癌と化学療法
Volume 45, Issue 2, 2018
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総説
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オピオイドの引き出しを増やす―メサドン,タペンタドール,ヒドロモルフォン―
45巻2号(2018);View Description Hide Description近年日本において,オピオイド・スイッチングの選択肢となり得るいくつかの薬剤が承認された。2012 年9 月に承認されたメサドンは,わが国ではいわゆる_step 4dオピオイドとして位置付けられており,経口モルヒネ換算60 mg/日以上のオピオイドからの切り替えとしてのみ使用可能である。個人差の多い薬物代謝や多彩な薬物相互作用など留意すべき点は多いものの,NMDA阻害作用,m-d ヘテロ二量体の分解促進作用などにより他のオピオイドとの交叉耐性が少なく,オピオイド・スイッチングにおける重要な選択肢の一つである。2014 年3 月に承認されたタペンタドールは,ノルアドレナリン再取り込み阻害作用をもつオピオイドである。オキシコドンとの無作為化比較試験で副作用がやや軽い傾向があり,薬剤相互作用が少ない,活性代謝産物を生じず低腎機能患者に使いやすいなどの利点がある。2017 年3 月に承認されたヒドロモルフォンは,モルヒネに類似した効果と副作用のプロファイルをもつ。鎮痛活性のある代謝産物を生じず,モルヒネと比較して神経毒性のある代謝産物の生成も少ない。現時点では,呼吸困難に対する効果や低腎機能患者での忍容性に関して確定的なエビデンスがないため,今後の質の高い研究が求められる。これら最近使用可能となったオピオイドにより,長期にわたって安定した疼痛コントロールの提供が可能となることを期待したい。
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特集
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- 腫瘍免疫研究の最前線
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非小細胞肺がんに対するがん免疫療法の進歩
45巻2号(2018);View Description Hide Description非小細胞肺がんに対するがん免疫療法は,1970 年ごろから非特異的免疫賦活薬やサイトカイン療法に始まり,LAKやTIL といった細胞療法,そしてがんワクチン療法と発展してきた。しかしその間,明らかな有効性を示したものはなかった。免疫チェックポイント阻害薬の登場により,ようやく非小細胞肺がんの標準治療にがん免疫療法が加わった。そのバイオマーカー探索や,より効果的な治療効果を求める多剤併用療法など,まだ課題は多くさらなる発展が期待される。本稿では非小細胞肺がんに対するがん免疫療法の歩みを振り返り,今後の展望について考察する。 -
胃癌局所の免疫細胞浸潤とその意義
45巻2号(2018);View Description Hide Description浸潤する免疫細胞と癌の予後との関連性については,これまでに多くの報告がある。一般的に癌細胞は生体内の免疫監視システムから逃避し増殖すると考えられている。腫瘍免疫抑制機構に関連する細胞には,マクロファージや制御性T細胞,骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC),好中球などが含まれる。これらの免疫抑制細胞は,癌細胞や線維芽細胞などの間質細胞が産生するサイトカインにより,TGF-b やIL-10 の産生やPDL-1 の発現を増強し細胞傷害性T 細胞(cytotoxic T lymphocytes:CTL)を抑制する。一方,進行胃癌であっても抗原特異的に反応するCD8+ T細胞の存在が証明されており,胃癌組織内のメモリーT 細胞やNK 細胞やNKT 細胞も良好な予後と相関する可能性が示唆されている。最近では,胃癌組織内の三次リンパ様構造(tertiary lymphoid structure: TLS)と呼ばれる濾胞リンパ系構造の存在が予後の指標になると注目されている。二次リンパ器官から距離を置いたTLS 内で,腫瘍特異的な免疫応答の活性化が起こることが知られている。このように,胃癌組織内では免疫応答は抑制されているものの免疫バランスを促進方向に向かわせることが可能であり,その代表的な薬剤が免疫チェックポイント阻害剤である。2017 年に免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1 抗体)の有効性が証明され,効果予測バイオマーカーとして腫瘍浸潤免疫細胞が注目されている。また,癌ゲノム研究の進歩とともに,どのtypeに免疫応答が誘導されるか徐々に解明されつつあり今後の研究結果が期待される。このように,種々の腫瘍浸潤免疫細胞の浸潤形態や機能を評価することは,今後の胃癌に対するプレシジョン・メディシンにおいて極めて重要であると思われる。 -
腫瘍局所の免疫抑制環境
45巻2号(2018);View Description Hide Description腫瘍組織はがん微小環境と呼ばれる特殊な環境下にあり,多くの点において腫瘍細胞の生存や増殖に有利な環境となっている。その一つとして免疫抑制環境があげられ,自己免疫寛容に働く制御性T細胞(Treg)が重要な役割をもつことが知られている。Tregに高発現しているCTLA-4は,APC上の共刺激分子と相互作用をして共刺激シグナルを抑制し,T細胞の活性化を阻害する他,抑制性サイトカインやアデノシンを介してT細胞を抑制する。腫瘍組織には正常組織と比較して高頻度でTreg が浸潤していることが知られ,Treg の浸潤が多いほど患者の予後が悪いことが様々ながん種で示されている。がん微小環境ではがん細胞などが産生するケモカインなどの働きによりTreg がリクルートされ,さらに局所で増殖している。さらに近年,がん局所の免疫抑制環境にがん細胞やそこに浸潤する免疫担当細胞の代謝が密接にかかわっていることが明らかになってきている。抗腫瘍活性を有するエフェクターT 細胞は細胞増殖やエフェクター機能を維持するために解糖系を駆動している一方,Treg は免疫抑制活性のために酸化的リン酸化が重要である。多くの腫瘍細胞は盛んにグルコースやグルタミンを取り込み,生命活動を維持しているためがん微小環境では周囲の正常組織や末梢血と比較した場合にそれらの濃度が低下し,エフェクターT 細胞は解糖系を行うことができず抗腫瘍活性が抑制される。また,低グルタミン濃度下ではエフェクターT 細胞は増殖およびサイトカイン産生が抑制される一方,Treg は優位に誘導される。さらに腫瘍局所では腫瘍細胞による解糖系の産物である乳酸が蓄積しており,高濃度の乳酸はエフェクターT 細胞の増殖やサイトカイン産生を抑制する。一方,Treg はそのような条件下においてより多く誘導され,機能低下もみられないことが示されている。さらに腫瘍局所でTregや腫瘍細胞により産生されるアデノシンはエフェクターT細胞の免疫応答を抑制する。以上のようにがん微小環境は様々な要因からTregが浸潤し,増殖,機能しやすい一方で,エフェクターT細胞は機能抑制を受けるために免疫抑制環境となっている。 -
がん局所へのCTL 浸潤の増強
