癌と化学療法
Volume 46, Issue 7, 2019
Volumes & issues:
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「癌と化学療法」投稿ならびに執筆規定
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総説
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National Clinical Databaseの癌医療における活用
46巻7号(2019);View Description Hide Description医療の質向上を目的とした臨床データベース事業として,2011 年から外科専門医制度と連携したNational ClinicalDatabase(NCD)の登録が始まった。消化器外科領域の主要9 術式についてはNCD データからリスクモデルが構築され,feedback機能として症例ごとに術後短期成績(死亡率,合併症率)が予測できる。施設の成績も全国平均や都道府県の成績と比較できる。NCDデータを解析することで,専門医の手術への関与や施設の年間手術症例数が手術死亡率に影響していることも明らかになった。NCD は開始当初より一部の臓器癌に対しては癌の詳細情報が登録され,2012 年からは乳癌登録・膵癌登録も開始され,種々の癌種で臓器がん登録のNCDへの実装が進んでいる。登録の悉皆性を高め,長期予後を加えることでわが国の癌治療を改善していくことが期待される。
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特集
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- 家族性腫瘍の現況と展望
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遺伝性腫瘍診療の現状と課題
46巻7号(2019);View Description Hide Description体細胞の多遺伝子パネル検査(がんゲノム医療)やがん治療薬の適応判定とともに遺伝性腫瘍症候群を診断するあるいはスクリーニングにつながるコンパニオン診断が臨床の場に導入されている。さらに,多遺伝子パネルを用いた遺伝学的検査も普及しはじめ,わが国の従来の遺伝性腫瘍診療の流れが急速に変化している。これまでと異なる検査実施の流れの結果,複雑な生殖細胞系列の遺伝情報が検出されるケースの増加も予測され,これらを解釈し,伝達し,遺伝性腫瘍診療の目的であるがん患者やその血縁の未発症者の予防介入や治療につなげられる体制整備が必須である。これからの遺伝性腫瘍診療には,従来の遺伝医療の枠にとらわれない柔軟な対応が求められる。 -
リンチ症候群
46巻7号(2019);View Description Hide Descriptionリンチ症候群は最も頻度の高い遺伝性腫瘍症候群で,大腸がんや子宮内膜がんなど種々のがんの発症リスクが高くなる常染色体優性遺伝疾患である。原因遺伝子には複数のDNAミスマッチ修復(mismatch repair: MMR)遺伝子が存在する。リンチ症候群より発症するがんの特徴として,MMR機能欠損(functional deficiency of MMR: dMMR)によるマイクロサテライト不安定性ががんゲノム中に認められる。あるいはがん組織のMMR蛋白に対する免疫組織染色検査において,原因となるMMR蛋白の発現消失・異常が認められる。こうしたがん組織におけるゲノムや蛋白の特徴的変化は,リンチ症候群のスクリーニングや診断にたいへん有用である。近年の次世代シークエンサーを用いた研究や大規模な疫学研究の成果により,リンチ症候群における発がんのメカニズムやゲノム変化の特徴,各MMR遺伝子の発がんリスクの実態などが明らかになってきた。また,リンチ症候群関連がんでみられるMMR機能欠損は腫瘍のゲノム中に多くの体細胞変異をもたらすため,多くのネオアンチゲンを産生する原因となる。これらのネオアンチゲンはがん免疫機構の標的となるため,免疫チェックポイント阻害薬の高い有効性が期待される。こうした新たな進展はリンチ症候群の診療にこれまでにない大きな変革をもたらそうとしている。 -
Li-Fraumeni症候群-臨床的側面からみた現況と展望-
46巻7号(2019);View Description Hide DescriptionLi-Fraumeni症候群(LFS)は,がん抑制遺伝子TP53の生殖細胞系列変異を原因とする多様な組織における若年発症のcancer predisposing disorderである。乳がん,軟部肉腫,骨肉腫,脳腫瘍,副腎皮質がんの五つがコア腫瘍として知られている。多様な部位から種々のがんが発生し,その年齢も幼若乳児から中高年と幅広いためにサーベイランスではそれらのがんを想定し,生涯にわたり継続する必要がある。生殖細胞系列TP53変異は放射線感受性発がんリスクを高め,一部のがんでは予後不良因子となるなど治療・予後に影響を与えることがわかってきた。LFS 患者に対するサーベイランスはカナダを中心にプロトコールが開発され,現在も前向き研究が進行中である。本邦の実情に合ったサーベイランス方法を確立し,LFS 患者の診療を充実させることが重要である。 -
