Volume 46,
Issue 11,
2019
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総説
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癌と化学療法 46巻11号, 1677-1682 (2019);
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がんの免疫療法の領域では,患者由来のT 細胞を体外で遺伝子改変して患者に投与するという養子免疫療法の有効性が示されている。しかし体外でT 細胞を培養すると疲弊しやすいという問題がつきまとっていた。さらに養子免疫療法は,主に自家移植の系で行われているためにコストや時間がかかるなどの問題も残されている。これらの障壁を乗り越えるために,筆者らはiPS 細胞技術を用いた戦略を進めている。まず,抗原特異的T細胞からiPS 細胞を作製し,そのiPS 細胞からT 細胞を再生すると,すべてが元のT 細胞と同じ特異性をもつT 細胞になる。このコンセプトに基づいて2013 年にメラノーマ抗原MART-1特異的T 細胞の再生に成功し,最近さらに高品質なキラーT細胞の分化誘導に成功した。現在,臨床応用に向けて特定のTCR 遺伝子をiPS 細胞に導入する方法の開発を進めている。この方法をHLA ハプロタイプホモiPS細胞株に利用すれば,他家移植用の「即納可能な再生キラーT細胞製剤」を作製できると考えている。
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特集
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制吐療法Up to Date
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癌と化学療法 46巻11号, 1683-1685 (2019);
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2010 年に日本癌治療学会の制吐薬適正使用ガイドラインの初版が発刊され,2015年10 月に第2 版の改訂版が発刊された。さらに2018年Web改訂版ver. 2.2が作成され,今回その改訂のポイントを解説する。2018 年の改訂では2015〜2018年のエビデンスが追加されている。ポイントはMEC においてカルボプラチンを含むレジメンと非カルボプラチンレジメンに分けて,カルボプラチンを含むレジメンをHECと同様にNK1受容体拮抗薬,5-HT3受容体拮抗薬,ステロイドの3剤を推奨した。また,オランザピンが制吐薬としての公知申請により,2017 年6 月から他の制吐薬との併用において成人では5 mgを1 日1回経口投与(患者の状態により1 日10 mgまで増量可能),最大6 日間を目安として承認された。さらにMECに対してNK1受容体拮抗薬を使用しない場合,パロノセトロンを併用するという条件下でday 2〜3 のステロイドの省略が可能であるとされた。
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癌と化学療法 46巻11号, 1686-1690 (2019);
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化学療法誘発性悪心・嘔吐(chemotherapy induced nausea and vomiting:CINV)は,近年様々な研究の成果によって成績が向上している。しかし臨床現場では期待する効果が得られない場合や制吐療法のメリットを上回る有害事象が生じる場合があり,患者個々の状況に合わせた制吐療法の選択が求められるようになっている。本稿では高度催吐性抗がん薬の制吐療法における最新の知見をNK1受容体拮抗薬,副腎皮質ステロイド,オランザピンと分けて紹介する。特にオランザピンについては,最新の知見の一つとしてJ-FORCE試験を紹介する。この研究は海外で用いられるオランザピン10 mgによる眠気などの副作用を改善するために,5 mgでの有用性を検証したものである。これらの知見を十分に活用し,多くの患者にとって最適な制吐療法が提供できる一助になれば幸いである。
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癌と化学療法 46巻11号, 1691-1694 (2019);
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がん化学療法による悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting: CINV)は,最も症状マネジメントが必要な副作用の一つである。看護師はCINV に精通し,制吐薬の投与管理,アセスメント,患者教育,セルフケアという役割を通じてCINV の発症を最小限化し,がん化学療法チームのめざすCINV によって患者のQOL を低下させないことに貢献している。がん薬物療法の多様化と長期化,診療連携による在宅療養や他病院への患者の移行化などが進行しており,継続性,経済性,地域性などの視点を取り入れたCINV マネジメントが求められている。それに応えるためには,看護師の知識,判断力,実践力をさらに高めて役割を拡大していくことが求められている。
