に23 mm 大の肝転移を認める3 型盲腸癌に対し,腹腔鏡補助下回盲部切除術と腹腔鏡下肝S5 部分切除術を同時に施行した。手術時間414分,出血量は20 mL。術後合併症なく第11 病日に退院となった。症例2 は78 歳,女性。高血圧性腎硬化症による慢性腎不全で透析導入されている。肝S2を主体に70 mm大の肝転移巣を認める2型S状結腸癌に対し,腹腔鏡補助下S 状結腸切除術と腹腔鏡下肝外側区域切除術を同時に施行した。手術時間382 分,出血量は10 mL。術後は門脈血栓(臍部)を認めたがワーファリン内服にて軽快し第15 病日に退院となった。以上より大腸癌同時性肝転移に対する腹腔鏡下大腸,肝同時切除は,適応を考慮すれば安全に施行可能である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1281-1283 (2017);
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症例は79 歳,女性。便潜血陽性にて前医で下部消化管内視鏡検査を行ったところ,虫垂開口部に露出した腫瘍性病変を認め,虫垂腫瘍にて当院へ紹介となった。当院での下部消化管内視鏡検査では,虫垂開口部に不整な浅い潰瘍を認め,陥凹部からの生検で低分化なadenocarcinomaやmixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)が疑われる像を認めた。腹部造影CT 検査ではリンパ節転移や遠隔転移を疑う所見を認めなかった。虫垂癌を考え,腹腔鏡下回盲部切除術,D3 リンパ節郭清,機能的端々吻合を行った。切除標本では,虫垂は白色に肥厚し,複数の嚢胞を伴っていた。術後経過は良好で,術後8 日目に退院した。術後病理診断にて,虫垂 goblet cell carcinoid(GCC),pT4a(SE),pN0(0/32),cM0,pStageⅡ,int,INF c,ly1(D2-40),v1(VB),PN1b,pPM0,pDM0,budding Grade 2 と診断された。術後補助化学療法としてUFT/LV 療法を行い,術後6 か月した現在も再発なく経過中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1284-1286 (2017);
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膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy: PD)を行う場合,黄疸下でも安全に手術が施行できるとの報告があるが,どの程度までが許容されるかに関して一定の見解はない。症例は58 歳,男性。十二指腸癌による閉塞性黄疸を呈していた。初診時の血清ビリルビン値(total bilirubin: T-Bil)は 26.8 mg/dLであり減黄を開始したが,T-Bil の低下は極めて不良であった。その他の肝機能検査は問題なく,術直前 T-Bil は 17.7 mg/dL と高度黄疸下ではあるが手術を施行する方針とした。術後のT-Bil の低下は良好であり,術後 14 日目には3.7 mg/dLまで改善した。合併症なく経過し,術後 17 日目に退院となった。本症例では術前に肝機能評価を行うことで,高度黄疸下でも安全にPD を施行し得た。また術前減黄は不良であったが,術後のT-Bil の低下は良好であり,術前減黄の程度は術後経過には寄与しないことが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1287-1289 (2017);
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口腔癌の切除不能局所進展例や再発例においては,時に腫瘍により口腔皮膚瘻を形成する場合がある。この瘻孔を生じると,唾液はもちろん摂取した飲食物も漏出するため,著しく生活の質(QOL)を損ねる。今回われわれは,再発舌癌の局所進展により口腔皮膚瘻を形成し,日常生活を送るに当たり瘻孔の管理に難渋した症例を経験したので,概要を報告する。症例は47 歳,男性。右側再発舌癌の治療後,右側顎下部に嚢胞様病変を生じ,生検にて扁平上皮癌と診断された。化学療法施行後,右口峡咽頭部から顎下部に交通する瘻孔を生じ徐々に拡大した。様々な材料で封鎖を試みたが奏効せず,最終的にゴムフィルムで瘻孔を被い接着剤で皮膚に接着させる方法により唾液の漏出は劇的に軽減した。口腔癌の口腔皮膚瘻はQOL を低下させる大きな要素となる。口腔皮膚瘻に施した工夫を情報共有することでQOL の改善につながると思われる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1290-1292 (2017);
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症例は50 歳台,男性。横行結腸癌に対して拡大右半結腸切除術を施行し,Stage Ⅲb にてXELOX 療法を行った。術後8 か月目に直腸前面に腹膜播種再発を認めたため,FOLFIRI+bevacizumab 療法を施行した後に腹膜播種切除術を行った。術後FOLFIRI 療法を6 か月施行し経過観察を行っていたが,腹膜播種切除後1 年ごろから右陰嚢の腫脹を自覚していた。CT 検査の結果,右精索に腫瘤を指摘された。FDG/PET-CTにて同腫瘤に高集積を認め,結腸癌からの転移または原発性の精索腫瘍が考えられたため,診断・治療目的に高位精巣摘除術を施行した。精索腫瘍は横行結腸癌,腹膜播種巣と同様,中分化型腺癌で結腸癌の転移と診断した。術後1 年で右鼠径部に局所再発が認められたため再切除した。転移性精索腫瘍は比較的まれで,消化器腫瘍では胃癌が多く,大腸癌の報告は少ない。精索への転移経路は,直接浸潤や血行性,リンパ行性,播種性転移などが報告されているが,腹膜播種切除後であり播種性転移が疑われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1293-1295 (2017);
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症例は67 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚し,近医にて左乳癌,盲腸癌,S 状結腸浸潤,大動脈周囲リンパ節転移,腹膜転移と診断され,当科に紹介受診となった。予後規定因子は盲腸癌であると考え,乳癌に対してはホルモン療法を施行し,盲腸癌に対して全身化学療法(mFOLFOX6+panitumumab)を施行した。12 コース終了後に回盲部切除術,D3郭清,S 状結腸部分切除術,右卵巣摘出術,腹膜播種巣切除術,大動脈周囲リンパ節郭清術,右総腸骨動脈周囲リンパ節郭清術を施行した。病理所見にて大動脈周囲リンパ節,腹膜転移は消失し,ypStageⅡであった。原発巣の組織学的効果判定はGrade 2 であった。その後,乳癌に対して左乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検術を施行し,最終病理診断は完全奏効(pCR:Grade 3)を示した。一定期間化学療法を施行して効果を見極めた上での大動脈周囲リンパ節郭清術は,治療的意義があると思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1296-1298 (2017);
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局所進行大腸癌では術前化学療法により腫瘍縮小,局所コントロール,遠隔転移抑制をめざしている。R0手術が不適な局所進行大腸癌に対しmFOLFOX6/XELOX+bevacizumabを 3 か月施行後,手術とした。遠隔転移のない局所進行大腸癌に対する治療成績を検討した。対象は34 例で,年齢は62.7 歳であった。直腸癌23 例,S 状結腸癌11 例であった。化学療法前診断ではT4b 30 例,N+ 25 例(N3 10 例)であった。26 例で化学療法前に人工肛門が造設された。腫瘍径の縮小率は33.6±28.2%。腫瘍マーカー減少率は,CEA: 38.5±39.4%,CA19-9: 62.8±42.3%。8 例の骨盤内臓全摘術を含め23 例で合併切除が行われた。R0率85.3%であった。組織学的効果判定ではGrade 1a 以下20 例,Grade 1b 6 例,Grade 2 5 例,Grade 3 3 例であった。再発は9 例でGrade 1a 以下が8 例,5 年生存率は74.6%であった。局所進行直腸癌に対する術前化学療法は,特に有効例において局所のみならず全身への治療としての有用性が期待される。
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癌と化学療法 44巻12号, 1299-1301 (2017);
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症例は49 歳,男性。10 年前より胃体上部に粘膜下腫瘍を認めていたが,嚢胞として経過観察されていた。今回,黒色便を主訴に受診,上部消化管内視鏡検査で既知の胃腫瘤からの出血と診断された。PET-CTでは,胃腫瘤と腫大した小弯リンパ節に一致してFDG の異常集積を認めた。粘膜生検,EUS-FNAで悪性所見を認めないものの,悪性リンパ腫の可能性を否定できないため小弯リンパ節の切除生検を行った。結果は低分化癌のリンパ節転移の診断であり,胃癌に準じて定型的胃切除を行った。病理組織学的検査により,高度のリンパ球浸潤,リンパ濾胞形成を伴うリンパ球浸潤胃癌(gastric carcinoma with lymphoid stroma: GCLS)の最終診断に至った。今回,診断に苦慮したGCLS の1 例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1302-1304 (2017);
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症例は78 歳,男性。心窩部痛を主訴に当院を受診した。上部消化管内視鏡検査にて胃体上部小弯に巨大な3 型腫瘍を認め,生検の結果,印環細胞癌,低分化型腺癌と診断された。cT3N2M0,cStage ⅢAの術前診断となったが,食道胃接合部に近接していること,また bulky N2 であることから術前化学療法(NAC)の方針となった。S-1/cisplatin(CDDP)療法を2 コース施行したところ原発巣は著明に縮小し,腫大したリンパ節も消失したため(効果判定はPR),腹腔鏡下胃全摘出術を行った。病理組織学的には癌細胞をわずかに認めるのみで,リンパ節に癌遺残を認めなかった。切除断端は陰性であった。組織学的効果判定はGrade 2 であった。進行胃癌に対する集学的治療戦略としてのNAC の有用性が示唆される印象深い症例であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1305-1307 (2017);
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症例は66歳,男性。切除不能胃前庭部癌に対して胃空腸バイパス術を施行後にS-1+cisplatin(SP)療法を2 コース施行したが,治療効果はPD であった。二次治療としてweekly paclitaxel(PTX)療法を計4 コース施行したが,癌性腹膜炎による摂食困難のため緊急入院した。利尿剤や腹水穿刺では癌性腹水はコントロール困難であった。PS良好かつ治療希望もあり,三次治療としてramucirumab(RAM)+PTX療法を導入したところ,数日で腹水の減量を認め,摂食可能となり自宅退院した。PTX 単独投与後にRAM+PTX 療法を施行し,PR 以上の治療効果を認めた。胃癌治療薬として新たに認可された分子標的薬であるRAMをこれまで治療困難とされた患者に対して使用し,治療効果を認めた症例を経験した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1308-1310 (2017);
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症例は39 歳,女性。心窩部痛の精査で行った上部消化管内視鏡で,食道胃接合部より約1 cm の胃穹窿部に潰瘍を伴う30 mm大の粘膜下腫瘍を認め,生検にてGISTと診断されたため鏡視下手術を行った。胃穹窿部を十分に授動後,腫瘍を挙上して自動縫合器を胃の短軸方向に挿入し,術中内視鏡で食道へのかみ込みがないことを確認して胃局所切除を行った。病理組織学的には中リスク群のGISTで,切除断端は陰性であった。噴門近傍の管内発育型胃GISTへの腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)手技を用いた胃局所切除は,機能温存の観点から非常に有用な術式であるが,潰瘍を有する病変には腫瘍の腹腔内撒布が生じないよう手技の工夫が必要である。自験例は,潰瘍を伴う噴門近傍の管内発育型胃GISTに対しても胃非開放の鏡視下胃局所切除が可能であったため,手技の工夫とともに報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1311-1313 (2017);
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高齢者大腸癌穿孔における治療の現状と問題点について検討した。2005 年5 月〜2016 年4 月までに当科で手術を施行した大腸癌穿孔(非癌部穿孔を含む)症例を対象として,75 歳以上12 例(高齢者群)と75 歳未満42 例(非高齢者群)の治療成績を比較検討した。両群間で臨床病理学的因子や腹膜炎,敗血症,播種性血管内凝固症候群の重症度および30 日以内の死亡率に有意差を認めなかった。Stage Ⅳに対する化学療法の導入率は両群間に差を認めなかった。StageⅡ/Ⅲに対する補助化学療法の導入率は非高齢者群が有意に高率(p=0.01)であったが,無増悪生存期間や全生存期間には両群間で差を認めなかった。大腸癌穿孔手術症例の高齢者は非高齢者と同等の予後が期待できる一方,高齢者の大腸癌穿孔症例に対して(補助)化学療法を導入する妥当性については議論の余地がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1314-1316 (2017);
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症例は79 歳,女性。下部胆管癌に対して当科で膵頭十二指腸切除術施行後,外来経過観察となっていた。病理組織所見は高分化型管状腺癌,pT3N0H0P0M(−),fStage Ⅲ。膵頭十二指腸切除術後4 年6か月経過の腹部CT で,左肝内胆管の著明な拡張および肝門部胆管壁の肥厚,濃染を認めた。全身PET-CTで遠隔転移を認めず,リンパ節にも有意な集積を認めなかった。肝門部領域胆管癌と診断し,肝左葉切除,尾状葉切除,胆道再建,D2リンパ節郭清術を施行した。病理組織所見は肝門部領域胆管癌,中分化型管状腺癌,pT2aN0H0P0M(−),fStageⅡと診断した。術後経過は良好であった。肝切除術後から2 年間,無再発で生存した。胆管癌術後症例では,残存した胆管上皮はmalignant potentialが高い可能性があり,経過観察中に異時性重複癌の発生についても留意することが必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1317-1319 (2017);
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症例は79 歳,女性。精査で胆嚢癌と診断され胆嚢床切除術,D2郭清術を施行した。術後病理結果はT2N1M0,StageⅢの診断であった。術後補助療法としてgemcitabineを6 コース施行した。術後2 年2か月で創直下に13 mm大の腫瘤を認め,腫瘤切除を施行した。病理結果はadenocarcinomaで胆嚢癌転移の診断であった。術後にS-1 を8 コース施行するも,初回術後3 年4か月で前回の腫瘤切除部位よりも尾側の腹壁に22 mm大の腫瘤を認め,腹壁腫瘍切除を施行した。病理結果は胆嚢癌転移の診断であった。再びgemcitabineを6 コース施行後,初回術後4 年7か月で腸骨と接するように45 mm大の腹壁腫瘍を認めた。再発と診断し,腫瘍切除術を施行した。病理結果は胆嚢癌転移であった。腹壁再発を繰り返しているが,再発部位の切除を行うことで術後5 年経過した現在も再発巣なく経過している。限局し切除可能な病変の場合,長期生存も期待できるため,外科的治療も選択肢の一つとして検討が必要と考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1320-1322 (2017);
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後腹膜脂肪肉腫は比較的まれな疾患である。治療の第一選択は切除であるが,しばしば再発を生じる。再発症例に対しても追加切除を行うことで長期生存が得られる報告がある。症例:患者は70 歳,女性。2004 年5 月に後腹膜脂肪肉腫の診断で腫瘤と右腎合併摘出術を施行した。病理診断は脱分化型脂肪肉腫であった。2005 年4 月に左副腎再発に対して左副腎切除術(2回目),2012年5 月に右後腹膜再発に対して腫瘤切除と回盲部合併切除術を施行した(3回目)。2016年5 月に右後腹膜再発を認めたため,腫瘤切除と大腰筋合併切除術を施行した(4 回目)。病理組織学的に断端陽性であり,eribulinの投与を12 コース施行した。最終手術から13 か月後の現在,無再発で経過している。考察:後腹膜脂肪肉腫の術後の再発率は36%とされており,再発に対して非切除例の予後が著しく悪いとされる。本症例は4 回の手術を経て13 年間と長期の生存を得られているため報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1323-1325 (2017);
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症例は79 歳,男性。近医で施行された上部消化管内視鏡検査にて胃癌を指摘され,当院に紹介受診となった。胃癌,cT1bN0M0,cStage IAの診断で,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を予定した。術前の腹部造影CT 検査にて腹腔動脈の走行異常が確認されていた。Adachi Ⅵ型と診断し,肝胃動脈幹を温存してD1+郭清を施行し,再建は心窩部に小切開を置きBillrothⅠ(B-Ⅰ)再建を行った。手術時間244分,出血量は5 mL であった。術後経過は良好で,第7 病日に退院となった。病理結果はpT4aN0M0,pStage ⅡB で,術後補助化学療法としてTS-1®の内服を行っている。腹腔動脈分枝の走行異常は様々な形態を呈しており,時に血管温存手術が必要とされる。術前のCT で血管走行を確認することにより,安全に腹腔鏡下胃切除術が施行可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1326-1328 (2017);
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症例は69 歳,男性。S 状結腸癌多発肝転移に対し,mFOLFOX6+cetuximab(Cmab)による術前化学療法後,肝切除,原発切除を行い,肉眼的根治を得た。病理結果はS,type 2,40 mm,tub2>tub1,pT3pN0pM1a[H3(Grade C)]であった。CapeOX 4 コース施行後に残肝再発を認め,FOLFIRI+bevacizumab(BV)に変更した。6 コース施行後,Grade 3の発熱性好中球減少症と両肺上葉のすりガラス状陰影を認めた。ニューモシスチス肺炎(PCP)と診断し,ステロイドとST合剤投与で治癒が得られた。消化器癌の化学療法に伴うPCP 発症の報告は比較的まれであるが,近年増加傾向にある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1329-1331 (2017);
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RAS変異型肝限局性切除不能大腸癌肝転移に対し,second-line・third-lineで肝動注化学療法(以下,肝動注)を行いpathological complete response(pCR)となった2 例を報告する。症例1 は76 歳,女性。直腸S状部癌,多発肝転移にて前方切除術を施行し,術後多発肝転移に対し全身化学療法を施行した。効果判定はSDで,second-lineに変更するもGrade 3 の好中球減少を認め,肝動注に変更したところPR となり肝切除術を施行した。病理検査でpCR,肝切除後5年1か月現在,無再発生存中である。症例2 は53 歳,男性。S 状結腸癌,多発肝転移にて腹腔鏡補助下S 状結腸切除術,術後3 か月に腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した。術後6 か月に残肝再発を認め,全身化学療法を施行するも1 コースでGrade 3 の好中球減少を認め,肝動注に変更した。効果判定はPR で,肝切除術を施行した。病理検査でpCR,肝切除後2 年6か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1332-1334 (2017);
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肛門周囲に発生する癌は多様で,皮膚疾患形態を示すものもある。このうち,Paget 病と他癌のPagetoid gowth(secondary Paget's disease)については鑑別が困難で,両者の治療方針が大きく異なるため注意が必要である。症例は76歳,男性。肛門周囲の広範囲の紅斑局面を生検し,乳房外Paget病と診断され,皮膚科にて肛門周囲皮膚悪性腫瘍切除術を施行された。切除検体で病理学的に粘液癌のPagetoid growthと診断され,断端陽性であり追加切除目的に当科紹介となり,腹腔鏡下直腸切断術を施行した。術後の病理結果から,肛門管原発腺癌が明らかとなり,これまでの結果はすべてPagetoid growth を伴う肛門管腺癌の部分像と判定された。現在,両者の鑑別は特に肛門周囲においては免疫組織学的にも難しいとされている。肛門周囲および肛門管内の十分な検索を基にした診断法や根治性を高めるための治療法について,今後さらなる検討が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1335-1337 (2017);
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症例は67 歳,女性。200X 年,直腸癌に対して高位前方切除術を施行した(RS,type 2,pT3,pN1,cM0,pStageⅢa)。術後補助化学療法として UFT/LV を 6 か月施行した。術後 9 か月に腹膜播種,骨盤内リンパ節転移が出現し,Cape OX+Bmabを開始した。治療効果はPR で,6 年間は再発なく経過した。術後6 年9か月に仙骨転移を認め,放射線療法を施行した。術後7 年に肺転移,肝転移,遠隔リンパ節転移,皮下転移が出現した。その翌月に複視,構音障害が出現し,頭部造影MRIで頭蓋底転移と診断した。放射線療法を施行し,症状の改善を認めた。頭蓋底以外の転移巣に対してIRIS+Bmab療法を開始したが無効で,初回手術から7 年6か月後に死亡した。直腸癌術後にまれな頭蓋底転移を認め,放射線療法が症状緩和に有用であった症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1338-1340 (2017);
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症例は79 歳,男性。胃潰瘍に対する幽門側胃切除,Billroth Ⅱ法再建術後,S 状結腸癌手術,肺腺癌手術,前立腺癌内服加療の既往あり。再発など精査目的のCT で,胃空腸吻合部近傍の輸入脚内腔を充満する腫瘤を認め,輸入脚背側の後腹膜にも連続性に腫瘤を形成していた。上部消化管内視鏡生検でmalignant spindle cell tumor と診断,FISH でMDM2,CDK4 のシグナル増加を認めたため空腸原発脂肪肉腫を疑い,空腸-残胃部分切除術を施行した。切除標本の病理検査では大部分が脱分化した肉腫成分であったが,後腹膜に存在する腫瘍の一部に比較的分化度の高い脂肪肉腫成分を認めたことから,後腹膜由来の脂肪肉腫が空腸に浸潤したものと考えた。後腹膜脂肪肉腫が消化管に浸潤した症例はまれあり,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1341-1342 (2017);
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症例は87 歳,男性。幼少期に静岡県に在住していた。下血を主訴に下部消化管内視鏡検査を施行したところ,直腸Raに約3 cm大の1 型腫瘍を認めた。生検では管状腺癌を認め,粘膜筋板に日本住血吸虫の虫卵を認めた。直腸癌,T1bN0M0,StageⅠの術前診断の下,腹腔鏡下低位前方切除を施行した。病理組織学的所見はtub1,pSM(7 mm),med,INF a,ly1,v0,pPM0,pDM0,pN0(0/7),T1bN0M0,StageⅠであった。腫瘍部,非腫瘍部の粘膜下層に多数の日本住血吸虫卵を認めた。虫卵は小静脈内に塞栓として存在していた。術後は5 年間無再発で経過している。虫卵と発癌の関係性について文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1343-1345 (2017);
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乳癌の頭蓋底転移は,まれではないものの報告例は少ない。今回われわれは,嚥下障害と嚥下痛,呂律難で発症した乳癌頭蓋底転移の1 例を経験したので報告する。症例は50 歳台,女性。9 年前に他院において右乳癌(cT4N1M0,cStageⅢB)の診断で,術前化学療法後に乳房部分切除術および腋窩リンパ節郭清術を受けていた。6 か月前から頸部痛,1 か月前から嚥下障害,嚥下痛,呂律難が出現し,精査加療目的に当院へ紹介受診となった。頭部MRIで斜台から上位頸椎にかけて不整な腫瘤形成を認め,PET-CT で斜台から上位頸椎にFDG の高集積を認めた。整形外科において後頭骨,頸椎,胸椎後方除圧固定術が施行された。術中に採取した骨組織の病理検査結果は乳癌転移であった。頭蓋底から頸椎に対して放射線照射を施行し,ゾレドロン酸およびアナストロゾールの投与を開始した。嚥下障害や嚥下痛などの症状は軽快し,現在外来でフォロー中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1346-1348 (2017);
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症例は64 歳,女性。右下腹部の腫瘤を自覚し前医を受診した。CT にて右下腹部後腹膜に腫瘤を指摘され,精査加療目的に当院へ紹介となった。既往歴として子宮内膜症に対する手術歴あり。腹部造影CT では右下腹部後腹膜に手拳大の不均一に造影される腫瘤を認めた。MRIでは脂肪を含有し,T1強調画像で低信号,T2強調画像,拡散強調像で高信号を呈した。上部および下部消化管内視鏡検査では,特記すべき異常を認めなかった。画像検査で増大傾向も認めたことから後腹膜に発生した腫瘍として脂肪肉腫などを疑い,手術の方針とした。開腹所見では腫瘍は腸骨窩に位置しており,被膜に覆われて周囲の後腹膜組織への浸潤は認めなかった。病理組織学的検査では,成熟脂肪成分を主体とし平滑筋・血管成分を認める腫瘍であり,免疫染色でmelanoma-associated antigen-45(HMB-45)陰性ではあるものの,a-smooth muscle actin(aSMA)陽性であり,血管筋脂肪腫と診断した。また,悪性所見は認めなかった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1349-1351 (2017);
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症例は38 歳,男性。肝転移を伴う進行膵頭部癌で根治術不能と判断した。総胆管にmetallic stentを留置し,CV ポート留置と胃空腸バイパス術を施行した。full doseでほぼ1 年間にFOLFIRINOX 15 コースを施行した。主腫瘍は縮小して肝転移病巣は消失し,DUPAN-2が正常化した。一方,6 コース目ごろには肝膿瘍が出現しドレナージ治療を要した。最終投与から50日目に膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した。前回の手術や肝膿瘍の炎症,化学療法の影響もあり組織は固く浮腫状で手術は困難であった。癒着剥離後は型のごとくD2 郭清を伴うPD を施行した。門脈壁を一部合併切除縫合し,再建はChild 変法で行った。手術時間600 分,出血量は1,933 mL であった。術後10 日目に右肝動脈から出血し,IVR にて緊急止血,術後29 日目に退院した。現在初発から2 年,PD後からは11 か月で再発を来し,nab-paclitaxel,gemcitabine併用療法を施行しながらも外来通院中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1352-1354 (2017);
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食道癌根治切除術後の再発例に対する治療成績について検討した。対象は食道癌術後の経過観察中に再発を指摘された52 例を用いた。再発診断時期は術後180 日で,2 年以内に90.4%が診断された。再発形式は単領域再発が27 例で,25 例は複合再発であった。単領域再発のうち9 例に外科的治療が可能で,14 例に化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)を適応した。複合再発では外科的治療は2 例のみであった。再発後の生存日数中央値は293 日で,単領域再発611 日,複合再発では148 日(p<0.0001)と有意差を認めた。単領域再発のみをみると,外科的治療またはCRT を施行した症例の予後が良好であった(p<0.001)。食道癌術後再発のうちでも単領域再発で局所治療が可能である症例の予後は良好であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1355-1357 (2017);
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背景と目的: CY1P0胃癌の予後を改善する目的にpaclitaxel(PTX)腹腔内投与とPTX,cisplatin(CDDP),S-1(PCS)3 剤による全身化学療法を施行したので報告する。対象と方法:審査腹腔鏡によりCY1P0と診断した症例に対し,PTX 腹腔内投与,逐次化学療法としてPCS 療法を施行。2 コース施行時にRECIST評価法にてPD でなければ,再度審査腹腔鏡を施行した。結果: 症例は4 例,腹腔内投与および全身化学療法によるGrade 3 以上の有害事象として1 例に白血球減少,好中球減少を認めた。奏効度はPR 1 例,SD 3 例。全例に再度審査腹腔鏡を施行した。4例ともCY0P0にdown stageしていたため,D2郭清を伴う胃切除術を施行した。術後合併症は食道空腸吻合部の縫合不全1 例と膵液瘻1 例を認めた。組織学的治療効果判定はGrade 1a 3 例,Grade 1b 1 例。長期成績:肝再発1 例,#16 リンパ節再発を1 例に認め原病死するも腹膜再発はなく,残り2 例は無再発生存中である。結語: P0CY1 胃癌に対する本治療法の有害事象は認容範囲であり,長期生存例も認めた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1358-1360 (2017);
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症例は71 歳,女性。左乳癌に対し乳房全切除と腋窩リンパ節郭清を施行し,補助化学療法としてエピルビシンとシクロホスファミド併用療法を4 コース完遂し,引き続きアルブミン懸濁型パクリタキセル注射液(nabPTX)+トラスツズマブ療法を開始した。nabPTX初回投与後から7 日目に施行した血液検査で好中球が0/mm3となったため緊急入院となった。小康状態を保っていたが,入院3 日目に突如ショック状態となったためICU管理の上,サイトカイン吸着療法を施行した結果,全身状態の改善を認めた。その後,順調に経過し自宅退院となった。本症例は感染を疑わせる所見はなく発熱性好中球減少症は否定的であり,心不全や心血管病変を疑う所見も認めなかった。サイトカイン吸着療法で著明に改善を認めたことから,生着症候群の可能性が示唆された。比較的安全と考えられているnabPTXも,重篤な好中球減少を引き起こすことがあり,注意が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1361-1363 (2017);
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症例は54 歳,女性。他院で直腸癌に対し高位前方切除術D3郭清が行われ,最終診断は高分化腺癌,pT3,N1,H0,P0,M0,fStage Ⅲaであった。術後補助化学療法は患者の希望により行われていなかった。術後18 か月目,当院で行った腹部造影CT において肝S7 に19 mm 大の占拠性病変を指摘された。EOB-MRI で,同部位はダイナミック相でリング状にエンハンスされ,肝細胞相では低信号であった。また,拡散強調画像では高信号であった。以上より直腸癌の肝転移と診断し,肝部分切除術を予定した。術中所見で肝表面と横隔膜の間に腫瘍性病変を認め,肝部分切除術,横隔膜合併切除術を行った。術後の病理組織学的検査では,腫瘍は原発巣と同じ高分化腺癌であり,横隔膜を主座とし肝被膜を圧排していたため直腸癌の横隔膜転移と診断した。大腸癌の孤立性横隔膜転移は比較的まれで,本邦では8 例報告されているのみである。文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1364-1366 (2017);
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直腸癌術後の肛門転移に対し,腹会陰式直腸切断術を行い良好な経過を示す症例を経験したので報告する。症例は65歳,男性。2013 年8 月,上部直腸癌に対し腹腔鏡下低位前方切除術(D3郭清)を施行した。病理診断はRa,type 2,tub2,pT3,pN1,ly3,v2,Stage Ⅲaであった。術後補助化学療法は本人が希望しなかったため,サーベイランスを行った。術後18 か月に肛門部違和感と腫瘍マーカーの上昇,CT 検査で肛門管内に腫瘤性病変を認めた。針生検で腺癌病変を認めたため肛門転移を疑い,確定診断と治療を兼ねて腹会陰式直腸切断術を行った。病理学的に前回の直腸病変と類似する中分化型腺癌で,固有筋層内に主座を置き,粘膜面に認めなかったことから直腸癌肛門転移と診断した。現在まで,術後18 か月間無再発生存中である。直腸癌術後の肛門部違和感に対して肛門転移を想起する必要がある。腹会陰式直腸切断術は同病態の治療に有用であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1367-1369 (2017);
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症例は76 歳,男性。他疾患で通院中に腹部CT で5 cm大の膵尾部腫瘤を認め,精査にて脾,左副腎,左腎へ直接浸潤を伴う膵体尾部癌,cT3N0M0,cStageⅡAと診断した。根治切除には左腎摘出を要し,高齢と片腎による腎機能低下は術後補助化学療法を制限する可能性があるため,まず術前強化治療を先行し,病勢を制御できていれば根治切除を行う方針とした。術前化学療法と化学放射線療法を施行後,局所浸潤は残存するものの腫瘍の縮小および活動性の低下を認め,また治療経過中に遠隔転移や新規病変を認めなかったため,根治手術を施行した。膵体尾部切除術に,左副腎摘出,左腎摘出を併施し,最終診断は脾,左副腎へ直接浸潤を伴うypT3N1aM0,fStageⅡB の浸潤性膵管癌で,治療効果判定はEvans分類でGradeⅡbであった。術後は特に合併症なく退院し,現在明らかな再発なく術後11 か月経過している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1370-1372 (2017);
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症例は60 歳,男性。2004 年7 月,直腸癌に対して低位前方切除術を施行した。病理診断は高分化腺癌,T3(SS)N1M0,ly3,v2,Stage Ⅲa であった。2 年1 か月後,右副腎転移に対し同切除術を施行した。その3 か月後,左肺転移に対し左肺部分切除術を施行した。どちらの切除病理診断も,先の直腸癌の転移であった。現在,左肺転移切除後10 年以上経過するが,無再発生存中である。副腎転移に関しては他臓器転移が存在しても,それを含めて切除可能な場合には手術を考慮すべきである。
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癌と化学療法 44巻12号, 1373-1375 (2017);
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症例は49 歳,男性。腹痛を主訴に近医を受診した。腹腔動脈および上腸間膜動脈に浸潤する局所進行切除不能膵体尾部癌と診断された。前医で定位放射線治療(2.5 Gy×22 Fr)と塩酸ゲムシタビン(gemcitabine: GEM)+S-1 併用の化学療法が施行された後,当科に紹介となった。当科に転院後も同様の化学療法を継続したが,DICを起こし治療開始1年3か月までで終了とした。その後GEM の単剤,さらに2012 年1 月からS-1 単剤とし,治療開始6 年まで継続し,この時点で化学療法を中止した。しかし1 か月後に臍部の皮下に硬い結節を認めた。それを切除し化学療法も行ったが,最終的には7 年10 か月で死亡した。自験例は長期安定している膵癌患者の化学療法を中止してよいかを考えさせられる貴重な症例である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1376-1378 (2017);
