癌と化学療法
Volume 48, Issue 7, 2021
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総説
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BRAF 変異がんの治療戦略
48巻7号(2021);View Description Hide DescriptionBRAF 遺伝子変異はヒトの癌の約8% に起こり,悪性黒色腫で40~60%,甲状腺乳頭がんで50%,大腸がんで10%,非小細胞肺がんでは数% の頻度でみられる。BRAF の活性型変異の大部分がp. V600E 変異(BRAF V600E)である。BRAF 変異がんに対して最初に悪性黒色腫でBRAF 阻害薬の開発がなされ,最近肺がんや大腸がんにおいてもBRAF 阻害薬あるいはBRAF 阻害薬+MEK 阻害薬あるいはBRAF 阻害薬+MEK 阻害薬+抗EGFR 抗体の分子標的治療がここ数年で日常診療に導入されつつある。本稿において,BRAF 変異がんにおける治療開発,特にBRAF 阻害療法の現況について概説する。
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特集
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- 地域におけるがんゲノム医療提供体制の整備
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がんゲノム医療中核拠点病院の立場から―広域ながんゲノム医療の提供体制の構築―
48巻7号(2021);View Description Hide Description2019 年6 月に二つのがん遺伝子パネル検査が保険収載され,わが国におけるがんゲノム医療は厚生労働省に指定された「がんゲノム医療中核拠点病院(12 施設)」,「がんゲノム医療拠点病院(33 施設)」,「がんゲノム医療連携病院(180 施設)」の計225 施設で実施されている。一方,がん遺伝子パネル検査の結果の解釈は,がんゲノム医療中核拠点病院またはがんゲノム医療拠点病院で実施されるエキスパートパネルで検討され,その結果をもって患者に説明することが保険収載の条件になっている。すなわち,これらの施設は自施設の症例のみならず,連携病院の症例も検討する必要がある。また,がんゲノム医療中核拠点病院には,がんゲノム医療拠点病院やがんゲノム医療連携病院との情報共有や人材育成が課せられている。本稿では,がんゲノム医療中核拠点病院としての当院のがんゲノム医療提供体制に関して解説する。 -
がんゲノム医療中核拠点病院の立場から―九州大学病院の取り組み―
48巻7号(2021);View Description Hide Description九州大学病院は2018年2月よりがんゲノム医療中核拠点病院に指定され,九州地方のがんゲノム医療連携病院10施設と連携してがんゲノム医療を推進している。がんゲノムプロファイリング検査が保険収載されて以降,九州大学病院エキスパートパネルでは500例以上の検査結果について審議を実施した。九州地方のがんゲノム医療を拡大するため,地域のがん患者,医療者へ向けて相談窓口を開設し,がんゲノム医療連携病院の医療スタッフを対象とした教育事業としてがんゲノム研修会を実施している。患者申出療養制度を活用した治療提供が開始されてからは,その適応について協議するため新たにコンサルテーションシステムを開設し,がんゲノム医療連携病院,がんゲノム医療拠点病院と議論を行っている。九州大学病院は現在,遺伝医療と希少がん診療にも注力しており,がんゲノム医療との連携を深めている。本稿では九州大学病院,九州地方におけるがんゲノム医療の現状と課題について振り返りたい。 -
東北地方におけるがんゲノム医療の整備―がんゲノム医療中核拠点・東北大学病院の活動―
48巻7号(2021);View Description Hide Descriptionわが国では平成30(2018)年度から第3 期がん対策推進基本計画がスタートし,このなかで新たにがんゲノム医療の整備が求められるようになった。平成30 年以降,国により全国にがんゲノム医療中核拠点病院,がんゲノム医療拠点病院ならびにがんゲノム医療連携病院が指定され,このなかのがんゲノム医療中核拠点病院が中心となり,がんゲノム医療拠点病院ならびにがんゲノム医療連携病院と連携して地域でのがんゲノム医療提供体制の整備,人材養成や研究開発が進められている。しかしがんゲノム医療は日進月歩であり,これらのがんゲノム医療関連病院とそれ以外の医療機関の間で患者が受ける医療に格差が拡がりつつある。この課題を是正するために,東北地方ではがんゲノム医療中核拠点病院に指定された東北大学病院が中心となり,この地域のがんゲノム医療の普及や啓発を進めている。ここでは東北大学病院のがんゲノム医療中核拠点病院としての活動について紹介する。 -
