癌と化学療法
Volume 46, Issue 8, 2019
Volumes & issues:
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「癌と化学療法」投稿ならびに執筆規定
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総説
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がん治療におけるParticle Therapyの現状と展望
46巻8号(2019);View Description Hide Description陽子線治療,炭素イオン線を用いた荷電粒子線治療は,その物理学的な特徴としてX線と比較して線量集中性が良好であるため安全な線量増加が可能である。様々な疾患に対する荷電粒子線治療の安全性と有効性に関する報告によってその臨床的な有用性が広く知られるようになり,近年の世界的な施設数の増加につながった結果,現在では高精度放射線治療の代表的な治療法として認識され,本邦でも段階的に保険収載の適応疾患が増えている。一方,ホウ素中性子捕捉療法はまだ研究段階である。しかしながら,これまで限られた施設で行われていた本治療は中性子線源として使用してきた原子炉ではなく,加速器を用いた新たな発生装置を開発研究中であり,今後の成果が大いに期待されている。このように,大きな変革期を迎えている粒子線治療をさらに発展させるためには,すべての粒子線治療施設で情報共有や共同研究が行える体制をより整備することが重要である。
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特集
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- がん治療における患者参画
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患者の立場から
46巻8号(2019);View Description Hide Descriptionがん対策基本法ではがん患者のがん政策への参画が法定され,がん医療の均てん化やドラッグ・ラグの解消においてがん患者の声が反映されるとともに,アドバンス・ケア・プランニングをはじめとしてがん患者の治療への意思決定支援も行われつつある。一方で,国内のがん関連学会では患者参画プログラムが設けられ,国のがん対策推進基本計画においても患者が研究のデザインや評価に参画できる体制を構築するとされ,日本医療研究開発機構(AMED)や臨床研究グループなどにおいて患者・市民参画の取り組みが始まりつつある。 -
医師の立場からの期待
46巻8号(2019);View Description Hide Description臨床試験の立案において米国や英国では早くから患者・市民の意見を取り入れる,いわゆる患者・市民参画が確立している。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)でも患者参画小委員会を立ち上げ,患者・市民の意見を参考とした臨床試験の実施を検討しはじめている。JCOG肝胆膵グループでは3 年前より患者参画意見交換会を実施し,グループの紹介,未承認・適応外薬に対する要望,がんゲノム医療について計画中の臨床試験への意見などをテーマに実施してきた。研究者側からみた患者参画に対する意義や期待として,臨床試験を行うべき臨床的課題の探索,臨床試験のコンセプト作成段階で患者の視点から意見や要望を取り入れる,説明文書のわかりやすい作成,患者・市民の臨床試験への理解による患者登録の促進などがあげられる。患者参画の取り組みはまだ始まったばかりであり,日本型の患者参画の確立が期待される。患者参画を継続するには研究者と患者・市民の双方の利益につながる患者参画が必要と考えられる。
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Current Organ Topics:Thorax/Lung and Mediastinum, Pleura: Cancer 肺癌 肺癌治療における免疫チェックポイント阻害薬の現状と展望
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原著
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当院における再発・切除不能膵癌に対する一次化学療法としての FOLFIRINOX 療法の治療成績