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症例は,50 歳,男性。血便と肛門不快感を主訴に来院し,側方リンパ節転移および両側肺転移を伴った進行下部直腸癌(cT3N3M1a,Stage Ⅳ)と診断された。RAS 野生型のため,irinotecan,Leucovorin,5-fluorouracil(FOLFIRI)+cetuximab(Cmab)による化学療法を施行した。11 コース後のCT にて肺転移はCR となり,治療開始より6か月後,腹腔鏡下直腸切断術および両側側方リンパ節郭清術を施行し,治癒切除が得られた。術後はFOLFIRI+Cmab をさらに12 コース追加し,術後1年無再発生存中である。従来,治癒不能と判定される遠隔転移を伴う進行直腸癌に対して,集学的治療を組み合わせることで治癒が得られる可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1379-1381 (2017);
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急性虫垂炎の術前診断の下,腹腔鏡下回盲部切除術を施行したが,虫垂炎合併盲腸癌の診断がつき,二期的に右半結腸切除術を施行した症例を報告する。症例は 49 歳,女性。1 週間持続する下腹部痛を主訴に来院し,採血で WBC 10,000/mL,CRP 17.5 mg/dLと炎症反応の上昇,CT で虫垂の腫大,周囲脂肪織濃度の上昇を認め,急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下に緊急手術を行った。盲腸壁が炎症性に肥厚していたため,回盲部切除術を行った。病理結果は虫垂炎を合併し,No. 201 リンパ節への転移を伴う進行盲腸癌であったため,初回手術から14 日後に右半結腸切除術,D3 郭清を施行した。追加切除の標本には腫瘍は認めず,最終診断は盲腸癌,SE,N1,M0,Stage Ⅲa となり,XELOX 療法を行い,術後1 年の現在無再発生存中である。急性虫垂炎の発症は,虫垂の閉塞が原因となる。中高年は若年と違い,腫瘍による虫垂の閉塞が原因となることもあるが多くはなく,術前術中診断が困難なことが多い。本症例のように高度な炎症を伴う虫垂炎は盲腸癌などの腫瘍性病変を念頭に置くべきであると考えた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1382-1384 (2017);
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症例は60 歳台,男性。左側横行結腸癌に対して腹腔鏡補助下結腸左半切除術,D3 郭清を施行した。病理診断はpStage Ⅲa であり,術後tegafur-uracil,leucovorinを6 か月間服用した。術後2 年10 か月に左臀部および大腿後面痛を自覚し,精査を施行したところMRIで仙骨 S2浸潤を伴う仙骨前面腫瘤を認めた。疼痛の急性増悪のため,39 Gy/13 Fr の放射線治療を先行導入した。治療開始2 週間後に審査腹腔鏡を施行した。両側直腸傍腔の後腹膜切開痕の下端に直腸間膜背面の結節を確認し,生検を施行した。免疫染色でCK7−,CK20+,CDX2+であり,既往の横行結腸癌の免疫組織化学的性質を有していたため,再発と診断した。術後4 週時にmodified oxaliplatin,leucovorin,5-fluorouracil+bevacizumab を導入した。治療効果はPR で疼痛は消失し,現在も治療継続中である。症状出現前のCT の再検討で仙骨表面に一部接する小結節を確認した。また,手術のビデオを確認したところ,吻合のために授動を行った直腸間膜背側間隙のラインに結節部位が一致したため,術中のimplantationによる可能性が高いと考えられた。同様の症例を治療するに当たっては,術中の鉗子操作や洗浄方法を含め十分な工夫が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1385-1387 (2017);
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症例は55 歳,男性。下痢を主訴に受診した。腹部造影CT でS 状結腸に巨大な腫瘤を認め,周囲のリンパ節腫大も認めた。RAS野生型の局所進行大腸癌と診断し,術前化学療法の方針とした。閉塞の可能性があったため腹腔鏡下に回腸人工肛門を造設し,mFOLFOX6+panitumumab 療法を4 コース施行した。CT で腫瘍は著明に縮小し,根治切除可能と判断して腹腔鏡下にS 状結腸切除術を行った。分子標的治療薬を加えた化学療法は高い奏効が期待され,術前化学療法は進行大腸癌に対しても腹腔鏡下切除を可能にする有力な治療法となると考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1388-1390 (2017);
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症例は64 歳,女性。2012年10 月に上行結腸癌に対し,腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した(pStage Ⅲb)。経過良好で退院したが,術後26 日目に全身性の間代性痙攣のため救急搬送となった。1 か所の脳転移を認めたが,他臓器転移は認めなかった。転移巣が小さく完全摘出は困難と考えられ,定位手術的照射(25 Gy,1 回照射)を行った。その後,mFOLFOX6+Bmab療法,tegafur-uracil+Leucovorin療法を施行した。脳転移の再発評価の手段として,メチオニンPET検査を併用し,現在術後54 か月無再発長期生存中である。大腸癌脳転移症例は他臓器転移を伴っていることが多く,予後不良とされている。他臓器転移を伴わない脳転移症例は集学的治療により長期生存が得られ,メチオニンPET は放射線治療後の再発評価に有用と考えられたため若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1391-1392 (2017);
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症例は42 歳,女性。4 年前にestrogen receptor(ER)陽性・human epidermal growth factor receptor 2(HER2)陰性乳癌に対して乳房温存術を受けた。背部痛,全身倦怠感が著明となり当院を受診した。高度貧血と末梢血への赤芽球の出現を認め,骨髄生検から骨髄癌症と診断された。骨転移に対するdenosumab投与と並行してpaclitaxel+bevacizumab(PTX+Bev)併用療法を行ったところ著効し,1 年以上にわたり再燃を認めない。乳癌骨髄癌症に対してPTX+Bev は奏効率が高く,かつ安全に施行できる有望な選択肢と考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1393-1395 (2017);
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症例は65 歳,女性。胃癌(L,less,type 2,tub1,cT3,cN0,cH0,cP0,cM0,CY0,cStageⅡA)の診断で,胃切除の治療方針となった。手術は幽門側胃切除術(D2 郭清)およびBillroth Ⅰ法再建を施行した。病理結果はML,less,type 2,tub1,pT3,ly: 1,v: 1,N0,H0,P0,M0,CY0,pStage ⅡAであった。術後補助療法は施行せず,外来経過観察となった。術後5 年目の腹部造影CT 検査で臍部での再発を疑われ,生検の結果,胃癌臍転移の診断となった。再発後,S-1(80 mg/m / / 2,day 1〜21)/CDDP(60 mg/m2,day 8,3 週投与2 週休薬)を7 コース投与したが,有害事象(下痢: Garde 3)のため中止となった。その後,paclitaxel(80 mg/m2,day 1,8,15: 3 週投与1 週休薬)を33 コース施行した。臍転移は画像上CR となり,他臓器への転移もみられなかった。再発後3 年以上経過した現在も外来通院中である。今回,化学療法が奏効し長期生存が得られた胃癌術後臍転移の1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1396-1398 (2017);
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非閉塞性腸間膜虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia: NOMI)は腸間膜血管に器質的閉塞が存在しないにもかかわらず,腸管の不可逆的虚血により腸管壊死を生じる疾患であり,非常に予後不良な疾患とされている。今回,化学療法施行後に発症したと考えられるNOMI の2 症例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例1 は79 歳,男性。前立腺癌の局所再発に対してドセタキセルを初回導入後6 日目に腹痛が出現し,腹部造影CT 検査にて腸間膜虚血および腸管気腫を認め,画像診断にてNOMI と診断し,緊急手術を施行した。開腹したところ小腸および上行結腸,横行結腸,下行結腸,直腸S 状部および胆嚢も同様にまだら状に壊死しており,同部位をすべて切除し摘出した。術後3 週間で肺炎にて死亡となった。症例2 は74 歳,男性。中咽頭癌にてドセタキセル,シスプラチン,フルオロウラシルの3 剤併用化学療法を施行した。6 日目に発熱および腹痛を認めたため,腹部造影CT 検査にて腸間虚血を認めNOMIと診断し,同日緊急手術を施行した。回腸は全体的にまだら状に変色しており壊死と判断し,同部位を切除した。術後経過は良好で,退院後外来にて経過観察中である。2 症例ともNOMI 発症前にドセタキセルを使用し骨髄抑制に対する治療中であり,NOMI発症とドセタキセルの関連性が疑われた。一般的に抗癌剤投与後の腸間膜虚血はまれとされ,貴重な症例と考えられ報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1399-1401 (2017);
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症例は79 歳,男性。上行結腸癌の診断で腹腔鏡下結腸右半切除(D3)を施行した。病理組織学的所見はmoderately differentiated tubular adenocarcinoma,T3(SS),N1,M0,Stage Ⅲa であった。術後32 日目より術後補助化学療法としてtegafur uracil(UFT)/Leucovorin(LV)の投与を開始した。2 コース目のUFT/LV の投与後,Grade 4 の血小板減少と好中球減少を認め,血小板輸血およびgranulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)の投与を行った。原因としてdihydro-pyrimidine dehydrogenase(DPD)欠損を疑い,尿中 dihydrouracil(DHU)/uracil(URA)濃度比を測定したが,1.17と低下を認めずDPD 欠損症の診断には至らなかった。また,骨髄生検でも白血病や骨髄異形成症候群を疑う所見は認めず,高度汎血球減少の原因は同定されていない。現在,化学療法開始から10 か月が経過しているが,血小板減少は改善しておらず,定期的な血小板輸血が必要な状態である。重篤な感染性合併症や出血性合併症は発症していないが,今後も細心の注意が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1402-1404 (2017);
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症例は47 歳,男性。びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫にて当院入院中,臍帯血造血幹細胞移植療法が施行された。移植後皮膚graft versus host disease(GVHD)や肺真菌症を発症し,長期間ステロイドが投与されていた。移植後115 日目に定期フォローアップ目的に施行した胸腹部CT 検査で,上行結腸からS 状結腸にかけて広範な腸管壁内気腫像および腹腔内遊離ガス像を認めた。腸管嚢胞性気腫症と診断し,高濃度酸素吸入による保存的治療を開始したところ,3 日後の画像所見では腸管気腫,腹腔内遊離ガスは著明に改善し,以後再燃を認めなかった。腹腔内遊離ガスを伴う腸管気腫を認めた場合は本疾患を念頭に置き,理学所見や検査所見だけでなく,基礎疾患や使用薬剤などの病歴も考慮して保存的治療可能症例を見極めることが重要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1405-1407 (2017);
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症例は74 歳,男性。2009 年7 月,直腸癌(Rb)に対し他院にて腹腔鏡下直腸切断術が施行された。病理診断はT2(MP),N0,M0,StageⅠであった。静脈侵襲陽性であったため補助化学療法としてUFT/LV を 1 年間内服していた。当院紹介後の経過観察中,右内腸骨末梢リンパ節が緩徐に増大してきたため2014 年9 月にPET検査を施行したところ,FDG の高度集積を認めた。他に遠隔転移はなく孤立性側方リンパ節転移と診断し,局所切除術を施行した。術後mFOLFOX6を12コース完遂し,再手術後2 年7か月無再発生存中である。本邦でStageⅠ直腸癌に対し側方リンパ節郭清が施行されることは少ないが,術後長期間経過後も側方リンパ節転移増大の可能性を念頭に置き経過観察する必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1408-1410 (2017);
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症例は67 歳,男性。直腸癌に対し低位前方切除術を施行後,5 年目に肝転移を指摘され肝外側区域切除術を施行した。初回術後7 年2か月目に左横隔膜に腫瘤影を認め,画像比較で肝切除以前より存在していたことが判明し,横隔膜転移の診断となった。横隔膜切除術を施行し,以後2 年無再発生存中である。これまでの報告では横隔膜転移の機序は播種性転移の可能性が高いとされていたが,われわれの考察では本症例は血行性転移の可能性が高いと考えられた。外科的治療に当たっては他に再発がないことを術前に画像検索し,治癒切除を行うことが重要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1411-1413 (2017);
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悪性腫瘍の脾転移は全身性多臓器転移の一部であることが多く,孤立性転移はまれである。症例: 50 歳台,女性。20XX 年に卵巣癌に対し術前補助化学療法後に手術を施行した。術後35 か月のCT 検査で脾門部に15 mm 大の陰影を認めたが,画像上消長の後,術後 63 か月のCT 検査で増大,FDG/PET で集積を認めた。孤立性腫瘍と診断し,膵尾部合併脾切除術を施行後39 か月無再発生存中である。考察:悪性腫瘍の脾転移の頻度は少ない。孤立性脾転移の場合,転移巣に対する手術後の予後は比較的良好とされる。全身状態が許せば積極的な脾臓摘出術が望ましい。結語: 孤立性転移性脾腫瘍に対する脾臓摘出術は,治療選択の一つであると考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1414-1416 (2017);
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2015年4 月〜2016年8 月までに,当院で経験した術前補助化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)施行後に切除可能となった局所進行大腸癌の4 例を経験したので報告する。他臓器浸潤や門脈腫瘍塞栓を認める閉塞性大腸癌のため,閉塞回避の目的に回腸人工肛門造設した上でNAC としてmFOLFOX6+bevacizumab を施行した。NAC 後はいずれの症例も拡大手術を回避し切除可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1417-1419 (2017);
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症例は55 歳,男性。直腸S 状部癌に対し,高位前方切除術を施行した。病理組織診断はmucinous adenocarcinoma,pT3(SS),pN1,sM0,sP0,pCy0,fStage Ⅲa。術後2 年3か月目に腰痛が出現した。腹部CT 検査で膀胱三角部を中心に造影効果を認める腫瘤性病変を認めた。腫瘍は前立腺および直腸間膜内へ浸潤していた。膀胱鏡下生検を施行したところ低分化型腺癌が検出され,直腸癌の転移に矛盾しない所見であった。直腸癌の孤立性膀胱転移と診断し,膀胱・前立腺全摘および直腸部分切除術を施行した。尿路変更には回腸導管を施行した。病理組織診断で膀胱内や前立腺内のリンパ管に多数の低分化型腺癌を認め,リンパ行性転移による孤立性膀胱転移と判断した。現在,術後6 か月経過し無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1420-1422 (2017);
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症例は30 歳台前半,男性。嘔気を主訴に前医より紹介受診。精査で傍大動脈周囲リンパ節(#216)に転移を伴うStageⅣのS 状結腸癌と診断された。S 状結腸切除術,D3+#216郭清を施行し,術後診断はcolon cancer(S),type 2,中分化腺癌,pT4a(SE),pN3(19/33),pM1a(LYM),pStageⅣであった。KRASは変異なし,EGFR(+)であった。術後補助化学療法はFOLFOX+bevacizumab(Bmab)を選択し,術後6 か月で再発なくcapecitabine(Cape)へ変更したが,術後1 年で多発肺転移再発を認めた。その後,FOLFOX+Bmab,FOLFIRI+panitumumab,SOX+Bmab,CapeOX,nivolumab,FOLFIRI+ramucirumabを投与した。その間,頸椎転移,縦隔リンパ節転移,多発肝転移などが出現したが,集学的治療によって術後4 年11 か月の生存を得られた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1423-1424 (2017);
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症例は88 歳,女性。既往歴に慢性関節リウマチ,心房細動あり。腹部膨満感,嘔気のため来院し,精査にて横行結腸癌によるイレウスと診断された。肝転移もあり,同時に肺炎,心嚢液の貯留があり,耐術能に乏しいと判断し,まずselfexpandable metallic stent(SEMS)挿入を試みたが翌日SEMSが脱落,ステント径を上げて挿入し,全身状態の改善を待って腹腔鏡下結腸部分切除術を施行した。術後は合併症なく,退院となった。腫瘍は巨大Ⅰ型であり,重積によるイレウスに対してSEMS で恒久的に整復できている状態であった。Ⅰ型腫瘍によるイレウスに対してもSEMS による減圧はbridge to surgeryとしては有用であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1425-1427 (2017);
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症例は74 歳,女性。肉眼的血尿を主訴に当院泌尿器科を受診した。膀胱鏡にて膀胱内に腫瘍性病変を認め,生検では腺癌が疑われた。MRI検査で虫垂底部の嚢胞性腫瘍および虫垂膀胱瘻の合併を指摘されたため,原発性虫垂癌の膀胱浸潤疑いで当科にて手術を施行した。術中所見では虫垂が膀胱にめり込むように浸潤していたが,腹腔内から観察可能な虫垂には腫瘍性変化は明らかではなかった。右卵管が虫垂とともに膀胱側へ引き込まれていたため,回盲部切除術(D3),膀胱部分合併切除術,右付属器合併切除術を施行した。膀胱内には大量の粘液塊が充満しており,浸潤部では膀胱内腔に突出するように発育する4 cm 大の乳頭状の腫瘍を認めた。病理検査では,虫垂原発の粘液癌[V,1 型,45×30 mm,muc,pT4b(SI,膀胱),int,INF c,ly0,v0,pN0,cM0,pStage Ⅱ]と診断された。今回われわれは,膀胱腫瘍を契機に発見された虫垂粘液癌の1 例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1428-1430 (2017);
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症例は82 歳,女性。2009年1 月に両側乳癌に対して,両側乳房部分切除および両側腋窩リンパ節郭清を施行した。その後,放射線療法を施行し,レトロゾールを5 年6か月内服した。術後7 年7か月に右乳房B 領域に皮膚の浮腫性壁肥厚,小膨隆を多数確認した。皮膚生検を施行し,血管肉腫と診断した。初回発見から2 週間後には腫瘍が増大露出したため,右乳房切除を施行した。病変の切除断端は陰性であることを病理検査で確認した。その約1 か月後,創部辺縁に発赤と硬結を認めた。生検で血管肉腫の再発を確認し,再切除した。さらに,創部より離れた右中腋窩腺上にも発赤を認めた。同部位を切除すると,同様に血管肉腫と診断された。切除後1 年経過し生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1431-1433 (2017);
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症例は72 歳,男性。2015 年7 月,胃前庭部小弯0-Ⅱc 病変に対して内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した。病理診断の結果,pT1b2,ly(+)であり,追加切除目的に当科紹介となった。8 月,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した。摘出標本の病理学的検索ではリンパ節転移を認めず,最終診断はpStage ⅠA であった。2016 年4 月,腹部造影CT 検査にて腹部大動脈周囲に腫大リンパ節を1 個認め,PET でFDG集積も確認された。早期胃癌術後ではあったが転移の可能性も否定できず,7 月に腹腔鏡下リンパ節摘出術を施行した結果,胃癌転移と診断された。術後S-1+cisplatinによる抗癌剤治療を導入した。初回手術より21か月が経過したが,現在再発なく経過している。胃癌術後の腹部大動脈周囲リンパ節再発は全身転移の一部と考えられるが,手術加療を含む集学的治療により生存期間延長が得られる症例があり,治療の選択肢となり得る可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1434-1436 (2017);
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症例は56 歳,女性。5 年前に当院産婦人科で子宮体癌に対し,子宮全摘術,両側付属器切除術および大網切除術を施行された(pT3N0M0,pStage ⅢA)。産婦人科での術後フォローアップでの検診で膣後壁に腫瘍を認め,生検にてGroup 5,tub1であった。骨盤部MRI検査で下部直腸に壁肥厚を認め,PET-CTにて同部位にSUVmax=21.3 と異常集積を認め,直腸癌の疑いにて当科へ紹介された。大腸内視鏡検査では下部直腸にtype 2 の腫瘍を認め,生検にてGroup 5,tub1であった。胸腹部造影CT 検査で下部直腸に壁肥厚を認め周囲リンパ節の腫脹があり,左肺下葉に20 mm大の結節を認めた。下部直腸癌,肺転移,膣転移[cT4aN2M1b(PUL,OTH),cStage Ⅳ]と診断し,手術の方針となった。手術は腹会陰式直腸切断術および経腟的膣腫瘍切除術を行った。術後経過は良好で術後16 日目で退院した。大腸癌の膣転移はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1437-1439 (2017);
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症例は59 歳,男性。主訴は肛門腫瘤,疼痛で来院した。肛門部に硬結を触知し,左臀部と会陰部に瘻孔形成を形成し,粘液の流出を認めた。肛門部の腫瘍からの生検でadenocarcinomaの診断であった。CT,MRIで骨盤底を占拠する不整な腫瘤を認め,前立腺,仙骨尾骨への浸潤を認めた。切除不能の局所進行例であり,術前放射線化学療法を施行した。腫瘍の著明な縮小を認め切除可能と判断し,腹会陰式直腸切断術,臀部広範囲切除,尾骨合併切除,皮弁形成術を施行した。組織学的には肛門,臀部皮膚に腫瘍の露出を認めるものの,皮膚を含めた切除断端は陰性であった。局所進行痔瘻癌において,治癒切除を得るために術前放射線化学療法が有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1440-1442 (2017);
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単孔式腹腔鏡手術は多孔式腹腔鏡手術と比較した場合,術後整容性の向上の観点から優れた手技ではあるが,その他の観点からの優越性は検討の余地がある。単孔式腹腔鏡手術の十分な経験と術前適応の検討を踏まえた上で,安全に超高齢者に対して単孔式腹腔鏡下回盲部切除術を2 例行ったので報告する。症例1: 患者は104 歳,女性。pStage Ⅲa の閉塞性上行結腸癌。術中・術後合併症は認めず,第15 病日に退院した。外来で検査follow up 中であるが術後2 年2か月無再発,生存中である。症例2: 患者は90 歳,女性。pStageⅠの盲腸癌。術中・術後合併症は認めず,第10 病日に退院した。超高齢者に対しての単孔式腹腔鏡下回盲部切除術は,単孔式腹腔鏡手術手技を十分経験した上で,術前検査での慎重な適応と術中の安全性確保への判断を適切に行えば,多孔式腹腔鏡手術と同様に安全に施行することができると考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1443-1445 (2017);
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症例は64 歳,男性。2011年10 月に食道胃接合部腺癌に対して右開胸開腹下部食道噴門側胃切除術,2領域リンパ節郭清(D2),胃管再建術を施行した。病理組織学的所見よりT4aN1M1(LYM),StageⅣ(胃癌取扱い規約第14 版),R0 と診断した。アルコール性肝硬変を併発しており,術後化学療法は施行不能であった。2014 年3 月,左副腎転移に対して左副腎摘出術を施行した。さらに12 月,右副腎転移に対して右副腎摘出術を施行した。その後は副腎皮質ホルモン補充療法(ヒドロコルチゾン20 mg/day)が必要であるものの,初回手術から 5 年 4か月,右副腎摘出術から 2 年 2か月経過しており,無再発生存中である。食道胃接合部癌両側副腎転移の切除例は極めてまれであり,過去の本邦報告例は1 例のみであった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1446-1448 (2017);
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症例は76 歳,男性。貧血の精査で行った内視鏡検査で胃癌を発見された。胃体下部大弯に2 型腫瘍を認め,生検で低分化型腺癌であった。CT で肝後区域に5.3 cm 大の辺縁明瞭な低吸収域を認め肝転移と診断され,S-1+oxaliplatin を用いた化学療法を開始し,8 コース後,肝転移は2.3 cmと縮小した。FDG/PETで他臓器への転移所見を認めず,10 コース後に幽門側胃切除術(D2 郭清),肝部分切除術を施行した。3.5×3.0 cm 大の2 型腫瘍は粘膜下層まで浸潤する充実型低分化腺癌で,肝病巣はほぼすべて変性壊死組織で,明らかな腫瘍の残存はみられなかった。S-1+oxaliplatin療法を継続し,術後9か月を経過して再発徴候を認めていない。肝転移を有する胃癌に対する治療として(術前)化学療法後の同時切除術は提案され得る治療と思われ,今後conversion therapyの概念を明確にすることが期待される。
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癌と化学療法 44巻12号, 1449-1451 (2017);
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背景: 本邦では家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis: FAP)に合併するデスモイド腫瘍(desmoid tumor:DT)の発生状況やDT のgenotype-phenotype relationshipについてはよく調べられておらず,重症DT の治療法についても確立されていない。対象・方法: 1981〜2015年に当科で経験したFAPのDT の発生率,部位,APC のgermline mutation,DT に対する治療成績について後方視的に検討した。結果:初回大腸切除を受けた32 家系37 例中DT は10 例で,DTの2年累積発生率は50%であった。DT 発生部位は腹壁のみ2 例,腹壁+腹腔内4 例,腹腔内のみ4 例。Church分類ではStageⅠ3 例,StageⅡ 2 例,StageⅢ 1 例,StageⅣ 2 例であった。APC のgermline mutationが同定された31 例では,codon 1400より3′側の変異例(n=7)でDT の発生が多い傾向があった(p=0.08)。DT 発生例の累積5 年生存率は73.3%であり,進行DT に対してdoxorubicin+dacarbazine(DOX+DTIC)療法を行った4 例(他院で大腸切除を行った2 例を含む)の治療効果はPR 3 例,CR 1 例で,発熱性好中球減少症を50%に認めた。結論: FAP のDT 発生頻度とgenotype-phenotype relationshipは従来の報告に矛盾しなかった。DOX+DTIC 療法は有効だがtoxicity が高く,less toxic なレジメンの開発が期待される。
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癌と化学療法 44巻12号, 1452-1454 (2017);
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症例は54 歳,女性。健康診断で右中肺野に結節影が認められ,anaplastic lymphoma kinase(ALK)陽性肺腺癌,stage ⅢB と診断された。carboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)+bevacizumab(Bev)やcrizotinibでsecond-line まで化学療法を行い,原発巣と縦隔リンパ節はともに縮小し,効果はPR であった。しかしcrizotinibで治療中に気管分岐下と右鎖骨上窩のリンパ節が増大し,リンパ節以外の再発は認めず,oligo-recurrence と考えリンパ節腫大に対して放射線治療を行った。放射線治療後はalectinibに変更したが,16か月後に嚥下困難を自覚し,気管分岐下リンパ節の再増大による食道狭窄症状が認められた。quality of life(QOL)の改善と治療継続のため食道亜全摘術を行い,食事や治療継続が可能となった。oligo-recurrenceの症例では予後の延長やQOL改善のため,侵襲性が高い手術療法でも有用であることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1455-1457 (2017);
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症例は69 歳,男性。2010 年3 月,胃癌の診断で,開腹幽門側胃切除術,D2郭清,Billroth Ⅰ法再建を施行した。術後病理診断は,M,Ant,Type 5,100×50 mm,pap>por2>sig,T4aN3M0,pStage ⅢCであった。術後補助化学療法としてS-1療法を施行した。2015 年2 月のCT検査で腹部大動脈周囲リンパ節の腫大を認め,胃癌リンパ節再発の診断となった。原発腫瘍組織の免疫染色を行いHER2 陽性であったため,capecitabine+CDDP+trastuzumab 療法を開始した。治療後CEA は正常化し,2015 年5 月のCTで腹部大動脈周囲リンパ節は著明に縮小し,明らかな再発巣も認めず,24 か月間CR が得られている。
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癌と化学療法 44巻12号, 1458-1460 (2017);
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はじめに:化学療法の発展に伴い,切除不能進行胃癌においてもdown stage を得て切除可能となったconversion surgery の報告も散見されるようになった。対象: 2013 年1 月〜2017 年5 月に当科にてconversion surgery を受けた進行胃癌11例を対象とした。方法: conversion surgery例の治療成績を臨床病理学的に検討した。成績:生存期間中央値592(355〜1,460)日。4 例に再発を認め,すべて原病死している。原発巣の病理組織が低分化型優位例は分化型優位例に比べて有意に予後不良であった(p=0.039)が,組織学的奏効例と非奏効例では予後の差を認めなかった(p=0.156)。結語:当科における切除不能進行胃癌に対するconversion surgery例の短期成績は比較的良好であったが,再発例も多く,長期成績の向上には手術のタイミング,術後補助化学療法などのさらなる検討が必要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1461-1463 (2017);
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近年,切除不能進行大腸癌において右側大腸癌は左側大腸癌より生存期間が有意に短いことが報告された。しかし大腸癌肝転移切除症例において,原発巣の部位が生存期間に与える影響を検討した報告は少ない。2001〜2016年の期間に当科で肝転移切除を施行した大腸癌113名を対象に,原発巣別に右側(盲腸〜横行結腸)群と左側(下行結腸〜直腸)群に分け,臨床病理学的諸因子と生存期間について両群間で比較検討した。右側群32 例,左側群81例の間で,臨床病理学的背景因子について有意差を認めなかった。5 年全生存率と無再発生存率(右側群vs左側群)は,各々62.1vs 49.2%(p=0.55),37.1vs 33.4%(p=0.76)で,いずれも両群間に有意差を認めなかった。以上から,切除可能大腸癌肝転移に対し,原発部位にかかわらず肝切除を行うことは妥当と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1464-1466 (2017);
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症例は55 歳,男性。25 歳時に全大腸炎型潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)と診断され,以降内服加療されていた。50歳時に後腹膜穿通を伴う下行結腸癌イレウスの診断で大腸全摘術,回腸嚢肛門管吻合術を施行した。病理組織検査で粘液癌,StageⅡと診断された。術後3 年経過時にCT 検査にて膵尾部と左腎の間に軟部腫瘤が出現したが,FDG/PET検査にて同部位への集積を認めず厳重観察となった。初回手術から4 年8か月経過時には同腫瘤は増大傾向にあり,腫瘍マーカーも漸増したことから再発を疑い膵体尾脾切除,左腎摘出術を施行した。病理組織検査にて結腸癌の局所再発として矛盾しない結果であった。colitic cancerでは粘液癌などの特殊な組織型が多い。大腸粘液癌では通常組織型の大腸癌と比較しFDG/PET 検査の感度は低く,そのサーベイランスには注意を要する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1467-1469 (2017);
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術中神経損傷を予防する目的で,リン脂質を多く含有する末梢神経線維のミエリン梢に脂質親和性蛍光色素を結合させて蛍光発色による可視化を図り,周囲組織と容易に識別可能かを試みた。蛍光色素は,すでに臨床使用されている薬剤,amphotericin B(AmB)とfluorescein isothiocyanate(FITC)を使用した。神経モデルとしてin vitroではSchwann cell,in vivoではラット大腿部神経を用いた。in vitroではSchwann cell を蛍光色素存在下の培養液で培養し,in vivoでは神経組織近傍に蛍光色素を局所投与し,それぞれの色素に適した励起光照射を施した。in vitro,in vivoともに蛍光発色が観察された。ミエリン親和性薬剤と励起光照射の組み合わせにより,神経線維を特異的に可視化できることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1470-1472 (2017);