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癌と化学療法 46巻11号, 1695-1699 (2019);
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がん化学療法に伴う悪心・嘔吐(CINV)に対する支持療法および緩和領域の臨床研究に必要な方法論や評価方法などが明確になっていない。また,CINV を良好にコントロールするためには化学療法レジメンの催吐性だけでなく,患者リスク因子に応じて個別化した制吐療法を検討することも重要である。実臨床におけるCINV の評価は,CTCAE を用いた医療従事者による評価が一般的であるが,患者自身による主観的評価(patient-reported outcome: PRO)も重要視されるようになってきている。本稿では,CINV研究の立案や結果を評価して臨床応用する上で留意すべき点について述べた。今後,公表予定の「支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(各論)化学療法誘発性悪心・嘔吐」の内容も踏まえ,治療の指針となっているランダム化比較試験(RCT)だけでなく,リアルワールドデータ(RWD)を活用することで臨床研究デザインが最適化され,エビデンス構築が促進されることが期待される。
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原著
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癌と化学療法 46巻11号, 1715-1719 (2019);
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背景: FoundationOne®CDx はすでにFDAによって承認されているがん遺伝子パネル検査であるが,日本人の患者における臨床的有用性は報告されていない。そこで,FoundationOne®CDx の日本人における臨床的有用性を調べた。方法: 前治療を受けた日本人の進行固形がん患者43 例(46 検体)をFoundationOne®CDx を用いて2018 年9 月〜2019 年1 月の間に検査した。結果:患者43 例の年齢は中央値63(18〜82)歳,男性24 例,女性19 例であった。主要ながん種は,肝胆膵8 例およびその他の消化器系8 例であった。2019 年1 月17 日までにゲノムキャンサーボードが完了した27 例すべてが分析可能であり,検出された遺伝子変異数(VUSを除く)は1例当たり平均4.3(0〜14)個であった。27 例のうち少なくとも一つ以上の遺伝子変異が26 例(96%)に見つかり,26 例すべてに治療薬の候補が存在する変異が見つかった。うち4 例(15%)において遺伝子変異に対応した治療が行われた。治療候補薬の治験が日本で実施されていた症例のうち,実際に治験に参加した症例は1 例のみであった。試験に参加しなかった最も一般的な理由は,病状悪化・PS 低下(33%)であった。結論:FoundationOne®CDx は日本人の様々ながん種において遺伝子変異を検出できることが示された。
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癌と化学療法 46巻11号, 1721-1725 (2019);
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去勢抵抗性前立腺がん(castration-resistant prostate cancer: CRPC)に対するドセタキセル(docetaxel: DTX)療法は,発熱性好中球減少症(febrile neutropenia: FN)の発症率が3〜25%である。DTX療法は顆粒球コロニー刺激因子製剤の予防投与の必要性について検討する必要があるが,現在その報告はない。そこで今回われわれは,CRPC 患者におけるDTX療法のペグフィルグラスチム一次予防投与の有用性について検討したので報告する。対象は当院において2013 年1 月1日〜2017 年10 月31 日の期間にCRPC に対してDTX が投与された患者30 例である。ペグフィルグラスチムが一次予防投与された群(Peg-G群)12 例,予防投与されていない群(control群)は18 例であった。Peg-G 群のFNは1例(8.3%)であり,control群の8 例(44.4%)に比べると有意に少ない結果であった(p=0.049)。相対治療強度に関しては,両群に有意な差はみられなかった。DTX 1 コース当たりの平均医療費については有意な差はみられないが,Peg-G 群で低かった。この結果より,CRPC 患者に対するDTX 療法は高頻度にFN が発生し,またペグフィルグラスチムは医療費を増大させることなくFN 発生率を著しく減少させるため,ペグフィルグラスチムの一次予防投与は有用であることが示唆された。
