Volume 45,
Issue 10,
2018
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総説
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癌と化学療法 45巻10号, 1391-1395 (2018);
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核医学分野では,個別化医療に直結する「theranostic(診断と治療の一体化)」なプローブが続々と開発され,分子標的による PET/SPECT 核種による診断と核種の付け替え(治療用核種への置換)による治療・標的アイソトープ治療(targetedradioisotope therapy: TRT)の新時代を迎えている。近年,a線核種が臨床導入され,従来のb 線核種を凌駕する治療効果を示している。a 線製剤としてラジウム223 が前立腺癌領域で初めて臨床応用され,その高い治療効果(高LET,高RBE)と安全性から幅広い注目を浴び,次なるa線核種としてアクチニウム225 やアスタチン211 の医学利用も期待されている。現時点でa 線TRT の臨床応用は少ないが,国内でも複数のTRT 臨床治験が始まり,近々臨床応用が期待されている。最新のTRT事情と将来展望を概説した。
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特集
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臨床試験から得られた外科治療のエビデンス
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癌と化学療法 45巻10号, 1396-1399 (2018);
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これまでJCOG 胃がんグループでは,試験治療として大動脈周囲リンパ節郭清術(para-aortic nodal dissection:PAND),食道浸潤胃癌に対する左開胸開腹アプローチ,脾温存術,網嚢切除術,腹腔鏡手術をphase Ⅲ試験で検証してきた。JCOG9501によりPANDは否定されたが,D2 手術が安全性の高い術式であることを証明した。JCOG9502では開胸開腹アプローチの有用性が否定され,経裂孔アプローチが標準であることを証明した。JCOG0110 では脾温存の非劣性を証明した。JCOG1001では網嚢切除の有用性が否定され,網嚢温存が標準であることを証明した。JCOG0912ではStageⅠに対する腹腔鏡補助下幽門側胃切除術の非劣性が検証されている。JCOG1401で腹腔鏡(補助)下胃全摘術/噴門側胃切除術の安全性も確認された。
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癌と化学療法 45巻10号, 1400-1404 (2018);
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近年,大腸癌に対する外科治療は様々な治療戦略で取り組まれている。そのなかでも,特に腹腔鏡下手術,trans-analtotal mesorectal excision(TaTME),ロボット支援下手術に関し多くの報告がなされている。また,本邦では下部進行直腸癌に対する側方リンパ節郭清術が,欧米の術前化学放射線療法+全直腸間膜切除(total mesorectal excision: TME)への双極として実施されている。本稿では大腸癌に対するこれらトピックに関して,現在までの臨床試験によって得られたエビデンスを紹介する。
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癌と化学療法 45巻10号, 1405-1409 (2018);
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本稿では主に第Ⅲ相試験によって得られた原発性肺癌に対する外科治療について解説する。LCSG 821 は原発性肺癌に対する術式を検討した唯一の第Ⅲ相試験である。3 cm 以下末梢発生非小細胞肺癌T1N0 を対象とし,縮小手術は肺葉切除と比較して局所再発率は3 倍,全死亡率は30%増加していた。本試験の結果に基づき現在まで肺葉切除が標準手術とされている。縦隔リンパ節郭清に関する第Ⅲ相試験は四つの報告があり,一つの試験を除いてリンパ節郭清はリンパ節サンプリングと比較して予後の改善を認めていない。リンパ節郭清の意義は,より正確な縦隔リンパ節転移の評価にとどまる。縦隔リンパ節転移を伴う非小細胞肺癌に対する手術療法の意義は証明されていないものの,肺葉切除で完全切除可能な症例については多職種による検討の上,治療法の選択がなされることが重要である。肺尖部胸壁浸潤癌に対しては,日米で行われた第Ⅱ相試験に基づき導入放射線化学療法後の手術が一般的となっている。胸腔鏡下手術は多施設第Ⅱ相試験により検証され,早期肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除術は許容し得る術式であると結論されている。胸腔鏡下手術は日常臨床では普及しているものの,多くの知見は後ろ向き研究に基づいている。
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癌と化学療法 45巻10号, 1410-1414 (2018);
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最近,膵癌の術前治療において多くの多施設共同研究が行われている。しかし膵癌に対する術前治療の治療成績の改善が期待されているが,課題も多い。術前治療の利点は,後補助療法に比較して術後合併症の影響を受けずにperformancestatus のよい時期にfull dose の治療を行えることによる腫瘍の縮小,R0 率および切除率の向上や潜在的転移を有する症例における転移細胞の抑制などがある。一方,術前治療の無効による症状進行および有害事象により手術機会を逸する問題もある。① 膵癌に術前治療が必要かという問題(適応症例の選定),② 化学療法あるいは放射線化学療法の選択,③ 至適レジメン,④術前治療期間などの問題を解決しなければならない。
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原著
