癌と化学療法
Volume 46, Issue 13, 2019
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特集
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- 【第41回 日本癌局所療法研究会】
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閉塞性大腸癌に対する術前経肛門イレウス管と大腸ステントの短期成績の比較検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description対象と方法: 2014 年 1 月〜2018 年 12 月に当院で術前に経肛門イレウス管(以下,I 群)または SEMS(以下,S 群)を 留置して原発巣切除を施行した閉塞性大腸癌 48 例を対象とし,2 群の短期成績について比較検討した。結果: I 群 14 例,S 群 34 例の背景因子や手術因子において 2 群で有意差を認めなかった。両群とも技術的成功(処置時に適切な位置に留置できた) は 100%であり,臨床的成功(処置の結果,適切に減圧が行えた)は I 群で 85.7%(12 /14 例),S 群では 91.2%(31/34 例) であった。S 群では大腸閉塞スコアである CROSS の有意な改善を認め,人工肛門造設を要する割合が低く,術後合併症も少 なく,術後経口摂取開始までの期間や術後在院期間も有意に短かった。結語: S 群は I 群と比較して短期成績において多くの 点で有用性を示した。 -
胃癌におけるマイクロサテライト不安定性(MSI)の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: 抗 PD-1 抗体ペムブロリズマブが高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌へ適応 が追加された。しかし胃癌に対する MSI の臨床での情報はまだ少ない。対象と方法: 2019 年 1 月に当科で切除不能進行・再 発胃癌で化学療法を施行している患者 37 例を対象として MSI 検査を施行し検討した。結果: 37 例中 3 例(8.1%)に MSIHigh を認めた。MSI-High 患者は高齢で,女性や未分化型,遠位側,リンパ管侵襲高度にやや多い傾向にあったが,いずれ も有意差は認めなかった。37 例中 11 例にニボルマブ投与中で,ニボルマブの部分奏効(PR)を 4 例に認め,そのうち 3 例 (75%)が MSI-High 患者であった。結語: MSI-High であれば抗 PD-1 抗体が奏効する可能性が高く,胃癌でも抗 PD-1 抗体 を二次治療から積極的に使用することが有効であることが示唆された。 -
Effects of Cytoreductive Surgery Combined with Perioperative Chemotherapy on Long-Term Survivals of Colorectal Cancer Patients with Peritoneal Metastasis, with Special Reference to the Involved Peritoneal Sectors and Organs
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: Peritoneal Surface Oncology Group International(PSOGI)は大腸癌腹膜播種の治癒をめざす包括的治療を 提唱している。この論文では腹膜転移部位別の切除の効果を検討した。対象と方法: 365 例の大腸癌腹膜播種例を開腹し,278 例で播種の完全切除が行われた。結果: 術後合併症は Grade 3,Grade 4,Grade 5 が 20(7.2%),26(9.3%),6(2.2%)例 にみられた。5,10 年生存率と MST は 24.5%,11.6%,42 か月であった。小腸の腹膜播種係数(SB-PCI)が 3 以上の例は 全例再発死亡したが,SB-PCI 0,1,2 の例では 10 年生存率は 26.1%,19.5%,6.2%であった。壁側腹膜転移数が 9 以下で は 10 年生存率は 6.9〜29.8%であった。壁側腹膜転移例の MST は 26.4〜49.2 か月であった。臓器では直腸・胃・肝被膜・ 精嚢・尿管・子宮・卵巣転移例の 10 年生存率は 2.3〜16.9%であった。結語: 今回の検討では PCI ≦26,SB-PCI ≦2,転移 腹膜領域 C9 の例は積極的に播種を切除し,完全切除することで長期生存が期待できる。 -
放射線治療計画装置およびマルチリーフコリメーターを用いた新たなマーキング法による乳房部分切除術
46巻13号(2019);View Description Hide Description近年,乳房部分切除術においては根治性と整容性の両立が求められる。切除範囲の決定は通常触診や US を用いて行 われるが,非限局性病変では困難な場合もある。われわれは,放射線治療のパッケージを乳癌手術に応用して切除範囲を決 定し,マーキングする方法を行っている。放射線治療計画装置を用いて腫瘍の輪郭,進展範囲および切除範囲を決定してマ ルチリーフコリメーターを用いて乳房皮膚上に直接投影する。あらかじめ切除体積および切除率の計算が容易に行えるた め,適応症例の選択も含め理想的な切除計画を立てることができる。2014 年 6 月〜2017 年 5 月までに 27 例に対して本手法 を施行した。観察期間の中央値は 47.3 か月で 4 例に切除断端陽性を認めたが,乳房内再発は認めていない。われわれの手法 は非限局型乳癌に対して安全で有用と考えられた。 -
S-1+Oxaliplatin 療法が奏効し Conversion Therapy が可能となった肝転移を伴う進行胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 81 歳,男性。上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部に 2 型腫瘍を認め,生検にて中分化腺癌と診断,HER2 score は 0 であった。腹部 CT にて肝 S6 に直径 17 mm,肝 S8 に直径 26 mm の低吸収域を認めた。胃癌同時性肝転移の診断にて S-1+oxaliplatin(SOX)療法を 9 コース施行した。化学療法施行により原発巣,肝転移巣ともに著明な縮小を認めたため, 開腹幽門側胃切除(D2 郭清),肝部分切除術(S6,S8)を施行した。病理組織学的検査では原発巣,所属リンパ節,肝転移 巣ともに腫瘍細胞は認めず,組織学的効果 Grade 3 と診断した。術後補助化学療法として S-1 単剤の投与を開始した。術後 11 か月経過したが,無再発生存中である。 -
FOLFIRINOX 療法と S-1 併用陽子線治療後に Conversion 切除を施行した局所進行切除不能膵癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 68 歳,女性。腹部造影 CT で膵体部に約 40 mm の腫瘍を認め,腹腔動脈,上腸間膜動脈に半周以上接し,また 腹部大動脈,左腎静脈にも接していた。超音波内視鏡下穿刺吸引法で腺癌と診断された。局所進行切除不能膵癌と診断し,FOLFIRINOX 療法を 2 コース施行後,患者の希望で S-1 併用(100 mg /day: 4 週投与 2 週休薬)陽子線治療(50 GyE/25 Fr) を施行した。同治療終了後,腫瘍は 30 mm に縮小し,引き続き FOLFIRINOX 療法を 5 コース施行したところ,腫瘍は 20 mm に縮小した(RECIST: PR)。審査腹腔鏡で CY0,M0 を確認後,腹腔動脈合併膵体尾部切除術,左腎静脈合併切除術を施 行した。膵癌取扱い規約第 7 版に基づき ypT3,ypN0,ycM0,ypStage ⅡA,R0 切除,組織学的治療効果は Grade 3 と診断 された。術後 Grade A の胃内容排出遅延を合併したが,第 35 病日に退院した。局所進行切除不能膵癌に対して陽子線治療後 に conversion 切除を施行した症例はまれであり報告する。
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Ramucirumab+Paclitaxel 併用療法により cCR が得られた術後再発胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 61 歳,男性。胃癌に対し開腹胃全摘,D2 郭清,Roux-en-Y 再建を施行した。病理結果は pT2N3M0,fStage ⅢA にて,術後 S-1 を 1 年間投与した。術後1年9か月に心窩部痛を認め,PET-CT にて腹腔動脈周囲に異常集積を伴う腫 瘤を認めたためリンパ節再発と診断した。S-1+CDDP 併用療法を開始したが,好中球減少のため二次治療として ramucirumab+paclitaxel 併用療法に変更となった。同レジメンを 20 コース行ったところで PET-CT の集積を伴う腫瘤が認められ なくなったため,clinical complete response(cCR)と判断し化学療法を中止した。現在,化学療法中止後 15 か月経過してい るが,再発は認めていない。胃癌術後再発において,早期に発見し多剤を導入することで二次治療以降にも cCR が得られ, 長期予後が期待できる可能性が示唆された。 -
膵癌術後肺転移に対し肺切除を施行し長期生存中の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 66 歳,男性。健診で CEA の高値を指摘され,精査で膵頭部腫瘤を認めた。膵頭十二指腸切除術を施行し,病 理組織学的検査所見は乳頭腺癌および神経内分泌癌の合併で,pT2N1bM0,pStage ⅡB であった。術後補助化学療法に /gemcitabine(1,000 mg /m2)を施行したが,2 コース施行したところで入院加療を要したため化学療法は中止した。術後 18 か月目に右肺 S3 の腫瘍が増大傾向であったため気管支鏡検査を施行し,転移性肺癌の診断で右肺上葉部分切除術を施行した。術後に S-1(80 mg /day)を施行していたが,肺切除術後 39 か月目,CEA 8.5 ng/mL と上昇を認めた。明らかな再発所見は認めなかったが,gemcitabine(800 mg /m2)+nab-paclitaxel(100 mg/m2)に化学療法を変更した。CEA が正常化した ため化学療法は中止し経過観察中であるが,肺切除術後 64 か月無再発生存中である。膵癌術後肺転移に対し肺切除を施行 し,長期生存中の 1 例を経験したので報告する。
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局所進行膵体尾部癌,十二指腸狭窄に対し腹腔鏡下胃空腸バイパス術が有効であった 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 85 歳,男性。局所進行膵体尾部癌の診断で gemcitabine による全身化学療法を2年9か月間行っていたが,食 思不振,腹部膨満感,嘔気を自覚し当科を受診した。腹部造影 CT 検査で,十二指腸水平脚に膵体尾部癌直接浸潤に伴う高度 狭窄所見を認めた。上部消化管内視鏡検査で十二指腸狭窄部位を精査したところ,壁外性高度狭窄を認めるのみで,十二指 腸粘膜内への膵癌露出は認めなかった。粘膜面が比較的スムーズなため,消化管メタリックステントを留置しても逸脱する 恐れがあると判断し,腹腔鏡下胃空腸バイパス術を施行した。5 ポートセッティングで手術を開始した。ENDO-GIA®を用い て胃体部大弯にスリットを入れた後に胃体部大弯・挙上空腸を用いた Roux-en-Y 吻合によるバイパス術を行った。術後経 過は良好で,術後 3 日目から経口摂取を再開した。その後も経過良好で退院となり,現在 gemcitabine を用いた全身化学療 法を再開している。本症例のように消化管粘膜内に癌が露出しない壁外性消化管狭窄は,消化管メタリックステントの固定 性が悪く逸脱する可能性があるとの報告が散見されるため,本症例は胃空腸バイパス術を選択した。また,術後回復が早い 低侵襲治療である腹腔鏡下手術を行うことにより,以前より行っていた全身化学療法へ速やかに移行することが可能であっ た。壁外性消化管狭窄に対する消化管バイパス術の有用性について若干の文献的考察を加えて報告した。 -
巨大肝転移を有した胃内分泌癌の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,男性。肝腫瘤を指摘された。胃角部に 3 型の腫瘍を認め,生検で胃癌と診断された。腹部 CT では肝左 葉に径 10 cm 大の腫瘍を認め,肝内胆管癌もしくは転移性肝腫瘍と診断された。尾状葉合併肝左葉切除,幽門側胃切除,D2 リンパ節郭清を行った。病理組織学的検査では,胃腫瘍は synaptophysin および CD56 陽性の腫瘍細胞が充実性またはロゼッ ト構造を呈し,endocrine carcinoma(EC)と診断された。管状腺癌の成分も有した。肝腫瘍は左門脈腫瘍塞栓を伴う EC で あった。以上より,胃内分泌癌[pT3(SS),pN0,P0,CY0,M1(HEP),Stage Ⅳ,R0]であった。補助化学療法として cisplatin(CDDP)+irinotecan(CPT-11)を隔週で 6 コース施行し,現在術後 21 か月無再発生存中である。胃 EC は胃悪性 腫瘍全体の約 0.6%とまれな胃癌だが悪性度が高い。肝転移は完全切除のみならず 90%以上の減量切除が予後と QOL を改善する可能性がある。化学療法は小細胞肺癌に準じて CDDP を含む化学療法が勧められる。 -
空腸 GIST 術後再発術後 10 年目の再々発病変に対し切術を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 75 歳,男性。63 歳時に空腸消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)に対し切除術を施行した。 2 年目に肝転移,腹腔内再発を認め,肝部分切除,腹腔内腫瘍切除術を施行した。再手術後はイマチニブ内服にて経過観察を 行っていたが,再手術後 10 年目に腹腔内再発と肝転移を疑う病変を認め,再々切除術を施行した。腹腔内腫瘍は免疫組織染 色で c-kit 陽性で,再発 GIST の診断となった。肝腫瘍は angiomyolipoma の診断であった。GIST の再発に対する手術は, GIST 診療ガイドライン上は局所再発のみと一部の切除可能肝転移に適応があるとされている。一方で再発転移 GIST はイ マチニブ単独治療で完治は望めず,再発病変に対して切除を行うことにより長期予後を得られた症例の報告を認める。GIST 再発に対しては再切除術の適応を考慮しつつ化学療法を含めた集学的治療を検討することが,長期予後を得るために必要と考える。 -
大網原発骨外性骨肉腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 51 歳,女性。腹痛を主訴に当院を受診した。血液検査では ALP 7,001 IU/L と高値であり,腹部 CT 検査では 長径 20 cm の石灰化成分を有し,周囲組織への浸潤を疑う腫瘤を認めた。以上より,腹腔内腫瘍の診断で手術を行った。腫 瘍は S 状結腸・横行結腸および子宮に広範囲浸潤しており,腹腔内に腫瘤を多数認めていたため根治的切除は困難と判断し, 可及的な腫瘍切除のみ行った。病理組織学的検査では,骨形成を伴った紡錘形の腫瘍細胞が密に増殖していた。免疫染色で は,上皮系由来の腫瘍マーカーは陰性であった。腫瘍の主体が腸管壁外に存在しており,大網原発骨外性骨肉腫の診断とし た。術後は doxorubicin,cisplatin による全身化学療法を行った。効果に乏しく副作用もみられたため中止とし経過観察して いたが,術後 4 か月で死亡した。骨外性骨肉腫で腹腔内原発の報告は非常にまれであり,文献的考察を加え報告する。 -
膵頭十二指腸切除後の再発に対して残膵全摘・放射線治療を施行した後腹膜脱分化型脂肪肉腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 75 歳,男性。発熱を主訴に腹部 CT で十二指腸の背側に 10 cm 大の腫瘤を指摘された。生検にて脂肪肉腫の診 断であり,膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的検査では脱分化型脂肪肉腫の診断であった。リンパ節転移は認め ず,剥離断端は陰性であり,術後は経過観察とした。術後 2 年目に残膵周囲に再発を認めたが,遠隔転移を認めず再切除可 能と判断して残膵全摘術,胃部分切除術を施行した。剥離断端が一部陽性であったため術後に再発部位に放射線照射(59.4 /Gy /33 分割照射)を施行した。現在,再発手術から 1 年 6 か月再発なく経過している。今回われわれは,後腹膜脱分化型脂 肪肉腫に対して積極的に局所切除を行い,術後放射線治療を施行して病勢をコントロールしている症例を経験したので報告 する。 -
当院での進行再発直腸癌手術症例に対する陰圧閉鎖療法
46巻13号(2019);View Description Hide Description進行再発直腸癌に対する骨盤内臓全摘術(TPE)などの拡大手術施行症例では,術後にしばしば会陰創離開や骨盤内 膿瘍を来し,治療・管理に難渋する。これらの重篤な術後感染症発生要因として,術前放射線化学療法による組織血流低下 や術中操作の影響による組織障害,骨盤内死腔などがあげられる。局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は多くの創傷管理に利用さ れ,その有用性が報告されている。創部に陰圧をかけることで創傷治癒を促進させることに加えて,感染性老廃物の除去, 創面の保護,過剰な滲出液のドレナージ,浮腫の改善が期待できると考えられている。会陰創離開や骨盤内膿瘍に対して明 確な治療指針はなく,なかでも NPWT の使用報告は少ない。われわれは,術後会陰創離開と両側鼠径リンパ節郭清後の難治 性リンパ漏に対して NPWT を行い,有効であった症例を経験した。進行再発直腸癌術後の会陰創離開や骨盤内膿瘍におい て NPWT は有効な治療の一つと考えられる。 -
幽門側胃切除術後の残胃にできた胃 GIST に対し Inverted LECS が有用であった 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery: LECS)は消化管壁の過剰な切除を避け, その機能を保持するための術式である。今回われわれは,幽門側胃切除術後の残胃に発生した胃消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)に対し inverted LECS が有用であった 1 例を経験したので報告する。症例は 75 歳,男性。胃 潰瘍で 28 年前に幽門側胃切除術,Billroth Ⅰ法再建を受けた。3 年前から指摘されていた胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor: SMT)が増大傾向にあるため受診した。上部消化管内視鏡検査では残胃噴門直下の後壁に 30 mm 大の SMT を認めた。超音 波内視鏡(endoscopic ultrasound: EUS)では低エコー腫瘤として描出され,穿刺吸引細胞診で GIST と診断した。腹部造影 CT 検査では胃噴門直下後壁に 30 mm 大の造影効果を伴う腫瘤を認めた。inverted LECS を行った。術後経過は良好で,術 後 9 日目に退院した。残胃後壁の GIST に対しても,inverted LECS で内視鏡下と腹腔鏡下からアプローチすることにより, 過不足ない切除が可能であった。 -
進行下部直腸癌に対する術前化学放射線療法の治療成績―側方郭清省略の可能性
46巻13号(2019);View Description Hide Description背景: 当科では,T4 症例や膿瘍形成などの局所進行例で,側方リンパ節転移陰性例に対して選択的に術前化学放射線 療法+直腸間膜切除(TME)(側方郭清を省略)を施行している。今回その治療成績を報告し,治療法の妥当性について検討 した。対象と方法: 2010〜2016 年の間に術前化学放射線療法+TME を施行した 32 例を対象とした。臨床病理学的因子,再 発形式,無病生存率,全生存率などを検討した。結果: Grade 3 以上の有害事象は認めず,全例でプロトコールどおりの治療 が完遂できた。原発巣の治療効果(Grade 0 /1a/1b/2/3)は,0/5/8/16/3 であった。再発は 14 例に認め,肝 3 例,肺 7 例, 骨盤内 4 例,リンパ節 1 例であった。骨盤内再発 4 例のうち側方リンパ節領域の再発は認めなかった。累積 5 年無病生存率, 5 年全生存率は,各々 48.1%,74.2%であった。結語: 術前に側方リンパ節転移陰性と診断された局所進行下部直腸癌に対し, 術前化学放射線療法を行う条件では側方郭清を省略可能である。 -
サーベイランスの重要性を再認識させられた潰瘍性大腸炎合併大腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 77 歳,女性。血便を主訴に当院を受診した。既往歴として 2 年前に大腸内視鏡検査で全大腸炎型の潰瘍性大腸 炎(UC)が疑われたが,組織学的には確定診断に至らなかった。受診時外来での導尿では糞尿を認め,諸検査から Rs,cT4b (膀胱),cN0,cM0 の腺癌と診断し,膀胱部分切除を伴うハルトマン手術を施行した。病理組織学的所見は low grade と high grade の dysplasia,carcinoma が混在する潰瘍性大腸炎合併大腸癌(CAC)の診断であった。術後口側大腸検索にて, 上行結腸に腺癌と診断された扁平隆起性病変を認めたため全身状態の改善を待って大腸全摘術,回腸人工肛門造設術を追加 施行した。過去に臨床的に UC が疑われたが,生検の組織学的診断の困難さと適切なサーベイランスが行われなかったこと に起因した進行性の CAC を経験した。全大腸炎型の UC では内視鏡医や病理医との密な連携の下に,適切なサーベイラン スが重要である。 -
開胸下経横隔膜穿刺にてラジオ波焼灼療法を行った肝細胞癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 73 歳,男性。1999 年 9 月,C型肝炎に対するインターフェロン治療後のフォローアップ中に,肝後区域(S6) に腫瘍を認めた。S6 亜区域切除を施行し,術後病理組織学的検査で肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC),moderately differentiated carcinoma,pT2N0M0,pStage Ⅱ(UICC TNM 第 7 版)と診断された。その後,二度の再発を認め,肝動脈 化学塞栓療法(TACE),経皮的エタノール注入療法(PEI),ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所療法を行った。2009 年 4 月,肝後区域(S7)に三度目の再発を認め,RFA を試みたが適切な穿刺ルートが得られなかったため,開胸下経横隔膜穿刺で RFA を行った。術後 3 年で肝外側区域(S2 /3)に再発を認めたが,初発から約 16 年の長期生存が得られた。経皮的な RFA が施行できない症例に対し,開胸下経横隔膜穿刺での RFA が奏効した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え 報告する。
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穿孔を伴う切除不能胃癌に対して分流手術を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例: 74 歳,男性。主訴: 空腹時腹痛。2018 年 6 月から空腹時腹痛を自覚し,また近医で右水腎症を指摘され,精査目 的にて当院に紹介となった。上部消化管内視鏡検査にて胃体中部小弯に type 2 の腫瘤を認め,生検で胃癌と診断された。腹 部 CT で腹部大動脈周囲リンパ節腫大および右尿管の閉塞を認めたため,右尿管ステントを留置後,PET-CT 検査を施行し た。腹部大動脈周囲のリンパ節には陽性所見は認めなかったが,下部小腸に転移を示唆する所見を認めた。9 月に入り腹痛が 増強し,食欲低下が著しくなったため入院した。9 月中旬腫瘍減量目的にて開腹手術を施行した。術中所見では胃体中部小弯 側および後壁に穿孔を認めた。しかし,後腹膜浸潤が著しく切除不能状態であるため,食道・胃は分断し,減圧ドレナージ を行うこととした。胃内に腸瘻チューブを留置し,食道空腸吻合を施行した。術後 4 日目より飲水を再開,自宅への退院を 考慮し中心静脈ポート留置術を追加した。短期外泊が可能であったが,その後状態が悪化し術後約 1 か月にて死亡した。 -
完全減量手術+腹腔内化学療法が奏効した虫垂原発腹膜偽粘液腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description完全減量手術+術後早期腹腔内化学療法が奏効した虫垂原発腹膜偽粘液腫の 1 例を経験したので報告する。症例は 26 歳,男性。CT 検査で多量の腹水,虫垂腫大を認めた。開腹すると多量の腹水を認め,虫垂は 5 cm 大の嚢胞性腫瘤であった。 壁側腹膜全域,大網,胃,脾臓,胆嚢,全結腸が粘液結節で覆われており,結腸全摘術,胃全摘術,脾臓摘出術,胆嚢摘出 術,大網全摘術,壁側腹膜広範切除術,回腸人工肛門造設術,腹腔内洗浄を施行した。組織学的には low-grade appendiceal mucinous neoplasm(LAMN)と診断された。術後腹腔内 cisplatin+mitomycin C 療法を施行した。術後 3 か月で肝十二指腸 間膜背側に残存腫瘍を認め,残存腫瘍摘出術,尾状葉切除術,腹腔内洗浄を施行した。術後同様の腹腔内化学療法を施行し た。術後 8 か月再発の徴候を認めていない。本症例では 2 回の手術によって完全減量手術を行い,術後早期腹腔内化学療法 を追加することで短期的な QOL の改善を認め,治療の選択肢になり得ると考えられた。 -
集学的治療で寛解し得た小腸原発悪性リンパ腫穿孔の1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 61 歳,男性。突然の激しい腹痛を認め当院救急外来を受診した。来院時,腹膜刺激症状を認め,腹部造影 CT 検査で不整な小腸壁肥厚と free air を認めた。小腸穿孔の診断で緊急手術を施行した。術中所見では回盲部より約 15 cm の 回腸に腫瘤を触知し,同部に約 5 mm の穿孔を認め穿孔部小腸を切除した。切除した小腸に 70×50 mm 大の 2 型腫瘍を認 め,免疫化学染色の結果,びまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫と診断した。術後 R-CHOP 療法を 6 コース施行し,再発なく 経過した。小腸原発悪性リンパ腫は穿孔を来す頻度が高く,また穿孔例の予後は不良である。今回われわれは,小腸穿孔を 契機に小腸原発悪性リンパ腫と診断し,集学的治療で寛解し得た 1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。 -
局所進行胆嚢癌に対する術前化学陽子線治療の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,男性。発熱と食欲不振のため当院を受診した。右季肋部に超手拳大の腫瘤を触知した。腹部 CT にて胆 嚢と連続する長径 10 cm の腫瘍を認め,肝,十二指腸,結腸および腹壁に浸潤を認めた。血液検査では白血球数,CRP が高 値で低栄養状態であった。FDG-PET 検査では腫瘤に一致した高集積と骨髄にびまん性の低集積を認めた。十二指腸狭窄に対 し腹腔鏡下胃腸吻合術を行い同時に腫瘍生検も行ったところ,組織学的に G-CSF 産生胆嚢癌と診断された。急速な腫瘍の 増大と高炎症状態が続くため,術前治療として S-1 併用の化学陽子線治療を行ったところ,腫瘍の著明な縮小とともに炎症 反応や栄養状態は著明に改善した。右半結腸切除,膵頭十二指腸切除,肝部分切除術にて R0 切除を行った。術後 1 年経過し た現在無再発生存中である。検索したかぎりにおいては胆道癌に対する術前化学陽子線治療の報告は本報告が初めてである。 -
S 状結腸癌術後多発リンパ節転移に対し重粒子線治療を含む集学的治療を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 30 歳台,女性。2015 年 9 月に S状結腸癌にてハルトマン手術を施行された。Stage Ⅳ,pT4b,N1b,M1b(肝, 肺)であった。術後 FOLFOX+cetuximab(Cmab)6 コース,FOLFOX+bevacizumab(Bmab)4 コースの後,2016 年 3 月に肝転移に対してラジオ波焼灼術(RFA)+肝部分切除を施行された。術後 FOLFOX+Bmab を継続したが,肝肺転移の 増大,大動脈周囲リンパ節,左鎖骨上窩リンパ節転移の出現を認めたため,progressive disease(PD)の判定にて 12 月より FOLFIRI+ramucirumab(RAM)を開始した。約 2 年間継続し,2018 年 11 月の画像診断で肝肺転移は同定されず,大動脈 周囲リンパ節,左鎖骨上窩リンパ節の増大を認めたため,局所制御のため左鎖骨上窩リンパ節の郭清を行った。腎静脈レベ ルから腸骨動静脈分岐よりやや足側まで数珠状に連なる大動脈周囲リンパ節に対しては郭清困難と判断し,重粒子線治療を 行う方針とした。集学的治療により長期生存を得ている症例を経験したので,重粒子線治療を中心に報告する。 -
体幹部定位放射線治療により 5 年にわたる長期局所制御が得られた大腸癌肝転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 84 歳,女性。S 状結腸癌術後1年6か月に肝 S8 に大きさ 9 mm の孤立性肝転移を認めた。転移性肝癌に対し て手術治療,化学療法治療を希望しなかったため,局所制御目的に体幹部定位放射線治療(SBRT)を施行した。新規病変の 出現はなく,軽度の有害事象のみで,5 年にわたる長期の局所制御が得られた。SBRT は治療期間が極めて短く低侵襲な治療 法であり,手術が難しい患者への代替療法となる可能性が考えられる。 -
リードレスペースメーカ留置にて局所照射を施行した再発乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 68 歳,女性。左乳房の腫瘤を自覚し,当院を受診した。精査にて左乳癌,cT2N2M0,stage ⅢA と診断し,術 前化学療法後(FEC100 followed by wPTX)に手術を施行した(単純乳房切除術および腋窩リンパ節郭清)。乳房全切除後放 射線療法(PMRT)の適応であったが,左前胸部に皮下埋め込み型ペースメーカが留置されていたため術後照射は施行せず, 内分泌療法による術後補助療法を開始した。開始から 3 年,左腋窩リンパ節腫大を認め針生検にて再発が確認された。局所 切除を行ったところ,微小病変の残存が疑われたため術後照射を要すると考えられた。照射計画を行ったところ,前胸部留 置のペースメーカが照射範囲となる可能性が否定できなかった。そのためリードレスペースメーカへの入れ替えを行い,合併症なく局所照射(50 Gy /20 Fr)を施行し得た。その後,フルベストラントの投与を行い,術後 6 か月であるが再発は認め られていない。
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集学的治療により長期生存が得られている遠位胆管癌術後,肝転移再発の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 73 歳,男性。嘔気・嘔吐を主訴に当院を受診した。精査にて遠位胆管癌と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切 除+D2 リンパ節郭清+Child 変法再建を施行,最終診断は遠位胆管癌(Bd),pT2(SS)N0M0,fStage ⅠB であった。S-1 /による術後補助化学療法中より腫瘍マーカーの漸増を認めた。術後 7 か月で施行した 18F-FDG-PET/CT にて肝 S8 に FDG の異常集積を認めた。腹部造影 CT においても同部に 27 mm の低吸収域を認め,肝転移再発と診断した。術後 9 か月より /gemcitabine(GEM) /cisplatin(CDDP)併用療法を計 15 コース施行し,腫瘍は 6 mm まで縮小した。新規病変の出現がない ため,術後 1 年 8か月に残存病変に対して体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy: SBRT)を施行した。 術後 5 年 8 か月,SBRT 後 4 年経過し,無再発生存中である。胆道癌の術後再発に対しては全身化学療法が標準治療と考え られるが,症例に応じて局所療法を併用することで長期生存が期待できる可能性が示唆された。 -
大細胞型胃内分泌細胞癌と盲腸癌の同時性重複癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 74 歳,男性。健診で Hb 5.7 g/dL と貧血を認め,精査を目的に当院へ紹介となった。上部消化管内視鏡検査で 胃角部〜幽門前庭部にかけて全周性の 2 型腫瘤を認め,生検で胃内分泌細胞癌であった。同時に下部消化管内視鏡検査で盲 腸に 1 型腫瘍を認めた。幽門側胃切除術(D1+郭清),Roux-en-Y 再建および回盲部切除術(D3 郭清)を施行した。病理診 断の結果,大細胞型胃内分泌腫瘍,pT4a(SE),med,INF a>>b-c,ly1-2,v1(SM,EVG),pN0,pM0,pStage ⅡBお よび盲腸癌,tub1>tub2,pT2(MP),ly1(HE),v1(EVG,SM),pN0,pM0,pStageⅠとなった。術後は S-1 による術 後補助化学療法を行い,術後 1 年 6か月現在,無再発生存中である。 -
