癌と化学療法
Volume 48, Issue 1, 2021
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投稿規定
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総説
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腫瘍循環器学の夜明け
48巻1号(2021);View Description Hide Descriptionがんの治療成績の向上に伴って,薬物療法や放射線治療による心血管合併症が生命予後やQOL を左右する大きな要因となってきている。がん治療による心血管系への影響は多岐にわたっており,循環器医の専門的な対応を必要とするケースが増えている。このような状況のなか新しい臨床研究分野としての腫瘍循環器学が立ち上がり,わが国でも腫瘍循環器学への関心は高まりつつある。また,2017 年には日本腫瘍循環器学会が設立され,この領域における様々な課題を克服するための活動が始まっている。がん診療科と循環器科との間の連携が,診療や研究,教育へと今後さらに拡がることが期待される。
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特集
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- わが国におけるがん遺伝子パネル検査の実践と多職種連携
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がん遺伝子パネル検査の現状と展望
48巻1号(2021);View Description Hide Description2019 年6 月に2 種類のがんゲノムプロファイリング検査(CGP)が保険収載され,機能により三層に枠組み化された指定医療機関で実施可能になった。この検査は,標準治療が終了(見込みを含む)の進行固形がん,希少がん,原発不明がん患者のがん組織を対象に,次世代シーケンサーを用いて一度に数百程度の遺伝子を対象に一次構造解析を行うものである。結果は,エキスパートパネルにおいて臨床的な意義付けと適切な治療法の選択や提案が行われる。CGP は方法ごとに検査に必要な検体の条件あるいは対象遺伝子や報告項目などの機能が異なるために,結果の評価には注意が必要である。CGPでは何らかの遺伝子の変化が検出される割合は高いものの,遺伝子異常に合致した治療に結び付く症例は限られている。この割合の向上が,CGP の有用性を高めるためのこれからの課題になる。 -
がん遺伝子パネル検査後の患者申出療養
48巻1号(2021);View Description Hide Descriptionがん遺伝子パネル検査結果に基づき,遺伝子異常に合った抗がん剤が候補になる患者は10% 程度と限られており,医薬品へのアクセス改善が課題とされてきた。このような現状のなか,がん遺伝子パネル検査の結果に基づいた医薬品の治療機会として,治験や先進医療B などの臨床試験がないまたは対象とならない患者を対象に,患者申出療養の枠組みのなかで適応外薬を投与する臨床研究(通称受け皿試験)が実施中であり,すでに40 例以上に投与されている。本稿では,この受け皿試験の現状と多職種連携における課題,将来展望について論じる。 -
がん相談支援センターの役割
48巻1号(2021);View Description Hide Description2018 年に策定された第3 期がん対策推進基本計画に基づき,がん診療連携拠点病院におけるがん相談支援センターの業務に「がんゲノム医療に関する相談」が追記された。がん相談支援センターは遺伝子パネル検査の実施有無を決定する機関ではないが,実態調査で現時点で一定の相談実績があることが明らかにされている。がん専門相談員は,今後さらに増加することが見込まれる遺伝子パネル検査の相談に対応するために,遺伝子パネル検査に関する特性と限界を十分に理解した上で患者・家族の真のニーズをくみ取り,情報の理解促進ならびに後の方向性をともに考える,といった相談支援の原則に基づいた支援を展開することが求められている。また,相談支援の質の担保を目的として医師,遺伝カウンセラーやがんゲノム医療コーディネーターらの院内外の各専門職との組織作りへの参画,近隣のがんゲノム医療中核拠点病院・医療拠点病院・医療連携病院などの院外施設とのネットワーク作りに貢献することが期待されている。 -
認定遺伝カウンセラーの役割
48巻1号(2021);View Description Hide Description近年,がんの治療選択にゲノム情報が活用されるようになってきた。そのなかには生殖細胞系列バリアントを解析し,遺伝性腫瘍の診断がつくこともある。解析技術が進めば進むほど結果の解釈も複雑となるため,患者へのサポートやよりよい医療選択のために医療体制の連携強化が必要になる。現在の医療における認定遺伝カウンセラー® の役割について筆者の考えを記載する。
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Current Organ Topics:Urological Cancer 泌尿器系癌 泌尿器系抗悪性腫瘍薬剤開発の近年の変遷・課題・将来