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癌と化学療法 45巻10号, 1431-1434 (2018);
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がん薬物療法に起因する発熱性好中球減少症は,重篤な転帰になり得る副作用の一つである。発熱性好中球減少症が発現する可能性の高いがん薬物療法レジメンや治療強度の担保が必要な場合において,G-CSF の予防投与が推奨されている。しかしG-CSF 予防投与を行っても発熱してしまう症例を経験する。本研究はG-CSF予防投与後の発熱危険因子について検討した。食道がん術前治療としてDOC/CDDP/5-FU 療法を施行し,G-CSFの予防投与を施行した患者を対象とした。調査項目は年齢,性別,G-CSF 投与日,G-CSF 投与後の発熱の有無,G-CSF投与時のMASCC リスクインデックススコア,G-CSF 投与時の血算とし,診療録を後方視的に検討した。G-CSF 投与時のMASCC リスクインデックススコアは,発熱群では20(19〜21),非発熱群では21(17〜21)であり,統計学的有意差が確認できた。また,G-CSF投与時の好中球数は発熱群が有意に少なかった。多変量解析にて独立して有意であることの証明はできなかったが,G-CSF投与時に両因子を確認することは発熱性好中球減少症に対して適切な対症療法を早期に開始するために意義があると考える。
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癌と化学療法 45巻10号, 1435-1440 (2018);
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panitumumab の投与により起こる低マグネシウム(Mg)血症は,不整脈のような重篤な副作用を引き起こす可能性があるが,その重症化をもたらす危険因子については未だ十分に解明されていない。本研究ではpanitumumab による低Mg 血症の危険因子およびその発現時期を薬剤疫学的に特定することを試みた。panitumumab を投与された患者30 名を対象に,Grade 2 以上の低Mg血症発現群およびGrade 2 以上の低Mg血症非発現群に分類し,患者背景,臨床検査値および併用薬を比較した。単変量解析により,Grade 2 以上の低Mg 血症発現群では血清補正カルシウム(Ca)値の低下および経口Mg 製剤の非投与であることに有意差が認められた。Grade 1 の低Mg血症初発後にGrade 1 の低Ca血症を初発しており,両者の併発はGrade 2 以上の低Mg 血症発現群で有意に多く認められた。その後,両者を併発したGrade 2 以上の低Mg 血症発現群すべての患者では,低Mg血症はGrade 2 以上への重症化がみられており,Grade 2 の低Mg血症を経ずにGrade 3およびGrade 4 の低Mg 血症に増悪した患者もそれぞれ2 名ずつ認められた。血清Mg 値だけでなく血清補正Ca 値のモニタリングを行うことは,panitumumab投与時の低Mg血症のGrade 2 以上への重症化を防止できる可能性が示唆された。
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症例
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癌と化学療法 45巻10号, 1441-1444 (2018);
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症例は66 歳,男性。原発性肺扁平上皮癌の診断で左肺全摘術+ND2a2 +心膜合併切除術を施行し完全切除し得た。病理病期はT2aN1M0-ⅡB(7th edition)であった。術後1 年目の全身computed tomography(CT)で心筋転移を認め,さらに左頸部の硬結は転移性皮膚腫瘍の診断となった。一次治療としてcisplatin+gemcitabine 2 コース後に心筋転移巣が増大を認めたため,二次治療としてnivolumabを開始した。5 コース後は心筋・皮膚転移巣の縮小を認めたが,自壊・異臭を認めていたため単発皮膚病変を切除した。現在も術後30 か月でnivolumab継続中である。左肺全摘後に心筋・皮膚転移を生前に診断し,nivolumab投与により皮膚病変を切除し得たまれな1 例を経験した。
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癌と化学療法 45巻10号, 1445-1447 (2018);
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食道癌肉腫は食道悪性腫瘍のなかでも比較的まれな疾患である。症例は76 歳,男性。嚥下障害で当院を受診し,上部内視鏡検査で切歯34 cmに長径約10 cm の0-Ⅰp 型の巨大腫瘍を認めた。食道癌肉腫の診断で,胸腔鏡下食道亜全摘術・2 領域リンパ節郭清術・胸骨後経路頸部胃管吻合を予定した。術中に酸素化不良のため,開胸移行とし両肺換気下で手術を施行した。病理組織学的所見は,内腔にポリープ状に突出する120×70×50 mm大の腫瘍を認めた。cytokeratin(+),vimentin(+),SMA(+),desmin(+),S100(−),c-kit(−),CD34(−),Ki-67(+)で,表層の癌腫成分と腫瘍内部の肉腫成分の混在を認め,食道癌肉腫と診断した。最終診断はT1b(SM)N0M0,pStage Ⅰであった。本症例は深達度SMにもかかわらず食道狭窄を来すほどの食道内腔への発育を呈した点でまれと考え報告した。
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癌と化学療法 45巻10号, 1449-1451 (2018);
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本邦においては,約半数の乳び胸症例が事故による外傷を原因と報告されており,10%未満の例がリンパ腫を含む悪性腫瘍と関連している。胃癌による乳び胸は非常にまれである。今回われわれは,タルクによる胸膜癒着と食事療法の混合治療で良好なコントロールをなし得た58 歳,胃癌の乳び胸症例を経験した。症例:進行低分化胃腺癌の58 歳,男性が,息切れを主訴に当院を受診した。CT 画像にて多量の胸水と腹水が示された。胸水液,腹水液は中性脂肪の913 mg/dLまでの上昇と多数の癌細胞を認め,悪性の乳び胸腹水と診断した。脂肪制限食とoctreotideを開始し,続けてタルクでの胸膜癒着術を行い胸水のコントロールを行った。胸水がコントロールされた状態で患者は癒着後55 日目に胃癌のために死亡した。