45巻2号(2018);View Description Hide Description近年,がん組織の微小環境の解明が著しく進んだ結果,がんに浸潤している様々な細胞が腫瘍の増殖や排除に深く関与していることが明らかとなってきた。そのなかでも,がんの排除に直接作用する細胞傷害性T細胞(CTL)は,高い細胞傷害活性と増殖能をもち,がん免疫療法において重要な役割をもつ細胞として,よりいっそう注目を集めている。がんペプチドワクチンをはじめとする様々な手段による免疫誘導や,免疫チェックポイント阻害抗体による抑制解除においても,強力な抗腫瘍効果を得るためにはCTL のがん局所への移行,浸潤が必要不可欠である。本稿では,がん局所へのCTL 浸潤の増強のための工夫とそれらを応用した最新のがん免疫療法について紹介する。
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Current Organ Topics:Gynecologic Tumor 婦人科腫瘍 婦人科Rare Tumor に対する化学療法
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Ⅳ.Current Status and Future Perspectives in Low-Grade Serous Cancer of the Ovary
45巻2号(2018);View Description Hide Description
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特別寄稿
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ALK 陽性非小細胞肺癌におけるセリチニブの臨床成績と副作用マネジメント
45巻2号(2018);View Description Hide DescriptionALK 阻害薬の登場により,ALK 融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)の治療に変革がもたらされた。一方,ALK 阻害薬の不応例や耐性が一定頻度で生じることが明らかになっており,それらにどのように対応するかが課題となっている。セリチニブ(ジカディア(R)カプセル)は,クリゾチニブ,アレクチニブに続く国内3 番目のALK阻害薬で,クリゾチニブ耐性後の患者における有用性が期待されている。しかしセリチニブでは消化器系副作用の発現頻度が高く,患者のQOL に影響を及ぼすことが指摘されている。そこで本稿ではALK 陽性ヒトNSCLC 患者におけるセリチニブの臨床成績と消化器系副作用の頻度を紹介するとともに,副作用マネジメントの具体的な方法を紹介した。
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薬事
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S-1服薬患者における流涙の後方視的検討
45巻2号(2018);View Description Hide DescriptionS-1 に特徴的な副作用として流涙がある。流涙発現頻度は報告ごとに乖離があり,流涙発現時期や危険因子,対症療法のコンセンサスが確立しているとはいい難い。2014 年4 月〜2016 年9 月までのS-1 服用患者202 名を対象に,流涙発現時期および危険因子,対症療法の転帰を後方視的に検討した。がん薬物療法開始時におけるクレアチニン・クリアランス推定値の中央値は75.8 mL/min,相対的治療強度の中央値は87.1%であった。流涙発現率は26.7%であった。流涙発現までのS-1累積投与量中央値は23,520 mgであった。流涙発現患者のみで解析すると5,050 mgとなり,うち40.7%はS-1 服用開始後2 か月以内に流涙が発現していた。危険因子の検討を行ったが,統計学的に明らかなものは認められなかった。流涙への対症療法は,院内製剤である生理食塩液点眼液が最も多く処方されていた。生理食塩液点眼液の転帰は症状改善29.4%,不変70.6%,増悪例は認められなかった。S-1服用開始時から流涙を確認することが必要であり,涙液保持作用のない点眼薬での対症療法が有用と考える。
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症例
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4年間の経過観察後に切除した膵管内乳頭粘液性腺癌の1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。71 歳時,直腸癌に対し高位前方切除術を施行した。その際,術前腹部CT 検査で膵体部に6 cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認めたが,良性の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と診断した。術後1 年ごとに腹部造影CT 検査を施行したが,4 年間の経過観察中に腫瘍径が緩徐に増大し,腫瘍内部に結節が出現してきた。ERCP では主膵管の拡張を認め,分枝膵管との交通も認めた。膵液細胞診でclass Ⅲb であった。膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)の診断で膵全摘術を施行した。術後経過は良好で再発を認めていない。IPMN の自然史に関する報告は少なく,4 年間の長期にわたりIPMN を画像で経過観察した点で貴重な症例のため報告する。 -
皮膚筋炎に合併した原発不明癌の1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は50 歳,女性。皮膚筋炎の診断で当院神経内科にてステロイドパルス療法を施行された。PET-CT で傍大動脈および左鼠径部に異常集積を認めたため当科を紹介され,傍大動脈リンパ節に対しEUS-FNA を施行し,病理組織学的に中〜低分化型腺癌の診断となった。原発不明癌の診断で外科的リンパ節摘出術を施行したが,術後に新規転移再発病変を認め,全身化学療法および放射線治療を施行し,初診から31か月後に原病死した。
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特別寄稿
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大腸癌部穿孔8症例の検討
45巻2号(2018);View Description Hide Description目的: 当科で2005 年1 月〜2016 年12 月までに経験した大腸癌部穿孔8 症例の特徴について検討した。結果:男性4例,女性4 例,平均年齢66.5歳。癌の部位は上行結腸1 例,S状結腸5 例,直腸RSが2 例であった。主訴は7 例が腹痛,1 例が下痢。全例で緊急手術を施行した。進行度はStage Ⅱ 5 例,Stage Ⅲ 2 例,Stage Ⅳが1 例。転帰は全例で軽快に退院した。退院後に化学療法を施行した症例は5 例。2 例に再発を認め,腹膜播種1 例,局所再発が1 例であった。予後は2例が癌死,1 例が再発生存中で,5 例が無再発生存中である。まとめ:再発形式を検討すると腹膜播種・局所再発であり,癌細胞を含む腸管内容の漏出からと考えられた。Stage Ⅱの再発高危険群のリスク因子に穿孔も含まれており,再発予防の術後補助化学療法が考慮される。 -
75歳以上の高齢者膵頭十二指腸切除症例における術中体温変化―75 歳未満の非高齢者との比較―