4 年 6 か月の無再発生存が得られた高齢者早期胃癌 ESD非治癒切除の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description早期胃癌 endoscopic submucosal dissection(ESD)後の非治癒切除症例に対しガイドライン上追加治療の手術が推奨 されているが,実際のリンパ節転移頻度は 10%程度とされている。このため近年,患者の年齢や全身状態によっては経過観 察も選択肢の一つとされている。今回,切除断端陰性の非治癒切除症例に対し,慎重な経過観察により4年6か月の無再発 生存が得られた高齢者早期胃癌 ESD の 1 例を経験したので報告する。症例は 84 歳,女性。気管支喘息重積発作で入院加療 の既往がある。2014 年 7 月早期胃癌の診断で ESD を施行した。病理組織診断では分化型優位の径 3 cm を超える粘膜内癌, 臨床的に UL(+)が要因の非治癒切除であったが,年齢と全身状態から追加外科切除は施行せず経過観察した。術後の surveillance では再発を認めなかった。2016 年 7 月と2018 年 6 月に異時性多発病変を指摘されたため ESD を施行し,いず れも分化型粘膜内癌で治癒切除の判定であった。2019 年 1 月現在まで無再発生存中である。 -
ノモグラムを用いた大腸癌肝転移に対する局所治療の妥当性の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対する切除術後の無病生存期間を予測するノモグラムを用いて,当院における手術治療症例の妥当性 を検証した。当院で大腸癌肝転移に対する手術が行われた 38 例につき,ノモグラムによる無病生存期間の予測値と実際の無 病生存期間を比較した。おおむね一致する群 16 例,実際の無病生存期間が予測値より長かった予後良好群 13 例,短かった 予後不良群 9 例と分類し,予後良好群と予後不良群の臨床病理学的因子や臨床経過を比較検討した。当院における予後不良 群には,単発の肝転移でありながら肝切除術後に CA19-9 が正常化せずに,術後短期間に再発を来している症例が多かった。 画像で検出されない微小転移が潜在していたものと考えられ,このような症例には慎重な経過観察と化学療法の検討が必要 と考えられた。 -
他臓器癌による大腸閉塞に対し大腸ステントを施行した 13 例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description2012 年 7 月〜2018 年 1 月までに,当科で他臓器癌による大腸狭窄に対して大腸ステント留置術を試行した 13 例 (non-CRC 群)の臨床病理学的背景を検討し,原発性大腸癌患者で姑息的大腸ステント留置術を試行した群(palliativestent 群,n=51)や,bridge to surgery 群(BTS 群,n=49)も含めステント留置術を試行した原発性大腸癌患者(CRC 群, n=100)と手技的成功や臨床的成功に関し比較検討した。non-CRC 群の年齢中央値は 69 歳,男女比は 5:8 で,原発巣は胃 癌 4 例,胆管癌 2 例,膵癌 2 例,肺癌 2 例,子宮癌 2 例,卵巣癌 1 例であった。palliative-stent 群と non-CRC 群を比較する と,手技的成功率が non-CRC 群で有意に低かった。また,BTS 群と non-CRC 群を比較しても同様に手技的成功率において non-CRC 群が有意に低かった。大腸以外の他臓器を原発とする悪性腫瘍における緩和的大腸ステント留置術の成功率は低 いが,低侵襲で早急な症状改善を認める可能性があるため緩和的治療の有効な選択肢である。 -
閉塞性大腸癌に対する大腸ステント留置後手術例の短期および長期成績
46巻13号(2019);View Description Hide Description当院において bridge to surgery(BTS)目的に大腸ステント治療が行われた閉塞性大腸癌 50 例を対象とし,短期およ び長期成績について検討した。症例は男性 30 例,女性 20 例で,平均年齢は 74.0 歳であった。全例で留置および減圧に成功 し,留置より平均 2.4 日後から経口摂取が開始された。留置に伴う重篤な合併症は認めなかった。留置後の大腸内視鏡検査 は併存病変の術前診断と切除範囲の決定に有用であり,全例に待機的および一期的手術を施行し得た。長期予後については, Stage Ⅱ+Ⅲ治癒切除 43 例における 5 年全生存率 73.1%,5 年無再発生存率 55.7%であり,同病期の全大腸癌予後と比較 して遜色ない成績が得られた。以上より,閉塞性大腸癌に対する BTS としての大腸ステントは,短期成績だけでなく長期成 績からみても有用な手段であることが示された。 -
直腸癌 ESD 施行 3 年 6 か月後に血腫を伴った間膜内再発を来し化学療法後に根治切除し得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 63 歳,男性。3 年 6 か月前に Rb 直腸癌に対し endoscopic submucosal dissection(ESD)を施行した。病理組 織学的検査の結果,adenocarcinoma,sm(2,000 mm),ly(+)で追加切除の適応であったが,経過観察となっていた。今 回,肛門痛を主訴に救急外来を受診した。腹部造影 CT 検査で,直腸間膜内左側に約 50 mm 大の腫瘤と同部位に接して約 90 mm 大の間膜内血腫を認めた。審査腹腔鏡を施行したところ,S 状結腸から直腸にかけて間膜内血腫を認めた。術後の下部 消化管内視鏡検査では Ra 直腸に粘膜下腫瘍様の約 50 mm 大の隆起性病変を認め,EUS-FNA の結果,高分化型腺癌の診断であった。直腸癌 ESD 後の間膜内再発に伴った血腫形成と診断し,mFOLFOX6(5-FU: bolus 400 mg /m2,2,400 mg/m2,oxaliplatin 85 mg /m2)+panitumumab(6 mg/kg)療法を計 4 コース施行した。その後の CT 検査で血腫の消失と直腸間膜 内の再発巣の縮小を確認後,D3 リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下低位前方切除術,一時的人工肛門造設術を施行した。
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口腔カンジダ症の慢性炎症が原因と推定された上顎歯肉癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description一般に口腔カンジダ症の治療では抗真菌薬が使用されるが,治療に長時間を要することもあり,除真菌後も上皮異形成が残存することがある。さらに慢性口腔カンジダ症は,時に悪性転化を来すことが報告されており,治癒が遷延している 場合には外科的切除も考慮される。今回,口腔カンジダ症の慢性炎症が原因と推定された上顎歯肉癌の 1 例を経験したので 報告する。症例は 85 歳,男性。左側上顎歯肉部の疼痛を主訴に来院した。生検にてカンジダ感染を伴う扁平上皮癌の診断を 得た。上顎歯肉扁平上皮癌(cT1N0M0,Stage Ⅰ)の診断の下,上顎部分切除術を施行した。術後約 1 年が経過するが,再発や転移を認めず経過良好である。 -
食道メラノーシスの経過観察中に発症した食道原発悪性黒色腫の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 78 歳,女性。健診目的の上部消化管内視鏡検査で胸部中部食道に食道メラノーシスを認め,経過観察されてい た。3 年後に胸部圧迫感を自覚し上部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道メラノーシスの部位に一致して 1 型腫瘍を認めた。生検にて食道原発悪性黒色腫と診断された。cT2N0M0,Stage Ⅱ(食道癌取扱い規約第 11 版)であったため,根治的な食道切除術を施行した。術後 1 年 6 か月の CT検査で肝転移を認め,一次治療として nivolumab による免疫療法を施行 中である。食道メラノーシスに対しては食道原発悪性黒色腫の発症を念頭に置いた注意深い経過観察が必要である。 -
膵神経内分泌腫瘍肝転移に対するラジオ波焼灼療法後に限局性腹膜播種再発を呈した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 77 歳,女性。56 歳時に膵腫瘍に対し尾側膵切除を施行され,病理組織学的検査で膵神経内分泌腫瘍(p-NET) G2 と診断された。膵切除 10 年後に肝 S6 転移に対し肝右葉切除を施行された。初回肝切除 8 年後に肝 S4 転移を認め,ラジ オ波焼灼療法(RFA)を施行されたが,肝内に血腫を形成して中止された。RFA 施行 6 か月後に肝 S4 部分切除を施行され た。RFA 施行 2 年後に右横隔膜下に限局性腹膜播種再発を認め,開胸を伴う右横隔膜合併切除を行い,病変を一括切除した。 播種切除後 2 年が経過し,無再発生存中である。p-NET の限局性腹膜播種再発では他部位に再発巣がなく,根治切除が可能 であれば外科切除が生存期間の延長に寄与する可能性がある。 -
温存乳房内再発に対し乳房切除後対側腋窩リンパ節再発するも完治し得た再発乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 65 歳,女性。左乳癌の診断で左乳房温存手術(Bp+Ax)を施行した。病理組織学的診断は浸潤性乳癌(硬癌), T1cN2M0,stage ⅡB,ER +/PgR+/HER2−。経過観察中に左温存乳房内再発(IBTR)を来し,全身検査で明らかな転移を認めなかったため左乳房切除術を施行した。病理組織学的診断は浸潤性乳癌(充実腺管癌) ,ER−/PgR−/HER2−。定期 検査で右腋窩に多発リンパ節腫大を認め,細胞診検査で class Ⅴ,右腋窩リンパ節転移と診断,右腋窩リンパ節郭清を施行した。病理組織学的には 20 個リンパ節転移を認め,ER −/PgR−/HER2−,乳癌リンパ節転移と診断された。術後補助化学療 法(PTX,TS-1)を行った。IBTR 後 10 年以上経過したが再発なく,完治し得たと考えられる。通常,対側腋窩リンパ節は 領域外リンパ節のため遠隔転移と同様に扱われるが,IBTR 癌はこの限りではないと思われる。IBTR 癌手術の際,対側腋窩リンパ節が新たなセンチネルリンパ節になっている可能性もあり,局所コントロールや正確なリスク評価のため術前に十分な検査が必要であると思われる。 -
膵仮性嚢胞を契機に発見された膵頭部癌への術前補助化学療法が有用であった 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 41 歳,男性。二度の急性膵炎・膵頭部仮性嚢胞の経過観察中,仮性嚢胞が膵腫瘍に置き換わったために EUSFNA を施行,膵頭部癌と診断され外科に紹介された。膵炎に伴う局所の炎症・浮腫が強固と予想され,術前補助化学療法として GEM /nab-PTX 併用療法を 3 コース途中まで実施(閉塞性胆管炎併発・PD で中止),その後 FOLFIRINOX 療法を 11 コース施行し,腫瘍は著明に縮小した。治癒切除可能と判断し,初回化学療法開始後 12 か月目に根治術(亜全胃温存膵頭十 二指腸切除術)を施行した。切除標本は癌細胞残存を認めず,治療効果判定は Grade 4(CR)であった。術後補助化学療法 として S-1 内服を 6 か月間実施,術後 22 か月経過した現在,再発なく経過良好である。膵癌に対する術前補助化学療法は悪性度の高い膵癌に対する腫瘍縮小・再発リスク軽減目的以外に,随伴膵炎の炎症消退を時間経過とともに見極めるためにも有用である。 -
診断に難渋した胆管カルチノイドの1例部分的HER2 陽性胃癌術後再発に Trastuzumab 併用療法が奏効した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 60 歳台,男性。直腸癌に対し 2016 年 2 月に腹腔鏡下前方切除術を施行した。病理結果は pT2(MP)n(−) M0 の fStage Ⅰであった。術後 1 年の造影 CT 検査で膵内の遠位胆管の一部に造影効果を認めた。MRCP を行ったところ同部位に欠損像を認めたため ERC を施行し,再現性のある胆管欠損像を認めた。生検や細胞診を行ったが,悪性と断定できる 所見は認めなかった。IDUS では非上皮性の腫瘍もしくはリンパ節が疑われた。悪性所見がでていないことから繰り返し ERC にて生検を行ったところ,一部異型細胞が検出された。確定診断には至らないが,患者と相談の上,2017 年 6 月に手術 を行うこととなった。手術は総胆管をテーピングしたところ膵背面に腫瘍を触知した。膵背面を割るように胆管腫瘍をすべ て摘出し,迅速病理診断に提出した。腫瘍は核異型に乏しく,良性の可能性が高いが術前の生検での免疫染色で一度 CA199 が陽性であったことから,完全に悪性が否定できないとの診断となった。膵頭十二指腸切除術を家族は希望せず,胆管腫瘍切除術,胆管空腸吻合術にて手術を終えた。腫瘍は chromogranin A( +),CD56(+/−),CA19-9(+,管状構造のみ),CEA(+,管状構造のみ),核内 p53(−),MIB-1 index 2%未満であった。神経内分泌マーカーは HE 染色でカルチノイド 腫瘍と思われる部分と表層の管腔形成部分の全体で陽性となっており,全体としては NET G1のカルチノイド腫瘍であっ た。しかし表層の管腔形成部分は,さらに CA19-9 と CEA が陽性であり,導管上皮の形質を併せもつものと考えられた。側方断端は陰性だが剥離面は不明であった。組織の結果を基に本人・家族と相談したところこのまま経過観察の方針となり, 無再発のまま術後 30 か月現在に至っている。胆管カルチノイドは非常にまれな疾患であるが,術前に造影効果のみで指摘され,このように繰り返す生検でも診断に至らない胆管腫瘍は本疾患を考慮すべきであると考えられた。 -
部分的HER2 陽性胃癌術後再発に Trastuzumab 併用療法が奏効した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 65 歳,男性。胃幽門前庭部前壁の 2 型胃癌に対し,2014 年 12 月幽門側胃切除術,D2 郭清,Roux-en-Y 再建 を施行した。最終病期: L,ant,Type 2,32×22 mm,tub1>tub2>por1,pT2(MP),int>med,INF c>a,Ly1a,V0, pN0,cM0,cH0,cP0,pCY0,pStage ⅠB,pPM0(60 mm),pDM0(75 mm),pR0。HER2 は tub1 成分の 10%以上で陽性。その後,術後 19 か月目に膵頭部リンパ節転移での再発を確認した。リンパ節再発形式で,部分的ではあるが HER2 陽性であり,capecitabine(Cape) /oxaliplatin(L-OHP/OX)(CapeOX)+trastuzumab(Tmab)併用療法を行った。19 コース後の CT でリンパ節転移は測定不能まで縮小した。経過中,末梢神経障害 Grade 3(CTCAE v5.0)で L-OHP を on /off し, 口腔粘膜潰瘍 Grade 2 を認めたが,保存的加療で対応した。現在,部分的 HER2 陽性胃癌再発に対し CapeOX+Tmab 療法 45 コース(約 32 か月)後も cCR を維持している。 -
進行胃癌に対して術前 S-1+Oxaliplatin 療法を施行し pCR が得られた 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 78 歳,男性。狭心症・発作性心房細動にて経過観察中にふらつきを自覚し,Hb 6.7 g/dL と貧血を認めた。上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部大弯に 2 型進行胃癌(por)を認め,腹部単純 CT 検査にて多発リンパ節転移を認めた。進行胃癌,cStage Ⅲ(cT3N1M0)の診断で,術前補助化学療法として S-1 +oxaliplatin(SOX)療法(S-1 80 mg/m2/day 14 /日間,7 日間休薬,oxaliplatin 100 mg /m2 day 1)を 3 コース施行した。血小板減少 Grade 1 を認めたが,その他大きな副作用 なく終了した。上部消化管内視鏡検査にて原発巣の著明な縮小と,腹部単純 CT 検査にて転移リンパ節の有意な縮小を認め た。進行胃癌,ycT1N(+)M0,ycStage ⅡA に対して,腹腔鏡下幽門側胃切除術(D2+No. 14v)を施行した。病理組織学的検査にて原発巣やリンパ節に明らかな腫瘍細胞の残存は認めず,組織学的効果判定は Grade 3,pCR であった。今回われわれは,進行胃癌に対して術前補助化学療法として行った SOX 療法により pCR が得られた 1 例を経験したので報告する。 -
長期生存が得られた大動脈周囲リンパ節,側方リンパ節転移を伴う進行直腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 65 歳,女性。便潜血陽性のため下部消化管内視鏡検査が施行され,直腸 S 状部に 2 cm 大の type 0-Ⅱa 病変(組 織型は tub2,por),上部直腸に 6 cm 大の 5 型病変(組織型は muc,sig,tub2)が指摘された。胸腹骨盤部 CT 検査,PETCT 検査で腸管傍リンパ節転移陽性と診断された。直腸間膜リンパ節,大動脈周囲リンパ節,側方リンパ節領域にも淡い fluorodeoxyglucose 集積を認めた。転移の可能性も否定できなかったが,直腸 S 状部癌 cT1bN0M0,Stage Ⅰ,上部直腸癌 cT3N1M0,Stage Ⅲa(大腸癌取扱い規約第 8 版)と診断した。腎機能障害により化学療法の選択に制限があったため手術先行の方針とし,低位前方切除術を施行した。術中,大動脈周囲リンパ節,左総腸骨動脈リンパ節を迅速診断に提出し,リンパ節転移陽性と診断された。リンパ節以外に遠隔転移を認めなかったことから R0 切除が可能と判断し,転移陽性であった 領域のリンパ節は可及的に切除した。切除標本の組織診断では,直腸 S 状部の病変は深達度 T1b,上部直腸病変は深達度 T3 であった。切除リンパ節 37 個中 21 個で転移陽性であった。RAS 遺伝子検査では野生型であった。補助化学療法として S-1 単剤療法を施行した。術後 5 か月目と 3 年目に縦隔リンパ節転移が疑われたため panitumumab 単剤療法を行ったところ, リンパ節腫大は縮小した。現在,初回手術から 6 年が経過したが直腸癌再発は認めていない。長期生存が得られている大動脈周囲リンパ節,側方リンパ節への転移を伴った進行直腸癌の 1 例を経験したので報告する。 -
多発肝転移を伴う胸部食道癌に集学的治療と栄養療法で長期生存を得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 63 歳,男性。主訴は胸部不快感,精査にて食道に腫瘤性病変を指摘され生検で squamous cell carcinoma(SCC) を検出し,リンパ節転移,多発肝転移あり,MtLt-cT3N2M1(HEP),Stage Ⅳの診断であった。DTX,CDDP,5-FU(DCF) 療法,DTX,S-1(DS)療法後に,根治術(右開胸食道亜全摘,3 領域リンパ節郭清,後縦隔胃管再建,肝部分切除術)を施行した。術後 DS 療法を施行するも肝に再発巣を認め,同療法を 4 コース追加してもそれ以外の病巣を認めないことから肝部分切除術を行った。切除部位以外に病変を認めず,腫瘍遺残はないと判断し,経過観察する方針とした。しかし治療開始後 1 年 10か月に右副腎再発,腹壁転移,肝 S3 播種が出現したため化学療法を再開するも,良好な病勢コントロールを得ら れるレジメンはなかったが,休薬することなく化学療法を継続した。化学療法導入時から栄養療法を導入したことで,集学的治療と化学療法の継続が可能となり,4 年の長期生存を得られた食道癌多発肝転移症例を経験したので報告する。 -
切除不能・進行再発大腸癌に対して Aflibercept Beta を使用した 20 例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description背景: aflibercept beta と FOLFIRI の併用療法は,2017 年に進行再発大腸癌の二次治療として本邦でも承認された。 方法: 2017 年 6 月〜2018 年 4 月の間に aflibercept beta と FOLFIRI の併用療法を受けた進行再発大腸癌患者を当施設で後方視的に有効性と安全性を検討した。結果: 20 例がこの治療を受けていた。性別は男性 11 例,女性 9 例,年齢の中央値は 69.5(53〜81)歳であった。PS 0 が 11 例と PS 1 が 8 例であった。8 例が二次治療として,12 例は三次治療以降として施行 した。治療効果は,全症例における RR 10%,DCR は 60%で,CT 未評価の 2 例を除く 18 例ではそれぞれ 13.3%,80%と なった。治療関連有害事象は,Grade 3 以上が全症例で好中球減少 20%,下痢 5%,高血圧 20%,蛋白尿 5%であった。結語: これまでの試験と同等の有効性と安全性が確認できた。 -
高齢進行胃癌患者に発症した SIADH の1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 82 歳,女性。2007 年 5 月に他院で胃癌にて手術を施行した。病理診断は pT4a,pN2,M1,CY1,pStage Ⅳで あった。術後化学療法を行うも 2014 年 3 月に腹壁に再発し,化学療法に加え切除術を施行した。2017 年 12 月と 2018年7月 中旬に腹膜播種による腸閉塞を来し,保存的加療にて軽快した。2018 年 8 月下旬に食事が摂れず再入院となった。入院時の血清 Na 値は 120 mEq /L と低く Na 補正を行った。その後も低 Na 血症は改善せず,入院 14 日目には 115 mEq/L とさらに低下した。血漿浸透圧は 229 mOsm /kg,尿浸透圧は 323 mOsm/kg,尿 Na 濃度 56 mEq/L であり,診断基準から SIADH と 診断した。水分制限,Na 補正にて低 Na 血症は軽快した。その後,腹膜播種が増悪し 10 月中旬に死亡した。今回,高齢な進 行胃癌患者に発症した SIADH の 1 例を経験したので報告する。 -
幽門側胃切除後の膵体尾部切除術における残胃血流評価として術中 ICG 蛍光造影および 残胃組織酸素飽和度測定を行った 1 例下部直腸癌における側方向への単独リンパ節転移陽性例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 92 歳,男性。胃癌に対する幽門側胃切除術施行 14 年後に膵尾部癌と診断された。残胃は左下横隔動脈からの 噴門枝,短胃動脈,後胃動脈により栄養されていた。膵尾部癌に対して膵体尾部切除術(DP)を計画した。術中,脾動脈遮 断下に indocyanine green(ICG)蛍光造影を施行し,残胃全体が濃染されるのを確認した。また,組織酸素飽和度モニター を用いて残胃の組織酸素飽和度(rSO2)を測定したところ,残胃 rSO2は脾動脈遮断によって低下しなかった。これらの所見 に基づき残胃に明らかな血流異常がないと判断し,残胃を温存しつつ DP を施行した。術後,残胃に関連する合併症は認め られなかった。術後 1 年 10か月経過した現在,再発の兆候を認めず生存中である。 -
下部直腸癌における側方向への単独リンパ節転移陽性例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹膜反転部以下に下縁を有する T3 および T4 直腸癌のうち両側側方郭清を施行し,根治度 A と判断された 302 例を 4 群(間膜−側方−を N 群 133 例,間膜+側方−を M 群 100 例,間膜−側方+を L 群 15 例,間膜+側方+を ML 群 54 例) に分類し,L 群の治療成績と特徴について他群と比較検討した。側方転移率は全体の 22.8%,間膜転移陰性例の 10.1%で あった。L 群の再発率は 40.0%(6 例)で,M 群の 43.0%(43 例)と差はなく,ML 群の再発率 75.9%(41 例)に比べて有意に低率であった(p=0.01)。L 群の初再発臓器は肺 3 例,局所 3 例で,全体の 20.0%で血行性転移再発を認めたが,M 群 の 29.0%(29 例)とは差がなく,ML 群(25 例,46.3%)に比べて低い傾向にあった(p=0.08)。L 群の 5 年生存率(57.1%) は M 群(71.7%)と差を認めなかった。間膜転移陰性例の多変量解析では組織型が側方転移の危険因子であった。CT 検査 による側方転移の陽性的中率は 43.9%で,非分化型癌では跳躍転移の可能性を考慮して確実な側方郭清を行うことが重要と考えられた。 -
巨大副甲状腺腺腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例: 79 歳,男性。経過: 約 1 年前より,食欲不振,全身w怠感を認めていた。近医を受診したところ,高カルシウム 血症を認めた。頸部エコー検査では,甲状腺の右葉上極背側に腫瘤を認めた。MIBI シンチグラフィでも,甲状腺右葉上極背 側に hot spot を認めた。以上より,副甲状腺腫による原発性副甲状腺機能亢進症の診断で手術目的に当科紹介となった。 intact PHT(iPTH)は 919 pg /mL であった。腫瘤摘出術施行し,右上極の副甲状腺は 6.9 g であった。大きさ 4×2.5×1.3 cm であった。iPTH は 25 pg /mL と低下した。血清カルシウム値も 11.2 mg/dL まで低下した。まとめ: 巨大副甲状腺腫の定義は,3.5 g 以上といわれているが,それを上回る大きさであった。さらに局在診断が的確にできたことで縮小手術で副甲状腺腺腫を摘出することができ,高齢者ではあったが手術を施行したことは有効であると思われた。 -
腹腔鏡下胃部分切除を施行した胃原発炎症性筋線維芽細胞腫瘍の1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 52 歳,男性。スクリーニングの上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部に粘膜下腫瘍を指摘され,腹部造影 CT で最 大径 35 mm の充実性腫瘍が疑われた。EUS-FNA で紡錘形細胞を認め,KIT(−),CD34(−),desmin(−),S-100(−) であった。GISTの診断で腹腔鏡下胃部分切除術を施行した。術後の病理組織学的検査で胃原発炎症性筋線維芽細胞腫瘍と診断された。本疾患は局所再発や遠隔転移を伴う良悪性中間型腫瘍と定義されている。十分な切離縁が得られなかった症例や核出した症例では再発が多いことが報告されており,外科的な完全摘出が推奨される。腹腔鏡下手術は,拡大視野を得ら れることや病変の部位によっては術野展開が良好となることから,局所コントロールにおいて有用と考えられた。また,チ ロシンキナーゼ受容体蛋白の一つである ALKが約 60%の症例で陽性となることが報告されている。ALK 陰性例では遠隔 転移例が多いとの報告もあり,悪性腫瘍に準じた定期的な経過観察が必要である。 -
術前化学療法により組織学的完全奏効が得られた進行直腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 62 歳,男性。主訴は血便。下部消化管内視鏡検査で,下部直腸に 5 cm 大の直腸癌が指摘された。組織型は高分化管状腺癌であり,腫瘍下縁は肛門管近傍まで達していた。腹部骨盤部造影 CT 検査で直腸間膜リンパ節転移が指摘され, 進行直腸癌(cT3N1P0M0,Stage Ⅲa,大腸癌取扱い規約第 8 版)と診断された。本人が肛門温存を希望したため,前医で術前化学療法の方針となった。化学療法として capecitabine,oxaliplatin(CapeOX)+bevacizumab(BV)療法が 12 コース施 行された。化学療法後の下部消化管内視鏡検査で腫瘍は著明に縮小し,肉眼的には厚みのある瘢痕のみとなっていた。瘢痕 からの生検では悪性所見を認めなかった。しかし画像検査で直腸壁の肥厚は残存していたため,化学療法の効果判定は partial response(縮小率 40%),ycT3N0M0,ycStage Ⅱと診断した。肛門温存手術が可能と判断して,括約筋間直腸切除術, 一時的回腸人工肛門造設術を施行した。切除標本の組織診断では主病巣に悪性細胞を認めず,リンパ節転移も陰性であった。 原発巣切除後 6 か月目に小腸人工肛門閉鎖術を施行した。術後追加治療を行わずに外来で経過観察中であるが,再発の所見は認めていない。CapeOX+BV 療法によって組織学的完全奏効が得られた進行下部直腸癌の 1 例を経験したので報告する。 -
主膵管進展を伴う膵 Mixed Acinar-Neuroendocrine Carcinomaの1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description膵 mixed acinar-neuroendocrine carcinoma(MANEC)はまれな腫瘍である。主膵管を腫瘍栓状に進展し,術中膵管断端組織診を行ったことで腫瘍の完全切除を可能とした症例を経験した。若干の文献的考察を加え報告する。 -
脳転移にて手術とガンマナイフ治療後,遠隔転移を認めず長期生存した再発乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 44 歳(乳癌診断時),女性。2006 年 2 月右乳癌にて Bt+Ax を施行,浸潤性乳管癌,ER(+),PgR(−),HER2 (−)にて adjuvant chemotherapy(AC) ×4,LPR+TAM を施行した。2008 年 8 月右鎖骨上リンパ節転移と診断し,S-1 を 開始した。CR となったが,5 か月で S-1 の副作用である眼障害が出現し中止,LPR+ANA で CR 継続するも 2013 年 11 月 頭痛と同名半盲が出現した。MRI にて左後頭円蓋部に 42 mm 大の単発性腫瘍性病変を認め,転移性脳腫瘍の疑いとなる。開頭腫瘍摘出術を施行,病理診断は乳癌からの転移,ER(−),PgR(−),HER2(−)であり,術後は VNB を投与した。2014 年 1 月手術腔周囲の硬膜転移,2015 年 1 月,2016 年 9 月,2017 年 2 月に脳転移が再発し,ガンマナイフを施行,2016年6月 に左後頭葉の増大する腫瘤に対して摘出術を施行した。脳転移以外の病変は認めなかったため,2018 年 2 月に VNB は終了 した。その後ガンマナイフによる放射線脳壊死を認め失読症状が出現したが,ベバシズマブにより改善,現在脳転移出現後 5 年 6 か月経過,生存中である。 -
Nab-Paclitaxel+Ramucirumab 療法中に結腸吻合部に穿孔を来した胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 61 歳,男性。胃体部癌,cT4aN2pM1(P1c,CY1),pStage Ⅳに対して化学療法を施行後,幽門側胃切除,D2 郭清,Roux-en-Y 法再建術を施行した。術後1年3か月後に腹膜播種再発による横行結腸狭窄を来し,結腸亜全摘および回腸 S 状結腸吻合術を施行した。術後 3 週間後から paclitaxel(PTX)療法を開始,7 週間後から nab-PTX+ramucirumab (Ram)療法を開始した。13 週間後に突然の強い腹痛を主訴に来院,腹部 CT で free-air を認め消化管穿孔と診断した。手術所見では回腸 S 状結腸吻合部の結腸側に穿孔を認めたため,縫合閉鎖および洗浄ドレナージ術を施行した。穿孔の原因は Ram の投与が最も疑わしいと考えられた。血管新生阻害剤の投与の際には手術から 4 週間以上経過していても慎重を要す ると考える。 -
胃癌に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術後に残胃壊死を来し保存的に救命した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: 胃は壁内の微細血管ネットワークにより虚血に強い臓器であり,胃切除後の残胃壊死はまれである。今回, 胃切除後の残胃壊死に対し,保存的に救命し得た症例を経験した。症例: 患者は 83 歳,女性。早期胃癌と巨大食道裂孔ヘルニ アで腹腔鏡下幽門側胃切除術,D1+郭清,Billroth Ⅰ再建,食道裂孔縫合閉鎖術を施行した。第 3 病日のドレーン排液アミ ラーゼ値が異常高値であり,造影 CT で残胃壊死を確認した。全身状態は安定しており,保存加療とした。第 21 病日の術後透視で残胃からの造影剤漏出を認めたが,ドレナージ良好であった。第 23 病日の上部消化管内視鏡検査では残胃は全周性に 壊死していたが,第 52 病日では残胃は縮小し肉芽組織の増生や粘膜の再生を認めた。考察: 胃切除後の残胃壊死は,まれではあるが予後不良な合併症である。多くの場合は残胃全摘が必要となるが,手術リスクが高いと判断される場合は全身状態 などを評価し保存的治療を選択することも考慮される。 -