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症例は70 歳台,女性。FDG/PET-CT 検査でNo. 13 リンパ節(LN)への集積から転移が疑われた十二指腸浸潤胃体下部3 型胃癌に対し,術前化学療法としてS-1+oxaliplatin(SOX)3 コースを施行した。その後のFDG/PET-CT検査で原発巣とLN への集積消失とサイズ縮小を確認し,幽門側胃切除術とD2(+No. 12 bp,13)LN 郭清を施行した。病理検査で原発巣には癌細胞の残存は確認できずGrade 3 であったが,No. 6(2/5)と No. 13(1/2)LN に転移癌細胞の残存を認めた。最終診断はLD,Post,Type 3,ypTX,ypN1(2/26),M1(LYM),Stage Ⅳであった。胃癌治療ガイドライン第4 版で十二指腸浸潤胃癌の治癒切除例については長期生存が見込まれることから,D2(+No. 13)も治療選択肢となり得るとされている。本例は,術前補助化学療法が著効し原発巣に限ればpCR となったがNo. 13 LN に転移癌の残存を認めており,化学療法が著効しても化学療法前に十二指腸浸潤を伴った症例はNo. 13LN 郭清をすることで治癒切除につながると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1473-1475 (2017);
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進行下部直腸癌に対する治療方針を検討するため,術前化学放射線治療(NCRT)を受けた36 例のうち側方リンパ節(LPN)転移が疑われた11 例を解析した。リンパ節転移はCT 検査で長径7 mm以上を陽性と判断した。NCRT 後のCT では腫瘍因子,リンパ節因子ともにダウンステージが得られた。術後病理検査によってcomplete response 2 例(18.2%),ypN0 が6 例(54.5%)で観察され,LPN転移を認めたのは2 例のみであった。NCRT 後のCT でycN0 であった4 例は,いずれもypN0であった。対象をNCRT 施行全36 例に拡大して調査すると,ycN0 と判断された21 例のうち85%がypN0であった。NCRT はLPN 転移が疑われる進行下部直腸癌に対してよく奏効しNCRT 後のCT ですべてのリンパ節が7 mm 以下に縮小した場合,側方郭清を省略することは局所再発と有害事象の制御が期待できる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1476-1478 (2017);
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症例は54 歳,女性。胸部食道癌cT1bN0M0,Stage Ⅰに対して胸腔鏡下食道亜全摘術が施行され,最終病理診断はpT1b,N2(No. 110),M0,pStage Ⅱであった。2016年2 月より術後補助化学療法としてdocetaxel,CDDP,5-FU(mDCF)療法を2 コース施行した。治療後22 日目に高熱を主訴に当科を再診され,右側腹部に圧痛を伴う腫瘤が触知した。血液検査で炎症反応の上昇を認め,尿検査ではWBC 100/HPF以上であった。造影 CT 検査では右腎の腫大と造影効果不良域および腎周囲の脂肪織濃度上昇を認め,急性巣状性細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis: AFBN)と診断した。血液および尿培養検査を提出後,抗生剤(levofloxacin: LVFX 500 mg/day)治療を開始したところ,数日後には症状は軽快した。培養検査からはいずれも大腸菌が検出され,LVFXへの感受性を認めた。計16 日間,抗生剤投与した後は再燃を認めず,自宅退院となった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1479-1481 (2017);
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皮膚浸潤,多発リンパ節転移,癌性リンパ管症を伴うStage Ⅳ乳癌に,一次化学療法でS-1+アナストロゾールが著効した1 例を経験した。症例は77 歳,女性。右乳房外側〜腋窩に自壊した腫瘤,乾性咳嗽を認め来院した。右上内側領域11mmの非触知腫瘤と腋窩腫瘤から各々針生検でscirrhous carcinoma(Luminal type B)と診断した。S-1(100 mg/day)は 14日間投与7 日間休薬の2 回を1 コースとし,アナストロゾール(1 mg/day)は連日投与した。1 コース終了後,腋窩腫瘍および鎖骨上リンパ節の著明な縮小と咳嗽の軽快を認め,CT でリンパ節,肺病巣の30%以上の縮小を認めた。有害事象はgrade 1 の色素沈着および流涙のみであった。10 か月現在,自壊皮膚の完全瘢痕化,肺病巣の縮小を維持している。進行乳癌一次化学療法としてのS-1 は,SELECT BC 試験の結果より,脱毛などのQOL 低下を軽減できるエビデンスのある薬剤であり積極的に選択できる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1482-1484 (2017);
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症例は63 歳,男性。血便,便失禁,倦怠感を主訴に受診した。精査の結果,直腸周囲膿瘍と直腸膀胱瘻を伴う下部直腸癌と診断された。RAS遺伝子は変異型であった。明らかな遠隔転移は認めないが,腫瘍は精嚢・前立腺・膀胱への浸潤が疑われ周囲に膿瘍形成も認めた。全身状態は不良であり,根治切除は困難と判断した。人工肛門造設術を先行し,栄養状態の改善と感染のコントロールを行った上で,全身化学療法として 5-fluorouracil/Leucovorin/oxaliplatin(FOLFOX)+bevacizumabを開始した。1 コース施行後に発熱と炎症反応高値を認め,抗菌薬投与を行ったが感染のコントロールが不良であり,化学療法継続は困難と判断した。腫瘍は増大傾向であったが新規病変は認めず,骨盤内臓全摘術を施行した。病理検査では,直腸癌がS 状結腸,膀胱の内腔へ浸潤し一塊となっている高分化管状腺癌であり,切除断端は陰性であった。退院後は補助化学療法を施行し,術後10 か月の時点で無再発経過中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1485-1487 (2017);
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症例1: 72 歳,男性。糖尿病加療中に肝臓癌を指摘され,加療目的に当院を紹介された。経過中に右前胸部に4 cm大の皮下腫瘤を認め,腫瘍摘出術を施行した。病理組織診断は,肝細胞癌の皮下転移であった。症例2: 60 歳,男性。肝細胞癌治療中に右肩に皮下腫瘤を指摘され,腫瘍摘出術を施行した。その1 か月後にも左上腕に同病変があり,再度腫瘍摘出術を行った。両病変とも病理組織診断は,肝細胞癌の真皮転移であった。内臓性腫瘍の皮膚転移は比較的まれで,本邦での剖検例の1.4〜6.7%程度と報告されている。特に肝細胞癌は頻度が低く,肝臓原発の悪性腫瘍の剖検例のうち皮膚・皮下組織の転移は0.3〜0.7%程度であると報告されている。また,肝細胞癌の皮膚転移は比較的末期の症状であり,自験例も術後数か月で死亡している。今回われわれは,本邦では比較的まれな肝細胞癌の皮膚転移の2 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1488-1490 (2017);
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症例は61 歳,男性。前医にて進行胃癌,多発肝転移と診断され,緩和医療の目的で当院を紹介された。進行性の貧血に対する対症治療として幽門側胃切除術を行い,在宅治療が可能な全身状態に改善した。病理診断の第1 報が胃低分化腺癌であったためTS-1+oxaliplatin(SOX)療法を導入したところで,中分化腺癌を混在する内分泌細胞癌(MANEC)の最終診断を得た。転移巣はSOX 療法に不応でもあり,肺小細胞癌に準じたetoposide+cisplatin(EP)療法を導入したところ,著しい腫瘍縮小効果(PR)が得られた。EP 療法4コース投与後にR0切除を目的とした肝切除とリンパ節郭清を施行した。切除した肝転移巣6 病変のうち2 病変には癌細胞を認めなかった(pCR)。しかし肝切除術後2 か月目には残肝再発が確認され,その後に転移巣は急速に増大した。次ラインにcarboplatin+etoposide 療法を開始したが骨髄機能低下のため治療継続が困難な状態となり,現在に至っている。以上の経過で診断時から18 か月経過した現在,担癌生存中の胃原発MANECの1例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1491-1493 (2017);
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高度進行胃癌に対する集学的治療の良好な成績が報告されているが,これらの治療は高度の侵襲を伴い,術後合併症や回復の遷延を来す症例も少なからず経験される。近年,周術期栄養管理の重要性が明らかとなり,積極的な栄養管理が行われるようになってきた。なかでも消化管を用いる経腸栄養療法が推奨されている。化学療法後に拡大郭清を伴う胃切除を行った76 例を対象に後方視的に術後栄養状態の変化や合併症,安全性の検討を行った。経腸栄養症例18 例中15 例で960kcal 以上の栄養が経腸的に投与されていた。11 例に副作用が認められたが,下痢の1 例を除き制御可能であった。入院中の体重減少は経腸栄養症例で有意に抑制され,感染性合併症は少なかった。術後早期経腸栄養療法は安全に施行可能であり,高度の侵襲を伴う胃癌手術症例には有用な栄養療法と考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1494-1496 (2017);
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成人T 細胞性白血病リンパ腫(ATLL)は,全身諸臓器へ浸潤し,消化管へも高率に浸潤するが,穿孔を来すことはまれである。ATLLの消化管浸潤により,穿孔を来した症例を経験したため報告する。患者は腹部膨満感を主訴に受診した75 歳,男性。腹部造影CT で回盲部に粗大な腫瘤を認め,下部消化管内視鏡検査では上行結腸に浮腫,狭窄があり,スコープは通過できず,上行結腸狭窄部肛門側に腫瘤を認めた。入院後,腹膜刺激症状を伴う腹痛が出現した。腹部造影CT で回盲部腫瘍周囲にfree airを認め,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。術後の病理組織検査でATLL の消化管浸潤と診断された。ATLLの消化管浸潤は消化管穿孔を来すことがあり,穿孔を来した場合は予後不良である。ATLL の治療の主体は化学療法であるが,穿孔を来した場合は早急に手術が必要であり,慎重に経過をみる必要があると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1497-1499 (2017);
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症例は81 歳,女性。胃体中部小弯の2 型胃癌の診断で当院へ紹介された。術前CT で脾門部に径15 mm 大の石灰化を伴う脾動脈瘤が偶発的に発見された。脾動脈瘤塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)を先行して手術を行う方針となった。金属コイルを用いてTAEを行い,TAE後の脾臓の血流は主として左胃動脈からの側副血行路で保たれていることが確認された。TAE 後14 病日に手術を行った。左胃動脈を除く血管処理を終えた後に左胃動脈の血流を遮断し,indocyanine green(ICG)蛍光法で胃と脾臓の血流が保たれていることを確認した。膵臓を介して脾臓の血流が確保されていると判断し,脾臓を温存して幽門側胃切除術を行った。術後経過は良好であり,術後11 病日に退院した。脾動脈瘤併存胃癌の手術では,脾摘を伴う胃全摘まで必要となる可能性がある。TAEを先行して側副血行路を確認し,術中ICG蛍光法を用いた血流評価を行うことで脾臓温存と胃全摘の回避が可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1500-1502 (2017);
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下部直腸癌に対する自律神経温存(AN)手術の術後長期経過例の性機能を評価して,術後機能障害の危険因子を検討する。対象と方法: 2000〜2012年に経験した下部直腸・肛門管癌で排尿・性機能アンケート調査が可能であった男性91 例を対象として,性機能(国際勃起機能スコア: IIEF5)を評価した。患者背景因子や手術因子が術後性機能障害に及ぼす影響を解析した。結果:平均追跡期間は5.5 年。IIEF5 スコアの単変量解析では高齢(60歳以上9.1,60歳未満13.4,p=0.011),術後3 年未満(3年未満 9.4,3 年以上 12.7,p=0.030)が有意な不良因子であり,病期Ⅲ(Ⅰ/Ⅱ 12.4,Ⅲa/Ⅲb 10.0,p=0.068),側方郭清両側(なし/片側 13.1,両側 9.4,p=0.096)で性機能不良の傾向がみられた。多変量解析では,高齢が有意な危険因子であった。結論:高齢者では,側方郭清が必要な場合でも可能な限り片側にとどめるなどの対策が考慮される。
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癌と化学療法 44巻12号, 1503-1505 (2017);
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原発性早期乳癌を対象とし,乳房温存手術後のstrut adjusted volume implant(SAVI)を用いた加速乳房部分照射治療の忍容性,安全性,治療後乳房の整容性の評価について臨床試験として開始した。今回,IRB 承認後2016 年11 月〜2017年6 月現在まで3 例の登録を行った。平均年齢66(52〜78)歳であった。術後から放射線開始までの期間は平均8(7〜9)日であり,入院期間は18.7(17〜20)日であった。また,照射後一時的に皮膚の硬結は認めるものの経時的に減少し,全例感染など合併症は認めなかった。創部の引きつれや乳房の変形も少なく,今後乳癌温存術後照射の一つのオプションになると思われるが,症例の蓄積と長期成績を検討していく必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1506-1508 (2017);
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背景: 当院では局所再発率低下を目的として,進行下部直腸癌に対し術前化学放射線療法(CRT: 45〜50.5 Gy)を標準治療としているが,CRTを施行できない症例には術前短期放射線療法(short-RT: 5×5 Gy)を選択している。進行下部直腸癌に対する術前short-RT後の腹腔鏡下手術の安全性の検討を行った。方法: 2004〜2015年に術前short-RT後に根治切除を施行したcStageⅡ/Ⅲ下部直腸癌28 例を対象とし後方視的に検討した。結果:男性 23 例,女性 5 例,年齢中央値は63.5(24〜84)歳であった。short-RT 選択理由は並存疾患/患者希望/多重癌・重複癌/その他が 10/8/6/4 例であった。全例で short-RT を完遂し,最終照射から手術までの期間は中央値17(7〜58)日であった。手術はすべて腹腔鏡下に施行し,開腹移行症例は認めなかった。手術時間/出血量/リンパ節郭清個数は379(175〜890)分/90(0〜1,185)mL/27(12〜71)個であった。側方郭清は治療前検査で転移が疑われた9 例に施行した。Grade 3a 以上の合併症は3 例(10.7%)で認めた。病理学的完全奏効は2 例(7.14%)であった。結語:術前short-RT後の腹腔鏡下手術は安全に施行可能である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1509-1511 (2017);
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腹腔鏡下膵体尾部切除は2012 年に保険収載され,2015 年に適応拡大された。また,腹腔鏡下膵頭十二指腸切除も2016年に保険収載された。当科において腹腔鏡下膵切除を施行した膵神経内分泌腫瘍(P-NET)について検討した。対象と方法: 2012〜2017年までに腹腔鏡下膵体尾部切除49 例(P-NET 5 例),腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術16 例(P-NET 1 例)を施行した。P-NET は,NET G1,StageⅠA 5 例,StageⅠB 1 例であった。脾合併切除膵体尾部切除1 例,脾温存膵体尾部切除4 例,膵頭十二指腸切除術1例を施行した。結果: 腹腔鏡下膵切除したP -NET 6 例と開腹膵切除を施行したP -NET4 例の比較では,年齢,性別,手術時間に差を認めなかった。出血量は121.7 mL,術後在院日数は20.5 日で,開腹膵切除に対して少ない傾向にあった。腹腔鏡下膵体尾部切除を施行したP-NET 5 例と嚢胞性膵腫瘍31 例,浸潤性膵管癌10 例の比較では,年齢,性別,手術時間,出血量,術後在院日数に有意差を認めなかった。平均観察期間は58.4(43.5〜73.0)か月で,全例無再発生存中であった。結語: NET G1,Stage ⅠA,Stage ⅠB に対する腹腔鏡下膵切除は,適応として適切であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1512-1514 (2017);
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90 歳以上のいわゆる超高齢者の癌再発に対する治療は,化学療法は通常メリットが少なく,根治が期待できるのなら外科的切除がむしろ低侵襲と考えられる。われわれは,90 歳時に大腸癌腹膜播種再発が発見され切除,その後92 歳時にも再再発し切除できた症例を経験した。症例は女性で,89 歳時に横行結腸癌にて腹腔鏡下結腸部分切除した。13 か月後のCT で腹腔内に10 mm大の結節を指摘され,PET-CT でも集積あり。他に再発巣を認めないため,根治切除した。その14 か月後(原発巣手術から2年4か月後)のCT で17 mm大の腹腔内結節が指摘され再再発と診断,再度根治切除した。その後3 年(原発巣手術から5年6か月)を経過したが,95 歳4 か月で再発なく生存している。一連の治療でQOL の低下はみられなかった。高齢者の腹膜播種再発は,切除にて肉眼的な根治性が得られると判断される場合は,侵襲が軽微であれば手術を考慮すべきと考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1515-1517 (2017);
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症例は58 歳,男性。胸部下部〜腹部食道癌に対して胸腔鏡下食道亜全摘,頸胸腹3 領域リンパ節郭清,後縦隔経路胃管再建術を施行した。最終病理診断は,AeLtG type 3,扁平上皮癌,pT3N2M0,pStage Ⅲであった。術後補助化学療法として,5-FU とCDDP を使用した全身化学療法を2 コース施行した。術6 か月後のCT で肝S5 に単発の転移性腫瘍を認めたため,食道癌の肝転移再発と診断した。PTX を使用した化学療法を2 コース施行し,部分奏効(PR)を得た。PR が得られたが,腫瘍の残存を認めたこと,新規病変を認めなかったことより,術11 か月後に完全腹腔鏡下肝S5 部分切除術を施行した。病理学的所見では腫瘍の完全消失を認め,Grade 3 と診断された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1518-1520 (2017);
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症例は66 歳,男性。噴門部胃癌(cT3N0M0P0CYXH0,cStage ⅡA)に対して,開腹胃全摘術,D2 郭清術を施行した。病理検査にてmucinous adenocarcinomaと診断され,pT4,pN3,pM0,pStgae ⅢCであった。術後補助化学療法としてTS-1(120 mg/body)を内服していたが,術後 1年目に吻合部の狭窄症状を来した。画像上再発病変は指摘できなかったが,自覚症状・腫瘍マーカーの上昇・上部消化管内視鏡検査・上部消化管造影検査より,腹膜播種再発による吻合部周囲の壁外圧迫が強く疑われた。腹膜播種再発に対して,TS-1(120 mg/body)+cisplatin(CDDP 60 mg/m2)(SP 療法)を33コース施行した。SP 療法変更後は自覚症状・腫瘍マーカーともに改善を認めたが,CDDP による腎機能障害が出現したため,docetaxel(DTX 70 mg/m2),irinotecan(CPT-11 150 mg/m2),ramucirumab(RAM 8 mg/kg)+paclitaxel(PTX 80mg/m2 day 1,8,15)とレジメン変更を順次施行したが,徐々に病勢コントロールがつかなくなった。SP療法投与中は病勢コントロールが可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1521-1522 (2017);
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症例は70 歳台,女性。腹痛を主訴に当院を受診した。腹部造影CT 検査にて,活動性出血を伴う10 cm 大の小腸腫瘍を認めたため,腫瘍を含む小腸部分切除を行った。切除標本の病理組織診断では,c-kit陽性の紡錘形細胞を認め,小腸原発の高リスクGISTと診断した。術後補助化学療法としてイマチニブ400 mg/日を内服したが,投与後15 日目にGrade 4 の多形紅斑を認めたため投与を中止し,経過観察となった。術後2 年に腹膜播種再発を認め腫瘍切除術を施行した。術中腸間膜に多数の播種結節を認め完全切除は困難であった。イマチニブに忍容性がないため,再発播種結節の増大があれば切除の方針とした。術後5 年の間に計5 回の腹膜播種再発巣に対して腫瘍切除術を行い,腫瘍増大による症状の出現を回避し,長期生存を得ることが可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1523-1525 (2017);
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症例は58 歳,男性。肛門痛,血便を主訴に他院を受診し,前立腺浸潤を伴う直腸癌と診断,人工肛門造設術を施行され,術前化学療法としてmFOLFOX6 を6 コース施行後,手術目的に当院を紹介受診となった。術前評価はPR であったが前立腺の浸潤は残存していると判断し,腹腔鏡下に腹会陰式直腸切断術,前立腺合併切除,尿道膀胱吻合による尿路再建を行い,術後第10 病日に軽快退院となった。術後2 年を経過した現在,明らかな排尿障害,残尿は認めず無再発生存中である。本術式は良好な術野が得られ,確実な切除が得られる点で非常に有用な術式であると思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1526-1528 (2017);
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大腸癌卵巣転移は化学療法抵抗性であることが多く,時に急速増大を来しQOL 低下を招くことがある。今回われわれは,全身化学療法無効の巨大卵巣転移を伴う横行結腸癌に対し,両側卵巣切除および原発巣切除を施行し,化学療法を再開し得た症例を経験したので報告する。症例は37 歳,女性。下腹部膨満を主訴に前医を受診した。精査にて横行結腸癌,T4aN2bM1b(肝臓,両側卵巣,腹膜播種)の診断となった。全身化学療法を施行されたが,転移性卵巣腫瘍の急速増大を認め,化学療法継続不能となり当院紹介となった。当院転院後,開腹手術を施行,転移性卵巣腫瘍は骨盤内を占め巨大であったが周囲臓器への浸潤を認めなかった。両側卵巣切除および原発巣切除(右半結腸切除)を行い,術後11 日目に退院した。現在,化学療法継続中である。増大する大腸癌卵巣転移に対しては根治性の有無にかかわらず,積極的に切除術を検討するべきである。
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癌と化学療法 44巻12号, 1529-1531 (2017);
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症例は76 歳,女性。体重減少を主訴に近医を受診し,胃癌の診断で当科紹介となった。精査にてLM,circ,cT4b(panc/colon),cN0,cM0,cStage ⅢB と診断した。巨大な腫瘍で,門脈圧排所見も認めた。審査腹腔鏡ならびに胃空腸バイパス術を施行した後,術前化学療法としてSOX 療法を2 コース施行し,右半結腸切除および門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した。術後合併症なく退院した。病理学的検索にて pT4b(colon),pN0(0/22),pM0,pStage ⅢBであったが,膵臓や門脈への浸潤は認めなかった。退院後は患者希望により化学療法は行わず外来通院していたが,術後10 か月に他病死した。局所進行胃癌に対する拡大手術の適応決定には難渋するが,正確な術前診断と適切な治療戦略により安全な局所治療の選択肢になり得る。
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癌と化学療法 44巻12号, 1532-1534 (2017);
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症例は64 歳,男性。上腹部痛を主訴に来院した。上部消化管内視鏡検査で胃体上部後壁に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,生検で神経内分泌癌と診断された。CT 検査では胃体上部に壁外に突出する80 mm大の腫瘤を認め,膵体尾部や脾動静脈への浸潤が疑われた。手術を行ったが,腫瘍は腹腔動脈幹や腹部大動脈と一塊になっており切除を断念した。化学療法としてCPT-11/CDDP 併用療法を施行した。15 コース施行し,腫瘍は著明に縮小し,他臓器浸潤は不明瞭となった。根治切除が可能と判断し,手術を施行した。胃全摘,脾臓,膵体尾部合併切除術,D2郭清を施行し,R0の手術を行った。病理組織診断では腫瘍は胃および膵臓に残存していたものの,化学療法の組織学的効果はGrade 2 であった。術前に根治切除が困難であることが予想される局所進行胃神経内分泌癌に対し,術前化学療法を行うことで根治切除率が向上するのではないかと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1535-1537 (2017);
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腹膜転移を有する卵巣癌術後の全身化学療法中に多発肝転移を認めた症例に対して全身化学療法を続行し,一時縮小したがその後増大したため中断した。4 回のラジオ波焼灼術(RFA)ならびに2 回の肝切除術で,無病生存となった症例を経験したので報告する。症例は50 歳,女性。主訴は腹部膨満感。1 年以上前から腹部腫瘤の自覚があり,約1 か月前から腹部全体が膨満し,皮下脂肪が減少著明なため入院となった。CA19-9とCA125が高値であった。術前のMRIでは腹部全体を占める約30 cmの巨大な卵巣嚢胞で,一部充実性の腫瘍が描出された。両側卵巣ならびに子宮摘出術を施行された。病理診断では漿液性嚢胞腺癌,pT3b,pNX,pMX,腹水細胞診陽性,大網ならびに子宮頸部後壁に転移を認めた。術後可及的にcarboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)療法を施行した。6 コースを終えた術後約7 か月目のCT で,多発肝転移がS3,S4,S6,S7,S8/5 に確認された。その後,術後約 15か月目に腫瘍マーカーが上昇したためCBDCA+PTX 療法を再開したところ,腫瘍マーカーの減少とともに腫瘍も縮小し,約3.4 年間に18 コースを施行したところではS3 を残すのみとなった。しかし,その後S5 を中心に肝転移の再増大を認めたため,3 コース追加後CBDCA+PTX療法は中断し,局所療法に切り替えた。まず,S8/5 の転移巣に対して二度にわたりRFAを施行した。後に S3,S4 の転移巣を手術にて摘出したところ,腫瘍マーカーが著明に減少した。その後,S6,S7 に再び転移を認めたためRFAを二度追加したが,S7 に断端再発を認めたため再度肝切除を加えて腫瘍マーカーは正常域に戻った。最初の手術から6 年を超えた現在,無病生存しており予防的肝動注を施行している。なお,二度にわたる開腹手術の際には,腹膜転移は認めなかった。以上のように腹膜転移,肝転移を有する巨大卵巣癌に対する集学的治療は有効と思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1538-1540 (2017);
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はじめに:腹腔鏡下噴門側胃切除術(LPG)を行う際,逆流防止機構を追加するために小開腹,腹腔鏡補助下に再建手技が行われることがある。今回,overlap法を用いて,完全腹腔鏡下にLPG・空腸間置再建(JI)を施行したので報告する。方法: LPG,D1+郭清を行った後,空腸を結腸後のルートで上腹部へ挙上した。空腸を切離し,overlap法で食道空腸吻合を行った。間置空腸が10 cm となるように空腸を切離し,間置空腸と残胃前壁をoverlap 法で吻合した。横行結腸間膜と間置空腸間膜との間隙を縫合閉鎖して手術を終了した。考察: LPG・JI はoverlap法を用いることで完全腹腔鏡下に再建が可能であった。おわりに: overlap法を用いたJIはLPG の再建に適した方法であると考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1541-1543 (2017);
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症例は52 歳,男性。2015年4 月に検診で便潜血陽性を指摘され,6 月に当院に紹介受診となった。精査の結果,下部直腸癌,多発肝転移,cStage Ⅳの診断となった。生検組織では中分化管状腺癌,All-RASはwild typeであった。腹痛などの腹部症状は認めず,切除不能進行直腸癌の診断で全身化学療法の方針となった。2015 年10 月から5-fluorouracil,Leucovorin,oxaliplatin(FOLFOX)+panitumumab を計16 コース施行した。2016 年7 月の下部消化器内視鏡検査で原発巣である直腸癌は瘢痕となり,生検では癌細胞は認めなかった。CT 検査は原発巣の同定は困難で,有意なリンパ節腫大は認めなかった。PET-CT 検査では,原発巣やリンパ節の集積は認めず,肝転移巣の縮小を認めた。原発巣はclinical complete response(CR)となり,転移巣はclinical partial response(PR)となったために,2016 年10 月に肝転移巣に対して腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。肝転移巣は組織学的診断も直腸癌の肝転移であった。現在,経過観察中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1544-1546 (2017);
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症例は69 歳,男性。左上腹部痛と体重減少を主訴に受診し,腹部造影CT にて胃小弯側と肝臓外側区域の間に球形で内部の辺縁に造影効果を伴う9 cm 大の腫瘤性病変を認めた。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部小弯に3 型腫瘍を認め,生検結果はadenocarcinomaであった。以上より肝・膵浸潤を伴う壁外発育胃癌と診断し,胃全摘,D2郭清,肝部分切除,膵体尾部切除脾摘術を施行した。病理組織学的にて肝・膵浸潤を来した扁平上皮への分化傾向を示す低分化型腺癌と診断した。術後早期にリンパ節再発を認め,通常胃癌に準じた化学療法を施行するも手術7か月後に再発死した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1547-1549 (2017);
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症例は65 歳,男性。胸部中部食道癌c-T3N2M0,stage Ⅲの診断にて術前化学放射線療法を施行し手術療法となった。腫瘍と#113 リンパ節の大動脈弓へ浸潤しており,根治切除は困難と判断し,R2 手術となった。術後診断: Mt,CRT-type5b,s-T4(aortic arch)N4(#113)M0,stage Ⅳaであった。術後,胸水の排出量が多く,乳糜胸と診断した。保存的治療として腸管安静・オクトレオチド投与を行うも改善がみられず,術後8 日目に胸腔鏡下胸管結紮術を行った。その後も胸水排出が持続し,胸膜癒着術を行ったが著効しなかった。漏出部位の同定目的にリピオドールによるリンパ管造影を行ったところ,残存リンパ節から造影剤の漏出を認めた。計2 回のリンパ管造影の後,胸水排出が止まり,術後75 日に退院となった。今回,われわれはR2 手術となったT4 食道癌において,残存する転移リンパ節からのリンパ漏に対し胸管結紮を含めた乳糜胸治療を行うも改善がみられず,診断目的で行ったリピオドールによるリンパ管造影で治癒した1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1550-1552 (2017);
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症例は79 歳,女性。右乳腺腫瘤触知を主訴に受診した。USで主腫瘍は18 mm大で,腋窩リンパ節は30 mm大であった。病理所見はアポクリン癌,ER(−),PgR(−),HER2陰性であった。乳腺アポクリン癌,腋窩リンパ節転移に対して術前化学療法としてeribulin 1.5 mgを3回投与し,主病巣腋窩病巣とも高度縮小し手術を実施した。Bt+Ax(Patey変法)レベル2まで郭清した。摘出病理所見での主病巣は広範に凝固壊死に陥り辺縁に癌病巣が少量残存,リンパ節には癌細胞は認めなかった。乳腺アポクリン癌は浸潤癌特殊型に分類され予後はよいとされるが,本症例はKi-67 50%陽性の高悪性度症例と考えられeribulinが著効してはいるが,厳重な経過観察が必要と思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1553-1555 (2017);
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はじめに:今回われわれは,十二指腸下行脚に位置する腺腫に対して腹腔鏡内視鏡合同手術(D-LECS)を施行したため報告する。症例: 55 歳,男性。検診の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚乳頭対側に15 mm大の0-Ⅱa+Ⅱc 病変が指摘され,当院消化器・肝臓内科へ紹介となった。経過観察中の内視鏡所見上,陥凹部の腺管構造に不整を認め,悪性の可能性が疑われた。局所切除による診断的治療をD-LECS で行う方針となり,X年Y月入院となった。手術はまず内視鏡術者がendoscopic mucosal resection(ESD)を先行して行い,続いて腹腔鏡術者が十二指腸前面から横行結腸を剥離,十二指腸下角まで露出し,十二指腸を授動した。内視鏡をESD 部まで挿入し,内視鏡ガイド下に潰瘍床の補強目的に全層縫合閉鎖した。切除標本の病理検査結果はtubular adenomaで断端陰性であった。考察:表在性非乳頭部十二指腸腫瘍の治療法は確立しておらず,今後さらなる症例の集積による検討が必要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1556-1558 (2017);
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大腸癌難治性腹水は症状のみならずADLを低下させ,化学療法を延期・中止を余儀なくさせる。当科では2014 年より難治性腹水症例に対して腹水濾過濃縮再静注法(CART)を導入した。今回,2014 年1 月〜2017年1 月までに大腸癌難治性腹水6 例に対し,腹水濾過器はAHF-WMO,濃縮器はAHF-UP(旭化成メディカル株式会社)を使用したCART を計12回施行した。男性2 例,女性4 例,年齢67〜89 歳であった。原発巣は,直腸3 例,横行結腸1 例,下行結腸1 例,盲腸1 例であった。腹膜播種5 例,肝転移症例は1 例に認めた。全例に利尿剤が施行され,治療抵抗性であった。穿刺腹水量中央値は3,850(2,500〜10,000)mL,CART後経静脈還流量は485(400〜1,003)mL であり,濃縮率は7.5(5.7〜10.0)倍であった。CARTによる合併症は発熱が1 例であった。CART前のperformance status(PS)はCART 後に有意に改善し,食欲も改善した。1 例で化学療法を再開することができた。当科で行った大腸癌難治性腹水症例に対するCART は安全に施行できた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1559-1561 (2017);
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FOLFIRI+ramucirumab療法が奏効した2 例を経験した。症例1 は67 歳,男性。尿管浸潤,多発肝転移を伴う直腸癌に対して,一次治療としてmFOLFOX6+panitumumab療法を開始したが,9.3 か月で病勢が悪化した。二次治療としてFOLFIRI+ramucirumab療法に変更した。2 コース後にgrade 3 の発熱性好中球減少症を認めたが,治療は奏効し9 か月以上投与を継続した。症例2 は73 歳,男性。腸閉塞,肝転移を伴うS状結腸癌に対して原発巣を減量切除後にmFOLFOX6+panitumumab 療法を開始したが,4.7 か月で病勢が悪化した。FOLFIRI+ramucirumab 療法に移行したところ,転移巣は著明に縮小した。grade 3 以上の有害事象は認めず,最終的に7.9 か月投与を継続した。進行再発大腸癌に対するFOLFIRI+ramucirumab併用療法は,二次治療において有効な治療法となる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1562-1564 (2017);
