Volume 47,
Issue 12,
2020
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投稿規定
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癌と化学療法 47巻12号, 0-0 (2020);
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総説
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癌と化学療法 47巻12号, 1645-1652 (2020);
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がんに対する個別化医療(precision medicine)は世界中で浸透してきている。本邦でも次世代シークエンサー法(nextgeneration sequencing: NGS)を用いた腫瘍組織の遺伝子パネル検査が保険償還され,日常診療で複数のバイオマーカーや遺伝子異常の同時測定が可能になった。しかし腫瘍組織によるNGS 解析には,解析時間が長いこと,heterogeneity をとらえることや経時的な遺伝子検査が難しいことなどの問題点があげられる。近年,進歩を遂げているリキッドバイオプシーという検査手法は血液や尿などの体液サンプルを用いて,腫瘍組織を用いることなく腫瘍の状態を診断することができる。血液循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA: ctDNA)とは,アポトーシスやネクローシスによって腫瘍細胞から血中へ放出された腫瘍由来のDNA のことであるが,このctDNA を解析することで治癒切除不能の進行再発悪性腫瘍に対する化学療法や分子標的治療薬の選択,治療効果モニタリング,悪性腫瘍切除後のminimal residual disease(MRD)を用いた再発リスク判定や術後化学療法の選択などが可能となるかもしれない。本稿ではctDNA 解析の有用性や欠点,今後の展望について概説する。
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特集
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COVID‒19 パンデミックとがん医療への影響
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癌と化学療法 47巻12号, 1653-1656 (2020);
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2020 年3 月よりわが国においてもCOVID‒19 の感染者数,重症者数が急速に増加し,医療従事者,集中治療室,人工呼吸器,マスクやガウンなどの物資の不足を招き,医療提供体制のひっ迫を来した。医療機関での感染発生が複数の施設で認められ,受診,検査や手術の制限や延期が生じることとなった。がん治療を受けている市民の間には受診時の感染に対する懸念が生じ,患者側の受診控えが見受けられた。「感染をできるだけ拡大させない」ことと「必要ながん治療を安全に提供する」という両立の難しい課題をできるだけバランスよく実践するために,がん関連学会より情報が発信されてきた。がん関連3 学会(日本癌学会,日本癌治療学会,日本臨床腫瘍学会)合同COVID‒19 対策ワーキンググループ(WG)が設置され,「新型コロナウイルス感染症とがん診療について(患者さん向け)Q&A―改訂第2 版―」,「新型コロナウイルス感染症とがん診療について(医療従事者向け)Q&A―改訂第2 版―」がホームページ上に掲載されている。医療機関が安全な医療を提供し国民が安心して受けられるように,最新の知見を取り入れた情報が発信されていくことが望まれる。
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癌と化学療法 47巻12号, 1657-1661 (2020);
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がん患者ではCOVID-19に罹患した場合,重症化や死亡リスクが高い可能性があり,COVID-19へ罹患することは極力避けなくてはならない。急速な拡がりをみせるCOVID-19であるが,このような状況下でも可能な限り日々のがん診療は通常どおり継続していく必要がある。進行がん患者にとって抗がん剤などの薬物治療ががん治療の中心となる。がん薬物療法中に発症した肺炎は通常の細菌性肺炎だけではなく,ニューモシスチス肺炎,真菌感染症などその他の感染性肺炎や抗がん剤による薬剤性肺障害などを鑑別する必要がある。加えて現在のコロナ禍では,COVID-19肺炎も念頭に置かなくてはならない。COVID-19で頻度の高い症状として発熱・劵怠感などに加え,咳嗽や呼吸困難があげられる。COVID-19肺炎の画像所見は数多く報告されているが,画像検査のみでCOVID-19肺炎を診断するのは困難であり,がん薬物療法中の患者では特に薬剤性肺障害との鑑別に難渋する。画像所見に加えて患者の臨床症状,行動歴やその他の臨床検査などを総合的に判断し対応,適切な加療を行っていく必要がある。ここではCOVID-19肺炎にみられる臨床的特徴,画像所見を示しながらがん診療において注意すべき点について述べていく。