45巻2号(2018);View Description Hide Description背景:手術中の体温管理は術後の早期回復に影響する重要な因子である。しかし,膵頭十二指腸切除(pancreaticoduodenectomy:PD)症例での体温変化に対する年齢因子の影響は不明である。今回,75 歳以上のPD 症例における全身麻酔導入後の膀胱温度変化を,75 歳未満の非高齢者のPD症例と比較検討した。対象と方法: 2012 年4 月〜2014年4 月までの期間に神奈川県立がんセンター消化器外科において膵癌に対して70 例のPD が施行され,このうち膀胱温度変化が測定できた58 例を対象とした。膀胱温度変化は,全身麻酔導入後から6 時間にわたって検討した。結果: 75 歳以上の高齢者群(高齢群14 例)と75歳未満の非高齢者(非高齢群44 例)の背景因子を比較すると,性別・術前のASA-PS・体重・BMI・術前併存疾患の有無・手術時間・出血量に差はなかった。膀胱温度変化は高齢群で36.3/36.1/36.3/36.7/36.8/37.1/37.4℃,一方で非高齢群では 36.2/36.2/36.4/36.6/36.9/37.0/37.3℃であり,年齢に伴う膀胱温度変化に統計学的な有意差はみられなかった。結論: 今回の検討では,高齢群は非高齢群と比較して術中体温変化に年齢の影響はみられなかった。75 歳以上の高齢者においても,四肢の末端部分を保温することで体温保持は可能と考えられた。 -
直腸癌側方リンパ節再発に対する集学的治療
45巻2号(2018);View Description Hide Description背景および目的:直腸癌局所再発は,再発部位により前方,側方,後方,吻合部に分類される。今回,直腸癌術後側方リンパ節再発に対する腹腔鏡下側方リンパ節切除術の成績の検討を行った。方法および対象: 2010 年4 月〜2016 年12 月までに遠隔転移を認めず治癒切除を行った直腸癌(Ra,Rb)のうち側方リンパ節再発と診断し,腹腔鏡下側方リンパ節郭清を行った5 例を対象とした。結果:年齢の中央値63 歳,性別は男性3 例であった。原発巣の局在は,Rb 4 例,Ra 1 例であった。Rb症例のうち2 例には術前放射線治療が行われ(RT 群),そのうちの1 例には腹腔鏡下側方リンパ節郭清が行われた。再発までの期間の中央値は25 か月であった。3例で再手術前に化学療法を行い,全症例でpathologic complete response(pCR)であった。手術時間の中央値257分,出血量は全例0 mL であった。Clavien-Dindo分類Grade Ⅲ以上の合併症は認めなかった。術後観察期間の中央値は34 か月であるが,肺転移再発の1 例を除いて無再発経過中である。考察・結語:腹腔鏡下手術では,その拡大視野により狭い骨盤でも良好な視野が得られ,安全に手術が施行できる。骨盤内局所再発,特に側方の場合,R0 切除困難なことも多い。より早期に診断し,術前化学療法を行うことでR0切除率の向上が期待される。 -
腹壁瘢痕ヘルニア修復術後の胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description腹壁瘢痕ヘルニアに対してメッシュを留置した症例において,メッシュを切離しての再開腹手術はヘルニアの再発やメッシュ感染が危惧される。今回,このような症例に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行したので報告する。症例は82歳,男性。腹部大動脈人工血管置換術,開腹胆嚢摘出術,メッシュを用いた腹壁瘢痕ヘルニア修復術,開腹S 状結腸切除術後であった。早期胃癌に対して内視鏡下粘膜下層剥離術を施行後の上部消化管内視鏡検査で局所再発を認めたため,手術目的に当科紹介となった。術前診断はcT1b,cN0,cM0,cStage ⅠAの早期胃癌であり,メッシュを切離せずに腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した。術後,ヘルニアの再発,メッシュ感染を認めなかった。腹腔鏡手術は腹壁破壊を最小限に留める点で腹壁瘢痕ヘルニアの再発やメッシュ感染の予防において有用となり得る。 -
Gemcitabine/S-1による全身化学療法で長期生存を得ている同時性多発肺転移を伴う膵尾部癌の1 切除例
45巻2号(2018);View Description Hide Description他臓器転移を伴う進行膵癌の予後は極めて不良である。今回われわれは,多発肺転移を伴う膵癌に対し膵切除と術後化学療法を行い,10 年の長期生存を得ている症例を経験したので報告する。症例は78 歳,男性,検診で両肺の異常陰影を指摘され当院を受診した。精査の結果,多発肺転移を伴う膵尾部癌と診断した。膵体尾部切除術を施行し,術後gemcitabineによる全身化学療法を行った。肺転移の増悪を認めたためS-1 を追加したところ,1 年後のCT にてcomplete remission を得た。休薬後に再増悪を認め化学療法を再開,その後用量と投与期間を調整し化学療法を継続しているが,両肺の転移は増大と縮小を繰り返しながらも腹腔内再発なども認めず,膵切除後10 年経過した現在も良好なperformance status を保っている。多発肺転移を伴う進行膵癌でも膵切除と化学療法を行うことにより,長期生存を得られる症例を経験した。 -
Sjogren症候群治療中に発見された甲状腺癌の1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は42 歳,女性。現病歴: Sjogren症候群で加療中であった。数か月前より頸部腫瘤を自覚した。超音波検査にて甲状腺腫瘍を認め,当科紹介となる。経過:局所所見では,弾性・軟の境界明瞭な腫瘤を触知した。頸部超音波検査では,甲状腺左葉に大きさ約40×26 mm の一部境界不明瞭な内部混合性腫瘤を認め,峡部に大きさ約15×7 mm の境界不明瞭な内部不均一な低エコー腫瘤も認めた。頸部CT 検査では,左葉に内部低濃度の境界明瞭な腫瘤を認めた。甲状腺亜全摘術および頸部リンパ節郭清術を施行した。峡部腫瘤がpapillary carcinomaであった。まとめ:甲状腺微小癌は,偶発的に発見されることがある。今回の場合もSjogren 症候群の治療中に発見された。症状が落ち着いていたので甲状腺癌の手術を施行することができたが,増悪している時には慎重に診断していくことが考えられた。 -
長期生存が得られた門脈本幹腫瘍栓(Vp4)合併肝細胞癌の1 切除例
45巻2号(2018);View Description Hide Description門脈本幹腫瘍栓(Vp4)合併肝細胞癌に対して,術前肝動注化学療法後に肝切除・門脈腫瘍栓摘除術を施行し,7年以上生存した症例を経験した。症例は58 歳,男性。門脈本幹腫瘍栓を伴う肝S6 を中心とする7 cm 大の単発の肝細胞癌に対し,5-fluorouracil(5-FU)+cisplatin(CDDP)による肝動注療法を6 週間施行した。肝動注療法は奏効し腫瘍は著明に縮小したが,門脈本幹腫瘍栓は依然として存在し,血小板値は6.7×10 / 4mm3と低値であったため,肝切除・門脈腫瘍栓摘除術を施行した。術後4 か月の造影CT 検査で残肝に単発の腫瘍染像を認め,Lipiodol-TAIを施行した。その後4 年間癌の再燃なく経過したが,肝尾状葉に単発の再発巣かつ左肺底区に単発の肺転移巣を認め,肝尾状葉部分切除さらに左肺底区域切除を施行し,その後はcancer freeで経過していた。治療開始から7 年後に他病死した。 -