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症例は76 歳,女性。血便精査の大腸内視鏡検査にて直腸Rb〜Ra に広がる15 cm 大の巨大なlaterally spreading tumor(LST)を認め,生検ではhigh grade tubulovillous adenomaであった。endoscopic submucosal dissection(ESD)を施行し,肉眼的には一括切除で断端陰性であった。病理診断はLST-G(granular),150×100 mm,adenocarcinoma(tub1-tub2),tubular adenoma,moderate〜severe atypia,Tis(M),ly(−),v(−),HMX,VMXで,臨床的には根治切除と考え,経過観察となった。術後2 年目のCT にて直腸間膜内に7 mm 大の腫大リンパ節を認め,PET-CT にてFDG 集積を認めた。リンパ節再発と診断し,腹腔鏡下超低位前方切除術を施行した。切除腸管には癌の遺残は認めず,直腸間膜リンパ節(#251)に癌の転移を認めた。本症例は切除標本が15 cm と大きく,約5 mm間隔で切りだしを行ったため,実在したSM浸潤部が抜け落ちてしまった可能性が最も考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1565-1567 (2017);
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症例は81 歳,女性。C型肝硬変で通院中にCT で肝S7 に径20 mm大の腫瘤を指摘され,肝細胞癌(HCC)と診断された。高齢であり本人が肝切除を望まなかったので,病変に対して2 回の肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した。1 年後のCT で局所再発と大動脈周囲リンパ節転移を認めた。局所再発に対してはTACE を施行し,大動脈周囲リンパ節転移に対しては外科切除を施行した。外科切除から6 か月後,CT で縦隔リンパ節転移を認め,放射線局所照射療法を施行した。原病の診断から7 年が経過した現在,無再発で外来経過観察中である。HCC の肝外転移再発は肺,骨,リンパ節への転移が多く,有効な治療法は確立されていない。孤立性のリンパ節転移を伴うHCC に対して,TACE,外科切除,放射線局所照射療法を組み合わせた集学的治療は予後延長に寄与する可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1568-1570 (2017);
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はじめに:膵腺房細胞癌(acinar cell carcinoma: ACC)は比較的まれな腫瘍で,浸潤性膵管癌に比して浸潤・転移が少なく,比較的予後が良好である。われわれは,広範な膵管内進展を来したACCの1 切除例を経験した。症例:患者は43 歳,男性。左側腹部の違和感を主訴に近医を受診した。CT 検査,MRI 検査では膵尾部に腫瘤性病変を認めた。膵液細胞診はClass Ⅲであり,精査目的に当院紹介受診となった。EUS では膵尾部に腫瘍を認めたが,穿刺ラインに脾動静脈が被るため穿刺吸引細胞診は施行しなかった。PET-CT 検査で膵尾部にFDG の異常集積を認めた。以上より,腎被膜浸潤を伴った浸潤性膵管癌と考え,膵体尾部切除術,左腎被膜合併切除術を施行した。術後病理診断では主膵管から分枝膵管内に異形細胞の増生を認め,免疫染色はBCL10 陽性であり,広範な膵管内進展を来したACCと診断した。術後3 年2か月経過した現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1571-1573 (2017);
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胃癌根治術後遠隔期に多発骨転移,皮膚転移,卵巣転移を来したが,それぞれに対し加療が有効であった症例を経験した。症例は72 歳,女性。主訴は特になし。2006 年に胃癌の診断で幽門側胃切除術,リンパ節郭清を施行した。病理組織所見は印環細胞癌,pT4a,pN3,ly2,v0,Stage Ⅲc であった。術後補助療法はS-1+cisplatin(CDDP)を1 コース施行後,S-1を4 年間,UFTを1 年間投与した。術後8 年目にALP値とI-CTP 値の上昇を認め,骨シンチグラフィを施行したところ多発性骨転移の所見がみられた。6,617 U/Lまで上昇した血清ALP値は,ゾレドロン酸投与により17 か月後には359 U/L まで著しく低下した。術後9 年目に頭皮に2 cm 大の皮下結節を認め,生検で印環細胞癌の所見であり,胃癌皮膚転移の診断であった。S-1 単剤投与を開始し,8 か月で皮膚転移はほぼ消失した。術後10 年目に腹部CT で骨盤内に11×10 cm の腫瘤を認め,生検にて印環細胞癌の所見であり,卵巣転移の診断であった。再発右卵巣腫瘍摘出術を施行した。術後9 か月経過しているが,S-1+oxaliplatinとゾレドロン酸にて加療中で,新たな転移再発所見は認めていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 1574-1576 (2017);
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症例は87 歳,女性。貧血の精査で胃癌と原発性肺癌を指摘され,2012 年12 月胃癌に対して幽門側胃切除+D2 郭清(2 型por1,pT3N2M0,Stage ⅢA),2013 年2 月原発性肺癌に対して右上葉部分切除(pT2aN0M0,StageⅠB)を施行した。術後はS-1内服を開始していたが,有害事象と本人の希望により中止となっていた。その後は外来にて定期的に経過観察されていた。2016 年2 月のCT にて左肺S8 に約13 mm の結節影を指摘され,5 月のCT では結節影は17 mm と増大を認めた。原発性肺癌,転移性肺腫瘍を疑い診断と治療目的で2016 年7 月左肺部分切除術を施行した。摘出標本の病理結果で胃癌肺転移の診断であった。現在,外来で経過観察中であるが,現時点では無再発で経過中である。胃癌の孤立性肺転移は約0.1%と報告されており,外科切除の対象となる症例は非常に少なく,切除したとしても再発し予後不良とされている。しかし近年,胃癌肺転移切除後の長期生存例の報告が散見されており,孤立性肺転移に対して肺切除は選択肢の一つと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1577-1579 (2017);
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症例は76 歳,男性。69 歳時に胸部食道癌に対し右開胸食道亜全摘術,胸骨後経路胃管再建術を施行され,術中に心室細動から心停止を来した既往があった。今回,上部消化管内視鏡検査にて再建胃管幽門前庭部小弯の3 型胃管癌(中分化型腺癌,cT2N0M0,cStageⅡA)と診断された。高度のるい痩(BMI 15 kg/m2)があり,間質性肺炎に対するステロイドの長期間の内服,前回手術時の心停止の既往があり,胸骨縦切開胃管全摘術を行うにはリスクが極めて高いと判断した。そのため胃管幽門側部分切除術とし,#4d,#6 リンパ節は右胃大網動静脈をすだれ状に郭清し口側胃管への血流を温存,右胃動脈は切離し,#5 リンパ節を郭清して病巣を摘出した。周術期に合併症はなく,術後40 日目に退院となった。予備力の非常に乏しい患者には,根治性と安全性のバランスを考慮した本術式の選択が有用であったと考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1580-1582 (2017);
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症例は72 歳,男性。突然の上腹部痛を主訴に当院を受診した。受診約2 か月前,胃体上部胃癌に対して他院にて腹腔鏡下胃全摘術(laparoscopic total gastrectomy: LTG),Roux-en-Y 再建術を施行されていた。精査の結果,食道裂孔ヘルニア(esophageal hiatal hernia: EHH)による絞扼性イレウスと診断し緊急開腹手術を行った。術中所見では食道裂孔を介して挙上空腸が左胸腔内へ陥入しており,食道空腸吻合部より180 cm に及ぶ小腸および輸入脚の一部が壊死していた。壊死小腸を切除し改めて消化管再建を行い軽快退院した。LTG 後傍EHH は報告数も少なく発症頻度は0.5%といわれており,まれな症例を経験した。既報の症例とともに文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1583-1585 (2017);
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強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy: IMRT)は腫瘍の形に合わせてより強い放射線照射を行うことができるとして,近年注目されている。今回,胃癌リンパ節再発に対してIMRTを行い,病勢コントロールが可能であった3 例を経験したので報告する。症例1 は66 歳,男性。術前化学療法後に幽門側胃切除を施行した。術後1年7か月目に腹腔内リンパ節転移を認めIMRT を施行し,1 年8 か月CRを継続している。症例2 は72 歳,男性。噴門側胃切除を施行後,術後1 年9か月目に腹腔内リンパ節転移を認めIMRTを施行した。1 年CR を継続している。症例3 は71 歳,女性。幽門側胃切除を施行後,術後2 年目に腹腔内リンパ節転移を認めIMRTを施行した。10 か月CR を継続している。3 例ともにIMRT による有害事象は認めず,安全に施行することができた。胃癌術後リンパ節再発に対してIMRT を施行し,長期間CR を得た。病変が局所に限局している症例では,IMRTは集学的治療の中の選択肢として有効であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1586-1588 (2017);
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症例は49 歳,女性。左上腹部痛を主訴に2016 年8 月当院を受診した。腹部CT 検査にて横行結腸脾弯曲部に直径約10 cm 大の腫瘤を認め,大腸内視鏡検査にて横行結腸癌(por,cT4b,cN1,M0,cStage ⅢA)と診断され,左半結腸切除術とD3 郭清術を施行した。病理組織学的検査においてendocrine cell carcinoma,pT4a(SE),pN0,M0,pStageⅡ,R0 との診断がついた。術後経過は良好であり,現在無再発生存中(2017年6 月現在,術後10 か月)である。大腸内分泌細胞癌は小細胞肺癌に準じた術後化学療法が推奨されているが,まれな疾患であるため有効性のある臨床試験が行われておらず,確立した治療法がないため経過観察としている。
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癌と化学療法 44巻12号, 1589-1591 (2017);
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症例は77 歳,男性。腹痛を伴う膿瘍合併胆嚢炎出血にて発症し,出血性胆管炎にて緊急入院となり,内視鏡的逆行性胆管ドレナージと集中治療で救命した。化膿性脊髄炎を併発し,2 か月の入院治療後に膿瘍部位に増大する腫瘍性変化を認め,鑑別のため経皮的肝生検を施行し,病理にて肝内胆管癌の診断となった。肝中央2 区域切除を施行し,術後SSI のため3 か月後に自宅退院した。術後6 か月目に右胸部腫瘤を自覚し,CT にて生検部再発の診断となり,胸壁合併腫瘍切除を施行した。病理では生検部播種として矛盾なかった。術後5 年経過するが,再発を認めない。肝腫瘍の鑑別における経皮的生検は播種のリスクを増大させるが,生検部の局所播種のみであれば局所切除により予後延長が見込まれると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1592-1594 (2017);
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嚢胞内腫瘤の形態を呈したneuroendocrine ductal carcinoma in situ(NE-DCIS)を経験した。症例は40 歳,女性。職域検診で乳房腫瘍を指摘されて受診した。マンモグラフィ検査では右M-S 領域に微小円形・集簇性の石灰化病変を認めた。超音波検査では右E 領域に直径9 mm の嚢胞内腫瘍を認めた。造影MRI 検査では境界明瞭な腫瘤性病変を認めた。吸引式針生検では乳腺症と診断された。悪性の疑念が捨てきれないことから,外科的生検術を施行した。病理組織診断はNE-DCIS,ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki-67 5%の診断であった。中枢性・単発性乳頭腫が併存しており,一部がNE-DCISの診断であった。切除断端が陰性であったため追加手術は施行しなかった。全身検索の結果,明らかな他臓器転移は認めなかったためTisN0M0,Stage 0 の診断であった。術後経過は良好であり,5年間の予定でtamoxifen(20 mg/day)を投薬して,経過を観察している。術後4 年目の現在,明らかな転移・再発を認めていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 1595-1597 (2017);
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乳房温存術5 年10 か月後に乳頭皮膚再発を来した症例を経験したので報告する。初回手術時65 歳,女性。左乳癌にて乳房温存術,腋窩リンパ節郭清を行った。浸潤性乳管癌,トリプルネガティブ,pT3N0M0であり,術後補助化学療法を施行した。術後5 年6か月で左乳房痛が出現した。CT にて再発所見を認めずnon-steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)で症状は軽快した。しかし3 か月後に左乳頭が1.5 cm ほどに腫大し,周囲乳房皮膚の発赤,疼痛を認めたためNSAIDs を再開した。1 週間で乳房皮膚の発赤,疼痛は改善したが乳頭は2 倍に増大したため乳頭腫瘤生検を施行し,腺癌皮膚浸潤の診断を得た。左腋窩リンパ節転移を認めたが,他に転移,再発は認めなかったため乳房全摘術,追加腋窩リンパ節郭清を行った。病理組織診断は真皮網状層を主座とする浸潤性腺管癌で再発と診断された。術後は化学療法を行い,1 年経過して再発所見は認めていない。単発の乳頭皮膚再発であり,局所制御ができれば予後良好であると期待される。
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癌と化学療法 44巻12号, 1598-1600 (2017);
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症例は85 歳,女性。患者は他院にて右乳房浸潤性乳管癌(pT1N0M0,Stage Ⅰ)に対して乳房温存手術を施行された。乳房温存手術後20 年経過して乳頭部にPaget 型再発した1 例を経験したので,その発生機序について文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1601-1603 (2017);
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他臓器浸潤した直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)施行14 例の治療成績を検討した。放射線療法は総照射量を40〜50 Gy とし,1 回照射量1.8〜2.0 Gy を20〜25回に分割して週5 回照射した。化学療法には5-fluorouracil持続静注,UFT+UZEL,S-1,capecitabine,irinotecan+S-1 のいずれかを用いた。全例で治療を完遂し得たが,1 例が術前に骨盤内膿瘍で死亡した。CRT 終了1 か月後の奏効率は57.1%(8 例)で,10 例で根治度Aの手術が施行され,このうち5 例で排尿と肛門機能の両者温存手術が施行された。根治度A手術が施行された10 例中9 例は病理学的にN0 であったが,局所再発4例を含む5 例(50%)に再発を認め,全例が術後1 年以内に再発した。Stage Ⅱにおいても根治度A の手術後に局所再発3例を含む4 例(50%)で再発を認めた。他臓器浸潤した直腸癌に対するCRT は根治性さらにQOL の向上に寄与することが期待されたが,特に術後1年間は局所再発に配慮したフォローアップが必要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1604-1606 (2017);
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bevacizumab(BEV)併用化学療法中に消化管穿孔を発症した4 例を検討した。症例1 は82 歳,男性。直腸癌術後肝転移再発でFOLFIRI+BEV 施行22 日目に胸部下部食道の穿孔に対してドレナージ術を施行した。症例2 は69 歳,女性。直腸癌,肝肺転移でFOLFOX4+BEV 施行6 日目に原発巣の穿孔に対して穿孔部の縫合閉鎖,人工肛門造設術を施行した。症例3 は69 歳,女性。左肺癌,副腎,リンパ節転移でCBDCA+PEM+BEV 施行15 日目に小腸穿孔に対して回盲部切除術を施行した。症例4 は73 歳,女性。左肺癌,胸膜転移でCBDCA+PEM+BEV 施行30 日目にS 状結腸憩室穿孔に対して穿孔部の縫合閉鎖,人工肛門造設術を施行した。穿孔部位,原因,発症時期は多岐にわたっており,BEV 投与中に発熱,腹痛,炎症反応の上昇などを認めた場合は早急に消化管穿孔を念頭に置いて精査を進め,全身状態,病状の進行を十分考慮し,適切な治療方針を決定する必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1607-1609 (2017);
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胃癌腹膜播種に伴う大腸閉塞に対して人工肛門造設術が施行されることが多いが,予後の限られた患者に対し侵襲的な治療を行うことや人工肛門造設後のquality of lifeの低下が問題となる。当院では,胃癌腹膜播種に伴う大腸閉塞に対して大腸ステントを7 例に留置した。ステント留置後には5 例で経口摂取が可能となり,症例を選べば大腸ステントは症状緩和のための有用な治療選択の一つと考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1610-1612 (2017);
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症例は70 歳,女性。左総頸動脈浸潤が疑われ,切除不能甲状腺乳頭癌として当院に紹介となった。甲状腺全摘後に左頸部腫瘍への外照射と内照射が行われ,腫瘍の縮小が得られていた。術後1 年7か月が経過したころから左頸部腫瘍の増大,左肩痛,嚥下困難が出現したため当科に入院となった。CT で総頸動脈周囲の腫瘍増大と気管・食道の圧排所見を認めた。本人・家族と十分に相談した上で,レンバチニブの投与を開始した。投与開始後7 日目のCT で腫瘍内の総頸動脈周囲に気腫像がみられたため,翌日よりレンバチニブの投与を中止したが,9 日目に吐血から心肺停止状態となり,11 日目に死亡した。レンバチニブ投与後,動脈破綻の危険因子としては,全周性に動脈を取り囲む腫瘍の存在,外照射歴,腫瘍内気腫像がいわれている。腫瘍内気腫像が出現してからの投与中止では出血死を回避できないため,投与回避を含めた投与開始前の検討が重要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1613-1616 (2017);
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症例は66 歳,男性。2004年9 月に直腸S 状結腸癌に対し腹腔鏡下高位前方切除術+D3 郭清を施行した。T4a,N2,M0,Stage ⅢbにてUFT+UZEL 5 コース,UFT単剤6 か月間施行した。術後1 年目に左肺S6,腹部大動脈周囲リンパ節再発を認めmFOLFOX6 を開始した。7 コース目にGrade 3 の末梢神経障害を認め,sLV5FU2に変更した。しかし4 コースでPD となり,FOLFIRI に変更した。5 コース施行するも奏効が得られなかったことから,腹部大動脈周囲リンパ節摘出ならびに胸腔鏡下左肺S6 部分切除を施行した。以降,無治療にて経過観察としたところ,5 年10 か月後に左腎動脈分岐部リンパ節再発を認めた。術前の腫瘍縮小を目的としてcetuximab+FOLFIRI を施行した。9 コースにてPR となったため,リンパ節摘出術を施行した。しかし1 年8か月後に腹部大動脈周囲リンパ節再発が出現した。左腎動脈浸潤を認めたため化学療法の方針となり,bevacizumab+FOLFIRIを開始した。現在までSDを維持しながら継続中である。切除可能と判断した大動脈周囲リンパ節再発に対する積極的な外科的切除は予後を延長する可能性があると考えられるが,その適応はさらなる検討が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1617-1619 (2017);
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症例は69 歳,男性。検診で便潜血陽性のため精査目的で当院を受診した。直腸癌,早期胃癌の診断となった。直腸癌cStage Ⅲbに対して超低位前方切除術を施行し,入院中に早期胃癌に対してendoscopic submucosal dissection(ESD)を施行した。術後1 年,胃癌ESD 後の再発を認め,追加切除を施行し,術後1 年4か月に肺転移を認め,肺区域切除術を施行した。術後5 年に腎細胞癌を認め,腎部分切除術を施行した。術後8 年に食道癌を認め,根治的放射線化学療法を施行し局所complete remission(CR)となった。現在,無再発生存中である。今回われわれは,四重複癌に対して適切な術前,術後の検査,適切な治療により,機能温存術が可能であった1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1620-1622 (2017);
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症例は70 歳台,男性。遠位胆管癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行し,術後4 年7か月目の腹部CT で右腎近傍の腹膜に腫瘤性病変を指摘された。PET-CT にて同部位にSUVmax 5.8 の異常集積を認め,胆管癌の腹膜再発もしくは後腹膜原発悪性腫瘍と診断した。腹膜再発としても初回手術からの無再発期間が長いことなどから,化学療法などの非外科的治療は行わず,病巣摘除を施行した。術後の病理組織診断は高分化型腺癌で,初回切除の病変に類似した像であり,胆管癌の再発と診断した。再発巣切除後は化学療法などの補助療法は行わずに経過観察しているが,初回切除後9年9か月(再発巣切除後5 年)経過した現在,再々発は認めず生存中である。本症例は遠位胆管癌切除後の腹膜転移再発に対して再発巣切除を施行し,その後再々発を認めず長期生存が得られているまれな症例であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1623-1625 (2017);
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症例は66 歳,男性。食事通過障害を主訴に近医を受診し,胸部食道癌と診断され当院を紹介受診された。内視鏡検査にて,胸部中部食道に長径6 cm 大の 1 型食道癌(中分化型扁平上皮癌)を認めた。FDG/PET-CT検査では腹腔動脈周囲リンパ節(No. 7,8a,9)が一塊となり,FDG 集積を認めた。画像所見からcT3N4M0,cStage Ⅳa と診断され,化学療法を行う方針とした。導入化学療法として,まずは5-FU/CDDP 療法を開始したが明らかな有害事象は認めず,docetaxel/CDDP/5-FU(DCF)療法に移行した。3 コース施行したところ,内視鏡検査にて主腫瘍は隆起部分の脱落を認め,CT 検査では一塊となったリンパ節は著明な縮小を認めた。根治切除が可能と判断し,手術を行う方針とした。手術は3 領域リンパ節郭清を伴う食道亜全摘術を施行した。病理組織結果はmoderately differentiated SCC,CT-pT1b(T3),N4(3/82,No. 7,8a,9),CT-pStage Ⅳa,根治度B であり,根治切除術が行えた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1626-1628 (2017);
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症例は69 歳,男性。胃癌UM,type 3 の診断で幽門側胃切除術を施行した。幽門前庭部前壁に癌の露出を認め,腹腔洗浄細胞診も陽性で,StageはT4(SE)N3aM1,fStage Ⅳであった。本症例はTS-1にアレルギーを有し,かつ入院加療を拒否されたため capecitabine/cisplatin/trastuzumab 療法から cisplatin を除いた capecitabine/trastuzumab 療法を約 1 年施行し無再発であったため休薬したところ,約9 か月後にCT,PET画像で直腸左側前壁にSchnitzler転移を1 か所認め,大腸内視鏡の生検にて胃癌の再発病変として確診を得た。これに対して同部への放射線治療,さらに capecitabine/oxaliplatin療法を約1 年6か月施行した後に休薬とし,術後5 年を経過した時点で画像上無再発であった。本症例は,異時性・単発性Schnitzler 転移に対して化学療法のみでなく,局所の放射線治療を加えた集学的治療を行ったことが長期生存につながったと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1629-1631 (2017);
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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)では大腸癌が合併しやすいことが知られており,手術治療が行われることも多い。UC に対し,結腸全摘術後9 年目に肛門管扁平上皮癌を発症し予後不良であった1 例を経験したため報告する。症例は32 歳,男性。18歳時にUC を発症し,23 歳時に劇症化し他院で結腸全摘術,回腸嚢直腸吻合術を施行された。32 歳時に貧血を認め,内視鏡検査にて肛門管〜直腸〜回腸嚢に3型腫瘍を認め,当院当科に紹介となった。精査の結果,肛門管の扁平上皮癌の診断であり,集学的治療を行ったが術後9 か月で永眠された。UC は若年での発症が多く,術後残存直腸粘膜の有無にかかわらず発癌の危険性が報告されており,継続的なサーベイランスが重要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1632-1634 (2017);
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症例は41 歳,女性。健診の腹部超音波検査にて主膵管拡張を指摘され,精査のため当科を受診した。造影CT 検査で膵頭部に7 mm大の造影効果を伴う腫瘤と尾側膵管の拡張を認めた。内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP),核磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)も施行し,非機能性膵神経内分泌腫瘍なども鑑別にあがったが確定には至らず経過観察となった。6か月後のCT 検査で腫瘤は10 mmへ増大しており,通常型膵癌の可能性も完全に否定できず,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的には神経内分泌腫瘍でありNET G1と診断した。主膵管の狭窄所見は通常型膵癌との鑑別が問題になるが,本症例においても術前の診断に苦慮した。腫瘍径が1 cm 未満にもかかわらず,主膵管狭窄を来す非機能性膵神経内分泌腫瘍というまれな症例を経験した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1635-1637 (2017);
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症例は50 歳,女性。5 年前より右腋窩部腫瘤を自覚していた。しだいに増大傾向を認め,皮膚の発赤および引きつれを伴うようになったため,皮膚科を受診した。皮膚生検の結果,乳癌からの転移病変の疑いで当科を紹介受診した。右腋窩に20 mm 大の皮膚の発赤を伴う腫瘤を触知した。超音波検査では右腋窩に最大17 mm までの不整形低エコー腫瘤を複数個認めた。全身検索では右腋窩部の腫瘤以外に明らかな原発巣は認めなかった。局所療法として腫瘤摘出術を行ったところ,浸潤性乳癌の診断であった。腋窩部に発生した腫瘤では,特に悪性の場合,潜在性乳癌の腋窩リンパ節転移や異所性乳癌,副乳癌,皮膚および皮膚付属器由来の悪性腫瘍などが鑑別としてあげられる。今回われわれは,腋窩部に発生し,臨床,画像,病理所見など多角的な検討により副乳癌と判断した症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1638-1640 (2017);
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症例は81 歳,女性。既往歴は高血圧症,虫垂炎。1994 年からC 型肝炎でフォローされており,2014 年10 月肝細胞癌(HCC)の診断で肝S8 亜区域切除術,胆嚢摘出術を施行した(T2N0M0,StageⅡ)。2015 年12 月にC 型肝炎ウイルスに対してレジパスビル・ソホスブビル投与を開始し,2016 年1 月にHCV-RNA陰転化を確認した。2016 年9 月造影CT にて右下腹部の腫瘤を指摘され,右鼠径部に3 cm 大の弾性硬な皮下腫瘤を触知した。PET-CT 検査で右下腹部腹壁直下に単発で異常集積(SUVmax 28.6)を認めたものの,その他遠隔転移やリンパ節転移を疑う所見は認めなかった。鑑別疾患としてHCC の腹壁播種またはリンパ節転移,腹壁原発腫瘍,悪性リンパ腫を疑い,腹壁腫瘍摘出術を施行し,術後5 日目に合併症なく退院した。病理組織学的にびまん性大細胞B 細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma: DLBCL)と診断した。今回,HCC術後に発症した鼠径部悪性リンパ腫の1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1641-1643 (2017);
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症例は42 歳,男性。胃壁内転移を伴うStage Ⅳb Barrett食道腺癌根治術後に異時性に来した動脈管索リンパ節,前縦隔リンパ節および左鎖骨上リンパ節再発に対し,三度の外科治療と化学放射線療法を含む集学的治療を行い,初回手術より6 年3か月経過し生存中の症例である。食道癌根治術後の再発症例の予後は極めて不良であり,長期生存が得られている症例は限られている。加えて,本邦での報告の多くは扁平上皮癌であり,近年増加傾向にあるBarrett 食道腺癌術後再発例に対する有効な治療方針は定まっていない。本症例は蓄積すべき貴重な症例と考え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1644-1646 (2017);
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症例は66 歳,男性。胃癌術後再発による挙上空腸狭窄に対しカバードステントを留置した。しかし留置後4 日目に肛門側へ逸脱を認めたため内視鏡にて抜去し,その約6 か月後にノン・カバードステントを再留置した。再留置から2 か月後にtumor ingrowth による内腔狭窄を来したが,stent in stent にて再開通可能であった。再発による挙上空腸の狭窄に対するステント留置は内視鏡的に到達可能であり,複数か所ではないなどの条件が合えばQOL改善に有用な手段と考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1647-1649 (2017);
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今回われわれは,1994〜2016 年までに当院で治療した肛門扁平上皮癌14 例を検討した。初回治療として手術を5 例に施行したが4 例に再発を認め,このうち3 例は術後1 年以内に死亡した。一方,9 例に対し化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)を初回治療として施行した。Grade 3 以上の有害事象は好中球減少の1 例のみであった。効果判定は全例でpartial response(PR)以上が得られ,complete response(CR)は6 例であった。CR 6 例中4 例は無再発生存中,残る2例は再発を認めたが,ともに転移巣を切除し健存である。PRの3例中1例は局所切除追加にて再発なく生存しているが,残る2 例は遠隔転移再発で死亡した。CRT 症例は重篤な副作用もなく,予後も比較的良好であった。CRT は根治を期待できる有効な治療法であるが,遠隔転移再発には慎重な経過観察が必要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1650-1652 (2017);
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症例は61 歳,男性。2012年全身倦怠感を契機に門脈腫瘍栓(portal vein tumor thrombosis: PVTT)を伴う肝細胞癌(Vp-HCC)を指摘され当院に来院した。背景肝として慢性C 型肝炎があり,Child-Pugh分類 A,肝障害度B,AFP 176 ng/mL,PIVKA-Ⅱ 75 mAU/mL であった。腹部造影 CT 検査では門脈左枝本幹から P4 に沿って伸展する 10×20 mm 大の辺縁不明瞭な腫瘤が認められた。Vp3の HCC として術前にPVTT と腫瘍基部に体幹部定位放射線照射(SBRT,48 Gy/4 Fr)を行い,照射後12 日目に肝拡大左葉切除術,PVTT 摘出術を施行した。病理組織診断は低分化型HCC,vp1,vv0,va0,b0,sm(−)5 mmであり,腫瘍栓にはviableな腫瘍細胞は認められなかった。術後合併症を認めず,術後第33 病日より肝動注リザーバーを留置し,low-dose 5-FU,CDDP(FP)療法を1コース施行した。術後5 年経った現在,無再発生存中である。PVTT 併発HCC において,術前SBRT を含む集学的治療により長期生存を期待できる可能性があると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1653-1655 (2017);
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症例は77 歳,男性。膵浸潤・幽門狭窄を伴うStage Ⅳ胃癌に対して胃空腸吻合術を施行後に化学療法を開始した。2か月後より黒色便と倦怠感が出現し,Grade 3 の貧血を認めた。胃原発巣からの持続性出血と判断し,出血制御目的で30 Gy/10 Fr の放射線治療を行ったところ貧血の進行がなくなり,外来通院での化学療法が可能となった。切除不能進行胃癌からの持続性出血に対する緩和的放射線治療は,出血制御を目的とした有効な治療法の一つと考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1656-1658 (2017);
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当院で経験した90 歳以上のStage Ⅳ大腸癌4 例の手術治療経験を報告する。4 例はいずれも右側結腸の進行癌で原発巣による症状にて緊急・準緊急手術を要した。2 例で原発巣切除が行われ,2 例では人工肛門造設のみであった。3 例で自宅退院可能であったが,1 例は脳梗塞などの合併症にて在院死した。退院となった3 例は比較的長く自宅で過ごした後にいずれも緩和医療施設への転院調整が順調に行われ,穏やかな終末期を過ごした。90 歳以上の超高齢者のStage Ⅳ大腸癌の手術治療においては,厳重な周術期管理により早期に社会復帰をめざし,終末期の療養の場の提供など多くの課題を多職種横断的に介入し,迅速に進める必要性を感じた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1659-1661 (2017);
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症例は72 歳,男性。横行結腸癌術後,フォローのCT 検査で気管背側のリンパ節腫大を指摘された。上部消化管内視鏡検査で胸部下部食道に隆起性病変を認めた。免疫組織化学染色でCD56,synaptophysin,chromogranin A ともに陽性,Ki-67 index 90%以上であった。食道神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma: NEC),cT4b(106recR-主気管支),cN1(106recR),cM0,cStage ⅢCと診断した。術前化学療法としてirinotecan+cisplatin(IP)療法を施行した。1 コース終了後,上部消化管内視鏡検査時の病理組織検査では扁平上皮癌(squamous cell carcinoma: SCC)へ変化を示した。2 コース後,腫瘍の縮小を認め,根治切除可能と判断し,胸腔鏡下食道亜全摘術,リンパ節郭清(R0,根治度A)を施行した。原発巣はSCC,転移リンパ節(106recR)はNEC でCT-pT1a(MM),pN1(106recR)M0,fStageⅡB と診断した。その後,再発・再々発に対し手術・化学療法を施行し奏効を得た。初診時より1 年2か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1662-1664 (2017);
