癌と化学療法

Volume 45, Issue 6, 2018
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総説
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原発不明がんの診療
45巻6号(2018);View Description
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原発不明がんとは,十分な検索にもかかわらず原発巣が不明で組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍のことである。頻度はおおむね1〜5%とされている。原発巣が確定できない悪性腫瘍が本カテゴリーに分類されるため,種々の腫瘍が混在した不均一な疾患グループよりなっており,様々な臨床形態をとる。まずは組織を光学顕微鏡で評価し,高・中分化腺癌,低分化腺癌/未分化癌,扁平上皮癌,神経内分泌腫瘍,低分化悪性新生物の五つに区分される。本疾患は一般的に予後不良であり,プラチナ系薬剤を使用するのが一般的ではあるものの生存期間の中央値は6〜9 か月とされる。
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特集
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- がんの早期診断
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がんの早期発見をめざした代謝物バイオマーカーの可能性
45巻6号(2018);View Description
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近年,DNA,RNA,蛋白質,低分子代謝物などの生体を構成する分子を網羅的に分析するオミクス解析が発展してきた。なかでも,低分子代謝物を網羅的に解析するメタボローム解析は最も新しいオミクス解析の一つで,注目が高まっている。代謝物変動を評価し生体内代謝プロファイルを明らかにすることは,生体情報の理解につながり,特に新たな病態の解明や代謝物バイオマーカーの発見につながる可能性がある。本稿では,オミクス解析とともにメタボローム解析とはどのようなものかについて説明する。さらに,われわれが行っているメタボローム解析を用いた膵がんに対する代謝物バイオマーカー研究について紹介する。 -
体液MicroRNA を対象としたがんの早期診断方法の開発とその展望
45巻6号(2018);View Description
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マイクロRNA(microRNA: miRNA)は,非コードRNAの一つであり,標的となる遺伝子の発現を主に転写後レベルで調節する。miRNAは多彩な生命現象の制御に関与しているだけでなく,がんをはじめとした様々な疾患においてmiRNAの異常発現がしばしば観察されることが複数の研究によって明らかにされている。がんの悪性化においてもmiRNA は,がん化(形質転換),抗がん剤耐性,さらには浸潤・転移の制御にかかわることが報告されている。近年,miRNAは細胞内で機能するだけでなく,細胞外に分泌され周囲の細胞に取り込まれ機能することが明らかにされた。細胞内miRNA に加えて分泌された細胞外miRNA も,がんの悪性化に重要な役割を果たす。したがって,体液中の分泌型miRNA はがん治療において有望なバイオマーカーおよび治療標的となり得ると考えられる。本稿では,分泌型miRNA に関する最近の知見を紹介するとともに,新たな診断マーカーおよび治療標的として応用展開させる試みも概説する。 -
便―便中がん特異的遺伝子変異検出・便を用いた大腸癌の遺伝子診断―
45巻6号(2018);View Description
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便を利用した大腸癌に対するスクリーニングとしては,便中に存在する血液を検出する便潜血反応(fecal occultblood test: FOBT)が行われており,FOBT を用いた大規模な大腸癌検診によってその癌死亡率を減少させることが示されている。しかしながら,早期大腸癌,右側大腸癌や大腸腺腫に対する感度は低い傾向を認め,FOBT の繰り返し検診によっても発見できない中間期癌の存在も無視できないとの報告もあるが,大規模な集団を対象に行う大腸癌検診ツールとしての地位は揺るぎない。これらFOBT の弱点を克服するためのツールとして便中に存在する腫瘍細胞由来のDNAを検出し,大腸癌のスクリーニングを行う方法が報告され,臨床応用されてきている。本稿では,現在までに報告されている便中に存在する腫瘍細胞由来のDNA を検出するツールのまとめを行い,便中がん特異的遺伝子変異検出便を用いた大腸癌の遺伝子診断の方向性を検討する。 -
