Volume 45,
Issue 12,
2018
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総説
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癌と化学療法 45巻12号, 1685-1689 (2018);
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悪性腫瘍に対する治療法の進歩,担癌患者の増加や予後の改善により,癌治療に伴う骨量減少や骨折が大きな問題となりつつある。臨床的には,乳癌や前立腺癌に対するホルモン療法の際の骨量減少が問題となることが多い。ビスホスホネートやデノスマブが,これらの一部の患者の骨密度低下や骨折を防止することが報告されている。現在,海外の各学会から癌治療関連骨量減少に対するガイドラインが作成されている。また,本邦でも日本乳癌学会や日本泌尿器科学会の診療ガイドラインで,ホルモン療法を受けている患者の骨量減少や骨折について言及されている。しかしこれらのガイドラインでは,対象患者の評価法や治療法に関し必ずしも一致した見解が示されていない。今後本邦でも,癌治療関連骨量減少に対する管理法を確立していく必要がある。
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特集
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ロボット手術の現状と展望
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癌と化学療法 45巻12号, 1690-1695 (2018);
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ロボット支援下胃切除術は,内視鏡手術支援ロボットda Vinci®Surgical Systemを使用し高解像度三次元画像,多関節機能をもつ鉗子,手ぶれ防止機能,motion scaling の機能をいかして従来の鏡視下手術で問題とされる可動域制限などの欠点を補うとともに,術者のより直感的な手術操作を可能とする。胃癌に対するロボット支援下胃切除術は2003 年に世界で初めて報告され,日本,韓国,イタリアを中心としてロボット支援下胃切除術が発展してきた。当科では2012 年にロボット支援下胃切除術を導入し,ロボット支援下胃切除の安全性を評価する目的で前向きの臨床第Ⅱ相試験を実施し,その安全性を報告してきた。ロボット支援下胃切除術は従来の腹腔鏡手術と比較して,手術時間が延長,出血量の減少,術後合併症の低減の可能性が報告されている。しかしながら,ロボット支援下胃切除術に関しての無作為化比較試験の報告はなく,短期・長期成績に関してのエビデンスは明らかではない。2018年4 月にロボット支援下胃切除術が保険収載され,今後急速に普及していくことが予想されるが,安全な普及のための体制の確立およびエビデンスの構築が必要とされる。本稿では,胃癌に対するロボット支援下手術の現状,展望に関して概説する。
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癌と化学療法 45巻12号, 1696-1700 (2018);
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ロボット支援下手術は多関節を有する手術器具,手ぶれ防止機構やmotion scaling による精緻な動作によって,従来の腹腔鏡手術での操作困難性などの短所を補うことが可能となった。特に直腸癌手術のような狭い骨盤腔内で精密な手術操作を行うことに適しており,ロボット支援下手術の有用性は高い。また,デュアルコンソールを用いた手術指導は患者の安全性を担保しつつ高い学習効果を得ることができ,手術教育に非常に役立っている。2018 年4 月に直腸癌に対するロボット支援下手術が保険収載され,今後ロボット支援下手術の件数が増加することが推測される。現在のところ開腹手術,腹腔鏡手術に対する優越性に関する強いエビデンスはないが,技術的難易度が高い症例(肥満症例,骨盤の狭い男性症例,拡大手術を要する症例)での有用性が示唆されている。現在,いくつかの企業で新技術を搭載した新型手術支援ロボットを開発しており,手術システムの改良による治療成績の向上や企業間の競合によるロボットや周辺機器の低価格化が期待される。
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癌と化学療法 45巻12号, 1701-1705 (2018);