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癌と化学療法 46巻11号, 1727-1731 (2019);
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がん性痛に対して本邦でも2014 年8 月よりタペンタドールの使用が可能となり,当院で使用した106 例を後方視的に検討した。タペンタドールの有用性として消化器症状の発現頻度が少ないこと,グルクロン酸抱合で代謝・腎排泄され他の薬剤との相互作用を受けにくいことから,抗がん治療中の患者へのオピオイド導入に適していると考えられる。問題点として,剤形が大きく嚥下状態や疾患によっては導入を慎重に判断する必要があると思われた。
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薬事
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癌と化学療法 46巻11号, 1733-1739 (2019);
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gefitinibやerlotinibなどのチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitors: TKIs)はwarfarin(WF)の抗凝固効果を増強させることが報告されている。しかしgefitinib やerlotinib 以外のTKIs がWF の抗凝固効果に及ぼす影響は明らかになっていない。本研究ではWF の抗凝固効果に影響を及ぼすTKIs の抽出を目的とし,7 種のTKIs がWF の抗凝固効果へ及ぼす影響について調査を行った。対象患者は静脈血栓塞栓症の治療に対してWF 投与中に7 種のTKIs(afatinib,alectinib,axitinib,crizotinib,pazopanib,regorafenib,vandetanib)が併用開始となった10 例とし,TKIs 併用前後のPTINRの変動を評価した。TKIsとWF の併用によるPT-INRの上昇は10 例中10 例(100.0%)に認められ,PT-INR上昇率の中央値は1.6 倍であった(p<0.01)。また,PT-INR 上昇の発現時期の中央値は18 日であった。本研究では,WFの添付文書に相互作用に関する記載のない7 種のTKIs においてもWF との併用でPT-INR の上昇を認めた。以上の結果から,TKIsとWFの相互作用はまれではなく,併用時には注意深いPT-INRや出血のモニタリングとWF投与量の調整が必要となる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 46巻11号, 1741-1745 (2019);
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背景: 血管新生阻害薬使用時の副作用として尿蛋白がある。これまで尿蛋白定性の結果を治療継続の判断としていた。近年,尿蛋白/クレアチニン比(urine protein/creatinine ratio: UPCR)の有用性が報告されており,その有用性を調査した。方法: 血管新生阻害薬としてベバシズマブなどを投与した患者24 名(年齢70.83±7.45 歳,大腸がん17 名,肺がん4 名,胃がん2 名,乳がん1 名)の尿検査および採血,PFS を診療録より後方視的に調査し,尿定性とUPCR の結果を比較した。結果: 24 名,165 件の検査値が得られ,尿定性2+が出現した症例では,UPCR が2.0 未満25 件,2.0 以上3.5 未満が4 件であった。尿定性3+が出現した症例では,UPCR が2.0未満3 件,2.0 以上3.5 未満が1 件であった。尿定性結果とUPCR の相関はr=0.746であった。UPCR 測定導入前に,尿定性2+および3+のみの結果により中止していた件数は,それぞれ17 件および3 件であった。これらはUPCR 測定導入により,それぞれ4 件および2 件に減少すると考えられた。結論:血管新生阻害薬使用時の蛋白尿検査を定性からUPCR へ変更することで尿定性が2+以上の場合,不必要な中止を避け,安全な継続使用に有用であると思われた。
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癌と化学療法 46巻11号, 1747-1752 (2019);