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癌と化学療法 45巻10号, 1453-1456 (2018);
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多発骨転移とVirchow リンパ節および傍大動脈リンパ節転移を伴う切除不能進行胃癌で,分割DCS が奏効しconversionsurgeryでR0 切除が可能となった1 例を経験した。
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癌と化学療法 45巻10号, 1457-1459 (2018);
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臍部に結節性病変を形成した内臓悪性腫瘍の臍転移は,Sister Mary Joseph's nodule と呼ばれている。今回われわれは,臍腫瘤を契機に発見された横行結腸癌に対してS-1+oxaliplatin(SOX)+bevacizumab 療法が著効し長期生存を得た1例を経験したので報告する。症例は47 歳,女性。臍腫瘤を主訴に当院皮膚科を受診し生検にて腺癌が検出され,悪性腫瘍の臍転移が疑われたため当科に紹介された。精査にて横行結腸癌の臍転移,皮膚転移,肝転移,卵巣転移と診断し,SOX+bevacizumab療法を開始した。4 コース目で著効し,原発巣および肝転移巣,臍転移,皮膚転移は著明に縮小した。その後さらにSOX+bevacizumab 療法を4 コース継続したが卵巣転移が増大傾向にあったため,初回治療から8 か月後に右付属器切除術,回腸双孔式人工肛門造設術,皮膚転移摘出術を施行した。術後はsecond-line化学療法を継続したが,初診時から22か月後に癌死した。臍転移は発見から死亡まで1 年以内との報告も多く予後不良の兆候とされているが,新規抗癌剤や分子標的薬の使用により生存期間の延長が期待できる。
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特別寄稿
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第39回癌免疫外科研究会
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癌と化学療法 45巻10号, 1463-1465 (2018);
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本邦におけるがんゲノム医療への関心が高まっている。がんの体細胞遺伝子変異などと想定される分子標的薬の組み合わせは,癌腫ごとのエビデンスとともに一部臨床導入されている。一方,next-generation sequencing(NGS)解析により一度に多数の遺伝子変異などを低コストにて同定することが可能となったが,コンパニオン診断と分子標的薬からなるがん化学療法の治療戦略は各癌腫のエビデンスは限られており,NGS 解析の恩恵は十分であるとはいい難い。クリニカルバイオバンク(CB)は,標準化された手順によって採取・保存された生体試料のクオリティを担保し,詳細な診療情報と生体試料との連結を行うことが可能で,がんクリニカルシークエンス(CCS)の重要な基盤となる。CCS はわが国の企業治験の少なさ,エビデンス構築といった課題はあるものの,がんの抗がん剤治療においてより個別化を進めることによる奏効率,生存率の向上が期待できる。
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癌と化学療法 45巻10号, 1466-1468 (2018);
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がんワクチン療法をはじめとするがん免疫療法は抗原特異的免疫応答の賦活後,抗腫瘍効果を示すと考えられている。がん免疫療法の特性を考慮した臨床効果判定として,化学療法に用いられるResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)に代わり,近年immune-related response criteria(irRC)が用いられる。これまで当教室で経験したがんワクチン臨床試験参加91 例に対してはRECIST を主に使用してきたが,今回はirRC による再解析を実施した。その結果,PD からPR およびPD からSD と評価が異なった2 例を経験した。これら2 例は長期生存を果たしたことから,免疫療法におけるirRC 評価の妥当性が示された。
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癌と化学療法 45巻10号, 1469-1471 (2018);
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腫瘍抗原由来ペプチドは,細胞傷害性T 細胞(CTL)応答を誘導することで腫瘍増殖抑制が発揮される。しかし,その効果は限定的である。われわれは,CTL 誘導能が高い樹状細胞サブセットであるXCR1+DC に選択的に抗原ペプチドを送達することが腫瘍抑制効果の増強につながると考えた。まず,XCR1のリガンドであるXCL1およびovalbumin(OVA)由来のMHC class Ⅰ抗原を連結させたmXCL1-OVA ペプチドワクチンを設計した。mXCL1-OVA ペプチドワクチンは,免疫アジュバントのpoly(I: C)と併用しマウスに投与すると強力にCTL を誘導した。また,mXCL1-OVAペプチドワクチン+poly(I: C)を免疫すると,OVA抗原を発現するマウス腫瘍細胞株(B16-OVA)に対して,増殖抑制効果が認められた。今回の結果は高いCTL 誘発能を有するDC サブセットに選択的に抗原を送達することで,画期的な複合免疫療法になると期待される。
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癌と化学療法 45巻10号, 1472-1474 (2018);