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症例1: 患者は69 歳,男性。por2,tub2(HER2+),T3N2M1(P0,CYX,H1),cStage Ⅳの胃癌に対してcapecitabine+cisplatin(CDDP)+trastuzumab(Tmab)(XP+Tmab)を投与した。12 コース施行後のCT 検査で肝転移は消失したため,胃全摘・D2郭清・Roux-en-Y再建術を施行した。術中超音波検査でも肝転移は認めず,最終診断はypT1bN1M0,yfStage ⅠB であった。術後22 か月経過し,無再発生存中である。症例2:患者は70 歳,男性。por2,tub2(HER2+),T4aN1M1(P0,CY0,H1),cStage Ⅳの胃癌に対してXP+Tmabを投与した。12 コース後のCT 検査で肝転移の増大をめ,PD と診断した。weekly paclitaxel+Tmab(wPTX+Tmab)に変更した。9 コース後のCT 検査で肝転移は消失し,胃全摘・D2 郭清・Roux-en-Y再建術を施行した。術中所見で肝S2,S3 表面に白色結節を認め,部分切除を行った。病理結果では肝S3 表面にあった白色結節に腺癌を認め,最終診断はypT4aN2M1(H1),yfStage Ⅳであった。術後,wPTX+Tmabを6 コース継続するも多発肝転移と骨転移が出現し,胃切除後19 か月で死亡となった。HER2 陽性胃癌に対するconversiontherapyの報告がみられるようになったが,second-line後の報告はない。今後その適応についても検討が必要と考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1665-1667 (2017);
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症例は66 歳,男性。62 歳時,他院で肝細胞癌にて重粒子線治療を受け,66 歳時に腹膜播種再発にて当科に紹介され,腹腔鏡下に切除した。術後5 か月目,CT 検査にて結腸肝弯曲部近傍に新たな腹膜播種巣の出現を認め,indocyanine green(ICG)蛍光法を併用した腹腔鏡下切除を企図した。術前日に ICG 0.5 mg/kg を静注した。PINPOINT®system による ICGイメージング下に腹腔内を観察すると,術前に指摘された主病変以外に,横隔膜に2 か所の小さなICG集積部位が認められた。各病変を腹腔鏡下に摘出し術中迅速病理診断に提出,肝細胞癌腹膜播種と診断された。術後経過は良好で第7 病日に退院,術後6 か月目に再度腹膜播種再発を認めたが,腹腔鏡下に切除し生存中である。本症例において,蛍光画像をoverlay したPINPOINT モードはリアルタイムに蛍光範囲の観察下に切除を進めることができ,切離ラインの決定が容易であっただけでなく,可視光モードでは同定困難な小病変の描出においても有効であった。肝細胞癌腹膜播種症例において,小病変の遺残ない切除に有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1668-1670 (2017);
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高齢者に対する手術の安全性に関する見解は様々であり,手術部位感染(SSI)発生率の増加も懸念される。当院の80歳以上の高齢者に対する肝切除術とSSI発生について,肝細胞癌に対して肝切除を施行した276 例を対象に前向きにサーベイランスを行った。高齢者は39例。SSI発生率は15.38%(6/39例)であり,80歳未満の7.73%(17/220 例)に比して高い傾向にあった(p=0.0855)。高齢者をSSIあり(6例)/なし(33例)で検討すると,肝機能に関しては,Alb,PT,Plt,ICG R15,Child-Pugh分類,肝障害度では統計学的有意差を認めなかったが,T-Bilは 0.9±0.4 vs 0.5±0.2 mg/dLと有意差を認めた(p=0.0069)。栄養指標である小野寺のPNIは43.1±5.7 vs 46.2±5.8,BMIは23.3±4.9 vs 22.8±2.8 であった(p=0.3804,p=0.6544)。手術因子は,SSIを認めた症例では出血量が401.5(少量〜7,782)mL vs少量(少量〜4,760)mL と有意に多く(p=0.0143),術後在院日数は27.5(8〜154)日vs 10.0(6〜77)日と長かった(p=0.0401)。肝切除術において高齢者ではSSIの発生率が高く,出血量との関連があると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1671-1673 (2017);
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Stage Ⅳ膵癌(膵癌取扱い規約第7 版)症例について予後を検討した。当科にて画像もしくは病理学的に遠隔転移を伴うStage Ⅳ膵癌と診断され,手術・化学療法などの治療を行い,予後が判明している患者53 例を対象とした。22 例は複数か所の転移を認め,28 例には腹腔動脈または上腸間膜動脈浸潤も疑われた。全53 例の5 年生存率は3.8%,生存期間中央値(MST)は6.2か月であった。姑息的手術症例のMST 6.7 か月,best supportive care(BSC)症例のMSTはわずか1.9か月であった。化学療法のみやBSC 症例で2 年生存した者はいなかった。一方,原発巣切除を施行した10 例では,最長生存期間は66.9か月でMST は31.3か月(p<0.001)であったが,無再発例はわずか1 例のみであった。多変量解析では原発巣切除と4 サイクル以上の化学療法施行が独立した予後規定因子であった。Stage Ⅳ膵癌の予後は非常に不良である。しかし化学療法奏効例や術前に転移診断が困難であった限定的な症例には,積極的切除を含めた集学的治療を行うことで予後が期待できることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1674-1676 (2017);
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症例は58 歳,女性。マンモグラフィ(MMG)にて微細鋸歯状腫瘤,超音波(US)検査にて左BD 領域境界に不整形腫瘤を認め,US ガイド下に針生検を行った。生検後36 日目のUS では腫瘤の増大は認めなかったが,腫瘤から針生検穿刺部皮下まで低エコー域を新たに認めた。生検後50 日目に左乳房部分切除,センチネルリンパ節生検を施行した。組織学的に,腫瘤は乳頭状構造の乳頭腺管癌成分(WHO 分類: invasive papillary carcinoma)と腺腔を形成する乳頭腺管癌と硬癌成分(WHO 分類: no special type)がそれぞれ移行像を呈して認められた。腫瘤から皮膚側へ連続する膠原線維内に腺腔を形成する浸潤巣を認め,針生検経路への播種が疑われた。播種した癌細胞の多くは生着しないとされるが,針生検の全経路が切除範囲に含まれない場合は,USなどで播種を疑う所見がないかの確認は必要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1677-1679 (2017);
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症例は66 歳,男性。上部消化管内視鏡検査で食道胃接合部に3/4 周性の3 型病変と,胸部上部食道に1 型病変を認め,生検でいずれも腺癌と診断された。胸腹部CT では原発巣とNo. 106recL のリンパ節腫大を認めた。食道胃接合部癌,cT2IM1N3M0,StageⅢの診断で,鏡視下食道亜全摘術・2 領域郭清・胸骨後経路胃管再建を施行した。病理診断では,食道胃接合部の3 型病変(T2)と胸部食道の1 型病変(壁内転移)を認め,いずれも腺癌であった。No. 1,No. 2,No. 101L,No.106recLリンパ節転移も認め,原発巣から壁内転移巣・頸部食道にかけて食道全長に粘膜下層を連続する静脈侵襲を認めた。食道胃接合部腺癌においても,壁内転移や脈管侵襲を伴う進行例では,食道癌に準じた切除・郭清術式の検討が必要であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1680-1682 (2017);
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早期胃がんに対する噴門側切除空腸間置術の術後23 年に残胃がんを発症した83 歳の症例を経験した。内視鏡下切除は困難であり,開腹手術を施行した。病理組織学的検査結果は,SM,N1であった。噴門側切除後の高齢者の残胃がん患者の外科的手術侵襲を軽減させるためには,初回手術の再建方法は単純にするほうがよいと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1683-1685 (2017);
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症例は34 歳,男性。2011年9 月に家族性大腸腺腫症の診断となり,多発十二指腸ポリープ,多発小腸ポリープに対し内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection: EMR)を施行された。同年12 月に十二指腸乳頭部癌に対し内視鏡的十二指腸乳頭切除術を施行されるも,水平断端陽性のため2012 年1 月に再度EMR が施行された。同年12 月に大腸全摘術および小腸部分切除術を施行した。その後は3 か月ないし6 か月ごとに内視鏡検査で観察し,計4 回EMRを行った。2014年より6 か月ごとの経過観察としていたが,2016年1 月に十二指腸乳頭部癌の再発を認め,膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織診はadenocarcinoma,tub2>tub1,pT1a,N0,M0,fStage ⅠA の診断であった。十二指腸粘膜にはlow-high grade adenomaが多発していた。術後1 年6か月を経過した現在,無再発で経過している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1686-1688 (2017);
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症例は初診時65 歳,女性。貧血の精査で肝に多発する腫瘍性病変を認め,肝生検にてneuroendocrine tumor(NET),G2 と診断された。十二指腸球部に潰瘍性病変を認め,確定診断は得られないものの十二指腸原発NET の多発肝転移と診断した。根治切除不能であったため,肝転移に対して肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)を2 回施行した後,オクトレオチドによる化学療法を行った。20 か月治療した時点で,肝転移巣は左葉に最大径4 cm 大の腫瘍があるものの,その他は微小病変のみであり,原発巣および肝左葉の減量切除を行った。摘出標本にて十二指腸に1.5 cm 大の腫瘍性病変(病理組織学的所見はNET,G2),肝左葉には同様の組織の腫瘍を多数認めた。術中に施行した超音波検査で肝右葉にも直径1 cm 以下の多数の小結節が認められたため,術後TAEを施行した。現在初診時から28 か月(減量手術後5 か月)が経過し,病状の進行を認めていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 1689-1691 (2017);
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回腸末端部原発の小腸悪性腫瘍に対しても,大腸癌に準じて回結腸動静脈根部までのリンパ節D3 郭清を伴う回盲部切除術が選択されることが多い。われわれは,同部位の小腸悪性リンパ腫に対して単孔式腹腔鏡下手術(TANCO-ICR)を施行したので,その術野展開の工夫について報告する。切除標本を体外へ摘出する際に必要な小切開を手術当初より臍部に置き,ラッププロテクターTMを装着させる。E・Zアクセス内にトロカールを3 本留置する。重力を利用した体位変換は重要であり,内側アプローチの際は頭高位に,後腹膜・外側アプローチの際は頭低位,左下ローテーションをかける。また,インターナルオーガンリトラクターを使用した術野展開も有効であり,内側アプローチの際は回結腸動静脈のpedicle を把持牽引し,後腹膜・外側アプローチの際は切除側の小腸や虫垂などを把持牽引することでconventionalな方法とほぼ同等の術野展開が可能となる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1692-1694 (2017);
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症例は68 歳,男性。右上腹部腫瘤,食欲低下を主訴に近医を受診した。血液検査にて炎症反応が高値であり,CT 検査にて横行結腸肝弯曲部寄りに腫瘤を認め,広範囲で腹壁に浸潤し,膿瘍形成も認めた。以上より横行結腸癌による腹壁浸潤,皮下膿瘍の疑いにて当科紹介となった。大腸癌イレウス状態により経口摂取ができず,cN2 以上,腹壁浸潤が広範囲かつ膿瘍腔内への播種が懸念されたため,回腸ストーマを造設し,mFOLFOX6+bevacizumabを10 コース投与した。CT上腫瘍は著明に縮小し,腹壁では一部接するのみとなったため,結腸右半切除術,腹壁部分切除術を施行した。病理組織学検査では腹壁に線維化は認めるものの腫瘍細胞はなく,ypT3(SS),ypN3,ly0,v1,ypPM0,ypDM0,ypRM0,ypStage Ⅲb,組織学的治療効果判定はGrade 1b の診断であった。術後補助化学療法としてmFOLFOX6 を8 コース施行し,術後7 か月経過した現在,再発の兆候や腹壁ヘルニアもなく経過観察中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1695-1697 (2017);
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盲腸癌術後切除不能リンパ節転移に対して,経口抗癌剤単剤投与が著効した興味深い1 例を経験したので報告する。症例は78 歳,女性。貧血精査目的にて2009 年9 月,当院を紹介受診した。精査の結果,盲腸癌と診断され,同年10 月,開腹右半結腸切除,腹壁合併切除,腹壁欠損部修復術を施行した。患者の希望により補助療法なしで経過観察していたが,2010年3 月,右腸骨リンパ節転移が判明した。同年9 月,開腹リンパ節郭清を試みたが,リンパ節転移巣は血管壁との剥離が困難で試験開腹術のみとなった。同年10 月より,患者希望により経口抗癌剤単剤投与(TS-1 80 mg/日,2週投与1 週休薬)を開始したところ,2011 年3 月の腹部超音波検査ではリンパ節腫大は認められず,以後の画像検査でもリンパ節腫大は指摘されなかった。2014年3 月にて抗癌剤投与は終了し,現在まで無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1698-1700 (2017);
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症例は,1997 年6 月にpStageⅡの盲腸癌で手術を行った症例である。1999 年5 月に肝転移(S6)に対し肝部分切除術,2004年4 月に残肝S4 に再々発し,肝部分切除術を施行した。2008 年11 月に血痰,咳嗽を認め精査し,縦隔内リンパ節転移の左主気管支浸潤を認めた。2009年1 月より放射線化学療法を行い著明に縮小したため,6 月よりmFOLFOX6療法を行い最終的に治療効果はcomplete response(CR)と判定した。2014 年2 月には右肺動脈下にリンパ節再々発を認め,再び放射線化学療法を行ったが,ある程度効果を認めたが残存腫瘍に対してpanitumumab 併用FOLFIRI 療法を計30 コース施行した。PET-CT 検査では局所制御されていると判断した。切除不能な異時性縦隔リンパ節再発に対して放射線化学療法により,長期に病勢コントロールを得られた症例を経験した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1701-1703 (2017);
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症例は43 歳,男性。検診にて下部直腸癌を診断された。術前CT 検査にて下大静脈が大動脈の左側を走行する左側下大静脈を認めた。左側下大静脈は無症候性であり臨床的な意義は少ないが,腹部手術時には術前画像の十分な検討と,手術中の正確な臓器・器官の解剖学的認識が必要である。今回われわれは,左側下大静脈を伴った直腸癌に対して自律神経温存腹腔鏡下低位前方切除術を施行した1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1704-1707 (2017);
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腹膜播種・肝転移を伴う進行大腸癌に対して,化学療法,腹膜切除・周術期腹腔内温熱化学療法(hyperther mic intraoperative chemotherapy: HIPEC),肝切除による集学的治療を行い,肉眼的治癒切除を得た症例を経験したので報告する。症例は33 歳,男性。腹部膨満感を主訴に前医を受診し,精査加療目的に当科へ紹介となった。下部消化管内視鏡にて横行結腸に全周性の狭窄を認め,腹部CT 検査にて横行結腸に不整な壁肥厚を認め,病変から連続する大網・骨盤内背側の広範にわたって播種性病変を認めた。同時に肝S3に肝転移病変を認め,多量の腹水貯留を伴っており,横行結腸癌腹膜播種・同時性肝転移と診断した。XELOX+cetuximabを9 コース,XELIRI+bevacizumabを4 コース施行し,原発巣・播種病変・肝転移病変の縮小を認めたため,初回化学療法開始後10 か月に,左半結腸切除,大網・脾臓・周囲の両側傍結腸溝・腹膜全切除,HIPECを施行した。病理組織診は,原発巣およびダグラス窩の小範囲のみに壊死を伴った粘液癌の所見を認めたが,その他切除した大網やいずれの腹膜にも腫瘍細胞は認めなかった。さらに3 か月後に残存が疑われた肝転移巣に対して腹腔鏡下肝部分切除(S3)を施行したが,病理組織診にて腫瘍細胞は認めなかった。以後 UFT/LV 内服による補助化学療法を行い,術後1 年無再発で経過している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1708-1710 (2017);
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目的:大腸癌肝転移は切除により良好な予後が得られることが知られており,切除可能症例に対しては大腸癌治療ガイドラインで手術治療が推奨されている。今回われわれは,その予後に影響を与える因子につき検討した。結果: 1998〜2017年までの肝切除33 症例を対象とした。5 年overall survivalは47.3%,5 年recurrence free survivalは29.9%であった。単変量解析ではCA19-9(p=0.02)と術式(p=0.0046)が予後規定因子として抽出され,多変量解析では術式(p=0.03)が抽出された。術式の検討を葉切除,区域切除,部分切除に分けて行うと,葉切除が区域切除と部分切除それぞれと比較して(区域切除p=0.0092,RR=28.94),(部分切除p=0.0092,RR=25.37)有意に予後不良であった。結論:今回の解析では術式が予後不良因子として抽出された。葉切除を必要とする肝転移症例は予後不良と考えられるが,術式選択と他の因子との影響を今後検討していくため,さらなる症例の集積が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1711-1713 (2017);
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症例は50 歳台,女性。両側卵巣腫瘍の精査加療目的で前医より紹介となった。精査の結果,上行結腸に全周性の2 型腫瘍と造影CT 検査で腹膜播種を疑う結節を認め,上行結腸癌・両側卵巣転移・腹膜播種の診断となった。化学療法としてmFOLFOX6+bevacizumab(Bmab)6 サイクル,sLV5FU+Bmab 6 サイクルの投与を行った。その結果,画像所見で上行結腸癌・両側卵巣転移・腹膜播種はいずれも縮小し,腫瘍マーカーも著明に低下した。根治切除可能と考えられ,開腹右結腸切除,両側卵巣切除,腹膜播種切除を施行した。病理所見は,pT3,pN0,pM1a(P2),Stage Ⅳ,薬物治療効果の組織学的判定は Grade 1b であった。R0 切除が得られたと考え,術後は UFT/UZEL の補助化学療法を行い,術後約 1 年の現在まで無再発生存中である。右側結腸の局所進行大腸癌は狭窄症状を来しにくく,化学療法を先行する治療戦略も一考の余地あると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1714-1716 (2017);
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症例は56 歳,女性。54 歳時に右卵巣癌,ダグラス窩播種,肝転移,腹膜播種に対し,子宮両側付属器切除,骨盤内側方リンパ節郭清,大動脈周囲リンパ節郭清,肝部分切除,播種巣切除を施行した(endometrioid adenocarcinoma,G3,pT3b,pN0,pM1,stage Ⅳ)。術後補助化学療法を行い定期的にフォローしていたが,術後1 年6か月の定期検査でCA125増加を認め,造影CT 検査で直腸前壁側に5 cm大の腫瘤を指摘された。造影MRI,PET-CT検査と併せて卵巣癌の骨盤内再発と診断し,開腹腫瘍摘出の方針とした。下部直腸前壁に5 cm大の腫瘤をダグラス窩より尾側に触知し,腫瘍一括切除のため低位前方切除術を施行した。手術切除標本のHE 染色で,腫瘍は直腸周囲組織〜固有筋層に圧排性の増生を示し,粘膜下層に胞巣状の浸潤と脈管侵襲がみられた。免疫染色でER 陽性,vimentin陽性,CD56 陽性,synaptophysin陰性,chromogranin A 陰性で,卵巣癌直腸転移と診断された。卵巣癌術後に直腸付近の骨盤内再発が疑われた場合,まれな直腸転移も念頭に置いて診断,治療が必要と思われる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1717-1719 (2017);
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今回,腹膜播種を伴う両葉多発肝細胞癌に対して外科的切除に経皮的肝灌流化学療法(PIHP)を加える二段階療法にて著効した症例を報告する。症例は 73 歳,男性。突然の腹痛を自覚し,精査の結果,多発肝細胞癌および肝細胞癌破裂(S5/S8)と診断された。腹膜播種を伴う肝外病変を認めるも,画像上比較的近傍に1 か所のみであった。治療方針は左葉の単発病変と尾状葉,腹膜播種を手術にて摘出し,その後PIHP を施行する方針とした。手術と2 回のPIHP の結果,腫瘍マーカーは正常化し,画像所見では造影効果が消失した。二段階療法は,切除可能な腹膜播種を伴う両葉多発肝細胞癌に対して有用な治療戦略であることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1720-1722 (2017);
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気管に浸潤したT4食道癌に対し化学放射線療法(CRT)と化学療法による集学的治療により,R0切除し得た症例を経験したので報告する。症例は75 歳,男性。嗄声を自覚し,上部消化管内視鏡検査で胸部上部(Ut)に3 型腫瘍を認め,CT検査でNo. 106recRリンパ節(LN)の胸膜・気管浸潤を認めたため,食道扁平上皮癌,Ut,cT4b(No. 106recR-気管)N1M0,cStage ⅢC(UICC 7th)と診断した。5-FU+CDDP(CF)療法を併用したCRT(60 Gy)を施行したがT4解除には至らず,docetaxel+CF(DCF)療法を2 コース追加した。内視鏡上はほぼCR で,No. 106recR LN も著明に縮小してFDG-PET の集積も消失したためT4 解除と判断し,サルベージ手術を行った。Ut の腫瘍からNo. 106recR LN にかけては高度の瘢痕化を呈するも気管や反回神経の剥離は可能で,合併切除せずともR0切除が可能であった。T4局所進行食道癌に対しては,CRTにDCF 療法を加えた集学的治療でT4 解除が得られた後に手術を行うことで,安全かつ臓器機能の温存や予後の改善が期待できると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1723-1725 (2017);
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播種や他臓器浸潤が疑われる巨大胃gastrointestinal stromal tumor(GIST)に対して,イマチニブによる術前化学療法後に腫瘍切除を行った症例を経験したので報告する。症例は69 歳,男性。急速に増大する腹部膨満感を主訴に受診した。CT 検査にて壁外結節を伴い膵臓,脾臓と広範囲に接する巨大な胃原発を疑う嚢胞性腫瘤を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診にてGIST と診断された。前治療なしでの手術では,術中の偽被膜破損や他臓器合併切除のリスクがあると判断し,術前化学療法としてイマチニブ 400 mg/日を 6 か月間内服した。腫瘍活性が低下したが嚢胞部分の大きさが変化せず,腹部膨満の訴えが強いため手術を行った。イマチニブは術前1 週間前に休薬し,合併切除や偽被膜破損なく腫瘍摘出術を行うことができ,術後2 週目からイマチニブを再開した。術後経過は順調で,術後1 年8か月経過して無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1726-1728 (2017);
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症例は44 歳,男性。血便精査目的に入院し,腹部造影CT 検査で骨盤内に小腸と連続する長径90 mmの腫瘤,高濃度腹水の貯留を認めた。入院当日の夜に下血から出血性ショックを来したため,緊急手術を施行した。開腹所見としてBauhin弁から150 cm口側の小腸間膜対側に長径95 mm の壁外発育性腫瘤を認め,静脈性出血,血性腹水を認めた。原発巣部から30 cm 肛門側の小腸壁に小結節を認め,同部位と原発巣部を各々小腸部分切除した。病理組織検査では固有筋層から漿膜下層に紡錘形細胞の増生を認めた。免疫染色で c-kit 陽性であり,GIST と診断した。核分裂像 13/50 HPF と高リスク群であり,また別に切除した小腸結節にも同様の腫瘍細胞を認め,小腸GISTの腹膜播種と診断した。術後9 日目に退院し,その後イマチニブによる術後補助化学療法を施行中である。腹腔内出血,消化管出血の両者を来す小腸GIST は極めてまれであり報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1729-1731 (2017);
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膵頭十二指腸切除術(PD)においてISGPF grade B 以上の術後膵液瘻(POPF)を早期診断するため,ドレーンアミラーゼ(DA)値,白血球数(WBC),CRP値の推移とPOPF 発症との関連を検討した。2005〜2016年にPD を施行した130例を対象とし,第3 病日のDA値がISGPF grade Aであった75 例を抽出し検討した。DA 値は第1,3,5 病日に測定し,①第3 病日のDA値(1,500 U/L以上),②第 5 病日のDA 値(1,000 U/L以上),③ 第 3〜第5 病日のDA 値の推移(1/3 以下の改善),④第 5 病日のWBC 正常値化(9,000/mL 以下),⑤ 第 3〜第5 病日のCRP 値の推移(50%以上の改善)の5 項目につきgrade B 以上のPOPF 発症との関連をCox 回帰分析で多変量解析した。この結果,第3〜第5 病日のDA 値とCRP 値の推移の2 因子がgrade B以上のPOPF に移行する予測因子であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1732-1734 (2017);
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症例は54 歳,男性。体重減少を主訴に内科を受診した。下部消化管内視鏡検査で直腸S 状部に狭窄を伴う全周性の腫瘍病変を認め,生検の組織は高分化腺癌であった。CT では多発肝腫瘍,大動脈周囲リンパ節腫大を認め,直腸S 状部癌のcStage Ⅳと診断した。S 状結腸による人工肛門造設術を行った後に,一次治療の化学療法としてmFOLFOX+bevacizumab(Bmab)を開始した。有害事象やprogressive disease(PD)により薬剤の変更を繰り返し,FOLFIRI+Bmab,sLV5FU2,panitumumabの併用などを施行するも,やはりPD となり,2014 年1 月からレゴラフェニブの内服を開始した。手足症候群などの有害事象のケアを行いつつ長期投与可能となり,2017 年1 月現在,stable disease(SD)の状態でレゴラフェニブの内服を継続できている。まとめ:化学療法で6 年以上生存,特に三次治療,四次治療の薬剤であるレゴラフェニブで3 年間longSD を維持できている症例を経験した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1735-1738 (2017);
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症例は67 歳,女性。糖尿病にて当院内科に通院中である。糖尿病の増悪を認めたため腹部CT 検査を施行し,膵体部癌,TS3(56 mm),T4(S+,RP+,PVsp+,Ace,ch,sp+),N1,M0,cStage Ⅳa と診断した。borderline resectable(BR)膵癌と判断し,術前化学療法としてgemcitabine+nab-paclitaxel(GnP)療法を3 コース施行した。化学療法により腫瘍マーカーは正常化し,CT にて腫瘍縮小を認めた。根治手術可能と判断し,腹腔動脈合併膵体尾部切除術(DP-CAR)を施行した。病理組織検査では線維化・泡沫細胞の集簇を認めるのみで癌の遺残は認めず,化学療法後の治療効果判定はgrade 4であり,pCR と判定した。術後8 か月が経過するが,無再発生存中である。GnP 療法は,BR 膵癌に対する有用な術前治療になり得ると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1739-1741 (2017);
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症例は51 歳,男性。腹部膨満を主訴に受診した。腹部造影CT では,左側腹部に不整形低吸収域や結節を含有する16cm 大の腫瘤を認めた。腫瘤は結腸脾弯曲部,膵尾部,脾臓に浸潤しており,腫瘍摘出術ならびにこれらの臓器の合併切除術を施行した。免疫組織学的染色ではa-SMA,desmin,vimentinが陽性で後腹膜平滑筋肉腫と診断した。術後6 年に嘔気・嘔吐を認め,腹部CT にて十二指腸水平脚を圧排するような巨大腫瘤を認めた。腫瘍摘出術,十二指腸部分切除,横行結腸部分合併切除し,病理学的には後腹膜平滑筋肉腫の再発と診断された。術後に補助化学療法を施行したが,3 か月後に腹部膨満を自覚した。CT にて左腹部に13 cm 大の局所再発巣を認めたが,急速に増大したため切除不能と判断した。全身化学療法を施行するも抗腫瘍効果を得られず,2回目の手術から6 か月で死亡した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1742-1744 (2017);
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乳頭部癌の肝転移再発に対する肝切除例の治療成績を検討しその適応につき考察した。当科での初発乳頭部癌切除42例,およびそのうちで肝転移再発に対して肝切除を施行した4 例を検討の対象とした。初発乳頭部癌切除42 例中の22 例に再発を認めた。そのうち肝転移再発は11 例(50%)で,内訳は単発4 例(36%),多発7 例(64%)であった。肝転移再発に対して肝切除を行った4 例(36%)はいずれも肝以外の再発なく,単発4 例中3 例(75%),多発7 例中1 例(14%)であった。乳頭部癌肝転移切除4 例の予後は,単発再発切除の3 例は1 例が肝転移の再発はなく肝切除後2 年8か月肺・骨転移で癌死し,2 例はそれぞれ肝転移再発後8年8か月,4 年9 か月無再発生存中である。多発再発切除1 例は早期に肝転移再発を来し,10か月で癌死した。乳頭部癌の肝転移再発に対し肝切除が適応できる症例は,肝転移再発のなかで限定的であった。乳頭部癌の単発肝転移再発は比較的予後良好で,肝切除の適応となることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1745-1747 (2017);
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退形成性膵管癌・紡錘形細胞型は非常にまれな疾患で,極めて予後不良である。症例は50 歳,男性。心窩部痛を主訴に近医受診し,US・CT にて膵体尾部に腫瘤を認め当院紹介となった。CT にて膵体尾部に33 mm大の嚢胞成分を伴う不整な造影不良域を認めた。ERCP では膵体部で膵管の途絶を認めた。膵液細胞診で悪性所見なく,嚢胞を伴う病変のためEUSFNAは施行しなかった。以上より,嚢胞変性を伴う膵腫瘍,仮性膵嚢胞を伴う腫瘍形成性膵炎などを疑い,膵体尾部切除を施行した。病理組織学的検査では,腫瘍の中心部は著明に壊死し,辺縁部で類円形〜紡錘形で異型を伴う細胞が特定の構造を示すことなく増殖しており,免疫染色の結果を含め退形成性膵管癌・紡錘形細胞型と診断された。術後補助化学療法としてS-1を投与し,15 か月経過し無再発生存している。退形成性膵管癌・紡錘形細胞型は予後不良ながら長期生存の報告もあり,可能であればR0 切除術が勧められる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1748-1750 (2017);
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症例は77 歳,男性。C型肝炎加療中に肝S4 に4.0 cm 大の腫瘤を指摘された。CT検査で内部不均一な低吸収を呈す腫瘤を認め,早期相で不均一に濃染された。MRI検査では肝S6,S8 にも小結節を認めた。1 か月後,再度CT 検査を施行したところ,肝S4 の腫瘤は7.0 cm大にまで増大していた。以上より,肝細胞癌と診断し,肝拡大内側区域切除・肝S6 部分切除術を施行した。病理組織学的診断は,肝細胞癌と肝原発神経内分泌癌の混在癌であった。術後1 か月で残肝多発再発し,術後3 か月で癌死した。肝細胞癌と肝原発神経内分泌癌の混在癌に関しては後者のほうが悪性度が高く,再発巣は肝原発神経内分泌癌成分が多いと報告されており,予後は極めて不良である。混在癌に関して標準治療は定まっておらず,集学的治療戦略の構築が必要と考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1751-1753 (2017);
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FOLFIRINOX 療法は現在,治癒切除不能な膵癌に対する化学療法として有用性が期待されている。2014 年10 月〜2017 年4 月までに18 例の切除不能・再発膵癌に対してFOLFIRINOX 療法を施行した。投与方法はオキサリプラチン85mg/m / / 2で120 分,続いてロイコボリン200 mg/m2で120 分,イリノテカンを150 mg/m2で90 分かけて投与,5-FU の急速静注は施行せず2,400 mg/m2で46 時間かけて持続静注するmFOLFIRINOX療法とした。年齢中央値は66.5(39〜75)歳,performance status 0が15例,1が3例。腫瘍の局在は膵頭部10例,膵体尾部が8例で,Stage Ⅲ 2例,Ⅳが16例であった。Grade 3 以上の有害事象は12 例にみられ,好中球減少が8 例と最も多かった。Grade 5 の有害事象は2 例で,胆管ステント留置症例における重症胆管炎と摘脾後症例における重症肺炎であった。治療効果はPR 2 例,SD 12 例,PD が4 例で,奏効率11.1%,病勢コントロール率は77.8%であった。切除不能・再発膵癌に対してFOLFIRINOX 療法は有効な治療と考えられるが,重篤な有害事象も多く,慎重に適応を決定する必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1754-1756 (2017);
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症例は56 歳,男性。難治性の痔瘻にて近医より紹介。肛門周囲膿瘍がコントロール不良のため入院後にショック状態となり,緊急で人工肛門造設およびデブリードマンを施行した。切除検体より痔瘻癌と診断した。画像診断にて左側肛門挙筋・梨状筋・内閉鎖筋に浸潤を認めた。放射線化学療法を施行後も内閉鎖筋との境界不明瞭のため化学療法(Bev+mFOLFOX6)を追加し,腹腔鏡下直腸切断術を施行した。病理結果はtub1,ypT3(A),ypN0,M0,ypStageⅡ,放射線化学療法の効果はGrade 1b であった。初診時より5 年以上経過した現在も無再発生存中である。切除断端の確保のための術前治療は有効な可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1757-1759 (2017);