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増加する外来化学療法を安全に効果的に実施していくためには,病院と薬局の情報共有,薬薬連携が必要とされている。しかし薬局から病院にフィードバックされる情報の有用性についてはこれまで明らかになっていない。本研究では病院と薬局における情報共有による薬薬連携体制で薬局からフィードバックされる情報の有用性評価を目的として,フィードバックされた情報の解析を行った。フィードバックされた情報の種類は副作用報告・支持療法が最も多く,次いで治療内容の確認・問い合わせ,検査値異常などであった。フィードバックされた情報の31.0%は診療録に記載がない情報であった。また,フィードバックされた結果,38.0%が薬物療法の変更につながった。診療録に記載のない情報については73.7%が薬物療法の変更という結果となった。病院と薬局でがん化学療法についての情報共有を行うことによりフィードバックされる情報は,外来化学療法中の患者の安全性,QOL向上に一定の貢献を期待できると考えられた。
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症例
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癌と化学療法 46巻11号, 1753-1755 (2019);
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症例は79 歳,女性。食道癌,cStage Ⅲに対して術前化学療法,鏡視下手術を施行した。術後6 か月目で単発の縦隔リンパ節再発を認め,放射線治療後にdocetaxel 単剤療法を開始した。12 コースまで継続したが縦隔および肺尖部に新規再発病変が出現,病勢進行によりperformance status(PS)3 となった。S-1 低用量隔日投与を開始したところ,6 か月後には腫瘍縮小を認め栄養状態とともにPS 0 へと著明に改善し,2年9 か月の長期にわたり目立った副作用なく治療を継続し得た。食道癌に対する標準治療では有効とされる薬剤に限りがある上,全身状態が低下した高齢患者には適用が困難な場合もある。全身状態不良の進行再発食道癌の後方ラインにおいて,S-1 低用量隔日投与は抗腫瘍効果を担保しつつ忍容性・継続性を兼ね備えた有望な選択肢となる可能性がある。
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癌と化学療法 46巻11号, 1757-1759 (2019);
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症例は61 歳,女性。胸部下部食道癌(cT3N1M0,cStage ⅢA)と診断され,2018 年初旬に当科へ紹介された。術前補助化学療法の方針となり5-FU+CDDP が開始されたが,1 コース終了後のCT において肝S7/8 に肝転移が出現し,化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)が開始された。4 か月後には食道壁不整は改善したものの,全周性瘢痕狭窄による通過障害が出現した。食道狭窄に対してバルーン拡張術を計3 回施行したものの再狭窄を繰り返したため,食道バイパス術の適応と判断された。食道バイパス術において遺残食道のドレナージを目的とした食道外瘻を回避するため,術前に胃食道接合部の狭窄部位に対して穿孔リスクの少ない10 mm の細径ステントを留置した後,Postlethwait 法によるY 字型胃管形成食道バイパス術を施行した。術後経過は良好であり術後8 日目に退院した。退院後は通過障害なく,確実な食事摂取が可能となった。また,ステント脱落や穿孔などのトラブルもなく,術後5 か月を経過した現在も化学療法を継続している。
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癌と化学療法 46巻11号, 1761-1764 (2019);
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症例は54 歳,女性。胃癌に対して術前化学療法(NAC)S-1+oxaliplatin(L-OHP)(G-SOX)を施行した結果,LOHPによるCharcot-Marie-Tooth病(CMT)1A型の顕在化を経験したので報告する。自験例では,L-OHP 投与直後から両上肢の感覚神経障害が出現し,その後両上下肢の手袋靴下型の感覚神経障害および起き上がり不可能な両下肢の運動神経障害を認めた。身体所見では両下肢逆シャンパンボトル様の軽度萎縮と両足ハイアーチを認め,両下肢深部腱反射が消失していた。さらに家族歴から長女が3 歳時CMT の疑いで,両アキレス腱延長手術を施行されていたことなどから総合的に判断し,CMTの疑いとなり遺伝子検査にてCMT1A型と診断された。L-OHP に限らず末I神経障害を引き起こす抗がん剤を使用する際,抗がん剤投与後に通常に比べて急激な末I神経障害など認めた際は,CMT などの末I神経疾患の潜在を念頭に置く必要がある。
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癌と化学療法 46巻11号, 1765-1769 (2019);