がんの匂いの研究
45巻6号(2018);View Description
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固形がんの治療では,がんを早期発見し切除することが功を奏す。新たながん検出法の開発は,早期発見のための様々な問題を解決するブレイクスルーになると期待される。われわれを含め犬などの生物嗅覚を利用して,がんに特異的な匂いがあることが報告され,がんに匂いがあることが認知されてきた。がん細胞は遺伝子変異を起点として代謝変化を生じ悪性形質を獲得するが,匂い物質はその代謝の最終産物であると考えられる。新たながん検出マーカ開発を目的に,がんに特異的なDNA,RNA,蛋白質,代謝とその産物の変化を網羅的に解析するゲノミクス,プロテオミクス,メタボロミクスといったオーミクス研究が盛んに行われており,がんの匂い物質特定の研究もオーミクス研究の線上にあると考えられる。様々な環境物質のなかに埋もれたがん特異的匂い物質を特定することは容易ではないが,それらを生物嗅覚で認識可能である事実から人が獲得可能な技術になると期待できる。新たながん検出マーカとしての匂い物質の特定とそれに対するセンサ開発が多くの人の幸せにつながることを夢に,われわれは研究を継続している。 -
線虫C. elegansによるがんの早期診断
45巻6号(2018);View Description
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がんは日本人の死因の第1 位を占め,日本人の2 人に1 人が生涯にがんを罹患する。医療費削減の観点からも,がんの早期診断・早期治療が望まれるが,わが国のがん検診の受診率は依然として低い。その原因として,現行のがん検診はがん種ごとに異なる検査を受けなければならず,コストや時間がかかることや検査に苦痛が伴うことなどがあげられる。そのため,より安価で簡便ながんのマルチスクリーニング法の開発が課題である。既存のがんスクリーニング検査は画像検査や人工機器によって行われており,感度と低コストを両立するのが困難であった。われわれは,線虫の優れた嗅覚を用いて尿中のがんの匂いを検出し,多種のがんを同時にスクリーニングできる方法(N-NOSE)を開発した。242 検体について調べた結果,N-NOSE は早期がんを含む10 種類のがん種について感度95.8%,特異度95.0%で検出できることが示された。線虫は飼育コストも低く,クローン化されており個体差がないため安定した結果が得られるという利点がある。N-NOSE は,尿検体を用いて非侵襲的かつ安価に様々ながん種の有無を調べることができるため,がん検診の一次スクリーニングとしての利用が期待される。
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Current Organ Topics:Central Nervous System Tumor 脳腫瘍 グリオーマに対する追加治療
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原著
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小児がん患者の家族に対する抗がん剤曝露の実態調査
45巻6号(2018);View Description
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抗がん剤の職業性曝露についてはすでに調査され,その対策が確立されている。小児がん患者の入院加療中は日常的に家族が付き添い,患児の排泄介助など日常生活援助が行われるが,家族への曝露の実態は明らかではない。本調査ではシクロホスファミド(CPM)投与を受けた患児に付き添う家族の尿および療養環境におけるCPM濃度を測定した。対象は大量CPM 投与を受けた小児がん患者(幼児3 名,学童・思春期3 名)家族とした。幼児家族から320(8.39〜1,510)ng,学童・思春期家族から0(0〜58.4)ngのCPMが検出された(p=0.01)。学童・思春期家族に比し,投与絶対量が少ないはずの幼児家族への曝露量が有意に多かった。また,患児の沐浴湯をはじめ下着,シーツからもCPMが検出され,患児の体液と排泄物を介した曝露が明らかとなった。小児がん領域においては,医療者のみならず家族や同室の他の患児に対する健康被害を最小限にとどめるために,患児の年齢に応じた曝露対策を講じる必要がある。 -
当院におけるホルモン受容体陽性HER2 陰性進行・再発乳癌に対するフルベストラントの使用経験
45巻6号(2018);View Description