胃癌治癒切除後の傍大動脈リンパ節再発に対してサルベージ手術を含む集学的治療を行い 長期生存を得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 歳台,男性。心窩部痛に対して対症療法を行っていたが,内視鏡にて食道胃接合部直上から胃穹窿部〜体部 小弯側に 3 型腫瘍を認め,中分化管状腺癌(cT4bN3aM0,cStage ⅣA)の診断となった。CT 所見にて食道・横隔膜浸潤を 疑われたため,術前化学療法として S-1+CDDP を開始した。これにより原発巣およびリンパ節転移は縮小したが,狭窄症状のため 1 コースで化学療法を中止し,胃全摘,D2 郭清を施行した。術後補助化学療法として S-1 を開始したが,治療開始 後 6 か月後に傍大動脈リンパ節再発を認めたため,weekly PTX へと化学療法を変更した。weekly PTX 5 コース終了後も リンパ節増大傾向が続き,本人の希望もあり化学療法は中止となった。その後 CT と PET-CT で follow-up したが,約 1 年間他部位へ新規再発病変を認めなかったため,サルベージ手術として傍大動脈リンパ節郭清術を施行した。病理所見では PET-CT 検査で確認できた腫大リンパ節 1 個のみ胃癌の転移を認めた。現在,初回術後 6 年であるが,再発なく経過している。一般的に胃癌において傍大動脈リンパ節転移は予後不良とされているが,他に非治癒因子の認められない場合は集学的治療により良好な予後を得られる場合があると考えられる。 -
S-1+CDDP 術前化学療法により組織学的 CR を得た右胃大網静脈腫瘍栓合併進行胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide DescriptionS-1+CDDP 療法が著効して組織学的完全奏効(pCR)を得た右胃大網静脈腫瘍栓合併進行胃癌の 1 例を経験したので報告する。症例は 78 歳,男性。食思不振,体重減少を主訴に受診した。精査にて右胃大網静脈腫瘍栓を伴う幽門前庭 2 型胃癌(生検: por,HER2 陰性)と診断し,術前化学療法として S-1+CDDP 療法を計 4 コース施行した。造影 CT 上,2 コー ス後には右胃大網静脈腫瘍栓は消失し,根治手術として開腹幽門側胃切除(D2 郭清)を施行して pCR の診断であった。術後 は S-1 による補助化学療法を 1 年間行い,再発なく経過している。S-1+CDDP による術前化学療法は,腫瘍栓合併進行胃癌 に対する有効な治療選択肢と考えられる。 -
直腸癌術後の直腸膣瘻に対しエストリオール膣錠と膣洗浄にて治癒した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description直腸膣瘻は直腸癌手術の合併症としてまれであるが,発症すると治療に難渋する。経過観察では瘻孔閉鎖は困難であり,観血的な治療を必要とすることが多い。症例は 70 代の女性である。直腸癌の診断で,腹腔鏡下低位前方切除術,右側方リンパ節郭清術を施行した。術後 6 日目に縫合不全を認め,保存的加療の方針としたが,術後 9 日目に腹膜炎症状を認め, 緊急手術を施行した。腹腔内は縫合不全の影響はなく,右尿管の癒着や狭窄に伴う尿性腹膜炎の所見であった。右尿管ステ ント留置術と回腸双孔式人工肛門造設術を施行した。術後 21 日目に縫合不全の確認のために施行した下部消化管透視検査にて,直腸膣瘻を認めた。2 週間のエストリオール膣錠と婦人科での膣洗浄にて保存的加療を試み,直腸膣瘻を閉鎖した。その後エストリオール膣錠での加療を 4 週間継続し,経過観察とした。以後,直腸膣瘻の再発を認めていない。 -
肝原発神経内分泌腫瘍の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description70 歳台,男性。造影 CT にて肝 S3/4 に最大径 4.5 cm 大の腫瘤を認め,一部に早期濃染・washout を認めた。造影MRI では多結節が融合した形状を呈し,早期濃染・washout が明瞭であった。肝細胞相では欠損像,拡散強調像では高信号を呈した。以上より,肝細胞癌と診断し肝左葉切除術を施行した。病理組織学的検査では各結節が固形または小柱増殖様式 を有する均一で小さい腫瘍細胞から構成されていた。免疫組織化学染色では synaptophysin,chromogranin A が陽性,Ki67 index が 14%であり,神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)G2 と診断された。原発巣検索目的にソマトスタチ ン受容体シンチグラフィを施行したが,明らかな集積はなく肝原発 NET と診断した。術後 18 か月経過した現在,無再発生存中である。肝原発 NET は疾患自体がまれであり,また多彩な画像所見を呈するため術前診断が困難なことが多い。本症例においても正確な術前診断はなされておらず,肝原発 NET の術前診断の困難さが示唆される症例であった。 -
乳癌術後の孤立性肺腫瘍に対し肺切除をした 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description乳癌術後の孤立性肺腫瘍は原発性か転移性かで治療法,予後も異なるため鑑別は重要となる。しかし画像検査を用いた鑑別診断は困難な場合が多い。乳癌診療ガイドライン 2018 年版によると,肺・骨・肝転移に対する外科的切除は延命に寄与するエビデンスがないため限られたケースを除いて勧められないとされているが,転移性か,原発性か判断に迷う孤立性肺腫瘍の場合は診断と治療を兼ねた切除は考慮され得る。今回われわれは,乳癌術後 18 年 9 か月を経過し孤立性肺腫瘍に対して切除生検を行った 1 例を経験した。切除の結果,原発性肺癌の診断となった。乳癌術後の孤立性肺腫瘍は原発性であれ ば腫瘍切除により治癒の可能性があり,また転移性であった場合でも切除生検を施行し再発巣におけるレセプターを評価することは治療方針の決定においても有用である。 -
根治手術13 年後の再発胃癌に対して集学的治療を行った 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 72 歳,女性。13 年前に胃癌に対して幽門側胃切除術を施行し,T4N1M0,Stage ⅢA であった。CA19-9 の上昇と傍大動脈リンパ節腫大を認め,当院に紹介となった。傍大動脈リンパ節の超音波内視鏡下生検により腺癌の診断で,化学療法を開始した。S-1+cisplatin により一時的に奏効が得られたが,リンパ節転移増大のため ramucirumab に変更し投与 を継続していた。33 か月後に卵巣転移を来し卵巣摘出術を施行し,37 か月後に頭痛,嘔気があり,CT,MRI 検査で左小脳転移を認め,症状緩和目的で腫瘤の摘出術を施行した。同時期に左頸部から背部にかけて発赤調の皮膚結節を認め,生検に て低分化型腺癌の病理診断で放射線治療を開始したが,39 か月後に水腎症の出現,敗血症性ショックを来し死亡した。胃癌晩期再発はまれであるが,今後症例の集積によりリスク因子の同定,新たな治療開発が望まれる。 -
被膜下血腫を来した非ウイルス性肝細胞癌破裂の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 86 歳,男性。突然の上腹部痛を主訴に,当院救急外来を受診した。腹部単純 CT 検査で肝左葉に 37×23 mm の辺縁不整な腫瘤と,肝実質を圧排する被膜下血腫を認め,緊急入院となった。血液検査所見は,肝炎マーカーは陰性で,腫瘍マーカーは AFP 34.3 ng /mL,PIVKA-Ⅱ 153 mAU/mL と高値を認めた。腹部造影 CT 検査,EOB-MRI 検査では肝外側区域に早期濃染を呈し,内部血腫を伴う腫瘍を認めた。被膜下血腫を伴う非ウイルス性肝細胞癌の切迫破裂と診断されたが,貧血の進行を認めなかったため,保存的加療後に肝外側区域切除術を施行した。肉眼所見は被膜を有する 3 cm 大の腫瘍で, 病理所見は低分化型肝細胞癌であった。術後経過は良好で,術後 12 日目に退院となった。現在術後 13 か月経過し,再発は認めていない。今回われわれは,破裂を契機に発見され,比較的まれな被膜下血腫を来した非ウイルス性肝細胞癌の 1 切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
化学療法による病理組織学的奏効が得られた傍大動脈リンパ節転移を伴う S 状結腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳台,男性。頻尿,排尿時痛,肉眼的血尿,体重減少を主訴に当院を受診した。精査の結果,S 状結腸癌, T4b(膀胱,左尿管,左外腸骨動脈),NX,M1a(傍大動脈リンパ節),Stage ⅣA(UICC 第 8 版),S 状結腸膀胱瘻と診断され,RAS 遺伝子は野生型であった。腹腔鏡下 S 状結腸人工肛門造設術を施行した。S-1+oxaliplatin 療法を施行し,3 コー ス後に原発巣および傍大動脈リンパ節は縮小した。8 コース後には原発巣はさらに縮小したが,腫瘍マーカーの上昇が認められ,S-1+oxaliplatin+cetuximab 療法に変更した。3 コース後の評価判定は complete response(CR)であった。S 状結腸切除,膀胱部分切除,左尿管切除,外腸骨動脈合併切除,人工血管置換術を施行した。病理組織学的診断は pathological CR であり,R0 切除を施行し得た。術後2年6か月,無再発生存中である。 -
局所進行直腸癌に術前 XELOXIRI 療法が奏効し腹腔鏡下括約筋間直腸切除術を施行し pCR であった 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,男性。血便・肛門痛を主訴に受診された。精査の結果,直腸 RbRa に 2 型の進行直腸癌を指摘,右側方リンパ節転移を伴う進行直腸癌,cT3N3M0,cStage Ⅲb と診断し,術前化学療法として XELOXIRI 療法 6 コース施行後に手術を行う方針とした。術前化学療法後に直腸腫瘍・右側方リンパ節の著明な縮小を認めた。腹腔鏡下括約筋間直腸切除術 (D3 郭清)+両側側方リンパ節郭清術を行った。病理組織学的結果では腫瘍・リンパ節ともに癌細胞の残存は認めず,病理組織学 的治療効果判定 Grade 3 と診断した。術後乳び瘻を認めたが,比較的良好に経過し,術後 17 日目に軽快退院した。進行下部直腸癌に対する術前 XELOXIRI 療法後に pCR が得られ,腹腔鏡下括約筋間直腸切除術が安全に施行できた症例を経験した。 -
化学療法により長期生存が得られた多発転移を伴う進行食道癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 71 歳,男性。嗄声を主訴に前医を受診し,精査加療目的で当院へ紹介された。大動脈および気管浸潤を認め,さらにリンパ節,肺,副腎に転移を認め,切除不能食道癌,Stage Ⅳb と診断された。全身状態(performance status: PS)が良好であり,化学療法を行う方針となった。docetaxel(DOC)+cisplatin+5-FU(DCF)療法を 2 サイクル施行したところ,上部消化管内視鏡検査で原発巣は瘢痕化し,生検でも悪性所見は検出されなかった。PET-CT 検査でも病変部と転移巣の異常集積は認められず,完全奏効(complete response: CR)が得られた。その後 S-1+DOC 療法を 1 サイクル行い,S-1 単剤 を 8 か月投与し CR が維持されたため,初回治療開始後1年2か月で治療を終了した。治療終了後 3 年経過した現在も CR を維持している。 -
当科における肝細胞癌に対するレンバチニブの治療経験
46巻13号(2019);View Description Hide Description切除不能進行肝細胞癌に対する一次化学療法には,レンバチニブまたはソラフェニブがあげられる。2018 年 3 月〜 2019 年 2 月までに 7 例の切除不能進行肝細胞癌患者に対してレンバチニブを投与した。年齢 74.3(69〜83)歳。全例が PS(ECOG)0 で Child-Pugh 分類 A であり,肝外転移が 6 例であった。投与量は体重 60 kg 以上の 2 例が 12 mg /日,60 kg 未満の 5 例が 8 mg /日で開始した。投与期間は 185(45〜218)日,総投与量は 1,331(360〜2,424)mg,relative dose intensity は 87.5%であった。Grade 3 以上の有害事象は AST 上昇の 1 例と高血圧の 1 例のみであった。最良治療効果は PR 4 例,SD 1 例,PD 2 例で,CR は認めなかった。奏効率 57.1%,病勢コントロール率は 71.4%で,6 か月無増悪生存率 71.4%,6 か月生存率は 100%であった。切除不能進行肝細胞癌に対してレンバチニブは有効な治療選択になると考えられた。 -
後腹膜脂肪肉腫 8 例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description後腹膜脂肪肉腫は比較的まれな疾患であり,高い再発率から予後不良とされる。当科で手術を施行した後腹膜脂肪肉腫 8 例について検討した。患者背景では患者年齢の中央値が 64 歳,8 例中 7 例が男性であり,高齢男性に多い傾向であった。 自覚症状を認めない例が 8 例中 3 例と最も多かった。8 例中 6 例に周辺組織を含めた広範切除が施行されたが,切除断端陽性となった 3 例すべてで再発を認めた。追加切除にもかかわらず再々発を来し切除不能となった症例も認められたが,再発巣に対する追加切除および術後化学放射線療法を施行し長期生存が得られている症例も認められた。後腹膜脂肪肉腫の治療において,断端陰性をめざした積極的な外科的切除および慎重な術後経過観察が肝要である。また,術後補助療法を含めたさらなる知見の集積が必要である。 -
S-1+CDDP による胃癌 Neoadjuvant Chemotherapy の治療結果―治療コース数と効果―
46巻13号(2019);View Description Hide Description局所進行胃癌に対する S-1+CDDP による術前補助化学療法の治療結果について,治療コース数と組織学的効果,ypStage および予後を検討した。1 コース施行 A 群 54 例,2コース施行 B 群 50 例,治療不完全 1 コース未満 C 群 12 例に分 けた。Grade 2 以上は A 群 13 例,B 群 17 例,C 群 0例であった。Grade 3 は 4 例(A 群 1 例,B 群 3 例)であった。downstaging 症例では ypStage に沿った治療成績が得られた。R0 手術症例の 5 年生存率は組織学的効果で有効群 67.0%,無効群 51.0%であり,コース数では A 群 57.9%,B 群 65.2%,C 群 20.0%と 2 コース群で有意に高かった。局所進行胃癌に対する S-1+CDDP 術前補助化学療法は少なくとも 2 コースを確実に行うことが重要である。 -
胃癌肝転移に対して体幹部定位放射線療法(SBRT)が奏効し長期生存が得られた 2 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description胃癌肝転移に対して体幹部定位放射線療法(stereotactic body radiotherapy: SBRT)が奏効し,長期生存が得られた 2 例を経験したので報告する。症例 1 は 65 歳,男性。肝転移を伴う幽門前庭部癌に対して幽門狭窄のため幽門側胃切除術を施行した。術後 S-1 内服補助化学療法を実施したが,術前より認めた 2 個の肝転移巣がいったん縮小後,増大を認めたため術後 13 か月目に SBRT を施行した。SBRT 後 4 年 11 か月(術後 6 年)経過したが,肝転移は complete response(CR)を維持し無再発生存中である。症例 2 は 71 歳,女性。幽門前庭部癌に対して幽門側胃切除術を施行後の S-1 内服補助化学療法中 に肝転移が出現したため,術後 11 か月目に SBRT を施行した。その後 weekly paclitaxel を施行したが,腹部 CT 検査にて 遺残あるいは辺縁再発が疑われたため,SBRT 後 13 か月目に肝右葉切除術を施行した。病理組織学的検索では,腫瘍は線維 性結合織で占められており viable な癌細胞遺残は認めず,結果的に治療効果判定は Grade 3 であった。SBRT 後 4 年 7 か月 (胃癌術後 5 年 6 か月)経過したが,残肝再発を認めず無再発生存中である。胃癌肝転移に対する SBRT は有効な集学的治療 の一つであると考えられた。 -
ロボット支援腹腔鏡下低位前方切除術および子宮全摘術を経膣 NOSE にて施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description低侵襲化の手法として natural orifice specimen extraction(NOSE)があげられる。今回われわれは,ロボット支援腹腔鏡下低位前方切除術および子宮全摘術を経膣 NOSE にて施行した 1 例を経験した。症例は 44 歳,女性。2017 年下血にて 下部大腸内視鏡検査(colonoscopy: CS)を施行したところ,直腸 Rs に腫瘤性病変を認めた。生検組織の病理学的検査にて子宮内膜間質由来の肉腫を疑い手術の方針となった。手術所見ではカメラポートは臍より 4 cm 頭側,同じ高さの右側に first アーム,左に second アーム,左下腹部に third アーム,右下腹部に 12 mm ポート挿入しサポートとした。まず子宮を摘出し,膣部を開放し子宮を取りだした。気密性を確保し,アームの配置は変えずに前方切除の操作に移った。下腸間膜動脈 (IMA)処理を行い,NOSE 手術のため下行結腸も十分に剥離を行い,続いて骨盤内操作に移り肛門側切離端までの距離を確 保するため,挙筋が露出するまで下部直腸を剥離し,直腸間膜を処理した。膣断端より腸管を誘導して 29 mm 径の Proximate-ILS®のアンビルヘッドを挿入し,再び気腹して肛門と吻合した。膣断端を連続縫合にて閉鎖し,膀胱腹膜にて被覆縫 合した。 -
直腸癌術後孤立性副腎転移に対して腹腔鏡手術で切除し得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 86 歳,女性。RS 直腸癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術を施行した。病理診断は tub2-por,pT3,pN2a, Stage ⅢB。高齢のため術後補助化学療法は希望されずに経過観察となった。術後 5 か月で CEA の上昇を認め,CT 検査で 42×25 mm の右副腎転移を認めた。PET-CT 検査で他に転移はなく,術後 9 か月で孤立性副腎転移に対して腹腔鏡下右副腎摘出術を施行した。病理所見では原発と同様の組織所見を呈し,直腸癌転移との診断を得た。術後 8 日目で退院となり, 術後補助化学療法は希望されずに経過観察となった。副腎術後に腫瘍マーカーは正常化したが,術後 6 か月で肝・肺転移と腹膜播種が出現した。今回,高齢のために術前術後の化学療法は希望されず,低侵襲性を考慮した腹腔鏡手術による局所療 法で切除し得た直腸癌術後孤立性副腎転移の 1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。 -
胃癌腹膜播種による直腸狭窄に対し二度の直腸ステント留置術を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description大腸悪性狭窄は quality of life を低下させ,化学療法の継続も困難とする病態である。胃癌腹膜播種による直腸狭窄に対し,二度の直腸ステント留置術を施行した 1 例を経験したので報告する。症例は 72 歳,女性。cStage Ⅳ胃癌(cT3,N1, M1,P1,H0)に対して SP 療法 2 コース後,胃全摘術+D2 リンパ節郭清を施行した(ypT3,N2,M1,P0,H0,CY+)。 術後化学療法を行ったが,術後 10 か月に腹膜播種再発と判断され化学療法を変更した。術後 28 か月目に Schnitzler 転移に よる直腸狭窄を認め,直腸ステント留置術を施行後に化学療法を再開した。初回ステント留置 7 か月後,ステント内の腫瘍 進展による再狭窄を認め,同部位に対し直腸ステント再留置を行った。ステント再留置後は在宅医療に移行し,術後 37 か月 (直腸ステント初回留置後 9 か月,再留置後 2 か月)に原病死した。 -
小腸穿孔を契機に発見された空腸異所性膵癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 96 歳,女性。腹痛,嘔吐を主訴に近医から当科に紹介された。血液検査では CEA 39.47 ng/mL,CA19-9 918.5 U /mL と腫瘍マーカーの上昇を認めた。腹部 CT 検査で消化管穿孔に伴う腹膜炎と診断し,緊急手術を行った。開腹時,腹腔内に混濁膿性腹水を認めた。Treitz 靱帯から 15 cm の空腸に径 1 cm の穿孔を認め,腸間膜側に径 2 cm の腫瘤を触知した。腫瘤を含めて空腸切除術を行った。腫瘤は 2 cm 大の粘膜下腫瘍の形態を示し,穿孔部の粘膜面は潰瘍を形成してい た。摘出標本の病理組織学的検査では,小腸粘膜面に異型はなかった。粘膜下の HeinrichⅡ型の異所性膵を背景として,粘膜下組織から腸間膜脂肪織にかけて中分化腺癌を認めた。穿孔部には腫瘍細胞を認めなかった。小腸穿孔を契機に発見され た空腸異所性膵癌の 1 例を経験したので,文献的考察を加え報告する。 -
虫垂粘液癌の腹膜転移に集学的治療が奏効した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description虫垂粘液癌に対して確立した治療はないが,腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei: PMP)を併発した場合,集学的治療が行われることもある。症例は 40 歳,女性。右卵巣癌の術前診断にて手術が行われたが術中所見で虫垂癌卵巣浸潤が第一に考えられ,回盲部切除術 D3 郭清と右付属器切除術を行った。病理組織学的診断は虫垂粘液癌,pT3,pN0,pM0, pStage Ⅱであった。1 年 2 か月後の CT 検査で子宮と左付属器再発を疑い,単純子宮全摘術+左付属器切除術を行った。術後補助化学療法を行うも1年5か月後の CT 検査で骨盤底部に腹膜結節を認め,2 年 8 か月の間に 5 種類の全身化学療法を行った。しかし腫瘤は増大し,腹水も出現した。終末期状態となったが,分割での完全減量切除術と腹腔内化学療法が患者 の QOL 向上に寄与した。退院から 1 年後の CT で腹壁と腹腔内に腹膜結節を認めたが,再び完全減量切除術と腹腔内化学 療法を行い,経過良好にて退院し現在外来通院中である。 -
Mohs 軟膏での局所治療を含む集学的治療で長期生存している再発乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 75 歳,女性。1988 年に左乳癌に対して左乳房切除術と腋窩郭清を施行された。2004 年に創部および周囲皮膚への転移を認めた。cyclophosphamide+doxorubicin+fluorouracil(CAF)療法施行後に局所切除と植皮を行い,その後 docetaxel 療法を施行した。再発巣切除後 7 か月で局所再発が再燃し,局所放射線治療後,capecitabine,vinorelbine,tamoxifen を投与した。2012 年に局所再発巣が再度増悪傾向となり,anastrozole,eribulin の投与が行われた。2017 年に局所再発巣からの出血を認めたため出血コントロール目的に Mohs 軟膏処置を行い,有効な止血効果を得た。また,出血部の皮膚転移巣はその後自然に脱落した。現在 fulvestrant 投与中で局所再発巣の増悪なく経過し,初回手術より 31 年,局所再発診断時より 15 年経過している。今回,Mohs 軟膏での局所治療を含む集学的治療で長期生存している再発乳癌の貴重な症例 を経験したので,文献的考察を加え報告する。 -
Mohs 軟膏処置および術前化学療法によって切除可能となった局所進行乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description皮膚浸潤を伴う局所進行乳癌は患者の quality of life(QOL)を著しく損なう場合があるが,患者の QOL を改善し根治手術を可能にするためにも局所制御は重要である。今回われわれは,止血に難渋した局所進行乳癌に対し Mohs 軟膏の使用や術前化学療法が奏効し切除可能となった症例を経験した。Mohs 軟膏の蛋白変性作用により組織を固定することで,腫瘍からの出血および滲出液を減少させることができた。また,ベバシズマブを併用した術前化学療法の奏効によって切除手術が可能な状態となった。局所進行乳癌に対する局所処置および化学療法は患者の QOL を改善し,手術による身体への負担を低下させることにもつながる。 -
診断に苦慮した消化管出血の1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 55 歳,女性。8 年前に黒色便および貧血を主訴に近医を受診し,精査目的にて当院紹介となった。その際の精査として,上部消化管内視鏡,下部消化管内視鏡および CT を施行していたが,多発子宮筋腫以外は明らかな異常を指摘されなかった。以後,時々下血を認め,そのたびに精査を施行していたが明らかな異常を認めず,近医にて経過観察となっていた。2019 年になって 2 回目の下血・黒色便を認め,Hb が 12.8 g /dL より 9.8 g/dL と貧血の進行を認めたため,精査目的にて入院となった。今回の造影 CT では骨盤右側に 29 mm 大の多血性腫瘤を認めた。そこで再度過去の CT を見直すと,8 年前から何度か撮影している CT にて,それぞれすべて位置は変化しているが同様の腫瘤と思われる陰影を確認できた。CT 上,腸間膜由来の gastrointestinal stromal tumor(GIST)が最も疑われ,鑑別疾患として小腸癌などがあげられた。小腸透 視では回腸に透亮像があり,内部にバリウムの貯留を有する腫瘍を認めた。このため診断的治療を考え,腹腔鏡下小腸部分 切除を予定し手術を行った。術中所見では CT で疑われた部分から移動し,左側腹部に腫瘍は存在し周囲への浸潤も認めな かったため腫瘍部の小腸を体外へ誘導し,小腸部分切除術を施行した。病理学的診断では腫瘍は紡錘形細胞の錯綜配列から なり,中等度の密度で増殖し,細胞異型は目立たず核分裂像はまれであった。免疫染色で腫瘍細胞は c-kit 陽性,CD34 陰性 を示し,GIST として矛盾しない所見であった。今回,約 8 年間にわたって診断が付かなかった症例に対し,ようやく外科的治療を施行することができた。診断が困難であったのは腫瘍が比較的悪性度が低く,急激な進行をみせなかったためだと思われる。このような小腸 GIST に関し文献的考察を加え報告する。 -
S-1 による化学療法が有効であった乳腺化生癌(扁平上皮癌)の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description乳腺化生癌は乳癌取扱い規約第 18 版では浸潤癌・特殊型に分類され,まれな組織型であり化学療法に治療抵抗性と考 えられている。われわれは,S-1 が奏効した乳腺化生癌(扁平上皮癌)を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は 57 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚し受診した。左乳房(D 領域)に 10 cm 大の腫瘍を認め,生検にて浸潤癌・化生癌(扁平上皮癌),ER 陰性,PR 陰性,HER2 陰性と診断された。CT では左腋窩リンパ節転移を認めたが,遠隔転移は認めなかった。 以上より,左乳癌,T4N3cM0,病期ⅢC と診断した。S-1 を導入した。2 コース終了時には腫瘍ならびに左腋窩リンパ節は著明に縮小した。乳腺化生癌(扁平上皮癌)に対する S-1 による化学療法は有用である可能性が示唆された。 -
膵体部癌術後 5 年目の残膵再発に対して残膵全摘術を施行し長期生存を得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 56 歳,男性。46 歳時の 2009 年 1 月に膵体部癌(T1N0M0)に対して膵体尾部切除術を施行した。転移再発な く経過していたが 2014 年 1 月に腫瘍マーカーが上昇し,各検査で膵頭部に膵癌を疑う腫瘤像を認めた。同年 6 月,残膵全摘術を施行した。腫瘍は膵鉤部に位置し,門脈浸潤を認め門脈を合併切除した。病理組織学的検査で T4N1M0,Stage Ⅳa,膵癌と最終診断した。組織像は初回手術時の病変と類似性が高く残膵再発が疑われた。S-1 による術後化学療法を施行し, 2019 年 6 月現在まで転移再発なく経過している。大腸癌などの他癌種では再発巣に対する外科切除が検討されることが多い が,膵癌においてはその治療法は確立されていない。近年,膵癌切除後で,比較的長期間を経てから発症した残膵再発病変に対する外科切除の意義が報告されるようになってきた。われわれは,残膵再発病変の外科切除により長期生存を得た 1 例 を経験したため文献的考察を加え報告する。 -
直腸癌局所再発に対して化学放射線療法が奏効した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description直腸癌根治切除後の局所再発への化学放射線療法(CRT)の位置付けはまだ確立されていない。周囲臓器浸潤のある 直腸癌術後局所再発に対し CRT を施行し,R0 手術を施行できた症例を経験したので報告する。症例は 60 歳台,男性。直腸癌(Rb)に対し腹腔鏡補助下低位前方切除を施行し,術後病理組織学的診断は pT3N0M0,pStage Ⅱであったが,術後 11 か 月に局所再発と診断した。CRT(capecitabine 3,000 mg /日+45 Gy/25 Fr)を施行した後に腹腔鏡補助下腹会陰式直腸切断術を行った。切除標本の病理組織学的検査にて効果判定は Grade 3 であり,pCR および R0 切除を行うことができた。術前 CRT が著効した直腸癌局所再発例を経験した。エビデンスのない治療法ではあるが,R0 切除が困難と考えられる症例に対 する選択肢となる可能性が示唆された。 -
血管切除を伴う頸部リンパ節切除を先行させ二期的根治切除した進行頸部食道癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide DescriptionT4 食道癌においては最終的に R0 切除の可否が予後を決める重要な因子となる。われわれは,巨大な右鎖骨上リンパ節転移が右総頸・腕頭動脈へ浸潤する頸部食道扁平上皮癌に対し,血管合併切除・人工血管グラフト再建を伴う右鎖骨上リンパ節切除を先行させ,二期的に原発巣を切除し R0 切除を達成した高度進行症例を経験した。原発巣は cT3 であり術前治療が著効していたため,人工血管再建を要する右鎖骨上リンパ節転移の切除を先行させた。消化液の曝露を伴う汚染手術と なる原発巣切除と分割して行うことで,術後人工血管グラフト感染を認めることなく安全に R0 切除を達成し得た。T4 食道癌に対する血管切除で人工血管を使用する場合には,グラフト感染を回避するため各病変の進行度に合わせた分割手術や術野の設定の工夫が重要であると考えられた。 -
UFT/LV内服療法により長期病勢コントロールが得られた 90 歳台 S 状結腸癌術後肝転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 92 歳,女性。PS は 2 であった。S 状結腸癌に対して腹腔鏡下 S 状結腸切除術(D3 郭清)を施行した。最終診断は T3(SS),N0,M0,Stage Ⅱであった。術後 6 か月の腹部 CT で,肝 S6 の肝門部の門脈右枝に接して径 14 mm の腫瘤影を認め,他の画像検査所見と合わせて大腸癌の肝転移と診断した。肝動脈塞栓術や経皮的ラジオ波焼灼術,肝切除術の適応はなかった。十分なインフォームド ・コンセントを得て UFT/LV の投与を開始した。Grade 3 の好中球減少を認めたが 15 コース投与できた。その後 bevacizumab を上乗せして投与し,3 コース投与した時点で治療効果判定は SD であったが Grade 4 の蛋白尿を認めた。TAS-102 を 2 コース投与後 BSC へ移行した。全身化学療法開始から 2 年 8 か月で原病死された。超高齢でも全身化学療法の適応を慎重に判断すれば,一定期間病勢コントロールが可能であった。 -
Epirubicin /Cyclophosphamide 療法が著効した局所進行乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 66 歳,女性。初診時,左乳房の巨大潰瘍と同部位からの出血を伴う腫瘤を認め CT で左腋窩と左鎖骨上窩リンパ節の腫大を認めた。左胸壁の腫瘍の針生検の結果,浸潤性乳管癌(硬性型),ER 陰性,PgR 陰性,HER2 score 2+(FISH 増幅なし),T4cN3M0,Stage ⅢC の診断となった。epirubicin /cyclophosphamide(EC)療法を開始した。2〜4 コース目は 80% dose で施行し,CT で cCR の診断となった。5〜12 コースまで 50% dose で施行し,以降化学療法は中止した。初回治療から 5 年経過した現在も再発の所見はなく経過している。 -