46巻8号(2019);View Description Hide Description当院における再発・切除不能膵癌に対する一次治療としてFOLFIRINOX 療法の治療成績を検討した。2014 年2 月〜2017 年12 月までに当院で一次化学療法としてFOLFIRINOX 療法を行った再発・切除不能膵癌患者15 例を対象とし,有害事象と有効性を検討した。対象の内訳は,遠隔転移を有する切除不能(UR-M)膵癌11 例,局所進行切除不能(UR-LA)膵癌が4 例であった。年齢の中央値は56(40〜75)歳,男性9 例,女性6 例であり,原発巣の局在は頭部8 例,体尾部が7 例であった。Grade 5 の有害事象を1 例に認め,肝膿瘍からの敗血症が原因であった。治療効果は,奏効率20.0%,病勢制御率は66.7%であった。2 例でFOLFIRINOX 療法後にconversion surgery を行った。7 例で二次治療としてゲムシタビン塩酸塩+ナブパクリタキセル併用療法(GnP療法)を選択していた。治療開始後の全生存期間(OS)・無増悪生存期間(PFS)の中央値はそれぞれ17.0 か月・8.4 か月であり,1 年生存率は66.7%であった。再発・切除不能膵癌に対するFOLFIRINOX療法の成績は良好であったが,重篤な副作用に注意が必要である。UR-M症例でも奏効例では切除により比較的長期の無増悪生存が得られており,今後さらなる検討が必要と考えられた。 -
Retrospective Analysis of 20 Patients with DLBCL Who Received MCVAC Followed by Autologous Peripheral Blood Stem Cell Transplantation
46巻8号(2019);View Description Hide Description若年者の化学療法に感受性のある再発もしくは初回治療不応性のaggressive リンパ腫は,自家末@血幹細胞移植併用大量化学療法(auto-PBSCT)が標準的治療と考えられている。前処置には,様々なレジメンが使用されているが確立された標準レジメンは未だ存在しない。われわれの施設では,原則的に前処置にはranimustine,cytarabine,etoposide,cyclophosphamide(MCVAC)療法を使用している。その有効性,安全性を検証するのが本報告の目的である。MCVAC療法を前処置としてauto-PBSCTを施行したびまん性大細胞B 細胞リンパ腫(DLBCL)の20 例を後方視的に検討した。観察期間中央値は13.05(0.57〜49.5)か月。4年生存率と無増悪生存率はそれぞれ57.8%と30.2%であった。治療不成功の原因では,再発が最も多かった(7症例)。高頻度の有害事象は,食思不振/嘔気(95%),下痢(75%),低カリウム血症(70%),発熱性好中球減少症(65%),肝機能障害(60%),口内炎(60%)であった。1 例が VOD/SOSで死亡した(治療関連死亡率は5%)。重篤な有害事象では(CTCAE v4.0でグレード4),低カリウム血症,不整脈,脳出血,心不全をそれぞれ1 例(5%)ずつ認めた。晩期発症の有害事象では,治療関連の骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病(MDS/AML)を 1 例認めた。サイトメガロウイルス肺炎や肺障害は認めなかった。結論であるが,MCVAC療法は再発難治性DLBCL のauto-PBSCTの効果的でかつ忍容性のある前処置レジメンである。しかし VOD/SOS と晩期発症の MDS/AML には注意深い経過観察が必要である。長期間の有効性と安全性を評価するためには,さらなる観察が必要である。
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医事
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緩和的化学療法への患者の期待と不安
46巻8号(2019);View Description Hide Description緩和的化学療法を受けるがん患者の疾患やその治療に関する理解は様々な要因で医療者の意図するところと異なることが多いとされている。その理解の違いが癌の治療では治療選択などの自己決定支援において問題になる。本研究では緩和的化学療法を受ける固形癌患者の治療に対する期待と不安について自己記入式のアンケートを行い,その実態を調査した。患者は原疾患が治癒困難で,治療目標が生活の質を保ちながらの延命であることを口頭および文章で明確に説明し,治療内容に関する同意書と同時に治療に対する期待と不安についてのアンケートを渡し,治療直前に回収した。患者総数は165 名,平均年齢68.3歳,原疾患は消化器癌133名,その他が32 名であった。全体の29%が治療による症状緩和,28%が病巣の縮小などの客観的な治療効果を期待しているなかで,19%は"治癒"を期待していた。最も多くの患者が心配しているのは治療の副作用であった。この比率は一次治療と二次治療で比較して大きく変わることはなかった。進行がん患者に対する初期からの緩和ケアの重要性が確かめられた。また,治療前から副作用の対策と対処法の十分な説明が必要であると思われた。さらに,治癒を目標としない治療を受けながら治癒を期待している患者が少なからずいることを,医療者は認識して疾患の進行度と治療の目標を患者と共有していく努力が必要と思われた。