胃癌・大腸癌に併発した乳頭部腫瘍に対する経十二指腸乳頭切除術後の経験
45巻2号(2018);View Description Hide Description胃癌・大腸癌に併発した乳頭部腫瘍に対する経十二指腸乳頭切除術を経験した。症例は72 歳,男性。進行下行結腸癌の術前検査で行われた上部消化管内視鏡検査において,胃体上部小弯にSM浸潤が考えられる2 cm 大の隆起性病変(0′-Ⅱa型)がみられ,十二指腸乳頭部には2 cm 大に腫大した腫瘍を認めた。病理組織所見は前者が高分化管状腺癌であり,後者が異型性の強い絨毛管状腺腫であった。まず下行結腸癌に対して腹腔鏡下左結腸切除術を施行し,21 日後に胃全摘術(D1),Roux-en-Y 法,胆嚢摘出術,十二指腸切開,経十二指腸乳頭切除術を施行した。術後縫合不全など合併症もなく軽快退院した。病理組織診断では大腸癌,胃癌の深達度はそれぞれpT2(MP),pT1b(SM2)でありリンパ節転移はなかった。十二指腸乳頭部腫瘍は管状絨毛腺腫(high grade)であった。乳頭部局所切除は,低侵襲であるとともに断端を確保しやすく,出血や膵炎などの合併症のリスクが少ない。併存する消化器癌の治療とのバランスを考え,本症例での乳頭部局所切除は有用な方法と考えられた。 -
上直腸動脈温存の腹腔鏡下結腸左半切除術後4 か月で発症した虚血性腸炎の1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は80 歳,男性。下行結腸癌(T3,N0,M0,StageⅡ)に対して上直腸動脈を温存した腹腔鏡下結腸左半切除術,D3 リンパ節郭清術を施行した。術後経過は良好であり,術後14 日目に退院した。その後外来にて術後補助化学療法なしで,経過観察中であった。術後約4 か月後に突然の腹痛と下血を主訴に来院した。精査の腹部単純CT 検査で,吻合部より肛門側の腸管に著明な浮腫性壁肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。下部消化管内視鏡検査では,同様に吻合部より肛門側の腸管粘膜が広範に浮腫性変化を来していた。以上より,吻合部肛門側の虚血性腸炎の診断で保存的加療を行った。絶食,補液管理にて症状が改善し,第11 病日で退院可能となった。その後外来にて経過観察を行い,発症後約2 か月で症状軽快を認めた。 -
化学療法(ドセタキセル)施行後切除可能となった腋窩原発異所性乳癌の1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は78 歳,女性。右腋窩腫瘤を自覚し前医で腋窩腫瘤部分切除を施行したところ,浸潤性乳管癌の診断となり当科紹介となった。精査の結果,右乳房には腫瘍性病変を認めなかった。鎖骨上下リンパ節腫大および右腋窩腫瘤の皮膚浸潤を認めたため,腋窩原発異所性乳癌の診断でドセタキセル(DTX)療法を開始した。DTXによる有害事象で間質性肺炎を認めたため3 コースで投与終了したが,右鎖骨上下リンパ節腫大は消失,右腋窩腫瘤も50%以上の縮小を認め,切除可能と判断し右腋窩リンパ節郭清を施行した。最終病理診断では右腋窩原発異所性乳癌,腋窩リンパ節転移の診断となった。術後3 年経過し現在のところ再発所見を認めていない。今回,腋窩原発異所性乳癌で全身化学療法により切除し得た症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。 -
胃癌穿孔に対する手術症例の臨床病理学的検討
45巻2号(2018);View Description Hide Description胃癌穿孔に対する手術症例の臨床病理学的検討から適切な外科治療について検討を行った。2005 年5 月〜2016 年12月までに当科で手術を行った胃癌穿孔17 例を対象として臨床病理学的因子,術式,術後合併症および生存期間を後方視的に検討し,予後に影響を与える因子を解析した。胃切除術が13 例(一期的切除8 例,二期的切除5 例),大網充填術が4 例に施行された。単変量解析での予後不良因子はR2 手術(p<0.01)と術後非合併症(p=0.01)が抽出され,多変量解析ではR2手術(p=0.01)が予後不良の独立した因子として同定された。R0 手術の症例では長期生存例が認められたが,術式を問わず術後合併症を併発したR2 手術の症例は予後不良であった。根治可能な胃癌穿孔症例に対しては患者の全身状態を把握した上で,一期的もしくは二期的にR0 手術を考慮し,R2手術の症例には穿孔性腹膜炎の治療や術後合併症の回避を優先すべきであると考えられた。 -
同時性肝転移を伴う膵腺房細胞癌に集学的治療を行った2症例の経験
45巻2号(2018);View Description Hide Description膵腺房細胞癌同時性肝転移に対して切除を含む集学的治療を行った症例を経験したので報告する。症例1 は55 歳,女性。右季肋部痛と貧血を主訴に受診し精査の結果,膵原発腫瘍および多発肝転移を指摘された。出血コントロールのために手術の方針となり,術中迅速病理診断で膵腺房細胞癌の結果を得たので膵頭十二指腸切除および肝右葉切除を施行した。術後に残肝転移巣に対し肝動注療法およびマイクロ波凝固壊死療法,化学療法(gemcitabine: GEM)を行うも,肺・肝転移のため術後2 年6か月目に死亡した。症例2 は42 歳,女性。検診にて胃静脈瘤とCA19-9高値を指摘され精査の結果,膵尾部腫瘍と肝転移の診断となった。根治切除可能とみなし膵尾側切除術と肝部分切除術を行った。病理診断では膵腺房細胞癌および肝転移であった。術後補助化学療法はGEM 療法を行い,現在5 年無再発生存中である。膵腺房細胞癌は浸潤性膵管癌に比べ予後良好な腫瘤とされるが,切除不能例では依然として予後不良である。しかしながら転移巣を含む積極的外科的切除と集学的治療を行うことで長期生存が見込める可能性がある。 -
巨大膵漿液性嚢胞腫瘍の1切除例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は74 歳,女性。検診の腹部エコーにて巨大腹部腫瘍を指摘され,腹部CT にて膵を置換する直径20 cm 大で内部に石灰化を伴う隔壁様構造を有し嚢胞部と充実部の混在する腫瘍を認めた。腫瘍は周辺臓器および門脈を圧排していた。以上の所見から悪性の可能性が否定し得ない膵漿液性嚢胞腫瘍と診断し,膵全摘術,門脈合併切除再建術,胆嚢摘出術,脾臓摘出術,幽門側胃切除を施行した。手術所見として,腫瘍は膵原発であり十二指腸,横行結腸間膜,後腹膜および周囲の動静脈(門脈,総肝動脈,固有肝動脈,上腸間膜動脈)と強固に癒着していた。摘出標本の表面は比較的平滑で,割面には小型嚢胞構造が密在しスポンジ状の外観を示す部分が主であった。悪性を疑うような浸潤所見は認めず膵漿液性嚢胞腺腫と診断した。特に大きな合併症はなく経過し術後42日目に退院,術後9 か月現在まで生存中である。 -
脳転移出現後にTFTD+Bevacizumab併用療法で病勢コントロールを得た再発結腸癌の1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は70 歳台,女性。初診時より多発肝転移・肺転移を有する横行結腸癌に対して,原発巣切除術後に一次治療[sLV5FU2+bevacizumab(Bmab)]施行後,画像上PR を得て肝部分切除術を施行した。補助化学療法施行後,7 か月後に肝転移再発,多発肺転移,さらに脳転移が出現した。脳転移は単発で有症状であったため,開頭腫瘍摘出術を施行した。間質性肺炎の既往があり,regorafenibを開始したがGrade 3 の重症多型紅斑を呈し,治療中止を余儀なくされた。三次治療としてTFTD+Bmab併用療法を開始した。肝転移および肺転移は病勢コントロールを得ることができ,微小な新規脳転移病変に対しては定位放射線治療を併用しながら,約1 年間外来治療を継続した。TFTD+Bmab 併用療法は第Ⅱ相臨床試験でその有用性が報告されている。さらにBmabは脳浮腫軽減においても効果があることも報告されており,同療法の有効性が期待できる症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。 -