FOLFIRI+Ramucirumab 導入直後にネフローゼ症候群を発症した進行下行結腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide DescriptionFOLFIRI+ramucirumab(RAM)を初回導入後に,ネフローゼ症候群を発症した下行結腸癌多発肺転移症例を経験し たので報告する。患者は 50 歳台,女性。同時性肺転移を伴う全周性下行結腸癌に対して原発巣切除,2 か月後に肺部分切除 を施行した。K-ras mutant。術後 capecitabine(Cape)+oxaliplatin(OX)療法を 7 コース施行した。肺切除後 10 か月で残肺多発再発を来し,以降 Cape+bevacizumab(Bev)療法を 4 年間継続後,腫瘍増大に対して FOLFIRI+RAM を導入した。 治療後より著明な尿蛋白増加,血清アルブミン低下,血圧上昇,浮腫増悪を認め,ネフローゼ症候群と診断した。prednisolone を開始し,降圧薬と利尿薬の追加・増量により改善した。Bev 投与中に蛋白尿のコントロールが可能であった症例でも,second-line での RAM 投与でネフローゼ症候群を発症する可能性があることを念頭に置く必要がある。 -
超高齢者大腸癌に対し緩和目的で腹腔鏡補助下回盲部切除術を行った 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description大腸癌において原発巣による症状を伴っている場合は,一般的に外科的処置が有効である。しかし超高齢者は手術リスクを重視する必要があり,治療方針の決定に難渋することが多い。われわれは炎症を伴った超高齢者の盲腸癌に対し,リ ンパ節郭清を伴わない腹腔鏡下手術を行い良好な結果を得た。症例は 97 歳,女性。虫垂炎の疑いにて抗生剤の投与を開始し 症状は軽快したが,リンパ節転移を伴う進行盲腸癌と診断された。リンパ節郭清を伴わない腹腔鏡補助下回盲部切除と一期的消化管再建を行った。術後は経過良好で,24 日目に転院となった。本術式は原発巣の症状を伴った超高齢者に対して,安全に症状の緩和を期待できると考えられた。 -
虫垂切除術後に診断された虫垂神経内分泌腫瘍の1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 25 歳,女性。右下腹部痛を主訴に来院し精査の結果,急性虫垂炎と診断した。抗菌薬投与による保存的加療の後に待機的手術の方針とし,退院 3 か月後に腹腔鏡下虫垂切除術を行った。切除標本にて虫垂体部に径 10 mm の腫瘤を認め,病理組織学的には小型類円形の核を有する異形細胞の増殖を認めた。免疫染色検査で chromogranin A(+),synaptophysin(+)であり,虫垂神経内分泌腫瘍(NET G1)と診断した。腫瘍細胞は固有筋層を越えて浸潤していたが脈管侵襲は 認めず,断端陰性であった。ガイドラインの治療方針に則り,現在画像検査による経過観察を継続しているが無再発生存し ている。 -
腸間膜血腫を呈した小細胞肺癌腹腔内転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 歳,男性。小細胞肺癌(cT4N3M0,cStage ⅢC)に対して当院呼吸器内科にて化学放射線療法が行われていたが,多発骨転移を認めたため二次化学療法を導入され,その後は病勢コントロールが得られていた。心窩部痛を主訴に来院した。精査目的の CT にて,右胃大網動脈周囲の腸間膜血腫の疑いで当科紹介となった。循環動態は保たれており,貧血の進行がないことから保存的加療を行っていたが,治療開始の翌日に血圧低下と貧血進行を認めたため試験開腹術を施行したところ右胃大網動脈周囲に巨大な血腫を認め,血腫除去と止血術を施行した。摘出標本の病理検査所見にて小細胞肺癌の腹腔内転移と診断した。腸間膜血腫を呈した小細胞肺癌腹腔内転移の 1 例を経験したので,文献的考察を加え報告する。 -
術前診断に難渋した膵尾部平滑筋肉腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 43 歳,男性。心窩部痛が発症し,画像検査で膵尾部に嚢胞を伴う腫瘍性病変を認めた。術前の病理診断では低悪性度な spindle cell lesion が疑われ,腹腔鏡下膵尾側切除・脾臓摘出術を施行した。病理組織学的所見では膵実質を主座として,紡錘形異型細胞が束状に錯綜配列を呈して増殖し,免疫組織化学的に HHF35 や h-caldesmon などの平滑筋系マーカー が陽性であることから,平滑筋肉腫と診断された。術後は明らかな合併症を認めなかった。術後 8 か月経過するが無再発生存中である。膵平滑筋肉腫は極めてまれな疾患であり,本邦での報告は 7 報のみである。腫瘍径が 50 mm を超えると,腫瘍内部で出血や壊死を来し嚢胞状の形態を取ることが多く,特徴的な画像所見とされる。組織診で術前に診断することは難しく,画像所見から鑑別疾患の一つにあげる必要があると考えられた。 -
Oncotype DX において遠隔再発の低リスク群にもかかわらず術前内分泌療法が奏効せず乳癌局所が 増大した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description今回,多遺伝子アッセイ oncotype DX を用いて,術前内分泌療法中の乳癌局所制御と遠隔再発率の結果に差を認めた症例を経験したので報告する。症例は 50 歳,女性。右乳房 C 領域に 16×11×11 mm の腫瘤を認めた。病理組織学的結果は浸潤性乳癌,ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki-67 は 38%であった。生検材料で算出された再発スコアが 4 と低リスク群 (10 年後の遠隔再発率 4%と低率,化学療法の上乗せ効果は認めず)であり,術前内分泌療法を開始したが治療開始 1 か月で 26×18×15 mm と局所が増大したため,右乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検を施行した。低リスク群であっても内分泌療法の効果が腫瘤を形成した局所と血中循環腫瘍細胞のような微小な細胞で違うことが示唆された。 -
腎機能低下を伴う進行食道癌患者に対する安全な 3 剤併用術前化学療法(UDON 療法)
46巻13号(2019);View Description Hide Description腎機能低下を伴う進行食道癌に対して術前化学療法(NAC)として 5-FU+DTX+nedaplatin(NED)(UDON)療法 を施行し,その有用性を retrospective に検討した。クレアチニン・クリアランス(Ccr)が 50 mL /min 未満の進行食道癌 5 例を対象として,NAC として UDON 療法[5-FU 640 mg /m2(day 1〜5),NED 72 mg/m2(day 1),DTX 28 mg/m2(day 1, 15),休薬 2 週間を 1 コース]を 2 コース施行した後に根治手術を施行した。化学療法の有害事象(AE)を評価し,臨床的な効果について検討した。患者背景は,男性 4 例,女性 1 例,年齢の中央値(範囲)79(58〜80)歳,performance status (PS)1: 3,PS 2: 2 例であった。腫瘍の主占居部位は,Ce 1,Ut 1,Mt 3 例,進行度は cStage ⅡA 1,ⅢA 2,ⅢC 2 例であっ た。grade(Gr)3 以上の AE は,好中球減少,低 Na 血症がそれぞれ 2 例,発熱性好中球減少,下痢がそれぞれ 1 例であっ た。抗腫瘍効果は部分奏効 4 例,安定 1 例,組織学的効果は,Gr 1a : Gr 1b=2 : 3 であった。腎機能低下のため高用量 CDDP 投与が困難な進行食道癌患者に対する NAC として,UDON 療法は有用である。 -
婦人科悪性疾患に対する消化器外科介入症例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description背景: 婦人科悪性腫瘍に対して,婦人科医と消化器外科医による合同手術がしばしば行われているが,その術後成績については明らかでない。目的: 婦人科悪性疾患手術時に消化器外科医が介入した症例について,術式,合併症,予後などの術後成績を明らかにすることを目的とした。対象と方法: 2010 年 1 月〜2014 年 12 月までの 5 年間の 73 例を対象とした。疾患,術式,術後合併症,ストーマの有無,入院期間,予後などを検討した。結果: 年齢中央値(範囲)は 60(15〜78)歳,73 例全例が女性であった。緊急手術が 8 例(11.0%)含まれていた。疾患は,卵巣癌が 56 例(76.7%)と最も多く,Stage の内訳は Stage Ⅰ /Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ/再発 : 4 /4/20/11/17 例であった。25 例(34.2%)で腸管切除吻合が行われていた。また,22 例(30.1%) でストーマが造設されていたが,本検討ではストーマ閉鎖を行えた症例はなかった。手術時間(婦人科原発巣手術時間も含 む)中央値(範囲)は 252(37〜690)分であり,出血量は 1,190(0〜11,210)mL であった。術後の合併症(Clavien-Dindo Ⅱ以上)として,イレウス 6 例(8.2%),腹骨盤内膿瘍 4 例(5.5%),縫合不全 2 例(2.7%)などがみられた。Grade Ⅲ以 上の合併症としてはイレウス,縫合不全,腹水,膵液瘻がそれぞれ 1 例ずつ認められた。卵巣癌全症例の術後生存期間中央値は 1,399 日であった。結論: 婦人科との合同手術のなかで,消化器外科医は進行卵巣癌の手術に携わることが多い。ストー マを造設した症例のストーマ閉鎖は困難であるが,消化管切除を含む腫瘍切除によって予後の延長に寄与することが期待される。 -
大腸癌同時性肝転移に対して経皮的ラジオ波焼灼併用療法で一期的に加療した 2 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対しては再発率の観点から肝切除が標準療法である。一方で,患者の高齢化に伴う耐術能,社会的要因などを理由に,大腸癌肝転移に対してラジオ波焼灼療法を施行した症例の報告が散見される。また,肝転移切除後の補助化学療法が推奨されているため二期的手術では化学療法の期間が延長し,耐性や副作用が問題になることがある。今回われわれは,同時性肝転移に対してラジオ波焼灼併用療法で一期的根治術および術後補助療法で肝局所制御が得られた 2 例を経験したので報告する。 -
皮下埋め込み型中心静脈ポート留置消化器癌患者におけるカテーテル関連静脈血栓発現頻度の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description背景: 近年,消化器癌領域では大腸癌や膵癌など化学療法時の投与ルートとして皮下埋め込み型中心静脈(CV)ポートを留置する頻度が増加している。また,血管新生阻害薬の使用機会の増加により血栓症のリスクが増していることが予想されるが詳細な検討は未だなされていない。方法: 当院で 2015 年 1 月〜2016 年 12 月の間に化学療法目的で CV ポートを留置した消化器癌患者 109 例のうち造影 CT 検査にて継続して血栓の出現の有無が評価可能であった 88 例のカーテル関連静脈血栓(catheter-related thrombosis: CRT)の癌腫別発現頻度およびリスク因子を後方視的に検討した。結果: 年齢中央値 (範囲)は 71(44〜89)歳,性別は男性 63 例,女性 25 例であった。主な癌腫別 CRT 発現頻度は胃癌 7.7%,大腸癌 2.6%であった。血管新生阻害薬使用例,非使用例ともに 4.5%であった。まとめ: CV ポートを留置した消化器癌患者の CRT 発現頻度は 4.5%で,血管新生阻害薬の使用による頻度の増加はみられなかった。 -
超高齢者の進行舌癌に対して顎二腹筋弁による口底再建を行った 2 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description近年,高齢化に伴い高齢者の口腔癌を治療する機会は増えている。一般的に進行舌癌の治療は遊離皮弁による再建が行われる。しかしながら,高齢者に対しては手術時間や侵襲,全身状態,既往歴などにより必ずしも最善とはいえないことがある。今回われわれは,超高齢者の進行舌癌の 2 症例に対して顎二腹筋弁による口底再建を行い良好な口腔機能経過が得られた症例を経験したので報告する。症例 1 は 86 歳,女性。左側舌癌,頸部リンパ節転移(高分化型扁平上皮癌,cT3N2bM0, Stage ⅣA)のため,舌部分切除,根治的頸部郭清術変法による引き抜き切除術を施行した。症例 2 は 93 歳,男性。右側舌癌(疣贅癌,cT3N0M0,Stage Ⅲ)に対し舌半側切除,舌骨上頸部郭清による引き抜き切除術を施行した。いずれも顎二腹筋弁を下顎骨下縁および骨膜に縫合固定し,口腔内と頸部を遮断再建した。本術式は比較的低侵襲で,術後の口腔機能障害がなく良好に経過した。高齢者の進行舌癌への顎二腹筋弁による口底再建は手術侵襲の軽減かつ口腔機能回復に有効と思われた。 -
放射線照射療法が奏効した門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳台,男性。人間ドックで肝腫瘍を指摘され当科を受診した。肝 S8 の肝細胞癌(HCC)と診断し,腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。病理組織学的診断は高分化 HCC であった。2 年後,S5 に HCC が出現し腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。病理組織学的診断は中分化 HCC であった。1 年後 S4,S8 に新病変を認め,S8 の HCC は門脈侵襲を伴っていた。肝機能低下を認め,切除不能であり TACE を行った。しかしその後 S8 の HCC が増大し門脈腫瘍栓(Vp3)が認められた。そこで三次元原体照射(45 Gy /15 Fr)を施行した。照射後 2 年 9 か月で HCCの再発を認めていない。 -
術前 DCF 療法により組織学的完全奏効が得られた進行食道癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 66 歳,男性。右頸部に腫瘤を自覚し,精査にて 48×34 mm 大の右鎖骨上リンパ節転移を伴う胸部中部食道扁平上皮癌,cT2N2M0,cStage Ⅲと診断された。術前 docetaxel /cisplatin/5-FU(DCF)療法を 3 コース施行され,部分奏効と判定された。手術は胸腔鏡下食道切除術,3 領域リンパ節郭清,胸骨後経路胃管再建を施行された。術後病理組織学的診断 にて原発巣および右鎖骨上リンパ節転移巣ともに腫瘍細胞の遺残を認めず,組織学的完全奏効と判定された。進行食道癌に対する術前 DCF 療法は高い組織学的完全奏効割合から新規術前化学療法として有望である。 -
胃癌高位病変に対する腹腔鏡下胃亜全摘後の残胃空腸 Overlap 再建
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: 胃癌患者の高齢化が進み,高位病変に対しても胃全摘を回避すべき症例が増えている。しかし腹腔鏡下に小弯全切除し,残胃空腸吻合を安全に行うことは比較的困難な手技である。対象: 2018 年 5 月〜2019 年 6 月に当科にて腹腔鏡下胃亜全摘術(laparoscopic subtotal gastrectomy: LSTG)を行った高位胃癌症例 19 例とした。方法: 術中内視鏡を用いて小弯全切除の形で胃切離を行い,胃切離断端中央に小孔を開け,自動縫合器を用いて overlap 法で残胃真背側に空腸を吻合する。同手技による LSTG 症例の短期治療成績を後方視的に検討した。成績: 手術時間 221(143〜318)分,出血量 10(3〜100) mL,術後在院期間 7(6〜13)日,吻合関連合併症は認めなかった。結語: 胃癌高位病変に対する LSTG,残胃空腸 overlap 吻合の短期成績は良好であり,簡便で安全な方法であると考えられた。 -
膵癌術後残膵に発生した腺扁平上皮癌を切除し 5 年生存を得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 52 歳,男性。膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を施行した。組織診断は invasive ductal carcinoma,mod>por,T3N1aM0,Stage ⅡB であった。術後1年2か月後の定期 CT にて残膵に 3 cm 大の腫瘤を指摘され,残膵癌の診断で残膵全摘術を施行した。術後組織診断は adenosquamous carcinoma,T3N0(0 /13)M0,Stage ⅡA であった。再切除後 5 年 経過し無再発生存中である。初回切除時の膵管断端は陰性であり,膵空腸吻合部にも腫瘍成分は認めなかった。主膵管には 慢性炎症を伴った扁平上皮化生を広範に認め,腺扁平上皮癌の発生母地としての可能性も考えられた。浸潤癌術後の残膵再切除症例は比較的まれであり,かつ腺扁平上皮癌の診断で長期に術後無再発生存を得ることができた本症例は珍しいといえる。 -
姑息的原発巣切除を行った肝転移を伴う局所進行膵原発腺扁平上皮癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 61 歳,男性。食思不振を主訴に当院を受診,上部消化管内視鏡検査で胃体上部後壁に腫瘍を認めた。外来での検査であったが,腫瘍からの出血のため緊急入院となった。腹部造影 CT 検査では腫瘍は膵から発生し,脾・胃・横行結腸へ浸潤していると判断された。さらに肝後区域に腫瘍を認め,血液検査では CA19-9 値の著明な上昇を認めた。以上より,腫瘍は周囲臓器浸潤と肝転移を伴う膵癌と診断した。腫瘍は,「遠隔転移あり切除不能」に分類されたが,消化管出血と結腸の通過障害に対する姑息的治療のため原発巣切除を行った。切除標本の病理組織学的診断は膵腺扁平上皮癌であった。術後は 良好に経過し,化学療法を導入後,術後 34 日目で退院となった。その後は全身状態が悪化し,術後 110 日目に再入院するまで 2 か月半自宅での生活が可能であった。姑息的原発巣切除は病勢コントロールには至らなかったが,緩和ケアの観点から は一定の意義があったと考える。 -
胃に発生した脱分化型脂肪肉腫に対して腹腔鏡下胃局所切除を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 73 歳,女性。上腹部に突然違和感および腹痛を認めたため,当院救急外来を受診した。造影 CT 検査にて胃大弯側にモザイク状に造影される 7 cm 大の腫瘍を認め,上部消化管内視鏡検査では粘膜面は正常で,壁外腫瘍による圧迫所見を認めたことから胃粘膜下腫瘍と診断され,手術目的に当科紹介となった。腹部超音波検査では境界明瞭で,内部には嚢胞成分を含む不均一な腫瘤として確認でき,胃 GIST を疑い腹腔鏡下胃局所切除を施行した。腫瘍は大弯側背側に存在して おり,後腹膜や脾門部と高度に癒着していた。腫瘍周囲の大網切離と癒着剥離を行った後,腫瘍の基部を自動縫合器(EndoGIA®)を用いて楔状切除を行った。切除標本の病理所見は多形性に富んだ紡錘形腫瘍細胞が主体であったが,高度の壊死を 伴っており,積極的に GIST を疑う所見ではなかったため種々の免疫染色を施行した。その結果,c-kit(−),DOG-1(−), S-100p(−),desmin(−),a-SMA(focal+),p16(+),MDM2(+),CDK4(+)であり,脱分化型脂肪肉腫との診断に至った。現在外来にて経過観察中であり,腹腔鏡下胃局所切除を施行して 10 か月が経過したが無再発生存中である。 -
甲状腺転移を来した直腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 65 歳,女性。肝右葉や縦隔・右鎖骨下リンパ節に遠隔転移を有する直腸癌に対して,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した後,化学療法を施行した。リンパ節転移所見が消失し肝転移巣も縮小したため拡大肝前区域切除術を施行し,術後化学療法を 1 年間行った。その1年6か月後の胸腹部単純 CT にて甲状腺左葉の腫大を認めた。甲状腺超音波検査にて, 甲状腺左葉に内部粗造で境界明瞭な 23 mm 大の分葉状低エコー腫瘤像を認めたため穿刺吸引細胞診を施行した。病理組織学的に転移性腫瘍が疑われ,確定診断および局所コントロールのため甲状腺左葉切除術を施行した。病理組織学的に直腸癌の甲状腺転移と確定診断された。転移性甲状腺癌は甲状腺悪性腫瘍のなかでもまれであり,特に原発が直腸癌であった非常 にまれな 1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。 -
術後 32 年目に転移再発を来した乳癌晩期再発の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 86 歳,女性。左胸壁腫瘤を自覚して近医を受診した。既往としては,32 年前に他院で左乳癌に対して左乳房全摘術を施行された。また,約 2 年前から両肺野に多発小結節を認めており,転移再発も疑われ当院紹介となった。胸腹部 CT では両肺野に多発小結節と,左第 2〜3 肋間の傍胸骨に胸骨硬化像を伴う腫瘤が認められた。乳腺超音波検査では 53 mm 大の境界明瞭で不整形の低エコー腫瘤として認められ,同部位の針生検を施行した。病理組織学的所見が 32 年前の手術標本の所見に類似し,ER 強陽性,PgR 強陽性,HER2 陰性,Ki-67 低値と 32 年前と同様のバイオロジーであったため乳癌の晩期再発と診断した。レトロゾールを開始したところ,6 か月後に両肺野の多発小結節の一部が増大し進行に至った。現在,二次内分泌療法としてアベマシクリブおよびフルベストラントを投与中である。今回われわれは,術後 32 年の長期間経過後に転移再発を来した乳癌晩期再発症例を経験したので報告する。 -
肺癌,胃癌との同時性三重複癌を呈した高齢男性乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 89 歳,男性。胃ポリープのフォローアップ目的の上部消化管内視鏡検査にて進行胃癌が認められた。術前 PETCT 検査にて右肺 S3 と右乳腺に異常集積を伴う腫瘍が認められ,生検目的で右乳腺腫瘍摘出術が行われた。病理組織学的に原発性乳癌と診断されたため,精査加療目的に当科紹介となった。肺病変の原発巣精査目的に気管支鏡生検を行い,原発性肺癌(cT1aN0M0,cStage ⅠA)と診断された。以上より,肺癌と胃癌を同時性に重複した男性乳癌と診断した。乳癌に対して乳房全摘術を施行し,術後補助内分泌治療を開始した。肺癌に対しては体幹部定位放射線療法(48 Gy/4 Fr/4 days)を行い,胃癌に対しては開腹胃部分切除術(pT1aN0M0,Stage ⅠA)を行った。重複癌症例の報告は増えているが,男性乳癌自体がまれであり,そのなかで肺癌と胃癌という組み合わせでの同時性三重複癌を経験したので,若干の文献的考察を加えて 報告する。 -
術後早期に再発し急速な経過をたどった横行結腸癌術後吻合部再発の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description結腸癌治癒切除後の局所・吻合部再発率は 2.1%と低く,報告例は少ない。今回,術後早期に再発し急速に増大した横行結腸癌術後吻合部再発の症例を経験したので報告する。症例は 80 歳,男性。横行結腸癌に対して腹腔鏡補助下横行結腸切除術,D3 郭清を施行した。病理診断は pT4aN1bM0,Stage Ⅲb であった。術後 4 か月の PET-CT 検査で,吻合部再発およ び肝転移と診断した。術後 6 か月に結腸部分切除術(小腸・胃合併切除)を施行した。術後合併症により quality of life(QOL) は低下し,積極的治療の継続が困難となった。横行結腸癌術後局所・吻合部再発の治癒切除が予後改善につながる可能性はあるが,隣接臓器の合併切除により QOL 低下を招くことに留意する必要がある。侵襲の少ない術式を選択するためにも手術介入のタイミングを逃さないことが重要で,術前化学療法の併用も選択肢の一つと思われた。 -
化学放射線療法が著効した高齢者食道内分泌細胞癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description食道内分泌細胞癌はまれであり,極めて予後不良とされている。今回われわれは,CDDP/CPT-11 療法に放射線療法を併用し,長期生存が得られた高齢者食道内分泌細胞癌の 1 例を経験したので報告する。症例は 80 歳,男性。主訴は吃逆。 上部消化管内視鏡検査で下部食道に 2 型病変を認め,生検にて内分泌細胞癌と診断された。精査の結果,食道内分泌細胞癌, cT3N2M0,cStage Ⅲと診断した。高齢のため手術の希望はなく,肺小細胞癌に準じて CDDP /CPT-11 療法を 3 コース施行後,放射線療法を総量 45 Gy 施行した。治療終了後,上部消化管内視鏡検査で原発巣は消失し,生検の結果,悪性所見を認めなかった。CT で腫瘍およびリンパ節腫大は消失し,PETでも異常集積は認めず CR と判定した。現在,化学放射線療法終了後 5 年以上経過し,無再発生存中である。 -
同時性両側性神経内分泌型非浸潤性乳管癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description乳腺の神経内分泌型非浸潤性乳管癌(NE-DCIS)は非浸潤性乳管癌(DCIS)の特殊亜型であるが,乳癌取扱い規約には記載されていない。主訴は血性乳頭分泌が多く,病理組織学的に顆粒状胞体,紡錘状の核を有する腫瘍細胞の充実性増殖, 豊富な血管網を伴うことが特徴である。同時性両側性 NE-DCIS の報告は今まで Honami らの報告のみであった。われわれは,乳頭異常分泌で受診され経過中に両側乳房腫瘤が出現し,手術にて NE-DCIS と診断し得た症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。 -
診断に難渋した多発肝転移で発症した膵神経内分泌癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,女性。食道癌にて右開胸開腹食道亜全摘術(低分化扁平上皮癌,pStage Ⅱ),術後補助化学療法を行 い,再発なく経過していた。術後 10 年目の検査で CEA 上昇,肝腫瘤を認め,精査で転移性肝腫瘍が疑われたが原発臓器が不明であったため,診断的治療の方針で肝部分切除術を行った。病理組織学的検査では腺癌の診断で,原発臓器は依然として不明であった。経過観察を行ったところ術後 2 か月目に CEA が再上昇し,CT で多発肝転移・腹膜播種・傍大動脈リンパ 節転移を認め,MRI で術前に認めなかった膵腫瘍を認めた。病理組織学的結果を再検討し,免疫染色を追加したところ chromogranin A( +),synaptophysin(−),CD56(+),Ki-67 index 20%以上,核分裂数 22/10 HPF で,膵神経内分泌癌の多発転移と確定診断した。 -
肝転移,肺転移を切除し長期生存が得られている家族性大腸腺腫症に伴う直腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 37 歳,男性。家族性大腸腺腫症および直腸癌,cT3N0M0,cStage Ⅱの診断で,大腸全摘,回腸嚢肛門吻合, D3 リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的診断の結果は直腸癌,pT3N1M0,pStage Ⅲa であったため,術後補助化学療法として S-1 の内服を開始した。術後 3 か月目に肝転移(S5,S6)を認め,腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。術後 24 か月後,肝転移再発(S2,S8)を認め,開腹肝部分切除術を施行した。術後 41 か月後,右肺 S6,S9 に転移を認め,胸腔鏡補助下肺部分切除術(S6,S9)を行った。転移巣に対し外科的切除を行い,長期生存を得られている家族性大腸腺腫症に伴う直腸癌の 1 例を経験した。複数回の肝転移切除術,肺転移切除術の意義を示す症例として報告する。 -
切除 1 年3 か月後に播種性骨髄癌症を発症した胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 60 歳,男性。胃癌に対して幽門側胃切除術を施行し,pT1bN3M0,Stage ⅡB の診断であった。術後補助化学療法 capecitabine+oxaliplatin(CapeOX)療法を 6 か月施行し無再発で経過していたが,術後1年3か月後に腰痛を主訴に受診した。血液検査にて血清 ALP 3,752 U /L,LDH 308 U/L,CA19-9 69.4 U/mL と上昇を認めた。骨シンチグラフィでは 両大腿骨,坐骨,腸骨,脊椎,胸骨,多数の肋骨,肩甲骨に異常集積を認めており,super bone scan 像を呈していた。その後,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)を発症した。病態から播種性骨髄癌症と診断した。骨病変に対しては放射線療法および抗 RANKL モノクローナル抗体の投与を,DIC に対してはトロンボモジュリン製剤の投与を行った。また,胃癌に対する治療として化学療法 TS-1+cisplatin(SP)療法を施行したが,播種性骨髄癌症の発症後 4 か月で死亡した。播種性骨髄癌症は極めて予後不良な病態であり,文献的考察を加えて報告する。 -
他臓器浸潤を伴う肺癌小腸転移症例―本邦報告例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description周囲の小腸と瘻孔を形成していた肺扁平上皮癌小腸転移の自験例を供覧するとともに,他臓器浸潤を伴う肺癌小腸転移の本邦報告例の検討を報告する。症例は 63 歳,男性。肺癌に対して化学放射線療法を施行した後に,化学療法を継続していたところ,脳転移が出現,腫瘍摘出術を施行した。さらに小腸転移が出現し,小腸部分切除を施行した。腫瘍は 2 か所の小腸に浸潤し,1 か所は瘻孔を形成していた。その後,腹膜播種が出現,BSC となっている。肺癌小腸転移,他臓器浸潤の本邦報告例は自験例を含め 10 例であった。小腸転移巣に対しては,全例で切除されていた。他臓器と瘻孔を形成していた症例は予後が不良であった。原発巣が切除できており,小腸以外の他臓器に転移を認めない症例では比較的長期無再発生存が得られていた。肺癌原発巣がコントロールされている小腸単独転移例は他臓器浸潤を認めても切除する価値はあるが,瘻孔形成まで認めている症例は予後不良であり,切除の適応を慎重に検討すべきである。 -
Bevacizumab 投与中に発症した皮膚潰瘍の1例
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: 今回われわれは,bevacizumab(Bmab)を含む化学療法を施行中に出現し,いったんは改善したものの, Bmab 再投与により再燃した皮膚潰瘍の 1 例を経験したため報告する。症例: 69 歳,男性。盲腸癌,多発転移に対して原発巣切除後に XELOX+Bmab 療法を開始したところ皮膚潰瘍が出現した。化学療法中止,debridement,抗生剤投与により皮膚潰瘍は縮小した。XELOX 療法を行い,皮膚潰瘍は上皮化した。XELOX+Bmab 療法を再開したところ,再度びらんが出現した。考察: Bmab は皮膚障害や創傷治癒遅延の副作用があり,まれではあるが術後の創部などに皮膚潰瘍を形成することが報告されている。自験例では当初は皮膚放線菌感染症も考えられたため,抗生剤を継続しながら Bmab の再投与を行ったところ皮膚障害の再燃を認めた。本邦報告例でも Bmab 再投与により高率に皮膚潰瘍が再燃しており,再投与は基本的には行うべきではないと考えられる。結語: Bmab 投与中に皮膚潰瘍が出現した場合は,再投与は慎重に検討する必要がある。 -
Ramucirumab+Paclitaxel 併用療法中に消化管穿孔を来した再発胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 54 歳,男性。進行胃癌に対し 2017 年 3 月に幽門側胃切除,D2 リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的結果 は Type 2,sig+por+tub2,HER2(−),pT4aN3aM0,pStage Ⅲc にて同年 4 月より術後補助化学療法(S-1)を開始した。 6 月に CEA 高値となり CT にて腹膜播種,リンパ節再発を疑い,capecitabine+cisplatin 療法を導入,いったん腫瘍マーカー は低下傾向となるも 9 月には再上昇に転じ,10 月より weekly paclitaxel(wPTX)へレジメンを変更した。同様に腫瘍マーカーは低下傾向を認めたが,2018 年 1 月に再度 CEA は上昇傾向となり wPTX に ramucirumab を併用投与とした。2 回目の投与後約 1 週目に腹痛を来し救急受診となり,CT で消化管穿孔の診断で同日緊急手術を施行した。手術所見で腹腔内に無数の播種結節が確認でき,回盲部から口側 70 cm の小腸の白色結節部に穿孔を認め,同部腸管切除を施行の上,一期的に吻合した。術後は合併症なく経口摂取を再開できたものの,全身状態の悪化に伴い best supportive care(BSC)に移行した。 -
化学療法中に Trousseau 症候群を併発した進行胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 歳,女性。多発性リンパ節転移を伴う進行胃癌に対して,術前 TS-1+CDDP による化学療法を施行してい た。化学療法 1 コース中に左半身の不全麻痺を認めた。頭部 MRI により急性脳梗塞の診断となった。さらに血液検査にて凝固亢進がみられたことにより Trousseau 症候群が疑われた。エドキサバンによる抗凝固療法を行い,化学療法を継続した。 麻痺症状は改善し,TS-1+CDDP を 2 コース終了後に胃全摘術を施行した。最近の知見によると,悪性腫瘍患者の 90%以上 が血液凝固亢進状態を示し,50%以上に血栓塞栓症を認めるといわれ,Trousseau 症候群を併発すると予後不良とされている。これに対して早期診断による抗凝固療法と併存する悪性腫瘍に対する加療を併せて行うことが重要と考えた。 -