北海道におけるがんゲノム医療提供体制の整備―がんゲノム医療中核拠点病院の立場から―
48巻7号(2021);View Description Hide Descriptionがんゲノム医療が実診療として開始され,北海道ではがんゲノム医療中核拠点病院である北海道大学病院を中心に道内のがんゲノム医療連携病院と協力し,がんゲノム医療を提供する体制の整備を行った。2019 年6 月より,標準治療後または標準治療がない患者を対象とした包括的ゲノムプロファイリング検査の保険診療が開始され,一定の成果とともに遺伝子異常に基づいた治療薬を投与できる患者が少ないなどの問題も明らかとなっている。候補治療薬は未承認薬や適応外薬となることが多く,治験,先進医療や患者申出療養を円滑に導入することが必要である。当院では,道内で実施している治験の情報共有,医師主導治験の立ち上げ,患者申出療養に基づく臨床試験の推進,希少がんに対する遺伝子プロファイリングと標的治療のレジストリ研究と付随する治験の推進,小児がん患者の組み入れなどに重点を置いて取り組んでいる。本稿では,北海道における出口戦略を含むがんゲノム医療提供体制とその基盤となる人材育成について解説する。
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Current Organ Topics:Head and Neck Tumor 頭頸部腫瘍 診断・治療に向けた新技術の展開
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特別寄稿
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Primary Androgen‒Depletion Therapy Prevails Not Only for Metastatic but Also for Nonmetastatic Hormone‒Naïve Prostate Cancer in Japan ―Recent Trends and Efficacy
48巻7号(2021);View Description Hide Description目的: 日本のホルモン感受性前立腺癌患者におけるGnRH‒agonist(リュープロレリン,ゴセレリン)/antagonist(デガレリクス)および外科的去勢術による一次ADT(PADT)について,実臨床での選択状況,有用性および患者特性を調査することを目的とした。方法: この後ろ向き観察研究では,2016~2018 年までにJ‒CaP レジストリに登録され,PADT が施行された患者を対象に,PADT の開始日から2018 年10 月までの追跡情報を用いて調査した。主要評価項目はPSA 奏効割合(PSA<4 ng/mL)および初期治療の継続期間とした。結果: 1,895 名の患者が解析対象となり,リュープロレリン,ゴセレリンおよびデガレリクスを投与された割合は,それぞれ47.7%,24.4% および22.0% であり,5.9% が外科的去勢術を受けていた。デガレリクス群は他治療群と比較して診断時PSA 中央値が最も高く(116.7 ng/mL),Stage Ⅳの割合が72.9%およびグリーソンスコア9~10の割合が59.7%と最も高かった。抗アンドロゲン剤はリュープロレリン/ゴセレリン群の80%以上,デガレリクス群の70% で併用され,内訳ではビカルタミドが最も多く使用されていた(99.0%)。初期治療の継続期間中央値はデガレリクス群で20.8 か月であったが,リュープロレリン/ゴセレリン群では中央値未達であり,24 か月時点継続率はそれぞれ44.6% と81.6%/87.3% であった。PSA 奏効割合はリュープロレリン群で最も高く(93.7%),ベースラインからのPSA 変化率の中央値はすべての治療群で同程度であった(-99.1% から-99.8%)。結論: ホルモン感受性前立腺癌患者のPADT は,薬剤の作用機序と転移の有無など患者の背景によって選択されていると想定された。 -
Use of Ibrutinib in 10 Patients with Treatment‒Naïve or Relapsed/Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma in Real‒World Clinical Practice ―A Report from a Single Medical Institution
