癌と化学療法
Volume 46, Issue 6, 2019
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投稿規定
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総説
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遺伝子改変技術を用いたがん免疫療法
46巻6号(2019);View Description Hide Description免疫機構に対する研究の進展に伴い,近年その知見が矢継ぎ早に臨床応用されるようになっている。なかでも遺伝子改変技術の進歩はがん免疫療法のもつ可能性を大いに切り開き,2017 年8 月に世界で初めての遺伝子細胞治療としてキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)を発現するT細胞療法(CAR-T細胞療法)が米国食品医薬品局(Food andDrug Administration: FDA)に承認されるに至った。しかしながら,遺伝子改変技術を用いたがん免疫療法はまだまだ発展途上の治療法であり,直面する様々な課題を克服すべく多様な試みが行われている。サイトカインやケモカインを分泌させることでCAR-T 細胞の増殖・生存能や腫瘍局所への集積能,細胞傷害能を高めた第四世代CAR-T 細胞はこれまで十分な治療効果が認められなかった固形腫瘍にも高い細胞傷害活性を示している。また,CAR-T 細胞と同様に開発の進められている戦略として,MHCを介して腫瘍抗原を特異的に認識できるT 細胞受容体(Tcell receptor: TCR)を遺伝子導入したT細胞(TCR-T細胞療法)があり,正常細胞に発現せず腫瘍細胞のみに発現する異常蛋白であるネオアンチゲンを標的とした治療に注目が集められている。その他,natural killer(NK)細胞やinvariant natural killer T(iNKT)細胞,gdT細胞などがユニークな免疫機能を有するリンパ球分画として着目され,遺伝子改変技術と組み合わせたがん免疫療法への応用に向けて研究が進められている。また,患者以外の免疫細胞に遺伝子改変を行い治療に使用するoff-the-shelf技術の開発も各種細胞において研究が進められている。今後,個々の患者や腫瘍タイプに最も適した技術の「個別化」と並行して,製剤の品質の均一化や作製期間の短縮,製造コストの削減に向けた技術の「汎用化」という一見相反するコンセプトをめざした研究の進展が期待される。
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特集
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- 癌治療とQOL
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肺がん−QOL 評価としてのPatient-Reported Outcome(PRO)−
46巻6号(2019);View Description Hide Description非小細胞性肺がん患者のquality of life(QOL)は多くのがん種のなかでも頻度的に悪いことが多く,治療法選択や予後の推測に重要な情報としてpatient-reported outcome(PRO)評価法が多くのがん臨床試験で使用され,日常のがん診療や緩和ケアにおいてもQOL 状態の把握は注目されている。4 種類のPRO 評価方法があるが,European Organization forResearch and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-Core 30 Module(EORTC QLQ-C30)が最も使われている。肺がんに対するQOL 評価には疾患特異的に項目追加されたQLQ-LC13 が介入研究の副次的エンドポイントとして汎用されており,適切な治療選択や緩和ケアの質を改善する上でも役立っている。しかし実臨床での肺がん診療にPRO 評価をいかに役立てるかは今後の重要な課題でもある。 -
胃癌治療とQOL 研究
46巻6号(2019);View Description Hide Description胃癌治療においてQOL をアウトカムとした臨床研究は未だ報告数は少なく,方法論・報告の仕方がまちまちで確立された分野とはいえない。質問票によって胃癌手術を比較した場合,術後の症状スコアにおいてはある程度一貫性のある結果が得られるがQOL スコアは群間の差を検出できないことが多く,また研究間でデータの異質性が高いため結果の解釈および診療への活用が難しい。胃癌治療におけるQOL 研究の質を高めるために,その特異的な構成概念の確立,測定のための方法論の追求および研究者間のコンセンサス形成が必要である。 -
乳癌
46巻6号(2019);View Description Hide Descriptionわが国でも最近,乳癌治療のアウトカムとして生存期間の延長だけではなく患者のQOL や主観的健康アウトカム(PRO)が注目されつつある。本稿では,数年来の乳癌薬物療法に関連する QOL/PRO 評価の臨床研究のエビデンスを系統的に調べ,2017 年以降のエビデンスレベルの高い論文を紹介した。さらに最近,わが国から報告された化学療法に起因する脱毛についての大規模な多施設に対する調査結果も紹介した。 -
直腸癌手術とQOL