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2012 年1 月〜2016 年9 月までに当院でフルベストラント(fulvestrant: FUL)投与を開始したホルモン受容体陽性HER2 陰性進行・再発乳癌41 例(再発33 例,Stage Ⅳ 8 例)について,内分泌療法のline 数と効果を中心に後方視的に検討した。FUL を使用したline 数は中央値で3,治療成功期間(time to treatment failure: TTF)は中央値で7 か月,全体の奏効率(response rate: RR)19.5%,臨床的有用率(clinical benefit rate: CBR)は53.6%であった。RRはthird-lineまでは25%であり,fourth-line 以降では11.1%と低下を認め,first-line の内分泌療法としてFUL 500 mg を使用したFIRST 試験,FALCON試験の結果と同様に,よりup frontでの使用が望ましいと思われた。肝転移症例ではTTF が有意に短く,軟部組織(皮膚,リンパ節)のみの転移ではTTF は有意に長く,転移部位がFULの効果予測因子になり得ると考えられた。
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医事
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癌化学療法施行患者における安全性評価と苦痛度評価の差異に関する患者因子の検討
45巻6号(2018);View Description
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癌化学療法施行時の安全性評価の方法として,一般にCTCAEが用いられている。しかしCTCAEは医療従事者による評価であり,患者本人による苦痛度評価を反映していないという指摘がある。このため医療従事者は患者の抱える苦痛を過小評価しており,十分な対策が取れていないことが懸念されている。目的:本研究では,患者本人の苦痛度評価をPROCTCAEを用いて評価し,安全性評価(CTCAE)と苦痛度評価(PRO-CTCAE)の差異を引き起こす患者の因子を検討した。方法: 組み入れ基準を満たした患者は72 人であり,「安全性評価と苦痛度評価の差異が生じた患者(A群17 人)」,「安全性評価と苦痛度評価の差異が生じなかった患者(B 群55 人)」の2 群に分けた。化学療法施行前の1 回目来院時および化学療法施行後の2 回目来院時に,QOL 評価,うつ評価,CTCAE,PRO-CTCAE の評価を行った。結果: A群,B 群について二変量解析を行ったところ,うつスクリーニング,QOL-ACD(身体状況,精神・心理状態,face scale,合計),PRO-CTCAEにおいて確認された副作用の項目数では,統計学的有意差が認められた。ロジスティック回帰分析の結果,QOL-ACD(身体状況)において統計学的有意差が認められた(odds ratio=1.47,p=0.013)。これにより,化学療法施行前のQOL評価で身体的苦痛のある患者において,安全性評価と苦痛度評価の差異を生じさせる可能性が示唆された。 -
医師オーダーサポート業務がde novo肝炎予防に与えるインパクト
45巻6号(2018);View Description
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2009年,「免疫抑制・化学療法による発症するB 型肝炎対策ガイドライン」が発表された。しかし同ガイドラインを遵守せずに劇症化した例の報道も散見され,de novo 肝炎予防は喫緊の課題である。当院も2014 年1 月の遵守率は20.4%であったが,2014 年6 月より電子カルテシステム上でde novo 肝炎予防のアラート表示後には34.3%に上昇した。2015 年4月には外来カルテにde novo肝炎注意喚起文書を挟みこんだところ63.9%まで上昇したが,その後しだいに減少した。今回,薬剤師が医師オーダーサポート業務を実践することで,2016 年3 月にHBs 抗原,HBs 抗体,HBc 抗体の測定100%を達成すると,2016年8 月には真のガイドライン遵守率であるHBV-DNA 測定が100%となった。薬剤師による医師オーダーサポート業務は教育的であり,かつde novo 肝炎予防,さらに医師業務負担軽減につながり,安全ながん化学療法に寄与できることが示唆された。
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薬事
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乳癌患者へのアナストロゾール療法における服薬アドヒアランス評価