48巻7号(2021);View Description Hide Descriptionイブルチニブは本邦においては,慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)の未治療においても既治療においても適応を取得している。しかし実臨床における日本人での成績や有害事象(AEs)に関しては不明である。目的:イブルチニブが実臨床で投与された症例の成績とAEs を報告する。方法: 当施設においてCLL/SLL でイブルチニブが投与された全症例の10 例を後方視的に解析した。結果: 10 例のうち5 例(50%)は未治療であった。観察期間中央値は9.8(0.2~21.6)か月であり,全奏効率(ORR)は60% であった。生存期間も無増悪生存期間も中央値には達していなかった。4 例(40%)は少なくとも一つのAE があり,1 例(10%)はグレード≧3 のAE があった。4 例(40%)がイブルチニブが中止となった。2 例(20%)はAEs によるもので,1 例(10%)はCLL の進行によるものであり,1 例(10%)は経済的理由であった。Richter への形質転換はなかった。結論: 臨床試験に比較してORR が低かった(60%)。有害事象の頻度と程度が低かったが中止率が高かった(40%)。患者への情報提供とアドヒアランスが重要と考えられた。
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医事
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閉鎖式薬物移送システムの適用範囲拡大に伴い投与器具および個人防護具が医療材料費に与えた影響
48巻7号(2021);View Description Hide Description医療従事者の抗がん薬職業曝露が問題視されているが,予防策の一つである閉鎖式薬物移送システム(CSTD)の普及は十分でない。主な原因として器具が高額であることがあげられる。当院の入院化学療法(点滴)では,シクロホスファミド,イホスファミド,ベンダムスチンの3剤にCSTD を使用していたが,2018 年11 月よりすべての化学療法の投与を適応とした。同時に病棟看護師の個人防護具(PPE)の簡素化を行った。2019 年4~9月にCSTD の使用量増加およびPPE の簡素化が医療材料費に与える影響を明らかにすることを目的に調査を行った。電子カルテを後ろ向きに調査し,必要な器具やPPE のコストを算出した。対象期間の入院化学療法(点滴)延べ施行件数は970件であった。CSTD の適用範囲拡大による投与器具のコスト増加は6か月で約174万円であった。一方,PPE の簡素化によるコスト削減は6か月で約29万円であり,上記コスト増加分の約16.8% であった。CSTD の普及による器具価格の低下と診療報酬の改善が望まれる。
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薬事
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光触媒を利用した抗がん薬分解フィルムの開発
48巻7号(2021);View Description Hide Description抗がん薬曝露による健康被害は医療従事者のみならず,患者やその家族にも重大な影響を及ぼすことから問題となっている。抗がん薬曝露対策ガイドラインの普及により抗がん薬調製時および治療時の急性曝露問題はほぼ解決しているが,抗がん薬調製室や治療室の他にも患者が使用するトイレの床や壁に付着する抗がん薬の曝露対策は不十分である。われわれは,二酸化チタンや三酸化タングステンなどの金属化合物をポリエチレンテレフタレート(PET)表面にコーティングしたフィルムを開発し,抗がん薬分解能について評価した。その結果,紫外線のみならずLED の可視光線照射でも抗がん薬を24時間以内に大幅に分解できることを明らかにした。したがって,光触媒を利用した抗がん薬分解フィルムは抗がん薬曝露対策の有効な手段の一つになり得ると考えられる。 -
インフューザーポンプを使用したフルオロウラシル持続投与後の抗がん剤曝露を考慮した抜針手技の確立