Paclitaxel+Bevacizumab 療法が長期奏効している Stage Ⅳ乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳,女性。2 年前から右乳房に腫瘤を自覚したが放置していた。徐々に腫瘤が増大し,発赤を伴ったため当科を受診した。右乳房全体に 10 cm 大の腫瘤を触知した。針生検にて invasive ductal carcinoma の診断であった。CT にて多発肺転移,肝転移を認め,骨シンチグラフィでは肋骨に骨転移を認めた。肺転移,肝転移が life-threatening な状態であったため,weekly paclitaxel(PTX)療法を開始した。バイオマーカーの結果が ER(+),PgR(+),HER2(2+),HER2 FISH 1.27,Ki-67 30%であったため 2 コース目から bevacizumab(Bev)を追加した。4 コースを終了し,CT では肺転移,肝転移は著明に縮小した。脱毛と高血圧,蛋白尿の有害事象が出現し,高血圧に対しては降圧薬を内服し,高度蛋白尿に対して は Bev を投与せず化学療法を施行している。3 年以上投与を継続し,肺転移,肝転移が若干増大してきたが,緩徐であるため投与を継続中である。 -
手術施行 14 年後に乳房内再発を生じた潜在性乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description潜在性乳癌に対して初回手術として腋窩リンパ節郭清のみを行い,14 年後に乳房内再発を認め切除を施行した 1 例を経験した。症例は 68 歳,女性。主訴は腋窩腫瘤で,同部の生検にて腺癌と診断した。各種画像検査で乳房内および多臓器に原発巣を指摘し得ず,腋窩リンパ節郭清術を行った。病理組織学的検査ではリンパ節の一部に腺癌を認め,潜在性乳癌と診断した。乳房切除および放射線治療は施行せず,乳房は経過観察となった。術後 14 年目に左乳房に乳房内再発を来し単純乳房全摘を施行した。術後補助療法としてアナストロゾールの内服を開始したが,術後 11 か月,間質性肺炎の増悪により死亡 した。潜在性乳癌に対する標準的治療は確立していない。潜在性乳癌ではすでにリンパ節転移が存在するため,その切除と全身治療が必要である。しかし乳房に対しては明確な治療方針が示されておらず,外科的切除および放射線治療の施行は議論がある。全身治療後に慎重な経過観察を行う乳房温存も選択肢の一つと考える。 -
FDG-PET/CT が診断に有用であった胃癌術後 4 年で孤発性リンパ節転移の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide DescriptionFDG-PET/CT が診断に有用であった胃癌術後 4 年で孤発性リンパ節転移再発を来し,切除術が施行できた 1 例を経験したので報告する。症例は 70 歳,男性。4 年前に幽門前庭部胃癌,T3N3,Stage ⅢB に対して幽門側胃切除術および D2 郭清を施行した。補助療法として TS-1(120 mg /body)併用シスプラチン療法 2 コースおよび TS-1 単剤を 1 年間施行して いたが,経過観察中に CEA が漸増し,横隔膜下の食道裂孔近傍に 10 mm の結節が出現した。PET 陽性であり,胃癌再発の診断で切除術を施行した。術後病理組織学的検査で胃癌リンパ節転移の診断となったため,補助療法として TS-1 の内服を 17 か月投与した。現在,無再発生存中である。胃癌の術後リンパ節再発は化学療法が施行されることが多いが,根治的治療は切除術のみであり,本症例は FDG-PET /CT 検査が診断に有用で,根治切除が可能であった比較的まれな症例と考えられ た。 -
急性膵炎を契機に発見された膵管内乳頭粘液性腺癌の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,男性。急激な上腹部痛を主訴に当院を受診し,急性膵炎と診断された。膵炎の原因として CT 所見から膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)を疑い,膵炎の軽快後に精査を施行した。ERCP, MRCP では主膵管の著明な拡張が認められ,膵頭部の主膵管内には壁在結節がみられた。主膵管型 IPMN と診断し,急性膵炎発症 3 か月後に膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的所見では拡張した主膵管の内腔に鋳型状に増殖した腫瘍を 認め,膵管内乳頭粘液性腺癌(intraductal papillary mucinous carcinoma: IPMC)と診断した。急性膵炎の原因として IPMN の存在を念頭に置き,画像検査で IPMN を疑う所見があれば膵炎軽快後に悪性の可能性を考慮した精査と治療を行う必要がある。 -
胆嚢癌異時性・多発肝転移再発に対して切除術および動注併用化学療法を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 69 歳,女性。胆嚢癌に対して拡大胆嚢摘出術(D2 郭清)を施行した。術後病理結果は T2N0M0,fStage Ⅱ(UI CC 第 7 版)であった。術後補助療法として S-1 投与を行っ た(100 mg/body)が,骨髄抑制のため Clavien-Dindo 分類 Grade Ⅱの好中球減少症を繰り返していた。術後 12 か月の造影 CT 検査および PET-CT 検査で肝 S4 と S5 に肝転移再発の診断となった。骨髄抑制も認めていたため全身化学療法の継続は難しいと判断し,肝切除および動注併用化学療法を 10 か月施行した。初回手術から 29 か月,肝切除から 16 か月経過した現在,無再発生存中である。 -
胆嚢癌術後の大動脈周囲リンパ節再発に対して外科的切除術が有効であった 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 75 歳,男性。胆嚢癌(cT2N1M0,cStage Ⅲb)に対して胆嚢摘出術,胆嚢床切除術,領域リンパ節郭清を行っ た。病理組織学的検査は tub1>pap,pT2N1M0,pStage Ⅲb で根治切除であったが,術後 9 か月で十二指腸背側の限局した領域に大動脈周囲リンパ節再発を認めた。初期治療として S-1 療法を 2 コース施行したが再発巣の縮小を認めなかったため,患者と相談の上,リンパ節摘出術を施行した。再発手術後 46 か月無再発で経過している。 -
上行結腸びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 72 歳,男性。右下腹部痛を主訴に受診し,腹部造影 CT 検査で上行結腸に著明な壁肥厚を認めた。内視鏡検査で上行結腸に 3 /4 周性の 2 型腫瘍を認め,生検で悪性リンパ腫と診断した。開腹回盲部切除術,D3 郭清を施行した。病理組織学的検査で,びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma: DLBCL)と診断した。術後 PET-CT を撮 影し,Lugano 分類 Stage Ⅳと診断した。退院後,cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,prednisolone+rituximab 併用療法を 2 コース施行したが PD となり,その後複数の化学療法を施行するも,すべてに対し治療抵抗性であり,術後 8 か月で死亡した。今回われわれは,上行結腸びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の 1 例を経験したので若干の文献的考察を加 え報告する。 -
同時性肺転移を認めた大腸多発 SM 癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 歳台,男性。S 状結腸から直腸 S 状部にかけて 3 か所に早期大腸癌を疑うポリープを認めたため内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行し,すべての病変で完全切除となったが,3 病変ともに深達度 SM-2 mm 以深であった。そのため追加切除の適応とし,胸腹部 CT 検査にて左肺舌区に 1 か所と右肺上葉に 2 か所の小結節を指摘されたが,質的診断が困難なため術後経過観察とし,腹腔鏡下直腸前方切除術(D3 郭清)を施行した。リンパ節転移はなく pStage Ⅰと診断し,経過観察していたところ,術後 2 年の CT 検査にて右肺上葉に 2 か所の小結節と左舌区の結節がともに軽度増大傾向を認めたため確定診断の目的も含め左肺の病変に対し胸腔鏡補助下左舌区部分切除術を施行した。病理組織学的結果で大腸癌の転移 と診断された。さらに 6 か月後に右肺の病変も切除し,同様に大腸癌の転移と診断された。その後は 2 年経過し,再発を認めず経過観察中である。 -
横行結腸原発神経内分泌癌に対して集学的治療を行い長期生存が得られている 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 55 歳,男性。体重減少精査の CT で横行結腸に接した腫瘤を指摘され,精査加療目的に当院を紹介受診した。 FDG の異常集積を認め,診断確定のために開腹生検を施行した。その結果,神経内分泌癌(Ki-67 index 40%)であった。遠隔転移は認めず,根治目的に横行結腸切除術を施行した。病理組織学的検査にて横行結腸神経内分泌癌(Ki-67index 24.7%) と診断した。術後全身化学療法として carboplatin(CBDCA)+etoposide(VP-16)療法を施行したが,術後 7 か月目で右肺転移再発を認めた。孤発性であったため右肺下葉部分切除術を施行した。その後初回手術から 18 か月目で肝転移再発(S5 と S8)を認め,肝右葉切除術を施行した。現在,肝切除術後 1 年が経過しているが明らかな再発はなく,初回手術より 3 年 4 か月が経過している。 -
多施設アンケート調査に基づき検討した癌治療に対する緩和ケアの現状
46巻13号(2019);View Description Hide Description緩和ケアの現状について兵庫県大腸癌治療研究会に所属する 34 施設からのアンケートを基に評価した。29 施設 (85%)で緩和ケアチームを有したがチーム構成要員にはばらつきがあり,精神科医や管理栄養士,医療ソーシャルワーカー,臨床心理士,リハビリテーションにかかわる専門職の参加は 50%以下であった。緩和ケアチームによる積極的な対象患者のスクリーニングを行うシステムが 10 施設(29%)であった。治療担当医から緩和担当医へのコンサルトのタイミング は,化学療法終了時(46%)が最も多かったが化学療法導入時以後様々であった。非薬物療法として,多くの施設で緩和手術や放射線療法も積極的に検討する方針であった。本調査では,緩和ケアチームの設置が一般化してきていたがその構成や活動状況については多様性がみられ,緩和ケアのシステム化の発展段階にあることが示唆された。 -
脳転移を来した肺癌手術症例の予後についての検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description2001〜2017 年の間に原発性肺癌に対し,肺切除術を受けた 439 例中脳転移を来した 37 例について,後方視的に臨床病理学的因子と脳転移発症後の生存期間の関係を検討した。脳転移巣の大きさでは生存期間に差はなかったが,脳転移巣の個数が多いほど生存期間が短かった。初回局所療法別では,定位照射や腫瘍摘除術が全脳照射より生存期間が長かった(生存期間中央値: 定位照射 23 か月,摘除術 17 か月,全脳照射 4 か月 /定位照射 vs 全脳照射: p<0.001)。脳転移巣に対する有効な局所療法として,脳転移巣がおおむね 4 個以内で,最大径 3 cm 以下であれば定位放射線治療,3 cm 超なら摘除術の適応があるので,局所制御による QOL 改善と延命効果を期待して積極的に実施すべきである。有効な局所治療や薬物療法により予後がある程度期待できる場合は認知機能低下を招く全脳照射はできるだけ回避し,髄膜播種や粟粒転移などのために温存すべきと考える。 -
高齢胆道癌患者に対する手術成績の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description胆道癌治療の第一選択は外科的切除であるが,高齢者は多彩な基礎疾患や心肺機能の低下があることが多く,手術のリスクが高い。今回,高齢胆道癌患者に対して外科的切除を施行した症例を対象として検討し,その安全性と有効性を検証した。2009〜2015 年までに当院において外科的切除を施行した肝門部領域胆管癌(Bp)52 例,肝内胆管癌(ICC)29 例,十二指腸乳頭部癌(AV)40 例を手術施行時に 75 歳以上の Group 1 と 75 歳未満の Group 2 に分けて,外科的切除の安全性と予後についての項目を比較検討した。Clavien-Dindo 分類 Grade Ⅲ以上の合併症は両グループに有意差を認めなかったが, 手術関連死亡は Group 1 の肝切除群(Bp+ICC)で有意に多かった。肝切除後の生存期間中央値,3 年生存率は Group 1 で 22 か月(25.5%),Group 2 で 40 か月(57.4%)と Group 1 は有意に予後不良であった(p=0.023)。AV に関しては両群の手術関連因子と 5 年生存率(Group 1 83.3%・Group 2 77.7%)に有意差は認めなかった(p=0.094)。高齢胆道癌患者に対 する肝切除においては,周術期合併症のリスクが高く,長期予後も不良であった。これらを考慮し,術前に治療方針をより慎重に検討する必要性が示唆された。一方,AV に対する外科的切除に関しては高齢者も非高齢者に遜色ない結果であり, 積極的な外科的切除を考慮してもよいと考えられた。 -
高齢者消化管癌治療の予後と術前併存疾患の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description近年,高齢者手術例が増加している。加齢に伴う主要臓器機能の低下だけでなく,循環呼吸器障害や糖尿病,悪性腫瘍などの併存疾患が癌治療後の累積生存率に影響するとの報告を散見する。目的: 高齢者消化管癌手術における術前併存疾患と予後との関連につき解析する。対象: 2016 年 1 月〜2018 年 5 月,75 歳以上の胃癌・大腸癌に対する手術を施行した 83例。方法: 術前併存疾患の他,年齢,性別,BMI,手術時間,出血量,開腹 /腹腔鏡,化学療法の有無,R などの各種臨床病理学的因子につき overall survival(OS)を検討する。併存疾患の評価には Charlson comorbidity index(CCI)を用いる。結果:全 83 例の OS 比較では,R(p =0.0002)が独立した予後因子で,R0/R1 症例 67 例では CCI が独立した予後因子(p=0.031) となる。1 年以内他病死率は CCI≧4 では 11.0%で,CCI≦3 の 1.4%と比べ有意に高かった(p=0.028)。考察: CCI は,併存疾患から予後を予測する方法として報告される。本研究でも R2 を除き,CCI≧4 が高齢者消化管癌術後の予後予測因子となった。 -
ESD 後 9 か月で肝転移を来した直腸早期癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 歳,女性。大腸ポリープフォロー目的の下部消化管内視鏡検査にて直腸 S 状部に早期癌を指摘され,内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)が施行された。病理組織学的所見では追加切除の適応であったが,経過観察を強く希望された。ESD 後 9 か月の CT で肝 S6 に転移巣の出現を認め,追加切除を希望された。直腸癌異時性肝転移と診断し,腹腔鏡下高位前方切除術,肝部分切除術を施行した。病理組織学的所見では原発巣に癌の遺残はなく,リン パ節転移は認めなかった。また,肝病変は病理組織学的に直腸癌転移の所見で断端には癌が露出し,R1 と診断された。術中所見で取り切れているという判断と,患者との相談の結果,術後 UFT /LV の内服を 6 か月間行った。現在術後 4 年 6 か月が経過し,再発転移の所見を認めていない。大腸 SM 癌の肝転移はまれに報告されており,若干の文献的考察を加えて報告す る。 -
直腸癌術後に発生した吻合部 Implantation Cyst の 5 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description当院で経験した implantation cyst の 5 例を報告する。症例は 54〜91 歳までの男性 4 名,女性 1 名で,原疾患は 5 例すべてが直腸腫瘍であり,術式は低位前方切除 4 例,高位前方切除 1 例,全例で double stapling technique(DST)吻合が行われていた。発症までの期間は術後 3 か月〜6 年であった。腹部 CT ではすべての症例で吻合部に石灰化を伴う嚢胞性腫瘤を認めた。下部消化管内視鏡検査では,粘膜下腫瘍様の隆起を来した症例が 3 例認められた。血清 CEA 値は 2 例で高値であったが,3 例では基準値内であった。治療に関しては 4 例では自覚症状なく経過観察のみであったが,増大傾向があり肛門痛を来した 1 例に対しては経肛門的に穿刺吸引を施行し症状の軽快を得た。 -
体表 3D-Simulation CT Colonography を用いた小開腹下横行結腸切除術 D2 リンパ節郭清
46巻13号(2019);View Description Hide Description背景と目的: 腹腔鏡下横行結腸手術は難易度が高い。横行結腸の正中に近い病変であれば,腸切除は小開腹でも容易であるが,横行結腸の血管走行は多様性があり小開腹創での正確な D2 リンパ節郭清は困難である。3D-CT を用いて腹腔鏡下手術と遜色ない小開腹創にて横行結腸切除術 D2 リンパ節郭清を施行可能であったので報告する。対象と方法: 症例は 60 歳,女性。早期横行結腸癌にて EMR を施行した。pT1b(1.5 mm),pVM1 にて追加手術の方針となった。CT colonography(CTC) で病変を同定し,動静脈 3D と CTC を合成した simulation CTC(sCTC)を作成して支配血管の同定と D2 リンパ節郭清を simulation した。さらに腹部体幹表面の透過性のある 3D 画像を作成し(体表 3D),sCTC と合成した体表 3D-sCTC を作成して D2 リンパ節郭清が可能な最小限の開腹創を simulation した。結果: sCTC にて支配動脈は中結腸動脈右枝(MCA Rt), その伴走静脈は胃結腸幹(GCT)より分岐していることを同定した。次に体表 3D-sCTC を用いて手術創を simulation した。 MCA Rt 根部と GCT は臍上縁より約 5 cm 頭側にあることがわかり,臍上 5 cm と臍 2 cm の計 7 cm の小開腹創を design した。simulation どおり 7 cm の創で小開腹下横行結腸切除術 D2 リンパ節郭清を施行した。手術時間 2 時間 51 分,出血量は少量であった。合併症なく第 7 病日に退院した。最終診断は pT1bN0M0,Stage Ⅰとなり術後4年2か月が経過し,現在再発を認めない。臍上縁の創は約 3 cm に短縮し臍部の創も目立たない。結語: 体表 3D-sCTC を用いた小開腹下横行結腸切除術 D2 リンパ節郭清は,早期横行結腸癌において術式の選択肢になり得る。 -
胆石性胆嚢炎を契機に診断された乳癌術後胆嚢転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description悪性腫瘍の胆嚢転移はまれで,乳癌患者の剖検例での検討によると胆嚢転移は 4〜7%と報告されている。今回,胆石性胆嚢炎を契機に診断された乳癌術後胆嚢転移の 1 例を経験したので報告する。症例は 75 歳,女性。2009 年 4 月に左乳癌に対し乳房切除術を施行した(pT2N0M0,Stage ⅡA,scirrhous carcinoma,ly0,v0,ER 陽性,PR 陰性)。術後補助化学療法として letrozole が投与されたが,副作用にて中断した。2016 年 4 月に骨,胃,胸膜,腋窩リンパ節に転移を来し,anastrozole の投与が開始された。その後約 2 年間は病勢の進行なく経過していたが,2018 年 6 月,右季肋部痛を主訴に当院救急外来を受診した。精査の結果,胆石性胆嚢炎と診断し,経皮経肝的胆嚢ドレナージ術(percutaneous transhepatic gallbladder drainage: PTGBD)を施行した。PTGBD 11 日後に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。病理組織学的検査にて乳癌胆嚢転移 と診断され,原発巣は再精査にて invasive pleomorphic lobular carcinoma と診断された。術後,乳癌他臓器転移の病勢が進行し,胆嚢摘出術 7 か月後に死亡した。他臓器転移を伴う乳癌患者における胆嚢炎に対しては胆嚢転移の可能性を念頭に置 き,乳癌の病勢を十分に評価した上で治療方針を決める必要があると考えられた。 -
肝細胞癌異時性後腹膜転移,小腸転移の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 71 歳,男性。肝右葉を占める直径 18 cm の肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)に対し肝右葉切除術を施行した。切除標本の病理組織学的所見で poorly differentiated HCC,pleomorphic and spindle cell type と診断された。肝切除術後 10 か月の CT で,右肺に 12 mm の腫瘤陰影および左腎上極周囲脂肪織内に 19 mm および 11 mm の腫瘤陰影を認め,その 4 か月後には右肺の腫瘤は 44 mm に,左後腹膜腫瘤は 68 mm および 34 mm に増大したためそれぞれ切除し,ともに HCC の転移と病理組織診断された。肝切除術後 21 か月の CT で,膀胱周囲の後腹膜に 16 mm の腫瘤および空腸腔内に 25 mm の腫瘍を認め,その 1 か月後に空腸腫瘍による腸重積を来しそれぞれ切除し,ともに HCC の転移と病理組織診断された。肝切除術後 25 か月には左副腎転移,小腸吻合部および右肩甲骨周囲脂肪織内に転移を認めた。その後,左肺に多発転移を認め,肝切除術後 29 か月に死亡した。経過中に残肝再発は認められなかった。 -
部分的脾塞栓術(PSE)が集学的治療の継続に大きく貢献した大腸癌多発肝転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 69 歳,男性。切除不能同時性多発肝転移(H3)を伴った S 状結腸癌・上行結腸癌であった。前医での約2年6 か月の化学療法後に当院へ紹介となった。肝両葉に 8 個の転移巣を認めた。肝転移は増悪状態であったため,mFOLFOX6+ Bmab 2 コースを先行して病勢安定を確認した。化学療法開始 7 週目に Grade 4 の血小板減少を認め,血小板輸血を行った。10 週目に血小板輸血を併用して肝切除を施行した。術後に血小板減少(最低値 1.2 ×104/mL)が出現し,計 40 単位の血小板輸血を要した。骨髄穿刺を含む血液内科的検査では有意な所見を認めず,過去の化学療法による肝類洞障害を主因とする血小板減少症と診断した。肝切除 8 週後に部分的脾塞栓術(PSE)を施行した。PSE 後,2 週目に原発巣の根治切除を,さらに 19 週目に新規の肝転移巣に 2 回目の肝切除術を施行した。ともに血小板輸血は要さなかった。患者は初回治療から 45 か月 の現在,無再発生存中である。 -
当科における胃粘膜下腫瘍に対する LECS 7 例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery: LECS)は内視鏡と腹腔鏡を併用することにより最小限の切除範囲で腫瘍切除を行え,臓器機能温存の面で優れた術式である。当院では 10 年間に 28 例の胃粘膜下腫瘍(submucosal tumors: SMT)に対し手術を行い,そのうち 7 例に対し LECS を施行した。7 例は平均 53 歳,男女比 2:5,局在は穹窿部前壁 1 例,噴門部前壁 2 例,体上部前壁 3 例,体下部前壁が 1 例であった。管内発育型 3 例,壁内発育型が 4 例であり,全例術後合併症を認めず退院となった。腫瘍最大径は平均 21.1 mm,7 例のうち 5 例が胃消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)で,modified-Fletcher 分類高リスク 1 例,低リスク 2 例,超低リスク 2 例であり,高リスク 1 例に対し術後に imatinib 内服を行っている。現在のところ全例再発はなく経過している。 -
直腸癌術後異時性膵転移の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 69 歳,男性。直腸癌に対して,腹会陰式直腸切断術,右側方郭清を施行した(Rb,Type Ⅱ,全周性,fA, N2M0P0H0,fStage Ⅲb)。術後補助化学療法として XELOX を 6 コース施行した。直腸癌術後 1 年 10か月後に左肺転移を認め,左肺上大区域切除を施行した。その後は新規病変の出現なく経過観察されていたが,初回手術より6年8か月後に腫瘍マーカーの上昇を認め,浸潤性膵管癌が疑われ脾合併膵体尾部切除を施行した。病理組織学的には,免疫組織化学染色で CK7(−),CK20(+)であり,直腸癌膵転移と診断した。大腸癌膵転移切除症例は報告数が少ないものの比較的長期生存例も報告されている。耐術能があり他臓器に切除不能病変がなければ,積極的に外科的切除を行うことで長期生存も期待できる可能性があると考えられた。 -
乳癌術後 6 年目に発生した乳癌膵転移の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 43 歳,女性。37 歳時に左乳癌に対し左乳房切除を施行され,病理結果では浸潤性乳管癌,ER(+),PgR(+), HER2(1+),T2N0M0,Stage ⅡA であった。術後化学療法後,ホルモン療法を行っていた。しかし術後 6 年目の CT にて膵体尾部に腫瘍性病変を認めたため,精査加療目的に当院紹介となった。CT にて膵体部に約 0.9 cm の腫瘍性病変を認めた。原発性膵癌を最も疑い,膵体尾部切除術,D2 リンパ節郭清を施行した。病理組織学的には組織形態から乳癌との類似性が示唆され,免疫組織学的染色では ER(+),PgR(+),HER2(1+)と乳癌と一致しており,乳癌原発の転移性膵癌の診断となった。術後ホルモン療法を継続し,肺に小結節を認めるものの,特に増悪なく膵切除から約4年2か月生存中である。 -
膵小細胞癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 55 歳,男性。黄疸を主訴に当院へ紹介された。各種画像検査では膵頭部の腫瘤および肝内胆管,総胆管の拡張を認めた。MRCP では遠位胆管に悪性狭窄像を認め,内視鏡的減黄術を行った。擦過細胞診,胆汁細胞診,生検では悪性所見を得られなかったが,通常型膵癌を強く疑い膵頭十二指腸切除術を行う方針とした。肝転移や腹膜播種は認めなかったが, 門脈浸潤を認め門脈合併切除を行った。術後病理組織学的検査ではシナプトフィジン陽性,CD56 陽性およびクロモグラニ ン A 陽性から膵小細胞癌の診断を得た。門脈浸潤およびリンパ節転移を認めた。術後の PET-CT 検査で右肺門リンパ節転移を認め,cisplatin(CDDP)+irinotecan(CPT-11)(PI)療法を開始した。6 コース施行し CR を得るも 1 年後に再発し, 二次治療として amrubicin(AMR)療法および放射線療法を開始した。その後,左副腎転移,脳転移を来し,初回手術より 2 年 2か月後に死亡した。膵小細胞癌は一般的には予後不良であり,外科的切除および化学療法などの集学的治療を要する。 -
Nivolumab 投与が奏効し 5 年生存が得られている高度進行胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 74 歳,男性。腹腔洗浄細胞診陽性胃癌に対し胃全摘術,D2 リンパ節郭清術を施行した。術後1年6か月目に施行した CT 検査にて肝門部に 30 mm 大の軟部影が出現 し,#12b リンパ節再発と診断した。capecitabine/oxaliplatin (CAPOX)療法による抗癌剤治療を開始したところ,4 コース後の CT 検査にて縮小傾向を認め,患者の強い希望もあり抗癌剤治療は休止となった。しかしながら,術後2年9か月目には軟部影は再増大し,肝左葉への圧排・浸潤が疑われた。抗癌剤治療を再開する方針とし,ramucirumab 単剤投与を行った。7 コース後には軟部影はさらに増大した。irinotecan(CPT11)にレジメン変更したが,3 コース後には軟部影は 80 mm 大に増大し,病勢コントロールが効かない状態となった。術後 3 年 8 か月目に nivolumab にレジメン変更したところ,8 コース後には軟部影は若干の縮小傾向を認め,23 コース後には 40 mm 大まで縮小し抗腫瘍効果 PR が得られた。胃癌治療開始から術後 5 年となるが,明らかな有害事象なく生存加療中である。 -
ニボルマブが著効し胃全摘施行後も継続投与し無増悪生存を得られている胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 80 歳台,女性。胃癌,cT4bN3M1(LYM),cStage ⅣB と診断した。一次治療として SOX 療法を開始したが,骨髄抑制により 2 コースで PD 中止となった。二次治療は weekly PTX 療法を行ったが,1 コースで Grade 3 の好中球減少・血小板減少を来し,以後骨髄抑制が遷延したため中止となった。三次治療でニボルマブを投与し著効していたが,途中で薬剤性肺炎が疑われ休薬した。その間に腫瘍出血を来し,胃全摘術を行った。術後はニボルマブ投与を再開し,現在計 30 コースを終了しているが明らかな有害事象はなく無増悪生存を得ている。ニボルマブの著効例で原発巣の切除に至った報告はなく本症例では原発巣切除を行い,著効例の病理組織学的所見が観察可能であった。今回,ニボルマブが著効し胃全摘施行後も継続投与し無増悪生存を得られている胃癌の 1 例を経験した。 -
Pembrolizumab を含む集学的治療を行い組織学的に CR が得られた膀胱癌肝転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 歳台,男性。膀胱癌,pT1N0M0 に対し経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行され,術後 14 か月で肝転移を来した。生検で膀胱癌肝転移の確定診断後,gemcitabine+cisplatin(GC)療法およびラジオ波焼灼を行ったが増悪し,セカンドラインの pembrolizumab へ変更した。8 コース投与時点で既存腫瘍は画像上縮小し,新規病変を認めず肝転移巣を切除した。組織学的に complete response(CR)が得られていた。術後 6 か月現在,再発や新規病変の出現を認めていない。 -
直腸癌術後局所再発に対する化学放射線療法により長期寛解状態を維持している 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 63 歳,男性。肛門周囲膿瘍を伴う進行直腸癌に対し回腸人工肛門造設施行後,術前補助化学療法として mFOLFOX6 を 3 コース行い Miles 手術+D3 郭清,回腸人工肛門閉鎖術を施行した。病理診断は tub2,pAI(prostate) , /pN0(0 /12),ND(v+),fStage Ⅲa であった。術後会陰創部の離開,壊死物質の排液を認め,術後 4 か月目に局所再発を認めた。臀部痛に対し 40 Gy の緩和照射後,Bmab+mFOLFOX6 による継続併用化学療法を施行した。再発巣の著明な縮小効果を認めた。2015 年 4 月より Pmab+FOLFIRI へ変更,2016 年 1 月より 3 年間の隔月投与を行い休薬した。再発治療開始より約 5 年間経過するが寛解状態を保っている。 -
虫垂腺癌術後に吻合部再発と診断された神経内分泌癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 55 歳,男性。穿孔性虫垂炎に対して他院で開腹虫垂切除術を施行し,虫垂腺癌の診断となった。回盲部切除術を追加し,術後補助化学療法を施行した。術後2年6か月で左腸骨骨転移を来し,放射線療法を施行した。その後,腹膜播種,吻合部再発も出現したため,全身化学療法を行ったが不応となった。二次治療へ移行するも吻合部再発部の穿孔を来したため,治療目的に当院紹介となった。保存的加療を行ったが改善を認めなかったため,結腸部分切除術を施行した。術後病理組織学的検査では神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma: NEC)と診断され,大腸 NEC の腹膜播種の診断で化学療法を行った。吻合部再発を疑い治療を行っても奏効しない場合は,新規癌の発症や変異・転化も念頭に切除も含めた治療方針を検討することで,quality of life(QOL)や予後の改善が得られる可能性があると考えられた。 -