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2015年6 月〜2018年4 月に,97 例の悪性腫瘍に樹状細胞と免疫チェックポイント阻害薬の併用投与を施行した。3 回以上投与した症例の有効率は55.2%であった。免疫チェックポイント阻害薬の効果増強には樹状細胞療法の併用が重要であり,それに加えて温熱療法,放射線の併用も有効であった。
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癌と化学療法 45巻10号, 1475-1478 (2018);
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がん患者で増加するPD-1を発現するCD8+ T細胞はexhausted CD8+ T細胞と呼ばれていて,がん患者の予後不良に関与していることが報告されている。exhausted CD8+ T 細胞はエネルギー代謝的にはPGC-1aの発現低下によるミトコンドリア機能不全に起因するエネルギー枯渇の状態にあると考えられている。最近,水素はミトコンドリアの活性にかかわるPGC-1a を活性化することが報告された。今回われわれは,Stage Ⅳがん患者において水素ガスを吸入させることで,末梢血中のPD-1+ CD8+ T 細胞の割合が変化するのかどうか,その変化と患者のprogression free survival(PFS)とoverallsurvival(OS)との関連について検討した。Stage Ⅳの直腸大腸癌患者55 例で検討したところ,terminal PD-1+ CD8+T細胞はPFSとOSの両者において独立予後不良因子であった。水素ガス吸入により,55 例中35 例(63.6%)でterminal PD-1+ CD8+ T 細胞が減少し,逆にterminal PD-1− CD8+ T細胞は39 例(70.9%)で増加した。水素ガス吸入前のterminal PD-1+ CD8+ T 細胞の割合に対する吸入後の割合の変化(terminal PD-1+ CD8+ T cell ratio)がPFS,OSに関して独立予後予測因子であった。また,nivolumab を使用した別の26 症例中14 例は水素ガスを併用したが,水素ガス併用群のOS はnivolumab単独群に比して有意に良好であった。これらの結果は,水素ガスがterminal PD-1+ CD8+ T細胞を減少させることにより,がん患者の予後を改善していることを示唆している。
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癌と化学療法 45巻10号, 1479-1481 (2018);
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ハイパーサーミア(温熱療法)は放射線,抗癌剤,分子標的治療,免疫療法の効果を増強する。今回,免疫チェックポイント阻害薬の効果も増強するかを検討した。マウス大腿皮下に腫瘍を移植したモデルに対して,温熱療法を加え免疫染色で検討するとPD-L1 の増強がみられた。また,直腸癌会陰浸潤部に温熱療法で加療した後に免疫染色で検討すると,PDL1とHLA classⅠの増強がみられた。
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癌と化学療法 45巻10号, 1482-1485 (2018);
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Stage Ⅲ大腸癌におけるPD-L1 発現とそれに関連する腫瘍局所のCD8+T リンパ球数の定量を行い予後との関係について検討した。2011 年1〜12 月の間に根治切除術が行われたStage Ⅲ大腸癌31 例について腫瘍最大割面を通るホルマリン固定標本を用いてPD-L1染色,CD8 染色を行った。PD-L1については腫瘍細胞(PDCC)と腫瘍間質に浸潤する免疫細胞(PDSC)での発現をそれぞれスコア化した。CD8+T リンパ球数は腫瘍中心部(core of the tumor: CDCT)と腫瘍先進部(invasive margin: CDIM)において計測した。PD-L1 発現とCD8+Tリンパ球数をそれぞれhigh(H)群,low(L)群に分類した。観察期間中央値は69.3か月で全症例の5年OS,DFS はそれぞれ74.2%,64.5%。CD8IM-H群(n=23)とCD8IML群(n=8)の5年OSは82.6%,50.0%で有意差あり(p=0.039)。PD-L1発現と予後については5年OSがPDSC-H群(n=19)とPDSC-L 群(n=12)で84.2%,58.3%(p=0.094)。Stage Ⅲ大腸癌において腫瘍先進部に浸潤するCD8+Tリンパ球数は予後因子である可能性が示唆された。また,PDSC-H群は予後良好な傾向が認められた。
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癌と化学療法 45巻10号, 1486-1488 (2018);
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目的: 開腹大腸癌手術における術後肺炎の発症に免疫・栄養状態や身体機能が与える影響について検討した。対象と方法: 開腹大腸癌手術が施行された419例を対象とした。術後肺炎の発症に影響する免疫・栄養・身体機能の因子を検討した。また,有意な危険因子については術後肺炎の発症頻度から,receiver operating characteristic curve(ROC曲線)を用いてカットオフ値を求めた。結果:肺炎発症(2.9%)に単変量解析では,小野寺式栄養指数,controlling nutritional status,BMI,PS,%VC,FEV1.0%が肺炎の危険因子として抽出され,多変量解析では%VCのみが独立した危険因子であった。術後肺炎の発生頻度から求めた%VC のカットオフ値は80.0%(AUC 0.89,感度83.3%,特異度87.7%)であった。結語: 開腹大腸癌手術において術前%VC 80.0%未満は術後肺炎発症の危険因子であることが示唆された。
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癌と化学療法 45巻10号, 1489-1491 (2018);