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原著
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BRCA1 変異を有するTriple Negative 乳がん細胞に対するPARP⊖1 阻害剤添加の影響
48巻1号(2021);View Description Hide Description2018 年に本邦でBRCA1/2 遺伝子変異陽性かつHER2 陰性の手術不能と再発乳がんの治療薬として,poly(ADP-ribose)polymerase(PARP)阻害剤の一つであるolaparib の採用とBRCA1/2 遺伝子検査がコンパニオン診断として保険収載された。本研究では,triple negative 乳がん(TNBC)においてBRCA1 の変異の有無で相違するPARP-1 阻害剤添加後のmicroRNA(miRNA)を同定し,さらにそのmiRNA のPARP 阻害剤と化学療法の併用による変化を検討した。PARP-1 阻害剤曝露後MDA-MB-231,HCC1143,BT549 では減少し,MDA-MB-436 で10倍以上増加したmiRNA はmiR-141,miR-155,miR-205 とmiR-223 であった。PARP-1 阻害剤とgemcitabine(GEM)曝露後にMDA-MB-436 においてmiR-141 は10倍以上増加し,miR-205 は併用曝露後のほうが単独曝露後よりも増加した。miR-141 を含むmiR-200 family とmiR-205 は,ZEB1/2 を標的としてepithelial-to-mesenchymal transition(EMT)に対して抑制的に働くことが知られている。TNBC におけるPARP-1 阻害剤曝露後のmiRNA の変化をBRCA1 変異の有無で分けて検討した結果,BRCA1 変異を有するTNBC ではEMT を抑制するmiR-144 とmiR-205 が,PARP-1 阻害剤単独使用とGEM 併用後の両方で高発現していた。このことから,PARP-1 阻害剤の効果としてEMT の抑制による化学療法の感受性の回復も期待できると考えられた。 -
免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連有害事象のリスク因子の検討
48巻1号(2021);View Description Hide Description免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)投与前の患者背景や臨床検査値が免疫関連有害事象(irAE)発現に及ぼすリスク因子を調査した。2018 年8月~2020 年3月にICIs が投与された患者₈₆ 例を対象に,投与中止となったirAE が発現した群(発現群)1₆ 例(18.6%)と発現しなかった群(非発現群)70 例(81.4%)に分類し,投与前の患者背景を比較した。当院における検討では,性別や年齢,投与期間などの背景因子とirAE 発現との有意なリスク因子は認めず,三次治療以降あるいは非小細胞肺癌患者で肺障害が多い傾向がみられた。
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医事
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The Current Status of Screening for Essential Thrombocythemia and Polycythemia Vera in Clinical Practice―Report from a Single Institution
48巻1号(2021);View Description Hide Description目的: 当施設における本態性血小板血症状(ET)と真性多血症(PV)のスクリーニングの実態を調査した。方法: 世界保健機関(WHO)による診断基準を用いた。1984 年5 月(開院日)~2019 年1 月までに当院を受診した患者全員を対象とした。結果: 血小板数で診断基準を満たした患者(25,062 人)の90% 以上が,またHb もしくはHt では診断基準を満たした患者(16,422 人)の90% 以上が血液内科を受診していなかった。ET とPV が潜在している可能性が示唆された。また,血液内科を受診していないET とPV の診断基準を満たす多くの患者が様々な科に存在した。結論: ET とPV は全身症状を含む様々な症状を呈するため,様々な科を受診していると考えられた。WHO の診断基準,ET とPV の臨床症状を他科へ啓発すること,血液内科と他科との連携が重要であると考えられた。
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症例