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薬事
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抗がん薬調製時の曝露防止にかかわる医療材料費の実態と費用削減の検討
46巻8号(2019);View Description Hide Description大垣市民病院では,平成28 年度診療報酬改定を機に閉鎖式薬物移送システム(closed system drug transfer device:CSTD)を用いた抗がん薬調製業務を拡大した。今回,2017 年12 月の当院外来患者のレジメン数,調製件数を調査し抗がん薬調製にかかわる全消耗品の費用を算出した。抗がん薬調製68 レジメン,調製件数574 件,CSTDの使用は331 件(57.7%)であった。抗がん薬調製にかかわる費用は1,608,163 円/月であり,そのうち CSTDの費用は1,135,315円/月(70.6%)であった。CSTDにかかわる費用は非常に大きいため,材料費削減の検討を行った。CSTDはバイアル内外の差圧を調節する機構を有することが診療報酬算定条件であるが,有しないものを使用した場合施設負担額は24.7%削減と試算できた。CSTD は曝露防止の安全面のみではなく,drug vial optimization(DVO)導入による医療費削減にも貢献でき,今後も診療報酬の改定や算定条件の緩和に向けて,医療現場からエビデンス作りを行っていきたいと考える。
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症例
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乳癌気管支内転移の2 例
46巻8号(2019);View Description Hide Descriptionまれな病態である乳癌気管支内転移(endobronchial metastasis: EBM)の2 例を報告する。肺転移を伴った1 例は診断後66 か月,内分泌療法が奏効しCR で生存中である。多臓器に転移のあった1 例は診断後42 か月で癌死した。乳癌患者に気管支閉塞症状を認めた場合,気管支鏡検査で確定診断を得て患者の状況に応じた治療を行うことで,良好な予後を得られる可能性がある。 -
L858RとT790MのEGFR 遺伝子重複変異を認めた肺癌術後肝転移にOsimertinibが奏効した1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は63 歳,女性。右肺癌に対し右下葉切除術および縦隔リンパ節郭清を施行したが,術後5 年5か月で多発性肝転移が出現した。EGFR 遺伝子検索でL858RとT790Mが検出されたため,一次治療としてgefitinibを開始したが効果判定はprogressive disease(PD)であった。二次治療としてosimertinib を開始したところ肝転移巣は著明に縮小し,約1 年間partial response(PR)を維持している。L858R とT790M のEGFR 遺伝子重複変異がある肺癌肝転移再発に対しosimertinibが有効であった1 例を経験したので報告する。 -
根治術後7年目に左鎖骨上リンパ節再発を来した胸部食道T1a(LPM)癌の1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description食道癌根治手術後の再発は28〜47%,その約85%が2 年以内の早期に認められ,再発診断時からの生存期間中央値は5〜10か月と極めて不良である。一方,壁深達度T1a(MM),T1b(SM1)の症例でのリンパ節転移は10〜20%であることが知られており多くは手術治療が行われるが,T1a(LPM)ではリンパ節転移の頻度は極めてまれである。今回われわれは,pT1a(LPM)の食道癌根治術後7 年という長期経過後に左鎖骨上リンパ節(No. 104L)に再発したまれな症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。 -
Paclitaxel+Ramucirumab療法が著効したStage Ⅳ進行胃癌の1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。上部消化管内視鏡で前庭部前壁にBorrmann 2 型の腫瘍を認めるも,組織生検では壊死組織のみで術前診断は困難であった。造影CT 検査およびFDG-PET検査にて,胃周囲リンパ節,左鎖骨上窩・両側肺門・縦隔内にFDG の高集積を伴うリンパ節腫大を多数認めた。胃癌あるいは悪性リンパ腫の疑いで,確定診断および穿孔予防のため幽門側胃切除を行い,手術標本から低分化腺癌と診断した。一次治療としてS-1+cisplatin 療法,二次治療としてpaclitaxe(l PTX)+ramucirumab(RAM)療法を施行,PTX+RAM療法が著効し画像的complete remission(CR)となった。しかし四肢末梢のしびれなどの有害事象を認め,5 コース終了時点で患者の希望により治療を中断し,外来で経過観察を行っている。治療中断から13か月が経過した現在でも画像的CR を維持している。 -