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切除不能進行胃癌に対する標準治療は全身化学療法であるが,生存期間の中央値は10 か月程度で予後は不良である。今回,卵巣転移を契機に切除不能進行胃癌と診断し集学的治療を施行し長期生存が得られた1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。症例は69 歳,女性。2011 年に卵巣腫瘍を指摘され,右付属器摘出術と大網切除術を施行した。病理結果は低分化腺癌および印環細胞癌で転移性が強く疑われた。2012 年2 月に上部消化管内視鏡で胃体上部から幽門部にかけて4 型の腫瘍を認めた。胃癌卵巣転移Stage Ⅳ[T4aN0M1(ovary)]の診断となった。原発巣のHER2が陽性であったため,2012 年 3 月から XP+HER(capecitabine 1,000 mg/m / 2 1 日2 回14 日間,CDDP 80 mg/m2 1 日目に3 週毎,tras-tuzumab 8 mg/kg 1 日目に3 週毎)を施行した。化学療法8 コース施行後の画像検査で遠隔転移所見はなく,また上部消化管内視鏡検査も原発巣の縮小を認めた。画像所見から原発巣切除は可能と判断し,2012 年12 月に診断的腹腔鏡施行後に開腹胃全摘およびD2リンパ節郭清術を施行した。術後病理はStage Ⅳ(pT4aN0M1)の診断となった。術後2013 年2 月から微小転移の制御目的にcapecitabine(1,000 mg/m2 1 日2 回14 日間)療法を12か月施行し,以後外来経過観察となった。その後,再発や転移所見を認めずに経過したが,2017年1月に直腸に全周性の狭窄病変を認め,画像上腹膜播種再発の診断となった。2017年2月に人工肛門造設術(S状結腸,双口式)を施行し,現在外来化学療法を施行し通院生存中である。
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癌と化学療法 45巻10号, 1492-1494 (2018);
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好中球・リンパ球比(neutrophil lymphocyte ratio: NLR)は化学療法の治療効果を予測し得る可能性についても検討されている。今回,乳癌においてeribulin投与前後のNLR と最終投与前後のNLR をそれぞれ測定し,治療効果との関連性について検討した。eribulinを投与した後,最終的にPD が確認され投与を中止した原発性乳癌11 例を対象とした。これらについて,eribulin初回投与前と投与後7 日目におけるNLR,最終投与前と最終投与後のNLR を,それぞれt検定を用いて検討した。初回投与前のNLR 平均値は4.07±2.11,投与7 日後の平均値は2.47±1.97 であり,初回投与前のNLR のほうが高い傾向にあり,有意差を認めた(p<0.05)。最終投与前のNLR平均値は4.02±2.04,最終投与後NLR平均値は3.19±1.76 であり,有意差を認めなかった(p=0.27,NS)。
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癌と化学療法 45巻10号, 1495-1497 (2018);
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letrozoleは高齢者の内分泌受容体陽性乳癌に対して有効であるが,平均奏効期間は10.3 か月程度とされており,3 年以上奏効した報告は少ない。letrozoleが長期間奏効した内分泌受容体陽性の高齢者乳癌症例に対して,その治療経過をインドールアミン酸素添加酵素(indoleamine 2,3-dioxygenase: IDO)の発現から検索した。
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癌と化学療法 45巻10号, 1498-1500 (2018);
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新規checkpoint inhibitorであるpalbociclibを内分泌受容体陽性の転移・再発乳癌症例に対して投与し,治療経過・有害事象・忍容性について観察を行った。投与開始後6週間の時点で,Grade 3 以上の有害事象は認めず,画像診断ではSD を保っており,腫瘍マーカーは低下傾向であった。転移・再発乳癌に対してpalbociclib の投与は忍容性も良好であり,有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻10号, 1501-1503 (2018);
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症例は57 歳,女性。検診で異常を指摘され,当科を受診した。視触診で右乳房AC 区域に10 mm 大の腫瘤を触知した。乳房超音波検査で同部位に8×8 mmの境界不明瞭な不整形低エコー腫瘤を認め,吸引式組織生検の結果,乳癌疑いの診断であった。摘出生検を施行し浸潤性乳管癌の確定診断を得たが,切除断端が皮膚側および内側方で陽性であったため,二期的手術を検討した。活動期間質性肺炎の併存があり,免疫抑制剤投与中であったことから,局所麻酔下にて追加切除術を施行した。周術期に間質性肺炎の増悪は認めず,合併症なく経過した。免疫抑制剤使用下での手術においては感染や創傷治癒の遅延などが懸念される。そのため,周術期における合併症には十分な注意が必要であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻10号, 1504-1506 (2018);
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今回われわれは,2011年1 月〜2017年12 月までの7 年間に当科で術前化学療法(NAC)を施行されたHER2陽性乳癌28 例についての治療効果を検討した。28 例のうち病理学的完全奏効が認められたものは14 例(50%)であった。治療レジメンの違いによるpCR rate をみると,タキサンにdocetaxel(DTX)を使用した症例が47.4%であったのに対しnanoparticlealbumin-bound paclitaxel(nab-PTX)を用いた症例では71.4%であった。今回の結果から,HER2陽性乳癌のNACにおいてnab-PTXを含むレジメンはDTX を含むレジメンより有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻10号, 1507-1509 (2018);