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癌と化学療法 47巻12号, 1662-1667 (2020);
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COVID‒19 の世界的流行により,がん治療を取り巻く環境は大きく変化している。がん患者はCOVID‒19 重症化のリスク因子である可能性があり,またがん患者は高齢者や基礎疾患をもつ者も多いため注意を要する。薬物療法がCOVID‒19の重症化因子であるかについては未だ議論がある。そしてCOVID‒19 は治療のみではなく,新規の悪性腫瘍診断数の減少にも影響しており,がん患者の予後への影響が想定される。難しいながらも,がんに対する薬物療法を行う場合には治療の目的,メリット,デメリットを十分に踏まえて治療開始を検討する必要がある。そのなかで根治目的の治療を遅らせるべきではない。また,治療を行う際にはCOVID‒19 と鑑別を要する有害事象が発生した場合の診療体制の準備が必要である。そして継続治療を行うに当たり感染対策や啓発も非常に重要である。
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癌と化学療法 47巻12号, 1668-1671 (2020);
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原則としてがんの標準治療は,安易に変更されたり延期されるべきではない。外科手術も例外ではない。しかしながら,COVID‒19 のパンデミックの状況下では手術延期を考慮せざるを得ない場合がある。COVID‒19 感染拡大下におけるがんの手術は,① 病院における医療資源,② 市中感染の頻度,③ 患者のがん種,進行度などによって決定される。実際,日本消化器外科学会が2020 年6 月に行った施設アンケート調査によれば,40% を超える施設が消化器がんに対する手術制限があると回答した。前述のアンケート調査の約30% の施設が優先されるべき消化器がん手術があると回答した。優先されるべきがん種としては膵がん,結腸・直腸がん,食道がん,胃がんの順であった。このように一般的に進行が速く手術以外の代替療法に乏しいがん種では,COVID‒19 感染拡大下でも極力予定どおり手術が考慮されるべきと考えられている。一方で,病院の医療資源や市中感染の頻度は刻一刻と変化していく。したがって,状況によってがんの治療についても頻回に見直し,臨機応変に対応していくことが重要である。
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原著
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癌と化学療法 47巻12号, 1687-1690 (2020);
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臨床現場でのがん疼痛治療におけるヒドロモルフォンの使用状況を調査した。評価可能症例は19 例で,原発臓器は消化器4 例,肺3 例,乳腺2 例,骨軟部2 例,血液2 例,その他6 例であった。ヒドロモルフォン処方前使用していたオピオイドはモルヒネ,オキシコドン,タペンタドールなど多岐にわたり,1 日平均経口モルヒネ換算投与量は89.3 mg であった。ヒドロモルフォンへのオピオイドスイッチング症例におけるヒドロモルフォン開始量は平均16.4 mg/日で,スイッチング3日後の疼痛numerical rating scale(NRS)調査可能例において,スイッチング前後のNRS の平均はそれぞれ4.1,3.8 で有意差を認めなかった。本研究では,他剤オピオイドから経口ヒドロモルフォンへのスイッチングは,添付文書の換算(ヒドロモルフォン:1 日平均経口モルヒネ換算投与量=1:5)に従って行うことで疼痛の増悪を認めることなく可能であった。スイッチング例・新規導入例,いずれにおいても明らかな有害事象の出現はなく,安全に疼痛緩和を行うことができた。1日1 回の内服であることや錠剤が比較的小さいことは内服の困難感を軽減し,アドヒアランスの向上をもたらす可能性があると考えられた。
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医事
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癌と化学療法 47巻12号, 1691-1696 (2020);