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肺癌に対する低侵襲手術として,従来の胸腔鏡手術に加えて今春よりロボット支援手術の保険適応が認められた。胸腔鏡手術は実臨床においては広く普及してきているが,最新の肺癌診療ガイドライン上ではグレードC1(考慮してもよい)となっている。一方,ロボット支援手術は新たな魅力的手術手技として注目され,通常の胸腔鏡手術の欠点を補うことが期待されている。胸腔鏡手術とロボット支援手術の比較では両者は安全性と有用性に関してほぼ同等であり,良好な操作性やラーニングカーブの速さでロボット支援手術が優るとの報告が多い。しかしながら,ロボット支援手術の高額な費用と長い手術時間には懸念がある。ロボット支援手術の経験は未だ初期段階であるが,しだいに浸透していくなかで周術期成績の向上が期待される。特に保険適応後は急速にロボット支援手術の導入施設が増加しており,安全で確実な普及も喫緊の大きな課題である。今後は同じ低侵襲手術である胸腔鏡手術との共存を図りながら,ロボット支援手術の有用性を検証していくことが大切となっている。
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癌と化学療法 45巻12号, 1706-1709 (2018);
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ダビンチを用いたロボット支援手術は高倍率3D HD 画像,多自由度鉗子などの技術開発により,鏡視下手術は革新的に発展した。泌尿器科手術の多くは骨盤内や後腹膜腔など狭小な腔内で緻密な操作が必要となる。ロボット手術の導入により,立体的かつ精細な解剖の理解および縫合結紮など鉗子操作が大きく改善した。これらは手術の安全性や質の向上に明らかに寄与し,泌尿器腫瘍に対しては2012 年前立腺癌全摘除術,2016 年腎部分切除術,2018年には膀胱全摘除術が健康保険の適応を認可された。ロボット支援手術が泌尿器腫瘍の手術療法にパラダイムシフトをもたらしたことは間違いない。今後もますます多様な術式への応用と治療成績の向上が期待される。
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原著
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癌と化学療法 45巻12号, 1725-1728 (2018);
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閉経後乳癌術後療法患者におけるトレミフェン(TOR),アナストロゾール(ANA)投与の血中卵胞刺激ホルモン(FSH)とエストラジオール(E2)への影響を検討した。無作為化比較試験で脂質・骨代謝マーカーと同時に測定したFSH とE2 の値を遡及的に解析した。測定は化学発光免疫測定法を用いた。69 人が登録され36 人がTOR群,33 人がANA群に割り付けられた。平均年齢はTOR 群で62.5歳,ANA群で 60.0 歳。FSH値は TOR 群において投与前値69.6 mIU/mLが,投与後 6 か月後 59.2%,12 か月後 54.6%,24 か月後に 50.0%へ低下した。24 か月後の FSH 値の範囲は 8.6〜68.1 mIU/mLで,20.0 mIU/mL以下が2 人(9.5%; 8.6と 14.4 mIU/mL)であった。ANA群では変化を認めなかった。E2値は ANA群において投与前値(11.6 pg/mL)は 6 か月後72.4%,12 か月後70.7%,24 か月後に61.2%へ低下した。TOR群では変化を認めなかった。TOR 投与中にアロマターゼ阻害剤へのスイッチを検討する局面には,血中FSH 値はTOR投与で約50%低下し,その約 10%は20 mIU/mL以下であることを念頭に置き,閉経の判定は総合的に行うことが必要である。
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癌と化学療法 45巻12号, 1729-1732 (2018);
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乳癌化学療法に伴う発熱性好中球減少症(FN)は比較的頻度の高い有害事象の一つであり,生命の危険を及ぼしかねない重大な合併症である。しかしながら同合併症を避けるための化学療法剤投与量の減量は,再発予防効果を低下させる危険を伴うため,予定容量をスケジュールどおり投与することが重要である。2015 年4 月〜2017年9 月までに当院においてFN発症リスクの高い化学療法を行った乳癌患者24 例に対して,FN 予防を目的にペグフィルグラスチムを使用した(一次予防11 例,二次予防13 例)。本研究では,同薬剤の適応,有効性,安全性について検討を行った。本薬剤使用によって一次予防群,二次予防群いずれにおいても1 例のみFN 発症がみられたが,90%以上のFN 予防効果が得られた。本薬剤による有害事象として,アレルギーによる皮疹1 例,腰痛1 例を認めたが,重篤なものはなかった。また,3 例で血小板増多症を認めたが本薬剤との関連は不明であった。ペグフィルグラスチム予防的投与により,FN 発症率を著明に低下させることができた。それに伴い化学療法薬剤の減量や投与延期を行わず,予定容量をスケジュールどおり安全に投与することが可能になった。