局所進行・肝転移を伴う乳癌に対し薬物・放射線・温熱療法施行後に手術をし得た1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description初診時に局所進行・肝転移を伴う乳癌患者に対し,薬物・放射線・温熱療法を施行した後に手術をし得た1 例を経験したので報告する。症例は54 歳,女性。左乳腺全体に広がる腫瘤と一部壊死を伴う巨大な腋窩腫瘤が一塊となっており,初診時の全身検査で肝転移を認めcStage Ⅳ乳癌と診断した。治療として,化学療法(AC followed by weekly paclitaxel)を施行,効果判定のCT にて腋窩リンパ節が腋窩静脈に浸潤している可能性があり,手術困難と判断し放射線治療30 Gy/15 回を施行した。同時に温熱療法,アロマターゼ阻害剤を開始した。内分泌療法開始後,約1 年経過時でのPET 検査にて肝転移の消失と腋窩リンパ節の縮小を認め,局所制御目的に手術(Bt+Ax)を施行した。現在,アロマターゼ阻害剤の内服を再開し経過観察中である。疼痛や滲出液汚染などでQOL が低下している状況で,手術困難な症例でも集学的治療により手術をし得る場合があると考える。 -
胸部食道癌手術10年後に再建結腸の壊死を生じた1 手術例
45巻2号(2018);View Description Hide Description胸部食道癌術後の再建臓器壊死は非常に重篤な合併症で,術後早期に発生することが多い。今回,食道癌術後10年経過して再建結腸に壊死を来し,緊急手術を施行した1 例を経験したので報告する。症例は73 歳,男性。既往歴:胃癌にて噴門側胃切除を施行した。現病歴: 1995年食道表在癌にてEMR,その後局所再発にて放射線化学療法を施行。2005 年同部に再々発を認め,食道亜全摘術,胸骨後経路頸部食道残胃間右結腸間置術を施行した。2015 年胸痛のため近医に緊急入院となった。上部消化管内視鏡検査で,再建結腸に広範囲な壊死を認め当科に転院となり緊急手術を施行した。術式は,胸骨縦切開による再建結腸切除,食道外瘻造設,胃瘻造設を施行した。病理検査:出血性結腸壊死。現在,紹介医でリハビリテーション中である。食道癌手術10 年後に再建臓器壊死を生じた報告はない。原因としては食餌性の結腸の拡張によるものなどが考えられる。 -
直腸癌甲状腺転移の1症例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。2012 年8 月,直腸癌穿孔にてハルトマン手術を施行した。tub2>tub1,pSE,pN2,pH2,pM1(肺),stage Ⅳであった。術後補助化学療法としてbevacizumab(BV)+FOLFOX 療法を5 コース行った。12 月に嗄声の訴えあり,耳鼻科を受診した。頸部診察にて甲状腺左葉に硬結を指摘され,FNA の結果,直腸癌の甲状腺転移を疑われた。FDG-PET を施行し,同部位へのFDG の高度集積を認めた。直腸癌甲状腺転移の診断で,2013 年1 月甲状腺左葉切除,リンパ節郭清を行った。病理組織学的に直腸癌の甲状腺転移であった。直腸癌甲状腺転移は非常にまれで,本邦論文報告例は自験例を含め11例であり,若干の文献的考察を加え報告する。 -
遠隔転移を伴う切除不能進行胃癌に対して止血目的に施行した緩和的放射線治療が奏効した1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description切除不能進行胃癌は出血,狭窄症状を来すことがあるが,このような症例に対する緩和的放射線治療の有用性については未だ一定の確立した見解はない。今回,高齢者の遠隔転移を伴う切除不能進行胃癌に対する止血目的の緩和的放射線治療が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は85 歳,女性。認知症により意思疎通が困難であった。絞扼性腸閉塞を契機に多発肝転移,腹膜播種結節を伴う進行胃癌が発見された。絞扼性腸閉塞に対する緊急手術を施行し状態が安定した後,腫瘍が易出血性で貧血を来していたために止血目的の放射線治療(30 Gy/10 回)を施行した。放射線治療の有害事象はなく,照射後7 か月は出血,狭窄症状なく経過した。手術療法のリスクがあり手術が選択できない症例であれば,低侵襲な緩和的放射線治療が有効な治療法となり得ると考えられた。 -
放射線化学療法により一時的にCR が得られた食道癌術後心筋転移の1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は56 歳,男性。つかえ感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査にて切歯より25 cm に全周性の2 型腫瘍(扁平上皮癌)を認め,加療目的に当科紹介となった。cT3N2M0,cStage Ⅲであり,術前補助化学療法としてFP 療法を2コース施行後に右開胸開腹食道亜全摘術,3 領域リンパ節郭清,胸骨後経路胃管再建術を施行した。病理結果は中分化型扁平上皮癌,CT-pT3(T3),pN1,sM0,fStageⅢであった。術後4 か月時のPET-CTにて心尖部に局所的な陽性集積を認め,転移性心筋腫瘍と診断し,放射線化学療法(CRT)(心筋50 Gy,FP 療法2 コース)を施行した。CRT 後3 か月後のPETCTでは心臓の腫瘤像およびFDG 集積は消失し,CR と判断した。その後は骨転移,肝転移の出現を認め集学的治療を施行したが,食道癌術後15 か月,心筋転移診断後11 か月で死亡した。食道癌の心筋転移は非常にまれであり予後不良とされるが,本症例は集学的治療により心筋転移診断後約1 年の長期生存が得られた1 例であり,これを報告する。 -
炎症マーカーから評価した通過障害を伴う切除不能進行胃癌に対する緩和的胃空腸吻合術の適応
45巻2号(2018);View Description Hide Description狭窄や出血などの症状を伴う胃癌に対する緩和的手術はQOL 向上の面からは意義があるが,狭窄を伴う切除不能進行胃癌に対する緩和的胃空腸吻合術の意義と適応に関してはまだ検討の余地がある。そこで今回,通過障害を伴う胃癌に対する緩和的胃空腸吻合術の意義や適応に関して,術前の炎症マーカーを用いて評価を行った。対象は,当科で胃空腸吻合術を行った狭窄を伴う切除不能進行胃癌15 例とした。炎症マーカーとして血中リンパ球/単球数比(LMR),血中好中球/リンパ球数比(NLR),血中CRP/アルブミン比(CAR)を用いた。術前に炎症反応がなかった場合は炎症反応を伴った場合に比べ固形食摂取率,退院率,化学療法施行率が有意に良好で,生存期間も有意に長かった(中央値307 日vs 73 日)。通過障害を伴う切除不能胃癌に対する胃空腸吻合術を施行するに当たり,術前の炎症反応の有無はその予後・効果を予測する一つのマーカーとなる可能性があると考えられた。特に炎症反応を伴う症例の場合には,その適応は慎重に判断する必要がある。 -