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SRC 発現の亢進した癌は遠隔転移や薬剤耐性と関連があり,治療抵抗性とされている。今回,次世代シークエンサーによる415 の癌関連遺伝子パネルを使用した後方視的な解析により,SRC 増幅を認めた2 例を報告する。症例1 は62 歳,男性。両葉多発肝転移を伴うRAS野生型cStage ⅣのS 状結腸癌に対して,S 状結腸切除を施行した。切除不能多発肝転移に対して,化学療法を行った。症例2 は73 歳,男性。肝外側区域に転移を伴うRAS 野生型cStage Ⅳの下行結腸癌に対して,左半結腸切除および外側区域切除を施行した。その後,肝再発に対して開腹ラジオ波焼灼術および化学療法を行った。SRC 発現の亢進した大腸癌に対して,チロシンキナーゼ阻害薬による分子標的治療が有効であるという報告がある。包括的癌ゲノム検査により,新たな治療提案ができる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1760-1762 (2017);
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症例は75 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚し受診した。乳癌を疑い超音波下針生検を施行,浸潤性乳管癌または癌肉腫の診断となった。生検直後から左乳房の発赤,腫脹が出現し,生検から約3 週間後,発熱,嘔気を訴え救急外来を受診した。採血上炎症反応は著明に上昇しており,MRIでは急速に増大した左乳房腫瘤を認めた。穿刺による膿瘍形成を疑い抗生剤加療を開始したが治療に反応せず,腫瘍の急速増大壊死と考え緊急手術を行った。術後も全身状態が悪く化学療法は導入できず放射線療法を開始したが,術後2 か月のCT で多発肝・肺転移を認め,初診から約3 か月後に死亡した。病理診断はpleomorphic carcinomaであった。また,病勢の進行に伴い白血球数が増減することからG-CSF産生乳腺腫瘍を疑い免疫学的検討を行ったところ,G-CSF陽性腫瘍細胞を認めG-CSF産生乳癌と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1763-1765 (2017);
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放射線化学療法後の会陰部膿瘍を伴う膣癌の再発に対して,骨盤内臓全摘術を施行した1 例を経験したので報告する。症例は66 歳,女性。2014年11 月に不正性器出血を主訴に当院紹介となった。各種検査の結果,膣癌,cT2N0M0,cStageⅡにて放射線化学療法(外照射45 Gy/25 Fr,CDDP 40 mg/m2,5 コース)が開始された。しかし2015 年10 月にはMRIで原発巣再燃(効果判定PD)し,2015年11 月からpaclitaxel+nedaplatinが開始され,2016 年4 月まで8 コース施行した。途中2016 年3 月のMRI で効果判定はPR〜CR であった。2016 年5 月に下血増量の訴えがあり,下部消化管内視鏡検査を施行されGrade 3 の放射線性直腸炎の診断となり,アルゴンプラズマ凝固法(argon plasma coagulation: APC)凝固を施行した。その後2016 年6 月のMRI で効果判定はCR となったが,2016 年7 月には直腸膣瘻が形成され,2016 年8 月に横行結腸ストーマを増設した。しかし会陰部の壊死組織の拡大は止まらず尿道を巻き込むまでとなり,癌の再発も疑って2016 年12 月に骨盤内臓全摘術が施行された。切除標本の病理結果は膣癌の再発であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1766-1768 (2017);
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症例は46 歳,男性。右側腹部を蹴られ,右下腹部痛を主訴に2014 年5 月に当院受診となった。回盲部後腹膜膿瘍の診断で膿瘍ドレナージを行った。精査で,盲腸および上行結腸に2 型進行癌を認め,腫瘍穿破による膿瘍形成と診断した。炎症改善後に術前診断し,盲腸癌,上行結腸癌,cT4bcN0M0,cStage Ⅲb に対して2014 年6 月,手術を行った。腫瘍が後腹膜に強固に浸潤,癒着しており切除困難と判断し,回腸-横行結腸バイパス術を行った。RAS野生型で,2014 年7 月よりFOLFOX+panitumumab(Pmab)療法を6 コース施行後,腫瘍が縮小したため二度目の手術を行った。後腹膜への浸潤が強固であり切除は断念し,5-FU+LV+Pmab 療法を47 回施行した。その間に腫瘍の増大は認めず,遠隔転移を来すことがなかったため,2016 年8 月に三度目の手術を行い,回盲部切除術(D3)を施行し得た。術後病理検査ではtub2,pT4b,pN1,R0 であった。補助化学療法としてcapecitabineを投与中であり,術後10 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1769-1771 (2017);
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直腸癌局所再発に対する根治手術は考慮すべき治療法であるが,その治療成績は十分といえない。当院で施行した直腸癌局所再発手術40 症例を検討した。再発部位は吻合部16 例,骨盤内リンパ節10 例,骨盤内再発10 例,骨盤底・会陰部5 例であった。術中合併症は5%,術後合併症45%に認め,Clavien-Dindo 分類Ⅲa以上は2.5%であった。R0切除率60.0%で,RM 陽性を35.0%に認めた。術後再々発を60.0%に認め,3 年全生存率は68.7%,3 年無再発生存率は20.3%であった。直腸癌局所再発に対する手術は比較的安全に施行されていたが,R1 切除率や術後再々発率が高かった。R0 切除が有意に全生存率を向上しており,R0切除率を高める治療戦略が必要であると思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1772-1774 (2017);
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近年,局所進行直腸癌に対して術前化学療法を行った報告が散見される。当院では腫瘍径5 cm 以上かつ半周性以上の局所進行直腸癌に対してoxaliplatinベースの術前化学療法を行い,腫瘍の縮小を得てから腹腔鏡手術による切除を行っており,その治療成績を報告する。対象は2012 年5 月〜2016年4 月に当院で局所進行直腸癌に対して,術前化学療法後に腹腔鏡手術を行った25 例である。術前化学療法中に腫瘍が増大し,R0切除不能となった症例は認めなかった。また,化学療法中に遠隔転移が出現した症例も認めなかった。術後合併症3 例(12%)に認め,縫合不全は1 例(4%)に認めたが,保存的治療が可能であった。術前化学療法と手術との集学的治療は,放射線治療施設を有しない医療機関などを中心に,局所進行直腸癌に対する治療戦略の選択肢の一つとなり得ると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1775-1777 (2017);
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同時性肝転移を伴うa-fetoprotein(AFP)産生胃癌に対して胃切除と肝切除を一期的に施行し,術後 S-1/CDDP(SP)療法を施行することで術後5 年間無再発生存が得られた1 例を経験した。症例は39 歳,女性。上部消化管内視鏡検査にて胃体部大弯に長径40 mmの2 型腫瘍が指摘された。生検でGroup 5,肝様腺癌が疑われ,免疫組織染色を施行したところAFP陽性であった。また,血液検査で AFP 71,000 ng/mL と異常高値を示し AFP 産生胃癌と診断した。腹部造影 CT 検査では肝S2に50 mmの単発性肝転移を認めた。幽門側胃切除,D2郭清,肝外側区域切除術を施行した。胃原発腫瘍,肝転移腫瘍ともにほぼすべての腫瘍細胞が免疫組織染色にてAFP陽性であり,最終診断は肝様腺癌,pT4a,pN2,pM1(HEP),pStageⅣ,R0 であった。術後補助化学療法としてSP 療法を3 コース施行し,AFP値は基準値以下に低下した。S-1 単剤へ変更したところAFP 値は漸増に転じ,術後 1 年目に116 ng/mL まで再上昇した。CT 検査,腹部超音波(US)検査では明らかな再発所見を認めなかったがSP 療法を再開し,術後3 年目まで計16 コース実施した。現在術後5年が経過し,AFP値は正常値を維持し,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1778-1780 (2017);
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Stage Ⅳ膵癌(膵臓癌取扱い規約第6 版)に対し外科的手術後に化学療法と放射線療法を行い,比較的長期無再発生存を得ている2 例を経験した。外科的切除に放射線療法を加えて局所制御を行い,補助化学療法で遠隔転移を抑えることで予後が改善する可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1781-1783 (2017);
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多発リンパ節・肝・腹膜転移を伴う切除不能胃癌に対して,化学療法により寛解が得られ3 年6か月間生存中の1 例を経験した。症例は73 歳,男性。上腹部痛・嘔気・下痢を主訴に近医を受診した。精査の結果,進行胃癌,cT4a(SE),N3M1(H1,P1),StageⅣと診断した。一次治療としてSP療法[S-1(120 mg,3 weeks 内服)+シスプラチン(90 mg,day 8 ⅳ)]を投与した。腎機能低下・Grade 3 の血小板低下を認めたが,13 コース施行した(治療期間1年6か月)。胃原発巣は完全寛解(CR)となり,CT 画像上,肝転移は縮小を認め部分奏効と評価した。腎機能低下,血小板低下からSOX 療法[S-1(80mg,2 weeks 内服)+オキサリプラチン(100 mg,3 weeks)]を二次治療とし19 コース施行した(治療期間1年)。その後,S-1(80 mg,4 weeks内服)を単独で6 か月間継続した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1784-1786 (2017);
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超高齢者の進行食道癌に対し,癌根治をめざした局所療法を行い長期無再発生存が得られた1 例を経験したので報告する。症例は86 歳,男性。咽頭の違和感,食事のつかえ感を認め,当院に紹介受診となった。精査にて食道癌,T3N2M0,Stage Ⅲ(食道癌取扱い規約第10 版)と診断し,術前化学療法としてcisplatin+5-FU 療法を2 コース行い,原発巣・転移リンパ節ともに縮小効果を認め,腹臥位胸腔鏡下による食道癌根治手術を施行した。病理結果は食道癌,pT3-Ad,INFb,ly2,v1,IM0,pPM0,pDM0,pRM1,pN3,pStage Ⅲであった。剥離面断端陽性であったため,追加治療として化学放射線療法を施行した。その後化学療法を約1 年継続し,食道癌手術より4 年無再発生存中である。根治をめざした集学的治療を行うことで,超高齢者でも非高齢者と同等の治療成績が期待できる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1787-1789 (2017);
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悪性Triton腫瘍(MTT)は悪性神経鞘腫瘍(MPNST)に横紋筋成分が混在する非常にまれな腫瘍である。今回診断に難渋した腹腔内MTTを経験したので,文献的考察を加えて報告する。症例は60 歳,女性。腹痛,嘔吐を主訴に受診し,腹部CT 検査にて腹部腫瘤を3 か所指摘され外科に紹介となった。手術では2 か所の腫瘤は一塊にして切除したが,残りの腫瘤は上腸間膜動脈(SMA),上腸間膜静脈(SMV)に浸潤しており切除困難であった。病理組織学検査にてS-100蛋白,desmin 陽性でありMTT と診断された。術後化学療法を施行されたが腹腔内多発再発を来し,術後7 か月で永眠された。MTT は非常に予後の悪い腫瘍であり,補助療法などに確立された治療法はなく腫瘍の完全切除が基本となる。術前診断が可能であれば完全切除を基本とした治療戦略が必要であると思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1790-1792 (2017);
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膵頭十二指腸切除術後に肝切除を行った比較的まれな症例で,胆管空腸吻合部狭窄が原因と考えられる難治性胆汁瘻を経験したので報告する。症例は65 歳,女性。他院で同時性の膵癌・右乳癌に対して膵頭十二指腸切除術および右胸筋温存乳房切除術,腋窩リンパ節郭清を施行された。術後補助化学療法およびfollow up を当科で引き継いだが,術後18 か月後のCT 検査で肝S8 に2.5 cm 大のLDA が出現し肝転移と考えられた。肝転移の原発疾患が不明で,生検も難しい場所であったことから肝部分切除術を施行した。病理診断で乳癌肝転移と判明したが,術後33 病日に右横隔膜下膿瘍の診断で当科に再入院となった。膿瘍ドレナージで胆汁瘻と判明し,原因は胆管空腸吻合部の狭窄と考えられた。PTCD を施行し速やかに胆汁瘻は消失したが,胆道鏡では吻合部狭窄を解除することが困難であったため,小腸内視鏡で空腸側から肝管にドレナージチューブを留置し,内瘻化した。肝切除後16 か月で残肝再発を認め,現在まで化学療法を継続中である。膵頭十二指腸切除術後に肝切除を行う場合,胆汁瘻の発生に注意が必要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1793-1795 (2017);
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症例は66 歳,男性。胸部絞扼感を主訴に受診した。内視鏡検査で胸部下部食道に2 型腫瘍を認め,扁平上皮癌の診断であった。CT 検査で胃噴門直下から小弯にリンパ節腫大を認め,PET-CT検査で同部位にFDG 集積を認めた。cT3N2M0,Stage Ⅲの診断にて,術前化学療法(DCF 療法)を2 コース施行した。主病変は縮小とFDG 集積の低下を認めたが,リンパ節と指摘していた腫瘤はサイズの変化なく,左副腎に接するように存在し,FDG 集積は軽度上昇していた。同腫瘤に対しMRI 検査を施行しT2 強調画像にて高信号,MIBG シンチグラフィ検査にて高集積を認めた。さらに内分泌学的検査で尿中アドレナリンの異常高値を認め,以上から褐色細胞腫と診断した。DCF 療法3 コースを施行した後に,a-blockerを導入しながら先行して左副腎摘出術を施行した。血圧の安定を確認し,異時切除で食道癌手術を行い安全に施行可能であった。術後経過良好で内分泌学的検査も正常化し,術後7 か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1796-1798 (2017);
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根治切除可能進行食道癌に対する治療としては,術前化学療法(NAC)の有用性が示されており,著効例も散見される。今回われわれは,2000年3 月〜2017年1 月にかけて当科においてNAC後に根治手術を施行した食道扁平上皮癌208 例からpathological complete response(pCR)が得られた6 例を抽出し,検討を行った。4 例に5-fluorouracil,cisplatin(FP)療法,2 例にdocetaxel,cisplatin,5-fluorouracil(DCF)療法が施行されており,それぞれのpCR 率は 2.4(4/168)%,6.7(2/30)%であった。NAC 前において Stage Ⅱ/Ⅲ: 2/4 例であり,NAC 治療効果判定は stable disease(SD)/partial re-sponse(PR): 1/5例であった。NAC終了より平均26.2(16〜44)日後に定型的手術を行い,重篤な術後合併症なく術後平均49.2(20〜132)日で退院とした。現在,全6 例とも無再発生存中である。切除可能進行食道癌におけるNAC,特にDCF 療法は根治手術との組み合わせにより良好な予後を期待できると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1799-1801 (2017);
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背景と目的:前向き登録したStage Ⅳ胃癌症例のうち化学療法が奏効したため,治癒をめざし外科的切除を試みた症例の治療成績を解析した。対象と方法: 2011 年10 月〜2015年12 月までにcStageⅣと診断した初発胃癌症例は42 例である。そのうち,化学療法を導入し胃切除術を施行し得た6 例を対象に治療内容と予後を検討した。結果:初回治療時に切除不能と診断された理由は,大動脈周囲リンパ節転移などの遠隔リンパ節への転移3 例,腹膜転移2 例,肝転移1 例であった。R0 切除が達成できた症例は2 例にとどまった。生存期間中央値は,R0切除(2 例)で567.5日,R2切除では474 日であった。結語:切除不能進行胃癌症例に長期生存をもたらすには,化学療法奏効後に外科切除を考慮する症例の選択を重視すべきと考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1802-1804 (2017);
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症例は63 歳,男性。発熱を主訴に当院を受診された。右下腹部に軽度圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった。血液検査で炎症反応上昇を認め,腹部CT 検査で回腸末端部近傍に浮腫性壁肥厚と周囲腸間膜脂肪織濃度の上昇を認めた。抗生剤による保存的加療を開始した。下部消化管内視鏡検査でバウヒン弁から約30 cm の小腸に限局した発赤調粘膜および膿汁付着を認めた。偶発的にS 状結腸に30 mm 程度の隆起性病変を認めた。生検結果ではtub1であり,他検査を総合して早期S状結腸癌,cT1b,cN0,M0,cStage Ⅰと診断した。追加問診で以前より頻繁に魚を食しており,魚骨穿通による炎症性肉芽腫の可能性が考えられた。腹腔鏡下S 状結腸切除術(D2)および小腸部分切除術を施行した。摘出標本では,魚骨による小腸穿通,炎症性肉芽腫およびS 状結腸癌,pT1b,pN0,M0,pStageⅠと診断された。術後経過は良好で,術後1 年現在無再発で外来経過観察中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1805-1807 (2017);
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症例は71 歳,男性。心窩部痛を主訴に前医を受診された。上部消化管内視鏡検査で胃体中部小弯に進行胃癌を指摘され,加療目的に当科へ紹介となった。造影CT 検査で膵浸潤が疑われ,臨床病期,cT4b(Panc),N2,M0,cStage ⅢC と診断し,術前化学療法としてdocetaxel+oxaliplatin+S-1(DOS)療法を3 コース施行した。効果判定はSDであった。術中非治癒因子を認めなければ膵脾合併切除の方針とした。術中非治癒因子は認めず,腹腔鏡下胃全摘術,D2 郭清,膵体尾部切除,肝部分切除,十二指腸部分切除,横行結腸部分切除を施行した。術後重篤な有害事象を認めず,術後18 日目にリハビリ目的に転院となった。病理結果は pT4b(膵,十二指腸),N2(5/46),H0,P0,CY0,M0,pStage ⅢC,R0 の結果であった。術後48 日目より術後補助化学療法としてS-1を開始した。複数臓器浸潤を伴う進行胃癌に対し,術前化学療法後に根治的腹腔鏡下胃全摘術,膵脾合併切除を安全に施行した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1808-1810 (2017);
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術後再建腸管(AGA)を有する患者に対するballoon-assisted enteroscopy(BAE)を用いたERCP について多数の報告がみられるが,BAE は専用の内視鏡システムや周辺機器が必要なことや施術に長時間を要することにより普及していない。このためAGA を有する患者が閉塞性黄疸(OJ)を発症した際,一般病院の緊急時にはPTBD が施行される場合が多いと思われる。今回,胃癌術後再発による閉塞性黄疸に対し,汎用内視鏡を用いたERCP により減黄が可能であった1 例を経験したので報告する。症例は74 歳,女性。進行胃癌術後再発に対する一次化学療法施行中の2016 年7 月に再発病変の進行による閉塞性黄疸を発症し入院した。幽門側胃切除Roux-en-Y 再建術後であったが汎用内視鏡を用いたAGA に対するERCP を施行し,ステント挿入で減黄処置を行うことができた。その後二次化学療法を施行し,2 コース終了時点でPR の判定を得た。
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癌と化学療法 44巻12号, 1811-1813 (2017);
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症例は76 歳,女性。直腸癌に対し腹腔鏡下低位前方切除術を施行した(por2,pT4a,pN2,sM0,ly1,vl,pStageⅢa)。術後1 年のフォローCT にて骨盤内リンパ節・腹膜播種再発,左水腎症との診断となり,CapeOX+bevacizumab(Bmab)を施行した。特に有害事象は認めず3 コース,6 コース終了後のCT にてPR であった。6 コース終了後より膀胱炎にて休薬を要した。3 か月の休薬後7 コース目にアナフィラキシーショックによる心肺停止を来すも蘇生した。心肺停止から42 日後よりCape+Bmab療法にて化学療法を再開した。2 コース,5 コース終了後のCT にてCR が2回続き抗癌剤を中止した。化学療法開始13 か月後の現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1814-1816 (2017);
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症例は76 歳,女性。2014年1 月血便を主訴に近医を受診した。下部内視鏡検査で直腸に25 mm大の1 型腫瘍を認め生検の結果,中分化型腺癌と診断され当院に紹介受診となった。腹部造影CT 検査では明らかなリンパ節転移,遠隔転移を認めなかった。2014 年2 月腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。病理組織学的検査所見は,invasive micropapillary carcinoma(IMPC)成分を伴う乳頭腺癌であった。脈管侵襲および主リンパ節を含む多数のリンパ節に転移を認め,最終診断はpT1bN3M0,fStage Ⅲb の診断であった。術後化学療法を行ったが術後20 か月で腫瘍随伴血栓塞栓症を合併し死亡した。IMPC は原発の部位にかかわらず,リンパ管侵襲やリンパ節転移が著明で予後不良な組織型であると報告されている。大腸癌での報告例は比較的まれであり,さらなる症例の蓄積が必要と考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1817-1819 (2017);
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今回われわれは,腹会陰式直腸切断術を施行した直腸肛門部悪性黒色腫の2 例を経験した。症例1 は70 歳,女性。1年前から血便を認め,内痔核症にて経過観察されていたが症状が続くため当科に紹介となった。直腸に2 型腫瘍を認め,生検で悪性黒色腫と診断された。CT 検査では肝転移,両側肺転移を認めたが,出血コントロールを目的に腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した。術後は肝転移,肺転移が増悪し術後3 か月で原病死となった。症例2 は43 歳,男性。血便を主訴に受診し直腸に黒色調腫瘍を認め,生検で悪性黒色腫と診断された。CT 検査では右側方リンパ節の腫大を認め,右側方郭清を伴う腹会陰式直腸切断術を施行した。再発を認め術後1 年抗癌剤治療中である。直腸肛門部悪性黒色腫に対する標準術式は確立されておらず,controversialである。直腸肛門部悪性黒色腫に対して腹会陰式直腸切断術を施行した2 例を経験したので,若干の文献的考察を踏まえ報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1820-1822 (2017);
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症例は78 歳,女性。HCV陽性肝硬変に発生した肝細胞癌(T2,N0,M0,StageⅡ)に対して肝S7 部分切除術を施行した。肝内再発に対してラジオ波焼灼術(RFA),肝動脈塞栓術(TAE)にて加療を行った。術後2年6か月のCT検査にて肝S5 に10 mm大の肝細胞癌を認めた他,右腎にも短期間で増大する腎静脈内腫瘍栓を伴う腫瘍を認めた。肝細胞癌に関してはTAE を施行予定とし,急速に進行する右腎腫瘍に対しては右腎摘除術および腫瘍栓摘出術を先行して行った。病理組織診断では異形細胞が増生し一部胆汁産生を伴っており,既往の肝細胞癌に類似した像であり肝細胞癌腎転移と診断された。静脈内腫瘍栓は,肺動脈塞栓症を来す可能性があり可及的早期に摘除することが望ましい。本症例は肝細胞癌の腎転移が静脈内腫瘍栓を有しており,非常にまれなoncologic emergency case と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1823-1825 (2017);
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患者は88 歳,女性。発熱を主訴に前医を受診され精査したところ,造影CT で左肝の腫瘤性病変ならびに末梢胆管の拡張を認め,肝内胆管癌の診断となった。高齢のため当初,胆道ドレナージと緩和医療の提案がなされたが,外科治療の適応についてセカンドオピニオンを希望され当院へ紹介となった。本来,左肝に発生した肝内胆管癌の根治的外科手術は,通常小弯のリンパ節を含む広範な郭清と片葉以上の肝切除,胆道再建を要することが多いが,今回の症例は超高齢者でもあり,切除域の縮小とリンパ節郭清を省略することで安全に手術を施行し得た。超高齢者における肝切除などの高侵襲手術では術前合併症に応じた適切な術式,術後管理が必要となると考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1826-1828 (2017);
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2014年12月に本邦で遠隔転移を伴う膵癌に対してgemcitabine(GEM)+nab-paclitaxel(nab-PTX)併用療法が認可された。今回,膵癌術後多発肺転移・傍大動脈リンパ節転移再発に対してGEM+nab-PTX併用療法を施行した1 例を経験したので報告する。症例は64 歳,男性。61 歳時に当院で膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行した。術後にS-1 での補助化学療法が施行されていたが,術後2 年目に多発肺転移を認め加療目的に再度当科紹介となった。一次治療としてGEM+nab-PTX 併用療法を行う方針とした。比較的忍容性がよく,長くSD の状態が続いたが,18 コース終了後に癌性胸膜炎の増悪のためGEM+nab-PTX併用療法を終了し,化学療法開始から19 か月の後に死亡した。有害事象としてGrade 3の好中球減少を認めたが,いずれも早期に軽快し,長期間使用することが可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1829-1831 (2017);
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症例は82 歳,男性。嘔吐を主訴に受診し,腹部造影CT で近位空腸に造影効果を伴う腫瘤および口側腸管の拡張を認め,小腸腫瘍による腸閉塞の診断で精査を行った。血液検査では CA19-9 1,634 U/mL と上昇し,小腸内視鏡検査では空腸に中心陥凹を伴う隆起性病変を認め,生検でadenocarcinoma の診断となった。PET-CT で小腸腫瘍にFDG の集積亢進を認める他には有意な集積を認めなかったことから,原発性小腸癌の診断で腹腔鏡下に手術を施行した。腹腔内を観察すると,腸間膜・腹壁に腹膜播種結節を多数認め,Treitz靭帯から40 cm の空腸に30 mm大の腫瘤を認めた。同部位で小腸は全周性に狭窄し,小腸部分切除を施行した。腫瘤は肉眼的には35×25 mm大で粘膜下腫瘍の形態をとり,一部粘膜面に露出していた。病理組織学的には粘膜下主体の高分化型腺癌で,Langerhans 島や腺房細胞などの正常膵組織を背景に腫瘍細胞の増殖を認め,異所性膵癌と診断した。異所性膵癌は比較的まれな疾患であり,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1832-1834 (2017);
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乳腺腫瘤に対する質的診断は,針生検(core needle biopsy:CNB)が第一選択とされるが,腫瘤を形成せずまばらな病変や線維化の強い硬化性病変では,組織診断を得るために必要な組織量を十分に採取できないこともある。そのため吸引式乳腺組織生検による豊富な生検材料が求められるが,当施設ではEnCor ENSPIRE(R)システムを導入している。2015 年1 月〜2016年5 月の間にEnCor ENSPIRE(R)システムで生検施行した24 例を対象とした。悪性と診断された病変は12 例(50.0%)であった。うち浸潤性乳管癌(IDC)7 例(29.2%),非浸潤性乳管癌(DCIS)が5 例(20.8%)であった。悪性との診断に至らなかった12例のうち,異形乳管過形成(ADH)3 例(12.5%),乳管内乳頭腫(IDP)が3 例(12.5%)であった。また,6 例(25.0%)では確定診断目的にて腫瘍摘出がなされていた。術後出血などの偶発症は認められなかった。EnCor ENSPIRE(R)システムを用いた乳腺組織生検は,検体採取量が多く優れた診断能をもち,正確な治療前診断への寄与が期待できる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1835-1837 (2017);
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症例は72 歳,男性。左乳頭直下の腫瘤を主訴に当科を紹介受診した。触診では左E 領域に1.5 cm の腫瘤を認め,血性乳頭分泌物も認めた。マンモグラフィで境界明瞭な腫瘤陰影,乳腺エコーで境界明瞭で内部に充実性成分を伴う1.5 cmの低エコー腫瘤を認めた。CT 検査で遠隔転移は認めず。針生検で診断がつかず切除生検の方針となった。切除標本では非浸潤性乳管癌で断端陽性であったので,乳房切除術を施行した。センチネルリンパ節生検は省略した。最終診断は非浸潤性乳管癌,TisN0M0,stage 0 であった。術後補助療法は行わず,現在術後1 年で再発なく経過している。男性乳癌は全乳癌の1%といわれ,さらに非浸潤性乳管癌はその2〜18%ととてもまれである。男性非浸潤性乳管癌に関する報告は少ないため,エビデンスに乏しく治療方針に迷うことがある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1838-1840 (2017);
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症例は50 歳台,女性。左乳癌にてBp+Ax施行,病理学的にpT1c,pN0,StageⅠ,ly(+),ER(+),PgR(+)であった。50 Gy照射後tamoxifen内服を行った。術後4 年目左Rotterリンパ節転移が出現し,anastrozoleに変更したが9か月後肝転移が認められた。AC followed by paclitaxel(PTX)で加療し,病理検索でHER2(3+)と判明したためtrastuzumab(T)を併用したところ,1 年後Rotterリンパ節肝転移は消失しT+capecitabine(Cape)に変更した。術後7 年6か月で腹部大動脈周囲リンパ節再発が出現し,letrozole にて加療し,その後再増悪ごとにlapatinib+Cape,FEC100,T+PTX,eribulin,S-1,pertuzumab+T+docetaxel,everolimus+exemestaneに変更した。15 年5 か月で肝転移が再出現し,bevacizumab+PTX で加療し有効で,術後16 年1 か月現在PS 1 で外来通院中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1841-1843 (2017);
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症例は70 歳,男性。2016年2 月他院で後腹膜腫瘤を指摘され,精査加療目的に当院内科に紹介受診となった。血液検査では特異的な所見は乏しく,腹部造影CT では十二指腸水平脚の後方に38 mm 大の早期濃染と石灰化を伴う腫瘤を認めた。腹部単純MRI ではT1 にて低信号,T2にて軽度高信号を呈し,DWI で拡散低下を認め,FDG/PET-CTで同病変にのみSUVmax 3.0 の不均一な集積を認めた。超音波内視鏡で下十二指腸角近傍の右腎門部から膵下縁に38×28 mm の一部石灰化を伴う血流豊富なechoic lesionを認め,同部位にEUS-FNA下穿刺吸引細胞診を施行するも特異的な所見がなく,診断には至らなかった。以上より,鑑別として傍神経節腫などがあげられたが診断には至らず,増大傾向を認めることから診断,治療目的に外科的切除の方針とし,腹腔鏡下後腹膜腫瘍摘出術を施行した。病理組織学検査でCastleman's disease(hyaline vascular type)と診断した。術前診断に難渋し切除により確定診断に至った1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1844-1846 (2017);
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食道入口部に及ぶ頸部食道癌を化学放射線療法(CRT)と術式の工夫によって,quality of life(QOL)と根治性を両立し得た喉頭温存手術の1 例を報告する。症例は58 歳,男性。腫瘍は食道入口部から胸骨切痕の高さまで及ぶT3頸部食道癌で,左右101 リンパ節に転移を認めた。まずCRT(5-FU+CDDP+30 Gy)で腫瘍を縮小させ,切離断端の腫瘍陰性を確保した。手術においては切離断端距離を最大限確保するため,両側輪状咽頭筋,下咽頭収縮筋下端を切離し,輪状軟骨上縁の高さでの食道を切離した。また,術後の誤嚥対策として,術後に瘢痕拘縮して喉頭挙上運動に拮抗作用を呈する舌骨下筋群を胸骨付着部で切離した。再建は遊離空腸で行った。病理結果は扁平上皮癌,ypT2,INF b,ly0,v0,PM0(10 mm),ypN0,ypStage ⅡA であった。術後4 日目に抜管し,右反回神経麻痺を認めたが誤嚥はなく経過し,嚥下リハビリに時間を要したものの経口摂取は良好で,術後71 日目に退院した。その後は社会復帰し,術後5 年間再発なく経過した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1847-1849 (2017);
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結腸左半切除術は下行結腸癌の標準術式であるが,横行結腸左側からS 状結腸までの広範囲切除となる。さらに近年腹腔鏡手術が普及しているが,視野が限られ術中に適切な切除範囲を決定するのは困難である。CT colonography(CTC)と血管3Dを合成したsimulation CTC(S-CTC)は,原発巣の位置,支配血管を明確に同定できる。様々な部位・進行度の下行結腸癌に対してS-CTC で適切な切離大腸・血管処理をsimulationし,simulationどおり腹腔鏡手術を行えた下行結腸癌3症例を提示する。症例1:脾曲,cT1bN0M0,StageⅠ。S-CTCにて支配動脈は副中結腸動脈(A-MCA),下腸間膜静脈(IMV)より分岐する伴走静脈も同定。中結腸動脈左枝や左結腸動脈(LCA)は10 cm 以上離れていた。郭清はD2相当とし,静脈は分岐部根部,A-MCAは同レベルの切離をsimulationした。症例2: 下行結腸中央,cT3N0M0,StageⅡ。S-CTCにて支配動脈のA-MCAとLCAを同定。切離腸管は支配動脈より5 cm とり,S 状結腸温存のため下腸間膜動脈(IMA)を温存したD3郭清をsimulationした。症例3: S 状結腸近傍,cT3N0M0,StageⅡ。S-CTCにて支配動脈は第一S 状結腸動脈(S1),LCAは欠損,A-MCA は10 cm 以上離れ,IMV は欠損していた。S 状結腸温存のためIMA 温存D3 郭清とし,S1 選択的切除をsimulationした。3 症例ともsimulationどおりの術式を腹腔鏡で行えた。S-CTCは,腹腔鏡下下行結腸癌手術における最適な腸管・血流温存に有用であると思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1850-1852 (2017);