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癌と化学療法 45巻12号, 1733-1736 (2018);
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進行食道癌に対するDCF 療法は高い奏効率を誇る一方,重篤な血液毒性を高頻度に認める。今回,当科でDCF 療法を施行した進行食道癌を対象とし,血液毒性に対するペグフィルグラスチムの有効性と課題を後方視的に検討した。ペグフィルグラスチムの予防投与により好中球減少や化学療法の延期が抑制され,DCF 療法の治療強度維持に寄与することが示唆された。一方で,ペグフィルグラスチム投与時すでに好中球減少を来している症例も散見され,適切な投与時期についてはさらなる検討を要する。
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癌と化学療法 45巻12号, 1737-1742 (2018);
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cabazitaxel 治療においてpegfilgrastim を予防的投与した際の安全性を検討する目的で,治療実施状況,発熱性好中球減少症(fibrile neutropenia: FN)の発現率と発現時期,有害事象発現状況について2014 年9 月〜2016 年8 月まで当院でcabazitaxel を投与された去勢抵抗性前立腺癌(castration resistant prostate cancer: CRPC)の患者17 例を対象にレトロスペクティブに調査を行った。その結果,FN の発現率は29.4%(5/17 例)で,そのうち80%(4/5 例)が 1 サイクル目に発現した。有害事象に関してはこれまでに報告のないものは認めなかったが,背部痛の発現が23.5%(4/17 例)にみられた。いずれもGrade 2 以下で治療継続には影響はなかった。副作用による治療中止は5.9%(1/17 例)にみられ,FN によるものであった。cabazitaxel は国内第Ⅰ相臨床試験において54.5%のFN 発現率が報告されたが,pegfilgrastim を併用することで有効で安全に投与できた。FN はpegfilgrastim 併用した場合においても高頻度に発現することがわかり,FN 発現の有無を十分に観察し治療継続する必要がある。
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症例
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癌と化学療法 45巻12号, 1743-1746 (2018);
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症例は84 歳,男性。進行胃癌にて胃全摘術を施行し,術後S-1 補助化学療法を実施していたが,術後約6 か月目ごろより腫瘍マーカー(CEA 値,CA19-9 値)の上昇を認めた。精査にてNo. 12p リンパ節の転移が認められたためtrastuzumab(Tmab)+S-1+oxaliplatin(SOX)療法による化学療法を施行した。3 コース施行後の腹部造影CT 検査にて転移巣は消失し,4 コース施行後のPET-CT 検査でも新たな再発巣や転移巣は認められずCR が得られた。進行・再発胃癌に対する一次化学療法はS-1+cisplatin(SP)療法が標準治療であるが,SOX 療法も同等の有効性があることが報告されている。今回HER2 陽性再発胃癌に対しTmab+SOX 療法にて極めて良好な結果が得られたため,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 45巻12号, 1747-1750 (2018);
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症例は62 歳,男性。黒色便,
怠感を主訴に当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査にて上十二指腸角に約20 mm大の隆起陥凹性病変を認め,生検で腺癌と診断された。十二指腸癌の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した。病理組織検査では,平滑筋層主体に核異形の強い淡好酸性胞体からなる大型のmalignant cell を認めた。Ki-67 陽性率は26〜33%,核分裂像は 40 個/10HPF であった。免疫染色では chromogranin A,synaptophysin が陽性であった。以上から,mixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)と診断した。術後早期に肝転移再発を来し全身化学療法を開始した。十二指腸原発のMANECはまれであり,その治療法については未だコンセンサスは得られていない。今回われわれは,十二指腸に発生したMANECの1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻12号, 1751-1753 (2018);