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症例は62 歳,男性。2001年に脂肪肉腫の診断で初回手術を施行,その後5 回再発を認め,2004年2 月下行結腸外側の腫瘍摘出術および左腎臓摘出術,2007年11 月左総腸骨動脈周囲の腫瘍摘出術,2010 年2 月S状結腸下行結腸移行部の腫瘍摘出術,2014 年11 月左側結腸腫瘍摘出術および結腸左半切除術と小腸部分切除術を施行した。病理結果は主に高分化型であった。今回,2016年11 月経過観察中の腹部CT 検査で右腹直筋下と左半結腸切除部近傍に軟部組織腫瘤を認めた。脂肪肉腫再発の診断で手術の方針となった。右腹直筋下腫瘤と左半結腸切除部近傍の腫瘤摘出術を行い,病理結果では高分化型脂肪肉腫再発と診断された。初回手術から16 年以上が経過した現在生存中である。本症例では,術後複数回の局所再発を認めたが積極的な再切除を行ったこと,また組織学的に悪性度の低い高分化型を多く認めたことが長期生存を得られた要因と考える。
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癌と化学療法 45巻10号, 1510-1512 (2018);
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傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndromes: PNS)とは,悪性腫瘍に対する免疫反応が自己の神経組織を傷害して生じる様々な神経徴候で,担癌患者の約1%程度に生じるとされている。傍腫瘍性(亜急性)小脳変性症[paraneoplastic(subacute)cerebellar degeneration: PCD]は,PNS の一病型で小脳失調を呈する。PCDに大腸癌と前立腺癌を合併する症例は極めてまれである。初期の歩行失調から始まった小脳変性症を呈した79 歳の大腸癌患者に手術を施行し,ADL の改善を認め現在も健在である。また,magnetization prepared rapid acquisition with gradient echo(MP-RAGE)にて小脳変性の改善がみられた。さらに術前に高値であったIL-6,IL-10,myeloid derived suppressor cells(MDSCs)は術後に低値となり,液性免疫能と癌免疫能が改善されたと考えられた。
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癌と化学療法 45巻10号, 1513-1515 (2018);
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今回われわれは,化学療法が完全奏効している上行結腸神経内分泌細胞癌(neuroendocrine carcinoma: NEC)の1 例を経験したので報告する。患者は60 歳,女性。大腸内視鏡で上行結腸に2 型腫瘍を認め,生検はG5であった。免疫染色を行い,NEC と診断した。CT,MRIで胆嚢周囲にリンパ節腫大,肝S6 に腫瘍性病変を認めた。結腸右半切除,腫大していたリンパ節の摘出,肝部分切除を施行した。病理では小細胞癌様の腫瘍細胞が胞巣状に増生しており,核分裂像数は 30(/10HPF)で,Ki-67指数は42%であり,NEC(small-cell type)と診断した。術後3 か月で肝門部リンパ節,腸間膜リンパ節に転移を来し,bevacizumab(Bev)併用mFOLFOX6 を4コース施行したところ,リンパ節腫大は消失しCR と診断した。計10コース施行したが,再発は認めなかった。術後2年6か月経過したが,再発を認めていない。
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癌と化学療法 45巻10号, 1516-1518 (2018);
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症例は74 歳,女性。検診のCT で肝腫瘤を指摘された。精査の結果,盲腸癌を認め,肝腫瘤は肝転移と肝嚢胞腺癌の鑑別が困難であった。原発巣に対する手術を先行する方針とし,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。病理診断で主組織型は粘液癌であり,病期はT3N2H1P0M1a,Stage Ⅳであった。CEA上昇もあり,肝転移と考えCapeOX+bevacizumab療法を開始したが,Grade 2 の有害事象を認め本人の希望により2 コースで中止した。Gd-EOB-DTPA 造影MRI では,腫瘍はT1WI 低信号,T2WI 高信号の多房性分葉状の形態を示し,有意な造影増強効果はなかった。大腸癌肝転移としては非典型的な所見であり,診断加療目的に肝S6 部分切除を施行した。病理の結果,原発巣と同様に粘液癌主体であり,大腸癌肝転移と診断した。今回われわれは,肝嚢胞腺癌との鑑別に難渋した大腸癌肝転移の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻10号, 1519-1520 (2018);
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はじめに:オキサリプラチン併用補助化学療法後の再発例の治療成績に関する報告は少ない。そこで,治癒切除後のオキサリプラチン併用補助化学療法施行後の再発例について検討した。対象・方法:対象は2012 年以降に術後補助化学療法にオキサリプラチンを併用した大腸癌症例48 例のうち再発を認めた9 例で臨床経過につき検討した。結果:再発9 例のStage(Ⅱ/Ⅲa/Ⅲb)は各1/3/5 例で,再発臓器は肺3 例,局所 3 例,肝臓 3 例,腹膜が1 例,再発までの期間の中央値は390 日,RAS遺伝子は野生型2 例,変異型が7 例であった。再発治療は転移巣手術1 例,化学療法が8 例で,手術例は再再発した。化学療法8 例中4例の一次治療にオキサリプラチンが使用された。現時点で5 例死亡,8 例中3 例は一次治療のみであった。再発後の生存期間中央値は475 日,現時点で3 年生存例を認めていない。結語:根治度A 大腸癌術後オキサリプラチン併用補助化学療法後の再発例について検討した。3 年無再発生存率や5 年生存率は比較的良好であったが,再発例の予後は不良であった。