HBOC 症候群
46巻7号(2019);View Description Hide Description昨今わが国において,癌化学療法歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌の治療薬として,PARP阻害薬の一つであるolaparib(商品名リムパーザ錠)が保険収載された。BRCA1/2遺伝学的検査がコンパニオン診断として保険収載されたことは,遺伝性腫瘍全般に対する保険診療の先駆けとしてたいへん意義がある。しかしながら,このコンパニオン診断に関連し,遺伝カウンセリング体制の整備,自費診療で行った BRCA1/2遺伝学的検査の扱いなど複数の問題が浮上している。また,コンパニオン診断の目的そのものは対象となる薬剤の適応確認ではあるが,その結果には遺伝性腫瘍の診断が付随するため,病的変異を有する家系の血縁者に対する診療体制および社会的環境の整備も急務である。遺伝子解析が臨床現場に普及し,今後より広く遺伝診療が進んでいくことが予測される現在,遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)をはじめとする遺伝性腫瘍への対策を検討していくことの重要性はさらに高まると考えられる。本稿においては,HBOC 診療の現状と展望に関する見解をコンパニオン診断に焦点を当てながら述べる。 -
多発性内分泌腫瘍症
46巻7号(2019);View Description Hide Description多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia: MEN)は全身の複数の内分泌臓器に多発性に腫瘍を発生する遺伝性腫瘍症候群であり,これまでに1 型(MEN1)と2 型(MEN2)が知られていた。MEN1 の原因遺伝子は,染色体11q13上に位置するMEN1 がん抑制遺伝子であり,原発性副甲状腺機能亢進症,膵・胃十二指腸神経内分泌腫瘍,下垂体腫瘍,副腎皮質過形成,胸腺神経内分泌腫瘍などを発生する。MEN1 遺伝子の病的バリアントはエクソン2〜10 に広く分布する。MEN2の原因遺伝子は染色体10q11.2上に位置するRET がん遺伝子であり,甲状腺髄様癌,褐色細胞腫,原発性副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺伝性疾患である。MEN2の病型には2Aと2Bが存在する。RET遺伝子の病的バリアントはエクソン10,11,13〜16 に集中しており,病的バリアントの位置と病型には強い相関が認められる。近年,染色体12p13上に位置するCDKN1B遺伝子の病的バリアントを有する4 型(MEN4)が発見された。MEN4では原発性副甲状腺機能亢進症と下垂体腫瘍,膵・消化管神経内分泌腫瘍の発生が多く発症疾患はMEN1 類似であるが,MEN1に比べて比較的高齢で発症し内分泌腺腫瘍のバリエーションが多彩な傾向を示す。
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Current Organ Topics:Head and Neck Cancer 頭頸部癌 頭頸部ウイルス発癌-基礎と臨床の進歩-
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原著
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70歳以上の高齢再発乳癌患者におけるパルボシクリブの安全性
46巻7号(2019);View Description Hide Description今回われわれは,70 歳以上と70 歳未満の症例におけるパルボシクリブの有害事象および休薬・減量の割合を比較した。2017年 12月〜2018年 8 月までに,パルボシクリブを125 mg/日で開始した症例を対象とした。70 歳以上11 例,70 歳未満は21例であった。最も多い有害事象は好中球減少で,グレード3 以上は70 歳以上91%,70 歳未満で81%の症例で認められた。発熱性好中球減少症は全症例で1 例のみであった。70 歳以上で休薬の割合は70 歳未満と比較し高かった(100% vs86%)が,減量の頻度は同等であった(64% vs 62%)。高齢患者においてもパルボシクリブは忍容性があると思われた。 -
Clinical Evaluation of the Efficacy and Safety of Anagrelide Used with or without Hydroxycarbamide in Japanese Patients with Essential Thrombocythemia-A Retrospective Single-Center Study of 35 Cases