化学療法のみで7年間の経過が観察されている進行胃癌の1 例−特に内視鏡画像の経時的変化について−
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。上部消化管内視鏡で約12 cm の3 型の噴門部胃癌を認めた。CT で3 個のリンパ節転移が認められ,術前診断cT4aN2M0,cStage ⅢB と診断されたが,本人の意向で化学療法での治療が選択された。まずS-1+CDDP を行い,その後S-1単剤,S-1+PTX,PTX 単剤と変更した。その経過中,上部消化管内視鏡およびCT にてフォローし,診断後7 年を経過した現在もCR を維持し化学療法を行っている。7 年間の内視鏡所見,3 型進行胃癌の形態変化を中心に報告する。 -
イマチニブによる術前化学療法の奏効後に切除し得た大型胃GIS T の1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は74 歳,女性。上腹部痛を主訴に腹部CT を撮影したところ胃体上部に12×9 cm 大の巨大腫瘍を認め,当院紹介となった。上部内視鏡検査による生検でgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断され,術前化学療法としてイマチニブ 400 mg/日の投与を開始した。計 9 か月の投与後の腹部 CT で腫瘍の縮小を認め PR と判定し,脾合併胃部分切除を施行した。3年間のイマチニブ内服を行っていく予定であり,術後7 か月経過した現在再発を認めていない。 -
Panitumumabが著効し根治切除が可能となった高齢者局所進行S状結腸癌の1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は84 歳,女性。骨盤壁への広範囲浸潤を伴い,一期的根治切除が困難な局所進行S状結腸癌を認めた。狭窄を認めたため,横行結腸双孔式人工肛門造設術を行った。performance status 2 の高齢者で,殺細胞性抗癌剤は投与が難しいと判断し,panitumumab(Pmab)単剤投与による化学療法を開始した。4 コース目にS-1 を4日間内服したが,忍容性がなく中止した。計7コース施行し,腫瘍が著明に縮小したためS状結腸切除術を行った。高齢者に対する化学療法は忍容性が問題となる。Pmab単剤投与は高齢者進行大腸癌の有効な治療選択肢になり得ると考えた。 -
胆管非拡張型膵・胆管合流異常を有した胆嚢過形成ポリープとS状結腸癌を一期的に切除した1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は60 歳,女性。貧血を契機に発見されたS 状結腸癌に対する術前検査で胆嚢腫瘤を指摘された。精査の結果,胆管非拡張型膵・胆管合流異常を伴う胆嚢癌疑いの診断で,S 状結腸切除と同時に全層胆嚢摘出術を施行した。術中迅速診断の結果,胆嚢癌は否定された。永久標本の病理組織診断は,胆嚢過形成ポリープ,慢性胆嚢炎,S 状結腸癌,pT3N2M0,stageⅢb であった。他疾患の術前検査などで胆嚢内のポリープが偶然に指摘された場合,背景に膵・胆管合流異常が存在する可能性に留意すべきである。特に胆管非拡張例で胆嚢病変が癌化する前であれば付加的に胆嚢摘出術を行うことで必要最小限の侵襲で治療できる可能性がある。 -
慢性骨髄性白血病に対してイマチニブ長期投与中に発見された下行結腸癌に対し術後補助化学療法を安全に施行し得た1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は66 歳,男性。慢性骨髄性白血病(CML)に対し,イマチニブが長期投与され寛解を維持されていた。貧血精査にて下行結腸癌を指摘され,左結腸切除を施行した。病理結果から,術後補助化学療法を行う方針となった。イマチニブを長期投与中であったが,CMLの病勢コントロールが良好であったため,イマチニブを休薬しUFT/LVによる術後補助化学療法を施行した。イマチニブ休薬に伴うCML 急性増悪を念頭に厳重に経過観察し,6 か月間に及ぶ術後補助化学療法を安全に完遂することができた。イマチニブ長期投与中に併発した結腸癌に対し綿密な治療計画の下,術後補助化学療法を施行した症例を文献的考察を交え報告する。 -
直腸癌術後に皮下転移を認めた1 例