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緒言: 小児(C)および思春期・若年成人(AYA)(CAYA)世代のがん治療における生殖機能温存の重要性が高まっている。本邦でも2012 年以降,地域におけるがん・生殖医療に関する相談および支援体制としての地域がん・生殖医療連携が組織されてきている。一方,先行研究では生殖医療施設の地域や施設間の偏在が大きく,都道府県単位のがん・生殖医療連携構築は全国の半数以下となっている。方法: 今回われわれは,地域がん・生殖医療連携の全国展開を実現することを目的とし,全国のがん・生殖医療連携未整備都道府県24 地域のがん診療連携拠点病院を中心としたがん診療および医学的適応による生殖機能温存対応施設の責任者,さらに行政のがん対策課などの担当者を集め,がん・生殖医療連携構築に向けた課題の抽出と今後の方策を議論した。結果: これら24 地域のなかで,4 地域でがん・生殖医療連携がすでに構築されていた。現在の生殖医療に関する相談・支援体制としては,施設間や医師個人間での連携がそれぞれ13 地域,14 地域と最多であった。がん・生殖医療連携運営の主体として期待される組織としては,都道府県行政,都道府県がん診療連携拠点病院協議会など,都道府県がん診療連携拠点病院の産婦人科をあげた回答が,それぞれ10,10,9 地域と多数を占めた。がん・生殖医療連携構築や運営における阻害因子としては,マンパワー不足,予算不足,ノウハウがない,イニシアチブを取る機関がないといった回答が,それぞれ21 地域,19 地域,16 地域,12 地域であった。結論: がん・生殖医療の全国的な均てん化を図ることや,これら経済的基盤の脆弱な世代に対する公的助成制度の拡充はCAYA 世代がん患者に対する支援として重要と考えられる。これらの達成には,現在の未整備地域で主に行われている医師間・施設間の連携では限界があり,地域がん・生殖医療連携による相談・支援体制の全国展開が必要である。今回の検討によって,都道府県行政と連携したがん・生殖医療連携構築と運営,Oncofertility Consortium Japan を活用したノウハウや資材の共有と人材育成が必要と考えられた。
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薬事
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癌と化学療法 47巻12号, 1697-1702 (2020);
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シスプラチン(CDDP)併用レジメンの適応となった固形がん症例(726 例: 2012 年12 月~2013 年12 月)を対象とし,CDDP 投与後の急性腎不全(cisplatin-induced acute kidney injury: CIA)の実態を調査,臨床事項との関連性を解析した。CIA は48 例(6.6%)であった。多変量解析の結果,「糖尿病合併」,「NSAIDs の定時使用」,「CDDP 初回投与」,「CDDP投与後1 週間以内の低Na 血症(Grade 3 以上)」がCIA 発現の有意な危険因子として抽出され,「Mg 補充」はCIA 発現を軽減する因子として抽出された。がん種別では食道・頭頸部がん症例においてCIA 発現率が高い傾向が示され,その危険因子として「糖尿病合併」,「心血管障害合併」が抽出された。本調査結果に基づく予防対策の立案と危険因子のスクリーニング,早期発見・対応が重要である。
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症例
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癌と化学療法 47巻12号, 1703-1705 (2020);
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対側乳癌を併発した右副乳癌を経験した。症例は50歳,女性。乳癌検診で左乳房腫瘤を指摘され受診した。乳房MRIで左乳房内と右腋窩の皮膚から皮下に連続する腫瘍が認められ,右腋窩腫瘤に皮膚生検,左乳房腫瘤に針生検(CNB)を行った。左乳房のCNB の病理結果は浸潤性乳管癌で,小腺管形成性の硬性型であった。右腋窩腫瘤は索状配列を示す低分化型腺癌であるが,皮膚生検のため深部の組織は含まれていなかった。左乳癌の転移の可能性を考慮し,免疫染色を行ったところ,ER,PgR,mammaglobin,GATA 3 が陽性で,右腋窩腫瘤も乳癌由来であることが強く示唆された。原発性右副乳癌の可能性も考慮し,右腋窩局所広範囲切除術+腋窩リンパ節郭清(レベルⅠ)を施行し,左乳癌に左乳房切除術+センチネルリンパ節生検を行った。切除標本の病理所見で,両者の組織像の差異および右の腫瘍周囲の正常な副乳腺の残存,豊富なDCIS と小葉置換像の存在から右副乳原発の浸潤性乳管癌と確定した。
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癌と化学療法 47巻12号, 1707-1709 (2020);