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乳癌骨転移による播種性骨髄癌症にCapecitabine が奏効した1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は63 歳,女性。右乳癌術後9 年目に貧血と血小板減少が出現した。PET‒CT では胸腰椎,骨盤,肋骨,胸骨などにFDG の異常集積を認め,骨髄穿刺では異型細胞の集塊形成を認めた。多発骨転移による播種性骨髄癌症と診断し,capecitabine 内服を開始した。徐々に貧血と血小板減少は改善し,治療開始後6 か月でHb と血小板は正常範囲内まで回復,PET‒CT では異常集積の大部分が消失した。16 か月からexemestane も併用し,新規の骨病変が出現するまで計30 か月間capecitabine を継続した。その後docetaxel,epirubicin,cyclophosphamide(EC),vinorelbine にて治療を行うも62 か月で原病死した。capecitabine 終了後も貧血,血小板減少は認めなかった。 -
乳癌術後補助内分泌療法中に治療関連二次悪性腫瘍として発症した慢性骨髄性白血病
48巻1号(2021);View Description Hide Description今後,乳癌において新規の化学療法,放射線療法によりさらなる長期生存例の増加が期待される一方,二次癌を含む重複癌の増加が予想される。二次癌発症時の治療方針,あるいは二次癌治療中に一次癌が再発した際の治療方針の決定法など不明なことが多い。症例: 患者は54 歳,女性。T4bN1M0,Stage ⅢB のホルモン陽性HER2 陰性進行乳癌症例。術前化学療法としてFEC 3 コース,ドセタキセル4 コースを施行後,右胸筋温存乳房切除および腋窩リンパ節郭清を施行した。術後放射線照射およびアナストロゾールを2.5 年間投与していた。2011 年6 月に白血球増多(31︐300 /μL)が出現し,骨髄穿刺にて慢性骨髄性白血病(CML)と診断した。同月よりイマチニブにて分子遺伝学的に深い奏効を維持していたが,2015 年6月MRI にて乳癌仙骨転移再発と診断した。その後,イマチニブを併用しながら乳癌再発治療を継続できた。乳癌術後補助化学療法および放射線療法施行後に二次悪性腫瘍として発症したCML を経験したため報告する。 -
性同一性障害に対するアンドロゲン製剤投与中に発症した乳癌の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description性同一性障害において,心の性は男性,身体の性が女性の場合はfemale‒to‒male(FTM)と呼ばれる。今回,FTMに発症した乳癌を経験したので報告する。患者は44 歳,男性。他院にて両側乳房切除術および両側付属器切除術を施行,アンドロゲン製剤の投与を受けていた。今回右乳房腫瘤を自覚され,腫瘤摘出術を施行,浸潤性乳管癌,ER(+),PgR(-),HER2(1+),Ki67 60% と診断され,当科紹介となった。PET‒CT では明らかな転移を認めず,残存乳房切除+腋窩リンパ節(level Ⅰ)サンプリングを施行した。術後病理検査では癌の遺残は認めず,また腋窩リンパ節転移も認めなかった。術後補助療法としてドセタキセル(75 mg/m2)+シクロフォスファミド(600 mg/m2)併用化学療法を4 コース施行し,アナストロゾールによる内分泌療法を開始した。アンドロゲン製剤投与は術後より中止している。術後1 年2 か月の現在,無再発で経過している。 -
大量の癌性腹水を伴う切除不能膵癌に対してKM‒CART が有効であった1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は79 歳,女性。腹部膨満感を主訴に受診された。腹部造影CT 検査にて大量の癌性腹水を伴う膵体部癌,多発肝転移と診断した。切除不能膵癌としてgemcitabine(GEM)+nab‒paclitaxel(PTX)療法を開始したが腹水の増大による腹部膨満感の増悪と食事摂取不良により,化学療法の継続が困難となった。腹水治療として改良型腹水濾過濃縮再静注法(KM‒CART)を導入した。KM‒CART 施行後には腹部膨満感は改善し,食事摂取が可能となり,化学療法の継続が可能となった。治療開始7 か月となるがKM‒CART を繰り返し施行し,症状緩和を行いながら化学療法を継続中である。KM‒CART は大量の癌性腹水を伴う切除不能膵癌症例に対して化学療法の継続を可能にし,予後に貢献できると考えられた。 -
横行結腸浸潤を伴う胆囊癌と鑑別困難であった黄色肉芽腫性胆囊炎の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は53 歳,女性。健診で肝機能異常を指摘され紹介された。気管支喘息があるためまず単純CT 検査が施行された。胆囊炎の疑いであったが胆囊底部に腫瘍性病変が疑われたため,₃ 週間後に造影CT 検査を施行した。胆囊病変に造影効果が確認され,増大傾向であったことからEUS-FNA を施行したが悪性所見は指摘されなかった。下部消化管内視鏡検査で横行結腸に潰瘍形成を認め,胆囊癌による浸潤も否定できなかった。術前診断は黄色肉芽腫性胆囊炎の疑いであったが胆囊癌も否定できなかったため,術中迅速診断を行い,肝床切除,結腸部分切除を施行した。術中迅速診断では悪性所見なく,リンパ節郭清は不要と判断した。病理組織学的検査で膿腫を伴う黄色肉芽腫性胆囊炎と診断された。黄色肉芽腫性胆囊炎には胆囊癌の合併を意識した手術が必要である。 -