46巻8号(2019);View Description Hide Description症例は63 歳,女性。下血を認め近医を受診した。下部消化管内視鏡検査にて直腸癌と診断され,当院に紹介となった。腹腔鏡下低位前方切除術を施行し,病理診断はpT4b(uterus)N2M0,pStage Ⅲb であった。術後補助療法にcapecitabine+oxaliplatin(CapeOX)療法を施行した。4 コース後に肝転移,腹膜播種および左腰部に皮下転移を認めた。皮下病変の針生検により免疫組織学的に転移と確認された。術後から8 か月で死亡した。直腸癌の皮下転移は比較的まれであり報告する。
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特別寄稿
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- 第52回 制癌剤適応研究会
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High-Risk StageⅡ大腸癌に対する術後補助化学療法の妥当性の検討
46巻8号(2019);View Description Hide Description背景: high-risk Stage Ⅱ大腸癌に対する術後補助化学療法については有効性が示されていない。当院におけるhighriskStageⅡ大腸癌に対する術後化学療法の妥当性を検討した。方法: 2013 年10 月〜2018年3 月までの間に当院で施行した大腸癌手術症例のうち,high-risk Stage Ⅱと診断した99 例を後方視的に検討した。術後化学療法施行群と非施行群に分類し,術後長期成績を比較した。治療成績はoverall survival(OS)およびrecurrence-free survival(RFS)を算出し比較した。結果:全体の36 例(36.4%)が施行群であった。施行群では非施行群と比較して有意に年齢が若く(p<0.010),ASA-PS(p<0.010),術前Hb値(p<0.010),術前Alb 値(p<0.010)が良好であった。再発高リスク因子は両群間で差を認めず,レジメンは内服薬のみのレジメンが多かった。OS およびRFS は両群間で差を認めなかった。結語:当院で施行したhigh-riskStage Ⅱ大腸癌に対する術後補助化学療法の妥当性は示されなかった。レジメンの内容や化学療法適応患者の基準について検討すべきと思われた。 -
T4-pStageⅡ結腸癌におけるハイリスク因子と補助化学療法適応に関する検討
46巻8号(2019);View Description Hide Description背景: T4 はハイリスク因子の一つであるが,T4-Stage Ⅱ結腸癌に対する補助化学療法の有効性や推奨されるレジメンは明らかでない。対象: 2004〜2015年までに根治切除を施行した原発性pStageⅡ結腸癌211 例。結果: StageⅡA/ⅡB/ⅡCの5 年全生存率(OS)は 90.2/83.4/59.2%,5 年無再発生存率(RFS)は 87.3/73.3/42.8%であり,T4は転帰不良であった。さらにT4 のハイリスク因子としてOS の多変量解析では男性,ly2/3,補助化学療法なしが,RFS の多変量解析でも男性,ly2/3 が抽出された。今回,オキサリプラチンベースの補助化学療法施行例はなく,補助化学療法有無の比較では 5 年OS に差を認めなかった。まとめ: T4 ではオキサリプラチンなしの補助化学療法では効果は乏しく,オキサリプラチン併用療法が推奨されることが示唆された。 -
進行再発大腸癌のVEGF 阻害薬使用例における蛋白尿の検討
46巻8号(2019);View Description Hide DescriptionVEGF 阻害薬を使用した進行再発大腸癌158 例において蛋白尿はGrade 1 が104 例で,Grade 2,3 は54 例であった。Grade 2,3 は高血圧と糖尿病を併発している症例に多い傾向にあり降圧薬としてARB を多く使用していたが,蛋白尿を減少させることはできなかった。蛋白尿2+までの症例は尿蛋白・クレアチニン比が2 以下であり,休薬後もこれを目安に再投与し治療継続が可能である。 -
進行食道癌に対する手術加療を目的としたDCF 療法
46巻8号(2019);View Description Hide DescriptioncStage Ⅲ,Ⅳ食道癌に対するDCF 療法の有用性と問題点を検討した。2017 年1 月〜2018年12 月までの当院での11症例を対象とし,腫瘍縮小効果と有害事象について後方視的に検討した。年齢中央値は67 歳,男女比は9:2,PS は全例0であった。化学療法前の病期はcStage Ⅲ 7 例,Ⅳa 4 例,3 コース5 例,さらに2 コース追加1 例,2 コースで終了1 例,2コース目からFP 療法に変更したものが4 例であった。化学療法後に手術が可能となったのは5 例あった。奏効率63.6%,腫瘍縮小率平均48.3%,組織学的効果はGrade 2 以上を2 例に認めた。有害事象はGrade 4 の好中球減少を全例,Grade 3以上の発熱性好中球減少症を6 例に認めた。DCF 療法は症例を慎重に選択し,適切な骨髄抑制の対処をすれば有用なNACと考える。