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症例は60 歳台,女性。子宮頸癌術後,経過観察目的のCT 検査にて胃体部の壁肥厚および胆嚢壁の肥厚を指摘され,精査・加療目的に当科紹介となった。上部消化管内視鏡検査で胃体中部小弯に3 型病変(生検:低分化腺癌)を認めた。CT 検査では胃小弯側のリンパ節腫大,胆嚢の壁肥厚と造影効果を認めた。胆嚢病変に関して悪性の可能性は否定できなかったが,PET 検査で胆嚢に明らかなFDG 異常集積はなく,胆嚢以外に転移を疑う所見を認めなかったことから胆嚢腺筋腫症を第一に疑い,幽門側胃切除術,胆嚢摘出術を施行した。病理組織学的に,胃癌は低分化腺癌,深達度SE,ly1c,v1bであった。胆嚢は,粘膜面から漿膜下層に胃病変と同様の低分化腺癌を認め,胃癌の胆嚢転移と診断した。胃癌胆嚢転移はまれであり,本邦では過去16 例が報告されているにすぎない。今回われわれは,胃癌の同時性孤立性胆嚢転移の症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 46巻11号, 1771-1774 (2019);
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症例は65 歳,女性。糖尿病の血糖コントロールが悪化したため,201X 年6 月当院糖尿病内科に紹介となった。初診時の胸部単純X 線撮影にて肺野に異常陰影を指摘,さらにCT 上で右S10 に2 cm大の結節を認めた。progastrin-releasingpeptide(ProGRP)が高値であり,喫煙歴があることから肺癌の疑いにて当科紹介となった。気管支鏡検査にてカルチノイドと診断されたが,無治療にもかかわらず1 か月後のCT で結節は縮小しProGRPも低下した。さらに1 か月後,結節のサイズは著変なかったがProGRPが微増しており,血糖値も改善したため胸腔鏡補助下右肺下葉切除術を施行した。定型的カルチノイドと確定診断された。周囲との境界は明瞭で壊死組織や周囲に炎症像は認められなかった。カルチノイドは低悪性度の腫瘍であり通常自然退縮は期待できないとされているが,今回われわれは自然縮小したカルチノイドの1 例を経験した。
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癌と化学療法 46巻11号, 1775-1778 (2019);
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患者は60 歳台前半,女性。両側乳房腫瘤で前医初診し,針生検にて右乳房びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(diffuselarge B-cell lymphoma: DLBCL),左乳房浸潤性乳管癌(invasive ductal carcinoma: IDC)を認めた。当科紹介となり,PETCTにて,左乳癌はfluorodeoxyglucose(FDG)集積軽度だが,右乳房,左前胸壁,上咽頭,両側扁桃に高集積病変がみられた。右乳房病変30 mmが最大であり,悪性リンパ腫の原発病巣と判断した。左乳房皮膚紅斑,上咽頭からもDLBCL を検出しstage Ⅳと判断した。R-CHOP 3 コース施行後,心不全の疑いでR-CEOPに変更し3 コース追加し,DLBCL はCR の治療効果を得た。左乳癌は縮小傾向を認めた。DLBCL 中枢神経再発予防の髄注4 回およびアロマターゼ阻害薬による乳癌術前内分泌療法の後,左乳房部分切除およびセンチネルリンパ節郭清を施行した。stageⅠA,estrogen receptor(ER)score3b であり,術後乳房照射を行いexemestane(EXE)内服中である。集学的治療にて,初回治療から3.5 年無再発で経過している。
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癌と化学療法 46巻11号, 1779-1781 (2019);
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症例は83 歳,女性。右乳房E 領域に径30 mmほどの腫瘤性病変を認め針生検の結果から線維性腫瘍が疑われた。確定診断の手術は希望されず経過観察の方針となった。初診より7 か月後に皮膚発赤,疼痛と腫瘤の急速増大を自覚し再受診となった。腫瘍は径74 mmと急速に増大しており準緊急で右胸筋温存乳房全切除術を行った。摘出検体の割面は壊死巣と出血巣がまだら状に混在しており,病理結果は線維肉腫成分主体の間質肉腫の診断であった。術後12 か月現在,微小な肺結節を認めるが生存中である。急速増大を示す乳腺間質肉腫の報告例は散見され予後不良の可能性が指摘されているが,腫瘍からの出血が径に影響する可能性があるため,急速な変化が予後に必ずしも関連するとはいい難いのではないかと思いここに報告した。
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癌と化学療法 46巻11号, 1783-1786 (2019);