46巻7号(2019);View Description Hide Description目的: 日本と欧米では,essential thrombocythemia(ET)の臨床像や検査データ,disease transformation,薬剤の代謝が違う。また,前向き臨床試験に比較して実臨床での臨床像は多彩である。そのため実臨床での後方視的検討が必要であると考えられる。本報告の目的は,anagrelide(ANA)単剤およびANAとhydroxycarbamide(HC)の併用療法の有効性,安全性,認容性を日本人ET 患者の実臨床で検討することである。患者と方法:当施設においてANA が投与された35 例。ANA単剤が16 例(45.7%),ANAとHC の併用が10 例(28.6%),ANAとその他の併用が9 例(25.7%)であった。結果:3 群間での比較では,血小板 60×10 / / 4mL 以下と40×104mL 以下の奏効率(43.8%,6.3% vs 50.0%,10.0% vs 44.4%,11.1%),治療継続率(81.3% vs 40.0% vs 55.6%),ANA 1 日投与量中央値(3群間すべてで1.00 mg),投与期間中央値(259日vs 198.5日vs 161.0日)に有意差を認めなかったが,HC 併用で継続率が不良の傾向を示した。すべてのグレードの有害事象の頻度では,45.7%,28.6%,25.7%とANA単剤で多かったがすべて軽度であった。結論: ANA単剤,HC 併用,その他の併用のすべてで認容性は良好であった。
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医事
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熊本県におけるがん診療連携活動の現状と課題
46巻7号(2019);View Description Hide Description熊本県がん診療連携協議会の下部組織である相談支援・情報連携部会が中心となり,県内共通のがん診療連携パス「私のカルテ」(パス)を作成し,2009年にがん診療連携拠点病院(がん拠点病院)でパスの運用を開始した。また,相談支援・情報連携部会はがん相談支援センターの周知やがん専門相談員の育成を目的に,がん専門相談員ワーキンググループを組織し活動を開始した。これらの活動により,がん拠点病院を受診する患者が増加しパスによる連携件数が4,800件を超えた。がん登録データの解析からは,手術,放射線療法,化学療法などのがん診療において各医療圏で格差が生じていることがわかった。がん診療の状況を調査し,現在の問題点や今後の課題について報告する。
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薬事
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エルロチニブと胃酸抑制薬の併用状況調査とそれらの薬物間相互作用に関する医師の意識調査
46巻7号(2019);View Description Hide Descriptionエルロチニブは非小細胞肺がんの薬物治療において重要な位置付けにある薬剤であるが,胃酸抑制薬(gastric acidsuppressing medication: AS)との薬物相互作用により,AUCおよびCmaxが低下することが報告されている。そこでわれわれは,エルロチニブが開始された患者のAS 併用状況を調査し両薬剤の薬効への影響を小さくするために,エルロチニブを朝食間,H2受容体拮抗薬を夕食後または就寝前に服用する方法を検討した。これを日常診療においてエルロチニブを処方する医師に提案し,併せて薬物相互作用に対する意識調査を行った。その結果,29%の医師は薬物相互作用を「懸念していない」と回答したが,提案した服用方法に対しては81%の医師が「検討する」と回答し,多くの医師が薬剤師からの提案を受け入れた。薬剤師が医薬品情報を分析し,薬学的根拠をもって医師へ提案することは医師からの期待にこたえるものであり,発揮すべき薬剤師の職能であると考えられた。 -
吃逆に対する柿のヘタ煎の有効性
46巻7号(2019);View Description Hide Description吃逆は患者QOL を低下させる要因となる。柿のヘタを煎じた製剤(柿のヘタ煎)は吃逆治療の選択肢の一つであるが,その有効性は十分に検証されていない。そこで,本製剤の処方実態と吃逆に対する有効性について調査した。2011 年10月〜2016 年5 月31 日までの4 年8 か月間に柿のヘタ煎が処方された患者を対象に後ろ向き調査を実施した。吃逆の主因として化学療法および脳疾患関連が認められた。吃逆に対し柿のヘタ煎が投与された149 名のうち107 名(71.8%)で有効性を認めた。効果は脳病変(p=0.0075),化学療法(p=0.0402),胃管の挿入(p=0.0065)によって有意に向上した。特に,本製剤は化学療法後の吃逆患者55 名中45 名(82.0%)において有効であった。本研究より,柿のヘタ煎は化学療法関連吃逆に対して高い有効率を示すとともに,予防投与に有用である可能性が示唆された。
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症例