48巻7号(2021);View Description Hide Description近年,抗がん剤における環境曝露について注目が集まっている。本邦でもがん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン2019年版が作成され,抗がん剤の調製・投与に関する曝露対策は標準化されつつある。大腸癌の標準療法であるFOLFOX およびFOLFIRI 療法でフルオロウラシル46時間持続投与に使用するインフューザーポンプ(IP)における調製・投与に関する曝露対策は実施されているが,投与後の抜針手技は抗がん剤曝露の観点から検討されていない。そこで本検討では,抗がん剤曝露の観点からIP による投与終了後の安全な抜針手技を確立する目的で,抜針時の抗がん剤曝露の状況を調査した。その結果,IP のクランプロック位置とヒューバー針のパルシングフラッシュが抗がん剤曝露量を低減できる可能性が示唆された。今後は,安全な抜針手技の教育方法についても検討したい。 -
トラスツズマブの先行バイオ医薬品とバイオ後続品の治療学的安全性の比較
48巻7号(2021);View Description Hide Description大分大学医学部附属病院(以下,当院)にてトラスツズマブの先行バイオ医薬品からバイオ後続品への採用を切り替え,その妥当性を探索的に評価するため有害事象の発現状況について調査した。2019 年1 月~2020 年9 月までの間に,当院にてトラスツズマブまたはトラスツズマブバイオシミラーのいずれかが投与された症例を対象に,電子カルテを用いて後方視的に有害事象発現状況を調査した。評価項目はインフュージョンリアクション(IR),心障害の発現状況とした。対象症例14 例のうち,先行品群6 例,切り替え群6 例,後続品群が2 例であった。切り替え群3 例において先行品投与時にIR がみられたが,その際IR に対して点滴時間の延長や前投薬の追加など適切に対応することで,後続品切り替え後に点滴時間を短縮しても安全に投与することができた。今回の調査結果では後続品へ切り替え後,有害事象の発現は認められなかった。このことから先行品から後続品への切り替えは経済学的観点だけでなく,治療学的安全性の観点から妥当であることが示唆された。
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症例
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術前化学療法後に軟骨化生が顕在化した化学療法抵抗性の乳癌の1 例
48巻7号(2021);View Description Hide Description症例は49歳,女性。右乳房のしこりを主訴に当院を受診した。右C 領域に3 cm 大の腫瘍,右腋窩リンパ節腫大を認めた。右乳腺腫瘍の針生検の病理組織学的診断は小葉癌主体の浸潤癌でER-,PR-,HER2-であった。右乳癌,cT2N1M0,トリプルネガティブの診断で術前化学療法としてパクリタキセル+ベバシズマブ,ddAC 療法を施行したがいずれの効果もSD であった。化学療法後にBt+Ax を施行した。切除標本の病理組織学的診断は軟骨化生を伴う浸潤癌で,ypT2ypN1a,組織学的治療効果はGrade 1b であった。術後15日目からカペシタビンを開始したが,6コース終了後のCT で多発肺転移を認めた。他施設に転院し薬物療法を行ったが,肺転移から5か月後に死亡した。 -
炎症性乳癌型再発との鑑別に苦慮した放射線性皮膚炎リコール現象の1 例
48巻7号(2021);View Description Hide Description症例は51 歳,女性。右乳癌,cT1,N0,M0,Stage Ⅰの診断にて右乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を施行した。組織型は髄様癌,トリプルネガティブ,pT1c,pN0(sn),M0,Stage Ⅰであった。退院後に下垂体腫瘍が指摘され,下垂体腫瘍摘出後全乳房照射を施行した。その後に化学療法を開始した。初回手術から約5か月後,右乳房の発赤,腫脹を認めた。画像検査では炎症性乳癌型再発が否定できず,皮膚生検を施行した。悪性所見は認められず,化学療法による放射線性皮膚炎のリコール現象と考えられた。症状が出現したため化学療法を中止したところ,右乳房の発赤は改善傾向となった。 -
胃癌術後化学療法中に発症した肺結核に対し抗癌剤と抗結核薬の同時併用治療を行った1 例
48巻7号(2021);View Description Hide Description症例は86歳,男性。胃癌術後の化学療法治療中に肺結核を発症したため当院紹介となり,抗結核薬と抗癌剤による併用治療を行った。薬剤相互作用や副作用の出現なく結核治療を終了することができた。同時併用治療は結核を合併した癌患者にとって両者の病勢を制御し得る有益な治療法である。 -
ガンマナイフ治療とNivolumab が奏効した低分化型胃癌脳転移の1 例