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症例は72 歳,女性。9 年前に左乳癌にて乳房切除術を受け,術後アナストロゾールを6 年間内服していた。1 年前に胸壁,リンパ節転移が出現しアナストロゾールを再投与し転移巣は縮小していた。アナストロゾールを後発品に変更したところ2 か月前に呼吸苦が出現した。CT 検査にて両肺野に網状影,すりガラス影を認め間質性肺炎の診断にてステロイド投与を行った。病状が軽快した後,投薬を再開したところ病変が再燃したためVATS を行い,病理組織学的に間質性肺炎の診断を得た。その後レトロゾールを開始したが,同様の肺病変の再燃をみたため休薬し経過をみた。6 か月後に転移巣の増大を認めエキセメスタンを開始したが,肺病変が再燃したためステロイドパルス,人工呼吸管理とした。病状はいったん軽快するも誤嚥性肺炎を併発し死亡した。乳癌では抗癌剤,分子標的薬,放射線治療による薬剤性肺障害の報告例は散見されるものの,ホルモン剤のみでの報告はまれである。アロマターゼ阻害剤の先発品から後発品への変更が引き金となり,薬剤性間質性肺炎を来したと疑われる再発乳癌の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 47巻12号, 1711-1714 (2020);
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症例は70歳,男性。cStage ⅣA 肺腺癌に対するgefitinib による一次化学療法後長期stable disease 状態であったが,2年4か月後に肺癌の進行と第二癌としてStage Ⅲの胃癌が指摘された。二次化学療法としてafatinib を投与したが効果はなく,三次化学療法としてnivolumab を投与後,肺癌のpartial response を得たが,胃癌に効果は得られなかった。同時性重複癌に対する免疫チェックポイント阻害剤投与例の報告は希少であるため報告する。
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癌と化学療法 47巻12号, 1715-1717 (2020);
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症例は65 歳,男性。胃癌,cT4bN3aM1,cStage Ⅳの診断で一次治療としてSOX 療法9 コース,二次治療としてPTX+RAM 療法を1 コース実施したがPD のため中止となった。三次治療としてnivolumab(NIV)を2 コース実施したがirAEs(心筋炎,重症筋無力症)のため中止,CPT‒11 を2 コース投与したが本人の希望で中止となり,以後無治療で10か月経過したが病勢の増悪を認めず,現在外来通院中である。NIV 中断後も長期にわたり腫瘍縮小を維持している進行胃癌の1 例を経験した。
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癌と化学療法 47巻12号, 1719-1721 (2020);
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症例は63 歳,女性。前医の検診で高LDH,CK 血症を指摘された。精査の結果,多発肝腫瘍・左肺腫瘍および直腸Rb に1/4 周性の2 型腫瘍を認めた。病理診断は腺癌であり,直腸Rb 癌,多発肝転移,肺転移,cT₃N1aM1b(H₃,PUL1),cStage Ⅳb と診断した。CAPOX+bevacizumab 併用療法を₈ コース施行した。直腸原発巣および多発肝腫瘍の著明な縮小を認めたため切除可能と判断し,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術および肝部分切除術を施行した。最終病理診断はypT2N₀M1b(H2,PUL1),Stage Ⅳb であった。術後にUFT+LV 療法を2 コース施行後に,残存している転移性肺腫瘍に対し左肺上葉切除術を施行した。その後は術後補助化学療法を施行することなく,原発巣手術より1 年6 か月経過後も再発・新規病変なく外来通院継続中である。今回,遠隔転移を有する切除不能進行直腸癌に対して抗VEGF 薬併用療法が著効し,R0切除可能となった1 例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 47巻12号, 1723-1725 (2020);
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症例は66 歳,女性。食欲不振と心窩部痛を主訴に当院を紹介受診し,全身精査の結果,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併した膵臓がんと診断された。治療はS-1 による化学療法を注意深く先行し,その後プレドニゾロンを併用しゲムシタビンを投与した。血小板数はステロイドと化学療法により正常へ戻ったが,ステロイドは完全には中止できなかった。ITP を合併した膵臓がんについてはほとんど文献報告がない。そのため,ITP を合併した膵臓がんに対する症例に対して文献的考察を加えて報告する。