46巻6号(2019);View Description Hide Description本邦における下部進行直腸癌に対する標準治療はtotal mesorectal excision(TME)+両側側方郭清であるが,直腸癌に対する手術手技の向上により肛門温存手術の適応が拡大されるようになってきた。しかし直腸には自律神経が近接していることから,直腸癌術後のquality of life(QOL)に配慮した治療方針を立てることが重要である。ここでは直腸癌術後のQOL に関わる排尿障害,性機能障害,排便障害およびストーマ関連合併症についてその頻度と対処方法を検討した。各患者の術前機能評価や癌の進行状況に基づいた患者個別の治療選択をすることが,直腸癌患者の増加や高齢化ではいっそう重要であると考えられる。
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Current Organ Topics:Central Nervous System Tumor 脳腫瘍 小児脳腫瘍
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特別寄稿
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免疫チェックポイント阻害剤イピリムマブとその併用療法の臨床的意義
46巻6号(2019);View Description Hide Descriptionイピリムマブは世界で最初に開発された免疫チェックポイント阻害剤であり,各種T 細胞上のCTLA-4 を阻害することで,最終的にエフェクターT 細胞を活性化することにより抗腫瘍効果が得られると考えられている。近年,イピリムマブと抗PD-1 抗体との併用療法が複数の悪性腫瘍に対して,免疫チェックポイント阻害剤単独療法と比べ有効であると報告されている。本稿では有効性と安全性の両面から併用療法におけるイピリムマブ療法について概説する。 -
イピリムマブの有効性と有害事象のマネジメント−ニボルマブとの併用療法を含めて−
46巻6号(2019);View Description Hide Description進行期の固形癌治療は,免疫チェックポイント阻害薬により大きく進歩しつつある。免疫チェックポイント阻害薬の抗CTLA-4抗体および抗PD-1 抗体は,標的が異なることから有効性や副作用にも違いがみられるが,いずれも生命予後の改善を期待できる点で優れている。抗CTLA-4 抗体イピリムマブは抗PD-1 抗体ニボルマブと併用すると単剤投与時よりも有効性が向上することが知られている。一方,免疫チェックポイント阻害薬療法では,多岐にわたる免疫関連有害事象(irAE)が発現するためそのマネジメントが必須となる。イピリムマブで発現頻度が高いirAEは,消化管,肝臓,内分泌系であり,ニボルマブとの併用時は頻度や重症度が上昇する傾向がある。これらirAE は既知の自己免疫疾患と異なり,免疫チェックポイント阻害薬特有の臨床像を呈する。したがって,irAEのマネジメントは薬剤に特化した適正使用ガイドなどのアルゴリズムに沿った対応が推奨される。
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原著
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口腔癌患者に対する化学療法−手術待機期間を利用したS-1 による化学療法−
46巻6号(2019);View Description Hide Description背景と目的:当科では口腔癌の生検後から手術までの待機期間を利用しS-1 による化学療法を行ってきたが,その有用性について後方視的に検討した。対象と方法: 2001年7 月〜2013年6 月までの間に術前にS-1 を投与した口腔扁平上皮癌患者105例で,S-1の投与は80〜120 mg/日を2 週間投与後1 週間休薬する投与法を基本とし予定手術の1 週間前まで行い,この時点で臨床的抗腫瘍効果の判断をRECIST ガイドラインに基づいて行った。結果: 投与期間は2〜56(中央値14)日であった。予定手術は98 例(93.3%)に実施し,臨床的にCR が得られた患者のうち7 例は手術を行わず生検のみにとどめた。これらの生検例はすべて組織学的CR であった。組織学的効果は,CR/PR/NC が 24/22/59 例で,奏効率は43.8%であった。Grade 3 の有害事象は白血球減少1 例(1%),皮疹が1 例(1%)にみられたが,ほとんどの有害事象はGrade 2 以下であった。Kaplan-Meier法による5 年累積生存率は86.7%で,組織学的CR/PR 例 95.3%,NC 例では79.7%であった。結語:待機期間を利用したS-1の術前投与は安全性と有効性において優れており,手術待機期間を利用したS-1 の投与は有益性が高いと考える。 -
消化器がん化学療法の副作用における人参養栄湯の効果
46巻6号(2019);View Description Hide Description消化器がん化学療法中の人参養栄湯の副作用軽減効果を検討した。2017年1 月〜4月までに消化器がんに対するがん化学療法を受け,「疲労感」を有する者を対象とした。人参養栄湯投与群(投与群)と対照群に分け,投与開始前と12 週間後に調査,身体症状に関する問診票調査とCTCAE v4.0で評価した。投与群24 例,対照群は9 例である。投与群のみで「疲労感」のスコア,スコア2 以上の割合は改善,「手足のしびれ(末梢神経障害)」は悪化したがスコア2 以上の割合に差はなかった。CTCAE v4.0の評価では投与前後で「疲労感」は投与群のみで改善,スコア2 以上の割合も改善した。「末梢神経障害」は両群ともに変化はないが,スコア2 以上の患者では改善傾向にあった。消化器がん化学療法中患者では人参養栄湯投与による症状改善効果があり,化学療法の継続性向上や予後向上に寄与できる可能性が期待された。 -