48巻7号(2021);View Description Hide Description胃癌の脳転移は1% 未満とまれであり,無治療の平均余命は2 か月未満と予後不良とされている。自験例ではHER2陽性の低分化型胃癌,多発骨転移の診断でSOX+trastuzumab 療法を開始した。計25コース施行後に脳転移が出現した。ガンマナイフ治療を行い嘔気症状は軽快し,その後抗PD-1 抗体であるnivolumab 治療を選択し,3 コース施行後にはSD と診断した。8コース施行後CT 検査で胃壁肥厚増悪,腹膜肥厚,胃小弯側リンパ節腫大によりPD と診断し,nivolumab は中止しpaclitaxel 単独療法に移行した。脳転移が出現してから約8か月にわたって本人の希望で仕事が継続できた。 -
当院で経験した大腸髄様癌3 例の検討
48巻7号(2021);View Description Hide Description大腸髄様癌はかつて低分化型腺癌に含まれていた概念であるが,本邦では2013 年に改訂された大腸癌取扱い規約第8版で初めて記載された比較的新しい概念の組織型である。2013 年以降,当院での大腸癌切除症例のうち3 例が髄様癌に相当する病理診断であった。3 例とも女性(60歳台1 例,90歳台2 例)で,右側結腸発生の大腸癌であった。いずれも結腸右半切除術を施行され,病理所見で腫瘍部にT リンパ球のびまん性散在像(tumor-infiltrating lymphocyte)を伴い,MSI 検査ではMLH1 とPMS2 の発現減弱を認めた。髄様癌の多くは高齢発症で,発見時漿膜浸潤を認めてもリンパ節転移を伴わず,比較的予後良好である。ミスマッチ修復遺伝子(MLH1)発現減弱を呈するなど,若干の文献的考察を交え報告する。 -
大腸癌の化学療法後に発症した11q23 異常を伴う治療関連急性骨髄性白血病
48巻7号(2021);View Description Hide Description今回われわれは,oxaliplatin を中心とする大腸癌の化学療法後に発症した11q23 異常を伴う治療関連急性骨髄性白血病(therapy‒related acute myeloid leukemia: t‒AML)の1 例を経験したので報告する。症例は79 歳,男性。72 歳時にStageⅣの横行結腸癌を発症し,切除術後からXELOX レジメン(capecitabine+oxaliplatin)による治療を3 週ごとに8 コース受けた。投与終了から6 年9 か月後,WBC が10×104台/μL まで急上昇し急性白血病が疑われ,入院となった。骨髄穿刺を行った結果,esterase染色・陽性の白血病細胞が95%を占め,染色体検査では(t 6 ; 11)(q27 ; q23)を認め,11q23異常を伴うt‒AML と診断した。抗癌剤治療によりCR に達したが早々に再発し,t‒AML の発症から7 か月後に死亡した。oxaliplatinによる白血病誘発性に関して,今後さらなる症例の蓄積を要する。 -
パゾパニブ投与中に発症した気胸の治療経験
48巻7号(2021);View Description Hide Descriptionマルチターゲットチロシンキナーゼ阻害薬であるパゾパニブは重篤な副作用として気胸の発生が知られているが,腎細胞癌症例に対するパゾパニブ投与例では気胸発生の報告がない。症例は71歳,男性。腎細胞癌術後の経過観察のCT で左肺門縦隔リンパ節腫大が出現した。画像所見から腎細胞癌のリンパ節転移を疑った。他に再発所見なく手術を行なうことにした。術中の迅速病理診断で腎細胞癌のリンパ節転移の診断であり,左肺上葉切除と縦隔リンパ節郭清を行なった。術後療法としてパゾパニブの投与が行なわれたが,治療開始101日目に左気胸を発症した。胸腔ドレナージのみでは改善が得られず手術を行なった。疾患により副作用としての気胸の発生頻度に差がある理由は不明であるが,薬剤による気胸の発生は常に念頭に置き対応できる体制が必要である。 -
原発不明癌加療中に腸管気腫症を呈し漿液性腺癌の診断に至った1 症例
48巻7号(2021);View Description Hide Description症例は75歳,女性。原発不明癌予後良好群に対してTC+Bev 加療中に全身劵怠感,食欲不振を主訴に受診した。胸腹部CT では,上行結腸壁,腸間膜を中心に壁内気腫像,腸間膜内ガス像を認め病変を切除した。病理所見において腸管漿膜面に少量のadenocarcinoma が検出され,免疫化学染色から漿液性腺癌の診断に至った症例を経験しここに報告する。
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