多発腸重積を来した鼻腔原発悪性黒色腫の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。鼻腔悪性黒色腫で切除術を施行された。その後,鼻腔に局所再発を認め,放射線治療,インターフェロンβ局注療法を施行されていた。術後1 年3 か月後より心窩部不快感が続いたためPET⊖CT を施行したところ,多発小腸転移を疑う所見と多発腸重積を指摘された。その後,嘔吐,食欲不振を認めたため開腹手術を施行した。小腸を検索すると,4 か所,腫瘍が先進している腸重積を認め,小腸部分切除術を施行した。病理所見ではいずれも悪性黒色腫の転移巣と診断された。退院後,ニボルマブの投与を開始したところ鼻腔内の局所再発は消退し,現在,経過観察のみで生存中である。今後,ニボルマブなど新しい治療で予後が延長することで,消化管転移に対する手術が増えると予想される。
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特別寄稿
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- 第42 回 日本癌局所療法研究会
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S‒1+Oxaliplatin 療法が奏効し治癒切除し得た腹膜播種を伴うスキルス胃癌の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description切除不能胃癌に対して臨床的簡便さからS‒1+oxaliplatin(SOX)療法の使用が増えてきているが,conversion surgeryし得るほど著効した報告は少ない。今回,播種結節を伴うスキルス胃癌に対してSOX 療法が著効しconversion surgery し得た症例を経験した。症例は69 歳,女性。胃体上部から胃体下部にかけて全周性のHER2 陰性,type 4 腺癌(por1)を認め,開腹時に小腸間膜,左横隔膜下に播種結節を確認した。SOX 療法を計11 コース施行後,CT で原発巣の縮小,審査腹腔鏡にて播種病変の消失,腹水細胞診陰性を確認し,胃全摘脾摘術を施行した。最終病理診断はpor2,MP,N3(7/27),ypStageⅢA,組織学的効果判定はGrade 2 であった。患者は術後SOX 療法を継続し6 か月間無再発で生存している。腹膜播種を伴う切除不能胃癌はSOX 療法によりconversion surgery し得,腹膜播種病変の正確な評価に審査腹腔鏡は有用であった。 -
当院における胃癌術後全生存と疾患特異的生存の比較
48巻1号(2021);View Description Hide Description癌治療の予後評価では全生存(OS)と疾患特異的生存(DSS)とが比較され,併存疾患などによる他因死への配慮も重要とする報告が散見される。当科における胃癌術後OS およびDSS を解析し,各予後因子を比較分析した。方法: 2012~2018 年,当科の胃全摘・幽門側胃切除197 例を対象に術前併存疾患や背景,手術関連および病理学的因子につきOS/DSS を解析し予後因子を抽出した。各合併症別の予後解析を施行した。結果: 原病死30 例,他因死34 例。5 年生存率はOS 61.6%,DSS 79.9%。多変量解析ではOS 解析で術前併存疾患指数(Charlson comorbidity index: CCI)(p=0.009),pT(p=0.022),Clavien‒Dindo Grade Ⅲ以上の術後合併症(p=0.027)が,DSS 解析では性別(p=0.0002),術式(p=0.016),pN(p=0.0003),合併症(p=0.009)が独立予後因子に選択された。合併症別解析で縫合不全・膵液漏の有無はOS/DSS 双方で有意差を認めたが,肺炎・通過障害はOS のみで有意差を認めた。考察: CCI がOS のみで予後因子となり,術前併存疾患の他因死への影響が示唆される。合併症がOS/DSS ともに予後因子であり,DSS で有意差のある縫合不全・膵液漏症例では過剰な炎症反応が腫瘍学的増悪に影響し,OS のみで有意差を認めた。肺炎・通過障害症例ではPS/ADL の低下や併存疾患の悪化に影響した可能性が考えられた。 -
胃GIST 術後肝転移化学療法中に発症し,早期に治療し得た内ヘルニアの1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。2017 年10 月に胃GIST にて胃全摘術,Roux-en-Y 再建が施行された。2019 年6 月に肝転移が判明し,₇ 月よりイマチニブによる化学療法が開始された。2019 年12 月未明より上腹部痛,背部痛が出現し当科を受診した。腹部造影CT 検査で十二指腸断端部からそれに連続する十二指腸および空腸が拡張し,空腸壁の造影効果が不良で周囲に腹水も認められた。絞扼性腸閉塞を疑い,直ちに緊急手術を行った。Petersenʼs defect と呼ばれる間隙に輸入脚が陥入した内ヘルニアであった。発症から手術までの時間が約1₀ 時間と比較的短かったこともあり,嵌頓した腸管は壊死に陥っておらず,ヘルニアの整復およびヘルニア門の閉鎖で手術は終了し,術後経過も良好であった。胃切除後の内ヘルニアの発生頻度は比較的低いが,発症すると重篤になる危険性がある。手術時に内ヘルニアの原因を作らないよう注意を払うことや,急な腹痛の発現時には本疾患を念頭に置く必要がある。 -