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症例は72 歳,男性。吃逆と便秘を主訴に当院を受診した。腹部CT で下行結腸腫瘍に伴うイレウスの診断で,同日に経鼻的イレウス管を挿入した。入院2 日目に経肛門的ドレナージを試みたがカニュレーション困難であった。緊急手術による減圧治療も考慮したが腹部所見は乏しく,採血データでも炎症反応の悪化なども認めなかったため口側からの減圧のみで経過観察をした。イレウス管先端は入院5 日目にバウヒン弁を越え結腸内まで,13 日目には閉塞部付近にまで先端が到達していた。減圧が良好のまま入院14 日目に一期的に根治切除および吻合術を行った。麻痺性イレウスが遷延したが,術後16日目に退院となった。左側結腸癌に伴うイレウスは経肛門的な減圧が困難な場合には人工肛門を作製し,二期的な手術が必要になる場合が多いが,経鼻的イレウス管で一期的に根治手術が可能であった1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻12号, 1755-1758 (2018);
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症例は60 歳,女性。2011年2 月上行結腸癌に対して腹腔鏡補助下結腸右半切除,D3リンパ節郭清術を施行した。病理組織診断は adenocarcinoma(tub1>tub2),pT3(SS),N1(1/40: #212),M0,Stage Ⅲa で,術後補助化学療法としてUFT/UZEL 療法を 6 か月間施行した。術後 2 年の CT で大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた。PET-CT で異常集積を認め再発が疑われたため,2013年3 月大動脈周囲リンパ節郭清術を行った。#216 b1 int に低分化腺癌を認め結腸癌の転移と考えられた。その後,術後補助化学療法としてFOLFOX療法を開始し有害事象により中止するまで36 コース施行した。2 回目の手術後5 年経過したが,無再発生存中である。孤発性の大動脈周囲リンパ節転移の切除については生存率改善の報告があることから切除も検討の余地があると考えられた。
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癌と化学療法 45巻12号, 1759-1761 (2018);
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症例は66 歳,男性。体重減少を主訴に来院し,膵頭部神経内分泌癌の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後3 か月後のCT で多発肝転移再発を認めた。cisplatin(CDDP)/irinotecan(CPT-11)療法を行ったが,有害事象が強く継続が困難と判断し中止した。その後 everolimus 10 mg/日の内服投与を開始した。8 か月後には病巣の消失を認め,PET-CT でもFDG の異常集積を認めず完全奏効(CR)と判断した。13 か月後に末õ神経障害のためeverolimus の投与を中止した。中止後より3 年経過しているが再発を認めずCR を維持している。NEC を主成分とするMANEC に対する化学療法としてeverolimusは有効な治療選択肢と考えられる。
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癌と化学療法 45巻12号, 1763-1765 (2018);
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患者は65 歳,女性。63 歳時に右乳癌,cT2N2aM0,Stage ⅢA,ER 0%,PR 0%,HER2(0)の診断で術前化学療法後(AC療法,パクリタキセル+ベバシズマブ)にBt+Ax(レベルⅡ)を施行した。組織学的治療効果はGrade 2a であった。術後は右胸壁+鎖骨領域に放射線治療(50 Gy)を施行した。初回治療から1 年11 か月後に多発肺転移,縦隔リンパ節転移ありS-1を開始した。その2 か月後にPET-CT 検査で右心房転移を認めた。心症状がなかったため,循環器的治療は行わずにS-1を継続した。縦隔リンパ節転移が増悪したためS-1 は4 か月で中止しエリブリンに変更した。同時期に脳転移があり,ガンマナイフ治療を施行した。エリブリンを継続したが,脳転移増悪し初回治療から2 年9か月後に死亡した。経過中,心不全兆候,不整脈はなかった。