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感染を伴う乳房潰瘍を契機に発見された乳癌局所再発の1 例を経験したので報告する。症例は61 歳,女性。43 歳時,左乳癌に対して乳房部分切除および腋窩リンパ節郭清を施行した。術後残存乳房に対してtotal 50 Gy の放射線照射を追加した。その後は再発なく経過した。術後18 年目に突然の左乳房の発赤および滲出液の流出を認め受診した。診察時,左乳房の創部近傍に潰瘍を形成し,悪臭を伴う滲出液が流出していた。USでは約5 cm の低エコー域が広がり,針生検を施行したが悪性所見は認めなかった。PET-CT で,乳房潰瘍へのFDG の弱い集積,対側腋窩リンパ節へのFDG の強い集積を認めた。同リンパ節に針生検を施行したところ,浸潤性乳管癌と診断された。根治目的に左乳房切除および右腋窩リンパ節郭清を施行した。術後病理結果は壊死を伴う乳房内再発および対側腋窩リンパ節転移の診断であった。術後補助化学療法を行い,現在無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1853-1855 (2017);
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S 状結腸癌術後に子宮転移を来した症例を経験したので報告する。症例は73 歳,女性。2年前にS 状結腸癌に対しS状結腸切除術を施行した。術後経過観察中にCEAの上昇と,腹部CT 検査で子宮体部に直腸に浸潤する腫瘍を認めた。大腸内視鏡検査では直腸内に隆起性病変を認め,生検で腺癌と診断された。S状結腸癌の子宮転移と診断し,開腹下に子宮全摘術・直腸低位前方切除術を行った。病理組織学的にはCK7陰性,CK20 陽性であり,S 状結腸癌の子宮転移と診断した。婦人科臓器以外からの子宮転移は比較的まれで予後不良である。しかし大腸癌の子宮転移は外科的治療により長期予後が得られたという報告もあり,積極的な外科的治療が望ましい。
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癌と化学療法 44巻12号, 1856-1858 (2017);
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症例1 は63 歳,女性。2008 年直腸癌に対し,Miles手術,両側側方リンパ節郭清を施行した。術後補助化学療法後,経過観察されていたが,2012 年両側肺転移が出現し,両肺部分切除術を施行した。2013 年両側肺転移,縦隔リンパ節転移が出現し,化学療法を開始した。2016年肺転移巣の増大を認めたため,左右肺転移に対し経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)を施行した。症例2 は81 歳,男性。2012年閉塞性直腸癌,多発肺肝転移に対しHartmann手術を施行し,術後化学療法した後に肝部分切除術,左肺部分切除術を施行した。その後化学療法を施行するも2013 年右肺転移を認め,右肺部分切除術を施行した。2014 年再び右肺転移を認め,化学療法を開始した。2016 年転移巣の増大を認めたため,右肺上葉の転移巣に対しRFAを施行したが,その後に脳転移が出現しガンマナイフを施行した。今後RFAを検討している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1859-1861 (2017);
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症例は67 歳,男性。黄疸を主訴に来院した。腹部造影CT にて膵鉤部から膵頭部に広がり上腸間膜動脈(SMA)に220°接触する境界不明瞭な腫瘍を認めた。明らかなリンパ節転移,遠隔転移を認めず,切除不能局所進行(UR-LA)膵癌と診断した。ゲムシタビン塩酸塩+ナブパクリタキセル併用療法(GEM+nab-PTX)による化学療法を行ったところ,腫瘍縮小が得られ,SMA周囲との接触は150°に縮小した。治癒切除可能と判断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術・SMA周囲神経叢郭清を施行し,R0であった。術後補助化学療法を施行し1年後の現在,再発の所見は認めていない。UR-LA 膵癌に対するGEM+nab-PTX療法は切除可能性を期待した場合の選択肢として有望である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1862-1864 (2017);
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仙骨S2 前面に至る進展を伴う局所高度進行直腸癌に対し,化学療法後に腹腔鏡下低位前方切除術を施行した症例を経験した。症例は60 代,男性。前医にて直腸癌を指摘され,当科精査にて高度の後方進展を伴う直腸癌と肝S8 に単発性肝転移を認めた。後方進展部のcircumferential resection margin(CRM)確保が困難と判断し,原発巣の狭窄に対する横行結腸人工肛門造設後,化学療法XELOX+BVを4 コース施行した。効果判定上,腫瘍縮小効果は軽微であったものの原発巣切除の方針とした。CRM確保のため剥離層が後方となることが想定され,仙骨静脈叢からの出血に対し入念に準備した上で,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。術中所見ではtotal mesorectal excision(TME)の層を越えた外側の層で切離を進め,仙骨静脈叢からの出血に対し圧迫,バイポーラ凝固,ソフト凝固で止血した。出血量は200 mL で,病理組織学的には剥離面断端陰性(pRM0)が得られた。仙骨前面への進展を伴う直腸癌手術においては仙骨静脈叢からの出血が予測され,入念な止血準備が重要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1865-1867 (2017);
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十二指腸球部前壁の神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)に対し,腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopicendoscopic cooperative surgery: LECS)を行い,良好に経過した1 例を経験したので報告する。症例は78 歳,女性。上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部前壁に8 mm 大の隆起性病変を認め,生検でNET G1と診断した。超音波内視鏡検査で粘膜下層浸潤と診断され,LECSを施行した。手術は3 portで開始した内視鏡下に腫瘍の周囲をマーキング施行した。一部全層性に穿孔させ,そこから腹腔鏡下に超音波凝固切開装置を用いて切離し,全層切除を施行した。切除標本を摘出し,腹腔鏡下に切開部を短軸方向に結節縫合閉鎖して手術を終了した。術後経過は良好で第8 病日に退院した。切除断端は陰性であった。十二指腸球部前壁のNET に対するLECS は適切なsurgical margin と最小限な腸管切除を可能とする有用で安全な方法であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1868-1870 (2017);
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症例は70 歳,女性。腹部CT にて腹壁浸潤を伴う閉塞性横行結腸癌と診断された。入院時の心電図にて広範にST低下を認めたため,冠動脈造影検査を施行した。冠動脈三枝に狭窄が指摘され狭心症と診断され,周術期合併症ハイリスク症例と判断した。治療は閉塞性大腸癌に対して大腸ステントを留置後,先に冠動脈バイパス術を施行した。心機能改善後,拡大結腸右半切除術+腹壁合併切除を施行した。術後合併症は認めず,病理所見上根治切除が可能であった。耐術能不良な閉塞性大腸癌に対し,大腸ステント留置により緊急手術を回避(bridge to surgery: BTS)することで,計画的な併存疾患の治療が可能となり,安全性かつ根治性に優れた結腸癌手術が可能であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1871-1873 (2017);
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症例は 60 歳台,男性。PSA 高値による前立腺癌精査中に Hb 7.1 g/dL の貧血を指摘された。内視鏡検査で胃角部小弯に2 型病変,S状結腸,直腸S 状部,下部直腸にそれぞれ2 型病変を認めた。生検で胃病変はHER2陽性低分化型腺癌,大腸の3 病変は中分化型腺癌であった。造影CT 検査で右肺S6 に結節影を認め,生検結果は腺癌であり,免疫染色でTTF-1 抗原が陽性であることから,原発性肺癌と診断した。前立腺生検で腺癌を認めた。臨床分類は胃癌Stage ⅢB,大腸癌Stage Ⅲa,肺癌StageⅠA,前立腺癌StageⅠの同時性4 重複癌であった。胃癌を予後規定因子と考え,胃癌に準じ術前化学療法を行った。化学療法後に胃原発巣,腫大リンパ節の縮小を認め,胃癌,大腸癌に対し幽門側胃切除術,超低位前方切除術を行った。経過良好で術後22 日目に退院した。前立腺癌に対してホルモン療法,肺癌に対して放射線治療を行い,現在無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1874-1876 (2017);
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症例は67 歳,男性。近医で便潜血陽性を指摘され,当科紹介となった。精査の結果,直腸癌(RS),50 mm,type 2,sig,SS,N1,M1(左第10 肋骨),Stage Ⅳと診断した。原発巣を切除後に化学療法・放射線治療を施行した。それらの治療後も,既知の転移性骨腫瘍以外に転移を認めなかったため転移性骨腫瘍の切除を施行した。病理組織学的評価で直腸癌による転移性骨腫瘍と診断された。術後は化学療法を行わずに経過観察とし,最終手術後1 年9か月無再発生存中である。今回われわれは,直腸癌による転移性骨腫瘍に対して切除術を施行したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1877-1879 (2017);
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症例は56 歳,男性。C 型肝炎の精査時のUS で肝S8 に19 mm 大の腫瘍を指摘された。CT では肝右葉前区域に15mm大の低吸収結節を認め,造影CT で早期濃染,平衡相でwashoutを認めた。MRIでも同部位にT2WIで高信号の腫瘍を認め,dynamicで早期濃染とwashout を認め,肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)に典型的な画像所見であった。肝機能は正常であった。腫瘍マーカーはAFP,PIVKA-Ⅱは正常値であり,CA19-9,CEAが高値であった。他の原発巣を疑う所見は認めなかったため,術前診断はHCC(cT1N0M0,cStageⅠ)とし,部分切除術を行った。病理組織診断では高分化な腫瘍細胞がductal plate に類似した不規則な形態を示す胆管腔を形成しており,嚢状に拡張した腺管内に濃縮胆汁を認める胆管微小過誤腫に類似した像も認めた。一部では異型が増して肝内胆管癌(intrahepatic cholangiocarcinoma: ICC)と呼ぶに相当する部位があった。以上の所見からductal plate malformation(DPM)様構造を示すICCと診断された。DPM様構造を示すICC はまれな特殊型として報告されており,この症例に対し文献的考察を踏まえ報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1880-1882 (2017);
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症例は66 歳,男性。検診で主膵管拡張を指摘され精査でCA19-9上昇と胆管狭窄も認めたが,確定診断が得られず当院紹介となった。悪性疾患が否定できないため切除目的に開腹し,術中所見で膵頭部に低エコー域と空腸間膜に8 mm 大の腺癌の播種結節を認め,腹膜転移を伴う膵頭部癌と診断した。胆管空腸吻合術を施行後,adjuvantsurgery を企図し,化学療法gemcitabine+nab-paclitaxel を5 コース施行した。治療効果は画像上response evaluation criteria in solid tumor(RECIST)でstable disease(SD)だが,腫瘍マーカーは正常化した。初回手術から6 か月後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。組織学的には膵頭部に癌細胞の残存を少量認め,膵癌取扱い規約第7 版に基づきypT3,ypN1,pM1(PER),Stage Ⅳ,R0切除,組織学的治療効果Grade 3 の診断であった。術後8 か月,無再発生存中である。adjuvant surgeryは,腹膜転移を伴う膵癌に対しても治療選択肢の一つとなる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1883-1885 (2017);
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症例は初回手術時 72 歳,男性。膵頭部癌[TNM 分類(JPS 7 th/UICC 7 th): pT3,pN1b,M0,pStage ⅡB/pT3,pN1,M0,pStageⅡB]に対して,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が施行された。術後補助化学療法として6 か月間のGEM療法後,2 か月間のS-1 療法を施行した後経過観察したが,術後2年2か月のCT検査にて,左肺に2 個の1 cm 前後の転移を認めたため,再びGEM 療法を施行した。転移巣の大きさはその後非常に緩徐に増大し,術後3 年4 か月には右肺にも転移巣が出現し,術後4 年4か月には胸水が出現した。3 か月間のS-1 併用療法の後,S-1 単独療法に切り替えて術後6 年まで施行した。その後GEM 療法を再開した。術後7 年6 か月には右肺の転移巣が増大したため,右肺の転移巣の切除術が行われた。肺切除術4 か月後よりGEM 療法を再開したが,腫瘍マーカーの上昇を認め,肺切除術8 か月後よりGEM+nab-paclitaxel療法に切り替えたが,肺切除術1 年4か月後,肺転移判明後6 年7か月後,初回膵臓手術8 年10 か月後に癌死した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1886-1888 (2017);
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症例は69 歳,女性。乳癌術後の定期検査CT で膵尾部腫瘍を指摘され,精査で傍大動脈リンパ節転移を伴う膵尾部癌と診断された。セカンドオピニオン目的で前医を受診,3 年前から肺門部,傍大動脈リンパ節腫大がある点,ぶどう膜炎の既往を有する点からリンパ節腫大はサルコイドーシスが原因と判断した。手術加療目的で当院へ紹介された。2014 年3 月に膵体尾部切除術を施行した。No. 16 リンパ節サンプリングは癌陰性であったが,膵周囲リンパ節は転移陽性であった。術後9か月目のCT で腹腔内リンパ節再発を指摘され,EUS-FNA による確定診断を勧めたが,本人が検査を拒否した。その後定期フォロー中であるが,術後39 か月を経過した現在も生存中である。悪性腫瘍に併存したサルコイドーシスではリンパ節転移診断が難しく,治療方針決定の判断に苦慮することも少なくない。文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1889-1891 (2017);
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症例:患者は79 歳,男性。糖尿病で外来通院中貧血の進行を認めた。上部消化管内視鏡検査を施行したところ胃角後壁に1 型病変(por1)を認めたため,手術目的で入院となった。胃癌の診断で幽門側胃切除術,D2郭清,Billroth Ⅰ再建を施行した。術中所見で肝S1 に1.5 cm大の転移を認めたが同時切除は施行しなかった。病理組織学的検査: chromograninA,CD56 陽性のためneuroendocrine carcinoma(NEC)の診断となり,TNM分類でf-T2N1M0H1,Stage Ⅳであった。胃癌に準じて術後1 か月よりSP 療法を開始したが,その後NEC の最終診断となりetoposide /cisplatin に変更した。計 5 コース施行後にCR となった。現在,化学療法終了後9 か月経過したが無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1892-1894 (2017);
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症例は83 歳,女性。胸のつかえ感を主訴に当院を受診した。上部消化管内視鏡検査にて食道胃接合部にほぼ全周性の腫瘤を認めた。CT 上,下行大動脈への直接浸潤が疑われ,リンパ節転移も著明であった。cT4,cN2,cM0,Stage Ⅲcと診断し,術前化学療法を行う方針とした。高齢者で高度心機能低下,心不全の既往もあることから,輸液負荷の少ないS-1+oxaliplatin(SOX)療法を2 コース施行した。施行後のCT 検査にて,原発巣,リンパ節の著明な縮小を認め,開腹術を施行した。腹膜播種はみられず,洗浄細胞診も陰性であったためD2郭清を伴う胃全摘術を施行した。現在,術後3 年が経過し無再発生存中である。近年,進行胃癌に対する外科的切除後の治療成績向上をめざし,様々な術前化学療法が試みられている。S-1+CDDP(SP)療法は主要な用法の一つであるが,高齢者,心機能低下症例,腹水・胸水貯留症例では多量の輸液負荷が困難であることが多い。その点,SOX 療法は輸液負荷の問題を克服でき高齢で高度低心機能の症例に対しても,より安全に施行できる療法と思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1895-1897 (2017);
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症例は67 歳,男性。健診にて胃体中部2 型胃癌を指摘され,当科紹介となり,幽門側胃切除,Roux-en-Y再建を施行した。病理結果はpT2N2H0P0CY0M0,pStageⅡB であり,術後補助療法としてS-1 投与を開始した。約10 か月投与後より胸部CT にて両側肺野の微細な粒状影,小葉間隔壁の不整肥厚を認め,癌性リンパ管症と判断し,CDDP+CPT-11療法を開始した。3 コース投与後胸部CT にて癌性リンパ管症の消失を認めたが,腹壁直下に腹膜播種再発を認めた。6 コース投与終了後,腹膜播種再発も消失した。CEAは再発の以前は正常範囲内であったが,癌性リンパ管症発症時より上昇を認め,最大で24.6 ng/mLまで上昇した。6 コース投与終了後CEAは正常範囲内まで低下を認めた。以後再発なく,術後 6 年間生存中である。本症例ではCT 上明らかな縦隔,肺門リンパ節腫大は認めず,肺野の末梢性に粒状影を認め,血行性もしくは順行性に肺内へ転移した癌性リンパ管症と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1898-1900 (2017);
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症例は63 歳,男性。2001年9 月に胃粘膜下腫瘍に対して,腹腔鏡補助下胃局所切除術を施行した。病理組織学的検査所見では腫瘍は11 cm 大で,強拡大10 視野中10 個の核分裂を認め,Fletcher分類において高リスクのGISTと診断した。外来にて経過観察としていたが,2004 年11 月に肝S5,S6 の転移と多発腹膜転移が出現した。イマチニブを開始し,腹膜転移は消失し,肝転移も8 年間増悪なく経過していたが,2012 年12 月に肝S6 病変の増大を認めた。手術治療は希望しなかったため,2013 年 1 月からスニチニブを 50 mg/day(4 週投薬 2 週休薬)の投与で開始したところ,RECIST で SD,Choi criteriaでPR が得られた。イマチニブ奏効病変も増悪なく,スニチニブ開始後4 年経過した現在,無増悪で生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1901-1903 (2017);
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症例は75 歳,男性。上部消化管内視鏡検査で胃体中部のsubmucosal tumor(SMT)様嚢胞性病変およびびまん性胃粘膜下異所腺を指摘された。1 年間の経過観察後に胃体下部にⅡc 型の胃癌の併発を認めたため,腹腔鏡下胃全摘術を行った。病理組織診断では,胃粘膜下異所腺および嚢胞が多発する壁深達度mの胃癌であった。びまん性胃粘膜下異所腺は高率に胃癌を合併するため,厳重な経過観察と適切な治療が必要である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1904-1906 (2017);
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症例は77 歳,女性。胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除,D2郭清,Billroth Ⅰ法再建術後,pStage ⅢAであったため術後補助化学療法としてS-1 を1 年間内服していたが,術後約2 年経過後に食思不振,嘔吐を主訴に入院となった。精査の結果,吻合部近傍の腹膜再発による狭窄の診断で,腹腔鏡下残胃空腸吻合術(BillrothⅡ法,Braun吻合)を施行した。臍部にカメラポートを,左右の肋弓下に5 mm ポート,右側腹部に12 mmポートをそれぞれ挿入し,前回手術の影響と考えられた癒着を解除し,リニアステープラーにより残胃空腸吻合およびBraun吻合を行った。術後経過は良好で術翌日より経口摂取を再開,術後6 日目に退院し,速やかに化学療法を再開した。本術式は切除困難な吻合部狭窄を伴う再発胃癌に対して有効であり,術後早期の化学療法再開を視野に入れた低侵襲な方法であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1907-1909 (2017);
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症例は65 歳,男性。嚥下困難を認め,近医で上部消化管内視鏡検査を施行した。噴門部を中心に大型3 型腫瘍を認め,食道胃接合部癌と診断された。多数の腹膜播種を認めた。通過障害に対して食道ステントを留置した上で,化学療法を開始した。初回ステント留置から10 か月後,ステント口側に良性狭窄を認めたため,再度ステント留置術を施行した。同様の狭窄を再度認め,再留置から8 か月後に再々ステント留置術を施行した。新規分子標的薬などによって胃癌に対する化学療法が奏効し長期予後を得られる症例が増えている。ステント留置は低侵襲な処置で経口摂取を可能にすることができる一方で,狭窄,逸脱などの有害事象を引き起こすこともある。今回,複数回のステント留置を行った 1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1910-1912 (2017);
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症例は64 歳,男性。2017年1月,夕食後より嘔吐,腹痛を認め当院を救急受診し,単純腹部CT 検査にて小腸イレウスを認め入院となった。保存的治療を施行するも症状の改善はなく,同日に緊急手術となった。手術所見はトライツ靭帯から約90 cmの位置で腫瘤病変を認め,体外へ小腸を誘導,腫瘍を切除摘出後,機械的端々吻合にて腸管再建し手術を終了した。摘出標本切開にて小腸憩室と腸管内に繊維性の食塊が充満している所見を認め,術後の問診にて食 は蜜柑と判明した。経過は良好で術後6 日目に退院となった。小腸憩室食 性イレウスはまれな疾患であり,放置すると小腸穿孔に至る可能性があるため早期に手術を考慮しなければならない。手術選択においては,腸管拡張が軽度なイレウス早期であれば低侵襲治療である腹腔鏡手術は有効な選択肢であると考えられる。今回われわれは,腹腔鏡補助下で切除し得た蜜柑による小腸憩室食性イレウスのまれな1 例を経験したのでここに報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1913-1915 (2017);
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症例は30 歳,男性。息切れを主訴に受診し,精査にて多発肝転移と狭窄を伴う上行結腸癌を認めた。腹腔鏡下右半結腸切除術後にCapeOX 療法を10 コース施行し,肝転移巣の著明な縮小を得た。化学療法中に出現した局所再発が疑われる部位と残存肝転移巣を切除したが,いずれも癌細胞を認めずpathological complete responseであった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1916-1918 (2017);
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症例は66 歳,男性。気尿を主訴に来院された。膀胱浸潤を伴うS 状結腸癌の診断となり2015 年5 月S状結腸切除術,膀胱部分切除術を施行した。病理組織検査にてpT4b,Si(bladder),pN(−),cM0,fStageⅡであった。亜腸閉塞であったこと,リンパ管侵襲を認めたことから,high-risk StageⅡの補助化学療法としてCapeOXを施行した。副作用は,末梢神経障害がGrade 2 で出現したため,3 サイクル目からは80%へ減量とした。7 サイクル投薬以降,咳嗽・呼吸苦の症状が出現したため,胸部CT 検査を行ったところ薬剤性間質性肺炎は認めなかったが,右横隔膜の挙上,右肺中葉に板状無気肺化による帯状変化を認めた。呼吸症状は軽度なものであったことからGrade 1 であり,また肺野は問題がないと判断し8 サイクル目の投薬を行った。capecitabine の内服を終了して約2 週以降から症状は消失した。また,横隔膜は再び元の高さに戻った。添付文書上では頻度不明で,L-OHP,capecitabineのそれぞれ「呼吸困難」と記載があるが,横隔神経麻痺として生じているかは不明である。しかし他の器質的病変も認めず,化学療法中に出現していたことからその可能性は否定できない。現在は術後2 年になるが縦隔内の再発巣出現や呼吸苦の再燃なく過ごしている。一般的に横隔神経麻痺は特に具体的な副作用として判断していくものではないが,呼吸苦の際はCT で肺野条件をみるだけではなく横隔膜の位置をみることで,拾い上げにつながっていくと思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1919-1921 (2017);
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症例は65 歳,男性。30 代よりB 型慢性肝炎と指摘されインターフェロン加療歴もあるが,自己中断後肝疾患は放置していた。腹痛を自覚後の意識消失で救急搬送となった。来院時ショック状態で緊急造影CT を施行し,肝外側区の肝細胞癌(HCC)破裂による出血性ショックと診断した。緊急TAE施行し,左肝動脈塞栓により止血に成功した。腫瘍は肝外側区に限局しており根治切除可能と判断,状態回復を待ちTAE10 日後に肝外側区域切除術,胆嚢摘出術を施行した。病理結果は中分化HCC であり大部分が壊死,一部viable であった。経過は良好で術後11 日目に自宅退院となった。術後69 日目昼食後に突然腹痛が出現し,救急搬送された。来院時ショック状態で腹痛の持続があり,緊急造影CT を施行した。播種再発が多発しており,左横隔膜下径15 cm と最大の播種巣周囲に高吸収腹水を認め,HCC 播種再発巣破裂と判断した。再度緊急TAEを施行し,左胃動脈と左下横隔動脈を塞栓し止血に成功した。以後ソラフェニブの内服により腫瘍増大緩徐となり,再TAE後8か月生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1922-1924 (2017);
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症例は60 歳,男性。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)のフォローアップ中に急激に増大する肝S3 の腫瘤像を認めた。腹部造影CT,EOB-MRI を施行したが,悪性腫瘍を否定できなかったため手術の方針となり,肝外側区域切除術を施行した。切除標本では肝S3 に境界明瞭な充実性腫瘤を認めた。病理組織所見では悪性細胞を認めず,IgG4 陽性細胞を多数認めたためIgG4 関連肝炎症性偽腫瘍と診断した。IgG4 関連疾患は全身の諸臓器に発生し,自己免疫性膵炎や硬化性胆管炎との関連が知られているが,肝臓のIgG4 関連炎症性偽腫瘍はまれな疾患である。今回,増大傾向を示し,悪性腫瘍と鑑別困難であったIgG4関連肝炎症性偽腫瘍の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1925-1927 (2017);
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症例は70 歳,男性。近医より胆石症,胆嚢癌の疑いで,当科に紹介受診となった。造影CT,EOB-MRI,PET-CTにて精査し,胆嚢癌は完全に否定できない所見であったが,患者本人の強い希望で経過観察の方針となった。その後の画像所見では胆嚢の壁肥厚は改善傾向を認めていたが,9 か月後の造影CT にて胆嚢壁肥厚の増悪と周囲組織や横行結腸への炎症の波及を認めたため,手術の方針とした。術中迅速組織診にて悪性所見を認めなかったため,開腹胆嚢摘出術,右半結腸切除術を施行した。病理検査で黄色肉芽腫性胆嚢炎と診断した。黄色肉芽腫性胆嚢炎は発症からの時期により様々な画像所見を呈し,経時的に変化するため進行胆嚢癌との鑑別が困難な場合がある。今回,経時的な画像変化を観察でき,進行胆嚢癌との鑑別が困難であった黄色肉芽腫性胆嚢炎の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1928-1929 (2017);
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症例は65 歳,男性。既往に55 歳時,右腎癌に対し根治的腎摘出術を施行した。腎細胞癌フォローアップ中のCT で膵尾部に多血性腫瘤を指摘された。非機能性膵神経内分泌腫瘍または腎癌の膵転移が鑑別疾患として考えられた。膵体尾部切除術,脾摘出術,リンパ節郭清術を施行した。病理組織診断で腎淡明細胞癌の膵転移と診断された。現在術後約15 か月を経過し,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1930-1932 (2017);
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症例は46 歳,女性。右乳房腫瘤を自覚し近医を受診,精査加療目的に当院紹介となった。超音波検査にて右乳腺CD領域に2.8×2.7×2.2 cm大の低エコー腫瘤が確認され,同部位の針生検にて浸潤性乳管癌(ER 陰性,PgR 陰性,HER2 強陽性,Ki-67 高発現)であった。CT 検索において患側腋窩にリンパ節転移が認められたために,治療前診断は右乳癌,cT2N2M0,Stage ⅢA,HER2-enriched type とした。術前化学療法(NAC)としてFEC followed by weekly paclitaxel+trastuzumabを施行したところ,治療開始後に顔面・前胸部・前腕に紅斑や皮疹を認めた。腫瘍随伴性皮膚筋炎が疑われたが確定診断には至らず,化学療法に伴う皮膚炎を考えた。しかしながら,NAC後に乳房切除を施行したところ皮膚症状が著明に改善したために腫瘍随伴性皮膚筋炎であった可能性も考慮される。乳癌治療中の皮膚症状に対しては,化学療法の副作用とともに腫瘍随伴性皮膚筋炎を念頭に精査を進める必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 1933-1935 (2017);
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症例は64 歳,女性。左頸部皮膚結節を自覚し近医を受診,皮膚生検で腺癌と診断され,原発不明癌皮膚転移の精査加療目的に当院紹介となった。画像検査で多発骨転移・多発リンパ節転移とともに左乳腺腫瘤と膀胱腫瘤を認め,両側水腎症も伴っていた。左乳腺腫瘤の針生検では浸潤性乳管癌,膀胱鏡下の膀胱腫瘍生検では腺癌の診断であった。乳腺腫瘍と膀胱腫瘍の病理組織像が類似し,腺癌,ホルモン受容体陽性であることなどを考慮し,左乳癌膀胱転移,cT2N2M1(OSS,LYM,SKI,BLA),stage Ⅳ(Luminal-HER2 subtype)との診断に至った。腎瘻を造設し水腎症を解除した上で,化学療法(trastuzumab,pertuzumab,docetaxel)を開始した。しかし全身状態の増悪を来し,治療開始後10 日後に死亡した。乳癌からの膀胱転移はまれであり,発見時に高度な進行を伴う場合が考えられる。正確な治療前診断を進め,迅速に全身療法を開始することが望まれる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1936-1938 (2017);
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一般に,口唇癌の治療では外科的切除が選択されるが,手術に伴う審美性と摂食や構音などの機能障害が問題となる。下唇はおおむね幅径1/3 までの欠損であれば一期的縫縮が可能であるが,それ以上では皮弁などによる再建が必要となる。今回われわれは,下唇疣贅癌の切除後に舌弁を用いて再建し,審美性と機能性の両者の回復を得た1 例を経験したので報告する。患者は91歳,女性。下唇の腫瘤を主訴に近医より当科を紹介受診した。生検にて疣贅癌の診断を得たため,切除を予定した。切除後の欠損幅径は下唇の1/2 を超えたため,有茎舌弁により再建した。3 週間後,切り離し術を行った。現在,術後1 年を経過し再発を認めず,良好に経過している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1939-1942 (2017);
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To analyze the role of cytoreductive surgery(CRS)plus perioperative chemotherapy on the survival of colorectal cancer(CRC)patients with metachronous peritoneal metastasis(PM). A comprehensive treatment consisting of neoadjuvant chemotherapy plus CRS was performed in 291 CRC patients. Among the 291, 142 and 149 patients had synchronous and metachronous PM, respectively. The results showed no survival difference between the 2 groups. Median survival time(MST)of patients with metachronous PM with complete cytoreduction(CCR-0), small bowel(SB)-PCIC2, PCIC14 and differentiated histologic type ranged from 3.1 to 4.1 years. Five-year survival rates of metachronous group of the CCR-0, SB-PCIC2, PCI C14 and differentiated histologic type ranged from 25.8 to 38.9%. However, the 5-year survival rates of the incomplete cytoreduction(CCR-1), SB-PCIB3, PCIB15 and poorly differentiated type were significantly lower than those of the CCR-0, SB-PCIC2, PCIC14 and differentiated histologic type. Postoperative Grade 3, and Grade 4 morbidity were experienced in 11(5.8%)and 16(10.7%)in metachronous group. Mortalities of metachronous group were 1.3%(2/149). The comprehensive treatment can be performed safely and improves the survival of CRC patients with metachronous PM. After NAC, patients with SB-PCIC2, PCIC14 and differentiated type of histology are candidates for CRS, and CCR-0 resection combined with HIPEC is recommended.