高齢者大腸癌に対する腹腔鏡手術の検討
48巻1号(2021);View Description Hide Description高齢者および大腸癌患者の増加に伴い,高齢者大腸癌患者への腹腔鏡を用いた大腸癌手術は増加傾向にあると考えられる。大腸癌に対し腹腔鏡手術を受けた456 人を対象とし,高齢者大腸癌患者への腹腔鏡手術が非高齢者と同等に施行可能かを比較検討した。術前のASA‒PS は高齢者でやや不良であった。pStage には有意な差は認めなかった。5 年全生存率は高齢者で低かったが,出血量,手術時間,術後在院日数,Clavien‒Dindo 分類grade 3 以上の合併症の発生率に有意な差を認めなかった。高齢者大腸癌患者に対する腹腔鏡手術は非高齢者と比較しても安全に施行可能であると考えられた。 -
膵癌術後再発症例に対するNab‒Paclitaxel plus Gemcitabine 療法有効症例の検討
48巻1号(2021);View Description Hide Description目的: 膵癌の手術後再発症例に対するnab‒paclitaxel plus gemcitabine(GnP)療法の有効症例の傾向を明らかにする。方法: 当院で膵切除術後再発に対して一次治療でGnP を使用した症例を有効群,無効群に分けて比較検討した。また,高分化型腺癌と中分化型腺癌の比較検討,再発時期による比較検討を行った。結果: 高分化型腺癌のdisease control rate は93.6%,無増悪生存期間が8.6 か月であったのに対して,中分化型腺癌は57.1%,4.4 か月と有意差を認めた。また,術後7 か月以降に再発した晩期再発症例は,6 か月以内に再発した早期再発症例に比べ有効であった。結論: GnP 療法は,高分化型腺癌と晩期再発症例に有効である可能性が示唆された。 -
食道癌化学放射線療法後の後腹膜リンパ節再発による十二指腸狭窄に対して腹腔鏡下胃空腸バイパス術を行った1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は83 歳,男性。3 年6 か月前に胸部下部食道癌に対して化学放射線療法を施行されていた。来院前日より嘔吐を繰り返し,当科へ緊急入院となった。精査の結果,腹腔リンパ節再発による十二指腸下行脚の高度狭窄と診断された。治療として消化管ステントは逸脱の可能性が高いと判断し,腹腔鏡下胃空腸バイパス術を行った。術後は経過良好であり,化学療法を行うために術後21 日目に当院腫瘍内科へ転科となった。悪性腫瘍による十二指腸狭窄は比較的多く経験される病態であり,胃空腸バイパス術や消化管ステント留置術などが広く行われている。消化管ステント留置術のほうがより低侵襲ではあるが,外方性圧排による病変ではステント逸脱を起こす可能性が高いため,バイパス手術を行ったほうがより安全な場合がある。食道癌化学放射線療法後の十二指腸狭窄に対して腹腔鏡下胃空腸バイパス術を施行し,術後早期に化学療法を再開できた1 例を経験したため報告する。 -
パクリタキセル+ラムシルマブ併用療法が著効した胃癌術後腹膜播種の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。上部消化管内視鏡検査にて,幽門狭窄を来す潰瘍性病変から中分化管状腺癌の診断を得た。手術目的に入院し,幽門側胃切除,D2 郭清を行った。病理組織学的所見はtub2,pT4apN1M0,CY0,Stage ⅢA,HER2 score0 であった。術後S-1 療法を施行したが,術後₄ か月目に腹膜播種がみられたため,カペシタビン+オキサリプラチン併用療法を開始した。しかし術後5 か月でprogressive disease となり,パクリタキセル(PTX)+ラムシルマブ(RAM)併用療法へ変更した。Grade 2 の蛋白尿や下肢浮腫,Grade4₄ の好中球減少を認めたが,PTX の減量や休薬を図りながら治療を継続し,1 年6 か月の無増悪生存を得た。胃癌治療ガイドラインでは,切除不能進行・再発胃癌に対する二次治療としてPTX+RAM 併用療法が推奨されている。今回われわれは,胃癌術後腹膜播種に対しPTX+RAM 併用療法が著効した1 例を経験したので報告する。 -
薬物療法が有効であった大腸癌肝転移の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。肝右葉に最大9.5 cm の多発転移巣を伴う下行結腸癌に対し,腹腔鏡下結腸切除を行った。術後mFOLFOX6+bevacizumab(Bmab)を行ったがSD で,3 か月後FOLFIRI+panitumumab(Pmab)に変更すると腫瘍は著明に縮小した。開腹するも肝転移は下大静脈に浸潤して切除不能であった。術後肝動注ポート5-FU ia+Pmab iv,再度のFOLFIRI+Pmab を行うも肝転移巣は増大悪化した。その後SOX+Bmab に変更したところ,再び縮小した。1 年以上外来通院を続け,3 年8 か月で原癌死した。休薬期間後同じ薬物療法を繰り返し用いて症状をコントロールできた大腸癌肝転移の1 例を経験したので報告する。 -