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症例は67 歳,女性。2003年に左乳癌,StageⅡAの診断でBt+Axを施行され,術後補助療法として経口フッ化ピリミジン3 年間内服治療が施行された。2008年に骨転移が出現し以後は放射線治療,化学療法で治療を開始され,内分泌療法,骨転移治療剤で維持された。2013年に多発肝転移が出現したが化学療法に変更され,コントロールは良好であった。胸腹部内臓転移はなく骨転移に対して内分泌療法で治療されていたが,2016年に骨髄癌症を発症し14 日目に死亡した。
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癌と化学療法 46巻11号, 1787-1790 (2019);
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本邦では大腸癌は近年増加傾向にあるが,その大部分は腺癌である。micropapillary carcinoma(MPC)は,1993 年に乳癌において最初に報告された特徴的な組織学的形態を示す腺癌であるが,まれに大腸にも発生することが報告されている。今回われわれは,S 状結腸に発生したMPCを経験した。症例は73 歳,男性。咳嗽を主訴に近医を受診され右肺腫瘍を指摘された。気管支鏡検査にて肺扁平上皮癌と診断され,PET-CT 検査ではS 状結腸にもFDG の異常集積が認められた。大腸内視鏡検査で狭窄を伴うS 状結腸腫瘍と診断され,閉塞予防に高位前方切除術が施行された。病理組織学的検索にて,MPC以外の組織型は認められず,純型MPCと診断された。大腸原発MPCの報告例はまれであり症例の集積が必要である。
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癌と化学療法 46巻11号, 1791-1793 (2019);
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症例は65 歳,女性。直腸癌,肝右葉の同時性肝転移が門脈侵潤し,腫瘍栓が門脈左右分岐部まで(Vp3)連続進展していた。腫瘍栓は急速に伸長し,受診から4 日後のCT では先進部が本幹に達した(Vp4)。oncologic emergencyの病態と判断してFOLFOXIRI+BV を導入した。12 コース施行後,腫瘍縮小と腫瘍栓の退縮効果は得られたが,肝門部の側副血行路が遺残したためconversion手術は不能と判断した。治療目標を生存期間の延長に変更し,FOLFOXIRI+BV と 5-FU/l-LV+BV による導入・維持・再導入により24 か月の病勢コントロール,36か月の生存期間延長が得られている。
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癌と化学療法 46巻11号, 1795-1797 (2019);
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患者は50 歳台後半,男性。腰痛,血小板減少で初診し,フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病[Ph+acute lymphoblastic leukemia(Ph+ALL)]と診断した。JALSG Ph+ALL 208 プロトコールにて寛解導入療法を開始したが,day 2 に右後頭葉に脳梗塞を来し,day 9 に左後頭葉に出血性脳梗塞を伴った。多剤併用化学療法の継続は困難と判断し中断した。全身状態は改善し,day 52 にdasatinibを導入した。約5 か月後にPh+ALLは再発したが,陳旧性脳梗塞にて軽度見当識障害および視野欠損残存するもPS 1 で臓器機能は保たれていた。ponatinib の導入は可能と判断し,血管閉塞性有害事象のリスク説明の上15 mg/dayから開始した。30 mg/day に漸増し,脳梗塞再発なく約4 か月内服し分子遺伝学的完全寛解に到達している。脳梗塞既往を有するPh+ALL にも,慎重なリスク管理の下で治療選択肢となる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 46巻11号, 1799-1802 (2019);
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患者は40 歳台後半,男性。末p神経障害,疲労感で前医初診し,全身浮腫,胸腹水,皮膚色素沈着,脾腫,硬化性骨病変があり,POEMS症候群が疑われた。当科紹介となり,骨髄穿刺ではmonoclonal gammopathy with undetermined significance(MGUS)であったが,血清血管内皮増殖因子(VEGF)1,529 pg/mL と高値であり,IgA-l 型 M蛋白を検出した。POEMS症候群と診断され,Ld 4 コースの寛解導入療法後,大量melphalan(L-PAM)療法を施行した。軽度のしびれは残存するも胸腹水は消失し,VEGF 68 pg/mLと減少した。多くの患者において末p神経障害を有することから,thalidomide(THAL)やbortezomib(BOR)に比してlenalidomide(LEN)を含むレジメンが適している可能性が考えられた。