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Carboplatin(CBDCA)+Nab-Paclitaxel(Nab-PTX)を用いた術前化学療法で完全寛解が得られたⅢ期肺扁平上皮癌の2 例
46巻7号(2019);View Description Hide Description症例1: 83 歳,男性。左主肺動脈へ浸潤する左上葉肺扁平上皮癌に対してcarboplatin(CBDCA AUC: 6)+weekly nabpaclitaxel(nab-PTX 100 mg/m2)を2 コース行った後,左上葉切除+ND2 郭清術を行った。病理で腫瘍は消失してEf. 3 と診断された。症例2: 81 歳,男性。右上葉肺扁平上皮癌で#4R に4 cmの上大静脈浸潤を伴ったリンパ節転移あり,CBDCA(AUC: 6)+weekly nab-PTX(100 mg/m2)を2 コース行った後,右上葉切除+ND2 郭清術を行った。病理で腫瘍は消失してEf. 3 と診断された。扁平上皮癌に対する術前化学療法としてnab-PTXは選択肢の一つになる可能性がある。 -
膵転移による急性膵炎を契機に発見された小細胞肺癌の1 例
46巻7号(2019);View Description Hide Description症例は56 歳,男性。急性心窩部痛および膵酵素高値のため当院へ入院した。CT では膵腫大とともに右上肺野縦隔側および右肺門部に腫瘤影を認めたため気管支鏡検査を施行した結果,小細胞肺癌と診断し,肺癌の膵転移によって急性膵炎を来したと判断した。化学療法を開始したところ膵炎所見は軽快した。膵転移による急性膵炎はまれな肺癌の合併症であるが,患者の予後やQOL に強く影響するため迅速な診断と適切な治療介入が重要である。 -
Pegfilgrastimの投与によりTAC 6 コースの術前化学療法を遂行し得た乳癌の1 例
46巻7号(2019);View Description Hide Description症例は45 歳,閉経前女性。主訴は右乳房腫瘤。現病歴として2010 年2 月右乳房腫瘤に気付き当院を受診した。右乳房外下領域に40 mmの腫瘍が触れ,腋窩リンパ節も触れた。腫瘍は浸潤性乳管癌(硬癌)でプロファイルはER(+),PgR(+),HER2(1+),Ki-67 80%であった。術前化学療法としてTAC療法[docetaxel(75 mg/m / 2),adriamycin(50 mg/m2),cyclophosphamide(500 mg/m2)]を3 週毎6 コース行った。各コースの投与翌日にpegfilgrastim(3.6 mg)を皮下注した。TAC 6 コースで減量,休薬なく副作用は口内炎と腰痛(Grade 2)のみで発熱性好中球減少症(FN)は生じなかった。手術は部分切除が可能となった。病理学的にはviable な腫瘍が45 mm の範囲に散在し,非浸潤癌の成分も認めたが腋窩リンパ節には転移を認めなかった。術後残存乳房に放射線治療50 Gyを行った。tamoxifen(20 mg)1T/日の内服を行い術後8年の現在,無再発生存中である。乳癌術前化学療法にpegfilgrastim併用TAC療法が有効である可能性が示された。 -
乳癌再発に伴う血栓性微小血管症と診断し化学療法を施行した1 例
46巻7号(2019);View Description Hide Description症例は49 歳,女性。43 歳時に左乳癌と診断され,化学療法の後に乳房部分切除術および腋窩リンパ節郭清術が施行された。術後は温存乳房照射およびホルモン療法が行われた。術後5 年4 か月目に頸椎の痛みが出現し,頸椎転移の診断となった。同時期より倦怠感の出現を認め,血液生化学所見では著明な貧血や血小板減少,黄疸,破砕赤血球の出現を指摘され,精査加療目的に当院へ紹介となった。精査にて,再発乳癌に伴う血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy: TMA)と診断された。化学療法を開始したところ,TMAの病態の軽減を図ることが可能となった。その後も化学療法を継続し,約3 年2 か月後に死亡した。 -
閉経後ホルモン陽性進行再発乳癌に対するEthinyl Estradiolの使用経験
46巻7号(2019);View Description Hide Descriptionethinyl estradiol(EE2)療法は閉経後ホルモン陽性進行再発乳癌に対する内分泌療法の選択肢として三次治療以降に検討される。特に内分泌療法耐性が出現した場合にも有効との報告があり,今回当院でのEE2療法の治療成績と安全性について検討した。対象は閉経後ホルモン陽性進行再発乳癌12 例,EE2投与前の内分泌療法のレジメン中央値は7 であった。PFS 中央値4.8 か月,OS 中央値は10.0か月であり,Grade 3 以上の有害事象は食欲不振の1 例のみであった。EE2療法は複数の内分泌療法歴のある患者においても効果が得られ,安全性にも優れ,内分泌療法獲得耐性患者のlate-line内分泌療法として検討に値する治療法と考えられた。 -
術前治療が著効した浸潤性微小乳頭癌の2 例