医原性膵管損傷による膵炎併発膵頭部癌に対して術前補助療法後に切除した1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は64 歳,女性。前医で膵頭部癌に対する内視鏡的逆行性胆道膵管造影施行時にガイドワイヤーが膵鉤部膵管から膵外に穿通した。膵鉤部からSMA 周囲に炎症が波及し,加療目的に当院に転院した。CT では膵頭部に28 mm の腫瘤性病変を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引法で組織学的に腺癌と診断された。膵炎の波及でSMA 周囲に肥厚した軟部陰影と液体貯留を認めた。手術時のSMA 損傷のリスクも考慮し術前治療を行いながら炎症の消退を待つ方針とし,gemcitabine+S-1併用療法を2 コース施行した。治療後のCT では腫瘍径はわずかに縮小し,SMA 周囲の炎症所見は著明な改善が得られ,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。SMA からの剝離に難渋することなく切除可能であり,R0 切除が施行された。術後は特に合併症なく第18 病日に退院した。病勢の制御と時間経過による炎症消退に術前治療が有用であった症例を経験した。 -
線維腺腫内に発生した非浸潤性小葉癌の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は43 歳,閉経前女性。左乳房上外側に14×11 mm の腫瘤を認め,針生検で良性腫瘍の病理診断であった。乳腺腫瘍に対して腫瘍摘出術を施行した。摘出標本の病理組織学的所見は線維腺腫の内部に非浸潤性小葉癌(LCIS)を認め,切除断端は陰性であった。再発リスク低減のための内分泌療法としてタモキシフェンの投与を行っている。良性腫瘍に対する摘出手術によって偶然発見されたLCIS の症例を経験したので報告した。 -
局所進行膵癌における化学放射線治療後の外科切除の役割
48巻1号(2021);View Description Hide Description過去11 年間に当科で切除可能膵癌を含む局所進行膵癌に対して,手術を企図して術前に化学放射線療法(CRT)を行った症例34 例について検討した。resectable(R)またはborderline resectable(BR)膵癌ではCRT 後に手術を加えたCRT+S‒1 群がCRT 後化学療法のみのCRT 群より生存曲線はおおむね上回っていたが,統計学的には有意差はなかった。また,非切除例では局所の増悪を認め,終末期のQOL の低下をもたらす一因となっていた。以上より,現時点ではR またはBR 膵癌はCRT 後に切除が望ましいが,今後集学的治療の改良により手術の意義は変化する可能性があると思われる。 -
多発肝転移を伴う局所進行直腸癌にTriplet Chemotherapy が著効し根治切除し得た1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は60 歳台,男性。下血,体重減少を主訴に当院を受診し,精査にて直腸癌Ra を認めた。病変は腹壁に浸潤し,多発肝転移を伴っていた。cT4b(腹壁)N2bM1a(H1),cStage Ⅳの診断にて,腹腔鏡下横行結腸人工肛門造設術後にFOLFOXIRI+bevacizumab(BEV)を8 コース行った。原発巣,肝転移は著明に縮小し治療効果はPR であった。ycT3N1bM1a(H1),Stage Ⅳの診断にて原発巣に対して,ロボット支援下腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。術後2 か月に肝転移に対して肝S6,S8 部分切除術を施行した。術後6 か月が経過し,無再発である。 -
上部胃癌に対する腹腔鏡下胃亜全摘・ビルロートⅠ法再建(デルタ吻合)3 例の経験
48巻1号(2021);View Description Hide Description上部胃癌に対して腹腔鏡下胃亜全摘を施行し,ビルロートⅠ(B-Ⅰ)法再建・デルタ吻合を施行した3 例を経験した。女性2 例,男性が1 例で,いずれも病変の主座は小弯であった。3 例とも術後経過良好で退院し,切除断端も陰性であった。体重減少率は5.8~12.6%で短期的なQOL は比較的良好であった。症例数は少ないが,胃亜全摘後の再建でB-Ⅰ法再建の短期成績は良好で有用であると考えられた。 -