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目的:乳癌術後内分泌療法におけるアロマターゼ阻害剤の有効性は多数報告されているが,服薬アドヒアランスについて詳細に評価したものは少ない。今回,当院におけるアナストロゾール(ANA)を初回治療とした閉経後原発乳癌術後患者の服薬継続率と服薬中止理由について調査した。方法:当院で,ANAを投与された遠隔転移のない原発乳癌症例102 例を対象に,服薬開始から5 年経過時の服薬継続率,無病生存率を算出した。服薬中止理由,中止後に実施された薬物療法についても調査した。結果: 5 年経過時の服薬継続率は79%(81/102)であり,他剤に変更したものを含めた継続率は88%(90/102)であった。ANAの服薬中止理由はprogressive diseaseが最多で8 例,arthritis が5 例,nauseaが3 例であった。無病生存率は92%(94/102)で,全生存率は97%(99/102)であった。結論: ANAは高い服薬継続率を示した。有害事象などで他の薬剤に変更になった場合においても閉経後乳癌術後内分泌療法の服薬アドヒアランスは良好に維持されていた。
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症例
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術前DCS 療法が奏効せず二次療法にCPT-11療法を施行し切除し得た局所進行胃癌の1 例
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症例は70 歳,男性。貧血精査の上部消化管内視鏡検査(EGD)にて胃前庭部癌と診断した。造影CT 検査にて周囲リンパ節腫脹,原発巣の肝や膵への浸潤を疑ったため,術前化学療法を施行する方針とした。docetaxel,cisplatin,S-1(DCS)療法を開始し,2コース施行後のCT にて腫瘍は増大し,二次療法にirinotecan(CPT-11)療法を施行した。1 コース施行後のCT にて腫瘍は縮小し,肝,膵との境界も保たれたため胃全摘術D2 郭清を施行した。術後補助化学療法としてcapecitabine,oxaliplatin(CapeOX)療法を施行し,15 か月無再発生存中である。DCS 療法で抗腫瘍効果が乏しい場合,二次療法にCPT-11 療法は選択肢となると思われた。 -
術前化学療法後に切除し得た巨大直腸GastrointestinalStromal Tumor の1 例
45巻6号(2018);View Description
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症例は66 歳,男性。前医より前立腺腫瘍の疑いで当院へ紹介となった。経会陰針生検にてCD34・c-kitが陽性の紡錘形細胞を認めた。腹部造影CT 検査では骨盤内に巨大腫瘍を認めた。膀胱・前立腺は圧排され,後壁浸潤が疑われた。直腸原発gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断し,imatinib(IM)400 mg/day 連日投与による術前化学療法を施行した。3 か月後の縮小率は33.6%で,その時点で手術の方針となった。R0手術を優先し,骨盤内臓全摘術,回腸導管造設術を施行した。現在,術後2年6か月経過しているが,無再発生存中である。 -
貧血・膿瘍形成を伴う局所進行S 状結腸癌の輸血拒否患者に対しCapeOX療法後根治切除し得た1 例
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症例は60 歳台,女性。輸血拒否者。貧血(Hb 6.2 g/dL)の原因精査で膿瘍,水腎症を伴うS 状結腸癌と診断した。無輸血での根治切除は困難と判断し,横行結腸人工肛門造設後CapeOX療法を3 コース施行した。貧血の改善と腫瘍,膿瘍の縮小を認めたため,S 状結腸切除術,D3 郭清,小腸部分・左付属器合併切除術を施行し,無輸血で根治切除し得た。術前化学療法は貧血を有する高侵襲手術で無輸血治療を完遂するための有用な手段と考えられた。 -
術前化学療法により肛門機能温存手術が可能となった直腸GISTの1例
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症例は40 歳台前半,女性。肛門痛を主訴に近医を受診した。画像検査で9 cm 大の骨盤内腫瘍を認め当院紹介となった。精査の結果,直腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断された。腫瘍は肛門近くまで伸展しており,根治切除には直腸切断術が必要と考えられたが,患者から肛門温存の希望がありメシル酸イマチニブ(IM)による術前化学療法後の根治切除を予定した。IM 投与開始から6か月後の腹部画像検査で腫瘍は約4.8 cm まで縮小し,肛門を温存した腫瘍切除術を施行し得た。直腸GIST に対して,肛門機能温存をめざしたIM による術前化学療法は有効な治療法の選択肢であると考えられた。 -
維持透析患者に対しmFOLFOX,Bevacizumab併用療法を安全に施行した直腸癌・多発肝転移の1 例
45巻6号(2018);View Description