エリブリン化学療法により Biology 変化を来した進行乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description進行乳癌の治療において,全生存期間(OS)benefit を有する薬剤選択肢は限定されている。エリブリンは国際第Ⅲ相試験で OS 延長が認められた薬剤であるが,癌微小環境調整作用がその機序にかかわっているものと考えられている。一方で,治療に伴う biology 変化は breast cancer subtype discordance として知られている。今回,エリブリン化学療法により biology 変化を来した進行乳癌の 1 例を経験したので報告する。症例は 54 歳,女性。左乳房にしこりを自覚し近医を受診,精査加療目的に当院を受診した。超音波検査では,左乳腺 C 区域を主座とした巨大腫瘤を認め,腋窩に癒合する腫大したリンパ節を認めた。針生検にて浸潤性乳管癌(ER 強陽性,PgR 陰性,HER2 陰性,Ki-67 低発現)が確認された。CT 検査では,多発肺転移が認められた。左進行乳癌,cT4N2M1,stage Ⅳ,Luminal A の診断に対し letrozole 投与を行ったが,6 か月後に原発巣および腋窩リンパ節の増大を認めた。ここでエリブリン化学療法を開始し部分奏効が得られたが,11 cycles で腋窩に新規リンパ節転移が出現した。原発巣と腋窩リンパ節の治療効果の乖離が認められたために再生検を施行したところ,主病巣,腋窩リンパ節ともに ER 強陽性,PgR 陰性,HER2 陽性,Ki-67 低発現と HER2 陽転化が認められた。 -
長期生存が得られた同時性肝転移を伴う進行胃癌の 2 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description同時性肝転移を伴う胃癌に対し術後長期生存が得られた 2 例を経験したので報告する。症例 1 は 65 歳,男性。貧血精査で胃前庭部に 5 型の進行癌が認められ,横行結腸への浸潤が疑われた。また,肝 S2 に径 15 mm の転移を疑う結節が認められた。非切除因子が認められなかったため肝部分切除,横行結腸部分切除,幽門側胃切除術を行った。術後は S-1 による化学療法を 14 か月行った。術後 7 年を経過し無再発生存中である。症例 2 は 67歳,女性。貧血精査で胃体下部小弯に 2 型 の進行癌が認められ,また肝 S8 に径 12 mm の転移を疑う結節が認められた。非切除因子が認められなかったため肝部分切除,胃全摘,胆摘,脾摘術を行った。術後は S-1 による化学療法を 38 か月行った。術後 6 年を経過し無再発生存中である。 胃癌肝転移に対する根治手術は明確なエビデンスはないものの,転移個数の少ない症例では切除を考慮してもよいものと思 われた。 -
再発治療により長期生存が得られている輪状膵合併十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳台,女性。発熱,全身倦怠感を主訴に受診した。精査で閉塞性黄疸と腫瘍マーカーの上昇,輪状膵,総胆管下部の狭小化を認めた。腫瘍マーカーの上昇と経皮経肝胆道ドレナージ造影による下部胆管の壁不整より悪性疾患を疑い,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。十二指腸乳頭部腺扁平上皮癌,pStage ⅠA の診断となった。術後補助化学療法として TS-1 を 1 年間施行した。術後3年9か月に造影 CT で傍大動脈リンパ節腫大と PET-CT で FDG 集積を認め,傍大動脈リンパ節再発と診断した。再発治療として GEM+CDDP 療法を施行したが,血小板減少を認めたため計 10 コース で終了となり,放射線療法 50 Gy を施行した。その後は血小板減少に注意を払いながら,TS-1 を継続し術後 5 年 9 か月の時点で生存中である。 -
血性乳頭分泌を主訴に来院し切除生検で診断された DCIS の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description血性乳頭分泌を主訴に来院し,術前の細胞診の結果は良性であったが,切除生検で ductal carcinoma in situ(DCIS)の診断に至った症例を経験したので報告する。症例は 65 歳,女性。右の血性乳頭分泌を主訴に来院した。身体所見では右乳頭より単孔性に血性分泌物を認めたが,腫瘤は触知しなかった。マンモグラフィで右 MO 領域に局所的非対称性陰影あり。超音波検査で右 AC 領域に液面形成を伴う 1.5×1.1 cm 大の嚢胞性病変が描出された。乳房 MRI 検査では血液成分を伴う嚢胞として矛盾のない腫瘤を右 AC 領域に認めた。乳頭分泌物の擦過細胞診および AC 領域腫瘤に対し吸引細胞診を施行した。結果はいずれも良性であったが,超音波画像所見と年齢より悪性を否定できず,切除生検の方針とした。乳管腺葉区域切除+腫瘤摘出術を施行し,low grade DCIS と診断された。追加で右乳房切断術を施行した。術後病理組織学的所見は DCIS であり,現在術後内分泌療法を継続中である。 -
上腸間膜動脈浸潤を伴う局所進行膵癌に対して集学的治療が奏効し長期生存が得られた 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 43 歳,女性。上腹部痛を主訴に近医を受診した。腹部超音波検査にて膵体部に 3 cm 大の結節と CA19-9 高値(266 U /mL)を指摘され,精査加療目的に当院紹介となった。腹部造影 CT にて膵体部の腫瘍は上腸間膜動脈(SMA)に全 周性に浸潤しており,局所進行切除不能(UR-LA)膵癌と診断し,化学放射線療法を施行[RT 50.4 Gy,gemcitabine(GEM) +TS-1]した。治療後に CA19-9 の正常化と PET-CT でも腫瘍部に異常集積を認めなかったため,膵体尾部脾合併切除術 を施行した。術後補助化学療法(TS-1)を 6 か月施行するも術後 10 か月目に局所再発を来したため,GEM 単独化学療法を 開始した。8 か月施行するも PD となったため,術後1年7か月目より GEM+nab-PTX を開始した。以後約 1 年 10 か月病 巣コントロールは良好であったが,局所再発巣が再燃し術後4年2か月目に原病死した。 -
術前診断に苦慮した嚢胞性胆管性過誤腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description嚢胞性胆管性過誤腫は von Meyenburg complex の別称としても知られ,剖検での発見率は 0.2〜2.8%とされる比較的まれな疾患である。本疾患は良性疾患に分類されるが,臨床上,悪性疾患との鑑別はしばしば困難である。今回,術前診断に苦慮した嚢胞性胆管性過誤腫の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。症例は 63 歳,男性。定期検診での腹部超音波検査にて肝内胆管拡張を指摘され,精査加療目的に当院を受診した。血液検査では肝機能,腫瘍マーカー (CEA,CA19-9,AFP,PIVKA-Ⅱ)は正常範囲内であった。腹部 CT 検査と腹部 MRI 検査では,肝内胆管拡張と肝内に肝門部胆管との交通のある嚢胞性病変を認めた。嚢胞性病変内には明らかな乳頭状部位や充実部位を認めなかったが,胆管内 乳頭状腫瘍(intraductal papillary neoplasm of the bile duct: IPNB)が疑われた。内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography: ERCP)では肝内胆管拡張を認めたが,胆管と嚢胞性病変との交通は不明瞭であった。 胆汁細胞診で class Ⅱ,胆管擦過細胞診では class Ⅲの結果であった。画像検査からは悪性病変を否定できなかったため,肝切除を行う方針とした。術中超音波検査では肝左葉に限局した肝内胆管拡張と嚢胞性病変を認め,肝左葉切除を施行した。切除標本の病理結果は嚢胞性胆管性過誤腫であり,悪性所見は認めなかった。現在,初発時から1年9か月経過し,無再発経過中である。 -
術前化学放射線療法後に側方リンパ節の一つに腫瘍細胞が残存していた進行下部直腸癌の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 45 歳,女性。下痢を主訴に近医を受診した。下部消化管内視鏡検査で直腸 Rb から肛門管にかかる 3 型腫瘍を認め,生検で中分化型腺癌の診断となり,当科紹介となった。CT 検査では下部直腸から肛門管に不正な壁肥厚があり,腸間膜内・側方リンパ節が腫脹していた。明らかな遠隔転移は認めなかったため,術前化学放射線療法(45 Gy/25 Fr,S-1 80mg /m2/day)を行ったところ著効し,内視鏡で腫瘍は瘢痕化,CT 検査でも原発腫瘍やリンパ節の縮小が認められ,画像上 cCR であった。手術は直腸切断術 D3 郭清,両側側方リンパ節郭清を行い,病理組織学的所見では原発巣は瘢痕化しており, 腫瘍細胞の残存はなかった。リンパ節も複数で腫瘍が消失したと思われる変化を認めたものの,側方リンパ節 1 個に viable な腫瘍細胞が確認された。化学放射線療法後に原発巣は ypT0 であったが,側方リンパ節 1 個に癌の遺残を認めており,このような症例は非常にまれである。
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同時性肝転移を伴う胃癌に対して S-1+Oxaliplatin 療法が奏効し Conversion Surgery を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 79 歳,男性。貧血精査のため前医で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃体部小弯に 3 型腫瘍を認め当院に紹介となった。生検で Group 5,por1,HER2: 0(−)の診断であった。腹部造影 CT では胃体部小弯に胃壁肥厚と胃小弯リンパ節の腫大,肝 S6 に 50 mm 大の辺縁造影効果を伴う腫瘍を認め,同時性肝転移を伴う胃癌,MU,type 3, cT4aN2M1(Hep),cStage Ⅳと診断した。一次治療として S-1+oxaliplatin 療法を開始した。4 コース目で食思不振による脱水症状が出現し,化学療法の継続が困難となった。原発巣,リンパ節,肝転移とも著明に縮小したため,conversion surgery の方針とし,胃全摘,Roux-en-Y 法再建,肝 S6 部分切除術を施行した。組織学的治療効果は原発 Grade 2a,肝臓 Grade 3 であり,ypT3N0M0,ypStage ⅡA,R0 の術後診断であった。術後化学療法は施行せず,術後 3 年経過したが無再発生存中である。同時性肝転移を伴う胃癌に対しては化学療法が標準治療であるが,本症例のように化学療法が奏効し転移個数が少数で R0 切除が可能であれば,肝切除術を施行することで長期予後が得られる可能性があると考えられた。 -
膵癌術後 24 か月目に肺転移,臍転移に対し切除を行った 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description悪性腫瘍の臍転移は Sister Mary Joseph's nodule(SMJN)と呼ばれ,比較的まれな転移とされている。今回,膵癌臍転移に対し加療を行った 1 例を経験したので報告する。症例は 86 歳,女性。20XX 年に膵体部癌に対して,膵体尾部切除術・D2 リンパ節郭清を施行した。病理組織学的診断は T2N1aM0,pStage ⅡB であった。高齢であったことから,術後補助化学療法は施行せずに経過観察していた。術後 18 か月目に肺転移を来し,左上葉部分切除を施行した。肺転移巣切除後も腫瘍マーカーの上昇を認め,精査にて膵癌の臍転移と診断した。他に再発,転移を疑わせる所見は認めず,術後 24 か月目に腹壁腫瘍切除術および腹壁形成術を施行した。術中,明らかな腹膜播種は認めず,腹水細胞診は陰性であった。腫瘍は皮下組織を中心に存在しており,原発巣や腹膜播種からの浸潤の可能性は低いと考えた。臍転移切除後,腫瘍マーカーは一度減少したが,再度上昇を認めた。精査にて腹膜播種を認め S-1 内服による化学療法を開始したところ,腫瘍マーカーの正常化を認めた。 -
ゲムシタビン+シスプラチン化学療法が完全奏効した十二指腸乳頭部癌術後肝転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description切除不能胆道癌に対する化学療法は,ゲムシタビンとシスプラチン併用療法(GC 療法)が第一選択であるが完全奏効(complete response: CR)はまれである。今回,切除後多発肝転移を来した十二指腸乳頭部癌に対して GC 療法を施行し,CR を得た症例を経験した。症例は 69 歳,男性。2017 年 12 月に腹腔鏡下亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行し,Stage ⅡA (pT3aN0M0)であった。術後 5 か月後 2018 年 5 月に多発肝転移を認め,6 月から GC 療法を開始した。Grade 3 の好中球減少のため 1 コース施行後 80%,4 コース施行後 60%に減量した。3 コース施行後,8 月の腹部造影 CT にて肝転移は縮小し PR となり,7 コース施行後 10 月の腹部造影 CT にて肝転移は消失し CR となった。9 コース施行後 12 月の腹部造影 CT でも肝転移は認めなかった。英国と本邦での第Ⅲ相試験でも CR は各々 1 例(0.6%)と 0 例であり,極めてまれではあるが CR が得られる可能性が示唆された。 -
S 状結腸癌,多発肝転移に対して CAPOX+Bev 療法中に食道静脈瘤破裂を来した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,男性。S 状結腸癌,多発肝転移にて capecitabine+oxaliplatin(CAPOX)+bevacizumab(Bev)療法を施行中であった。効果判定は PR であり,化学療法継続中であった。CAPOX+Bev 療法 11 コース施行 17 日後に吐血,ショッ クバイタルとなり,食道静脈瘤破裂を来した。緊急 endoscopic variceal ligation(EVL)にて止血し,術後 43 病日に軽快退院 となった。oxaliplatin を含む化学療法により門脈圧亢進症を発症し,脾腫,静脈瘤を来すことがまれであると報告されている。早期発見のためのバイオマーカーなど,さらなる症例の集積が必要である。 -
全身化学療法後に治癒切除し得た切除不能多発肝転移を伴う進行直腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 61 歳,男性。排便時出血の精査目的に施行した CT で多発肝腫瘤と直腸壁肥厚を指摘された。精査の結果,直腸癌多発肝転移,cT3(A)N1M1a(H2),cStage Ⅳと診断した。bevacizumab 併用全身化学療法を施行後,腫瘍は原発巣・転移巣ともに縮小を認めており,原発巣切除後に二期的に肝転移巣切除を施行した。いずれも組織学的効果判定は Grade 2,病理学的に治癒切除であった。現在,外来にて経過観察中である。 -
術前 Capecitabine+Oxaliplatin(CapeOX)療法が奏効した肝転移および傍大動脈リンパ節転移を伴う 進行胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 60 歳,男性。3 か月前から続く心窩部不快感のため近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で幽門前庭部に 2 型進行胃癌を指摘され,当科に紹介となった。CT で肝 S6 に 14 mm 大の腫瘤を認め,また幽門周囲リンパ節および傍大動脈リンパ節の腫大を認めた。Stage Ⅳ胃癌と診断し,術前化学療法として capecitabine+oxaliplatin(CapeOX)療法を 3 コー ス施行した。主病巣,リンパ節および肝腫瘤はいずれも縮小を認めたため,開腹幽門側胃切除術(D2+No. 16 リンパ節郭清)および肝部分切除術を施行した。組織学的効果判定は Grade 2 であり,肝腫瘤および No. 16 リンパ節は癌の遺残を認めず根 治切除し得た。術後は補助化学療法として capecitabine を投与し,術後 10 か月経過した現在,無再発生存中である。 -
肺転移再発巣を三度切除した遠位胆管癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 68 歳,男性。黄疸・肝機能障害を契機に指摘された遠位胆管癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行し, pT3aN1M0,pStage ⅡB であった。その後,ゲムシタビンによる術後補助化学療法を 1 年間施行した。初回手術から1年7 か月後の CT 検査にて,左肺に径 6 mm 大の増大傾向にある結節影を指摘された。原発性肺癌と遠位胆管癌肺転移との鑑別が困難であったため,胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した。切除標本の病理組織は遠位胆管癌肺転移であった。その後 10 か 月間 S-1 による肺切除後の補助化学療法を施行し経過観察していたが,右肺に 2 個の結節影を認め,胸腔鏡下右肺 S6 区域切除術を施行した。その 8 か月後には左肺に結節影を認め,胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した。切除標本の病理組織はいずれも遠位胆管癌肺転移であった。その後 9 か月,原発巣手術から 4 年 11か月経過した現在,無再発生存中である。胆管癌 の転移再発に対する標準治療は全身化学療法であるが,本症例のように切除後の予後が比較的良好な症例も散見されること から,外科的切除は胆道癌転移再発に対する治療選択肢の一つとなる可能性が示唆された。 -
直腸 S 状部癌切除 10 年後に出現し切除し得た肝転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 73 歳,女性。63 歳時に直腸 S 状部癌(stage Ⅱ)に対し高位前方切除術を施行した。術後 5 年無再発で定期フォローアップを終了したが,以後も 1〜2 年ごとに大腸ポリープに対し内視鏡的粘膜切除術を施行していた。直腸 S 状部癌切除後 10 年 6 か月時の採血で,CEA 5.5 ng /mL と軽度高値を認めた。胸腹部造影 CT で肝 S8 に径 3 cm の辺縁を中心に増強される不整形腫瘤を認めた。MRI,PET-CT の結果と併せて肝内胆管癌または転移性肝癌を疑い,いずれも切除術が治療の第一選択となるため,直腸 S 状部癌術後 10 年 8 か月時点で肝 S8 亜区域切除術を施行した。切除標本の HE 染色では高分化〜中分化の管状腺癌で,免疫染色では CDX-2 陽性,CK20 陽性,CK7 陰性であり,直腸癌の転移と診断された。大腸癌切除後 10 年を超えての転移出現はまれであるが,腫瘍マーカー上昇を認めた場合は転移の可能性を念頭に精査する必要があると思われる。 -
腸重積を契機に発見された盲腸癌に対して腹腔鏡下に手術し得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 75 歳,女性。右下腹部痛を主訴に前医を受診した。来院時の身体所見では右下腹部に腫瘤を触知し軽度圧痛を認めたが,腹膜刺激症状はなかった。CT 検査では上行結腸に盲腸,回腸の一部が嵌入しており,先進部に壁肥厚を認めた。 閉塞状態ではなかったため待機的に手術を行った。術前診断は盲腸癌による腸重積と考え腹腔鏡下回盲部切除術,D3 リンパ節郭清を実施した。術中所見では腫瘍が上行結腸内に嵌入していたが,鉗子により先進部を圧迫することで整復が可能であった。病理診断は Type 2,muc>tub1,pT4aN0M0,pStage Ⅱb であった。術後経過は良好で翌日より飲水を開始し,2 日目から食事を開始したが特に合併症なく経過し,術後 9 日目に退院となった。盲腸癌に合併した腸重積は比較的まれな疾患だが,腹腔鏡下に整復,手術可能であった症例を経験したため報告する。 -
胃癌直腸転移の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description今回われわれは,比較的まれな胃癌直腸転移の 1 例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。症例は 82 歳, 女性。75 歳時,胃癌に対して胃全摘術を施行された[UM,8×8 cm,Type 4,T3(SE),por2,ly3,v1,N1,D2,H0,P0, CY0,M(−),fStage ⅢA]。外来経過観察中に便通異常があり大腸内視鏡検査を行ったところ,直腸 S 状部に約半周性の粘膜面不整な陥凹性病変を認めた。生検の結果,低分化腺癌であり,免疫染色では MUC2(−),MUC5AC(+),CDX2(+), CA125(−)であった。PET 検査では,直腸に限局性の FDG 高集積を認めるのみであった。以上から胃癌の直腸への孤立性転移と診断し,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した。病理組織学的結果は,por /sig と考える異型細胞が浸潤しており,免疫染色の結果も以前の胃癌の組織と一致していた。術後約 20 か月明らかな再発なく経過観察中である。 -
消化管出血で発見された同時多発性胃 GIST に対して腹腔鏡下胃局所切除を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 80 歳台,女性。著明な貧血を主訴に来院した。上部消化管内視鏡検査(EGD)で,胃内の血液貯留と胃体上部後壁に 4 cm 大の delle を伴う粘膜下腫瘍(SMT)・胃体上部前壁に 2 cm 大の SMT を認めた。造影 CT ではどちらも遷延性の造影効果を認め,後壁病変は管内発育,前壁病変は管外発育であった。多発する胃 SMT に対して,腹腔鏡下胃局所切除を施行した。前壁病変は自動縫合器で切除し後壁病変は腹腔内から同定できず,内視鏡で確認しながら切除し全層で縫合閉鎖した。病理組織学的検査で,胃体上部後壁病変は 40 mm 大で粘膜下層に紡錘形の異型細胞が増生し,免疫染色では c-ki(t+), CD34(+),S-100(−),desmin(−),Ki-67 は 1%未満であった。前壁病変は 20 mm 大で,HE,免疫染色ともに類似し た所見であったが,一部で平滑筋への分化を示した。平滑筋への分化の差で,原発性同時多発性の胃 GIST(low risk)と診断した。 -
術前メシル酸イマチニブ投与により肛門機能温存が可能であった直腸 GIST の 1 手術
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 81 歳,女性。大動脈弁狭窄症術前の CT 検査で直腸腫瘤を指摘された。下部消化管内視鏡検査で肛門縁より 2 cm の下部直腸に直径約 60 mm 大の粘膜下腫瘍があり,生検にて GIST の診断となった。肛門括約筋近傍で周囲臓器への浸潤が疑われたが,患者の肛門機能温存の希望が強かったことより,neoadjuvant chemotherapy(NAC)としてイマチニブ 400 mg /日投与を行った。投与約 3 か月後,腫瘍縮小率 36.6%(PR)となったが,腫瘍縮小速度は低下したため経肛門的腫瘍切除,一次的人工肛門造設を行った。術後経過良好であり,6 か月後に人工肛門閉鎖,現在補助化学療法としてイマチニブ 内服を継続しながら再発なく経過している。 -
当院における大腸癌卵巣転移に対する検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description大腸癌の卵巣転移は予後不良とされているが,近年の化学療法の進歩とともに長期予後を得られる症例もある。本研究では当院で 2000 年 4 月〜2017 年 12 月に大腸癌卵巣転移として診断・加療された症例を対象として,全生存期間(overall survival: OS)に影響を与えた因子を検討した。対象は 20 例で,生存期間中央値 18.5 か月,5 年生存例は認めなかった。20 例中 18 例で卵巣切除が施行され,13 例(72%)で卵巣転移切除後に化学療法が施行され,そのうちの 5 例では分子標的薬が併用された。卵巣転移診断後 OS への影響を検討したところ,卵巣以外の他臓器転移,閉経前,原発腫瘍の組織型が未分化癌,卵巣転移巣が非切除が予後不良因子であった。大腸癌卵巣転移に対し卵巣切除は予後を改善する可能性があるが,分子標的薬の予後改善効果は認められなかった。 -
大腸癌切除症例における術前免疫・栄養指数と短期成績,長期成績に関する検討
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: われわれの施設における大腸癌治療患者の術前免疫・栄養指数と治療成績について検討した。対象・方法: 2007〜2013 年までに根治的手術を行った pStage Ⅱ,Ⅲ大腸癌症例のうち,免疫・栄養指数として好中球 /リンパ球比(NLR), 血小板 /リンパ球比(PLR),リンパ球/単球比(LMR),小野寺式栄養指数(PNI)を測定し得た 196 例を対象とし,術後合併症発症および長期成績との関連を検討した。結果: 術後合併症率は単変量・多変量解析では LMR のみが独立したリスク因子 であった。全生存率において,単変量解析では NLR,LMR,PNI が予後因子であり,多変量解析においては PNI のみが独立予後因子であった。結語: 大腸癌治療における術後合併症の発症リスクの予測に LMR が有効であり,長期予後の予測については PNI が有効であった。 -
眼症状を来し失明に至った転移再発乳癌の 2 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description眼症状を来し失明に至った転移再発乳癌の 2 例を経験した。症例 1 は 26歳,女性。右乳癌,cT2N1M0,stage ⅡB,トリプルネガティブに対し術前化学療法後に手術を施行した。術後 1 年で骨転移や水腎症あり。化学療法を施行するも術後 2 年目に眼痛と頭痛が出現し,外眼筋への転移を疑われた。両側眼窩に放射線治療を施行したが視力低下が進行し失明,眼症状発症後 1 か月で死亡した。症例 2 は 42 歳,女性。右乳癌,cT4N3M1(骨),stage Ⅳ,トリプルネガティブで化学療法中, 複視で眼科を受診した。精査で視神経乳頭腫脹があり癌性髄膜炎によるものが疑われた。徐々に視力低下,失明に至った。 眼症状発症後 2 か月で死亡した。乳癌の眼窩転移はまれである。両症例とも画像上明らかな中枢神経転移は認めなかったが, 急激な視力低下から失明に至り,QOL 低下が著しかった。若年のトリプルネガティブでは急速な症状進行の可能性があり, 注意が必要である。 -
当教室における 85 歳以上の高齢者胃癌に対する手術成績の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description目的: 85 歳以上高齢者胃癌の手術成績を検討した。方法: 2008〜2019 年に当教室で胃切除を行った 85 歳以上の胃癌 27 症例の短期・長期成績を調査した。結果: 年齢中央値 87(85〜94)歳,併存疾患を 17 例(63%)に認めた。胃全摘 12 例,幽門側胃切除 14 例,噴門側胃切除 1 例,ガイドラインに準拠した郭清は 13 例(48%)で,R0 /R1/R2 は 23/2/2 例であった。 術後合併症を 16 例(59%)(外科的合併症 7 例,全身合併症 12 例)に認めたが,Clavien-Dindo 分類 Grade Ⅲa 以上の重篤な合併症は 1 例のみで,在院死も認めなかった。癌再発 5 例,原病死 4 例,他病死 2 例を認めた。全症例の 1 /2/3 年全生存率(%)は 91.7 /79.4/63.2,R0/R1/R2 症例の 3 年全生存率(%)は 76.2/35.4/0,郭清がガイドライン準拠/非準拠の 3 年全生存率(%)は 100 /36.6 であった。結語: 高い術後合併症発生率に注意を払う必要があるが,ガイドラインに準拠した郭清や R0 手術が長期予後改善に有用である可能性が示唆された。
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肝切除術を施行した胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)の 2 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例 1 は 70 代,男性。近医で超音波検査にて肝外側区域に腫瘤を指摘された。当院での精査で肝 S3 に局在する径約 3 cm の内部に乳頭状の充実性構造を伴う嚢胞性病変とその周囲の肝内胆管の拡張を認めた。内視鏡的逆行性胆道膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography: ERCP)で病変と胆管の交通は明らかではなかったが,胆管内乳頭状腫瘍(intraductal papillary neoplasm of bile duct: IPNB)が疑われ肝左葉切除術を施行した。病理組織学的検査では高度異形から上皮内癌に相当する胆膵型の異型上皮細胞からなる腫瘍組織を肝内胆管内に認め,IPNB と診断された。症例 2 は 70 代,女性。近医で超音波検査にて肝左葉に径約 8 cm の嚢胞性病変を指摘された。当院での精査で肝 S4 に胆管と交通を有する病変を認め,胆汁細胞診で悪性所見を認めた。悪性 IPNB の術前診断の下,嚢胞ドレナージを行った後に肝左葉切除術を施行した。病理組織学的検査では胆管内に主座を置き,周囲間質への浸潤を伴う胆膵型の異型上皮細胞からなる腫瘍を認め, IPNB 関連の浸潤癌と考えられた。 -
直腸癌手術における SSI 発生のリスク因子の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description直腸癌手術で surgical site infection(SSI)は発症頻度が高く重症化しやすい。そのため周術期のリスク因子に基づいた感染予防対策は重要である。今回,直腸癌手術における SSI 発症のリスク因子について検討した。2015 年 1 月〜2016 年 12 月までに当科で施行した直腸癌根治切除症例 66 例を対象に後方視的に検討した。結果は年齢中央値 66 歳,性別は男性 38例,女性 28 例,BMI 中央値 21.3 kg /m2,術式は開腹 15 例,腹腔鏡 51 例,人工肛門なし 24 例,あり 42 例,手術時間中央 値 367 分,出血量 100 mL,Controlling Nutritional Status(CONUT)スコア中央値 2,SSI は 20 例であった。単変量解析で 手術時間(p=0.004,OR: 1.005,95%CI: 1.002-1.009),CONUT スコア(p=0.035,OR: 1.386,95%CI: 1.023-1.878)に有意差を認め,多変量解析は手術時間(p=0.003,OR: 1.006,95%CI: 1.002-1.010),CONUT スコア(p=0.025,OR: 1.508, 95%CI: 1.053-2.161)が独立したリスク因子であった。直腸癌手術の周術期 SSI リスク因子で単変量・多変量解析とも術前 因子では唯一 CONUT スコアで有意差を認め,術前に CONUT スコアを評価することは SSI 発症を予測する上で有用である可能性が示唆された。 -
Trastuzumab 併用化学療法により完全寛解が得られた HER2 陽性再発胃癌の 2 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例 1: 手術時 67 歳,男性。幽門側胃切除後(pT2a,pN2,M0,pStage ⅢA),TS-1+paclitaxel を 4 コース行い,次いで TS-1 を 2 年間投与した。術後 3 年 5 か月,縦隔リンパ節転移を来し TS-1+CDDP を導入した。術後 5 年 10 か月,コン トロール不良となり,docetaxel,irinotecan(CPT-11)治療を行うも効果なく,HER2 反応陽性を確認し,術後 6 年 9 か月 capecitabine+CDDP+trastuzumab(XPT)を導入した。XPT 導入1年6か月後には CR となり,さらに 6 か月間 trastuzumab 併用化学療法を行い中止したが,術後 12 年 3 か月 CRを維持している。症例 2: 手術時 59 歳,女性。胃全摘後(pT3, pN3a,M0,pStage ⅢB),TS-1 を 1 年 8か月投与したが傍大動脈リンパ節再発を来したため,XPT 治療を開始した。治療が奏効し XPT と capecitabine+docetaxel(XT)の交互投与としたが,術後3年5か月リンパ節再増大を来した。そこで XPT,XT 交互投与に加え,強度変調放射線照射を施行したところ,術後 5 年 8 か月 CRとなった。以後 XT を継続し,術後 9 年 2 か月 CRを維持している。 -
外来で施行する Short Hydration 法を用いた胃癌 S-1+CDDP 療法の腎毒性に関する検討