計6 回の外科手術を含めた集学的治療により長期QOL を維持し得た転移再発結腸癌の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は75 歳,男性。2010 年9 月に上行結腸癌で結腸右半切除術を施行した(tub2,T4b,N1,Cy1,M0,pStage Ⅲc)。術後補助化学療法(capecitabine→UFT/UZEL)を行ったが,2012 年4 月CT で肺転移を認め,胸腔鏡下肺部分切除術を施行した。同年7 月骨盤内リンパ節再発を認め,放射線療法を施行した。2013 年8 月右精巣の転移を切除した。抗癌剤フリーで経過をみるも2015 年11 月腹膜播種再発と考えられる腹腔内腫瘍が増大したため,化学療法を再開した[S‒1→irinotecan(CPT‒11)→regorafenib]。2016 年7 月腫瘍によるイレウスを発症したため,横行結腸でストーマ造設術を施行した。術後化学療法継続[trifluridine+bevacizumab(Bev)→CPT‒11]するも右鼠径部精索内再発が増大,2017 年6 月に切除した。CPT‒11+Bev を継続するも2019 年2 月腹腔内再発腫瘍の急速増大,腫瘍壊死部分破裂から敗血症を来したため直腸,小腸広範囲,尿管切除を伴う腫瘍摘出術を余儀なくされた。その後もQOL を何とか維持しながら薬物療法を継続中である。 -
化学療法で長期生存が得られた切除不能進行・再発胃癌の2 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例1: 患者は73 歳,男性。残胃癌に対して残胃全摘術を施行した。最終診断はpT2N0M0,pStage ⅠB で,術後補助化学療法は行わなかった。術後1 年4 か月に多発肝転移再発を認めた。S-1+CDDP(SP)療法を2 年4 か月施行し,その後S-1,paclitaxel+ramucirumab,nivolumab,irinotecan,S⊖1+oxaliplatin(SOX)を投与したが,術後6 年1 か月,再発後4 年₉ か月に癌死した。症例2: 患者は72 歳,男性。胸部CT で偶発的に胃周囲リンパ節腫大を指摘され,精査にて傍大動脈リンパ節腫大を伴う切除不能進行胃癌と診断し,SP 療法を2 年6 か月施行した。その後S-1,SOX 療法を施行したが,診断から4 年目に癌死した。今回,化学療法にて長期生存を得られた切除不能進行・再発胃癌の2 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
術前化学療法S‒1/Oxaliplatin を施行し組織学的効果判定Grade 3 が得られた1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は66 歳,男性。1 か月前より空腹時に心窩部圧迫感を認め,当院消化器内科を受診した。上部消化管内視鏡検査にて胃体中小弯を中心に3型腫瘍を認め,生検結果は低分化から高分化腺癌であった。腹部骨盤造影CT 検査にて胃体下部の壁肥厚,領域リンパ節の腫大および大動脈周囲リンパ節(No. 16b1)の腫大を認め,Stage Ⅳと診断した。S-1/oxaliplatin(SOX)療法を4 コース施行後の上部消化管内視鏡検査では腫瘍は残存するも,生検では癌細胞を認めなかった。腹部骨盤造影CT 検査では胃壁の壁肥厚を認めるも,リンパ節は著明に縮小していた。PET-CT 検査では大動脈周囲リンパ節に集積を認めなかった。化学療法開始4 か月後に幽門側胃切除,D2 郭清,Billroth Ⅰ再建を施行した。病理組織学的所見では,主病巣,リンパ節ともに癌細胞を認めず,以前に癌細胞が存在したことを疑う所見のみであり,組織学的効果判定はGrade ₃であった。今後,Stage Ⅳ胃癌に対してのconversion surgery は期待でき得るものだと考える。 -
AYA 世代発症の回腸原発悪性リンパ腫による腸重積の1 手術例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は17 歳,男性。1 週間前からの右下腹部痛を主訴に2019 年8 月に当院外科を受診した。発熱,体重減少,盗汗などの症状は認めなかった。腹部造影CT 検査にて腸重積の診断となり,整復・精査後に手術を行う方針となった。下部消化管内視鏡検査にて先進部に25 mm 大の小腸腫瘍を認め,生検にてmalignant lymphoma 疑いとなった。CT では遠隔転移は認めず,限局例(Murphy 分類Stage Ⅰ)の診断となった。他院血液内科と協議の上,手術による局所切除を先行し,病理診断が付いた後に速やかに化学療法へ移行する方針とした。第17 病日,腹腔鏡補助下小腸部分切除術+虫垂切除術を施行した。術後経過は良好でPOD12(第29 病日)に退院した。病理組織学的診断はdiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)となり,化学療法を施行されることとなった。AYA 世代の腸重積では,悪性リンパ腫などの腫瘍性病変の存在を念頭に置いて診療に当たる必要がある。 -