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癌と化学療法 44巻12号, 1943-1945 (2017);
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cStage Ⅱ/Ⅲ食道癌に対する治療戦略は術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)+根治手術が標準であるが,深い潰瘍症例などでは腫瘍穿通が生じて治療戦略を変更せざるを得ない状況に陥ることも経験される。今回,進行食道癌症例に対してNAC を施行し,腫瘍壊死のため大動脈穿通のリスクを来したため緊急手術を施行して危険を回避し得た1症例を報告する。症例は62 歳,女性。胸部つまり感と吐血を認め,内視鏡検査にて胸部食道癌(扁平上皮癌,cT4N2M0)と診断された。docetaxel+CDDP+5-FU(DCF)によるNACを施行したが2 コース終了後に腫瘍が大動脈へ穿通寸前であることが判明し,緊急手術にて右開胸食道亜全摘,胸骨後経路細径胃管再建を行った。本症例は腫瘍がBotallo 靭帯へ浸潤して根治切除はできなかったが,胸腔内穿通による縦隔炎や大動脈穿通などの危機的状態を回避することができた。進行癌の集学的治療では,常にoncologic emergencyに対する緊急対応を想定し,発症時には迅速に対処することが肝要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1946-1948 (2017);
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はじめに:閉塞性大腸癌に対する術前処置(bridge to surgery: BTS)としての大腸ステント挿入は,緊急手術に比較して入院期間の短縮,合併症率や人工肛門造設率の低下などが期待できると広く報告されている。当院でのBTS 目的の大腸ステント症例を検討した。対象: 2015 年4 月〜2017 年4 月までに当院で施行された大腸閉塞スコア(colorectal obstructionscoring system: CROSS)0 または1 の閉塞性大腸癌に対するBTS 目的の大腸ステント挿入症例16 例。結果:平均年齢68.2(45〜94)歳,男女比8:8,全例で,技術的成功14 例(87%),臨床的成功10 例で経ステント的に全大腸内視鏡が可能であった。9 例が一時退院し,手術までの期間は中央値18(2〜43)日であった。14 例に対して腹腔鏡下手術が行われ,術後合併症として1 例で縫合不全を認めた。ストーマ造設は縫合不全の1 例にのみ行われた。結語:適応を慎重に判断し,安全に大腸ステントを挿入することにより,良好な結果を得ることができた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1949-1951 (2017);
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症例は60 歳台,男性。Siewert 分類Ⅱ型食道胃接合部癌,Stage ⅢCに対して根治切除・術後補助化学療法を施行した。術後21 か月時に日常生活動作(ADL)の著しい低下と汎血球減少,播種性血管内凝固(DIC),多発リンパ節・骨転移を認め,再発および骨髄癌腫症と診断した。十分な説明・同意の上で,輸血とともに化学療法を導入し,汎血球減少・DICは軽快,ADLも改善した。しかし,2 コース目終了後に輸血にも反応しない汎血球減少・DICが再燃し,ADLも再度低下した。化学療法の再導入は不可能で術後24 か月で死亡した。骨髄癌腫症は胃癌によることがほとんどで,食道胃接合部癌での報告は非常にまれである。その治療法は確立されておらず,無治療例の予後は1 か月程度と不良である。自験例では化学療法とDIC治療により汎血球減少・DIC軽快,ADL改善,予後延長が得られた。本症例では全身状態が悪く化学療法導入に難渋するが,DIC治療を併施した化学療法により予後改善も期待できる。
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癌と化学療法 44巻12号, 1952-1954 (2017);
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症例は60 歳,男性。腹部膨満感を主訴に前医を受診され,切除不能な肝転移を伴う上行結腸癌と診断された。tegafur-gimeracil-oteracil,oxaliplatin(SOX)+panitumumabを7 コース施行後のCT 検査にて著明な腫瘍の縮小を認めたため,根治切除の目的で当院に紹介受診となった。肝臓肝左3 区+前区域切除術を予定したが残肝容量不足のため一期的な切除は不可能と判断し,正常肝切除量が少ない肝前区域切除術および門脈左枝結紮術を並施することで残肝容積の肥大を計り,二期的な切除を行う方針とした。まず,肝前区域切除術+胆嚢切除術+門脈左枝結紮術を先行し,術後第10 病日の造影CT 検査にて残肝容積が標準肝容積の78.7%であったため,術後第20 病日に肝左葉切除+拡大右半結腸切除術を施行した。肝不全の兆候なく二度目の術後第9 病日に自宅退院となった。術後化学療法は施行していないが,術後15 か月経過した現在も無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1955-1957 (2017);
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症例は30 歳,女性。検診にて便潜血陽性を認め,近医を受診した。大腸内視鏡検査にて直腸右側に壁外圧排様病変を認め,腹部造影CT および骨盤MRIにて尾骨前面,直腸右側に最大径5 cm の嚢胞性病変を認めた。子宮,卵巣とは連続性がなかった。傍直腸腫瘍として,経仙骨的アプローチで腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は病理組織検査にて類表皮嚢胞と診断された。術後5 日で退院となった。腫瘍の位置,進展方向,大きさを考慮し,適切なアプローチ方法を選択することで腫瘍の完全切除を行うことができた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1958-1960 (2017);
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症例は80 歳台,男性。血友病B患者。健康診断にて便潜血陽性を指摘され当院を受診した。下部消化管内視鏡検査においてAV 18 cm に隆起性病変を認めた。血液検査において凝固第Ⅸ因子12%,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)41.2 秒と凝固能異常を認めたため,ガイドラインに従い第Ⅸ因子の補充を行った。第Ⅸ因子75%と凝固能の改善を認め,腹腔鏡下低位前方切除術D3郭清を施行した。手術時間4 時間5 分,出血量は35 mL であった。術後9 日間第Ⅸ因子の投与を行い出血などの合併症なく良好に経過し,術後11 日目に退院となった。病理結果よりpT1bpN1cM0,pStage Ⅲa であったため術後補助化学療法(カペシタビン/オキサリプラチン: CapeOX)を行う方針となった。術後約 40 日後より CapeOX(80% dose)にて開始した。化学療法中は第Ⅸ因子の測定を定期的に行い凝固因子の低下がみられないこと,また明らかな出血傾向がみられないことを確認した。CapeOXを計8 コース行いCT にて明らかな再発なく良好に経過している。
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癌と化学療法 44巻12号, 1961-1963 (2017);
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正中弓状靭帯が肥厚して腹腔動脈起始部の圧迫狭窄を呈する疾患は,腹腔動脈起始部圧迫症候群(celiac artery compression syndrome: CACS)として知られ,時に臨床的な問題となる場合がある。今回,多発肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)症例に対して血管造影検査でCACSと診断し,TACE 導入のため正中弓状靭帯切離を行ったが十分な腹腔動脈根部の血流再開を得られなかったため,右大伏在静脈をグラフトとした脾動脈左総腸骨動脈バイパス術を追加した。術後1 か月目,左総腸骨動脈,グラフト,脾動脈を介して固有肝動脈からの経肝動脈的治療を施行し,HCC 治療を継続中である。CACS に対して正中弓状靭帯切離を施行しても腹腔動脈根部の血流再開が得られない症例に対しては,脾動脈左総腸骨動脈バイパス術も選択肢の一つと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1964-1966 (2017);
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症例は81 歳,女性。食後の心窩部不快感を認め,精査目的に当院紹介となった。腹部CT 検査では膵体部に径10 mm大の乏血性腫瘤を認めた。MRI検査では,同腫瘤はT1強調画像にて低信号,拡散強調画像にて高信号を示した。FDG/PETCT検査では同腫瘤にFDG の軽度異常集積(SUVmax 2.4)を認めた。超音波内視鏡検査においても上記の腫瘤は確認され,生検にて腺癌と診断された。以上より通常型膵癌の術前診断の下,手術の方針となり,腹腔鏡下膵体尾部切除術,脾臓合併切除術を施行した。切除標本の病理組織検査では,腫瘍の部位に一致して索状・胞巣状増殖を示す異型細胞を認めた。免疫組織化学染色では同腫瘍はBCL-10陽性で,電子顕微鏡所見にて腫瘍内に酵素原顆粒の存在も確認されたことから,膵腺房細胞癌と診断された。術後1年経過した現在,明らかな再発の徴候なく生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1967-1969 (2017);
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症例は69 歳,男性。残胃癌に対し,残胃部分切除,横行結腸間膜合併切除を施行した。病理診断は,M,B-50-AJ,type 3,tub2>tub1,pT4b(mesentery of transverse colon),pN0,CY0 であった。術後6 か月のCT 検査で,左側腹部に腫瘍を認め腹膜再発と診断した。化学療法は,TS-1(100 mg/body)+cisplatin(70 mg/body)1 コース,TS-1(100 mg/body)4 コース(2週投与 1 週休薬),docetaxel(80 mg/body)8 コース施行した。腫瘍縮小,内部壊死を認めた。術後19 か月で腹膜腫瘍摘出を行い,浸潤していた横行結腸,空腸を部分切除した。病理診断では残胃癌の転移であった。その後,初回手術から61 か月,再発手術から42 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1970-1972 (2017);
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閉塞性大腸癌は腸閉塞症状を伴うため,全身状態によっては緊急で治療を要する病態である。近年,高齢化に伴い高齢者の閉塞性大腸癌は増加傾向にある。また,高齢化に伴い誤嚥性肺炎などの高度呼吸機能障害を合併する患者も増加しており,手術終了後に全身麻酔後の抜管困難になることがあると報告されている。今回われわれは,閉塞性大腸癌のため嘔吐し,重症誤嚥性肺炎を併発したため全身麻酔が困難であった上行結腸癌に対し硬膜外併用脊椎麻酔で手術した1 例を経験した。呼吸障害を有する患者に麻酔の呼吸器合併症を回避すべく硬膜外併用脊椎麻酔にて右半結腸切除術を行うことは可能であり,麻酔法として選択肢の一つであると考える。
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癌と化学療法 44巻12号, 1973-1975 (2017);
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症例は48 歳,男性。受診2 日前より嘔気を自覚,翌日に健康診断を受診し,胸部X線検査および食道・胃・十二指腸造影検査を施行した。胸部に異常陰影を指摘されたため当院に紹介受診となった。胸部〜骨盤部CT 検査にて左肺門部に約4 cm 大の腫瘤を認め,小腸にtarget sign を認めた。小腸重積の診断となり緊急手術の方針となった。開腹にて腹腔内を観察したところ,Treitz靭帯より約20 cm,130 cm 肛門側の小腸に重積を認め,Hutchinson手技にて重積を解除し得た。口側の重積部では先進部に腫瘍を認めたが,肛門側の重積部では先進部に明らかな腫瘍性病変は認めずバリウム内服による蠕動亢進が原因と考えた。検索を進めたところ小腸に3 か所腫瘍性病変を認め,1 か所は口側腸重積の先進部となっていた。腫瘍を有する部位の小腸計3 か所を部分切除・再建し手術を終了した。病理組織検査では肺多型癌小腸転移の診断となり,現在外来で加療中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 1976-1978 (2017);
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症例は72 歳,女性。主訴は8 か月前から続く1 日7,8 回の水様性下痢,体重減少。CT 検査にて,膵尾部に55 mm 大の腫瘤を認めた。膵周囲,傍大動脈に腫大リンパ節を認めたが,肝転移は認めなかった。EUS では境界明瞭で内部不均一な腫瘤であり,EUS-FNAによる組織診にて膵神経内分泌腫瘍と診断した。傍大動脈リンパ節転移を伴うVIP産生腫瘍を疑い,膵体尾部切除および大動脈周囲のリンパ節郭清術を施行した。切除標本の免疫染色にてVIP産生腫瘍と診断した。術後速やかに下痢は軽快し,切除後11 か月現在,症状の再燃や腫瘍の再発は認めていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 1979-1981 (2017);
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当院はステレオガイド下マンモトーム生検(ST-MMT)目的で検診や他施設から紹介されるが,最終的に組織診断で良性と診断される症例も多く,ST-MMT の適応を再度検討する必要があると考えられる。今回当院で非触知石灰化病変に対してST-MMT 施行例について検討した。対象は2013 年8 月〜2016 年12 月までにST-MMT 施行した236 例247 病変(うち9 例は両側乳房,2 例は同側乳房に2 回施行)を対象とした。結果:対象年齢は24〜89(中央値46)歳であった。247 病変のうち,39病変(15.8%)が悪性と診断された。最終的に癌と診断されたMMGカテゴリー(C)別頻度は,C2 0%,C353.8%(21/39病変),C4 35.9%(14/39 病変),C5が 10.3%(4/39 病変)であった。石灰化の形状分布別の乳癌頻度は,円形・集簇46.2%(18/39 病変),淡い・集簇 5.1%(2/39 病変),多形・びまん・領域 2.6%(1/39 病変),多形・集簇 35.9%(14/39病変),多形・区域7.7%(3/39 病変),微細線状・集簇 2.6%(1/39 病変)であった。また,① 検診,② 他施設からの紹介,③ 外来フォロー中(乳癌術後,石灰化など)の患者ごとに分けて検討してみた。乳癌頻度は,① 11.4%(10/88 病変),② 20.6%(27/131病変),③ 7.1%(2/28 病変)であった。C3の乳癌頻度は,① 10.3%(4/39 病変),② 38.5%(15/39病変),③5.1%(2/39 病変)であった。今回の検討でST-MMT施行例ではC3が半数以上(192/247 病変)占めていたが,C3 で悪性と診断された頻度は10.9%(21/192病変)であった。また,他施設からの紹介例では79.4%(104/131 病変)は乳癌を認めず,104病変のなかには当院で石灰化の再評価をした結果,C2も含まれておりC2の石灰化は全例良性であり,過剰診断せぬよう注意することでST-MMT生検の適応がさらに絞り込める可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 1982-1984 (2017);
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食道癌術後縫合不全から食道気管支瘻を来し,有茎広背筋弁充填術が有効であった2 症例を報告する。症例1 は56 歳,男性。食道気管支瘻が保存的治療にて軽快するも再燃,フィブリン糊充填術も効果なく手術に至った。症例2 は60 歳,男性。食道気管支瘻が保存的治療で軽快せず,肺炎が増悪したため手術となった。2 症例ともに有茎広背筋弁充填術が有効であった。
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癌と化学療法 44巻12号, 1985-1987 (2017);
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胃癌肝転移に対して放射線療法を施行した2 例を経験した。症例1:患者は69 歳,男性。2007 年9 月に幽門側胃切除術を施行した。術後に同時性単発肝転移に対して化学療法を施行,2008年7 月に肝前区域切除術を施行した。2009 年2 月,2 か所に肝再発を認めたため化学療法を開始した。2009年12 月,2 か所に対して体幹部定位放射線療法(stereotactic body radiotherapy: SBRT)を施行した。2017 年7 月までCR 継続中である。症例2: 患者は67 歳,女性。2015 年3 月に幽門側胃切除術を施行した。2015年8 月に肝転移(S5単発)を認めた。化学療法を施行しSD継続していたが,患者希望で中止となった。2016 年7 月にSBRT を施行したが10 月より多発肝転移となり,2017年2 月に死亡した。
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癌と化学療法 44巻12号, 1988-1990 (2017);
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症例は74 歳,男性。肛門部腫瘤自覚と出血を主訴に当院外科外来を受診し,精査の結果皮膚浸潤を伴った肛門管原発の腺癌と診断された。術前放射線化学療法(放射線45 Gy/25 Fr,capecitabine 825 mg/m2)を施行し,腫瘍縮小を得た後,肛門周囲の広範囲皮膚合併切除を伴う腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術・両側側方リンパ節郭清術・腹直筋による会陰再建術を行った。術後6 日目に再建した腹直筋皮弁に壊死を認めたため,壊死組織をデブリードマンした後,両側薄筋皮弁を用いて会陰の再再建術を行った。集学的治療および会陰再建術を二度施行し,根治術を施行し得た症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1991-1993 (2017);
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胃癌再発の60〜70%は腹膜播種とされている。現在,胃癌播種再発に対する治療の中心は化学療法であり,症状や再発部位によっては姑息的なバイパス術を行うこともある。85 歳を超える超高齢者に侵襲的な治療は難しいことが多い。本症例は91 歳,女性。7 年前に胃癌(印環細胞癌)に対し胃全摘術を施行し,2年前に再発による小腸狭窄を認めバイパス術を施行した。当時89 歳であったが,S-1内服を1 年間継続した。さらに2 年後食道空腸吻合部に再発を認め,閉塞状態に対しステント挿入にて経口摂取再開できた。現在もS-1を継続中である。超高齢者の胃癌腹膜播種再発に対し長期の加療の報告は少ない。本症例は90 歳を超えるも集学的治療にてQOL 改善し,生存延長できた1 例として報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 1994-1996 (2017);
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目的: 東京医科大学病院で施行された括約筋間直腸切除術(intersphincteric resection: ISR)の腫瘍学的な妥当性,周術期合併症および機能障害の忍容性について検討することを目的とした。対象: 2004 年11 月〜2016 年1 月までに東京医科大学病院においてISR が施行された73 例を対象とした。結果: Stage 0〜Ⅲの5 年生存率は90.4%,5 年無再発生存率は77.3%であった。Stage Ⅰの症例で再発を2 例認めたが,いずれも局所再発であった。人工肛門閉鎖術未施行症例は10 例あったが,施行症例で術後12 か月のWexner scoreは4.2±2.5 点であった。考察:当院で施行したISR は局所制御が比較的良好であり,排便機能障害は許容範囲内であると思われた。だが人工肛門閉鎖術未施行症例が10%存在したことに課題を残した。局所再発症例ではCRMが十分でなかった可能性が示唆された。結語: ISR は腫瘍学的な妥当性,周術期合併症および機能障害の忍容性から肛門温存術式として妥当であると思われた。
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癌と化学療法 44巻12号, 1997-1999 (2017);
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症例は67 歳,女性。主訴は血便。直腸診で,AV 3 cm に表面平滑,弾性硬,径5 cm 大の腫瘤を触知した。生検結果はgastrointestinal stromal tumor(GIST)で,画像診断では肛門挙筋への浸潤が疑われた。肛門温存の希望が強く,術前補助療法としてメシル酸イマチニブ(IM)400 mg/dayを投与した。投与開始23日目には,腫瘍は2 cm大に縮小したが,紅斑型薬疹(Grade 3)を認めたためIM の休薬およびステロイド療法を施行した。薬疹消退の後,IMを 200 mg/日で再開し,36 日目に経肛門的局所切除術を施行した。術後1年の時点で無再発生存中であり,ステロイド併用IM投与を継続している。術前IM 療法に関する適応や至適投与期間は現時点で明確ではなく,今後も引き続き症例を蓄積する必要があると考えられる。
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癌と化学療法 44巻12号, 2000-2002 (2017);
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HER2 陽性切除不能進行胃癌に対し,S-1/オキサリプラチン(SOX)/トラスツズマブ療法が著効し根治切除を施行し得た1 例を経験した。症例は70 歳台,男性。2016 年7 月,心窩部痛を主訴に当院を受診した。上部消化管内視鏡検査で前庭部に3 型進行胃癌を認め,膵臓および肝左葉に直接浸潤し膿瘍を形成しており,さらに大動脈周囲リンパ節の腫大や多発肝転移を認めた。cT4b(肝・膵),N2M1(H1P0CYX),cStage Ⅳと診断し,化学療法の方針とした。2016 年 8 月よりSOX/トラスツズマブ療法を開始した。4 コース終了後,原発巣は著明に縮小し,膵臓・肝臓への浸潤は消失していた。さらに大動脈周囲リンパ節,多発肝転移も不明瞭化していた(化学療法効果判定PR)。ycT4aN1MX(HXP0CYX)と診断し2016 年12月,幽門側胃切除D2(+No. 16)郭清,肝部分切除(S3,S4,S6),肝RFA(S4,S6,S7)を施行した。近年の化学療法や集学的治療の進歩により,これまで切除不能であった進行胃癌に対しても,手術を視野に入れた治療を施行することで根治切除を施行し得る可能性がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 2003-2005 (2017);
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症例は66 歳,男性。上腹部痛,嘔吐を主訴に当院紹介となった。急性膵炎および水腎症の診断で緊急入院するも黄疸が出現,精査にて十二指腸下行脚の狭窄も認めた。Groove膵炎や膵癌を疑い,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行したが,術中迅速組織診で後腹膜剥離面に低分化腺癌を認め,右半結腸切除,右腎摘出および右尿管切除を追加した。最終病理診断はStage Ⅳの尿路上皮癌であった。退院後に化学療法を施行したが,局所再発による挙上空腸の閉塞が原因で閉塞性黄疸,胆管炎および膵炎を来したためPTCD を施行して減黄を図った。その後,小腸穿孔も発症し腹腔内にドレナージチューブを留置,改善傾向は得られたが癌性腹膜炎による腸閉塞が増悪し,術後8 か月目に癌死した。本症例は術前に血尿もなく尿細胞診も陰性で,尿路系癌の診断は困難であった。また,尿路上皮癌により十二指腸狭窄を来した報告はまれで,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 2006-2008 (2017);
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症例は71 歳,女性。2013 年1 月,他院で頸部食道に2 型の進行癌を認め,#101R リンパ節に22 mm大の転移を認めた。同リンパ節は気管と右総頸動脈へ浸潤が疑われ,頸部食道癌,cT4b(#101R-Tr,RCCA),N1,M0,cStage ⅢC(UICCTNM分類)の診断で導入化学療法としてdocetaxel(DTX)+cisplatin(CDDP)+5-fluorouracil(5-FU)(DCF)療法を施行したが,1 コース終了時点で治療効果はstable disease(SD)であり,化学放射線療法(5-FU+CDDP+RT)に変更した。40 Gy照射終了時点で,原発巣は内視鏡的にcomplete response(CR)であったが,#101R リンパ節は14 mmと遺残しており,同遺残リンパ節に対して頸部リンパ節郭清術を行う方針とし,当科に紹介された。浸潤が疑われた気管および右総頸動脈と#101R リンパ節は,気管軟骨部の表面を一部切除し,同部の切離断端は病理組織学的検査で陰性であった。右総頸動脈とも剥離可能であり,右反回神経は合併切除したものの根治切除を得ることができた。術後病理検査にて#101R にリンパ節転移を認めた。その後も原発巣はCR を維持しつづけ,術後3 年8か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 2009-2010 (2017);
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2005年以降に化学放射線療法を施行した肛門管扁平上皮癌5 例の治療成績を後方視的に検討した。症例は女性4 例,男性1 例,年齢中央値は70(42〜80)歳,治療前の進行度はStageⅠ 3 例,Stage Ⅲa 1 例,Stage Ⅲb 1 例であった。全例に根治的化学放射線療法を施行し,照射線量は59.4〜65 Gyで,併用化学療法は4 例にMMC+5-FU,1 例にCDDP が選択されていた。4 例(80%)でCR が得られたが,高度進行癌であった1 例は腫瘍の残存を認め,後方骨盤内臓全摘術・両側鼠径リンパ節郭清を施行した。同症例は術後8 年無再発生存中であり,他のCR が得られた症例を含め全例無再発生存中である。80%の症例で肛門温存が可能であり,腫瘍の残存を認めた症例においても,適切に外科治療を付加することで長期生存が得られていた。遠隔転移を有しない肛門管扁平上皮癌に対する標準治療は,化学放射線療法であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 2011-2013 (2017);
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症例は72 歳,男性。盲腸癌,同時性腹膜播種に対して2010 年9 月回盲部切除術を施行した(pT4N2M0H0P3, pStageⅣ)。腹膜播種に対して術後FOLFIRI+cetuximab(Cmab)106 コース施行するも4 年2か月後に肝転移を来し,2015 年2月,肝S5部分切除術を施行した。その後もFOLFOX+panitumumab(Pmab)19 コース施行するも腹腔内播種巣,右鼠径部の腫大を認めたため,2016 年10 月播種巣摘出術を施行した。病理診断にて右鼠径部の結節は鼠径ヘルニア嚢内の腹膜播種と診断された。現在,初回手術から6年9か月,capecitabine+bevacizumab(Bmab)施行中であるが,画像上再発所見を認めていない。
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癌と化学療法 44巻12号, 2014-2016 (2017);
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症例は70 歳,男性。腹膜播種を伴う膵体尾部癌の診断でgemcitabine(GEM)+nab-paclitaxel による治療を開始した。初回投与にてGrade 3 の肝機能障害を認め,以後GEM単剤療法を行った。治療効果は良好で,投与開始後4 か月時点で腫瘍マーカー低下および画像上のpartial remission(PR)を得た。12 コース投与時に画像上腹膜播種は消失し,以降16コースまで新規病変は認めなかった。先行して行った審査腹腔鏡にて播種病変の消失・腹水細胞診陰性を確認し,根治切除を施行した。腹膜播種を伴う膵癌の予後は不良であるが,化学療法が奏効し,手術可能となるconversion症例の報告も近年散見される。今回われわれは,腹膜播種を伴う膵体尾部癌に対し,GEM単剤療法後に根治手術が可能であったまれな症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 2017-2019 (2017);
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症例は80 歳,男性。心筋梗塞の既往あり。貧血と膵頭部腫瘤の精査の結果,多発リンパ節転移の膵浸潤を伴う前庭部3 型進行胃癌,cT4b(LN-膵),N3a,M1(LYM No.16a2int),cStage Ⅳと診断された。腫瘍出血が持続するため化学療法に先行して,原発巣の切除が必要と考えられた。術前の冠動脈造影検査で高度狭窄三枝病変が判明したが,出血を伴う胃癌があるため術前の冠血行再建は不可能であった。大動脈バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping: IABP)挿入下に姑息的幽門側胃切除術を施行した。術中・術後に冠動脈イベントの発症なく良好に経過し,食事摂取再開と化学療法への移行が可能であった。非心臓手術における予防的IABPの使用はエビデンスに乏しいものの,本症例のような高度冠動脈狭窄を伴う出血性胃癌患者に対する原発巣切除時には有効な選択肢の一つと考えられた。
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癌と化学療法 44巻12号, 2020-2022 (2017);
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症例は57 歳,男性。上部消化管内視鏡で胃体下部大弯前壁に0-Ⅱc 病変を認め,生検にて管状腺癌と診断された。腹部CT では胃領域内外に多数のリンパ節腫大を認めたが,転移ではない可能性も考慮し,幽門側胃切除・D2を行った。病理組織学的検査の結果,郭清リンパ節にサルコイド反応(SR)を認めたが,胃癌の転移を認めなかった。全身性サルコイドーシスを罹患していない癌患者においてもリンパ節に類上皮細胞肉芽腫を認めることがあり,SRと呼ばれる。早期胃癌にSRを合併することは非常にまれで,本邦ではこれまでに22 例の報告を認めるにすぎない。内視鏡所見とリンパ節腫大の程度に乖離が存在する場合,SRに伴うリンパ節腫大の可能性も念頭に置く必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 2023-2025 (2017);
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十二指腸・小腸悪性リンパ腫は比較的まれな疾患であるが,穿孔性腹膜炎を来すこともあり臨床上重要な疾患である。今回われわれは,多発十二指腸・小腸悪性リンパ腫による穿孔性腹膜炎の1 例を経験したので報告する。症例は84 歳,男性。十二指腸悪性リンパ腫で化学療法導入予定であったが,穿孔性腹膜炎を発症し緊急腹腔鏡手術を行った。鏡視下観察で穿孔部は十二指腸ではなく回腸であることが判明した。また,全小腸に多数のリンパ腫病変が存在していた。完全切除は困難であったため,穿孔部を含めて小腸を部分切除した。消化管悪性リンパ腫は多発かつ複数の消化管にわたって存在することがあり,緊急手術時においても慎重に診断・治療を行う必要がある。
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癌と化学療法 44巻12号, 2026-2028 (2017);
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胃癌で手術歴のある70 歳代,女性。排便時出血を認め,精査にて下部進行直腸癌と診断し腹腔鏡下低位前方切除術(D3)を施行した。術後1年4か月のPET-CTにてFDG の異常集積を伴う肺小結節影,肝腫瘤影を認めた。主膵管が軽度拡張しており,主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)を疑うもFDG の集積は認めなかった。直腸癌の肝肺転移と診断,切除可能と考え,肝切除・肺切除を施行した。その後のCT にて左肺上葉に再度肺転移が出現し,さらに主膵管に上腸間膜静脈へ浸潤を疑う軟部影を認めたため,化学放射線療法(TS-1 80 mg/m2,RT 50 Gy)を施行したところ,膵・肺病変ともに縮小傾向を認めた。その際のCT にて膀胱壁に膀胱癌を認め,経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を施行した。初回直腸癌手術から30 か月経過し,現在も化学療法を継続中である。
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癌と化学療法 44巻12号, 2029-2031 (2017);
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症例は85 歳,男性。上行結腸癌術後,転移性肝癌術後,外来にて経過観察中,腹部造影CT 検査にて肝S8 に3.0 cm大の腫瘍を認めた。FDG/PET-CT 検査では肝腫瘍に一致して FDG の異常集積を認め,その他の部位には明らかな異常集積を認めなかったことから,転移性肝癌の術前診断の下,手術の方針となった。同腫瘍は上行結腸に近接しており,近接する部位の上行結腸には散在する憩室が認められた。開腹時,肝S8 に認められていた腫瘍は上行結腸と強固に癒着していたが,明らかな腫瘍の浸潤は認められず,腫瘍から上行結腸を剥離した後に肝S8 亜区域切除術を施行した。切除標本の病理組織検査では,肝腫瘍の部位に一致して形質細胞の浸潤を認め,肝炎症性偽腫瘍と診断された。本症例では,肝腫瘍に近接した上行結腸に憩室を認めていたことから,憩室が炎症性偽腫瘍の発生に関与している可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻12号, 2032-2034 (2017);
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症例は73 歳,男性。腹痛を主訴に当院を受診した。腹部造影CT 検査にて胆嚢結石と胆嚢壁の浮腫状肥厚を認め,急性胆石性胆嚢炎の診断で緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。病理組織検査にて,adenocarcinoma with neuroendocrine carcinoma(NEC)componentと診断された。胆嚢床部切除術およびリンパ節郭清術を施行した。最終的な病理組織学的診断結果は,adenocarcinoma with NEC,pT2N0M0,pStage Ⅱであった。術後7 か月目が経過した現在も明らかな再発徴候なく生存中である。非常にまれな胆嚢神経内分泌癌に対して治癒的切除を得た1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 44巻12号, 2035-2037 (2017);
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緒言: 当科では顎口腔領域の悪性腫瘍に対して,切除可能症例には手術を第一選択としている。進行癌の切除後の再建では,様々な皮弁や人工材料を用いた顎口腔の機能・形態・審美回復が求められる。今回われわれは,進行上顎癌切除により生じた眼窩底欠損に対して,有茎下顎骨筋突起・側頭筋(膜)弁[pedicled coronoid process and temporal muscle(fascial)combined flap: PCPTM flap]を用いて再建した2 症例を経験したのでその概要を報告する。症例1 は69 歳,男性。臨床診断は左側上顎歯肉扁平上皮癌(cT4aN2bM0,Stage ⅣA)。症例2 は86 歳,女性。臨床診断は左側上顎筋上皮癌局所再発である。いずれも,全身麻酔下に眼窩底を含めた左側上顎半側切除後に,PCPTM flap を用いて即時再建できた。