術前化学療法を施行した大腸癌肝転移切除症例における肝所属リンパ節転移の状況
45巻2号(2018);View Description Hide Description大腸癌肝転移症例における肝所属リンパ節転移は5〜28%に生じ,予後不良因子と報告されている。近年,新規抗悪性腫瘍薬の出現により術前化学療法の有用性が示されはじめている。しかし術前化学療法を施行した肝転移切除例における肝所属リンパ節転移を検討した報告は極めて少なく,その頻度や特徴を明らかにすることを目的に検討を行った。対象は2001〜2016 年までに当科で術前化学療法施行後肝切除を施行した大腸癌肝転移症例33 例とした。肝切除時に肝所属リンパ節をサンプリングした。転移を認めたのは1 例(3%)であった。当科における術前化学療法非施行80 例と比較すると,術前化学療法施行例はH Stageの進行した症例が多かったが,肝所属リンパ節転移率には有意差は認めなかった。 -
ラジオ波焼灼治療後の腫瘍播種に対して繰り返し外科的切除を施行した肝細胞癌の1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description肝細胞癌に対するラジオ波焼灼治療(RFA)後の穿刺経路播種および腹腔内播種に対して外科的切除を施行した1 例を経験した。症例は79 歳,男性。初発肝細胞癌(S2/3)に対するRFA施行 5 か月後に肝内再発(S2)を認めた。手術目的に当科紹介となり,腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した。病理組織学的には,低分化型肝細胞癌(pStageⅡ)であった。RFA施行8 か月後の腹部CT にてRFA穿刺経路に一致した皮下に小結節を複数個認め,穿刺経路播種の診断にて皮下腫瘤摘出術を施行した。さらにRFA施行19 か月後の腹部CT にて脾門部に結節(33 mm)を認め,腹腔内播種と診断した。放射線療法を行うも腫瘤は増大傾向(49 mm)であり,RFA施行26 か月後に腹腔鏡下播種結節摘出術を施行した。病理組織学的には,いずれも肝内病巣に類似した組織像を呈していた。腹腔内播種結節摘出後4 か月が経過し,無再発生存中である。RFA後の腫瘍播種に対する積極的な外科的局所制御は有効であると思われた。 -
癌腹膜播種再発による下部消化管穿孔手術例の検討
45巻2号(2018);View Description Hide Descriptionはじめに:今回,当院で経験した癌腹膜播種再発における下部消化管穿孔手術を施行した症例について検討した。対象:当院で緊急手術を施行した腹膜播種再発癌患者の下部消化管穿孔症例4 例。結果:男性2 例,女性2 例,年齢は65.5(63〜71)歳。穿孔部位は小腸3 例,上行結腸が1 例で,来院時APACHEⅡスコアは14.5(10〜16)点であった。術式は穿孔部の切除3 例,人工肛門造設が3 例に施行された。4例中2 例で細菌性腹膜炎の制御が困難となり,術後16 病日に死亡した。1 例は耐術しBSC 継続,術後4か月生存した。結語: 長期的な予後は期待できない一方で,術後経口摂取の再開や退院が可能であった症例もあり,腹膜播種による下部消化管穿孔について予後や手術のリスクなど十分なインフォームド・コンセントを行った上で,外科的治療も選択肢になり得ると思われる。 -
2年間の化学療法でDown-Stagingし根治切除を施行した腹膜転移を伴う膵頭部癌の1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description腹膜転移を伴う膵頭部癌に対して2 年間の化学療法後にdown-staging が得られ根治切除し得た症例を経験した。症例は55 歳,女性。腹部CT で膵頭部に径3.0 cmの腫瘤を認め,総肝動脈に接触する切除可能境界膵癌に対して審査腹腔鏡(SL)を施行したところ,腹腔洗浄細胞診が陽性(CY1)であった。gemcitabine(Gem)+S-1 併用療法(GS)を開始し,10か月後のSLで右下腹部に播種結節を認め,CY1 であったことからGem+nab-paclitaxel療法(Gem+nab-PTX)に変更した。6 か月後のCT で右卵巣に腫瘍を認め診断的腹腔鏡下右卵巣摘出術を施行し,組織学的に卵巣への転移と診断され,CY1であった。Gem+nab-PTXを継続し,GS 開始から2 年時のSLで,CY は陰性化し新規遠隔転移もないことから,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除再建術を施行した。膵癌取扱い規約第7 版に基づき組織学的にypT3,ypN0,cM1,Stage Ⅳ,R0 切除,組織学的治療効果はGrade 1b と診断された。術後6 か月無再発生存中である。 -
栄養障害を有するBCLC Stage B の肝細胞癌に対する経橈骨動脈的肝動脈化学塞栓術の意義
45巻2号(2018);View Description Hide Description背景・目的:Barcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)stage B の肝細胞癌(HCC)に推奨される治療法は経カテーテル的肝動脈化学塞栓術(TACE)であるが,stage B には栄養障害のためTACE が施行できない症例も含まれる。そこで,分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤で栄養障害を改善させTACEを施行することで,HCC 生存期間の延長に寄与できるか検討した。方法:対象は肝硬変合併HCC 88 例で,まず全例にBCAA顆粒製剤を投与した。投与後にAlb 値が変化なし,もしくは低下例はBCAA 顆粒製剤から肝不全用経腸栄養剤に変更した。本治療でChild-Pugh score が改善した症例はHCC に対するTACE を施行した。成績:BCAA 製剤による積極的な栄養療法の介入により,88 例中66 例(75%)にTACE を施行し得た。TACE を施行した症例は有意に生存期間が延長した(p<0.0001)。結論:BCLC stage B のHCC に対しては早期に肝不全用経腸栄養剤へ変更し,TACEを行うことでHCC 治療成績の向上に寄与する可能性がある。 -
人工肛門狭窄例に発症した盲腸癌に対し化学療法施行後に手術を行った1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は55 歳,女性。S 状結腸憩室穿孔でハルトマン手術を施行後であり,2 年後,腹痛で当科を受診した。人工肛門狭窄で下部内視鏡,組織学的検査を施行できなかったが,CT,PET-CT で盲腸癌,肝転移,遠隔リンパ節転移と診断,CapeOX+Bmab療法,IRIS+Bmab療法を施行した。その後,増悪した人工肛門狭窄で腸閉塞を繰り返し,CT では転移巣が増大,さらに人工肛門閉鎖の希望があることから原発巣切除の方針とし,結腸亜全摘術,人工肛門閉鎖術を施行した。病理検索でRAS野生型と判明し,術後Pmab+CPT-11 療法を行い転移巣は一時縮小するも再増悪し,初回治療開始2年2か月,原発巣切除7 か月後に死亡した。大腸癌では転移巣が切除不能の際は,原発巣が有症状の時を除き化学療法を行うことも多い。本症例は原発巣無症状も人工肛門狭窄による腸閉塞を発症し,抗EGFR 抗体薬の使用可否検索が必要と考え,手術を施行した。 -
大腸癌の腹膜播種再発の切除後治癒したと思われた3 症例