進行非小細胞肺癌に対する二次治療以降でのドセタキセル+ラムシルマブ併用療法の安全性確保に関する検討
46巻6号(2019);View Description Hide Descriptionレジメン管理の見地から,ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法(DocRam)の初期適用10 例における1 コース目の毒性を調査した結果,40%に発熱性好中球減少症(FN)の発現がみられ,口腔粘膜炎も高頻度であった。日本人を対象とした既報でも同様な傾向がみられたことから,DocRam の支持療法にpegfilgrastim の予防的投与を組み込むレジメンに改訂した。改訂後の10 例においてはFN の発現はなく,granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)の予防的投与はFNリスクの低減に有用と考えられた。一方,口腔粘膜炎は依然高頻度で下痢とともに治療中止の原因となっており,今後は口腔ケアチームの介入が必要と思われる。 -
再発・難治性多発性骨髄腫に対するイキサゾミブ,レナリドミド,デキサメタゾン併用療法の有効性と安全性の検討
46巻6号(2019);View Description Hide Descriptionイキサゾミブは再発または難治性の多発性骨髄腫(RRMM)患者の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長する経口プロテアソーム阻害薬として本邦でも承認を得たが,本邦の実臨床での治療成績の報告は限られている。われわれは,2017 年6 月〜2018年6 月までに大阪府済生会中津病院でイキサゾミブ,レナリドミド,デキサメタゾン併用療法(IRd療法)を受けた28 症例のRRMM 患者について有効性と安全性を後方視的に検討した。年齢中央値は75 歳で,4 レジメン以上の治療歴がある患者は46.4%であった。全奏効率(ORR)は37.0%でPFS の中央値は286 日であった。IRd 療法は中央値で5 コース施行され,Grade 3〜4の白血球減少,血小板減少,貧血はそれぞれ17.9%,14.3%,32.1%と既報告より頻度が高かったが,下痢,皮疹の重症度は既報告と同程度であった。推算糸球体濾過量(eGFR)が 50 mL/min/1.73 m2未満の群はそれ以上の群と比べてイキサゾミブおよびレナリドミドの平均投与量が低かった。PFS は両群間で有意な差を認めなかった。IRd 療法は治療歴が多い多発性骨髄腫患者に対しても有効であるが,血液毒性には注意が必要であると考えられた。また,腎機能が低下している患者においてはイキサゾミブの減量は妥当であると思われた。
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症例
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多発腋窩リンパ節転移を伴ったHistiocytoid Breast Carcinoma の1 例
46巻6号(2019);View Description Hide Descriptionhistiocytoid breast carcinomaは,本邦の報告では全乳癌の0.3%とされている非常にまれな組織型であり,確立された診断基準や腫瘍概念が存在しない。その発生母地となる病態としては浸潤性小葉癌の亜型とされていたが,乳管由来と思われる成分やアポクリンへの分化を認める報告もあり,本腫瘍の発生母地となっている病態は多岐にわたる。本邦の報告例では比較的長期生存し遠隔転移を認めない症例がみられたが,今回われわれは,多発腋窩リンパ節転移を伴ったhistiocytoidbreast carcinomaの1 例を経験した。今後症例を蓄積し,その分類や臨床的特徴などを確立することが必要であると考える。 -
集学的治療により長期生存を得た食道小細胞癌の1 例
46巻6号(2019);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。胸部中部食道に腫瘤性病変を認め,生検にて小細胞癌と診断された。転移のない限局症例であり,IP 療法後に食道亜全摘術を施行した。術後12 か月後に縦隔リンパ節再発を認め,化学放射線療法を施行し同病変は制御できたが,その後に肝転移が出現した。EP 療法にて縮小し,その後アムルビシン,S-1 と化学療法を続けたが肝転移巣が再増大し,診断51 か月後に死亡した。食道小細胞癌の集学的治療の意義を考える上で示唆に富む症例であり報告する。 -
金属ステント留置を要した食道胃接合部癌に対するRamucirumabの使用経験
46巻6号(2019);View Description Hide Description進行再発胃癌に対する二次治療として,ramucirumab(RAM)の有効性が証明された。RAMは血管新生を阻害することから創傷治癒遅延が懸念され,ステント留置を行った症例でのRAM 投与の安全性については一定の見解が得られていない。症例は60 歳台,男性。食道胃接合部癌(por),T4a(SE),N1(#1),M1,stage Ⅳに対し化学療法後にPD となり,食道ステントを留置した。三次治療としてRAM/paclitaxel(PTX)を開始した。末梢神経障害(Grade 2)にて 10コース目よりRAM 単剤で計11 か月の間,QOL を低下させることなく治療を継続でき,また四次治療としてCPT-11 への移行も可能であった。 -