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: S-1+CDDP(SP)療法は進行再発胃癌に対する標準治療であるが腎毒性予防のため大量輸液が必要とされ,以前は入院で行われていた。近年,short hydration 法により外来での投与が導入可能となっている。今回われわれは,当院で施行している short hydration 法を用いた SP 療法の腎毒性について検討した。対象と方法: 2012 年 1 月〜 2018 年 1 月までに,当院外来で short hydration 法を用いた SP 療法を施行した 16 例のうち,1 コースのみで終了した 5 例を除く 11 例を対象とした。腎機能評価は血清クレアチニン(Cr)値と推定糸球体濾過量(eGFR)を用いて検討した。結果: 11 例の施行コー ス中央値は 5 コースで,5 コースまでの完遂率は 72.7%であった。投与期間中に 3 例で Grade 1 の血清 Cr 値上昇を認めるのみで,重篤な腎障害は認められなかった。結語: short hydration 法を用いた SP 療法は胃癌患者に対して外来投与可能であ り,腎毒性に関しても安全に投与可能であった。 -
FOLFOXIRI+Bevacizumab により完全奏効が得られた進行大腸癌の 2 症例
46巻13号(2019);View Description Hide DescriptionFOLFOXIRI+bevacizumab により完全奏効が得られた 2 症例を経験したので報告する。症例 1 は 65 歳,男性。肝転移を伴う下行結腸癌に対して,腹腔鏡補助下結腸左半切除術を行った後に FOLFOXIRI+bevacizumab を 6 コース施行し た。肝転移の縮小を認め,10 か所の肝部分切除術と 1 か所のラジオ波焼灼術を行い,病理学的完全奏効が確認された。術後補助化学療法は行わず,肝切除術後1年9か月で無再発生存中である。症例 2 は 77 歳,男性。骨盤壁および仙骨孔へ浸潤する直腸癌で,両側側方リンパ節転移と右内腸骨静脈内に腫瘍栓を認めた。FOLFOXIRI+bevacizumab を 6 コース施行し, CT および MRI 検査で腫瘍が消失した。大腸内視鏡検査でも腫瘍は瘢痕化していた。その後,FOLFIRI+panitumumab を 6 コース施行し,化学療法開始後 12 か月で無再発生存中である。 -
Oxaliplatin ベースの化学療法を行った虫垂 Goblet Cell Carcinoidの2例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例 1 は 57 歳,男性。便潜血陽性を指摘され下部消化管内視鏡検査を施行し,虫垂開口部に腫瘤性病変を認め生検で低分化腺癌の診断を得た。虫垂癌の疑いで腹腔鏡下回盲部切除術+D3 郭清を行った。病理所見で虫垂杯細胞カルチノイド (goblet cell carcinoid: GCC),pT4aN1bM0,stage Ⅲb と診断された。術後補助化学療法として FOLFOX 療法を 6 か月間施行し,3 年無再発生存中である。症例 2 は 41 歳,女性。婦人科で卵巣腫瘍の疑いで手術が行われた。術中に虫垂の腫大を認 め,卵巣の迅速病理診断で転移性腺癌と診断されたため虫垂原発腫瘍と考え回盲部切除術+D3 郭清および子宮全摘術と両側付属器摘出を施行した。病理組織学的所見で虫垂 GCC,pT4aN3M1a,stage Ⅳ(OVA)と診断された。術後補助化学療法 として CapeOX 療法を 6 か月間施行し,1 年 10 か月無再発生存中である。虫垂 GCC に対する補助化学療法は一定の見解がないが大腸に準じた治療報告が散見された。今回,oxaliplatin ベースの術後補助化学療法を行い一定の無再発生存を得られ た。本疾患に対する有効な治療法になり得ると考えた。 -
Adachi 分類Ⅳ型の腹腔動脈,上腸間膜動脈分枝形態を有する症例に対して腹腔鏡下回盲部切除術を 施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹腔動脈には様々な分枝形態があり,その分類の一つとして Adachi 分類が知られている。Adachi 分類は腹部大動脈からの分枝である腹腔動脈およびその分枝である左胃動脈,総肝動脈,脾動脈,また上腸間膜動脈の分枝形態をⅠ〜Ⅵ型, さらに肝動脈の変異を組み合わせて 28 群に区分し報告されている。このⅠ〜Ⅵの型のうち本症例はⅣ型に相当し,その頻度は 2.4%と極めてまれな分枝形態である。今回われわれは,Adachi 分類Ⅳ型の分枝形態をもつ患者に対して術前にその分枝形態を診断し,腹腔鏡下回盲部切除術を安全に施行し得た1例を経験したので報告する。 -
食道癌多発骨転移に化学放射線療法が著効した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 56 歳,女性。嚥下障害を主訴に近医を受診され,上部消化管内視鏡検査にて食道癌と診断され紹介受診となっ た。上部消化管内視鏡検査では,門歯列より 29〜32 cm に約半周性の 1 型病変を認め,生検にて扁平上皮癌と診断した。CT,PET 検査では胃小弯リンパ節の腫大,集積があり転移と診断した。また,第 7 頸椎,第 1 /3/4/8 胸椎に多発する集積を認め,骨転移と診断した。胸部中部食道癌,T2N1M1,Stage Ⅳと診断し 5-FU+CDDP(FP)による化学放射線療法(CRT)を施行した。CRT 後の上部消化管内視鏡検査では,主病巣は著明に縮小しており内視鏡下生検では明らかな悪性所見はなく内視鏡的 CR と診断した。また,CT 検査では主病巣,リンパ節ともに著明に縮小していた。骨転移は,一部骨硬化像は遺残して いたが,縮小しており PR と診断した。以後,定期的に FP を継続投与中であるが,現在も明らかな新病変の出現,再増悪なく約 2 年 3か月経過している。 -
ED チューブを用いた栄養療法と SOX 療法で根治切除を施行し得た局所進行胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description通過障害を伴う極度の低栄養状態の進行胃癌症例に対して,ED チューブを用いた栄養療法を行いながら化学療法を施行することにより根治切除し得た 1 例を経験した。症例は 66 歳,男性。食事摂取不良にて当院を受診した。BMI 13.5, PNI 33.8 と高度のるい痩,低栄養状態であり緊急入院となった。膵尾部,脾臓,横隔膜に浸潤する噴門部癌(U,type 3, tub2,cT4bN3M0,cStage ⅢC,HER2 score 0)と診断した。腫瘍による通過障害のため,ED チューブを留置し経管栄養を行いながら,SOX 療法を 3 コース施行した。腫瘍は縮小したため,開腹胃全摘術,D2 郭清,膵体尾部・脾・横隔膜合併切除 を施行した。病理診断では ypT4aN1M0,ypStage ⅢA であり,組織学的効果判定は Grade 1 であった。術後補助化学療法を 6か月施行し,術後 3 年現在も無再発生存中である。 -
pCR が得られた BR-A 膵腺扁平上皮癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 66 歳,男性。心窩部痛,黄疸を主訴に近医を受診し,肝酵素の上昇と黄疸を指摘された。PET-CT にて膵頭部 に限局した FDG の集積を認め,精査加療目的にて当院に紹介となった。BR-A 膵腺扁平上皮癌の診断で,gemcitabine 併用 化学放射線療法を行う方針とした。その後に S-1+gemcitabine による化学療法を1年3か月継続し腫瘍は縮小し,初診時 から 1 年 6か月後に膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的に腫瘍細胞の残存を認めず,pCR であった。術後5年6 か月経過した現在も無再発生存中である。 -
10 代の若年女性に発症した同時性肝転移を伴う膵粘液性嚢胞腺癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 17 歳,女性。学校検診で蛋白尿を指摘された。CT・MRI・EUS 検査による精査の結果,膵体尾部に 65 mm 大の被膜を有する嚢胞性腫瘤を認めたが,明らかな cyst in cyst・壁在結節などの mucinous cystic neoplasm に特徴的所見は認めず,PET-CT 検査は陰性であった。腫瘍径から悪性の可能性は完全に否定できず,診断的治療目的に切除術を検討した。 しかし家族の希望もあり,まずは定期的な画像検査で経過観察を開始した。初診時から 14 か月後の CT・PET-CT 検査で膵嚢胞性病変内部に FDG 集積を伴う壁在結節を認め,肝 S8 にも FDG 集積を伴う 20 mm 大の腫瘤影の出現を認めた。診断的治療目的に肝膵同切除術を行った。病理学的に膵 mucinous cystadenocarcinoma,肝転移と診断した。術後は S-1 内服を開始した。術後 9 か月目,両葉に多発する肝転移を認めたため GEM+nab-PTX 療法を開始した。現在,2 コースを終え新規再発病変なく経過中である。 -
山口県における膵癌切除術後 10 年長期生存症例についての報告
46巻13号(2019);View Description Hide Description膵癌の切除成績は依然として不良で,術後補助療法による改善を認めたが未だ十分とはいえない。今回われわれは, 山口県内での大学病院,関連施設において施行した多施設症例検討(山口膵・胆道疾患研究会)の結果を基に,10 年長期生存症例について報告する。症例登録施設は,大学病院(1 施設)と関連病院(7 施設)の県内 8 施設。登録症例の対象期間は 1997〜2016 年で,登録された膵癌切除全症例数は 552 例。そのなかで 10 年長期生存症例を対象とし,予後と病理組織学的因子について検討した。10 年長期生存症例は,552 例中 5 例であった。男性 3 例,女性 2 例,年齢は 52〜72(中央値 59)歳, 現在,全例無再発生存中であった。いずれの症例も術後に合併症を認めていなかった。術後補助療法は 5 例中 2 例で施行されていた。 -
胃癌術後副腎転移に副腎摘出後,異時性リンパ節転移に対しニボルマブ長期投与中の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 69 歳,男性。胃癌検診にて異常を指摘され,精査の結果胃癌の診断となり,胃全摘術,膵体尾部切除術,脾摘出術,胆嚢摘出術を施行した。S-1 にて術後補助化学療法を施行した。術後 10 か月で左副腎転移が出現し SOX を開始した。 4 コース施行するも左副腎腫瘍は増大傾向を示し,PTX+RAM にレジメン変更し,2 コース施行したがさらに腫瘍は増大し た。PET-CT にて他臓器転移なく手術の方針となった。胃癌手術1年3か月後左副腎摘出術,左腎摘術,横行結腸部分切除術を施行した。胃癌副腎転移の病理診断であった。その 3 か月後 CT にて腹部大動脈周囲,肝門部,左鎖骨上窩リンパ節腫大を認め異時性多発性リンパ節転移の診断となり,ニボルマブを開始した。ニボルマブ開始後,現在 20 コース施行中である。 新たな転移出現なく多発リンパ節転移は SD〜PR,副作用は掻痒を認めるが休薬することなく外来通院にて継続中である。 -
局所進行直腸癌に対して化学療法後に臨床的完全奏効を長期維持している 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description近年,化学療法の進歩に伴い大腸癌でも clinical complete response(cCR)する症例を経験するようになった。局所進行直腸癌に対して化学療法単独で,長期間 cCR が維持されている症例を経験したので報告する。症例は 60 歳台,男性。糖尿病のコントロール不良にて精査を行ったところ,CEA,CA19-9 の上昇があり,下部消化管内視鏡検査で直腸癌(Rba)を指摘された。CT にて前立腺浸潤が疑われたが腫瘍による腸閉塞となり,手術の方針となった。前立腺と骨盤壁への浸潤のため切除不能で,S 状結腸人工肛門造設術のみ行った。mFOLFOX6 療法 6 コース後の CT で,腫瘍縮小と前立腺浸潤範囲の縮小が確認された。末梢神経障害のため sLV /5FU2 療法に変更し,20 コース後の CT では腫瘍は確認できず,cCR と判断して 58 コースまで継続した。根治切除を提案したが血糖コントロール不良,禁煙ができないため手術は行わず経過観察となり, 化学療法後 7 年が経過した現在も無再発生存中である。 -
直腸粘液腺癌局所再発に対して術前化学放射線療法後に R0 切除を行った 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 60 歳台,男性。前医で直腸癌(Ra)に対して低位前方切除を施行し,病理組織学的検査結果は粘液腺癌,pT3 (SS),pN0,cM0,pStage Ⅱであった。術後 2 年目の CT にて,吻合部口側に局所再発を認めた。左精嚢や尾骨筋に接しており,腫瘍の縮小を企図し S-1 内服併用による術前化学放射線療法(NACRT)(S-1 80 mg /m2+45 Gy/25 Fr)を行い,腹会陰式直腸切断術(左精嚢・尾骨筋・尾骨合併切除)を施行した。病理組織学的所見ではわずかに粘液腺癌の存在を認めるものの,組織学的治療効果は Grade 2 であり,R0 切除を施行し得た。直腸癌局所再発の唯一の根治的治療は R0 切除であるが, 今回われわれは,粘液腺癌の局所再発に対し NACRT を行い,R0 切除し得た症例を経験した。 -
左側下大静脈を合併した直腸癌症例に対して腹腔鏡下直腸切断術を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 66 歳,男性。下血,便の狭小化を主訴に下部消化管内視鏡検査を施行し,直腸下部に全周性の腫瘍を認めた。 生検では Group 5 であった。術前検査にて直腸癌および直腸周囲リンパ節転移,傍大動脈リンパ節転移,左鎖骨上窩リンパ 節転移,多発骨転移を認め,cT4N3M1b(OSS,LYM),cStage Ⅳb であった。また,左側下大静脈を伴っていた。腫瘍出血 のコントロール目的に原発巣切除の方針とした。腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した。左側下大静脈は左尿管および左精巣動静脈よりさらに背側に位置しており,術中に操作の障害となることはなく定型どおりに手術可能であった。左側下大静脈を認める患者においては,手術の際に下大静脈を損傷しないよう術前に十分な解剖学的認識を得ておく必要がある。今回,比較的まれである左側下大静脈を伴った直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した症例を経験したため報告する。 -
山口県における大腸癌術後補助化学療法に関するアンケート調査結果
46巻13号(2019);View Description Hide Description山口県内で大腸癌診療に携わる 22 施設を対象に,大腸癌術後補助化学療法の現況についてアンケート調査を行った。 Stage Ⅲでは 95%以上の症例で補助化学療法が行われており,再発リスクに応じて oxaliplatin(OX)併用療法が選択されていた。しかし全国に比べると,OX 併用療法を選択する割合は低かった。また,OX 併用療法(FOLFOX と CAPOX)のうち, FOLFOX を選択する割合が全国に比べて高かった。Stage Ⅱに対してはほとんどの施設が再発高リスク因子を設定し,術後補助化学療法を行っていた。レジメンは,80%の施設が FU 系単剤療法を選択していた。OX 併用療法の導入年齢に上限を設定していない施設の割合は 65%であり,年齢だけでその適応を決めている施設のほうが少なかった。以上をまとめると,山 口県内では大腸癌術後補助化学療法の適応については広く行われていたが,使用レジメンは FU 系単剤療法が多く,OX 併用療法が少ない結果であった。 -
術前補助療法を施行した食道 GIST の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 64 歳,男性。嚥下時のつかえ感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で下部食道に 52 mm 大の粘膜下腫瘍を指摘された。生検で c-kit 陽性であり,食道 GIST と診断された。腫瘍径が大きく拡大手術が必要と考えられたため,imatinib による術前治療を開始した。imatinib 投与後 6 か月の CT では腫瘍径が 27 mm まで縮小しており,腹腔鏡下下部食道胃上部切除術,ダブルトラクト再建術を施行した。腫瘍は R0 切除された。食道 GIST に対して術前 imatinib 治療は有用であると考えられた。 -
小腸 GIST の腹膜転移に対してイマチニブが奏効したが部分耐性を認め切除した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionイマチニブに対して二次・部分耐性を示した腹膜転移を外科切除した症例を報告する。症例は 69 歳,男性。前医で肝・腹膜転移を伴った小腸 GIST と診断され,当院にてイマチニブ 400 mg /日を開始したところ原発巣が穿孔し,小腸部分切除を行った。退院後にイマチニブを再開し,肝転移と腹膜転移はともに縮小したが,術後 7 か月後の腹部 CT で右腎近傍の腹膜転移のみ増大を認めた。二次・部分耐性と診断し腹膜転移の切除を行った。遺伝子解析の結果,原発巣で認めた c-kit exon 11 変異に加え,exon 18 変異を認めた。退院後にイマチニブを再開し,2019 年 6 月現在も継続している。イマチニブ耐性 GIST について,GIST 診療ガイドラインでは切除可能な部分耐性病変であれば局所の外科的治療と,その後のイマチニブ継続が考慮される。複数の転移病変をもつ GIST について各々の病変の耐性を考慮し,適切な治療選択を行うべきである。 -
Castleman 病に合併した乳癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 57 歳,女性。加療中の Castleman 病のフォロー CT にて右乳房 AC 区域に 15 mm の結節を指摘され,精査の結果,乳癌と診断された。両側腋窩にリンパ節腫大を認めたが,Castleman 病によるものと考えられ,術前診断 cT1cN0M0, cStage Ⅰの診断で,右乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。センチネルリンパ節術中迅速診断にて 3 mm の転移を認めたため腋窩郭清を追加したが,郭清リンパ節には転移はなく Castleman 病による腫大と考えられた。 -
腹膜炎を契機に発見された膵癌に対して膿瘍ドレナージを継続しながら化学療法を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 69 歳,女性。腹痛を主訴に救急搬送され,CT 検査で free air を認めたため消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した。腹腔内を検索したところ穿孔部位は確認できなかったが,胃・脾・横行結腸に浸潤した膵尾部癌が判明した。脾膿瘍および腹膜播種巣も認めたため人工肛門を造設し,ドレーンを留置して手術を終了した。術後経過は良好であったが,腫瘍と連続する脾膿瘍が腹腔内に残存しており,ドレーンの早期抜去は困難と考えられたためドレナージを継続しながら化学療法を導入した。膵癌は病勢がコントロールされ,膿瘍の縮小傾向を認めたため術後 137 日目にドレーンを抜去した。その後も化学療法を継続したが,術後 2 年目に肝転移の急性増悪に伴う癌性 DIC を発症し原病死した。本症例のように外科的介入が困難な場合は,感染の増悪に留意しながら化学療法を施行することも選択肢の一つと考えられた。 -
化学療法が著効した黄疸を伴う乳癌多発肝転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳,女性。腹部膨満を主訴に近医を受診,胸腹部 CT 検査にて乳癌多発肝転移の診断で当院乳腺外科に紹介となった。血液検査にて T-Bil 7.6 mg /dL と著明な高値を認め,腫瘍マーカーは CEA 727.9 ng/mL と上昇していた。乳腺腫瘍より針生検を行い,浸潤性乳管癌(硬癌),ER(+),PgR(−),HER2(3+)の結果を得たため,wPTX+Bev 療法を 1 コース施行後,TCH 療法を行った。初診時より 8 か月経過した現在も外来にて化学療法を継続中で肝機能は改善しており, 腫瘍は著明に縮小し PR を維持している。黄疸を呈する乳癌多発肝転移は,肝機能障害のため積極的な治療を行うのが困難 とされている。今回われわれは,早期に化学療法を開始することで生存期間の延長が得られた黄疸を伴う乳癌肝転移の 1 例 を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。 -
食道癌・胃癌術後の膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 40 代,女性。約 6 年前に食道癌(pT1aN0M0,pStage 0),胃癌(pT4aN0M0,pStage ⅡB)に対し食道亜全摘, 胃全摘,有茎空腸再建胸腔内吻合術を施行され,術後約 6 年無再発で経過していた。黄疸を契機に精査を行ったところ膵頭部に腫瘤を認め,各種画像上膵癌が疑われた。膵内胆管の狭窄を認め経皮経肝胆道ドレナージを施行し,病変部の擦過細胞診では悪性を疑う所見を認めた。術前化学療法として gemcitabine+S-1 療法を 3 コース施行し,病変の縮小が得られた後に膵頭十二指腸切除術を施行した。手術に際しては術前画像をあらかじめ十分に検討し,先行手術の再建腸管に分布する血管を損傷しないように留意した。病理組織学的検査で膵頭部癌,ypT3,ypN1a,ypM0,ypStage ⅡB,R0 と診断された。術後 27 日で軽快退院となった。S-1 による術後補助化学療法を行い,6 か月無再発生存中である。 -
化学療法が奏効し長期生存が得られている肝,傍大動脈リンパ節転移を認めた胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description切除不能胃癌に対して化学療法後,conversion surgery が施行可能であった症例は長期予後が期待できることが報告されている。今回,多発肝転移と傍大動脈および Virchow リンパ節転移を伴う胃癌症例に対し,化学療法が著効し R0 切除が可能となり,その後の再発巣に対しても化学療法が奏効して長期生存が得られている 1 例を経験したので報告する。術前に S-1+CDDP を 4 コース施行し,手術で R0 切除。その後,S-1 投与を継続したが,術後2年4か月で肝 S6 転移が出現した。SOX 療法,paclitaxel+ramucirumab,CPT-11+CDDP を施行したが,術後 3 年 10か月で肝 S3 に新たな転移が出現した。nivolumab 投与を開始し,肝転移は著明に縮小したが,投与後 7 か月で下血が出現した。直腸に Is ポリープがあり EMR 施行した。sm,ly(+)で,直腸低位前方切除術,肝外側区域切除を施行した(初回手術より 4 年 7 か月)。標本上,癌組織 は認められなかった。現在,初回手術より5年1か月で両側副腎転移が出現し,nivolumab 投与を再開している。 -
遠位胆管癌の亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後,胃転移にて再発した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description遠位胆管癌術後,胃転移を来した 1 例を経験したので報告する。症例は 80 歳,男性。遠位胆管癌の診断にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。胆汁細胞診 class Ⅴ,標本にて胆汁内に腫瘍細胞を認めた。手術検体の病理組織学的所見は高分化腺癌,pT2N0M0,Stage ⅠB であった。術後 1 年で CA19-9 の上昇を認めたが,再発部位の同定はできず,経過観察となった。術後 2 年には CA19-9 が 7,900 U /mL まで上昇を認め,上部消化管内視鏡検査にて胃体下部後壁吻合部に 2.5 cm 大の潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の病変を認めた。生検の病理組織学的所見にて既往の胆管癌と類似した所見を認め,胆管癌の胃転移の診断にて幽門側胃切除術,拡大右半結腸切除術を施行した。胆管癌胃転移は非常にまれであり,文献的考察を加えて報告する。 -
遠位胆管癌術後 7 年後に脾門部リンパ節再発を来した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description遠位胆管癌術後 7 年後に脾門部リンパ節再発を来した症例を経験したので報告する。症例は 70 歳台,男性。当科にて 20XX 年に遠位胆管癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的結果は T2N0M0,Stage Ⅱ(胆道癌 取扱い規約第 5 版)であった。その後,術後 1 か月より術後補助化学療法として S-1 を 3 年間内服した。無再発生存中術後 7 年後に C EA 77.0 ng/mL と上昇を認めた。FDG-PET にて脾門部のリンパ節に高度集積を認め,リンパ節再発と判断した。 単発で無再発期間が長かったため,非外科的治療を選択せず腫瘍摘出術を施行した。現在は無再発で経過している。脾門部リンパ節への転移再発は再発経路としてまれであり,さらに再発切除を施行した症例はまれであるため報告した。 -
肝細胞癌,腹膜播種に対して集学的治療を行い長期無再発生存が得られた 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description肝細胞癌(HCC)腹膜播種再発は治療として確立されたものはなく,予後不良とされている。肝外転移を伴う HCC の標準治療は分子標的薬である一方,肝内病変を認めない肝外転移については,局所治療も選択されるとされている。今回, HCC 術後,腹膜播種再発に対して外科的治療を五度施行し,さらにソラフェニブ投与にて長期無再発が得られた 1 例を経験したため報告する。 -
横行結腸癌の術後腹膜播種再々発に対して根治切除が可能であった 1 手術例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 代,女性。前医にて横行結腸癌に対して腹腔鏡補助下横行結腸切除術を施行し,Type 2,tub2-por>muc, pT3,ly2,v0,pN2,pStage Ⅲb と診断された。術後補助化学療法として capecitabine+oxaliplatin(CapeOX)療法を 6 か月間施行し,その後経過をフォローしていた。術後 3 年目に CEA が 10 ng /mL まで上昇し,CT にて左腎前に結節影を認めた。腹膜播種再発と診断され,capecitabine+bevacizumab 療法を 8 コース施行した。他に転移を認めず腫瘍の増大も認めなかったため,手術目的に当院を紹介受診され,初回手術後 3 年 6 か月時に腹腔鏡下腹膜播種切除術を施行した。他に明らかな転移巣は認めず,切除可能であった。しかし初回手術後 4 年 9 か月時に CT にてDouglas 窩腹膜播種再発を認めた。他に明らかな転移を認めず,腹腔鏡下直腸低位前方切除術・子宮合併切除術を施行した。今回,横行結腸癌の術後二度にわたる腹膜播種再発に対して根治切除可能であった症例を経験したので報告する。 -
緊急 Jejunostomy 造設後に化学療法の継続により病勢コントロールが可能であった腹膜播種を伴う 切除不能 S 状結腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 33 歳,男性。大腸癌イレウスの診断にて緊急開腹手術を行った。広範な腹膜播種と高度の浸潤のため切除不能と判断し,空腸ストーマ(jejunostomy)を造設した。食事に在宅経静脈栄養法(home parenteral nutrition: HPN)と経静脈電解質液補給を併用して performance status(PS)を維持し,化学療法を導入し得た。術後 4 週より mFOLFOX6+cetuximab 療法を行い 1 年間病勢コントロールし得たが,術後1年1か月にカンジダ真菌血症を来し,化学療法を中断せざるを得なくなり,術後1年5か月に死亡した。大腸癌においてやむを得ず jejunostomy となった症例は PS の維持が困難となり,化学療法の適応となりにくい。 -
気管浸潤を伴う食道癌術後リンパ節再発に対して集学的治療を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 78 歳,男性。胸部中部食道癌に対し中下部食道切除,胃管再建術(胸腔内低位吻合)12 か月で気管浸潤を伴う左反回神経周囲リンパ節再発を認めた。化学放射線療法(FP 療法併用)を開始したが,40 Gy 時点で腫瘍の増大を認め中止 した。二次治療の化学療法(DCF 療法)は重篤な有害事象のため 1 コースで中止したが,腫瘍は縮小し再発巣切除を施行した。再手術後 13 か月で同部位に気管浸潤を伴う再々発を認めた。化学療法(bi-weekly DCF 療法)を 1 コース施行後に腫瘍は縮小し,気管合併切除を伴う再々発巣切除・縦隔気管孔造設術を施行した。以後 6 か月無再発生存中である。食道癌術後単発リンパ節再発に対しては集学的治療により長期生存が得られる可能性があり,積極的な治療を行うべきだと考えられた。 -
小腸 GIST 術後 2 年 6 か月で出現した大網デスモイドの1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹腔内デスモイド腫瘍,なかでも大網原発は非常にまれである。症例は 73 歳,男性。2 年 6 か月前に 10 cm を超える小腸 GIST に対して開腹手術を施行した。Fletcher 分類の再発高リスク群であったためイマチニブによる補助化学療法を行っていたが,CT で脾下極の脂肪織内に 15 mm 大の結節影が出現した。腹膜播種再発かつイマチニブ耐性 GIST の可能性を考えたが,単発病変であったことから診断的治療目的に腹腔鏡下腫瘍摘出術を行った。免疫染色の結果は c-kit,CD34, desmin,S100 はいずれも陰性で細胞分裂像は乏しく,小腸 GIST の病理組織像とは大きく異なっていた。b-catenin の核内染色を認めたためデスモイド腫瘍と診断した。非常にまれながらも,自験例のように再発高リスク群の小腸 GIST 術後に大網デスモイド腫瘍の合併があり得ることを念頭に置きつつ診療に当たることが肝要である。 -
Bevacizumab 投与中に上腸間膜静脈血栓症を認めた1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,男性。便失禁精査で行った下部消化管内視鏡にて直腸に 3 型腫瘍を指摘され,病理組織学的診断にて直腸癌と診断された。CT では所属リンパ節腫大および肝 S7,S4 に転移を認め,直腸癌[Rb,Ant,3 型,T3,N3,M1a(H2), cStage Ⅳa]と診断した。肝転移巣の conversion を期待して化学療法を施行する方針となり,FOLFIRI+bevacizumab 療法を開始した。5 コース施行後の CT で上腸間膜静脈に血栓を認めた。自覚症状はなく,入院の上,抗凝固療法を開始した。血栓が縮小傾向であることを確認後,腹腔鏡下直腸切断術(prxD3)を施行した。肝転移巣に関しては二期的に切除を検討していたが,経過中に増大したため化学療法を継続した。血栓指摘後 6 か月経過した時点の CT で上腸間膜静脈血栓は消失し,2 年経過した現在まで新たな血栓症の発生は認めていない。bevacizumab 投与中において腸間膜静脈血栓症は留意する必要のある合併症と考えられた。 -
当院における再発肝腫瘍に対する腹腔鏡下再肝切除術の手術成績
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹腔鏡下肝切除術は,低侵襲性や拡大視効果による出血量低減などのメリットがある手術として近年急速に普及しているが,腹腔鏡下再肝切除術の安全性は評価が定まっていない。2011 年 1 月〜2019 年 3 月までに当院にて再発肝腫瘍に対して再肝切除術を施行した 60 例を対象として,開腹肝切除群(Open 群)と腹腔鏡下肝切除群(Lap 群)の 2 群に分けて手術成績を比較検討した。対象症例 60 例のうち Open 群 41 例,Lap 群が 19 例であった。手術時間,術後合併症発生率に両群で差を認めなかったが,術中出血量は Open 群 355(45〜3,470)mL,Lap 群 150(10〜1,160)mL で,術後在院日数は Open 群 11(7〜132)日,Lap 群 8(5〜133)日とともに Lap 群で有意に良好な結果であった。再発肝腫瘍に対する腹腔鏡下再肝切除術は安全に施行できる可能性が示唆された。 -
当科における遠位胆管癌に対する手術治療成績と術後補助化学療法の有効性
46巻13号(2019);View Description Hide Descriptionはじめに: 遠位胆管癌に対する治療成績は外科治療のみでは十分といえず,術後補助化学療法が施行されることが多い。一方,その治療適応やレジメンに関しては未だ一定した見解を認めていない。対象と方法: 1995 年 8 月〜2017 年 12 月までの Stage ⅡA 以上の遠位胆管癌に対して手術を施行した 46 例を対象とし,gemcitabine(GEM)を含めた術後補助化学療法を行った群(A 群)と手術単独群(S 群)を無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)について比較検討した。また, 2012 年以降は GEM+CDDP 療法(GC 療法)を導入しており,GEM 単独療法と比較検討を行った。結果: DFS 中央値は A 群 718 日,S 群 367 日(p=0.306),OS 中央値は A 群 1,171 日,S 群 859 日(p=0.07)で有意差は認めないものの,予後を改善させる傾向にあった。また,GC 群と GEM 群の DFS,OS は同等の結果であった。結論: 術後補助化学療法を施行することにより予後が改善する可能性が示唆された。 -