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癌と化学療法 45巻10号, 1521-1523 (2018);
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患者は43 歳,女性。主訴:下腹部痛。既往歴:約2 月か前に胃癌にて胃全摘術+D1郭清+Roux-en-Y再建術を施行した。下腹部痛が改善しないため当院を受診した。腹部CT 検査にて挙上空腸の拡張を認め,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,空腸部に完全閉塞を認めた。入院後14 日目に腹腔鏡にて手術を施行したところ,Y脚盲端部と腸間膜が癒着しており,その場所を起点とし挙上およびねじれを形成していた。小開腹を施行し癒着およびねじれを解除,周囲に癒着防止剤を留置し手術を終了した。食事を再開するも問題なく術後17 日目に退院となった。
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癌と化学療法 45巻10号, 1524-1526 (2018);
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背景: 食道癌術後には経口摂取低下による低栄養状態が問題となる。今回われわれは,食道癌術後の低栄養状態予防を目的にenhanced recovery after surgery(ERAS)プロトコールに従い,かつ栄養剤を併用した周術期管理を行った食道癌術後患者の栄養評価を行った。対象と方法: 2015年から当院で食道癌根治術を施行し,上記管理を行った症例(男性6 例,女性3 例)を対象とした。周術期の経過と栄養,免疫,予後の指標,筋力・身体能力の指標,さらに骨格筋,脂肪の指標をretrospectiveに検討した。結果:離床は術後2(1〜5)日目から行われており,飲水開始が術後2(2〜9)日目,食事開始が術後7(3〜23)日に行われていた。術後1 年間,栄養指標としてのPNIは40 以上で推移し,NLRも3 以下であった。その他,歩行速度も0.8 m/s以上,Timed Up and Go Testも8.5 以下であった。まとめ:当院で施行した栄養剤併用を含めた周術期管理を行った食道癌手術症例で術後の栄養指標,筋力,筋肉量,身体能力は保たれていた。
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癌と化学療法 45巻10号, 1527-1529 (2018);
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今回われわれは,標準治療が奏効するも治療を半ば拒否する症例に対し残存腫瘍切除と休薬を行い,再燃後にFU 単剤+Bmab療法を間隔を空けて施行し,長期病勢制御している症例を経験したので報告する。症例は73 歳,女性。2014年他院にて,肝,肺転移を伴う直腸癌[Rb,T3,M1b(肝,肺),cStage Ⅳ]と診断され,conversion 手術も考慮し化学療法(mFOLFOX6+Bmab)を開始した。5 コース終了後,前医より紹介,転医となった。通算9 コース終了後に評価したところ,原発巣と肺の病変が消失,肝転移1 か所のみとなった。化学療法休薬をめざし,肝部分切除術を行った。術後休薬し,6か月後に直腸病変の再燃,肺転移の再燃を認めたが,原発巣制御目的に腹腔鏡下直腸切断術を施行した。さらに休薬を継続したが,直腸切断術後5 か月のCT 検査で肝転移と肺転移の増大を認めたため,化学療法再開とした(化学療法を15 か月休薬)。しかしオキサリプラチン再導入は拒否したため,FU 単剤+Bmab を選択した。再開後2 か月で転移巣は縮小し,腫瘍マーカー値は正常化した。以後月に 1 回同療法を継続し,17 か月PR を維持している(infusional 5-FU/LV+Bmab 18 コース)。
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癌と化学療法 45巻10号, 1530-1532 (2018);
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症例は69 歳,男性。進行胃癌,L,Less,Ant,typeⅡ,tub/por,cT4b(肝・膵),N2M1(H1P0CYX),cStage Ⅳの診断の下,S-1/oxaliplatin/trastuzumab療法を施行した。4 コース後,原発巣は縮小し根治切除可能と判断したため,幽門側胃切除術,肝(S3,S4,S6)部分切除術,肝(S3,S4)ラジオ波焼却術を施行した。切除標本の病理組織学的検査では,胃神経内分泌細胞癌(NEC)と診断された。術後S-1/oxaliplatin/trastuzumab療法を継続したが4 コース後に残肝再発を認めた。再発に対してfirst-lineとして,cisplatin/irinotecan療法,second-lineとしてpaclitaxel/ramucirumab療法を施行するも肝転移は増悪し,腹膜播種による腹水が出現した。third-lineとしてnivolumabの投与を開始し,3 コース終了した時点で腹水の減少を認めたが,さらに2 コース追加したところ肝転移・腹水は増悪し腰椎多発骨転移を認めた。
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癌と化学療法 45巻10号, 1533-1535 (2018);
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ニボルマブの皮膚障害は代表的な免疫関連有害事象の一つである。ニボルマブ投与前の患者背景や各種検査値が皮膚障害の発現に及ぼす影響について調査した。2016年2 月〜2017年2 月にニボルマブが投与された21 例を対象に,ニボルマブによる皮膚障害が発現した群(発現群)と発現しなかった群(非発現群)に分類し,患者背景とニボルマブ投与前直近の各種検査値を比較した。「ニボルマブ投与前の好酸球数」(p=0.0015),「ニボルマブ投与前の好塩基球数」(p=0.0075)で有意な差を認めた。ニボルマブ投与前の好酸球数または好塩基球数が多い症例は,皮膚障害の発現と関連していることが示唆された。
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癌と化学療法 45巻10号, 1536-1538 (2018);