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症例はIgA 腎症による慢性腎臓病にて透析導入をされている50 歳台,男性。直腸癌・多発肝転移にて腹腔鏡下ハルトマン手術施行後,肝転移に対する化学療法を施行した。mFOLFOX療法2 コース目よりbevacizumabを追加し,8 コース終了後には腫瘍縮小,腫瘍マーカーの低下を認めた。好中球減少(Grade 3),食欲不振(Grade 1)と吃逆(Grade 1)を認めた以外は重篤な有害事象もなく2017 年7 月までに8 コースを終了し,1 回目の評価ではPR inで,2 回目の評価も継続でPRである。 -
Oxaliplatinによる類洞閉塞症候群で切除が危ぶまれた転移性肝癌の1 例
45巻6号(2018);View Description
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症例は62 歳,男性。排便停止,腹部膨満感を訴え受診し,検査の結果,S 状結腸癌肝転移と診断した。人工肛門造設後,SOX+bevacizumab療法を4 コース施行後に肝切除の方針としたが,著明な肝機能低下を認めたため原発巣切除のみ行い,肝機能の改善を待った。2 か月で肝機能は改善し,その間に肝転移巣は増大したが新規転移は認めなかったため,肝切除を行いR0 切除し得た。oxaliplatin による肝機能障害は可逆性であったが,切除可能な大腸癌肝転移に対する術前化学療法は切除のタイミングを逸する危険があり,症例の適応,術前肝機能については慎重に検討する必要があると思われる。 -
Cisplatin(CDDP)+Pemetrexed(PEM)療法を施行した悪性腹膜中皮腫の1 例
45巻6号(2018);View Description
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症例は65 歳,男性。全身倦怠感,食欲不振,体重減少があり,当科に紹介受診した。CT で大量腹水と腹膜に多発腫瘍が認められた。腹水細胞診で腺癌が疑われたが,原発巣は認めなかった。審査腹腔鏡による生検で悪性腹膜中皮腫と診断した。cisplatin(CDDP)+pemetrexed(PEM)療法を行った。CT で腹水の減少は認めたが主病巣は変化を認めず,performancestatusの低下に伴い化学療法は中止し,第104 病日に死亡した。悪性腹膜中皮腫は予後不良であり,腹膜腫瘍を認めた場合,腹膜中皮腫を鑑別に入れる必要がある。 -
腹腔鏡下に切除した高齢男性の侵襲性血管粘液腫の1 例
45巻6号(2018);View Description
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侵襲性血管粘液腫は粘液産生と血管増生を伴う紡錘形の希少な腫瘍であり,その大部分は若年女性に発生する。今回われわれは,高齢男性に発生した侵襲性血管粘液腫を経験したので報告する。症例は75 歳,男性。膵管内乳頭粘液性腫瘍で経過観察されていた。2015 年9 月のCT 検査で骨盤内に長径33 mm の腫瘍性病変を認め,その後も増大傾向であったため精査加療目的で当科に紹介となった。腫瘍はMRI 検査にてT1 低信号,T2 高信号な比較的境界明瞭な病変であり,粘液型脂肪肉腫などを疑い,診断と治療目的で腹腔鏡下切除を行った。切除検体の組織検査で豊富な粘液や血管新生を伴う紡錘形腫瘍細胞の増殖を認め,侵襲性血管粘液腫の診断となった。術後は大きな合併症もなく第10 病日で退院となり,現在18 か月経過するも再発は認めていない。 -
リウマチ性多発性筋痛症と診断されJAK2V617F変異を伴った本態性血小板増多症の1 症例
45巻6号(2018);View Description
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リウマチ性多発筋痛症(PMR)の症例が加速する血小板増多症を呈した。CRP および血球沈降速度はわずかに亢進し,インターロイキン6 は上昇し,リウマチ因子および抗CCP 抗体は陰性であった。筋肉痛は副腎皮質ホルモンの投与により軽快した。末梢血白血球を用いての遺伝子解析でJAK2V617F の変異を認めた。本症例の筋肉痛は骨髄増殖性腫瘍の本態性血小板増多症(ET)およびそれに伴う炎症性変化によるものと考えられた。患者は脳梗塞にて急死した。 -
化学療法が発症に関与したと思われる放射線筋炎の2 例
45巻6号(2018);View Description
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比較的低い線量の放射線治療後にゲムシタビン(GEM)+S-1 療法を行い,リコール現象と思われる放射線筋炎が発症した2 症例を経験した。放射線筋炎はまれであるが,GEMによるリコール現象として発症することがあり,経過観察時には注意が必要であると思われた。
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