45巻2号(2018);View Description Hide Description大腸癌切除後の腹膜播種再発に対する手術を積極的に実施し,印象に残った3 症例を提示する。症例1: 初回手術時44歳,女性。上行結腸癌で右半結腸切除を施行した。tub1,pT3N0M0,stageⅡAであった。3 年後,左卵巣転移を摘出した。その5 年後,ダグラス窩再発で切除した。最終手術から13 年,再々発なし。症例2: 初回手術時61 歳,男性。下血で発症の横行結腸癌(tub1,pT4aN0M0,stageⅡB)を切除した。2 年9 か月後,腹膜播種で腸閉塞となり切除した。その2年6か月後,空腸に腹膜播種が出現し部分切除した。FOLFOX6 を15 コース施行した。最終手術から8 年,再発なし。症例3: 初回手術時62 歳,男性。S 状結腸癌(tub2,pT3N0M0,stageⅡA)を切除した。1 年8 か月後,有痛性の腹壁再発を切除した。その8 か月後,腹壁に再々発し切除した。肺転移を計4 回切除し,FOLFOX6 を16 コース投与した。3 年後,骨盤右側壁再発を切除した。さらに2 回リンパ節再発を切除し,最終手術から5 年6か月,再発なし。大腸癌治療で重要なことは遺残なく切除し,適応があれば何度でも切除を考慮することであると考える。 -
膵頭部領域未分化癌に対し根治術後下大静脈周囲リンパ節再発を来し切除し得た1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。嘔吐を主訴に前医を受診した。肝浸潤・多発肝転移を伴う膵頭部領域癌の診断で姑息手術を施行され,以降の治療目的に当院へ紹介となった。精査にて多発肝転移を疑い,病変は血管腫と診断した。膵頭部領域癌肝浸潤に対し,肝部分切除合併膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本では十二指腸および膵頭部に広がる腫瘍と十二指腸粘膜下腫瘍の2 病変を認め,病理結果では十二指腸-膵頭部から発生した未分化癌であり,十二指腸粘膜下への転移を伴っていると考えられた。術後2 年間無再発であったが,定期画像検索で右腎静脈根部付近から下大静脈(inferior vena cava: IVC)内へ伸展する腫瘤を認め,IVC 内の腫瘍栓を伴うリンパ節再発と診断した。抗癌剤治療によって腫瘍栓の縮小が得られ,他の再発病変を認めなかったため,salvage手術を施行した。病理結果では,腫瘍栓に異型細胞を認め,原病転移として矛盾しない像であった。退院後化学療法を施行し,術後15 か月時点で無再発生存中である。 -
膵管出血を来した膵頭部浸潤性膵管癌の1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description今回われわれは,膵管出血(hemosuccus pancreaticus: HP)を来した膵頭部浸潤性膵管癌の1 例を経験した。症例は51 歳,男性。アルコール常用歴あり。食欲不振と黄疸にて近医より紹介され入院となった。閉塞性黄疸と腫瘍マーカー高値を認め,CT およびMRCPから膵頭部浸潤癌が疑われた。入院直後よりタール便と貧血の進行を認め,緊急上部消化管内視鏡検査にて十二指腸乳頭からの活動性の出血を認めた。血管造影検査では胃十二指腸動脈の分枝に不整像を認め,同部を中心にコイル塞栓術を行った。減黄後,膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織診断は高〜低分化型膵管癌,T3N0M0,stage Ⅲであった。HP は仮性動脈瘤を併発した慢性膵炎での報告がみられるものの,膵癌ではまれである。さらに,浸潤傾向の強い未分化型や退形成性膵管癌などの富血管性腫瘍での報告例は散見されるが,乏血管性腫瘍である通常型浸潤性膵管癌のHP となると極めてまれである。文献的考察を加えて報告する。 -
良好な局所制御が得られた重篤な併存症を有した局所進行乳癌の1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は66 歳,女性。滲出液と出血および悪臭を伴う露出した巨大な左乳房腫瘤と,腹水貯留による腹部膨満を主訴に当院を受診した。針生検で浸潤性乳管癌と診断,CT 検査では左腋窩リンパ節転移を認めたが,遠隔転移はなかった。performancestatus(PS)はGrade 3 で,非アルコール性脂肪肝炎および肝硬変と腎機能障害といった重篤な併存症を有していた。全身状態が改善してからDMpC療法を開始,並行してMohsペーストによる処置を行った。巨大な左乳房腫瘤と腋窩リンパ節転移は著明に縮小した。乳房切除,腋窩リンパ節郭清および分層植皮術を施行,PSはGrade 0 に回復した。術後に4か月間DMpC療法を行い,左胸壁と鎖骨上に放射線療法を行った。 -
局所進行乳癌に対し化学療法とホルモン療法により局所コントロールを得た1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。1 年前から左前胸部からの出血を主訴に当院皮膚科を初診した。初診時,左前胸部に潰瘍を伴う腫瘤を認め当科紹介となった。超音波で左乳房全体に腫瘤を認め,また24 mmまでの腋窩リンパ節を認めた。乳房造影MR検査では左乳房AB 領域を中心に77 mm の腫瘤を認め,皮膚浸潤を認めた。左前胸部の腫瘤潰瘍部の一部を切除生検し,invasive ductal carcinoma,ER(+),PgR(+),HER2(−),Ki-67 20%の診断であった。左乳癌,T4bN1M0,stage ⅢBの診断で,first-lineとしてpaclitaxel+bevacizumab療法を行った。原発巣は縮小率32%,腋窩リンパ節は縮小率70%であったが副作用として高血圧Grade 3 を認め,second-lineとしてレトロゾール内服を開始した。その後も腫瘍縮小効果を認め,局所の潰瘍は消失し,硬結を認めるのみとなった。現在,初診時より4 年経過しているが遠隔転移を認めず,良好な局所コントロールが得られている。 -
CTAP ガイド下経皮的ラジオ波凝固療法が奏効した膵癌肝転移の1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。脾門部に浸潤する膵尾部癌,同時性肝転移(T4N0M1,Stage Ⅳ)の診断にてgemcitabine(GEM)+nab-paclitaxel(nabPTX)4 コースを施行されたが原発巣は制御できず,膵尾部癌に対するIMRT(76.5 Gy/17 Fr)を施行された。局所制御は良好であったが,EOB-MRI,PET-computed tomography(CT)にて多発肝転移は増大傾向であった。超音波,単純CT,造影エコーにて肝転移は描出困難であったため,経動脈性門脈造影CT(CT during arterial portography:CTAP)による造影欠損部に対してCT 透視ガイド下に経皮的ラジオ波凝固療法(RFA)を施行した。その後1年間無再発にて経過観察中である。化学療法抵抗性の多発肝転移で,各種画像にて描出困難な病変に対してCTAP ガイド下経皮的RFAが奏効した症例を経験したため報告する。 -