S-1とステント留置術により長期生存が得られている切除不能進行胃癌の1 例
46巻6号(2019);View Description Hide Description症例は76 歳,女性。切除不能進行胃癌,cT3N2M1(LYM),cStage Ⅳであった。performance status(PS)3 のため,一次化学療法は S-1 単独(80 mg/body/day,2 週間投与,2 週間休薬)で行い,合計 42 コース施行した。治療効果は当初RECIST でSD であったが最終的にはPD となった。社会的な理由により化学療法は終了となった。徐々に幽門狭窄症状が強くなり,化学療法終了1 年後に胃癌狭窄部位にメタリックステントを留置したところ経口摂取量が回復した。切除不能進行胃癌と診断されてから5 年3か月を経過した現在でも,経口摂取と点滴を併用しながら外来通院中である。 -
Weekly PaclitaxelとRamucirumabが著効した切除不能進行胃癌の1 例
46巻6号(2019);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。胃潰瘍穿孔,汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹手術をした。術後の上部消化管内視鏡検査で3型胃癌を認め,術前の胃潰瘍穿孔は胃癌穿孔であったことが判明した。さらなる精査で,腹膜播種,肝転移が新たに判明した。以上から,切除不能進行胃癌,cT4NxH1P1M0,cStage Ⅳと診断した。一次化学療法はSOX 療法(S-1+oxaliplatin,それぞれ80 mg/body/day,100 mg/m2/回,2 週間投与,1 週間休薬)で行い,合計10 コース施行した。これにより腹膜播種と肝転移は消失したが,新たに肺転移が判明しPD となった。二次化学療法としてweekly paclitaxel(PTX)+ramucirumab(RAM)(それぞれ80 mg/m2/回をdays 1,8,15 投与。28 日毎および8 mg/kg/回をdays 1,15 投与。28 日毎)を4 コース施行したところ,肺転移,胃癌,いずれも消失しCR と判断した。3か月経過した現在も外来経過観察中である。 -
同時性4多発大腸癌の1 切除例
46巻6号(2019);View Description Hide Description症例は67 歳,女性。貧血精査の下部消化管内視鏡検査で横行結腸(2 型),S 状結腸(2 型,0-Isp)および直腸S状部(0-Ip)に4 腫瘍性病変を認めた。全病変がtub1と診断され,大腸亜全摘術(D3郭清)が施行された。病理にてpT3N0M0,pStage Ⅱ(2 病変),pTisN0M0,pStage 0(2病変)の同時性4 多発大腸癌の診断となった。4 個以上の同時性多発大腸癌は比較的まれなため,文献的考察を含めて報告する。 -
完全内臓逆位に合併したS 状結腸癌に対し腹腔鏡下S状結腸切除を施行した1 例
46巻6号(2019);View Description Hide Description完全内臓逆位は,約5,000人に1 人の割合で認められる比較的まれな先天異常である。手術には特に慎重な操作を要する。近年,著しい普及を遂げている腹腔鏡下手術においても,完全内臓逆位に対する腹腔鏡下大腸切除症例の報告が散見される。今回われわれは,腹腔鏡下に切除し得た完全内臓逆位を合併したS 状結腸癌を経験したので,安全に手術を施行するに際しての工夫と経験を報告する。 -
胃穿孔を契機に発見された側方リンパ節転移を伴うS 状結腸癌の1 例
46巻6号(2019);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。3 日間持続する腹痛を主訴に近医を受診し,汎発性腹膜炎の診断で当院に緊急搬送された。造影CT 検査で胃穿孔および左閉鎖リンパ節腫大を伴うS 状結腸腫瘍を認めた。胃穿孔に伴う汎発性腹膜炎に対して,緊急で幽門側胃切除を行った。S 状結腸腫瘍は後腹膜に強く固定されていたため切除せず,横行結腸で人工肛門を造設した。術後1か月よりbevacizumab 併用SOX 療法を開始した。6 コース施行後に腫瘍縮小を認め,S 状結腸切除および左閉鎖リンパ節の摘出を行った。術後SOX療法を2コース追加した。現在,初回手術より27 か月経過しているが,無再発生存中である。腹膜炎併発時の進行癌治療として,2期的治療を選択したことが良好な予後に寄与したと考えられた。 -
腸閉塞を契機に診断された悪性腹膜中皮腫の1 例
46巻6号(2019);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。腹痛を主訴に当院を受診し,腸閉塞の診断で手術の方針となった。腹腔内には白色結節が散在しており,小腸が一塊となっていた。小腸部分切除を施行し,悪性中皮腫の診断となった。悪性中皮腫はアスベスト曝露から25〜50年程度の潜伏期間があるとされ,今後患者数が増加していくと考えられる。腹膜にのみ中皮腫が発生する場合があり,その場合は診断に難渋することがある。いったん腸閉塞に陥ると化学療法導入が困難となるため,早期診断が重要であると考えられた。
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