切除困難な胃癌出血に対する緩和的放射線照射の成績
46巻13号(2019);View Description Hide Description胃癌に伴う出血に対して,貧血進行予防のための緩和的放射線照射の有用性についての報告は少ない。今回,切除不能・耐術困難な出血を伴う胃癌に対し放射線照射を施行した 9 例について検討した。年齢 83(70〜91)歳,全例男性,臨床病期はⅡB 2 例,Ⅲ 1 例,ⅣA 1 例,ⅣB が 5 例であった。切除困難理由は,4 例が遠隔転移または高度浸潤,3 例が PS 不良, 2 例が高齢で積極的治療を希望しない症例であった。治療前 Hb は 6.0(3.3〜7.7)g /dL で,全例に輸血が施行されていた。 7 例に 30 Gy,2 例に 50 Gy の照射が行われ,2 例で化学療法を併用した。有害事象は血液毒性 2 例,非血液毒性 4 例に認めたがいずれも保存的に軽快した。1 例は照射後も貧血が持続したが,8 例(88.9%)で止血が得られた。治療が奏効した 8 例 中 1 例は 81 日目に再出血を認めたものの 7 例では貧血を認めず,治療成功期間中央値は 125(21〜421)日であった。切除困難な進行胃癌に対して,止血目的の緩和的放射線照射は有効な治療法と思われた。 -
組立式タバコ縫合器 ENDO-PSI を用いた腹腔鏡下胃全摘術の短期成績
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹腔鏡補助下胃全摘(LATG)は導入初期に合併症が多く,慎重な取り組みが必要とされている。当院での LATG 導入時からの治療成績を検討した。対象は 2014 年導入時から 2017 年に LATG を施行した 21 例とした。胃空腸吻合は,上腹部正中に約 6 cm の小切開を加え ENDO-PSI を用いて食道を切離した。アンビルヘッドを体外結紮にて固定後,エンドルー プで補強した。Y 脚は直視下に作製し,小切開創より circular stapler にて食道空腸吻合を行った。男性 15 例,女性 6 例,平均年齢 74 歳。平均手術時間 296 分,出血量 75 mL,術後絶食期間・在院中央値は 3(3〜10)日,12(8〜28)日であった。 術後早期合併症は Grade Ⅱ 4 例,Grade Ⅲが 1 例であった。食道胃空腸吻合に起因する合併症は縫合不全 1 例(4.8%)で, 狭窄は認めなかった。ENDO-PSI を用いた LATG は安全に導入が可能と思われた。 -
80 歳以上の高齢者大腸癌に対する腹腔鏡手術の有用性
46巻13号(2019);View Description Hide Description80 歳以上の高齢者大腸癌手術における腹腔鏡手術の有用性について合併症から検討した。対象は 2012 年 4 月〜2018 年 1 月までに原発巣を切除した 80 歳以上の大腸癌 65 例で,合併症関連因子につき後方視的に検討した。年齢中央値は 83 歳,男性 33 例,女性 32 例,結腸 48 例,直腸 17 例,手術時間中央値 164 分,腹腔鏡手術が 39 例であった。術後合併症は 28 例(43.1%)に認め,うち Clavien-Dindo(CD)分類Ⅱ以上は 15 例(23.1%)で,術後在院日数が有意に延長した。合併症 は切開創 surgical site infection(SSI)10 例,イレウス 9 例,下血 6 例,尿路感染症,排尿障害各 2 例などで在院死亡 1 例で あった。CD 分類Ⅱ以上の合併症発生と関連する因子は開腹手術(p=0.0330)のみであった。合併症のうち切開創 SSI は腹 腔鏡手術で減少した(p=0.0050)。80 歳以上の高齢者大腸癌手術では腹腔鏡手術で CD 分類Ⅱ以上の合併症が低率であった。 また,切開創 SSI も腹腔鏡手術で減少した。高齢者の大腸癌手術において腹腔鏡手術施行を勧めることで合併症減少につながる可能性がある。 -
90 歳以上の大腸癌症例術後短期成績に関する検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description2007〜2019 年まで当院で経験した 90 歳以上の大腸癌 18 例の手術治療経験を報告する。男性 2 例,女性 16 例で,9 例 (50%)が認知症を有していた。14 例(78%)が全周性病変であり,4 例(22%)は閉塞を,1 例(6%)は穿孔を契機に発見された。Stage Ⅰ〜Ⅲは 16 例で全例に根治手術が施行され,Stage Ⅳの 2 例は症状緩和目的の原発巣切除術が施行された。 術後合併症はせん妄,廃用症候群,SSI の順に多く,術後在院日数は中央値 23.5(8〜53)日であった。在院死はなく,8 例 は自宅退院が可能であった。90 歳以上の超高齢の大腸癌手術症例においては,術後せん妄や種々の機能低下はほぼ必発であ るため,厳重な周術期管理により早期社会復帰をめざすことが肝要である。また,余生や終末期の療養の場の提供など多く の課題に関しては,多職種が横断的に介入していく必要がある。 -
大腸癌術後大動脈周囲リンパ節再発に対し化学療法後組織学的に完全寛解を確認した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳,女性。2013 年 9 月右側腹部痛を主訴に来院した。精査の結果,上行結腸癌の診断で同年 10 月,結腸右半切除術,D3 リンパ節郭清を施行した。術後補助化学療法として CAPOX 療法を 6 コース施行した。術後 17 か月の PETCT 検査では右傍大動脈リンパ節の腫大と FDG 異常集積を認め,リンパ節再発と診断した。2015 年 4 月より CAPOX+ BEV 療法を 10 コース施行し,その後 capecitabine 単剤を 12 コース施行した。PET-CT 検査では右傍大動脈リンパ節は画像上完全寛解を認めたが,右卵巣と子宮体部に FDG 異常集積を認めた。2017 年 3 月精査の後,子宮癌,右卵巣癌に対し,拡大子宮全摘術,両側付属器切除術,大網部分切除術,リンパ節郭清,大動脈右リンパ節郭清を施行した。病理診断では右卵巣と子宮体部は内膜癌の診断であった。同時に摘出し,画像上完全寛解を認めていた右傍大動脈リンパ節は瘢痕化されてお り組織学的完全寛解を認めた。初回手術より 63 か月現在,無再発生存中である。 -
Crohn 病に合併した骨盤側方リンパ節転移を伴う直腸癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳,男性。26 年前に Crohn 病の診断となっていた。19 年前に S 状結腸狭窄に対し S 状結腸切除術施行,12 年前に回盲部狭窄に対し回盲部切除術施行,3 年前に小腸穿孔に対し小腸部分切除を施行されていた。この間,内科的に加療が継続されていたが寛解と増悪を繰り返していた。定期受診の外来にて肛門痛を主訴に来院し,下部消化管内視鏡検査を施行され歯状線直上に半周性の隆起性病変を認めた。生検結果は adenocarcinoma,Group 5 であった。下部直腸癌(cT2N3M0, Stage Ⅲb)との診断で腹会陰式直腸切断術,D3 リンパ節郭清を施行した。術後化学療法として mFOLFOX6 療法を実施し, 術後 1 年 6か月生存中である。 -
当院における消化管原発小細胞癌 6 例の検討
46巻13号(2019);View Description Hide Description緒言: 小細胞癌は原発巣としては肺が最も多いが,消化管原発は非常にまれである。当院にて消化管原発小細胞癌症例における治療・転帰について検討した。対象: 2000 年 9 月〜2018 年 12 月までに消化管に発生した癌において,病理組織学的に小細胞癌と診断された 6 例。結果: 平均年齢は 61.5(40〜80)歳,性別は男性 3 例,女性 3 例。発生部位は食道 1 例,胃 2 例,結腸 3 例であった。食道症例は化学放射線療法のみ行った。残り 5 例は手術を施行し,そのうち 4 例は術後補助化学療法を施行した。無再発で 5 年生存を得たのは 6 例中 2 例であった。考察: 消化管原発小細胞癌でも症例に合わせた集学的治療を行うことで長期的予後が期待できる可能性が示唆された。 -
術中膵管鏡が有用であった膵管内乳頭粘液性腺癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 78 歳,男性。前立腺癌精査目的の CT で膵頭部腫瘤を指摘され,紹介受診した。膵頭部に 3 cm 大の結節を伴う嚢胞性病変と主膵管拡張を認め,膵管内乳頭粘液腺癌(intraductal papillary-mucinous carcinoma: IPMC)の診断で,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術中に切除断端より膵管鏡を挿入し,尾側膵管の膵管粘膜に異常がないことを確認した。病理組織学的検査結果は非浸潤性 IPMC の診断で切除断端陰性であった。術後カンジダ性胆管炎を発症し抗真菌薬を投与にて術後 53 日目に軽快退院となった。本例のように膵管拡張を伴う膵切除例では,術中に膵管鏡の挿入が可能である。 簡便な手技で診断能力が高く,多中心性発生や連続進展が認められる膵管内乳頭腫瘍手術において,膵切除範囲の決定に有用であると考える。 -
術後に急速な転機をたどった胆嚢未分化癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 74 歳,女性。上腹部痛を主訴に近医を受診し,肝腫瘤を指摘されて当院に紹介となった。造影 CT 検査で胆嚢底部から連続する約 80 mm 大の肝腫瘍を認めた。PET-CT 検査では遠隔転移を疑う所見は認めなかった。肝浸潤を伴った胆嚢癌と診断し,開腹下に拡大前区域切除術,リンパ節郭清を施行した。摘出標本では胆嚢から肝臓に浸潤する 87×85×75 mm の灰白色調の充実性腫瘍を認めた。病理組織学的検査所見より最終診断は胆嚢未分化癌,T3a,N0,M0,Stage ⅢA で R0 手術し得た。術後 21 日目より S-1 内服を開始したが,術後約 1 か月半で黄疸が出現し,造影 CT 検査で多発肝転移,腹膜播種再発を認めた。その後も急速に病態は進行し,術後約 2 か月半で癌死した。 -
肺転移に対する切除を 2 回施行した肝細胞癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description65 歳,男性。肝細胞癌の治療目的で当科紹介となり,肝拡大後区域切除術・胆嚢摘出術を施行した。切除標本の組織診断では pT3N0M0,pStage Ⅲと診断された。肝切除から 8 か月後,CT にて肝 S4 再発を認め,肝動脈化学塞栓療法およびラジオ波焼灼療法を施行した。肝切除から 1 年 8 か月後,CTにて両側肺に結節影を指摘され,肝細胞癌の肺転移が疑われた。肺以外の部位に明らかな再発は認められず,同病変に対して胸腔鏡下両側肺部分切除術を施行した。切除標本の組織診断にて,肝細胞癌の肺転移と診断された。初回肝切除から4年8か月後,再度両側肺に結節を指摘され,再度肝細胞癌の肺転移が疑われた。この際も手術可能と判断し,同病変に対して胸腔鏡下両側肺部分切除術を施行した。組織診断では,これ らの病変も肝細胞癌の肺転移と診断された。初回肝切除から6年4か月経過した現在も明らかな再発なく,経過観察中である。肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対する標準治療は分子標的薬であるが,一方肝外転移に対する局所療法も選択肢の一つになり得るとされている。今回,初回肝切除後に肝内再発は認められず,肺切除後の一定期間の生存を得られた症例を経験した。上記の肝外転移に対する局所治療の有用性が示唆された。 -
気管浸潤進行食道癌に対して喉頭温存した Grillo 手術の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 69 歳,男性。大腸癌の術前 CT で気管浸潤を伴う食道癌を認めた。食道癌[Ut-Ce,cT4b(Tr)N2M0,Stage /ⅣA /Mt,cT4b(Lt-Br)N2M0,Stage ⅣA],大腸癌(A,cT3N1M0,Stage Ⅲa)と診断し,食道癌の治療を先行した。 DCF 療法を 1 コース施行し,SD の判定であった。二次治療として,分割 DCF +RT(40 Gy/20 Fr)を施行したが,腫瘍遺残のため手術の方針とした。右開胸食道亜全摘,喉頭温存気管合併切除,3 領域リンパ節郭清,後縦隔胃管再建,縦隔気管孔造設,大胸筋弁充填術を施行した。Ut 病変の気管浸潤は第 2 軟骨輪より末梢側に限局していることから喉頭温存が可能と判断した。術後は呼吸器関連合併症なく経過し,病理組織学的検査では pCR であった。本症例は食道癌術後 55 か月,無再発生存中である。 -
遠隔転移を伴う高度進行 HER2 陽性胃癌に対して Conversion Surgery が奏効した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide DescriptionStage Ⅳ胃癌に対して conversion surgery が奏効した 1 例を経験したので報告する。症例は 56 歳,女性。上部消化管内視鏡検査で胃角部後壁に 2 型進行胃癌が指摘された。造影 CT 検査で大動脈周囲多発リンパ節転移を認め,T3N3M1 (lym),cStage Ⅳと診断した。S-1+cisplatin+trastuzumab(SP+HER)療法を 6 サイクル施行で主病変が PR,転移病変 CR となった。有害事象のため,S-1+HER 療法を 2 サイクル,capecitabine+oxaliplatin(XELOX)+HER 療法を 6 サイク ル施行した。その間,主病変のみ PD となったため幽門側胃切除,D1+に加え大動脈周囲リンパ節郭清を conversion surgery として施行した。病理組織学的診断では T2N0M0,pStage ⅠB で,組織学的効果判定は Grade 1a であった。術後化学 療法施行は患者の希望にて未施行であるが,現在まで 3 年間無治療,無再発である。個別化治療の選択肢として conversion surgery の意義はあると考えられた。 -
SOX 療法が著効し Conversion Surgery で病理組織学的完全奏効が得られた局所進行胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 70 歳台,男性。検診にて貧血と胃腫瘤を指摘され,精査の結果,幽門前庭部の 3 型進行胃癌と診断され当院紹介となった。CT にて明らかな遠隔転移は認めなかったが,肝外側区域への直接浸潤,幽門下リンパ節の膵頭部浸潤,脾動脈幹リンパ節の脾動脈および膵体部への浸潤が疑われ,進行度は T4bN3M0,Stage ⅢC と診断した。根治切除は困難と判断し,まず化学療法を施行する方針として SOX 療法を開始した。画像上,原発巣の縮小,リンパ節転移の消失を認めたため根治切除可能と判断し,SOX 療法 14 コース後に conversion surgery を施行した。手術は開腹幽門側胃切除術,D2+14v リンパ節郭清,Roux-en-Y 再建を施行した。病理組織学的診断では原発巣,リンパ節を含め検索範囲内で癌の遺残を認めず, SOX 療法の組織学的効果判定は Grade 3 であり病理組織学的完全奏効と診断した。 -
#16 リンパ節転移を認めた胃癌において術前 SP 療法を施行し完全切除が可能となった 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description今回我々は,腹部大動脈周囲リンパ節転移を認めた胃癌症例において,術前補助化学療法として S-1+CDDP 療法(SP 療法)を施行し,ロボット支援下胃全摘術(腹部大動脈周囲郭清を含む D3 郭清)を行った症例を経験したので報告する。症例は 69 歳,女性。食思不振のため受診し,3 型の進行胃癌[UM,type 3,por,cT4aN3M1(#16b1LYM),cStage Ⅳ]と診断した。SP 療法を 2 コース終了後,PR と判定した。術前診断は UM,Less,yType 3,cT2ycN2ycM1(#16b1LYM) , ycStage Ⅳとし,ロボット支援下胃全摘術,D2+腹部大動脈周囲リンパ節郭清を行った。病理組織学的検査結果は原発巣・提出したリンパ節のいずれからも腫瘍細胞は認めず,病理学的 CR の診断であった。術後 6 か月半が経過し,現在無再発生存中である。全身治療の進歩が目覚ましい現状ではあるが,腹部大動脈周囲リンパ節転移を伴う胃癌症例に対してはロボッ ト支援下での R0 切除も治療の選択肢の一つとなり得ると考える。 -
Palliative Surgery が奏効し長期生存が得られた胃癌骨髄転移の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 57 歳,女性。嘔気と食思不振,黒色便を主訴に当院を受診した。上部消化管内視鏡検査で胃角部に 3 型進行胃癌を認め,Group 5(por2〜sig)と診断された。精査にて骨髄転移と診断され,胃癌,cT4aN1pM1(MAR),pStage Ⅳの診断で S-1+CDDP を開始した。S-1+CDDP を約 2 年,計 18 コース施行後に狭窄症状の進行を認めたため,RAM+PTX に変更した。RAM+PTX を 18 コース施行後に食事摂取が困難となり化学療法を中止した。内視鏡的に狭窄部に消化管ステントを留置したが奏効せず,palliative surgery として幽門側胃切除術,Billroth Ⅱ再建を施行した。術後合併症は認めず,術後 14 日目に退院した。術後は徐々に栄養状態の改善を認めたため,術後 3 か月目より化学療法を再開できた。治療開始より 4 年 9 か月,術後1年3か月が経過した現在も化学療法継続中である。一般に胃癌骨髄転移は予後不良なことも多いが,本症例では palliative surgery を行うことで症状緩和が図られ,術後化学療法を長期に行えたことが予後改善に寄与したと考えられた。 -
結腸へ穿破し逆行性感染を契機に診断された膵管内乳頭粘液性腺癌の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 82 歳,男性。左側腹部痛を主訴に救急外来を受診した。腹部造影 CT で膵尾部に 7 cm 大の多房性嚢胞性腫瘍を認め,不整な嚢胞壁の肥厚と結腸脾弯曲部への浸潤を認めた。嚢胞内の逆行性感染も認めたが,絶食,抗菌薬投与にて改善した。膵尾部膵管内乳頭粘液性腺癌,T3N0M0,cStage ⅡA の診断で,入院第 16 病日に膵体尾部切除,結腸切除を施行した。病理組織学的には,粘液を含有し胃腸型腫瘍腺管に被覆された腺癌が主体となる腫瘍で,結腸への直接浸潤を認めた。 腫瘍細胞周囲には密な線維化と石灰化巣も認め,経過の長い膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)の悪性化が想定された。術後補助療法を 6 か月間施行したが,術後 9 か月で腹膜播種再発を来し,現在全身化学療法中である。IPMN は長期の経過においても隣接する他臓器へ浸潤・穿破を来すことがあり,適切な経過観察と悪性化が疑われた際,早期の積極的な切除が望ましいと考えられた。 -
急速な発育浸潤,多発肝転移再発を来した膵退形成癌の 1 切除例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 81 歳,男性。膵尾部嚢胞性病変を経過観察中に腫瘍の急速な増大を認め,当科に紹介となった。腹部 CT 検査で膵尾部に一部石灰化を伴う径 70 mm の不均一に造影される腫瘍を認めた。術前診断では solid-pseudopapillary neoplasm の悪性転化を疑い,脾合併尾側膵切除,横隔膜合併切除,横行結腸部分切除術を施行した。病理組織学的検査では,核の多形性を伴い高度異型を呈する紡錘形の肉腫様腫瘍細胞がびまん性に増殖し,免疫染色結果を含め紡錘細胞型膵退形成癌と診断された。術後縫合不全に対し洗浄ドレナージ術を施行した。第 27 病日の腹部 CT 検査で多発肝転移の診断となり,S-1 を開始した。第 50 病日に軽快退院したが,術後 61 日目に院外心肺停止となり死亡した。病理解剖では早期再発に伴う全身状態の悪化が死因と考えられた。膵退形成癌は極めて予後不良とされ,外科切除を含めた集学的治療の確立が急務と考えられる。 -
多発肝転移を伴う切除不能膵癌に対して FOLFIRINOX 療法が著効し Conversion Surgery を施行し得た 1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 50 歳,女性。膵頭部癌および多発肝転移の診断で FOLFIRINOX 療法が開始された。計 18 コース施行した時点で画像上の partial remission(PR)が得られたため,手術の方針となった。亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,肝 S7 部分切除術により肉眼的完全切除を施行し得た。病理所見では原発巣および肝転移巣は,化学療法による線維化と硝子化変化のみを認め,癌細胞の完全な消失を認めた。一方で,一つの 12b リンパ節組織に低分化腺癌の転移を認めた。術後 1 か月後から S-1 を用いた術後補助化学療法を開始するも,術後 3 か月で肝 S4 に新たに肝転移を認めた。再発治療を導入するも progression disease(PD)となり,術後 11 か月で死亡した。 -
S-1 単剤療法により Conversion Surgery が可能となった局所進行切除不能膵癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 65 歳,男性。b怠感および肝機能障害のため前医を受診した。腹部造影 CT 検査で上腸間膜動脈(SMA)浸潤を疑う膵鉤部腫瘤を認め,局所進行切除不能(UR-LA)膵癌と診断した。GEM+nab-PTX 療法を開始したが,有害事象のため 2 コースで中止し,S-1 単剤療法へ変更した。その後約1年6か月腫瘍の進行を認めなかったため,外科的治療目的に当院へ紹介となった。SMA への接触が半周以下と改善を認め,切除可能境界(BR-A)膵癌と診断した。手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行い,門脈をサイドクランプにて部分合併切除した。門脈切離断端および SMA 周囲神経叢の術中迅速病理診断は陰性であった。最終病理診断では門脈および動脈浸潤を認めず,治療効果は Evans 分類の Grade Ⅲと判定した。術後は S-1 による補助化学療法を行い,10 か月経過した現在無再発生存中である。 -
胃癌術後再発に対して緩和的放射線療法と逐次的ニボルマブ療法が奏効した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 52 歳,男性。進行胃癌に対して胃全摘術を施行し,病理診断は por1>muc>por2>tub2,pT4a(SE) N3bM0H0P0CY0,pStage ⅢC であった。術後補助化学療法としてカペシタビン+オキサリプラチンを 6 コース施行した。 術後 6 か月の CT で食道空腸吻合部背側と上腹部の腸間膜内に 2 か所の再発を認めた。内視鏡で吻合部背側腫瘤の挙上空腸内浸潤を認めた。second-line 治療としてパクリタキセル+ラムシルマブ療法を 3 コース行ったが急速増大した。局所制御目的で 2 か所の腫瘤に対し緩和的放射線療法(39.6 Gy /22 Fr)を行った。照射終了時の CT で腫瘍は残存(SD)していた。照 射終了 9 日目から逐次的に third-line 治療としてニボルマブ療法を開始したところ 6 コース後に腫瘍は著明に縮小し PR と なり,通過障害も改善した。10 コース後,腸間膜内腫瘤は縮小を維持していたが,吻合部背側腫瘤が急速再増大したため, 狭窄解除目的に左上腹部内臓全摘と腸間膜リンパ節切除を施行した。吻合部背側腫瘍は低分化腺癌からなり,腸間膜リンパ 節には癌細胞を認めなかった。放射線療法+免疫チェックポイント阻害剤は,胃癌においても有望な治療となる可能性があ る。 -
集学的治療にて長期生存が得られている虫垂癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 65 歳,女性。2002 年 3 月(49 歳時),虫垂癌に対して回盲部切除術が施行され,病理組織学的診断は粘液嚢胞腺癌,pT2N0M0,Stage Ⅰであった。2006 年 4 月右卵巣転移に対して卵巣摘出・子宮全摘術を施行した。2011 年 2 月腹膜播種を認め,bevacizumab+mFOLFOX6 を 4 コース施行後,播種結節摘出術を施行した。その後再発なく経過観察していた が,2016 年 6 月より血清 CEA 値の上昇を認めるようになり,2017 年 11 月 CT にて緩徐に増大する肝表面の腫瘤を認め,腹膜播種再発の診断にて右横隔膜部分切除術を施行した。病理組織学的診断は粘液嚢胞腺癌であり,虫垂癌の腹膜播種再発として矛盾しない所見であった。以後,2019 年 6 月現在,再発なく経過観察中である。虫垂癌は比較的まれであるが,大腸癌よりやや予後不良で腹膜播種の頻度が高いとされている。本症例では腹膜播種再発を認めながらも,化学療法や外科的切除による集学的治療にて 17 年以上の長期予後が得られている。虫垂粘液嚢胞腺癌に対しては,継続的な経過観察と積極的な治療が推奨される。 -
早期胃癌術後に腹壁転移を繰り返した長期生存の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 76 歳,男性。胃体下部大弯の隆起性病変に対し ESD を試みるも穿孔を来し,幽門側胃切除術を施行した。病理組織学的検査結果は M,Gre,Type 1,30 mm,pap,pT1b(sm2),N0,M0,pStage ⅠA であった。1 年 6 か月後,腹壁に 2.4 cm の腫瘤が出現した。細胞診で adenocarcinoma であり,胃癌腹壁転移と診断した。他臓器に再発所見なく,摘出術を施行した。その 6 か月後,1 年後,2 年後に腹壁に同様の転移を認め,繰り返し摘出術を施行した。計 4 回の腫瘤摘出術を施行しいずれも胃癌の転移であったが,摘出術後1年6か月,無再発生存中である。 -
長期生存中の妊娠に合併した Stage Ⅳ胃癌の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 28 歳,女性。出産後 3 か月目より心窩部痛が出現したため近医を受診,胃炎と診断され投薬治療をしていた。 5 か月目より嚥下困難感が出現したため,2006 年 1 月当院を受診した。血液検査は正常範囲であったが,上部消化管内視鏡検査で噴門部小弯に 3 型胃癌を認めた。胸腹部 CT 検査では胃体上部に壁肥厚を認めたが,明らかな遠隔転移はみられなかった。2006 年 2 月,2 群リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した。明らかな腹膜播種は認めなかったが,腹腔洗浄細胞診の結果は陽性であった。病理組織学的結果は poorly differentiated adenocarcinoma,por2,se,ly2,v0,inf g,ow(−),aw ( −),n2(+)で,pStage Ⅳ(T4a,N2,M1,CY+)となった。術後は外来にて S-1 単剤療法(100 mg/day,day 1〜28q6wks) を 1 年間施行し,以後定期 follow を実施した。術後 13 年 10 か月現在,明らかな胃癌再発を認めていない。妊娠に合併した 胃癌は周産期の症状と胃疾患の症状の鑑別が困難なこともあり,消化器症状が持続する場合には内視鏡検査を考慮する必要がある。 -
自然消退を認めた小腸間膜原発未分化多形肉腫の 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 49 歳,男性。血液透析(HD)導入直後より不明熱が持続していた。4 か月後に嘔吐,腹満が出現し外来受診した。CT にて 9 cm 大の腫瘍を認め,空腸の通過障害を認めた。手術を施行したが腹膜播種にて切除不能であった。播種結節の病理にて未分化多型肉腫と診断された。HD 中のため化学療法は不可能と判断し緩和治療の方針となった。しかし,その後通過障害は改善し,CT にて腫瘍は縮小傾向を認め 6 か月後についに消失した。術後2年5か月経過し,再発もなく良好に経過している。未分化多型肉腫は成人の軟部組織に発生する予後不良な疾患だが,腸間膜での発生はまれである。治療としては完全切除が第一選択であり,化学療法や放射線治療の有用性については一定の見解が得られていない。また,自然消退した報告はこれまでにない。今回われわれは,小腸間膜原発の未分化肉腫が自然消退した症例を経験したので報告する。 -
無ガンマグロブリン血症に合併した消化管多発癌に対して腹腔鏡下手術を施行した 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 65 歳,男性。53 歳時に無ガンマグロブリン血症を指摘され,当院内科にて加療されていた。CRP 高値精査目的で CT,下部消化管内視鏡検査にて上行結腸癌,直腸癌と診断され,手術目的に当科紹介となった。術前診断は上行結腸癌,直腸癌ともに cT4aN0M0,cStage Ⅱb であった。術前に免疫グロブリン製剤を補充し,腹腔鏡補助下結腸右半切除術(D3 郭清),腹腔鏡補助下高位前方切除術(D3 郭清)を施行した術後にも免疫グロブリン製剤を追加補充した。術後感染症を合併することなく良好に経過し,術後 13 日目に退院した。無ガンマグロブリン血症は定期的な免疫グロブリン補充療法による感染コントロールが必要であるが,大腸癌手術を施行した報告は少なく,われわれが検索した限りでは腹腔鏡下大腸手術を施行した症例は自験例以外には認めなかった。自験例では周術期に免疫グロブリン補充療法を追加し,IgG 値を維持することで良好な経過を得ることができた。無ガンマグロブリン血症合併症例に対する腹腔鏡下大腸手術は,適切な周術期管理を行うことで安全に施行できると考えられた。 -
広範な壊死性筋膜炎を来した上行結腸癌に対して集学的治療で救命し得た 1 例
46巻13号(2019);View Description Hide Description壊死性筋膜炎は,死亡率 25〜30%に及ぶ重症皮膚軟部組織感染症である。今回,上行結腸癌穿通から広範な壊死性筋膜炎を来した症例を経験したので報告する。症例は右鼠径部痛を主訴に救急搬送された 70 歳,女性。CT 検査で上行結腸癌穿通による後腹膜膿瘍,右上腹部〜右大腿部の広範な壊死性筋膜炎,多発肝転移,敗血症性ショックの診断で同日緊急で洗浄ドレナージ,結腸右半切除,単孔式回腸ストーマ造設,デブリードマンを施行した。術後は集中治療室で人工呼吸器管理, 血液浄化療法などの集学的治療を行いつつ,創洗浄とデブリードマンを継続,術後 20 日目より陰圧閉鎖療法を 4 週間行い, 転院して植皮術が施行された。植皮術後の経過は良好で,当院へ再度転院しリハビリを行いながら肝転移に対する化学療法 を開始,初回手術から 181 日目に自宅退院となった。初回手術より 1 年 3か月経過しているが,現在も外来で化学療法継続中である。 -
超高齢者の Delle を伴う噴門近傍 GIST に対する LECS 補助下小開腹胃部分切除術
46巻13号(2019);View Description Hide Description腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery: LECS)は消化管壁の過剰な切除を避け, 臓器の機能や形状の保持を可能とする優れた術式である。今回,超高齢者の腫瘍学的リスクを伴う胃消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)に対して,LECS 補助下胃部分切除術を施行し良好な結果が得られたので報告する。症例 は 97 歳,女性。胃体上部小弯の持続出血と delle を伴う 4 cm の噴門近傍の GIST に対して同術式を行った。まず内視鏡下の胃粘膜切開と腹腔鏡下の胃授動術を行った。腫瘍の切離線の始点と終点に支持糸をかけた。支持糸を用いて腫瘍部の挙上が最短となる腹壁の部位を同定し,3 cm の腹壁切開を行った。小切開から支持糸を用いて腹腔外に腫瘍部を含む胃壁を導出した。局所切除を行い短軸方向縫合した。LECS 補助下胃部分切除術は,腹腔鏡・内視鏡手技の双方の手技の利点を生かした低侵襲で安全な術式である。特に超高齢者に過剰な開腹術を避け,低侵襲な治療を行うために有用である。 -
イマチニブ投与後に鏡視下 2 チームによる切除術を施行した直腸 GISTの1例
46巻13号(2019);View Description Hide Description症例は 67 歳,男性。下血を主訴に前医を受診した。下部消化管内視鏡検査にて下部直腸の粘膜下腫瘍と診断され,腫瘍径が小さいため経過観察の適応となった。1 年後の再検査を指示されていたが受診せず,4 年後に排便障害を主訴に前医を再診した。下部消化管内視鏡検査にて腫瘍の著明な増大を認め,精査加療目的に当院を受診した。CT にて直腸背側に境界明瞭で辺縁平滑な径 87×69 mm 大の腫瘤を認め,経肛門的生検にて直腸 gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した。 骨盤腔に対して腫瘍が大きく切除困難となることが予想されたため,腫瘍の縮小目的に術前補助化学療法としてメシル酸イマチニブを導入した。4 か月間の投与で腫瘍最大径は 60%縮小し,腹腔鏡下および経肛門的鏡視下の 2 チームでの同時手術により完全切除が可能となった。手術時間 341 分,出血量は 422 mL であった。術後,吻合部に Grade 2 の縫合不全を生じたが他に特記すべき合併症なく経過した。