46巻7号(2019);View Description Hide Description症例1 は54歳,女性。主訴は左乳房の腫瘤。針生検でinvasive micropapillary carcinoma(IMPC)と診断した。ER(+),PgR(+),HER2(1+),Ki-67 index 30%であった。術前治療としてEC(epirubicin 90 mg/m2,cyclophosphamide600 mg/m2)を4 コース,引き続きtriweeklyでdocetaxelおよびnab-paclitaxelを4 コース行った。2013 年5 月,乳房部分切除+腋窩郭清を行った。病理学的に腫瘍の残存を認めず,pCR が得られた。症例2 は61 歳,女性。主訴は右乳房の腫瘤。針生検でIMPCと診断した。ER(+),PgR(−),HER2(1+),Ki-67 index 30%であった。術前治療としてletrozole 2.5 mg/日によるホルモン療法を6 か月間行った。2013 年11 月,乳房部分切除+センチネルリンパ節生検を行った。病理学的にIMPCの成分の残存を認めず,11 mmの乳頭腺管癌の残存のみを認めた。pPR であった。悪性度が高いとされるIMPC においても術前化学療法のみならず術前ホルモン療法も有効である可能性がある。 -
Nab-PTX+RAM 療法を施行した切除不能進行再発胃癌の臨床経験
46巻7号(2019);View Description Hide Description切除不能進行再発胃癌6 例に対し,胃癌治療ガイドラインにて条件付きで推奨されているnab-PTX+RAM化学療法を行ったので,その安全性と有効性について報告した。副作用に関して,Grade 3 は4例の好中球減少症と1 例の高血圧症を認めたが,発熱性好中球減少症はみられなかった。治療関連死は認めなかった。治療効果はPR 1 例,SD 1 例,non-CR/non-PD 2 例,評価困難2 例であった。この治療は,条件付き切除不能進行再発胃癌患者において外来通院でも安全に施行できることが示唆された。 -
憩室から発生したと考えられた上行結腸癌の1 例
46巻7号(2019);View Description Hide Description患者は70歳台前半,男性。主訴は食欲不振と腹痛。CT では上行結腸の壁肥厚,大腸内視鏡検査では多発憩室を認めたが腫瘍性病変はなかった。上行結腸憩室炎の診断で腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。切除標本では大腸壁は肥厚していたが粘膜面には腫瘍を認めなかった。病理組織学的検査で上行結腸には憩室が多発し漿膜下にかけて高分化管状腺癌を認めた。憩室由来の上行結腸癌と診断した。術後に化学療法を施行したが腹膜播種により術後14 か月で死亡した。 -
A Case of Philadelphia Chromosome-Positive Acute Lymphoblastic Leukemia with Aspergillus Brain Abscess and Invasive Pulmonary Aspergillosis Successfully Treated with Voriconazole Followed by Cord Blood Transplantation
46巻7号(2019);View Description Hide Description症例は59 歳,女性。フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の寛解導入療法施行中に侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)を発症した。liposomal amphotericin B の投与により真菌血清補助診断の値は改善するもIPA は増悪した。また,アスペルギルス脳膿瘍も併発したがCT では検出できずMRI で多発結節病変として検出した。脳生検の検体のPCR 法で確定診断した。voriconazole(VRCZ)が奏効し,臍帯血移植を施行した。移植後約2 年経過するが,VRCZの長期投与によりIPAとアスペルギルス脳膿瘍の再燃は認めていない。 -
化学療法による薬剤性肝障害を契機にメサドンによる傾眠を来した1 例
46巻7号(2019);View Description Hide Description症例は66 歳,男性。右側胸壁原発の悪性線維性組織球腫の局所浸潤による難治性がん疼痛に対しメサドンで良好な鎮痛を得ていた。四次治療としてトラベクテジンの投与を行ったが,CTCAEGrade 4 の薬剤性肝障害を来し同時に強い傾眠となった。ビリルビン値やアンモニア値の上昇はなく,他の傾眠を来し得る薬剤の併用もなかったため,肝代謝低下によるメサドン血中濃度上昇が原因と推測した。メサドン減量と肝庇護薬投与などの対症療法を行うことで呼吸抑制やQT 延長,心室性不整脈など重篤な有害事象は避けられた。化学療法の有害事象など薬物代謝に影響を与え得る多様な病態が想定されるがん診療においては,メサドンは十分な注意の下に投与を行うことが重要である。
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