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癌と化学療法 45巻12号, 1767-1769 (2018);
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乳癌由来の髄膜癌腫症(leptomeningeal metastasis: LM)は,比較的まれな病態である。本稿では,Ommaya reservoirを介して抗癌剤髄腔内投与を行った3 例の乳癌髄膜癌腫症について報告した。2 例では神経症状の明らかな改善を認めたが,1 例では治療効果を認めなかった。症状の改善した2 例の診断後生存期間は22 か月と9 か月であった。抗癌剤髄腔内投与の治療効果に関するエビデンスは得られていないが,今後症例選択により治療成績が向上する可能性はある。
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癌と化学療法 45巻12号, 1771-1774 (2018);
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症例は61 歳,女性。右乳癌(HER2 enriched type)術後4 年11 か月で右肺転移を認め,pertuzumab+trastuzumab+docetaxel 療法を開始した。1コース目でGrade 4 の好中球減少を認め,2コース目施行後2 日目にpegfilgrastim(PFG)を投与した。9 日目より左頸胸部痛が出現し,14 日目に39℃の発熱を認め,外来受診した。白血球18,300/mL(好中球17,000/mL),CRP 25.48 mg/dL と著明な上昇を認め,胸部CT で胸部大動脈周囲の濃度上昇を認めた。頸部超音波で疼痛部位に一致して総頸動脈周囲の低エコー域を認め,PFG による動脈炎の可能性が考えられた。アセトアミノフェン内服で経過観察としたが,19日目に解熱,頸部痛も改善した。G-CSF製剤はサイトカイン放出促進作用を有し,その使用による動脈炎の発症や悪化が報告されており,G-CSF製剤使用の際には留意すべきと考えられる。
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癌と化学療法 45巻12号, 1775-1777 (2018);
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化学療法や放射線が要因になった白血病を治療関連白血病(therapy-related leukemia: TRL)という。今回,乳癌に対し化学療法後TRL 発症が疑われた症例を経験したので報告する。症例は61 歳,女性。左乳癌に対し胸筋温存乳房切除術,センチネルリンパ節生検(陰性)を施行された。術後の病理組織検査結果,Luminal B typeの浸潤性乳管癌で,pT1N0M0,Stage Ⅰと診断され,術後補助化学療法が行われた。術後4 年目の血液検査で汎血球減少を認め,骨髄穿刺検査にて急性前骨髄性白血病と診断された。血液内科にて治療が行われ完全寛解が得られた。乳癌は化学療法後も長期生存が得られる疾患であり,経過観察において晩期合併症であるTRL に留意しなければならない。
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癌と化学療法 45巻12号, 1779-1782 (2018);
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症例は85 歳,女性。200X 年にt(4 ;14)(p16;q32)の染色体異常を有する多発性骨髄腫(IgG-l 型)と診断した。bortezomib/dexamethasone(Vd)療法,lenalidomide/dexamethasone(Ld)療法を施行し,verygood partial response(VGPR)を維持していたが,第731病日再燃に対しelotuzumab併用Ld療法を2 コース施行した。しかし郊果は乏しく,腸骨内に形質細胞腫を合併し,第 794病日よりpomalidomide,低用量dexamethasone併用(Pd)療法,Pd/cyclophosphamide(PCd)療法施行後,Pd/bortezomib併用(PVd)療法を施行した。PVd 療法を3 コース施行後PR に到達し,以後もGrade 3 以上の有害事象を認めず11 コース継続している。PVd 療法は髄外病変を合併した再発難治のfrail 患者に対して忍容性と高い抗腫瘍効果を見込めると考えられ,今後も髄外病変を合併した再発難治の高齢MM患者の治療に関する症例の蓄積が望まれる。