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症例は32 歳,女性。上部消化管穿孔術後,2015 年から不全型ベーチェット病の診断でプレドニゾロンを内服中であった。2017 年3 月,穿孔後経過観察中の上部消化管内視鏡で胃前庭部大弯後壁に径15 mmの0-Ⅱc 病変を認め,生検で印環細胞癌が検出された。胃癌,cT1aN0M0の診断で,適応拡大病変として4 月に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した。病理結果で粘膜下層への浸潤を認め非治癒切除であったため,6 月に追加切除として腹腔鏡下幽門側胃切除(D1+郭清)およびBillrothⅠ再建を施行した。本症例の術前の留意点としては,カプセル内視鏡検査を含め全腸管の潰瘍病変の検索を行ったこと,術中の留意点としては金属ステープラーによる器械刺激で潰瘍形成や縫合不全のリスクが高くなるため再建を手縫い吻合で行ったことである。
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癌と化学療法 45巻10号, 1539-1542 (2018);
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今回われわれは,65 歳の大腸癌術後腹腔内再発リンパ節再発肝転移患者にFOLFIRI+afliberceptを2 cycle投与後にpartial response(PR)となり,23 cycle 後のPET-CT検査では同部に集積を認めなかった。本症例を含めaflibercert投与9例について検討した。副作用として好中球減少,高血圧,発汗がみられた。また,PIGF は炎症に関連しているといわれており,neutrophil-to-lymphocyte ratio(NLR)が3 以上の場合はPR 症例が有意に少なく,予後が不良であった。
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癌と化学療法 45巻10号, 1543-1545 (2018);
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症例は59 歳,女性。健康診断で異常所見を指摘され施行した上部消化管内視鏡で胃前庭小弯側に2 型腫瘤を認め,当院へ紹介受診となった。精査で進行胃癌[L,less,type 2,tub1,cT3N2H0P0M1(LYM: #16,Virchow),Stage Ⅳ]と診断した。S-1(80 mg/m / / 2,day 1〜21)/CDDP(60 mg/m2,day 8)(3 週投与2 週休薬)を開始し,4 コース施行後の評価でcT3N1H0P0M0,Stage ⅢA と判断した。開腹幽門側胃切除(D2 郭清)およびB-Ⅰ再建+#16 サンプリング(#16b1lat,#16a2int)を施行した。病理結果はL,less,type 1,por1/2,pT2N2H0P0M0CY0(#16b1lat,#16a2intにも転移を示す所見なし),pStage ⅢB であった。補助化学療法としてS-1(80 mg/m2,day 1〜28)(4 週投与2 週休薬)を開始した。術後6か月(S-1 3 コース施行後)のcomputed tomography(CT)で#16b1int腫大あり,リンパ節再発の診断でweekly paclitaxel(80 mg/m2,day 1,8,15)(3週投与1 週休薬)に変更した。術後1年3か月(weekly paclitaxel 9 コース施行後)の画像評価で腫大リンパ節は消失し,complete responseと判断した。術後5年9か月(weekly paclitaxel 54 コース)まで施行し化学療法を中止した。術後6 年0か月現在,無再発で外来通院中である。今回,傍大動脈リンパ節転移を伴う進行胃癌に対して集学的治療が奏効し長期生存を得られた1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻10号, 1546-1548 (2018);
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免疫チェックポイント阻害剤が様々な癌種に対して一定の治療効果を示し,今までにない新たな癌治療として注目されている。本邦においては2017年9 月に進行・再発胃癌に対しても三次治療以降で保険承認された。今回,2017 年10月〜2018 年3 月までに当院で進行・再発胃癌に対するニボルマブ治療を施行した10 例を対象とし,臨床背景,治療成績,有害事象を後方視的に検討した。年齢中央値70 歳,男女比6:4,再発評価病変は腹膜播種/肝/リンパ節/脳/卵巣/骨=8/2/2/1/1/1,治療ライン 三次/四次/五次=6/3/1,サイクル数1〜11,最良画像効果SD,有害事象は全身掻痒感を1 例認めた。予後においては,PS が良好な状態からの治療開始がlong SDを期待できることが示唆された。免疫関連有害事象に注意しながら引き続き症例検討を行うとともに,今後は有効症例を絞り込むためのバイオマーカー解析が期待される。
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癌と化学療法 45巻10号, 1549-1551 (2018);
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2016 年1 月〜2017 年12 月までの2 年間に当科でパクリタキセル+ラムシルマブ併用療法を18 例に,ラムシルマブ単独療法を1 例に施行したので,それらを集計・分析し,治療成績,有害事象,課題などについて検討した。臨床効果は,CR: 0,PR: 1,SD: 16,PD: 2 であり,併用療法の全生存期間中央値は9.9 か月,無増悪生存期間中央値は4.2 か月であった。しかし(胃癌治療ガイドラインでは二次治療として推奨されているが),半数以上が三次治療以降として施行されていた。有害事象は好中球減少が対象症例19 例中13 例(68.4%)に認められ,Grade 3 以上も8 例(42.1%)と高率であった。非血液毒性は17 例(89.5%)に認められ,Grade 1,2 では食欲不振,悪心,下痢,味覚異常,末梢神経障害,脱毛,疲労などが,Grade 3 以上では間質性肺炎1 例(5.3%),高血圧が3 例(15.8%)であった。また,有害事象で治療を中止したのは,間質性肺炎の1 例と高血圧の1 例の計2 例であった。