術前化学療法後にロボット支援下括約筋間直腸切除術を施行した1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。下部消化管内視鏡検査にてAV 2 cm に全周性の2 型腫瘍を認めた。生検にて腺癌(tub 1),CTおよびMRI 検査からcT3N0M0,cStage Ⅱの局所進行直腸癌と診断した。術前補助化学療法(NAC)としてFOLFOXIRI+bevacizumab(BEV)を5 コース,FOLFOXIRI のみを1 コース行った。BEV の最終投与から手術まで6 週間空けるため6コース目はBEV を併用しなかった。化学療法中の主な有害事象はgrade 4 の好中球減少が2 回であった。化学療法終了後,大腸内視鏡検査およびCT 検査にて腫瘍の約70%縮小を確認しycPR であった。また,肛門縁から腫瘍までの距離も約3 cmであった。周囲への浸潤,遠隔転移も認めなかったため,ロボット支援下括約筋間直腸切除術,両側側方リンパ節郭清術,回腸人工肛門造設術を施行した。術後経過は問題なく第8 病日に退院となった。病理組織学的検査にてypT3pN0cM0,ypStage ⅡA であった。病理組織学的に線維化層内にviable な腺癌の残存が認められ,NAC の治療効果はGrade 1b であった。今回,局所進行直腸癌の症例に対して局所制御,遠隔転移抑制目的に術前治療としてFOLFOXIRI+BEV を施行し,腫瘍の縮小が得られロボット支援下括約筋間直腸切除が可能となった1 例を経験したので報告する。 -
放射線治療とレンバチニブにて長期生存している甲状腺癌リンパ節転移未分化転化の1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は82 歳,女性。21 年前に甲状腺乳頭癌の診断にて甲状腺全摘術,右側頸部リンパ節郭清を施行された。左頸部痛を主訴に当院を受診し,頸部CT 検査を施行したところ左鎖骨上内側に6 cm 大の腫瘤を指摘された。腫瘤の針生検を施行し,病理組織学的診断にて低分化癌から未分化癌を認め,免疫組織化学的染色においてTTF-1 陽性で甲状腺由来であり,甲状腺癌リンパ節転移未分化転化と診断した。鎖骨浸潤を認め手術による切除は不可能であり,放射線治療を行った後,レンバチニブの投与を開始した。血小板減少を認めたためレンバチニブを14 mg より段階的に減量し,4 mg にて投与を継続した。腫瘍は縮小し効果判定はPR で,再増大は認めず3 年間維持し,現在もレンバチニブを投与継続し増悪なく経過している。放射線治療とレンバチニブの投与により抗腫瘍効果が得られ,予後改善に貢献したと考えられた症例を経験したため文献的考察を加え報告する。 -
術後再発を繰り返す肝細胞癌に対して放射線照射が著効した1 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description症例は79 歳,女性。救急外来で偶発的に肝腫瘤を指摘され,精査の結果,肝S4 の肝細胞癌の診断で肝部分切除術を施行した。術後二度の再発に対して肝部分切除術を施行した。三度目の手術後の再発に対して肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した。その後再発を来したため体幹部定位放射線治療(SBRT)を二度施行,現在2 年3 か月無再発生存中である。肝細胞癌に対しSBRT が生存期間延長の効果を来す十分なエビデンスはないものの,高い局所制御率が報告されている。肝細胞癌に対する局所療法としてのSBRT が今後治療の一助となることが期待される。 -
Nivolumab 投与により生じたStevens‒Johnson 症候群の2 例
48巻1号(2021);View Description Hide Description当院でnivolumab 投与後にStevens-Johnson 症候群(SJS)を発症した2 例を経験したので報告する。症例1: 51 歳,男性。腹膜播種を伴うStage Ⅳ胃癌に対して四次治療としてnivolumab を₄ コース投与するも奏効せず,S-1+docetaxel 療法に移行したところ,手足に疼痛を伴う紅斑および水疱,口腔粘膜・陰茎にびらんが出現した。臨床所見と病理所見よりSJSと診断しステロイド加療を行ったが,皮膚症状のため胃癌治療が困難となり緩和治療となった。症例2: 75 歳,女性。胃癌腹膜播種再発に対する化学療法の三次治療としてnivolumab を1 コース投与後に発熱,四肢体幹の点状紅斑,口唇びらん,口腔内粘膜脱落が出現した。皮膚所見よりSJS と診断しステロイド加療を行ったが,症状が持続し胃癌治療の継続が困難なため緩和治療となった。重篤な免疫関連有害事象は薬剤中止後も長期持続し,原疾患の治療に影響することがあることを認識する必要があると考えられた。 -
食道癌術後の再建胃管癌に対する手術治療成績
48巻1号(2021);View Description Hide Description食道癌術後治療成績の向上に伴い,再建胃管癌の発生が増加している。当院で2004 年4 月~2018 年の12 月に経験した胃管癌13 例のうち手術を行った胃管癌7 例の治療成績について後方視的に検討した。術式は胃管部分切除術6 例,胃管全摘術が1 例であった。術後合併症は縫合不全1 例,前胸部皮下膿瘍が1 例であった。部分切除の3 例で右胃動静脈,右胃大網動静脈を切離した上で幽門側胃管切除術を施行し,全例術中にインドシアニングリーン(ICG)蛍光法で胃管血流を確認した。いずれも術後合併症もなく経過し,無再発生存中である。術後病理結果は,pStage ⅠA 4 例,pStage ⅠB 2 例,pStageⅡA 1 例であった。胃管癌診断後の観察期間は21~175(中央値32)か月,術後生存期間は1~120(中央値46.5)か月であった。当院で手術加療を行った胃管癌は大部分が早期癌で発見され,根治治療が可能であった。