多発肝転移,門脈腫瘍栓を伴う横行結腸癌に対し治療が奏効した1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description患者は70 歳,男性。横行結腸癌の精査加療目的に当科紹介受診となった。CT 検査で肝S6,S8 に転移を疑う結節影と門脈腫瘍栓の所見を認めた。手術による治癒切除は困難の判断にて化学療法による治療方針となった。capecitabine/oxaliplatin(CapeOX)療法開始5 日目に腫瘍部の穿孔を認め,抗菌剤治療にて症状が改善せず,穿刺膿瘍ドレナージ,回腸人工肛門造設術を施行した。全身状態改善後に化学療法を再開した。CapeOX 9 コース施行後,Grade 3 の感覚性神経障害(手足のしびれ)の副作用を認め,レジメンを irinotecan/tegafur-gimeracil-oteracil potassium(IRIS)に変更した。IRIS 8 コース施行後のCT およびFDG-PET 検査では腫瘍病変は不明瞭となり,門脈塞栓部を含めFDGの異常集積像は認めなかった。化学療法開始後1 年6 か月後も明らかな病変の再燃は認めず,外来化学療法(IRIS)を継続している。切除不能大腸癌に対しては,全身状態を考慮しながら化学療法を含めた集学的治療を検討することが必要と考える。 -
術前化学療法中に胃癌穿孔を来し二期的に根治切除し得た進行胃癌の1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。主訴は腹痛。精査にて胃前庭部小弯側に潰瘍を伴う40 mm大の進行胃癌(cT3N2M0,cStageⅢA)と診断した。術前化学療法としてS-1(80 mg/m 2)+CDDP(60 mg/m2)療法2 コース後にD2リンパ節郭清を伴う胃切除術を予定した。1 コース目day 13に急激な心窩部痛が出現し,胃癌穿孔および汎発性腹膜炎と診断し,腹腔鏡下縫合閉鎖ドレナージ術を施行した。術後16 日目,開腹幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清,Billroth Ⅰ法再建術を施行した。二期的な治療戦略で根治切除を施行し得た胃癌穿孔症例を経験したので報告する。 -
Conversion Surgeryにより長期生存中のStage Ⅳ胃癌の3 例
45巻2号(2018);View Description Hide DescriptionStage Ⅳ胃癌に対する標準治療は全身化学療法である。化学療法奏効例に対して原発巣切除を行うconversion surgeryは有望視されているが,まだ標準治療として確立はされていない。Stage Ⅳ胃癌に対してconversion surgeryを施行し,長期生存を得た3 例を経験したので報告する。症例1 は59 歳,女性。L-Less Post領域のType 2 の腺癌(tub1),cT3N2M1(#16a2lat),Stage Ⅳの診断でS-1+cisplatin 療法4 コース後にリンパ節がPR となったため,2011 年2 月幽門側胃切除・D2 郭清を施行した。ypT2N2 組織学的効果判定はGrade 1a であった。症例2 は74 歳,男性。UM-Less Ant領域のType 3の腺癌(por1)で審査腹腔鏡を行い,cT3N2H0P1CY1,Stage Ⅳの診断でdocetaxel+cisplatin+S-1療法6 コースでリンパ節移転はPR,新規病変の出現がないため審査腹腔鏡を行い,P0CY0 を確認後に2012 年4 月胃全摘・D2 郭清を施行した。ypT3N1,組織学的効果判定はGrade 2 であった。症例3 は64 歳,女性。UM-LessのType 3 の腺癌(por1)でcT3N2H1M0(liver),Stage Ⅳの診断でcapecitabine+cisplatin療法6 コース後に肝転移PR となり,2012 年7 月胃全摘・D2郭清を施行した。ypT3N1,組織学的効果判定はGrade 1bであった。全例で術後補助療法としてS-1 単剤の投与を開始した。症例1は術後6 か月で傍大動脈リンパ節再発が出現し,second-line治療としてweekly paclitaxel療法を開始した。6 コースでCR となり,以後継続中である。症例2,3 はS- 1 を8 コース終了後は無治療であるが無再発である。術後62〜77か月経過し,全例が生存中である。Stage Ⅳ胃癌に対するconversion surgeryが予後の改善につながるか新たな臨床試験が必要と思われる。 -
巨大虫垂粘液腺癌に対して腹腔鏡下回盲部切除術を施行した1例
45巻2号(2018);View Description Hide Description嚢腫を伴う虫垂粘液腺癌は手術操作で破裂し,粘液が腹腔内に漏出すると予後の悪化をもたらす。虫垂粘液腺癌に対し,腹腔鏡下に血管処理,リンパ節郭清,腸管の切離を先行させ安全に摘出した症例を経験したので報告する。症例は40代,女性。主訴は右下腹部と発熱であり,抗菌薬投与するも改善を認めなかった。CT にて骨盤右側に最大径75 mmの嚢胞性病変を認め,回結腸動脈に沿って多数のリンパ節腫大を認めた。術前診断は虫垂粘液腺癌の疑いと診断し,腹腔鏡下回盲部切除術を嚢腫を破ることなく上記の手順で施行した。病理診断は虫垂粘液腺癌の所見であった。術後経過良好で術後7 日目に退院し,術後6 か月無再発生存中である。嚢胞性腫瘍を腹腔鏡手術で切除するには,腫瘍に鉗子が触れないように配慮し,血管切離と腸管切離を先行して行う術式が有用と考える。 -
同時性肝転移を伴った膵癌に対し集学的治療が奏効し長期生存中の1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description今回われわれは,術中に診断された同時性微小肝転移を有する膵尾部癌症例に対して外科的切除を含めた集学的治療を施行し,長期生存中の1 例を経験したので報告する。症例は62 歳,男性。2012 年11 月膵尾部癌に対する膵体尾部切除術の際に肝内側区域に2 mm大の白色結節を指摘され,病理学的に膵癌肝転移と診断された。術後gemcitabine(GEM)+S-1併用(GS)療法,GEM単独療法,S-1単独療法を施行したがCA19-9の上昇を認め,初回手術から21 か月後に肝転移を認めた。肝転移に対して肝左葉切除,陽子線療法2 回を施行した。肝切除後局所再発による腸閉塞に対して局所腫瘍切除術,横行結腸部分切除術を施行した。腹膜播種や大動脈周囲リンパ節再発も出現したため,全身化学療法としてS-1 単独療法,FOLFIRINOX療法,GEM+nab-paclitaxel(PTX)併用療法を施行した。集学的治療を行い,全身状態を維持して術後51 か月生存中である。 -
肝細胞癌術後の下大静脈・右房内再発に対して逆行性脳灌流併用超低体温循環停止法を用いて切除した1 例
45巻2号(2018);View Description Hide Description症例は77 歳,男性。肝細胞癌破裂に対して拡大肝右葉切除術を受けた。術後30 か月のフォローにて,下大静脈から右房内に進展する約7 cm 大の腫瘍栓が発見された。手術は逆行性脳灌流併用超低体温循環停止法による右房内腫瘍摘出が予定された。胸骨正中切開にて心嚢切開し,冷却を開始した。20.4℃の超低体温にて心停止した後,下大静脈周囲の剥離を行った。右房から下大静脈にかけて切開を加え,腫瘍栓を摘出した。この間,逆行性脳灌流を追加し脳保護を行った。術後は合併症なく経過し術後第12 病日に退院,6 か月間無再発生存している。超低体温循環停止後に病巣へのアプローチを行うことにより,腫瘍の崩壊による肺塞栓や播種を予防できた。また,切除に時間を要する可能性があったため,逆行性脳循環を併用してその手技を確実に行うことができた。
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